説明

輸送燃料の配合用成分からイオウを除去する方法

非塩基性窒素化合物を吸着することのできる吸着剤を用いて、酸接触チオフェンアルキル化プロセスから、上流で非常に有害な非塩基性窒素化合物を除去する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲条件において液体で、典型的には天然の石油から誘導される輸送用燃料に関する。広範囲には、本発明は、不要の不純物として限られた量のイオウ含有有機化合物を含む供給原料から減少したイオウ含量の生成物を製造する統合プロセスに関する。より詳しくは、本発明は、精製流を固体吸着剤で処理して非塩基性窒素含有化合物を除去することと、1以上のイオウ含有不純物を、昇温温度での酸性触媒接触段階を用いるアルキル化によってより高沸点の生成物に化学転化することを含む、統合プロセスに関する。アルキル化されたイオウ化合物は、次に、蒸留によって濃縮され、イオウを除去するために更に水素化によって処理されてもよい。生成物は、輸送燃料として直接、及び/又は環境により優しい燃料を与えるための配合成分として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
内燃機関は、19世紀の最後の10年間の間にその発明に続いて輸送手段に革命をもたらしたことはよく知られている。Benz及びGottleib Wilhelm Daimlerをはじめとする他の者がガソリンのような燃料の電気点火を用いたエンジンを発明及び開発し、一方、Rudolf C.K. Dieselは、低コストの有機燃料を利用するために燃料の自然点火のために圧縮を用いる、彼の名前に由来して名付けられたエンジンを発明及び製造した。より重要とまではいかないが、輸送手段において使用するための改良された火花点火エンジンの同等の開発は、ガソリン燃料組成物における改良と共に進行している。現代の高性能ガソリンエンジンは燃料組成物のより高度な規格を求めているが、コストは引き続き重要な検討事項である。
【0003】
現時点において、輸送手段のための燃料の殆どは天然の石油から誘導される。実際に、石油は、今までのところは、燃料及び石油化学原料として用いられる炭化水素の世界の主たる源である。天然石油又は原油の組成は大きく変動するが、全ての原油はイオウ化合物を含み、殆どのものは窒素化合物を含み、酸素も含むことがあるが、殆どの原油の酸素含量は低い。概して、原油中のイオウ濃度は約8%未満であり、殆どの原油は約0.5〜約1.5%の範囲のイオウ濃度を有する。窒素濃度は、通常0.2%未満であるが、1.6%程度の高さになることもある。
【0004】
原油は、油田において産出される形態で用いられることはほとんどなく、製油所において広範囲の燃料及び石油化学原料に転化される。典型的には、輸送手段のための燃料は、原油からの蒸留フラクションを特定の最終用途の規格を満足するように処理及び配合することによって生産される。今日大量に入手することのできる原油の殆どはイオウ分が高いので、蒸留フラクションは、脱イオウ化して性能仕様及び/又は環境標準規格を満足する製品を得なければならない。燃料中のイオウ含有有機化合物は、引き続き環境汚染の主原因である。これらは、燃焼中にイオウ酸化物に転化し、これが次にイオウ酸素酸を生じさせ、粒子状排出物の一因にもなる。
【0005】
輸送燃料におけるますます厳しくなるイオウの規格に直面し、石油供給原料及び製品からイオウを除去することは、今後益々重要になるであろう。ヨーロッパ、日本及び米国におけるディーゼル燃料中のイオウに対する規制が、最近、最大で0.05重量%の規格に引き下げられたが、将来の規格は現在の0.05重量%のレベルよりもはるかに低くなりそうな気配である。米国におけるガソリン中のイオウに対する規制は、現在、各製油所に対して平均で30ppmに制限されている。2006年中及びそれ以降には、平均的な規格は、最大で80ppmの上限に置き換えられるであろう。
【0006】
流動接触分解法は、石油をガソリン及びディーゼル燃料のような所望の燃料に転化するのに現在用いられている主たる精製法の一つである。この方法においては、高分子量の炭化水素供給原料を、流動状態又は分散状態の熱い微細粉砕固体触媒粒子と接触させることによって、より低分子量の生成物に転化する。適切な炭化水素供給原料は、典型的には、205℃〜約650℃の範囲の沸点を有し、通常は450℃〜約650℃の範囲の温度で触媒と接触させる。適切な供給原料は、ライトガスオイル、ヘビーガスオイル、ワイドカットガスオイル、真空ガスオイル、ケロシン、デカントオイル、残留フラクション、蒸留残油、及びこれらの任意のものから誘導されるサイクルオイルのような種々の鉱油フラクション、並びにシェール油、タールサンド処理及び石炭液化から誘導されるフラクションを含む。流動接触分解法からの生成物は、典型的には、沸点に基づき、ライトナフサ(約10℃〜約221℃の間の沸点)、ヘビーナフサ(約10℃〜約249℃の間の沸点)、ケロシン(約180℃〜約300℃の間の沸点)、ライトサイクルオイル(約221℃〜約345℃の間の沸点)、及びヘビーサイクルオイル(約345℃よりも高い沸点)を含む。
【0007】
流動接触分解プロセスは、米国においてガソリンプールのかなりの部分を提供するのみならず、このプールに見られるイオウの大部分をも提供する。このプロセスからの液体生成物中のイオウは、有機イオウ化合物の形態であり、これらの生成物を燃料として利用する際には硫黄酸化物に転化する望ましくない不純物である。これらのイオウ酸化物は好ましくない空気汚染物質である。更に、これらは、有害なエンジン排ガスをより害の少ないガスへ転化することを触媒するために自動車において用いられる触媒コンバーターのために開発された触媒の多くを失活させる可能性がある。したがって、接触分解生成物のイオウ含量を可能な限り低いレベルに低下させることが望ましい。
【0008】
原油の単蒸留によって調製される直留ガソリンのイオウ含有不純物は、通常、分解ガソリン中のものとは非常に異なる。前者は主としてメルカプタン及びスルフィドを含むのに対して、後者はチオフェン、ベンゾチオフェン、並びにチオフェン及びベンゾチオフェンの誘導体に富む。
【0009】
低イオウ生成物は、従来、プロセスへの供給原料又はプロセスからの生成物のいずれかを水素処理することによって、接触分解プロセスから得られる。水素処理は、触媒の存在下で水素によって分解プロセスの生成物を処理することを含み、これによってイオウ含有不純物中のイオウが硫化水素に転化し、これを分離して元素状イオウに転化することができる。残念ながら、このタイプの処理は、水素源、高圧プロセス装置、高価な水素処理触媒、及び得られる硫化水素を元素状イオウに転化するためのイオウ回収プラントを必要とするので、通常、極めて高価である。更に、水素処理プロセスでは、供給原料中のオレフィン類を水素化によって飽和炭化水素に転化することによって供給原料中のオレフィン類の望ましくない分解が起こる可能性がある。この水素化によるオレフィン類の分解は、高価な水素の消費を引き起こし、またオレフィン類はガソリンの高オクタン成分として有益であるので、通常は望ましくない。例として、接触分解プロセスからのガソリン沸点範囲のナフサは、大きなオレフィン含量の結果として比較的高いオクタン価を有する。このような材料を水素処理すると、望ましい脱硫に加えてオレフィン含量の減少を引き起こし、脱硫の度合いが上昇するにつれて水素処理生成物のオクタン価が低下する。
【0010】
従来の水素化脱硫触媒は、精製輸送燃料の配合のための石油留出物からイオウの大部分を除去するために用いることができるが、多環芳香族イオウ化合物において見られるように硫黄原子が立体障害構造である化合物からイオウを除去するのには有効ではない。これは、イオウヘテロ原子が2重に障害構造である場合(例えば、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン)に特に当てはまる。従来の水素化脱硫触媒を高温で用いると、収量の低下、より速い触媒のコークス化、及び生成物品質の低下(例えば色)をもたらすであろう。高圧を用いることは大きな設備投資を必要とする。したがって、留出炭化水素液から硫黄含有不純物を有効に除去するための安価なプロセスに対する必要性が存在する。また、流動接触分解法からの生成物のような、高度にオレフィン性であり、不要な不純物としてチオフェン及びベンゾチオフェン化合物の両方を含む留出炭化水素液から硫黄含有不純物を除去するために用いることができるプロセスに対する必要性が存在する。
【0011】
将来におけるより厳しい規格を満足するためには、ヒンダードイオウ化合物も留出供給原料及び生成物から除去しなければならない。輸送用の精製燃料、特にガソリン用の成分からイオウを経済的に除去することに対して差し迫った必要性が存在する。
【0012】
当該技術においては、留出供給原料及び生成物からイオウを除去するための方法が数多く存在する。
Phillip D.Caesarらの米国特許2,448,211においては、チオフェン及びその誘導体を、約140℃〜約400℃の温度において、活性化天然クレー又はシリカと少なくとも一種の両性金属酸化物との合成吸着剤複合体のような触媒の存在下で、オレフィン性炭化水素と反応させることによってアルキル化することができることが記載されている。適切な活性化天然クレー触媒としては、その上に塩化亜鉛又はリン酸を沈殿させたクレー触媒が挙げられる。適切なシリカ−両性金属酸化物触媒としては、シリカと、アルミナ、ジルコニア、セリア及びトリアのような物質との組み合わせが挙げられる。Rowland C.Hansford及びPhillip D.Caesarの米国特許2,469,823においては、三フッ化ホウ素を用いて、オレフィン性炭化水素、アルキルハロゲン化物、アルコール及びメルカプタンのようなアルキル化剤によるチオフェン及びアルキルチオフェンのアルキル化を触媒することができることが教示されている。更に、Zimmerschiedらの米国特許2,921,081においては、二酸化ジルコニウム及びジルコニウムのハロゲン化物からなる群から選択されるジルコニウム化合物と、オルト−リン酸、ピロリン酸及びトリリン酸からなる群から選択される酸とを化合することによって酸性固体触媒を調製することができることが開示されている。Zimmerschiedらの文献には、また、チオフェンを、かかる触媒の存在下で227℃の温度において、プロピレンでアルキル化することができることも教示されている。
【0013】
Jerome A.Veselyの米国特許2,563,087においては、チオフェンを選択的にアルキル化し、得られたチオフェンアルキレートを蒸留によって分離することによって、チオフェンを芳香族炭化水素から除去することができることが記載されている。選択的アルキル化は、チオフェンが混入した芳香族炭化水素をアルキル化剤と混合し、混合物を、約−20℃〜約85℃の範囲内で注意深く制御された温度においてアルキル化触媒と接触させることによって行われる。適切なアルキル化触媒としては、オレフィン、メルカプタン、鉱酸エステル、及び脂肪族アルコール、エーテル及びカルボン酸のエステルのようなアルコキシ化合物が挙げられることが開示されている。また、適切なアルキル化触媒としては、以下のもの:(1)好ましくは無水形態で用いられるフリーデル・クラフツ金属ハロゲン化物;(2)リン酸、好ましくはピロリン酸、或いはかかる物質と硫酸との混合物(硫酸:リン酸の容量比は約4:1未満である);及び(3)オルト−リン酸又はピロリン酸のようなリン酸と、珪藻土又はケイ質クレーのようなケイ質吸着剤との混合物を、約400℃〜約500℃の温度に焼成して、通常、固体リン酸触媒と呼ばれているシリコ−リン酸化合物を形成したもの;が挙げられることも開示されている。
【0014】
Tamotsu Imai及びJeffery C.Brickerの米国特許4,775,462においては、それによってメルカプタンを燃料中において許容しうると考えられているチオエーテルに転化する、サワー炭化水素フラクションをスイートニングする非酸化法が記載されている。この方法は、メルカプタンを含む炭化水素フラクションを、酸性無機酸化物、ポリマー性スルホン酸樹脂、層間化合物、固体酸触媒、アルミナ上に分散したハロゲン化ホウ素、或いはアルミナ上に分散したハロゲン化アルミニウムからなる触媒と、メルカプタンのモル量と等しい、典型的には約0.01重量%〜約20重量%の不飽和炭化水素の存在下で接触させることを含む。生成物は実質的にメルカプタンを含まないと考えられるが、元素状イオウのレベルはこの方法によっては減少しない。
【0015】
Quany N.Le及びMichael S.Sarliの米国特許5,171,916においては、(A)結晶質メタロシリケート触媒を用いることによって、サイクルオイルのヘテロ原子含有芳香族物質を、14〜24個の炭素原子及び少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する脂肪族炭化水素でアルキル化し;そして(B)分別蒸留によって、未転化のライトサイクルオイルから潤滑剤沸点範囲の高沸点アルキル化生成物を分離する;ことによりライトサイクルオイルを改良する方法が記載されている。また、未転化のライトサイクルオイルは減少したイオウ含量及び窒素含量を有しており、高沸点アルキル化生成物は合成アルキル化芳香族潤滑剤ベース原料として有用であることも記載されている。
【0016】
Nick A.Collins及びJeffrey C.Trewellaの米国特許5,599,441においては、(A)ナフサを酸触媒と接触させて、ナフサ中に存在しているオレフィンをアルキル化剤として用いてチオフェン性化合物をアルキル化し;(B)アルキル化領域から流出流を取り出し;そして(C)分別蒸留によってアルキル化領域流出流からアルキル化チオフェン性化合物を分離する;ことによって、分解ナフサからチオフェン性イオウ化合物を除去する方法が記載されている。また、更なるオレフィンを分解ナフサに加えて、プロセスのための更なるアルキル化剤を与えることができることも記載されている。
【0017】
より最近では、Bruce D.Alexander、George A.Huff、Vivek R.Pradhan、William J.Reagan及びRoger H.Caytonの米国特許6,024,865においては、炭化水素の混合物を含み、不要の不純物としてイオウ含有芳香族化合物を含む供給原料から製造される、減少したイオウ含量の生成物が開示されている。この方法は、分別蒸留によって供給原料を、より揮発性の高いイオウ含有芳香族不純物を含むより低沸点のフラクションと、より揮発性の低い硫黄含有芳香族不純物を含む少なくとも一つのより高沸点のフラクションとに分離することを含む。次に、それぞれのフラクションを、別々に、その硫黄含有芳香族不純物の内容物の少なくとも一部を酸触媒の存在下におけるアルキル化剤によるアルキル化によってより高沸点の硫黄含有生成物に転化するのに有効な反応条件にかける。より高沸点の硫黄含有生成物は分別蒸留によって除去される。また、例えば第2段階におけるより高い温度に対して第1段階においてより低い温度を用いることによって、アルキル化条件を第2段階よりも最初のアルキル化段階においてより温和にするという条件で、アルキル化を段階的に行うことができることも記載されている。
【0018】
Bruce D.Alexander、George A.Huff、Vivek R.Pradhan、William J.Reagan及びRoger H.Claytonの米国特許6,059,962においては、炭化水素の混合物を含み、不要の不純物としてイオウ含有芳香族化合物を含む供給原料から、多段階プロセスで減少したイオウ含量の生成物を製造することが開示されている。第1段階は、(1)供給原料を、不純物の一部をより高沸点の硫黄含有生成物に転化するのに有効なアルキル化条件にかけ;そして(2)得られた生成物を、分別蒸留によって、より低沸点のフラクションとより高沸点のフラクションとに分離する;ことを含む。より低沸点のフラクションは、炭化水素を含み、供給原料に対してイオウ含有が減少している。より高沸点のフラクションは、炭化水素を含み、未転化のイオウ含有芳香族不純物を含み、より高沸点のイオウ含有生成物も含む。それぞれの引き続く段階は、(1)前段からのより高沸点のフラクションを、そのイオウ含有芳香族化合物の内容物の少なくとも一部をより高沸点のイオウ含有生成物に転化するのに有効なアルキル化条件にかけ;そして(2)得られた生成物を、分別蒸留によって、より低沸点の炭化水素フラクションと、より高沸点のイオウ含有アルキル化生成物を含むより高沸点のフラクションに分離する;ことを含む。プロセスからの減少したイオウ含量の全炭化水素生成物は、種々の段階からのより低沸点のフラクションを含む。ここでも、例えば第2段階におけるより高い温度に対して第1段階においてより低い温度を用いることによって、アルキル化条件を第2段階よりも最初のアルキル化段階においてより温和にするという条件で、アルキル化を段階的に行うことができることが記載されている。
【0019】
種々のプロセスの上流で、ある種の窒素化合物を除去する必要性も、当該技術において認識されてきた。
例えば、米国特許6,602,405B2(Pradhanら)においては、供給原料をオレフィン変性反応領域に送る前に、固体リン酸触媒又は酸性ポリマー樹脂触媒を用いて塩基性窒素含有不純物を供給原料から除去する、減少したイオウ含量を有する生成物を製造する方法が開示されている。
【0020】
同様に、米国特許6,599,417B2(Pradhanら)においては、供給原料をオレフィン変性反応領域に送る前に供給原料から塩基性窒素含有不純物を除去することが教示されている。
【0021】
また、米国特許6,736,660B2(Pradhanら)においては、酸性触媒プロセスの上流で窒素含有有機化合物を除去することが教示されている。
従来技術においては、酸触媒をベースとするプロセスの上流で窒素含有分子を除去する必要性は認識されているが、従来技術では、非塩基性窒素含有有機化合物が、塩基性又は中性の窒素化合物に対して触媒毒としての影響がより重大であることは認識されていなかった。
【0022】
酸洗浄工程又は酸性保護床技術のような窒素含有分子を除去するための当該技術において開示されている典型的な方法は、これらの非常に有害な非塩基性窒素化合物を除去するようには機能しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、現在、有害な非塩基性窒素化合物を触媒毒として作用することができる前に容易に除去することができる、限定された量の、イオウを含有し且つ非塩基性窒素を含有する有機化合物を含む供給原料から減少したイオウ含量の生成物を製造する方法に対する必要性が存在する。
【0024】
本発明は、環境に優しい輸送燃料の精製配合のための成分を提供するために上記記載の問題を解決することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
軽質精製流を処理して非塩基性窒素化合物を除去し、オレフィンによるアルキル化によって1以上の硫黄含有不純物をより高沸点の生成物に化学転化し、有益には分別蒸留によってより高沸点の生成物を除去することを含む統合多段階プロセスによって輸送燃料の精製配合用成分を製造するための経済的なプロセスを開示する。本発明は、種々のタイプの炭化水素材料、特にイオウを含む石油由来の炭化水素油の処理を意図する。概して、油中のイオウ含量は、1%を超え、約2又は3%以下の範囲である。本発明方法は、ガソリン、ケロシン、ライトナフサ、ヘビーナフサ、及びライトサイクルオイル、及び好ましくは接触分解及び/又は熱分解プロセスからのナフサを含む精製供給流の処理に特に好適である。
【0026】
一態様においては、本発明は、(a)オレフィンを含む炭化水素の混合物、並びに、イオウ含有有機化合物及び非塩基性窒素含有有機化合物を含み、約60℃〜約425℃の沸点、及び約4,000又は5,000ppm以下のイオウ含量、及び200ppm以下の非塩基性窒素化合物含量を含む約200ppm以下の窒素含量を有する炭化水素含有材料である供給原料を準備し;(b)床内に吸着させるのに適切な条件下で、アルカリ又はアルカリ土類フォージャサイト型ゼオライト、或いは部分的にH、又は第IB、IIB、IVB、VIII族の遷移金属によって交換されているアルカリ又はアルカリ土類フォージャサイトゼオライト、結晶質ケイ酸マグネシウム、及びアルカリ交換結晶質ケイ酸マグネシウム、或いはこれら上記の混合物を含む固体吸着剤床に供給原料を通して、吸着剤によって、含まれる非塩基性窒素含有有機化合物の少なくとも一部の選択的吸着及び/又は錯化を行わせ、それによって床から、供給原料よりも少ない窒素含有有機化合物を含む流出液を得、(c)昇温下での接触段階において、不純物の一部、例えばチオフェンをオレフィンによるアルキル化によってより高分子量のイオウ含有物質に転化するのに有効な条件下で、流出液を酸性触媒と接触させ、それによって生成物流を形成する;ことを含む、周囲条件において液体で、供給原料中の対応するイオウ含有化合物よりも高い分子量の有機イオウ化合物を含む生成物を製造する方法を提供する。
【0027】
適切な供給原料としては、約60℃〜約425℃の沸点の物質から本質的になる精製分解プロセスの生成物が挙げられる。好ましくは、かかる精製流は、約60℃〜約400℃、より好ましくは約90℃〜約375℃の沸点の物質から本質的になる。選択された供給原料が精製分解プロセスからのナフサである場合には、供給原料は、約20℃〜約250℃の沸点の物質から本質的になる。好ましくは、供給原料は、実質的に、約40℃〜約225℃、より好ましくは約60℃〜約200℃の沸点の物質からなるナフサ流である。
【0028】
本発明方法のために有益なことには、供給原料は、接触分解プロセスによって生産されたナフサを含む。好ましくは、供給原料のオレフィン含量は、少なくとも、イオウ含有有機化合物の含量とモル基準で同等である。
【0029】
有利には、固体リン酸触媒を、チオフェンアルキル化接触段階において酸性触媒として用いる。
チオフェンアルキル化接触段階において用いる昇温温度は、約90℃〜約250℃の範囲、好ましくは約100℃〜約235℃の範囲の温度、より好ましくは約140℃〜約220℃の範囲の温度である。
【0030】
本発明は、例えば多環芳香族イオウ化合物におけるようにイオウ原子が立体障害構造である化合物を含む供給原料中のイオウ含有有機化合物を減少させるのに特に有用である。典型的には、イオウ含有有機化合物としては、少なくとも、スルフィド、ヘテロ芳香族スルフィド、及び/又は置換ベンゾチオフェン及びジベンゾチオフェンからなる群から選択される化合物が挙げられる。
【0031】
本発明のより完全な理解のために、ここで、本発明の一例として添付の図面においてより詳細に示され、以下に説明する態様を参照する。
【0032】
[概説]
本発明において用いるのに適切な供給原料は、周囲条件において液体の炭化水素化合物から実質的になる殆どの精製流を概して含む石油留出物から誘導される。石油留出物は、約10℃〜約345℃の範囲内の広いか又は狭い温度範囲のいずれかで沸騰する液体である。しかしながら、かかる液体は、石炭液化からの生成物の精製及びオイルシェール又はタールサンドの処理においても遭遇する。これらの留出物供給原料は、元素状イオウの含有量が2.5重量%程度に高い場合があるが、一般的には元素状イオウの含有量は約0.1重量%〜約0.9重量%の範囲である。より高いイオウ含量の留出物供給原料は、一般に、高イオウ原油から誘導されるバージン留出物、コーカー留出物、及び比較的高いイオウ含量の供給原料を処理する流動接触分解ユニットからの接触サイクルオイルである。本発明における留出物供給原料の窒素含量も、概して、原油の窒素含量、原油処理能力1バレルあたりの製油所の水素化能力、及び留出物水素化供給原料成分の他の処分の関数である。より高い窒素含量の留出物供給原料は、一般に、コーカー留出物及び接触サイクルオイルである。これらの留出物供給原料は、2000ppm程度に高い全窒素濃度を有することがあるが、一般には約5ppm〜約900ppmの範囲である。
【0033】
適切な精製流は、概して、約10°API〜約100°API、好ましくは約10°API〜約75又は100°API、より好ましくは最良の結果のためには約15°API〜約50°APIの範囲のAPI比重を有する。これらの流としては、流動接触プロセスナフサ、流動又はディレードプロセスナフサ、ライトナフサ、水素化分解ナフサ、水素処理プロセスナフサ、異性化油、及び接触改質油、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。接触改質油及び接触分解プロセスナフサは、しばしば、軽質及び重質接触ナフサ並びに軽質及び重質接触改質油のようなより狭い沸点範囲の流に分離して、本発明にかかる供給原料として用いるために特別に調整することができる。好ましい流は、軽質バージンナフサ、軽質及び重質接触分解ユニットナフサを含む接触分解ナフサ、軽質及び重質接触改質油を含む接触改質油、及びかかる精製炭化水素流の誘導体である。
【0034】
本発明において用いるのにより適切な供給原料としては、概して約60℃〜約425℃の範囲の沸点を有する精製留出流から誘導される炭化水素の任意の種々の複雑な混合物が挙げられる。概して、かかる供給原料は、炭化水素の混合物を含むが、チオフェン性化合物及びベンゾチオフェン性化合物のような芳香族不純物をはじめとする少量のイオウ含有有機不純物を含む。好ましい供給原料は、約79℃を下回る初留点を有し、約345℃以下、より好ましくは約249℃以下の蒸留終点を有する。所望の場合には、供給原料は、約221℃以下の蒸留終点を有するものでもよい。
【0035】
また、供給原料として用いるために1以上の上記留出流を組み合わせることができることも予測される。多くの場合において、精製輸送燃料、又は種々の他の供給原料から得られる精製輸送燃料のための配合成分の特性は同等である。これらの場合においては、流の供給容量、最も近接する流通ルートの位置、及び短期経済状態のような物流管理は、どの流を用いるかによって決定することができる。
【0036】
接触分解の生成物は、本発明において用いるのに極めて好ましい供給原料である。このタイプの供給原料としては、ライトナフサ、ヘビーナフサ及びライトサイクルオイルのような約345℃未満の沸点を有する液体が挙げられる。しかしながら、接触分解プロセスからの揮発性生成物の全生産物を、本発明における供給原料として用いることができることも認識されるであろう。接触分解生成物は、通常、比較的高いオレフィン含量を有し、通常はこれによって本発明の第1のアルキル化段階の間に更なるアルキル化剤を加える必要がなくなるので、望ましい供給原料である。メルカプタン及びスルフィドのようなイオウ含有有機化合物に加えて、チオフェン、ベンゾチオフェン、並びにチオフェン及びベンゾチオフェンの誘導体のようなイオウ含有芳香族化合物が、しばしば、接触分解生成物中のイオウ含有不純物の主成分であり、かかる不純物は本発明によって容易に除去される。例えば、石油由来のライトガスの流動接触分解からの典型的なライトナフサは、約60重量%以下のオレフィン及び約0.5重量%以下のイオウを含むことがあり、イオウの殆どはチオフェン性及びベンゾチオフェン性化合物の形態である。本発明の実施において用いるのに好ましい供給原料は、接触分解生成物を含み、更に少なくとも1重量%のオレフィンを含む。非常に好ましい供給原料は、接触分解生成物を含み、更に少なくとも5重量%のオレフィンを含む。かかる供給原料は、蒸留によって単離された接触分解プロセスからの揮発性生成物の一部であってもよい。
【0037】
本発明の実施においては、供給原料は、不純物としてイオウ含有芳香族化合物を含む。本発明の一態様においては、供給原料は、不純物としてチオフェン性化合物及びベンゾチオフェン性化合物の両方を含む。所望の場合には、これらのイオウ含有芳香族化合物の少なくとも約50%或いはそれ以上を、本発明の実施においてより高沸点のイオウ含有材料に転化することができる。本発明の一態様においては、供給原料はベンゾチオフェンを含み、ベンゾチオフェンの少なくとも約50%は、アルキル化によってより高沸点のイオウ含有材料に転化され、分別によって除去される。
【0038】
オレフィン又はアルコールによるイオウ含有芳香族化合物のアルキル化を促進する能力を示す任意の酸性材料を、本発明のチオフェンアルキル化領域において触媒として用いることができる。硫酸のような液体酸を用いることができるが、固体酸性触媒が特に望ましく、かかる固体酸性触媒としては、固体担体上に担持された液体酸が挙げられる。固体酸性触媒は、一般に、供給流をかかる材料と容易に接触させることができるので、液体触媒よりも好ましい。例えば、供給流を、適切な温度において固体粒子状酸性触媒の1以上の固定床に単純に通すだけでよい。所望の場合には、異なる酸性触媒を本発明の種々の段階において用いることができる。例えば、最初の段階のアルキル化工程においてはより活性な触媒を用いることができる一方で、その後の段階のアルキル化工程においてはより活性の低い触媒を用いることによってアルキル化条件を温和にすることができる。
【0039】
本発明の実施において有用な触媒としては、酸性ポリマー樹脂、担持酸、及び酸性無機酸化物を含む触媒のような酸性材料が挙げられる。適切な酸性ポリマー樹脂としては、当該技術において周知で市販されているポリマー性スルホン酸樹脂が挙げられる。Rohm and Haas Co.によって製造されている製品であるAmberlyst(登録商標) 35が、かかる材料の典型的な例である。
【0040】
触媒として有用な担持酸としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、酸化ジルコニウム又はクレーのような固体上に担持されている、Bronsted酸(例としては、リン酸、硫酸、ホウ酸、HF、フルオロスルホン酸、トリフルオロ−メタンスルホン酸、及びジヒドロキシフルオロホウ酸が挙げられる)及びLewis酸(例としては、BF、BCl、AlCl、AlBr、FeCl、FeCl、ZnCl、SbF、SbCl、及びAlClとHClとの組み合わせが挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
担持触媒は、通常、所望の液体酸と所望の担体とを混ぜ合わせて乾燥することによって調製される。リン酸を担体と一体化することによって調製される担持触媒が、非常に好ましく、本明細書では固体リン酸触媒と称する。これらの触媒は、非常に有効で且つコストが低いので好ましい。米国特許2,921,081(Zimmerschiedら)(参照としてその記載の全部を本明細書に包含する)においては、酸化ジルコニウム及びジルコニウムのハロゲン化物からなる群から選択されるジルコニウム化合物と、オルト−リン酸、ピロリン酸及びトリリン酸からなる群から選択される酸とを化合することによる固体リン酸触媒の製造が開示されている。米国特許2,120,702(Ipatieffら)(参照としてその記載の全部を本明細書に包含する)においては、リン酸とケイ質材料とを化合することによる固体リン酸触媒の製造が開示されている。
【0042】
また、英国特許863,539(参照としてその記載の全部を本明細書に包含する)においては、リン酸を、珪藻土又はキーゼルガーのような固体ケイ質材料上に付着させることによる固体リン酸触媒の製造が開示されている。リン酸を珪藻土(キーゼルガー)上に付着させることによって固体リン酸触媒を調製する場合には、触媒は、(i)1以上の遊離リン酸、即ちオルト−リン酸、ピロリン酸又はトリリン酸、及び(ii)1種又は複数の酸と珪藻土との化学反応から誘導されるリン酸ケイ素を含むと考えられる。無水のリン酸ケイ素はアルキル化触媒として不活性であると考えられているが、これらを加水分解して触媒的に活性なオルト−リン酸及びポリリン酸の混合物を得ることができるとも考えられている。この混合物の正確な組成は、触媒を曝露する水の量に依存する。
【0043】
実質的に無水の炭化水素供給原料と共に用いた際に満足できるレベルの活性に固体リン酸アルキル化触媒を保持するために、少量の水又はアルコール、例えばイソプロピルアルコールを供給原料に加えて、触媒を満足できるレベルの水和状態に保持することが通常的な手法である。アルコールは、触媒と接触することによって脱水を受け、得られる水が次に触媒を水和するように作用すると考えられる。触媒がほんの少ししか水を含まない場合には、極めて高い酸性度を有する傾向があり、これによってコークス化の結果として速やかに失活する可能性があり、更に、触媒は良好な物理的完全性を有しなくなる。触媒を更に水和すると、その酸性度が低下し、コークス形成によって速やかな失活を起こす傾向が減少する。しかしながら、かかる触媒を過剰に水和すると、触媒が軟化し、物理的に凝集し、固定床反応器内で高い圧力損失を引き起こす可能性がある。したがって、固体リン酸触媒に関する最適な水和レベルが存在し、この水和レベルは、反応条件、基材及びアルキル化剤の関数である。
【0044】
固体リン酸触媒を用いる本発明の好ましい態様においては、触媒の特性を向上させる能力を示す量の水和剤が必要である。有利には、水和剤は、水及び約2〜約5個の炭素原子を有するアルカノールからなる群の少なくとも一つの材料である。約50〜約1,000ppmの範囲の供給原料中の水濃度を与える水和剤の量が、一般に満足できるものである。この水は、好都合には、イソプロピルアルコールのようなアルコールの形態で与えられる。
【0045】
触媒として有用な酸性無機酸化物としては、アルミナ、シリカ−アルミナ、天然及び合成柱状クレー、並びにフォージャサイト、モルデナイト、L、オメガ、X、Y、ベータ、及びZSMゼオライトのような天然及び合成ゼオライトが挙げられるが、これらに限定されない。極めて適切なゼオライトとしては、ベータ、Y、ZSM−3、ZSM−4、ZSM−5、ZSM−18及びZSM−20が挙げられる。望ましくは、ゼオライトは、シリカ−アルミナのような無機酸化物マトリックス材料中に包含される。実際、平衡分解触媒を本発明の実施において酸触媒として用いることができる。触媒は、Lewis酸(例としては、BF、BCl、SbF及びAlClが挙げられる)、非ゼオライト系固体無機酸化物(例えばシリカ、アルミナ及びシリカ−アルミナ)、及び大孔結晶質モレキュラーシーブ(例としては、ゼオライト、柱状クレー及びアルミノホスフェートが挙げられる)のような異なる材料の混合物を含むことができる。
【0046】
固体触媒は、望ましくは、それが用いられるプロセス段階において反応物質との迅速で有効な接触が可能になる物理的形態である。本発明がそのように限定される訳ではないが、固体触媒は、粒子の最も大きな寸法が約0.1mm〜約2cmの範囲の平均値を有する粒子状形態であることが好ましい。例えば、約0.1mm〜約2cmの平均直径を有する実質的に球形ビーズ状の触媒を用いることができる。また、触媒は、約0.1mm〜約1cmの範囲の直径及び約0.2mm〜約2cmの範囲の長さを有する棒状材の形態で用いることができる。
【0047】
上述したように、本発明の実施において用いる供給原料は、イオウ含有有機不純物に加えて、不純物として窒素含有有機化合物を含む。典型的な窒素含有不純物の多くは有機ベースであり、幾つかの場合においては、本発明の1種又は複数の酸性触媒の失活を引き起こす可能性がある。ここで、殆どの有害な窒素含有有機分子触媒毒は、非塩基性の窒素含有有機分子であることが分かった。
【0048】
チオフェンアルキル化プロセスにおいて用いられる典型的な商業的供給流は、大部分、しばしば75モル%を超える量の非塩基性、即ち中性か又は僅かに酸性の窒素化合物を含むことが分かった。これらの化合物としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ピロール、ピリジン及びアミンが挙げられる。
【0049】
理論に縛られるものではないが、非塩基性窒素化合物は、酸触媒の活性部位において塩基性化合物に転化すると考えられる。これらの非塩基性窒素化合物は、一般に、酸洗浄工程、水洗浄工程、或いは、例えば酸触媒に曝露する前に塩基性窒素化合物を除去するLewis酸吸着剤保護床を用いる保護床工程によっては除去されない。
【0050】
非塩基性窒素化合物は、酸性触媒上の活性触媒部位を選択的に被毒すると考えられる。これは、これらが非塩基性窒素化合物を塩基性窒素化合物に転化する部位だからである。
典型的には、軽質から中程度の質量の流動接触分解ガソリン供給流は10〜25ppmwの非塩基性窒素化合物を有することができ、これに対してより重質の供給流は50ppmwを超える非塩基性窒素化合物を有することができる。
【0051】
本発明方法によれば、これらの非塩基性窒素化合物は除去する必要があり、塩基洗浄とそれに続く酸洗浄との組み合わせ;再生することのできる吸着剤又は複数の吸着剤の組み合わせ;或いは非塩基性窒素と優先的に反応して次に吸着することのできる塩基性窒素化合物を形成する酸材料;を用いることによって除去することができる。また、上記の三つのプロセスの組み合わせを用いて非塩基性窒素化合物を除去することもできる。本発明によれば、塩基洗浄−酸洗浄の組み合わせは、約0〜約100℃、好ましくは約20〜約50℃の範囲の温度で行うことができ、圧力は、約0〜約100psig、好ましくは約1〜約25psigの範囲であることができる。
【0052】
適切な塩基溶液としては、約5〜約50%(wt)、好ましくは約10〜約20%(wt)の範囲の塩基濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのような無機塩基が挙げられる。塩基洗浄は、1〜3回の接触段階、最も好ましくは1回の接触段階で行うことができる。塩基溶液は、再循環して、油供給流の容量に対して10〜100倍容量の溶液、最も好ましくは供給流の容量に対して約50〜約100倍容量の溶液の接触比を与える。
【0053】
適切な酸溶液としては、約5〜約25%(wt)、好ましくは約10〜約20%(wt)の範囲の酸濃度を有する硫酸のような無機酸が挙げられる。酸洗浄は、1〜3回の接触段階、最も好ましくは1回の接触段階で行うことができる。酸溶液は、再循環して、10〜100の溶液容量:油供給流容量、最も好ましくは油供給流の容量に対して50〜100倍容量の溶液の接触比を与える。
【0054】
塩基洗浄は初めに行って、続いて酸洗浄を行い、塩基洗浄工程からの塩基のキャリーオーバーから酸性触媒を保護しなければならない。
本発明によれば、有効な非塩基性窒素化合物吸着剤としては、アルカリ又はアルカリ土類フォージャサイト型のゼオライト、或いは、部分的にH、又は第IB、IIB、IVB、VIII族の遷移金属によって交換されているアルカリ又はアルカリ土類フォージャサイトゼオライト、結晶質ケイ酸マグネシウム、アルカリ交換結晶質ケイ酸マグネシウム、又はこれら上記の混合物が挙げられる。
【0055】
また、吸着剤は、セピオライト、Na−X及びNa−Yゼオライトの物理的混合物であってもよく、これらの成分はそれぞれ5〜95%(vol)の範囲の量で存在する。
吸着は、約0〜約100℃、好ましくは20〜約40℃の温度で行うことができ、圧力は、約0〜約300psig、好ましくは約100〜約150psigの範囲であることができる。吸着剤への供給流の重量空間速度(WHSV)は、約0.5〜約50hr−1、最も好ましくは約10〜約15hr−1の範囲であることができる。
【0056】
吸着剤の量は、再生の間に約0.5〜約15日、より好ましくは再生の間に約1〜約5日の運転を行うのに十分な量であることができる。
消耗した吸着剤の再生は、熱処理、溶媒洗浄、或いは圧力スイング脱着のいずれかによって行うことができる。
【0057】
これらの方法は、約100〜約1000℃、好ましくは約100〜約500℃の温度、及び、酸素含有ガスの存在下において約0〜約100psia、好ましくは約0〜約50psiaの圧力をはじめとする条件での高温酸化を含む。
【0058】
高温熱分解条件としては、約100〜約1000℃、好ましくは約100〜約500℃の温度、及び0〜約100psia、好ましくは約0〜約50psiaの圧力が挙げられる。
【0059】
高温水素処理条件としては、約500〜約700℃の温度、及び水素含有ガスの存在下において約25〜約40気圧の圧力が挙げられる。
溶媒洗浄のために有効な溶媒は、製油所から出るトルエンである。また、多くの他の製油所から出る流もまた再生溶媒として有効であると考えられる。溶媒再生は、概して、約50〜約400°Fの温度及び約0〜約300psigの圧力、より好ましくは約50〜約150°Fの温度及び0〜50psigの圧力をはじめとする条件下で行う。
【0060】
更に、約100〜約500°Fの温度及び約0〜約50psiaの圧力をはじめとする条件において、窒素のようなスイープガスを用いて圧力スイング運転を行って触媒を再生することができる。
【0061】
塩基性窒素含有不純物を除去する適切な方法は、これまでは、典型的には酸性材料による処理を包含している。かかる方法は、酸の水溶液による洗浄、及び酸性触媒の直前に配置された保護床の使用のような手順を含む。有効な保護床の例としては、A−ゼオライト、Y−ゼオライト、L−ゼオライト、モルデナイト、フッ素化アルミナ、新鮮な分解触媒、平衡分解触媒、及び酸性ポリマー樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。保護床技術を用いる場合には、しばしば、一つの保護床を再生しながら、他の保護床を用いて供給原料を予備処理して酸性触媒を保護することができるような方法で二つの保護床を用いることが望ましい。分解触媒を用いて塩基性窒素含有不純物を除去する場合には、触媒は、かかる不純物を除去する能力に関して失活してきたら、接触分解ユニットの再生器内で再生することができる。酸洗浄を用いて塩基性窒素含有化合物を除去する場合には、供給原料を適切な酸の水溶液で処理する。この用途のために適切な酸としては、塩酸、硫酸及び酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。水溶液中の酸の濃度は重要ではないが、好都合には、約0.1重量%〜約30重量%の範囲となるように選択される。例えば、水中2重量%の硫酸溶液を用いて、塩基性窒素含有化合物を、接触分解プロセスからのヘビーナフサから除去することができる。
【0062】
本発明の実施においては、非塩基性窒素化合物を除去した後に、アルキル化工程への供給流を、選択されたイオウ含有有機不純物のより高沸点のイオウ含有物質への所望の度合いの転化を得るのに有効な温度及び時間、酸性触媒と接触させる。接触温度は、望ましくは約50℃より高く、好ましくは85℃より高く、より好ましくは100℃より高い。接触は、概して、約50℃〜約260℃、好ましくは約85℃〜約220℃、より好ましくは約100℃〜約200℃の範囲の温度で行う。もちろん、最適の温度は、用いる酸性触媒、選択された一種又は複数のアルキル化剤、一種又は複数のアルキル化剤の濃度、及び除去すべきイオウ含有芳香族不純物の性質の関数である。
【0063】
酸触媒接触工程からの流出流は、次に、例えば米国特許6,736,963(その教示は参照として本明細書に包含する)において教示されているように、イオウに乏しいフラクションからなる少なくとも一つの低沸点フラクション、及びより高沸点のイオウ含有物質の一部を含む高沸点フラクションに分別することができる。
【0064】
本発明は、炭化水素供給原料のイオウ含有芳香族不純物を比較的少量の高沸点物質に濃縮する統合多段階方法である。この濃縮の結果として、イオウをより容易に且つより低コストで処分することができ、任意の従来の方法をこの処分のために用いることができる。例えば、この物質は、イオウ含量がより問題とならない重質燃料中に配合することができる。また、元の供給原料に対して減少した容量のために比較的低コストで効果的に水素処理することができる。
【0065】
他の態様においては、本発明の吸着剤による非塩基性窒素化合物の除去によって、軽質オレフィンからポリガソリンを製造するのに用いる接触縮合又は重合プロセスのような固体酸触媒を用いる他のプロセスの性能を向上させることもできる。
【0066】
種々の商業的な化学プロセス及び石油化学プロセスは、オレフィン又はオレフィンの混合物を酸触媒上で縮合反応させてより高分子量の生成物を形成することを含む。このプロセスは、ここでは重合プロセスと呼び、生成物は低分子量オリゴマー又は高分子量ポリマーのいずれであってもよい。オリゴマーは2、3又は4個のオレフィン分子が互いに縮合することによって形成され、一方ポリマーは5以上のオレフィン分子が互いに縮合することによって形成される。本明細書において用いる「重合」という用語は、オリゴマー及び/又はポリマーを形成するための方法を指すために用いる。
【0067】
低分子量オレフィン(例えば、プロペン、2−メチルプロペン、1−ブテン及び2−ブテン)は、固体酸触媒(例えば固体リン酸触媒)上で重合することによって、オリゴマーを含み、高オクタンガソリン調合剤、及び化学中間体及びアルコール、洗浄剤及びプラスチックをはじめとする最終製品を製造するための出発材料として価値のある生成物に転化することができる。かかる方法は、典型的には、固体酸触媒の固定床上、昇温及び昇圧下で行う。
【0068】
かかる重合方法は、米国特許5,932,778(その教示は参照として本明細書に包含する)においてより詳細に記載されている。
【実施例】
【0069】
実施例1
図1は、酸触媒チオフェンアルキル化プロセスを用いた四つのパイロットプラント実験の結果のプロットを示す。より具体的には、二つが非塩基性窒素化合物であるプロピオニトリルを含み、二つが塩基性窒素化合物であるブチルアミンを含むモデル流を用いて実験を行った。X軸上にプロットした触媒に対して充填した累積供給流の関数として、転化したチオフェンのモル%でチオフェン転化率をY軸上にプロットする。
【0070】
図2は、触媒上の窒素の重量%の関数としてのチオフェン転化率の同様のプロットを示す。
プロットの検討から容易に観察できるように、供給流中に非塩基性窒素化合物が存在すると、塩基性窒素化合物のみが存在する供給流に対してチオフェン転化活性が著しく減少する。
【0071】
図1及び2において示される実験において用いたモデル流の組成を、Table 1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
図1及び2のデータを得るのに用いたパイロットプラントに、−12+20のTylerスクリーンメッシュサイズ(W.S.Tylerによる米国標準試験篩)に粉砕した固体リン酸触媒(Sud Chemie, Inc., Louisville, Ky., USAによって供給されたC84−5−02)54ccを充填した。パイロットスケールの反応器は、3/4O.D.×0.620インチI.D.×0.065インチ壁圧の長さ34インチのステンレススチール管から構成されていた。断熱炉箱内部の反応器壁の四つの電気加熱区域によって、反応器温度を保持した。これらの区域の温度は、それぞれの反応器壁区域上のシングルポイント熱電対を用いてプログラム可能なコンピュータによって制御した。また、反応器の頂部から中央部分にかけて配された1/8インチO.D.のステンレススチールサーモウェルも存在していた。このサーモウェルは、反応器全体にわたって温度を監視するためのマルチポイント熱電対(2”の間隔を有する3点マルチポイント熱電対)を収容していた。
【0074】
パイロットプラント反応器は、−12+20のTylerスクリーンメッシュサイズ(W.S.Tylerによる米国標準試験篩)に篩通したアルミナチップを充填した予備加熱領域(温度領域1)から構成されていた。第2及び第3の加熱領域には、−12+20のTylerスクリーンメッシュサイズ(W.S.Tylerによる米国標準試験篩)に粉砕した固体リン酸触媒(Sud Chemie, Inc., Louisville, Ky., USAによって供給されたC84−5−02)54ccを充填した。反応器の残り(温度領域4)には、冷却領域として且つ触媒を担持するために、−12+20のTylerスクリーンメッシュサイズ(W.S.Tylerによる米国標準試験篩)に篩通したアルミナチップを充填した。
【0075】
正確なシリンジ計量ポンプ(ISCO)を用いて、プロセス供給流を反応器中に導入した。供給流を、反応器予備加熱領域において反応温度に予備加熱し、種々の配置の熱電対によって中心線に沿って測定し、加熱領域をそれに応じて調整した。反応器からの液体生成物を冷却高圧分離器/受容器中に送り、ここで窒素を用いて反応器の出口圧力を所望の運転圧力に保持した。分離器/受容器からのオフガスに関して、Badger Research制御バルブによって圧力を制御した。高圧受容器/分離器から液体試料を排出し、イオウのスペシエーション、窒素のスペシエーション及びオレフィンのスペシエーションを多層カラムガスクロマトグラフによって分析した。
【0076】
これらの実験に関しては、触媒54ccを反応器に充填した。3.0hr−1の液空間速度(liquid hydraulic space velocity)(供給流の標準容量(cc/hr)を触媒の充填量(cc)で割った値)を達成するように供給流の流速を操作した。反応領域温度は、350°F±5°F及び400psig±10psigに保持した。
【0077】
それぞれの実験に関して用いた条件は、次の通りであった。
LHSV:3.0hr−1
圧力:400psig;
温度:350°F。
【0078】
Table 2に、図1及び図2でプロットされた実データを示す。
【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
実施例2
図3は、酸触媒チオフェンアルキル化プロセスを用いた更なるパイロットプラント実験の結果のプロットを示す。より具体的には、80ppmwの7種類の窒素化合物(非塩基性及び塩基性窒素化合物の両方)を含むモデル供給流を用いて実験を行った。図3においては、触媒上に吸着した窒素の重量%の関数として、転化したチオフェンのモル%でチオフェン転化率をY軸上にプロットする。プロットを検討することにより、窒素化合物がより塩基性であると、曲線がより平坦になる、即ち触媒失活がより少なくなることが明確に示される。供給流中に非塩基性窒素化合物が存在すると、塩基性窒素化合物のみが存在する供給流に対してチオフェン転化活性が著しく減少する。
【0084】
実験プログラムによって供給流中の窒素混入物の被毒効果を明瞭に且つ迅速に測定することを可能にするベース供給流(50%の1−ヘキセン、50%のn−ヘプタン、200ppmのチオフェンとしてのS)を用いて、約95%までのチオフェン転化率を達成する空間速度を決定するために予備実験を行った。この予備実験に基づいて、残りの実験に関して4.1hr−1の空間速度(WHSV)を選択した。
【0085】
本実施例において行った実験に関しては、以下のベース供給流を用いた。
1−ヘキセン 50%;
n−ヘプタン 50%;
イオウ(チオフェンとして) 200ppm;
N(種々の窒素混入物として) 80ppmw。
【0086】
以下の窒素混入物をベース供給流に加えて評価した。
なし;
プロピオニトリル(非塩基性);
メチルピロール(非塩基性);
アニリン(塩基性);
ブチルアミン(塩基性);
ピロール(非塩基性);
ピリジン(塩基性);
ブチロニトリル(非塩基性)。
【0087】
より具体的には、結果は、種々の窒素化合物を、酸触媒チオフェンアルキル化プロセスに対するその被毒効果に関して、(i)ピリジン、メチルピロール、プロピオニトリル及びブチロニトリルのような、プロセスに対して被毒性が高い化合物;(ii)アニリン及びピロールのような、プロセスに対して被毒性が中程度の化合物;及び(iii)ブチルアミンのような、チオフェンアルキル化プロセスに対して被毒性が低いレベルの化合物;に分類することができることを示す。本実施例において用いた反応条件下では、窒素化合物の殆どは、反応の最初の一日の間では触媒上に完全に保持されていた。より長い時間に関しては、特にニトリル化合物に関して運転中の窒素吸着が僅かに減少した。
【0088】
本実施例のパイロットプラント実験において用いた固体リン酸触媒は、Sud Chemie Inc., Louisville, KY, USAから得たC−84−05と表示された市販の触媒であった。パイロットプラントに、0.4〜0.6mmのTylerスクリーンメッシュサイズに粉砕した固体リン酸触媒300mgを充填した。触媒を、使用前に、窒素流下200℃で2時間乾燥した。パイロットプラントは、それぞれ50〜1000mgの触媒を保持することができる複数の平行な固定床反応器から構成されていた。パイロットプラントのデザインは、上記の実施例1で記載したデザインと同様であった。反応器をダウンフロー運転で運転した。
【0089】
それぞれの実験に関して用いた条件は、次の通りであった。
LHSV:4.1hr−1
圧力:400psig;
温度:180℃。
【0090】
図3にプロットしたデータをTable 3に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
実施例3
Table 4に、生来の非塩基性窒素化合物の全てを含む商業的な酸触媒チオフェンアルキル化プロセス供給流、酸洗浄によって処理して窒素を除去した第1の供給流、樹脂処理によって処理して窒素を除去した第2の供給流に関する供給流分析値を示す。商業的供給流は、軽質留分範囲の流動接触分解(FCC)ガソリン留分である。この供給流は、酸触媒チオフェンアルキル化プロセスユニットによって処理したタイプの供給流の特色をよく示しており、広範囲の窒素化合物を含むことが分かる。これらの窒素化合物は、概して三つの分類:(1)ブチルアミン、ヘキサミン及びピリジンなどの塩基性窒素種;(2)アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリルなどの中性化合物;及び(3)ピロールなどの多少酸性の窒素化合物;に分類することができる。酸洗浄は、主として塩基性窒素化合物を除去し、非塩基性窒素化合物の大部分は残留させる。特に、ブチロニトリルは、水中で僅かな可溶性しか有しておらず、酸洗浄によっては除去されない傾向を有する。樹脂で供給流を処理することによって、更なるレベルの非塩基性窒素化合物を除去することが可能になった。
【0093】
【表7】

【0094】
未処理の商業的供給流、並びに酸洗浄及び樹脂処理を行って供給流中の窒素の大部分を除去した商業的供給流を用いて、一連の実験を行った。図4、5及び6は、それぞれ未処理の供給流及び酸洗浄−樹脂処理供給流の両方に関して図に示す種々の異なる空間速度及び触媒充填量で、供給流の全重量(g)、パイロットプラント反応器に供給した供給流の全重量(g)を反応器中に充填した触媒の重量(g)及び油上の時間で割った値の関数として、チオフェン転化率のモル%でY軸上にプロットしたチオフェン転化率を示すプロットを表す。パイロットプラントユニットは、(i)1.5hr−1の空間速度、(ii)(i)中に充填したものと同等の触媒量及び2倍の供給流流速を用いることによって3.0hr−1の空間速度、及び(iii)反応器中に充填する触媒量を(i)の場合の1/2に減少することによって3.0hr−1の空間速度、で運転した。異なる空間速度で実験を行って、供給流から窒素を除去する効果をより明確に識別した。このデータから分かるように、高いチオフェン転化率(>80%)における触媒の生産性(触媒1gあたり処理される供給流のg)は、供給流を予備処理して窒素種の大部分を除去すると、3の因数を超える量増大する。この商業的供給流に関しては、除去された窒素の大部分は非塩基性窒素種であった。
【0095】
本実施例において用いたパイロットプラントは、実施例1において記載したパイロットプラントと同様のものであった。
図4、5及び6に示すもの以外のそれぞれの実験に関するプロセス条件は次の通りであった。
【0096】
LHSV:図4、5及び6に示す;
温度:180℃;
圧力:400psig。
【0097】
プロットの検討によって、非塩基性窒素を含む商業的供給流に関する酸触媒チオフェンアルキル化反応においてチオフェン転化活性が著しく減少したことが明瞭に示される。
【0098】
実施例4
Table 5に、Sud Chemie Inc.から得た市販の固体リン酸触媒上の二種類の塩基:ピリジン及び2,6−ジ−tert−ブチルピリジンを用いた二つの滴定実験の結果を示す。これらの滴定実験は次のようにして行った。
【0099】
触媒試料を粉砕し、篩分した。直径180〜355mmの凝集物を固定床パイロットプラント反応器中に充填した。滴定測定を行う前に、試料(50mg)を、453Kにおいて流動He(1.33cm−1)中で1時間処理した。n−ヘキサン(Fluka、99.5%、4.5ml)とピリジン(Fischer、99.9%、20ml)又は2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(Aldrich、97%、50ml)との液体混合物を調製した。得られた混合物を、0.09cm−1の液体体積流量でHe流(1.33cm−1)中に導入して、0.3kPaのn−ヘキサン及び5.3Paのピリジン又は4.7Paの2,6−ジ−tert−ブチルピリジンとの混合物を得た。触媒床の温度は453°Kであった。触媒上に吸着した滴定液の量を、ガスクロマトグラフィー(Hewlett−Packard 6890 GC、30mHP−1メチルシリコーンキャピラリーカラム、炎イオン化検出器)によって測定した流出液中のその濃度から算出した。
【0100】
理論に縛られるものではないが、表5において、SPA触媒上に二つのタイプの酸サイト:強酸サイトの一つの組(2,6−ジ−tert−ブチルピリジンによって滴定されたもの)及びより弱酸のサイトの一つの組(ピリジンによって滴定されたものと2,6−ジ−tert−ブチルピリジンによって滴定されたものとの間の差)が存在することが示される。強酸サイトは、チオフェン転化を行うのに関与すると考えられる。非塩基性化合物は、弱酸サイト上に吸着しないが、強酸サイトで反応して塩基性の生成物を生成し、これが強酸サイト上に強く吸着するので、これらの強酸サイトは非塩基性化合物によって選択的に被毒される。強酸サイト上での非塩基性窒素化合物のこの反応によって、チオフェンアルキル化のために必要なサイトが除去され、これが、非塩基性窒素化合物がチオフェンアルキル化反応を被毒する極めて高い傾向の説明となる。
【0101】
【表8】

【0102】
したがって、上記の実施例から、商業的なチオフェンアルキル化供給流から広範囲の窒素化合物、特に非塩基性窒素化合物を有効に除去する方法に対する大きな必要性が存在することが明らかである。以下の実施例は、商業的なチオフェンアルキル化供給原料からこれらの非塩基性窒素化合物を除去するのに適切な本発明による選択的なプロセスを開示する。
【0103】
実施例5
本実施例において記載する実験は、多段固定床吸着システムにおいて行った。四つの固定床ステンレススチール反応器を、共通の供給流導入口に平行に接続した。ピストンパルスを最小にする一定流量を保持することができる二重ピストンポンプによって液体供給流を導入した。システムのデザインは、吸着剤床を通して供給流の上向流又は下向流を可能にするものであった。予め定められた時間間隔でチューブの出口において累積的な液体試料を採取し、ガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0104】
窒素モードで運転するFID及びパルス化炎光光度検出器(PFPD)を取り付けたVarian−3380 GCを、出口流を分析するために用いた。プロピオニトリル、ブチロニトリル、ピロール及びチオフェンをPFPDによって検出し、一方、ヘプタン及びヘキセン−1をFIDによって検出し、両方の検出器を平行して運転した。異なる化合物は、CP−Sil 24−CBカラムで分離した。
【0105】
室温、3.5barの圧力、及び15〜20h−1の範囲のWHSVにおいて吸着実験を行った。用いた吸着剤の量は2gであり、全ての場合において、乾燥(100mlのN流中200℃で2時間)し、n−ヘプタンで圧縮した後に、約1.0ml/分の一定流量で窒素含有供給流を導入した。空間速度は、それぞれの場合において、反応器の出口において回収される処理流の量を基準として決定した。
【0106】
<ブチロニトリル吸着>
【0107】
【表9】

【0108】
用いた吸着剤及びその主たる特性を表6に示す。市販の固体リン酸触媒を用いた実験においては、原触媒ペレットを粉砕して0.4〜0.6mmの粒径に篩別し、実験プロトコルの再現性をチェックするために吸着を2回行った。既に微細球状形態であったFCC ECATを除いて、残りの吸着剤は同様に圧縮、粉砕し、同等の粒径範囲(0.4〜0.6mm)に篩別した。
【0109】
ベースモデル供給流は、n−ヘプタン(50重量%)、ヘキセン−1(50重量%)及びチオフェン(200ppmw S)を含み、ブチロニトリルとして80ppmwの窒素を混入させた。このモデル供給流を、Table 6に示す吸着剤に通した。
【0110】
<吸着実験結果>
市販の固体リン酸触媒に関する結果を図7(破過曲線)及びtable 7に示し、結果は良好な再現性を示す。吸着能力として表7に示す値は、流出流中の全てのNを検出する直前に、100gの吸着剤あたり吸着されたNの量として測定した。これらの条件において、ブチロニトリルに関する吸着能力は比較的低いことが分かる。
【0111】
残りの吸着剤に関する比較結果を、table 7及び図9〜11に示す。図8においては、市販の固体リン酸触媒を異なるハイドロタルサイトベースの吸着剤と比較している。図9は、市販の固体リン酸と、二種類のYゼオライト:市販のNa−Y(CBV−100、Zeolyst Intl.から得た)、Cu交換Y;二種類のセピオライト:天然セピオライト及びNa交換セピオライト;との比較を示す。図10は、市販の固体リン酸を、FCC ECAT、酸交換モンモリロナイト、及びハイドロタルサイトをベースとする吸着剤、Yゼオライト及びセピオライトと比較している。上記に記載の条件において173gの供給原料を2gのNaX吸着剤の床に通した後には、出口流中にブチロニトリルは検出されなかった。而して、銅交換Na−Yが、0.69g N/100g吸着剤の最小の窒素吸着能力を有していた。
【0112】
銅交換Yゼオライトもまた、相当の吸着能力を示した。Table 7及び図11において分かるように、この試験を繰り返してデータを確認した。最後に、セピオライトをベースとする吸着剤も、高いブチロニトリル吸着能力を与える。
【0113】
【表10】

【0114】
実施例6
<ブチロニトリル及びピロールの吸着>
本実施例においては、ベースモデル供給流は、n−ヘプタン(50重量%)、ヘキセン−1(50重量%)及びチオフェン(200ppmw S)を含み、40ppmのプロピオニトリル及び40ppmのピロールを混入させ。それぞれの窒素化合物に関するそれぞれの吸着剤の相対的な吸着能力を評価するために、この供給流を、Na−Yゼオライト吸着材及びセピオライト吸着剤に通した。吸着の破過曲線を図12及び13に示す。窒素吸着能力をTable 8に要約する。
【0115】
【表11】

【0116】
実施例7
<プロピオニトリル及びピロール吸着に対する芳香族物質の効果>
供給流中の芳香族物質の存在の影響を評価するために、n−ヘプタン35%、1−ヘキセン35%、トルエン22%、o−キシレン8%、チオフェン200ppm、PN 40ppm及びピロール40ppmのモデル供給流を調製した。この供給流を、Na−Yゼオライト吸着材及びセピオライト吸着剤に通した。これらの実験の吸着の破過曲線を図14及び15に示す。これらの破過曲線は、15〜20hr−1のWHSV、室温、及び4barの圧力で得た。窒素容量における芳香族物質の効果は、吸着能力を示す表8においても観察することができる。
【0117】
実施例8
<NaYの再生>
プロピオニトリルとして80ppmのN及びピロールとして80ppmのNを混入させたベース供給流を、固定床内に配置されたゼオライトに通すと、新鮮なNaYでの吸着はプロピオニトリル及びピロールに関する高い吸着能力を示す。
【0118】
200℃で12時間か焼するか或いは洗浄することによって、用いたNaYの再生を行った。
洗浄による再生は、トルエンを用いて、約20℃の温度、5mil/分の流量、雰囲気圧力で約20時間行った。
【0119】
洗浄による再生は、か焼による再生よりも良好な結果を与えることが分かった。すなわち、洗浄触媒上には10%を超えるプロピオニトリル及びピロールが吸着した。
【0120】
【表12】

【0121】
実施例9
<競合吸収>
ブチロニトリルとして40ppmのNを実施例7の供給流に加えると、ピロール吸着能力が減少したことを観察することができる。プロピオニトリル吸着能力においても同様の減少があった。これは、ゼオライト活性サイトに対するPNとBNとの間の競合によって起こったものであると考えられるが、二種類のニトリルの吸着によって活性中心を占有するピロールの吸着が阻害されると思われる。これは、Table 9とTable 10とを比較すると明らかとなる。Table 10は、二つの同一且つ同時の吸着を示す。
【0122】
【表13】

【0123】
Table 11は、ピロール、プロピオニトリル及びブチロニトリル(上記から、典型的な商業的供給流中において3種の最も被毒性の大きな化合物として決定した)を含むベース供給流を用いた場合の、セピオライト、及びNa−、Na−H、H−、Cu−及びCs−形態のゼオライトYの吸着能力の概要を示す。
【0124】
Table 11は、第1の化合物が破過した際の吸着したNの量を示す。
【0125】
【表14】

【0126】
Table 12は、固体が吸収できたNに関する値を示す。
【0127】
【表15】

【0128】
Table 12から、ゼオライトNaY及びCuYが非塩基性窒素化合物に対する有効な吸着剤であることが明らかである。芳香族物質が吸着サイトに関して競合し、これはピロールに関してより重要であることに留意すべきである。CsYゼオライトは、NaYよりもプロピオニトリルに関する吸着性が小さいが、ピロールに関しては吸着性がより大きく、一方ブチロニトリルの吸着は同様に高かった。これを考慮し、且つTable 12及びTable 13から、吸着剤の混合物は、チオフェンアルキル化プロセスのための有効な非塩基性窒素化合物予備処理剤となりうる。上記に記載したように、空気流中で加熱することによるか或いはトルエンで洗浄することによって、再生を行って吸着能力を回復させることができる。
【0129】
実施例10
本実施例においては、商業的なチオフェンアルキル化供給流を用いて、非塩基性窒素化合物を除去する供給流の予備処理の効果を示した(Table 4を参照)。商業的なチオフェンアルキル化供給流を、一つはNa−Yを含み、第2のものはセピオライトを含む二つの固定床に平行に通した。窒素吸収条件は、70°F、WHSV=15hr−1で、2gの吸着剤材料を用いた。吸着剤反応器からの生成物を80分ごとに回収した。チオフェンアルキル化反応器内において、評価のために次の供給流を回収した。
【0130】
【表16】

【0131】
本実施例のパイロットプラント実験において用いた固体リン酸触媒は、Sud Chemie Inc.から得たC−84−05と表示された市販の触媒であった。0.4〜0.6mmのTylerスクリーンメッシュサイズに粉砕した固体リン酸触媒300mgをパイロットプラントに充填した。触媒は、使用前に窒素流下200℃で2時間乾燥した。パイロットプラントは、それぞれ50〜1000mgの触媒を保持することのできる複数の平行の固定床反応器から構成されていた。パイロットプラントのデザインは、上記の実施例1において記載したものと同様である。反応器は下向流運転で運転した。上記の供給流のそれぞれを、このパイロットプラント列で処理した。
【0132】
それぞれの実験に関して用いた条件は次の通りであった。
LHSV:4.1hr−1
圧力:400psig
温度:180℃
【0133】
この実験の組の結果を図16に示す。結果から、商業的供給流をNaY又はセピオライトのいずれかで予備処理すると、チオフェンアルキル化プロセスに関して、触媒特性における大きな改良が達成されたことが明らかである。これは、未処理の商業的供給流によって僅か8時間の運転で得られた迅速な失活と対比される。評価した範囲(吸着剤1gあたり処理した供給流150g以下)の全体にわたってNaY予備処理から安定した特性が見られる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】異なる酸性度を有する窒素化合物を含む種々のモデル供給流を用いたチオフェン転化のプロットである。
【図2】触媒上に吸着した窒素の関数としての、図1にプロットした実験に関するチオフェン転化のプロットである。
【図3】種々の酸性度を有する窒素化合物を含む更なる供給流に関する、触媒上に沈積した窒素の重量%の関数としてのチオフェン転化のプロットである。
【図4】未処理及び種々の異なる反応条件で処理した種々の供給流に関するチオフェン転化を示すプロットを表す。
【図5】未処理及び種々の異なる反応条件で処理した種々の供給流に関するチオフェン転化を示すプロットを表す。
【図6】未処理及び種々の異なる反応条件で処理した種々の供給流に関するチオフェン転化を示すプロットを表す。
【図7】種々の吸着剤に関するブチロニトリル吸着能を示す。
【図8】種々の吸着剤に関するブチロニトリル吸着能を示す。
【図9】種々の吸着剤に関するブチロニトリル吸着能を示す。
【図10】種々の吸着剤に関するブチロニトリル吸着能を示す。
【図11】種々の吸着剤に関するブチロニトリル吸着能を示す。
【図12】ピロール及びプロピオニトリルの吸着に関する破過曲線を示す。
【図13】ピロール及びプロピオニトリルの吸着に関する破過曲線を示す。
【図14】芳香族物質を含む供給原料の存在下でのプロピオニトリル及びピロールの吸着に関する破過曲線を示す。
【図15】芳香族物質を含む供給原料の存在下でのプロピオニトリル及びピロールの吸着に関する破過曲線を示す。
【図16】異なる吸着剤を用いて異なる時間処理した種々の供給流のチオフェン転化結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを含む炭化水素の混合物、並びに、イオウ含有有機化合物及び非塩基性窒素含有有機化合物を含み、約60℃〜約425℃の間の沸点、及び約4,000又は5,000ppm以下のイオウ含量、及び約2,000ppm以下の窒素含量を有する供給原料を準備し;
供給原料から非塩基性窒素化合物を除去して、減少した量の非塩基性窒素化合物を有する流出流を得;
不純物の一部をオレフィンによるアルキル化によってより高分子量のイオウ含有物質に転化するのに有効な条件下で、流出流を酸性触媒と接触させる;
ことを含む、周囲条件において液体で、供給原料中の対応するイオウ含有化合物よりも高い分子量の有機イオウ化合物を含む生成物の製造方法。
【請求項2】
非塩基性窒素化合物を吸着法によって除去し、吸着法において用いる吸着剤がフォージャサイト構造を有するゼオライトを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非塩基性窒素化合物を吸着法によって除去し、吸着剤が、アルカリフォージャサイト、アルカリ土類フォージャサイト、部分的にH、又は第IB、IIB、IV、VIII族の遷移金属、及びこれらの混合物によって交換されているアルカリフォージャサイト、部分的にH、又は第IB、IIB、IV、VIII族の遷移金属、及びこれらの混合物によって交換されているアルカリ土類フォージャサイト、結晶質ケイ酸マグネシウム、及びアルカリ交換結晶質ケイ酸マグネシウムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
吸着剤を有機溶媒によって再生する請求項2に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒が一つの芳香環を有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶媒が、ベンゼン、及び11個以下の全炭素原子数を有するアルキルベンゼンからなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶媒が、12個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコールである請求項4に記載の方法。
【請求項8】
吸着剤が、天然形態又はアルカリ交換形態のセピオライトである請求項3に記載の方法。
【請求項9】
吸着法によって非塩基性窒素有機化合物を除去し、ここで吸着法において用いる吸着剤はフォージャサイト構造を有するゼオライトを含み;
吸着法からの流出流を、オレフィンを重合するのに有効な条件下で酸触媒と接触させる;
ことを含む、オレフィンを含み且つ非塩基性窒素有機化合物を含む供給原料中のオレフィンを重合する方法。
【請求項10】
吸着剤を有機溶媒によって再生する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒が一つの芳香環を有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が、ベンゼン、及び11個以下の全炭素原子数を有するアルキルベンゼンからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
溶媒が、12個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコールである請求項10に記載の方法。
【請求項14】
吸着剤が、天然形態又はアルカリ交換形態のセピオライトである請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−527089(P2008−527089A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549569(P2007−549569)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/047173
【国際公開番号】WO2006/073963
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】