説明

輸液ポンプモジュール

【課題】
開示する輸液ポンプモジュールは、移送する液体の量を制御可能であって、設置場所に制約を生じさせないようコンパクトな構成とすることができる。
【解決手段】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態は、液体を移送する輸液ポンプモジュールであって、前記液体の流入口を備える液体流入部と、前記液体の流出口を備える液体流出部と、圧電素子を備えるポンプ部と、当該モジュール内を流れる前記液体の流量を計測する流量センサ部と、を有し、前記液体流入部、前記液体流出部、前記ポンプ部及び前記流量センサ部は、該液体流入部から流入した前記液体が該液体流出部から流出するように接続され、接続された前記液体流入部、液体流出部、ポンプ部及び流量センサ部は一つの流路を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送する液体の流量を計測する流量センサを備えた輸液ポンプモジュールの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
薬液を患者に注入する医療現場などで薬液を移送する際、圧電素子を利用したポンプと該圧電素子を駆動させるための発信回路を備えた液体移送ポンプが使用される(特許文献1など)。このような液体移送ポンプにおいては、圧電素子に所定周波数の電圧を加えることで該圧電素子を振動させ、この振動によって流路内の薬液を押出し移送させる。
【0003】
さらには、上記液体移送ポンプに連結されるチューブなどの液体流通管に流量センサを設置し、当該流量センサの計測結果に応じて上記発信回路を制御することで、移送する液体の量を制御することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術においては、液体移送ポンプ、液体流通管及び該液体流通管に設置する流量センサを別々に用意し、これら装置を接続したシステムを構築する必要があるため、システム自体が大きくなってしまい設置場所に制約が生じるという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明では、移送する液体の量を制御可能な輸液ポンプモジュールであって、設置場所に制約を生じさせないように、コンパクトな構成の輸液ポンプモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態では、ポンプと流量センサの間に流路を構成するボディ(成型部品)を設け、ポンプ、流量センサそれぞれの入出力部を対面に配置するので、流路を形成するボディとなる部品を1部品とすることができる。
【0007】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態では、ポンプの液出力部と流量センサの液入力部とが部品組付け方向に沿った同軸上に配置されるため、モジュール本体レイアウトの長手方向を短くすることができる。
【0008】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態では、ボディを設けたことでポンプの両面に圧電素子が配置されてもボディ形状で対応するため、ポンプに貼り付ける圧電素子を上下に配置するレイアウトにも対応することができる。
【0009】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態では、Oリングを使用し各部品を組付ける構造であり組立工程での検査設備が必要無く、荷重管理が無くなるため、組立時設備の簡略化を図ることができ、組立コストを下げることができる。
【0010】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態では、高い加工精度が必要となるのは流路の入出力部分であり、対象となるポンプ、流量センサ及びケーシングとなるボディの加工精度は高いものが必要となる。しかし、それ以外の部品の加工精度の等級は下げることが可能であり、モジュールを構成する部品の加工精度の最適化を行うことができるため、金型のコストダウン、成型サイクルの短縮及び成型コストダウンを実現することができる。
【0011】
開示する輸液ポンプモジュールの一形態では、医療用の部品として薬液を通す流路部材にメディカルグレードを使用し、又は化学薬品を通す流路部材に不活性なものを使用する。しかし、カバー部材には安価な樹脂材を使用することができるため、部品費のコスト低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
開示する輸液ポンプモジュールは、移送する液体の量を制御可能であって、設置場所に制約を生じさせないようコンパクトな構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールの要部を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールの全体構成図を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールを使用したシステムの構成例を示す図である。
【図4】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールのボディ、ポンプ及び流量センサの配置について説明する図である。
【図5】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュール組立時の構造と組付方向と通電方向とを説明するための図である。
【図6】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールにおけるポンプ及び流量センサとボディとの接続部分を説明するための図である。
【図7】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールにおけるポンプの構成の一例を示す図である。
【図8】本実施の形態に係る輸液ポンプモジュールを構成する各部品の材質について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1を用いて、本実施の形態に係る輸液ポンプモジュール20の流路構成について説明する。図1は、輸液ポンプモジュールの要部1の構成を説明する図である。図1で示すように、輸液ポンプモジュールの要部1は、液体流入部2、ポンプ3、流量センサ4、液体流出部5、ボディ6を含む。そして、輸液ポンプモジュール20において、液体流入部2から流入した液体は、ポンプ3を介して流量センサ4に移送され、流体流出部5から流出する。ここでポンプ3は、圧電素子を含む構成であって、当該圧電素子に所定周波数の電圧を加えることにより当該圧電素子を振動させ、ポンプ機能を発揮する。
【0015】
図1で示すように、輸液ポンプモジュール20の流路構成はポンプ3と流量センサ4とを対向するように配置し、その間にボディ6となる構造体を配置することで流路を一つの構造体で実現している。また、このような構成を採用することにより、輸液ポンプモジュール20の全長を短くすることができる。なお、図1ではポンプ3、流量センサ4の順序で接続されているが、流量センサ4、ポンプ3の順序で接続されても良い。
【0016】
次に、図2を用いて、輸液ポンプモジュール20の全体構成を説明する。図2は、輸液ポンプモジュール20の構成部品を説明する図である。図2で示すように、輸液ポンプモジュール20は、カバー7、14、PCB(Printed Circuit Board)8、接点(ガスケット)9、ポンプ(圧電素子を含む)3、シール部材(Oリング)10、13、プローブA11、プローブB12、ボディ6、流量センサ4を備える。
【0017】
カバー7は、モジュールを形成する場合、カバー14と締結されることで、PCB8の脱落を防止し、他部品を保護する部品である。PCB8は、ポンプ3、流量センサ4及び外部コントローラ間の駆動動力の伝達をするための部品である。接点9は、PCB8からポンプ3が備える圧電素子に電力の伝達を行うための部品である。ポンプ3は、移送する液体を溜める液室と当該液室内の液体を移送する動力源である圧電素子とを備える部品であり、PCB8から接点9を介して得た電力により圧電素子を駆動させてポンプ駆動し、液体を移送する。
【0018】
シール部材10、13は、移送する液体の漏れや侵入を防止するための部品であり、ボディ6に形成されたOリング溝部に入れ、ポンプ3で蓋をする。シール部材10、13は、ボディ6及びポンプ3、又はボディ6及び流量センサ4に挟まれることにより適度に潰され変形し、ボディ6の流路とポンプ3及び流量センサ4の流路とを繋ぎ、この繋ぎ目からの液漏れ等を防止する。なお、シール部材10、13はOリングを使用することが好ましい。
【0019】
プローブA11は、ポンプ3の上下に設置される圧電素子へ配電するための電極を繋ぐための部品である。プローブB12は、流量センサ4の駆動及び制御を行うための電極をPCB8と繋ぐための部品である。ボディ6は、液体を移送する流路を形成する部品であり、輸液ポンプモジュール20における流路の入力部(液体流入部2)及び流路の出力部(液体流出部5)を備えた部品である。そして、ボディ6とポンプ3と流量センサ4とを結合させることにより、流路は入力から出力まで一つに繋がる。ここで、ポンプ3及び流量センサ4との合わせ面には、シール部材10、13を使用するためのOリング溝部を備える。さらにボディ6は、プローブA11、プローブB12を保持する溝を備える。
【0020】
流量センサ4は、ポンプ3によって移送される液体の流量を計測し、当該計測結果を外部コントローラ30へPCB8を介して送信するための部品である。ここで、当該外部コントローラ30は、ポンプ3が備える圧電素子に対し、流量センサ4による計測結果に応じて所定の制御信号を送信する。カバー14は、モジュールを形成する場合、カバー7と締結されることで、流量センサ4の脱落を防止し、他部品を保護するための部品である。
【0021】
ここで、上記の部品を組み合わせて製作される輸液ポンプモジュール20は、ポンプ3が備える圧電素子を振動させることで液体を移送する機能を有し、ボディ6は当該液体を移送する流路としての役割を果たすものである。
【0022】
次に、図3を用いて、輸液ポンプモジュール20の使用方法の一例について説明する。図3は、外部コントローラ30を含めた輸液ポンプモジュール20のシステム構成例を示す図である。図3で示すように、輸液ポンプモジュール20は、液体流入部2及び液体流出部5に接続される液体移送用チューブを介して移送用液体を移送する。また、当システムにおいては、輸液ポンプモジュール20と外部コントローラ30とが接続されており、流量センサ4による移送用液体の流量測定結果は外部コントローラ30へ通知される。
【0023】
外部コントローラ30は、取得した流量測定結果に基づき所定の制御信号を生成し、それをポンプ3(圧電素子)に通知する。そして、ポンプ3の圧電素子が当該所定の制御信号に応じて振動し、ポンプ3は、移送用液体を移送させるためのポンプ機能を発揮する。ここで、外部コントローラ30において、取得される流量測定結果とそれに応じて生成される所定の制御信号との関係は適宜調整することができる。
【0024】
次は、図4を用いて、輸液ポンプモジュール20の構成の詳細について説明する。図4は、ボディ6、ポンプ3及び流量センサ4の組合せ時の構成を示す図である。図4で示すようにポンプ3、流量センサ4それぞれをボディ6に組み付ける構造となるため、流路確保のための防水機構のシール材としてOリングを採用する。樹脂シートに比べると、既製品であるため安価に入手することが可能である。
【0025】
流路を形成するボディ6に対する、ポンプ3及び流量センサ4の液体入出力部分を対面に配置し、特にポンプ3の液体出力部と流量センサ4の液体入力部とを部品の組み付け方向に沿う一つの軸上に配置することで、輸液ポンプモジュール20を小型化させている。
【0026】
また、ポンプ3、流量センサ4は、シール部材10、13を液体の漏れ防止及びケーシングをするために圧縮させた状態で組み付けられる。その際、各部品に含まれる製造誤差が積み重なることにより、組み付け後に部品間で隙間が発生したり、ケース等の部品で歪みが発生し、液漏れが発生する恐れもある。しかし、輸液ポンプモジュール20においては、シール部材10、13としてOリングを使用することにより、圧縮時の圧縮加重管理などを必要とせず、組立費用を抑えることができる。
【0027】
ここで図5は、部品組立時の構造と組付(荷重)方向と通電方向について説明する図である。図5で示すように、輸液ポンプモジュール20は、主要部品をそれぞれ押さえるため、荷重管理の必要性が無い。また、組み立て方法は、全ての部品において一方向(例えば、上部から下部方向)に組立可能な形状とすることにより、組み立て容易性の向上を図ることができ、組み立て設備の簡略化も図ることができる。また、輸液ポンプモジュール20を構成する各部品は、各接続部分において、組付け方向に沿う軸上の力によって接続状態が維持される。
【0028】
次に、図6及び図7を用いて、輸液ポンプモジュール20が採用する構造の優位性を説明する。図6は、輸液ポンプモジュール20における、ポンプ3及び流量センサ4とボディ6との接続部分を説明するための図であり、図7は、輸液ポンプモジュール20におけるポンプ3の構成の一例を示す図である。図6で示すように、輸液ポンプモジュール20は、シール部材10、13としてOリングを使用して、ポンプ3及び流量センサ4を剛体であるボディ6に押さえることにより荷重管理が不要となる。また、輸液ポンプモジュール20は、シール部材10、13としてOリングを使用しポンプ3周辺にスペースを確保することにより、ポンプ3が備える圧電素子のレイアウト変更に柔軟に対応できる。図7で示すように、例えば、ポンプ3の備える圧電素子が、ポンプ3の下側又はポンプ3の上下両側に配置されるレイアウトであっても対応可能である。
【0029】
次は図8を用いて、輸液ポンプモジュール20を構成する各部品の材質について説明する。図8は、輸液ポンプモジュール20を構成する各部品の材質について説明するための図である。図8で示すように、医療現場で使用する輸液ポンプモジュール20において、流路を形成する部品、例えば、輸液ポンプモジュール20の要部1を構成する部品の材質については、メディカルグレード又は輸液ポンプモジュール20で移送する液体に対し不活性なものとする。一方で、流路を構成しない、例えば、カバー7、14等は輸液ポンプモジュール20で移送する液体に接することはないため、上記のような材質の制限を設ける必要はない。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 輸液ポンプモジュールの要部
2 液体流入部
3 ポンプ
4 流量センサ
5 液体流出部
6 ボディ
7、14 カバー
8 PCB
9 接点(ガスケット)
10、13 シール部材(Oリング)
11 プローブA
12 プローブB
20 輸液ポンプモジュール
30 外部コントローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開平8−303352号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を移送する輸液ポンプモジュールであって、
前記液体の流入口を備える液体流入部と、前記液体の流出口を備える液体流出部と、圧電素子を備えるポンプ部と、当該モジュール内を流れる前記液体の流量を計測する流量センサ部と、を有し、
前記液体流入部、前記液体流出部、前記ポンプ部及び前記流量センサ部は、該液体流入部から流入した前記液体が該液体流出部から流出するように接続され、
接続された前記液体流入部、液体流出部、ポンプ部及び流量センサ部は一つの流路を形成することを特徴とする輸液ポンプモジュール。
【請求項2】
前記ポンプ部と前記流量センサ部とが、長手方向において重なる部分が存在するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の輸液ポンプモジュール。
【請求項3】
前記ポンプ部と前記流量センサ部とが、前記長手方向に並行して配置されることを特徴とする請求項2に記載の輸液ポンプモジュール。
【請求項4】
前記ポンプ部と前記流量センサ部とを接続する接続流路部を更に有し、
前記液体流入部、前記液体流出部、前記ポンプ部、前記流量センサ部及び前記接続流路部の各接続部分においては、短手方向の力によって接続状態が維持されることを特徴とする請求項3に記載の輸液ポンプモジュール。
【請求項5】
前記ポンプ部と前記接続流路部とを接続する部分と、前記流量センサ部と前記接続流路部とを接続する部分とは、前記短手方向の同軸上に配置されることを特徴とする請求項4に記載の輸液ポンプモジュール。
【請求項6】
前記液体流入部、液体流出部、ポンプ部、流量センサ部及び接続流路部の各接続部分においては、Oリングが使用されることを特徴とする請求項5に記載の輸液ポンプモジュール。
【請求項7】
移送する前記液体が薬液である場合、
前記薬液の流路を形成する部材の材料は、メディカルグレードであること、又は該薬液に対し不活性な材料であることを特徴とする請求項6に記載の輸液ポンプモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−103930(P2011−103930A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259143(P2009−259143)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】