説明

輸液ポンプ

【課題】輸液ポンプの本体の前面に設けられた複数のフィンガの上下位置で位置決めしたチューブをフィンガに添設した状態でドアを閉めた際、チューブが歪むことなく、ドアの内側で均等に狭圧保持されることにより、安定した送液を行なうようにすると共に、気泡検知、チューブ内圧検知等を正確に行なうようにした輸液ポンプを提供する。
【解決手段】本体2の前面に設けられた複数のフィンガFに可撓性のチューブTを位置決めすることにより該チューブTをフィンガFの前面に添設すると共に、本体2の前面を閉塞するドア3の側部に取り付けられたヒンジ4a、4bを介して回動するドア3を閉じることによってチューブTを狭圧保持する輸液ポンプ1において、本体2に取り付けられた弾性板バネ5を介してドア3に取り付けたヒンジ4a、4bを支持することにより、ドア3を本体2の前面に対して略平行に対面させた状態で閉じるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジで回動式に開閉するドアを閉じることによって本体側に設けられた蠕動式フィンガに輸液チューブを押圧状態で保持するようにした輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている蠕動式輸液ポンプは、その本体側に複数のフィンガが設けられ、このフィンガとドアとの間に輸液チューブを挟み込んでドアを閉じ、各フィンガに蠕動運動をさせることによって、フィンガによる圧迫位置を送液方向に移動することにより、チューブ内の輸液を移送するように構成されている。このような装置においては、輸液チューブを複数のフィンガの中央に添って位置決めするチューブガイドが設けられ、このチューブガイドの上下位置にチューブを挟み込む位置決め溝が形成されている。
【0003】
ところで、輸液ポンプのドアを本体に設けたヒンジを介して回動式に開閉する構造とした場合、このドアが閉じられるときは、ドアの内側が輸液チューブに対して斜めに接触するため、輸液チューブが上下の位置決め溝間で横方向に引張られることにより、弧状に歪み、輸液チューブがチューブガイドの内側に押圧されることによって内径が狭められる結果、送液量にバラツキが生じ、安定した送液を行なうことが困難になるおそれがあった。
【0004】
また、フィンガの近傍に輸液チューブ内の気泡を検出するための気泡センサや、チューブの閉塞状態を検出する内圧センサが設けられている場合、これらのセンサに当接したチューブに対して相対的なずれが生じると、正確な検出を行うことができなくなるという不都合が生じる。
【0005】
この種の問題を解決する装置として、特許文献1に記載されている輸液ポンプは、輸液チューブを本体の定位置に保持した状態でドアを閉じるとき、輸液チューブが正しく定位置にセットされていない場合に、ドアの閉動作を防止する機能を備えたものであり、このために、ストッパー部材と、このストッパー部材を移動させるための形状部という部材を備えた構成としている。
【0006】
ところが、このような特許文献1の構成は、輸液チューブが正しく定位置にセットされていない場合に、ドアの閉動作を防止するように構成したものであり、また、バックプレートベースとストッパー部材とから構成されるバックプレート機構を必要とするため、構造が複雑になるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−58738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、輸液ポンプの本体の前面に設けられた複数のフィンガの上下位置で位置決めしたチューブをフィンガに添設した状態でドアを閉じた際、チューブが歪むことなく、ドアの内側で均等に狭圧保持されることにより、安定した送液を行なうと共に、気泡検知、チューブ内圧検知等を正確に行なうようにした輸液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明における請求項1の輸液ポンプは、本体の前面に設けられた複数のフィンガの上下位置で可撓性のチューブを位置決めすることにより該チューブをフィンガの前面に添設すると共に、本体の前面を閉塞するドアの側部に取り付けられたヒンジを介して回動するドアを閉じることによってチューブを狭圧保持する輸液ポンプにおいて、ドアに取り付けたヒンジを回動自在に支承する弾性部材が本体の前後方向へ弾性的に移動するように構成され、該ドアを本体の前面に対して略平行に対面させた状態で閉じるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2の輸液ポンプは、請求項1において、ドアを本体の前面に対して略平行に対面させた状態で閉じる際に、ドアの外側に設けたドアレバーを回動することによってドアの内側に突設したフックを回動し、夫々のフックを本体側のフィンガの左右に設けられたフック受けに引掛けることにより、該ドアを本体の前面側に引き寄せながら閉じるようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3の輸液ポンプは、請求項1又は2において、弾性部材は、弾性板バネであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の請求項4の輸液ポンプは、請求項1、2又は3において、弾性部材は弾性板バネであって、該弾性板バネは本体の前面において複数箇所に設けられたネジで係止されると共に、夫々のネジに遊びを設け、この遊びの範囲内で本体の前後方向に弾性的に移動可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成した本発明の輸液ポンプにおいて、本体の前面を閉塞するドアに取り付けられたヒンジを回動自在に支承する弾性部材が、本体の前後方向へ弾性的に移動するように、本体の前面に取り付けられているため、ドアを閉じる際、ドアの内側面が本体の前面から突出したチューブに当って抵抗を受けると、弾性部材が浮動してヒンジ位置を前方に移動させるため、ドアは本体の前面に対して略平行に対面した状態となる。
【0013】
この状態で、本体の前面側のドアレバーを回動することによってドアの内側に突設された左右のフックを本体側の左右のフック受けに引掛け、さらにドアレバーを回動することによって左右のフックが左右のフック受けを引き寄せながら係合すると、ドアが、上記のように本体の前面に対して略平行を保った状態で本体の前面側に引き寄せられる結果、チューブを前方から略垂直方向に圧迫することができ、チューブを歪みのない状態で狭圧することが可能となる。
【0014】
従って、このように歪みのない状態でフィンガの前面に保持されたチューブは、チューブ内の送液を円滑に行なうことによって安定した送液を可能とし、本体に設けられた気泡センサや内圧センサに対して設計通りの検出環境を提供することとなるため、正確な気泡検出やチューブ内圧検出を行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明による輸液ポンプ1は、図1(a)又は(b)に示すように、本体2の前面に、操作パネルPを備えたドア3が設けられた構成とされている。このドア3は、図2に示すように、ドア3の側部の上下位置に取り付けられたヒンジ4a、4bを介して回動するものであり、本体2の前面側部には、ドア3に取り付けられたヒンジ4a、4bを回動自在に支承する弾性板バネ5が取り付けられている。
【0017】
このようなドア3の開閉構造について述べると、本実施例においては、図2又は図3に示すように、本体2の前面片側に縦方向に長いコ字形の収納溝6が形成され、この収納溝6内に、該収納溝6の形状と同様に縦方向に長いコ字形の金属板等による弾性板バネ5が取り付けられている。
【0018】
この板バネ5は、図3に示すように、収納溝6の上下の略中央箇所に前方側に浅い溝深さで固定用溝部6aが形成され、この固定用溝部6aに板バネ5の中央付近の離間箇所を止めネジ8、8で固定すると共に、板バネ5の上下端付近に設けられたネジ穴7a、7bに止めネジ8a、8bを遊挿し、この止めネジ8a、8bの遊びの範囲内で板バネ5の上下部を本体2の前後方向に弾性的に移動可能としている。
【0019】
さらに、上記の板バネ5は、図2に示すように、板バネ5の上下部において図示の左方に屈曲された上下の端部から前方水平に支承板9a、9bが形成され、この上下の支承板9a、9bの各軸穴10a、10bに挿通したピン11a、11bを介して、各ピン11a、11bをドア3の片側内面の上下位置に固定ネジ12a、12bで固定した上下のピン受け13a、13bで支承することによって、ドア3を水平方向に開閉するヒンジ4a、4bが構成されている。
【0020】
このような構成によって、ドア3は上下のヒンジ4a、4bを介して板バネ5の上下に回動自在に設けられ、板バネ5が本体2の前方に移動すれば、上下のヒンジ4a、4bの位置も前方に移動するものとなる。
【0021】
また、図2に示すように、本体2の前面の略中央には複数のフィンガF、F…が上下方向に配列された状態で設けられている。これらのフィンガF、F…は不図示のカム機構によって不図示のモータと連結され、該モータの駆動によって複数のフィンガF、F…が蠕動運動を行なうように構成されている。
【0022】
さらに、複数のフィンガF、F…の周囲にはチューブガイド14が本体2の前面に突出状態で形成され、チューブガイド14の上下位置に形成された位置決め溝14a、14bにチューブTを押込むことによって、該チューブTをチューブガイド14の上下位置で位置決めすることができる。なお、ドア3を閉じたとき、フィンガF、F…の前面に添設されたチューブTを押圧するチューブ受け15がドア3の内側に突設されている。
【0023】
また、ドア3の外側に設けたドアレバー18はドア3の左右に突出するフック16a、16bに連動して回動する構成とされている。なお、図3のフック16aは途中で破断した状態に図示している。この左右の各フック16a、16bはドア3の内部に設けられた回動軸(不図示)に支承されると共に、各フック16a、16bの外周面17a、17bは円弧形に形成され(図3参照)、ドアレバー18の引上げ動作及び押下げ動作に従動して、左右の各フック16a、16bは不図示の回動軸を中心に円弧状の軌跡を描いて上方へ回動する。
【0024】
このような構成により、ドアレバー18を上方に引上げたときは(図2の状態)、左右のフック16a、16bはドア3の内部方向に回動して収納されるが、ドアレバー18を押下げたときは(図1(a)の状態)、左右のフック16a、16bをドア3の内側から円弧状に上方へ回動しながら突出させることとなる。
【0025】
一方、上記のドア3に設けられた左右のフック16a、16bに対応して、本体2の前面のフィンガF、F…の左右にフック受け19a、19bが設けられている。このフック受け19a、19bは、ドア3の左右のフック16a、16bに係合される位置に設けられ、左右のフック16a、16bに下方から係合される軸部19(図3参照)を備えるものである。また、本体2側の左右のフック受け19a、19bの下部近傍には、ドア3の左右のフック16a、16bが回動したとき、各フック16a、16bの円弧形の外周面17a、17bが当接するフックガイド20a、20bが設けられ、これらのフックガイド20a、20bに設けられた勾配面によってフック16a、16bの回動動作を案内することが可能とされている。
【0026】
上記の構成によって、ドア3を閉じる際、ドア3の内側面が本体2の前面から突出したチューブTに当って抵抗を受けることにより、板バネ5が前方へ移動することによって、ヒンジ4a、4bもまた前方へ移動するため、ドア3を本体2の前面に対して略平行に対面した状態とすることができる。
【0027】
この状態で、本体2の前面側のドアレバー18を回動することによってドア3の内側に突設された左右のフック16a、16bを本体2側の左右のフック受け19a、19bに下方から引掛け、さらにドアレバー18を回動することによって、左右のフック16a、16bはフックガイド20a、20bの勾配面で案内されつつ、左右のフック受け19a、19bを引き寄せながら係合する。これによって、ドア3が、上記のように本体2の前面に対して略平行を保った状態で本体2の前面側に引き寄せられると、チューブTを前方から略垂直方向に圧迫する結果、チューブTを歪みのない状態で狭圧することが可能となる。
【0028】
また、本実施例の輸液ポンプ1には、図2に示すように、本体2の前面において、チューブガイド12の上側に位置決め溝14aが設けられ、チューブTを位置決め溝14aに嵌め込むと共に、チューブTを本体2の上縁に形成された嵌合溝22aに嵌合して本体2の上方に導き出すと、チューブTは、位置決め溝14aと嵌合溝22aとの間に設けられた気泡センサ23の前方の中心に添った定位置に位置決めされる。
【0029】
また、チューブガイド12の下側の位置決め溝14bの下方にはチューブTの閉塞状態を検知し得る内圧センサ24が設けられ、さらにその下方にはチューブクランプ25が設けられ、チューブTを上下の位置決め溝14a、14bに押込んだ状態で、チューブTをチューブクランプ25に嵌め込み、さらにチューブTを本体2の下縁に形成された嵌合溝22bに嵌合すると、チューブTは内圧センサ24の前方の中心に添った定位置に位置決めされる。
【0030】
従って、本実施例においては、上記のように、チューブTを上下の位置決め溝14a、14bで位置決めして、歪みのない状態でフィンガF、F…の前面に保持することにより、チューブT内の送液を円滑に行なうことが可能となり、安定した送液を可能とし、本体2に設けられた気泡センサ23や内圧センサ24等に対して設計通りの検出環境を提供することとなるため、正確な気泡検出やチューブT内圧検出を行なうことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の輸液ポンプは、輸液ポンプの本体の前面に設けられた複数のフィンガの上下位置で位置決めしたチューブをフィンガに添設した状態でドアを閉めた際、チューブが歪むことなく、ドアの内側で均等に狭圧保持されることにより、安定した送液を行なうと共に、気泡検知、チューブ内圧検知等を正確に行なうようにした輸液ポンプとして利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)は本発明による輸液ポンプの外観を示す正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明による輸液ポンプのドアを開いた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明による輸液ポンプのドアに設けられたヒンジと板バネとが形成された部位を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0033】
1 輸液ポンプ
2 本体
3 ドア
4a、4b ヒンジ
5 板バネ
6 収納溝
6a 固定用溝部
7 ネジ穴
8、8a、8b 止めネジ
9a、9b 支承板
10a、10b 軸穴
11a、11b ピン
12a、12b 固定ネジ
13a、13b ピン受け
14 チューブガイド
14a、14b 位置決め溝
15 チューブ受け
16a、16b フック
17a、17b 外周面
18 ドアレバー
19 軸部
19a、19b フック受け
20a、20b フックガイド
22a、22b 嵌合溝
23 気泡センサ
24 内圧センサ
25 チューブクランプ
F フィンガ
P 操作パネル
T チューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の前面に設けられた複数のフィンガに可撓性のチューブを位置決めすることにより該チューブをフィンガの前面に添設すると共に、本体の前面を閉塞するドアの側部に取り付けられたヒンジを介して回動するドアを閉じることによってチューブを狭圧保持する輸液ポンプにおいて、
ドアに取り付けたヒンジを回動自在に支承する弾性部材が本体の前後方向へ弾性的に移動するように構成され、該ドアを本体の前面に対して略平行に対面させた状態で閉じるようにしたことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
ドアを本体の前面に対して略平行に対面させた状態で閉じる際に、ドアの外側に設けたドアレバーを回動することによってドアの内側に突設したフックを回動し、夫々のフックを本体側のフィンガの左右に設けられたフック受けに引掛けることにより、該ドアを本体の前面側に引き寄せながら閉じるようにしたことを特徴とする請求項1記載の輸液ポンプ。
【請求項3】
弾性部材は、弾性板バネであることを特徴とする請求項1又は2記載の輸液ポンプ。
【請求項4】
弾性部材は弾性板バネであって、該弾性板バネは本体の前面において複数箇所に設けられたネジで係止されると共に、夫々のネジに遊びを設け、この遊びの範囲内で本体の前後方向に弾性的に移動可能としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の輸液ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−285054(P2009−285054A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139642(P2008−139642)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【特許番号】特許第4348566号(P4348566)
【特許公報発行日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000138037)株式会社メテク (11)
【Fターム(参考)】