説明

輸送手段の輸送料金決定方法および輸送料金決定装置

【課題】例えば、乗車地点および目的地のいずれかまたはいずれも異なる者同士が輸送手段に相乗りするときの輸送料金を決定する決定方法および決定装置を提供する。
【解決手段】輸送手段3にお客が乗車したときごとおよび輸送手段からお客が降車するときごとに、走行距離等に応じて算出された輸送料金指標を記憶装置に記憶し、かつそのときの輸送料金指標とそれ以前の最新の輸送料金指標との差をお客が乗車する前またはお客が降車する前の乗客数で除した区間乗車料金指標を記憶し、および新たな乗客数を記憶し、お客の乗車料金を記憶された区間乗車料金指標の積算に基づいて決定する。(#33)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタクシー等の輸送手段に乗客が相乗りする場合の個別の輸送料金の決定方法および決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、運送距離等に応じて運賃が決定されるタクシーでは、乗車地点から料金メータに積算された運賃でサービスを提供するようになっており、経済単位が異なる複数の利用者が相乗りをして一人当たりの運賃の低減を図るということは、大都市近郊の駅において深夜に運行ルートが同じ者同士が一律料金を支払って乗車し、途中で徐々に乗客が降車する、深夜限定のタクシー主導の相乗りが行われているという僅かに例外を除き、従来なされていなかった。
そのような事情から、乗車地点が同じで目的地までの経路が同じあっても下車する場所が異なる場合には、利用客はそれぞれ別々の車両に乗車し、相乗りした場合に比べて割高な利用料金を支払う必要があった。
【0003】
また、タクシー業者等のサービスの提供側も、目的地が異なる他人同士は相乗りせずに別個のタクシーに乗車することが一般的なために、これに対応させた多くの数の車両と運転手とを準備しておかねばならず、設備費(車両)および人件費(運転手)の両面で大きな負担を強いられていた。
また、このような非効率的な運送により運行する車両の数が増加し、交通渋滞および排気ガスによる大気汚染等を助長するという問題もある。
特許文献1には、乗車地点および目的地のいずれかまたはいずれも異なるユーザ同士が相乗りをする場合に、ユーザ(乗客)、車両に搭載された端末およびサーバをインターネット等の通信手段で接続し、ユーザの希望(支払限度額、配車時間等)および車両の走行位置から適切な車両の配車および料金を決定し、乗客(ユーザ)同士で料金を割り勘にする方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、例えば旅行等で到着する駅または空港から目的地までタクシーで行きたい場合等において、旅行者は携帯端末から通信ネットワークを介して仲介装置に接続し、サービス提供者が提示するリストから目的地、時間等を勘案して希望する相乗り予約を指定する相乗り方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004−362271号公報
【特許文献2】特開2005−18697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示された発明は、いずれも主として相乗りのための配車に関するものであり、相乗りしたときの乗車料金をどのようにして各乗客に按分するかについては詳細に開示されてはいない。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、従来のサービス形態も維持しつつ、乗車地点および下車地点が異なる乗車客または積み込み場所および配送先が異なる搬送物を個別に管理でき、個々の精算を可能とし、様々な形態の相乗り乗車または混載を実現し、利用者の負担(料金)を軽減し、かつ運搬サービス提供側に対しても適正配車に伴う従事者の利益を担保するとともに、絶対車両数の減少を通じ、渋滞緩和、排ガス規制、エネルギー対策に貢献できるシステム、つまり乗車または積み込み地点および目的地のいずれかまたはいずれも異なるときの輸送料金を決定する決定方法および決定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る輸送料金決定方法は、輸送手段にお客が乗車したときまたは搬送物を載せたときごとおよび前記輸送手段からお客が降車するときまたは搬送物を降ろすときごとに、走行距離および/または輸送時間に応じて算出された輸送料金指標を記憶装置に記憶し、かつ、そのときの輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を、前記お客が乗車する前もしくは前記お客が降車する前の前記記憶装置に記憶された乗客数で除した区間輸送料金指標または前記搬送物を載せる前もしくは前記搬送物を降ろす前の前記記憶装置に記憶された搬送物数で除した区間輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、および新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、降車するお客の乗車料金または降ろす搬送物の搬送料金を前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標の積算に基づいて決定する。
【0007】
他の本発明に係る輸送料金決定方法は、輸送手段にお客が乗車したときまたは搬送物を載せたときごとに、前記お客を識別するためのまたは前記搬送物を識別するための識別コードと走行距離および/または輸送時間に応じて算出された輸送料金指標とを記憶装置に記憶し、前記輸送手段からお客が降車するときまたは搬送物を降ろすときごとに、そのときの輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、かつ、前記輸送手段にお客が乗車したときまたは搬送物を載せたときごとおよび前記輸送手段からお客が降車するときまたは搬送物を降ろすときごとに、そのときの輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を、前記お客が乗車する前もしくは前記お客が降車する前の前記記憶装置に記憶された乗客数で除した区間輸送料金指標または前記搬送物を載せる前もしくは前記搬送物を降ろす前の前記記憶装置に記憶された搬送物数で除した区間輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、および新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、降車するお客または降ろす搬送物を前記識別コードにより識別し当該お客または当該搬送物の輸送料金を前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標の積算に基づいて決定する。
【0008】
ここで、決定されたお客の乗車料金は、例えば、車内に設けられた表示装置に乗車地点とともに一覧表示される。お客は、例えば乗車時に自動発行された乗車カードの乗車地点を表す番号を参考に自らの乗車料金を知ることができる。
搬送物の輸送料金は、例えば、配送地点に到着したときに配送物に付された荷物番号等とともに輸送手段に設けられた表示装置に表示される。
前記記憶装置を前記輸送手段の管理センターに設置し、前記記憶装置と前記輸送手段とを無線通信手段により接続するようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る輸送料金決定装置は、お客または搬送物を輸送する輸送手段に設けるための入力装置と、前記入力装置との間で情報を送受信可能または前記入力装置から情報を受信可能な演算装置と、前記演算装置からの情報を受信可能であり前記輸送手段に設けるための出力装置と、を有し、前記演算装置は、前記入力装置から受信した情報、前記輸送手段に設けられた走行距離および/または輸送時間に応じて輸送料金指標を算出する料金メータから受信した輸送料金指標、および前記輸送手段の乗客数または搬送物数を記憶する記憶装置を有し、前記演算装置は、前記入力装置から情報を受信するごとに、前記料金メータから輸送料金指標を受信して受信した前記輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を前記記憶装置に記憶された乗客数または搬送物数で除した区間輸送料金指標および受信した前記輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、かつ前記情報がお客の乗車時もしくは降車時のものかまたは搬送物を積せた時もしくは降ろした時のものかを判別して新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、かつ、少なくとも前記情報がお客の降車時または搬送物を降ろす時のものであると判別したときに前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標を積算して決定した輸送料金を前記出力装置に送信するように構成されてなる。
【0010】
好ましくは、前記演算装置が前記入力装置から受信する情報には、前記お客を識別するためのまたは前記搬送物を識別するための識別コードが含まれ、前記演算装置は、前記輸送手段から降車するお客または降ろす搬送物を前記識別コードにより識別して前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標を積算して前記輸送料金を決定する。
好ましくは、前記出力装置が平面型ディスプレイ装置である。
前記出力装置をカーナビゲーション装置のディスプレイ装置とすることができる。
【0011】
他の本発明に係る輸送料金決定装置は、演算装置と記憶装置とを有し、前記演算装置は、輸送手段が送信するお客の乗降または搬送物の積み降ろしに関する情報を受信するごとに、前記輸送手段に設けられた走行距離および/または輸送時間に応じて輸送料金指標を算出する料金メータから輸送料金指標を受信して前記記憶装置に記憶し、受信した前記輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を前記記憶装置に記憶された乗客数または搬送物数で除した区間輸送料金指標および受信した前記輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、かつ前記情報がお客の乗車時もしくは降車時のものかまたは搬送物を載せた時もしくは降ろした時のものかを判別して新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、かつ、少なくとも前記情報がお客の降車時または搬送物を降ろす時のものであると判別したときに前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標を積算して決定した輸送料金を前記輸送手段に送信するように構成されてなる。
【0012】
前記演算装置は、輸送手段に搭載されているもののほか、例えば輸送手段を運行する事業所等に配置され、輸送手段と無線通信手段により接続されているものも含まれる。
前記「輸送手段」は、例えばタクシー、ワンボックスワゴン車を使用する大型タクシー、マイクロバス、バスおよび路面電車等の乗客輸送手段、または宅配便などを輸送する貨物自動車などをいう。「区間輸送料金指標」は、例えばタクシーの料金メータのように走行距離および/または乗車時間によって決められる乗車料金または金銭に換算可能な乗車ポイント等をいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、乗車地点および目的地のいずれかまたはいずれも異なる者同士が相乗りするときの乗車料金を按分する按分方法および按分装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る乗車料金算出装置1の構成を示す図、図2は入力装置2の斜視図、図3は車外表示装置4の概略図である。
乗車料金算出装置1はタクシー3の乗車料金を算出し表示するためのものである。
図1において、乗車料金算出装置1は、入力装置2、車外表示装置4、料金メータ5、演算装置6、車内表示装置7および外部記憶装置8などからなる。
入力装置2は、運転手がタクシー3の運行目的地または運行ルートを入力し、および乗客を識別するためのものである。入力装置2は、数字ボタン9(テンキー)、複数の機能ボタン10a〜10d、表示部11および読み取り部12を備えている。数字ボタン9は、押下される番号により運行目的地または運行ルートを選定するためのものである。表示部11は、識別コードと8桁の数字とを同時に表示可能なLED表示器である。入力装置2は、タクシー3の運転席から操作できる場所に設置される。入力装置2は演算装置6に接続されており、入力された情報を演算装置6に発信し、演算装置6が算出した結果を受信して表示する。
【0015】
車外表示装置4は、タクシー3の運行目的地または運行ルートを表示するためのものである。車外表示装置4は、遠方から確認可能なやや大きめの文字表示が可能なLED表示盤であって、タクシー3の屋根に設置される。車外表示装置4は演算装置6に接続されており、入力装置2が発信した情報に対応する文字情報を演算装置6から受信して表示する。
料金メータ5は、タクシー3運賃を表示するためのものである。料金メータ5は、従来より使用される公知の料金メータに、表示された料金および走行距離をデジタル化して送信する機能を付加したものである。料金メータ5は演算装置6に接続されており、一定の短周期で料金情報および走行距離を演算装置6に発信する。
【0016】
料金メータ5は、相乗り時における乗客定員分の個別乗車料金が表示でき、さらに個別乗車距離が表示可能なものを使用することができる。
料金メータ5はダッシュボード中央に設置される。
演算装置6は、乗客ごとのタクシー料金の算出およびそれに関する種々の処理を行うためのものである。演算装置6はCPUおよびプログラムなどが記憶されたROMからなる演算部13ならびに情報が常時書き換え可能なRAMからなる記憶部14で構成される。演算装置6には、入力装置2、車外表示装置4、料金メータ5、車内表示装置7および外部記憶装置8が双方向または一方向に通信可能に接続される。
【0017】
車内表示装置7は、タクシー料金をはじめとしてタクシー3の運行に関する種々の情報を表示するためのものである。車内表示装置7は、タクシー3の前列よび後列にそれぞれ1台ずつ、運転手および定員乗車時の乗客が見ることが可能な位置に配置される。車内表示装置7は演算装置6が処理した情報を表示する。車内表示装置7は、車載用のLCD(液晶)表示装置が使用される。
外部記憶装置8は、演算装置6が処理したタクシー3の運行に関する種々の情報を記憶し、演算装置6が必要とする情報を演算装置6に供給するためのものである。外部記憶装置8には、演算装置6に着脱が可能な可搬式のハードディスクまたは大容量メモリカードなどが用いられる。外部記憶装置8に固定式のハードディスクが使用される場合には、これとは別に可搬式ハードディスクまたはメモリカードなどがジャーナルデータの移動用に用いられる。
【0018】
次に、相乗り時の乗車料金算出装置1の動作等について説明する。
図4は演算装置6の乗客乗降時における動作を示すフローチャート、図5は演算装置6の乗車料金按分時における動作を示すフローチャートである。
〔乗車料金按分例1〕
タクシー3の相乗りは、大都市通勤圏内の乗降客が多い鉄道の駅からその近辺の住宅街に向けて行われることが多く、このような駅での相乗りは、空車状態から運行ルートを共通とする複数の乗客が1度に(同一乗車地点から)乗車し、途中で順次降車するのが通常である。
【0019】
そこで、初めに、同一乗車地点から乗客定員分の乗客A1〜A5が乗客定員が5人のタクシー3に乗車し次々に降車する場合について、図4および図5を参照しながら説明する。
乗車料金算出装置1が取り付けられたタクシー3は、空車時には車外表示装置4に「相乗り可能」等の表示がなされ(図3(a))、タクシー3を利用しようとする者に相乗りが可能なタクシー3であることを知らせる(#11)。
1人目の乗客A1がタクシー3に乗車すると、運転手は空車表示を消して乗客A1に行き先と相乗り希望かどうかを問い合わせる。乗客A1が相乗り希望であれば、運転手は入力装置2の機能ボタン10a〜10dの中の相乗り表示ボタン10aを押下する。
【0020】
運転手は、数字ボタン9から乗客A1が告げた行き先に対応する運行目的地または運行ルート(以下「運行ルート」ということがある)と関連づけられたルート番号を入力装置2に入力する。入力装置2に入力されたルート番号は演算装置6に送信される。演算装置6は、記憶部14に記憶されたルート番号と運行ルートとを関連づけたデータ配列の中から受信したルート番号に対応する運行ルートを抽出して、「相乗り可能」等の表示に換えて車外表示装置4に運行ルートを表示させる(図3(b))(#12〜14)。
続いて運転手は乗客A1からクレジットカードを受け取り、入力装置2のカード読み取り部12でカード番号を読み取って乗客A1に返却する。入力装置2は、カード番号を演算装置6に送信する。
【0021】
乗客A1がクレジットカードを所持せず、またはクレジットカードを差し出さない場合には、運転手は、識別コードが磁気情報として記録された予め用意した乗車カードを、入力装置2で識別コードを読み取った後に乗客A1に渡す。乗車カードには乗客定員数5までの各番号が記載され、それぞれに異なる識別コードが記録されている。
クレジットカードおよび乗車カードは、乗車時および降車時の乗客を識別するためのものである。乗客の識別は、クレジットカードの他、入力装置2で読み取れる他のカード、例えばレンタルビデオ会員カード、量販店のポイントカードを利用して行うことができる。
【0022】
カード番号または識別コード(以下「識別コード等」ということがある)を受信した演算装置6は、記憶部14に乗客定員の数だけ用意されたメータ番号(記憶部14における乗客定員の数の記憶領域(メモリ番地)を特定するもの)の中の空きメータ番号(識別コード等が格納されていない記憶領域を特定するメータ番号をいう)を検索して、いずれかの空きメータ番号と乗客A1に関する乗車情報を格納するデータ配列を特定するデータ番号N1とを関連づけて記憶する(#15〜17)。また、演算装置6は、受信した識別コード等が識別コードのときは、識別コードに判別コードを加えて記憶する。タクシーの運行時に同一番号の乗車カードが繰り返し使用されるので、乗車記録において後に同一乗車カードを使用する乗客に付される識別コードと区別するためである。
【0023】
ここで、データ番号N1は、乗客に関するデータを格納するデータ配列D(I,J)(図6参照)の中から乗客A1の乗車情報D(N1,J)(I=N1,J=1〜6)を特定するための番号である。データ番号N1は、乗客が1人乗車するごとに付される連番であって1度使用されたデータ番号と同一のデータ番号はジャーナルデータ整理前には使用されることがないように設定されている。データ番号N1は、演算装置6が受信した識別コード等が既にメータ番号と関連づけられたデータ番号Iと同一でない場合に、乗客が乗車したと判断して付される(#15、#16)。
【0024】
データ番号N1と関連づけられた空きメータ番号は、乗車メータ番号(識別コード等が格納された記憶領域を特定するメータ番号をいう)に変更される。そして、演算装置6は、記憶部14の乗客数格納部(メモリ)に記憶された乗客数(この場合は0)を1に置き換え、料金メータ5からそのときの走行距離(0である)を受信し、受信した走行距離および識別コード等をデータ番号N1と関連づけて記憶部14に記憶する。また、受信した料金は料金格納部に記憶される(#17)。
演算装置6は、運行ルートに加えて現在の相乗り可能乗客数も車外表示装置4に表示させる(図3(b))。相乗り可能乗客数は、予め記憶部14に記憶させた乗客定員から乗客数格納部に記憶された乗客数を差し引いた値として演算装置6により求められる(#17)。
【0025】
続いて同一の運行ルート上に目的地がある2人目の乗客A2がタクシー3に乗車すると、運転手は、クレジットカードまたは乗車カードを入力装置2で読み取り、識別コード等が演算装置6に送信される。演算装置6は、入力装置2から識別コード等を受信すると、識別コード等の入力(受信)が新たな乗客が乗車したときのものか乗客が降車するときのものかを判別する(#15、#16)。
演算装置6は、識別コード等の入力が新たに乗車したときのものと判断すると空きメータ番号を抽出し、受信した識別コード等に付されたデータ番号N2と抽出したいずれかの空きメータ番号とを関連づけて記憶する(#17)。
【0026】
空きメータ番号を抽出するときに乗車メータ番号(既に乗車している乗客)が存在することを検出すると、演算装置6は料金メータ5から料金および走行距離を取り込み、乗車メータ番号に関連づけられたデータ番号の乗客について乗車地点からの区間料金および乗車距離を算出する。区間料金は乗客A1の暫定料金(図AAのD(N1,3))に加算され、取り込まれた走行距離は記憶部14に記憶された乗客A1の乗車時の走行距離との差が求められて、求められた差は記憶部14に乗客A1の乗車距離(図AAのD(N1,4))として記憶される(#17)。
【0027】
なお、以下の説明において、乗客の乗降地点から次の乗降地点までの1人当たりの乗車料金を「区間料金」といい、特定の乗客が乗車した地点から降車する地点までの乗車料金を「乗車料金」という。
演算装置6は、記憶部14の乗客数格納部に記憶された乗客数(この場合は1)を2に置き換える。また、演算装置6は料金メータ5から取り込んだ走行距離および識別コード等をデータ番号N2と関連づけて記憶部14に記憶する(#17)。
ここで、本按分例1では乗客A2の乗車地点が既に乗車している乗客A1と同じであるため、乗客A1の乗車情報に加算される区間料金および置換される乗車距離はいずれも0である。
【0028】
以下、乗客A3〜A5乗車時にも、乗車料金算出装置1は乗客A1,A2の乗車時の場合と同じように動作し、データ番号は空きメータ番号のいずれかと関連づけられて記憶され、識別コード等はデータ番号N3〜N5と関連づけられて記憶部14に記憶される。
車外表示装置4に表示された相乗り可能乗客数は、演算装置6によって乗客定員から乗客数格納部に記憶された乗客数を減じた値に順次変更される。
乗客A5が乗車し乗客が定員になるまで、または乗車する乗客がいなくなるまで、上記した運転手の作業および乗車料金算出装置1の動作が繰り返される。識別コード等、走行距離、暫定料金および乗車距離は、図6に示されるようにデータ番号N1〜N5のデータ配列D(I,J)(I=N1〜N5,J=1〜3)として記憶部14に記憶される。各データ番号Iに関連づけられたデータは、最初の乗車料金の支払い前、つまりこれらのデータに対応する乗客A1〜A5がタクシー3に乗車中は、乗車メータ番号1〜5に関連づけられて管理される。
【0029】
本按分例1においては、図7に示されるように、タクシー3が発進した時のデータ配列D(I,J)の識別コードD(I,1)には識別コード等が格納されており、走行距離D(I,2)、暫定料金D(I,3)、乗車距離D(I,4)および支払料金D(I,5)にはいずれも零が格納されている。図7において、乗客A3の識別コード「3−02」における「−02」は、、乗客A3がメータ番号(3)についての2巡目の乗客であることを示す。
運転手は、タクシー3を発車させ(#20)、料金メータ5の積算を開始させる(#21)。
【0030】
最初の目的地(以下「第1目的地」という)にタクシー3が到着し、例えば乗客A1が降車するときは、運転手は乗客A1からクレジットカードまたは乗車カードを受け取って、入力装置2によりカード番号または識別コードを読み取る。読み取られた識別コード等は入力装置2から演算装置6に送信される(#31)。
演算装置6は、受信した識別コード等を乗車メータ番号に関連づけられたデータ番号Iの識別コードD(I,1)(I=N1〜NN)に格納された識別コード等と照合し、照合対象の識別コード等のいずれかと同一(識別コード等の受信が2回目)のときには、受信した識別コード等に対応する乗客が降車する場合であると判断する(#32)。そこで、演算装置6は、料金メータ5が周期的に送信する料金および走行距離を取り込み、乗客数格納部から乗客数を読み込んで第1目的地までの各乗客A1〜A5の区間料金および乗車料金を算出し、車内表示装置7に表示する(#33)。また、演算装置6は、同時に入力装置2の表示部11に乗客A1の乗車料金を表示する(#33)。取り込まれた走行距離は、各乗客A1〜A5の走行距離D(I,2)との差が算出され、算出されたそれぞれの差が乗車距離D(I,4)に格納される。
【0031】
乗客A1の乗車料金の算出は、次のようにして行われる。
図6を参照して、演算装置6は、乗車メータ番号に割り当てられたデータ番号Iのデータ配列D(I,J)を対象に区間料金を算出する。演算装置6は、料金メータ5から受信した料金と料金格納部に記憶された料金(この場合0円)との差(区間メータ料金)を乗客数格納部に記憶された乗客数で除し、出発地点から第1目的地までの1人当たりの区間料金を求める。
続いて、演算装置6は、求めた区間料金を、乗車メータ番号に割り当てられた各データ番号Iにおける暫定料金D(I,3)の値に加算する。加算された暫定料金D(I,3)は、乗客A1〜A5の第1目的地までの乗車料金である。乗車料金の算出後、乗客A1〜A5全員の各乗車料金が車内表示装置7に表示される。
【0032】
図8は、第1目的地までのメータ料金600円を各乗客A1〜A5に按分した場合の車内表示装置7の表示例である。図8において、「お客様」列には乗客A1〜A5を識別するクレジットカード番号の下4桁または乗車カードに記載された番号(メータ番号)が表示される。また、「お客様」列に偶然同一である番号が2つ表示されないように、クレジットカード番号の下4桁とともにクレジット会社名も表示され、乗客識別に極力混乱を生じさせないように工夫されている。図8における、区間料金の欄は出発地点から第1目的地までの区間料金、現在の区間料金の欄は各乗客に按分された出発地点から第1目的地までの区間料金、乗車距離は出発地点から第1目的地までの各乗客A1〜A5の乗車距離、[相乗モード]欄は出発地点から第1目的地までのメータ料金、および乗車料金は各乗客A1〜A5の乗車地点から第1目的地までの乗車料金である。
【0033】
車内表示装置7は、乗客A1(乗車メータ番号(1))に関する表示が反転されて乗客A1の乗車料金の支払いが求められていることを知らせる。支払いが求められた乗客A1に関する表示を反転させないで、点滅表示または色分け表示するようにしてもよい。
乗客A1が乗車料金を運転手に支払うと、運転手は、支払われた金額が入力装置2に表示された乗車料金かどうか確認した後、入力装置2の+キーおよびEnterキーを順に押して入力装置2から演算装置6に向けて入金されたことを送信する。
また、乗客A1がクレジットカード決済を希望する場合には、運転手は乗客A1からクレジットカートを受け取り、入力装置2にクレジットカードの所定の情報を読み込ませて演算装置6に送信させる。
【0034】
入金があったことまたはクレジットカードの情報を受信した演算装置6は(#34)、支払い方法に応じたコードを支払方法D(A1,6)に格納する(#35)。
これらの乗車料金の入金に関する処理等を終えた演算装置6は、乗客A1の乗車料金を支払料金D(A1,5)に記憶させる。また、演算装置6は、乗車料金が支払われたデータ番号N1と関連づけられた乗車メータ番号(1)を空きメータ番号(1)に変更し、乗客数格納部に記憶された乗客数から1を減じ、料金格納部を受信した料金に更新し、入力装置2に表示された乗客A1の乗車料金を消去する(#35)。
【0035】
以上の処理を終えた演算装置6は、乗客A1についての乗車料金その他運行に関するデータ配列D(N1,J)に格納された情報を外部記憶装置8に記憶する。
なお、外部記憶装置8に記憶された情報は、タクシー3の運行報告等の作成に利用される。
次の目的地(以下「第2目的地」という)にタクシー3が到着し、例えば乗客A2が降車するときも、上に説明した乗客A1が降車するときと同様に、運転手はクレジットカードまたは乗車カードから識別コード等を入力部で読み取って演算装置6に送信する。演算装置6は、受信した識別コード等と料金メータ5から受信した料金とから、乗客A2の乗車料金を算出して入力装置2の表示部11に表示し、同時に他の乗客A3〜A5の乗車料金とともに車内表示装置7に表示する。
【0036】
乗客A2の乗車料金は次のようにして算出される。
演算装置6は、乗車メータ番号に割り当てられたデータ番号Iのデータ配列D(I,J)を対象に区間料金を算出する。演算装置6は、料金メータ5から受信した料金と料金格納部に記憶された料金(出発地から第1目的地までのメータ料金)との差(区間メータ料金)を乗客数格納部に記憶された乗客数−1で除し、第1目的地から第2目的地までの1人当たりの区間料金を求める。料金メータ5から受信した走行距離は乗客A2〜A5の走行距離D(I,2)との差が算出され、算出されたそれぞれの差が乗客A2〜A5の乗車距離D(I,4)に格納される。
【0037】
次に、演算装置6は、求めた区間料金を、乗車メータ番号に割り当てられた各データ番号Iにおける暫定料金D(I,3)の値に加算する。その結果、暫定料金D(I,3)には各乗客A2〜A5の出発地点から第2目的地までの乗車料金が格納される。
図9は、第2目的地に到着し乗客A2の乗車料金が算出された後の車内表示装置7の表示例である。図9において、区間料金の欄は第1目的地から第2目的地までの区間料金、現在の区間料金の欄は各乗客に按分された第1目的地から第2目的地までの区間料金、乗車距離は出発地点から第2目的地までの各乗客A2〜A5の乗車距離、[相乗モード]欄は出発地点から第2目的地までのメータ料金、および乗車料金は各乗客A2〜A5の乗車地点から第2目的地までの乗車料金である。
【0038】
乗客A2が車内表示装置7に表示された自らの乗車料金を運転手に支払うと、運転手は、支払われた乗車料金を確認した後、入力装置2の+キーおよびEnterキーを順に押して入力装置2から演算装置6に向けて入金されたことを送信する。
乗客A2がクレジットカード決済を希望する場合には、運転手は乗客A2からクレジットカートを受け取り、入力装置2にクレジットカードの所定の情報を読み込ませて演算装置6に送信させる。乗車料金が入金されると、演算装置6は、支払い方法に応じたコードを支払方法D(A2,6)に格納する(#35)。
【0039】
乗客A2の乗車料金の入金等に関する処理を終えた演算装置6は、乗客A2の乗車料金を支払料金D(A2,5)に記憶させる。また、演算装置6は、乗車料金が支払われたデータ番号N2と関連づけられた乗車メータ番号(2)を空きメータ番号に変更し、乗客数格納部に記憶された乗客数−1から1を減じ、料金格納部を最新の料金に置き換え、入力装置2に表示された乗客A2の乗車料金を消去する(#35)。
図10は、演算装置6が乗客A2の乗車料金の支払いを処理した後のデータ配列D(I,J)の内容を示す図である。実際には、データ番号N1,N2の各内容は、乗車料金の支払い処理が行われると外部記憶装置8に記憶され、その後に消去されて新たな乗客の乗車に備える。
【0040】
以上の処理を終えた演算装置6は、乗客A2についての乗車料金その他運行に関するデータ配列D(N2,J)に格納された情報を外部記憶装置8に記憶する。
これ以降における乗客A3〜A5のそれぞれの降車時も、運転手は上に説明した作業を行い、乗車料金算出装置1は上に説明した動作を行う。図11は外部記憶装置8に記憶されたデータ配列D(I,J)の内容を示す図である。
乗客A1〜A5全員が降車すると、運転手は料金メータ5を空車表示に変更し、相乗り表示ボタンを戻して車外表示装置4の表示を運行ルートから「相乗り可能」に変更する。
【0041】
図12は、5人の乗客A1〜A5が同一の出発地点で乗車し、順次降車した場合の各乗客A1〜A5が支払う乗車料金を乗車料金算出装置1が求めた例を示す図である。図12に示されるように、タクシー3の乗車を相乗りにすることにより1人当たりの乗車料金を低減させることができる。また、タクシー業者にとっても、相乗り客の中から最も遠い乗客の目的地まで営業運行できるので、効率よく売り上げを増加させることができる。
〔乗車料金按分例2〕
次に相乗り運行中に次々に乗客が乗り込み降車する場合について説明する。図13は乗客B1〜B4の乗降の様子を示す図である。
【0042】
走行するタクシー3には既に相乗り希望の1名の乗客B1が第1地点で乗車し、タクシー3の車外表示装置4には運行ルートと相乗り可能乗客数とが表示されている。また、記憶部14には乗客B1に関する識別コード等、走行距離、暫定料金、乗車料金、支払料金および支払い方法等を格納する配列D(P1,J)が確保されている。識別コードD(P1,1)には乗客B1に対して乗車時に割り当てられた識別コード等が記憶され、走行距離D(P1,2)には乗客B1が乗車したときに料金メータ5から採取した走行距離が記憶されている。暫定料金D(P1,3)、乗車距離D(P1,4)、支払料金D(P1,5)および支払方法D(P1,6)には0が記憶されまたはブランクになっている。
【0043】
なお、乗客B1の乗車時における運転手の作業および乗車料金算出装置1の動作は、上に説明した乗客A1の乗車時におけるものと同じである。
図4を参照して、タクシー3が相乗り運行中に、車外表示装置4に表示された運行ルート上に目的地がある乗客B2がタクシー3を第2地点で停止させ乗車すると、運転手は上に説明した乗客A2に対して行ったと同様にして入力部から識別コード等を演算装置6に送信する。
演算装置6は、識別コード等から識別コード等の入力(受信)が乗車時のものか降車時のものかを判別し(#15、#16)、識別コード等の入力が乗車時のものと判断すると空きメータ番号を抽出し、受信した識別コード等を格納するデータ配列D(I,J)を特定するためのデータ番号P2と抽出したいずれかの空きメータ番号とを関連づけて記憶する。また、演算装置6は、料金メータ5から走行距離および料金を取り込み、走行距離を走行距離D(P2,2)に格納する(#17)。
【0044】
続いて演算装置6は、乗客B1についての第1地点から第2地点までの区間料金を算出する。区間料金は、料金メータ5から受信した料金と料金格納部に記憶された料金(乗客B1が乗車時のメータ料金=0円)との差を乗客数格納部に記憶された乗客数(この場合1)で除して求める。求められた区間料金は、乗客B1についての暫定料金D(P1,3)に加算される。料金メータ5から取り込まれた走行距離と乗客B1の走行距離D(I,2)との差が求められ、求められた距離の差により乗車距離D(I,4)が置換される(#17)。
【0045】
図14は、乗客定員が5人のタクシー3に乗客B2が乗車したときのデータ配列D(I,J)の内容を示す図である。図14において、乗客B2の識別コード「2−05」における「−05」は、乗客B2がメータ番号(2)についての5巡目の乗客であることを示す。
記憶部14の乗客数格納部に記憶された乗客数1は2に更新され、料金格納部の料金は料金メータ5から取り込まれた料金に書き換えられる。相乗り可能乗客数の表示も、乗客定員数から乗客数2が差し引かれた数字に変更される。
【0046】
この時点で、2つのメータ番号がデータ番号P1,P2に関連づけられている。
さらに乗客B3,B4がそれぞれ第3地点および第4地点で乗車すると、それぞれの乗車時点で第2地点から第3地点までおよび第3地点から第4地点までの1人当たりの区間料金が算出され、乗客B2の場合と同様に識別コードD(P3,1),D(P4,1)および走行距離D(P3,3),D(P4,2)に所定の値が格納され、暫定料金D(P3,3),D(P4,2)が加算され、および乗車距離D(P3,4),D(P4,4)が更新される。
【0047】
図15は、乗客B1〜B4が乗車したときのデータ配列D(I,J)の内容を示す図である。
さらにタクシー3が運行ルート上を走行し、図13に示される走行距離が6.5kmおよびメータ料金が1950円の第5地点で乗客B2が降車する場合の乗客B2の乗車料金の算出は、次のようにして行われる。なお、乗客B2が降車するときの運転手の作業および以下に説明する以外の演算装置6の動作は、乗車料金按分例1に記載したものと同じである。
【0048】
入力装置2から識別コード等を受信した演算装置6は、料金メータ5から料金および走行距離を取り込み乗客数格納部から乗客数を読み込んで、第4地点から第5地点までの区間料金を算出する。算出された区間料金は各乗客B1〜B4の暫定料金D(I,3)に加算される。加算された結果の各暫定料金D(I,3)は、乗客B2の行が反転されて車内表示装置7に表示され、乗客B2の乗車料金は入力装置2の表示部11に表示される(図5における#32、#33)。
図16はこのときの車内表示装置7の表示例を示す図、図17は乗車料金の支払い処理が行われた直後のデータ配列D(I,J)の内容を示す図である。
【0049】
乗客B2についての乗車料金支払い処理が終了すると(#34)、乗客B2に関する全情報はデータ番号P2に関連づけられて外部記憶装置8に記憶され、対応したメータ番号(2)は空きメータ番号として扱われる(#35)。
タクシー3は乗客定員を超えない範囲で、運行ルート上で乗客を乗車させまたは乗客を降車させて、その都度上に記載した乗車料金の按分処理を行う。
このようにタクシー3を運行させることで、乗客1人1人の乗車距離が管理でき乗車料金が求められるので、相乗り乗客の運賃決定が透明化され乗客の不公平感を取り除くことができる。そして、利用者は乗車料金が乗客数で割り勘にされ割安感が大きいので乗車し易くなり、タクシー業者はタクシー3の稼働率の向上が期待できる。
【0050】
また、乗車料金算出装置1をマイクロバスなどによる大型タクシーに装備し、乗車料金を乗車距離に応じたものとして決められた運行ルート上を周回する路線バス的運行をすれば、利用者は乗車場所および降車場所を自由に選ぶことができ、かつ低料金で利便性を得ることができる。タクシー業者は、路線バスのように乗客の数で採算性が左右されることなく安定した収益を上げることができる。
次に、ジャーナルデータについて説明する。
図18はジャーナルデータの構成例を示す図、図19,20はジャーナルデータの整理例を示す図である。
【0051】
ジャーナルデータは、図18に示される各項目で構成され、演算装置6が入力装置2から識別コードを受信するごとに、上に記載した所定の処理(#17、#35)の後に演算装置6が管理するメータ番号の数に応じた新しいジャーナルデータが外部記憶装置8に記憶される。
例えば、新たに乗客がタクシー3に乗車した場合および乗客が降車した場合には、乗客が乗車した後の各メータ番号が空きメータ番号か乗車メータ番号かを識別するフラグ(JD(M,2))、メータ番号に関連づけられた個人識別コード(JD(M,3))、乗降地点情報(JD(M,4))、区間距離(JD(M,5))、区間料金(JD(M,6))、乗客数(JD(M,7))、区間精算料金(JD(M,8))、課金コード(JD(M,9))、未精算計(JD(M,10))、決済区分(JD(M,11))、決済額(JD(M,12))および振替先コード(JD(M,13))が、図18における管理番号M1〜M5について作成され、これらが一括して外部記憶装置8に記憶される。
【0052】
ここで、個人識別コード(JD(M,3))は乗客を識別するためのものであり乗車時に読み込まれたクレジットカードのカート番号である。クレジットカードを提示しなかった乗客は乗車カードに記録された識別コードが記録される。乗降地点情報(JD(M,4))は運行ルート上の特定の場所または特定の範囲を示すコードであり、運転手により入力装置2から入力されて演算装置6に送信される。乗客数(JD(M,7))は、新たに乗客がタクシー3に乗車した場合および乗客が降車した場合のいずれも乗車前または降車前の乗客の数、つまり区間料金(JD(M,6))を算出するための乗客の数が記憶される。
【0053】
区間精算料金(JD(M,8))は、区間料金(JD(M,6))の支払いがなされると区間料金(JD(M,8))と同じ値が記憶され、例えばタクシーの営業運行の途中で一定の時間に行われる精算済み売り上げ額の集計および営業運行後のジャーナルデータからの売上額の集計に利用される。「非課金」区間または課金できない乗客があることを考慮すると、区間料金(JD(M,6))の集計結果が売り上げ額とならない場合があるからである。
課金コード(JD(M,9))はそれぞれのメータ番号の状態を示すコードであり、例えば空席、初乗り、搭乗中、降車(精算)または非課金を識別する。「非課金」を示すコードは、特殊な事情で乗車料金を乗客に請求できない状況の時に付される。「非課金」は、例えば地方自治体が高齢者へのサービスとして病院への通院などに交通費を補助している場合などであり、未精算計(JD(M,10))は図6,7,10等における暫定料金である。決済区分(JD(M,11))は未精算、現金決済、カード等による決済、請求先が乗客以外の者またはタクシーチケットによる決済であるかを識別する。
【0054】
決済額(JD(M,12))は実際に支払われた乗車料金であり、振替先コード(JD(M,13))は、例えば相乗りした部下の乗車料金を上司が負担する場合、および相乗りした招待客の乗車料金を招待者が負担する場合等における、負担する者のクレジットカード番号等である。
ジャーナルデータを記憶した外部記憶装置8は、タクシー3の営業活動が終了すると演算装置6から取り外されて、タクシー3の営業所等の集計装置によりジャーナルデータが集計される。図19および図20はジャーナルデータの集計例を示す図である。
【0055】
図19は、ジャーナルデータから、例えばタクシー3が営業走行を開始した直後における個人識別コードが「1−01」の乗客のデータを抽出して整理したものである。このように整理することにより、例えば、相乗り地点における相乗り人数を時系列的に集計し、新規ルートの定期周回タクシーの創設に活用することができる。
図20は、タクシー3が営業走行を開始した直後において、相乗りした運行ルートの中に課金できない区間(非課金区間)があった場合の個人識別コードが「1−01」の乗客のデータを抽出して整理したものである。「非課金区間」とは、特定の乗客にとっては走行する必要がない迂回路をタクシーが走行した場合の区間等で、その特定の乗客に課金することが不合理な場合であり、例えば、既に乗客が相乗りした状態で高齢者または障害者を迎えに行くためにタクシーが運行ルートを外れた区間などが該当する。
【0056】
上述した乗車料金算出装置1において、演算装置6をタクシー3に設置するのではなくタクシー営業所等の管理センターに設け、タクシー3に設けられた入力装置2および車内表示装置7等とインターネット等の通信手段で直接または間接に接続してもよい。その場合、タクシー3に演算装置6との送受信を一括して管理する送受信管理装置を設置して、入力装置2および車内表示装置7等と演算装置6等との送受信を送受信管理装置を介して行うのが好ましい。
タクシー3と演算装置6とを無線通信手段により接続することにより、タクシー3の運行状態を管理センターで集中的に管理することができ、相乗りにおける運行ルートごとの混雑状況を乗客の乗車率を参考に把握することができ、空車のタクシー3を効率的に需要の多い運行ルートに配車することができる。
【0057】
また、乗車料金算出装置1に乗客を識別する識別コードがプリントされた乗車カードを発行する発券装置を設けてもよい。発券装置は、路線バスの乗車地点識別カード発行機、銀行の整理番号発券機および無人駐車場の駐車券発行機等により公知となった技術を転用することができる。発券装置は、タクシー3の運転席から操作できる場所に設置され、引き出し口から乗車カードを引き抜くことにより発券される。識別コードは発券ごとに1ずつ増加する連番が用いられ、乗車カードには発券時に識別コードがプリントされる。
発券装置は演算装置6に接続されており、発券が行われるごとに識別コードが演算装置6に発信され、演算装置6は識別コードを受信すると新たに乗客が乗車したと判断し識別コードを記憶する。運転手は、乗客が降車するときに識別コードを聞き取り、入力装置2に識別コードを入力して演算装置6に送信し、演算装置6が送信した乗客の乗車料金を車内表示装置7等に表示させる。このときの識別コードを受信した演算装置6の動作は図4および図5に示されたものと略同一である。
【0058】
乗車カードに識別コード、乗車時間および乗車地点等をバーコードまたは無次元コードに変換してプリントし発券するようにしてもよい。この場合、プリントされたバーコード等を読み取る機能が付加された入力装置2が使用される。
上述した乗車料金算出装置1において、演算装置6からの乗車料金情報をカーナビゲーション表示装置の外部入力端子に入力し、車内表示装置7をカーナビゲーションの表示装置として使用することができる。タクシー3にカーナビゲーションシステムが搭載されている場合には、上述した乗降地点情報(JD(M,4))を、演算装置6がカーナビゲーションシステムから送信される地理情報を受信して記憶するようにしてもよい。
【0059】
また、乗車料金算出装置1に印刷装置を接続し、降車する乗客に領収書を発行するようにしてもよい。
赤外線などによる情報交換装置を有しIDとして利用できる番号を有する携帯電話の固有IDを読み取ることができる装置を設け、乗客を識別する識別コードを携帯電話から取得するようにしてもよい。また、乗客を識別する乗客の指紋を読み取る装置により乗客を識別するようにしてもよい。
上述した乗車料金算出装置1は、タクシー3および大型タクシー以外に大型バスおよび路面電車等の、乗降のための特別な施設を要しない乗客輸送手段に適用することができる。
【0060】
また、乗車料金算出装置1を貨物搬送用自動車に搭載し、積み込み場所および/または配送場所が異なる搬送物を混載する場合における各搬送物の搬送料金の決定に用いることができる。例えば、着払い方式では、積み込み時に発送者が2枚の輸送指示書を発行して1枚を貨物輸送手段の運転手に渡し、配送先で搬送物受け取り人が輸送指示書を受け取って搬送物および積み込み場所を確認し、車内表示装置に表示された輸送料金を支払う。元払い方式では、決済時振替先コードを予め搬送物発送者の引落口座として演算装置6に事前登録しておき、後日運行明細書の提示を条件として輸送料金を支払う。
【0061】
その他、乗車料金算出装置1、および乗車料金算出装置1の各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、タクシー等の乗客輸送手段に乗客が相乗りするときまたは貨物搬送用自動車に搬送物を混載するときの個別の乗客または搬送物の輸送料金の決定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る乗車料金算出装置の構成を示す図である。
【図2】入力装置の斜視図である。
【図3】車外表示装置の概略図である。
【図4】演算装置の乗客乗降時における動作を示すフローチャートである。
【図5】演算装置の乗車料金按分時における動作を示すフローチャートである。
【図6】記憶部に記憶される乗客データの構成を示す図である。
【図7】記憶部に記憶される乗客データの例を示す図である。
【図8】車内表示装置の表示例である。
【図9】車内表示装置の表示例である。
【図10】演算装置が乗車料金の支払いを処理した後のデータ配列の内容の例を示す図である。
【図11】外部記憶装置に記憶されたデータ配列の内容の例を示す図である。
【図12】5人の乗客が同一の出発地点で乗車し順次降車した場合の各乗客が支払う乗車料金の例を示す図である。
【図13】図13は複数の乗客の乗降の様子を示す図である。
【図14】乗客定員が5人のタクシーにおけるデータ配列の内容の例を示す図である。
【図15】複数の乗客が乗車したときのデータ配列の内容の例を示す図である。
【図16】車内表示装置の表示例を示す図である。
【図17】乗車料金の支払い処理が行われた直後のデータ配列の内容の例を示す図である。
【図18】ジャーナルデータの構成例を示す図である。
【図19】ジャーナルデータの整理例を示す図である。
【図20】ジャーナルデータの整理例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 輸送料金決定装置
2 入力装置
3 輸送手段(タクシー)
6 演算装置
7 出力装置(社内表示装置)
13 演算装置(演算部)
14 記憶装置(記憶部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送手段にお客が乗車したときまたは搬送物を載せたときごとおよび前記輸送手段からお客が降車するときまたは搬送物を降ろすときごとに、
走行距離および/または輸送時間に応じて算出された輸送料金指標を記憶装置に記憶し、
かつ、そのときの輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を、前記お客が乗車する前もしくは前記お客が降車する前の前記記憶装置に記憶された乗客数で除した区間輸送料金指標または前記搬送物を載せる前もしくは前記搬送物を降ろす前の前記記憶装置に記憶された搬送物数で除した区間輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、および新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、
降車するお客の乗車料金または降ろす搬送物の搬送料金を前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標の積算に基づいて決定する
ことを特徴とする輸送料金決定方法。
【請求項2】
輸送手段にお客が乗車したときまたは搬送物を載せたときごとに、
前記お客を識別するためのまたは前記搬送物を識別するための識別コードと走行距離および/または輸送時間に応じて算出された輸送料金指標とを記憶装置に記憶し、
前記輸送手段からお客が降車するときまたは搬送物を降ろすときごとに、
そのときの輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、
かつ、前記輸送手段にお客が乗車したときまたは搬送物を載せたときごとおよび前記輸送手段からお客が降車するときまたは搬送物を降ろすときごとに、
そのときの輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を、前記お客が乗車する前もしくは前記お客が降車する前の前記記憶装置に記憶された乗客数で除した区間輸送料金指標または前記搬送物を載せる前もしくは前記搬送物を降ろす前の前記記憶装置に記憶された搬送物数で除した区間輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、および新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、
降車するお客または降ろす搬送物を前記識別コードにより識別し当該お客または当該搬送物の輸送料金を前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標の積算に基づいて決定する
ことを特徴とする輸送料金決定方法。
【請求項3】
前記記憶装置を前記輸送手段の管理センターに設置し、
前記記憶装置と前記輸送手段とを無線通信手段により接続する
請求項1または請求項2に記載の輸送料金決定方法。
【請求項4】
お客または搬送物を輸送する輸送手段に設けるための入力装置と、
前記入力装置との間で情報を送受信可能または前記入力装置から情報を受信可能な演算装置と、
前記演算装置からの情報を受信可能であり前記輸送手段に設けるための出力装置と、を有し、
前記演算装置は、
前記入力装置から受信した情報、前記輸送手段に設けられた走行距離および/または輸送時間に応じて輸送料金指標を算出する料金メータから受信した輸送料金指標、および前記輸送手段の乗客数または搬送物数を記憶する記憶装置を有し、
前記演算装置は、
前記入力装置から情報を受信するごとに、前記料金メータから輸送料金指標を受信して受信した前記輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を前記記憶装置に記憶された乗客数または搬送物数で除した区間輸送料金指標および受信した前記輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、かつ前記情報がお客の乗車時もしくは降車時のものかまたは搬送物を積せた時もしくは降ろした時のものかを判別して新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、
かつ、少なくとも前記情報がお客の降車時または搬送物を降ろす時のものであると判別したときに前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標を積算して決定した輸送料金を前記出力装置に送信するように構成されてなる
ことを特徴とする輸送料金決定装置。
【請求項5】
前記演算装置が前記入力装置から受信する情報には、前記お客を識別するためのまたは前記搬送物を識別するための識別コードが含まれ、
前記演算装置は、
前記輸送手段から降車するお客または降ろす搬送物を前記識別コードにより識別して前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標を積算して前記輸送料金を決定する
請求項4に記載の輸送料金決定装置。
【請求項6】
前記出力装置が平面薄型ディスプレイ装置である
請求項4または請求項5に記載の輸送料金決定装置。
【請求項7】
前記出力装置がカーナビゲーション装置のディスプレイ装置である
請求項4または請求項5に記載の輸送料金決定装置。
【請求項8】
演算装置と記憶装置とを有し、
前記演算装置は、
輸送手段が送信するお客の乗降または搬送物の積み降ろしに関する情報を受信するごとに、
前記輸送手段に設けられた走行距離および/または輸送時間に応じて輸送料金指標を算出する料金メータから輸送料金指標を受信して前記記憶装置に記憶し、受信した前記輸送料金指標と前記記憶装置に記憶されたそれ以前の最新の輸送料金指標との差を前記記憶装置に記憶された乗客数または搬送物数で除した区間輸送料金指標および受信した前記輸送料金指標を前記記憶装置に記憶し、かつ前記情報がお客の乗車時もしくは降車時のものかまたは搬送物を載せた時もしくは降ろした時のものかを判別して新たな乗客数または搬送物数を前記記憶装置に記憶し、
かつ、少なくとも前記情報がお客の降車時または搬送物を降ろす時のものであると判別したときに前記記憶装置に記憶された当該お客または当該搬送物に関連づけられた各区間輸送料金指標を積算して決定した輸送料金を前記輸送手段に送信するように構成されてなる
ことを特徴とする輸送料金決定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−293530(P2007−293530A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119587(P2006−119587)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(500506840)株式会社西脇計算センター (1)
【Fターム(参考)】