説明

輻射線硬化性組成物

30℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有する1種以上のカルボキシル官能性ポリエステル(a)と、(b1)1種以上の(メタ)アクリル化モノエポキシド並びに(又は)(b2)1種以上のポリエポキシド及び1種以上のα,β不飽和カルボン酸、との反応から得られる少なくとも1種の輻射線硬化性オリゴマーを含む、輻射線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にコイル被覆に使用できる、輻射線硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイル被覆機は種々のタイプ及び形の金属コイルを被覆する。コイル被覆は、金属を二次加工前に高速度で被覆するための連続的で高度に自動化された方法である。該方法は通常以下の工程から成る。該金属コイルをほどき、該上側と下側の両方を機械的に且つ化学的に清浄にして油、グリース、及び汚れを除去する。清浄化後、該腐食保護及び塗料接着を向上させるために該シートに化学的前処理を適用することが出来る。次に該ストリップは該被覆装置に入る前に乾燥用オーブン中に直接移動する。該塗料が塗布された後、該ストリップは発送のため冷却され巻き直される前に乾燥用オーブン中に再び移動する。該プレコートシートは金属加工産業において使用される。従って、多くの金属物品は、使用時又は組立て時には塗布または塗装されないで、平面シート素材がコイル状で提供された時に先ず塗布され、次に成形され、切断され、そして所望の物品に組立てられるのである。故に、殆んどすべての場合における重要な判定基準は、後成形能力、即ち、該塗布ストリップを曲げる能力である。後成形は、該金属曲げが非常に厳しい可能性のある高速度加工装置により通常なされる。該塗膜は、亀裂なしに後成形即ち曲げを起こさせるが尚接着を維持するように可撓性でなければならない。金属、ある場合には保護亜鉛層、前処理層、及び塗料層を意味する系全体は、又高度の腐食抵抗性に到達しなければならない。耐薬品性及び耐汚染性のような基本的な性質は重要なままであり、いくつかの用途には湿度及び滅菌試験抵抗性のような性質も必要である。
【0003】
輻射線硬化性系はコイル被覆にぴったり合うかもしれない、何故なら、該基体は平面であり、該線速度は高く、それは溶剤の使用のような環境問題を解決することが出来、そしてそれは他の塗布技術で必要な硬化オーブンよりも少ないエネルギー及び小さい床面積を必要とするからである。しかしながら今まで、輻射線硬化性塗布組成物、特にUV配合物はコイル被覆用途に広く使用されていない。典型的なUV配合物は、(メタ)アクリル化オリゴマー及び反応性希釈剤から成り、硬化されると、耐薬品性、耐引掻き性、及び表面硬度のような良好な性質を有する高度に架橋された塗膜層を形成する。かかる高架橋密度は又限られた可撓性と金属基体上への接着を制限する該塗膜の収縮を伴う。これらの厳しい要求に対する解決を見出そうと試みると、要求される硬化塗膜の可撓性に到達するために、妥当な粘度を達成するための分子量の低下と架橋間の実質的な分子量に対する必要性との間でしばしば制限を受ける。
【0004】
高度の可撓性が後成形操作に必須であるコイル被覆用途に対して、典型的なUV配合物は適していない。US 2002/0132059 A1は、コイル状金属シートの被覆に光重合性塗布組成物を使用する原理を説明している。そこに説明されたコイル状金属シートへの塗膜の塗布方法において、該金属シートは先ず清浄にされ次に該塗布組成物を塗布する前に前処理される。
【0005】
この特許出願には具体的な光重合性組成物は全く開示されていない。しかしながら、不飽和オリゴマーを含む光重合性塗布組成物のすべてが、コイル被覆方法に使用される時、満足する結果を得ることが出来るわけではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
我々は今や、光重合性組成物に使用するのに非常に適した新規な輻射線硬化性オリゴマーを発見したのである。
【0007】
従って本発明は、30℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有し、酸構成成分の全量に関して、75〜100モル%の4〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、及び所望により0〜25モル%の少なくとも1種の他の脂肪族、脂環式及び(又は)芳香族ポリカルボン酸、並びに、アルコール構成成分の全量に関して、25〜100モル%の少なくとも1種の分枝鎖脂肪族ジオール、及び所望により0〜75モル%の少なくとも1種の他の脂肪族又は脂環式ポリオールから得られる1種以上のカルボキシル官能性ポリエステル(a)、(b1)1種以上の(メタ)アクリル化モノエポキシド、並びに(若しくは)、(b2)1種以上のポリエポキシド及び1種以上のα,β不飽和カルボン酸、との反応から得られる、30℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有する少なくとも1種の輻射線硬化性オリゴマーを含む、輻射線硬化性組成物に関する。
【0008】
本発明において、用語「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリル化合物の両方又はそれらの誘導体並びに混合物を包含すると理解されるべきである。
【0009】
該輻射線硬化性オリゴマーは一般に、少なくとも600の、好ましくは少なくとも800の、より好ましくは少なくとも1000の数平均分子量を有する。一般に該輻射線硬化性オリゴマーは、10000を越えない、好ましくは7000を超えない、最も好ましくは5000を超えない数平均分子量を有する。
【0010】
該輻射線硬化性オリゴマーは、20℃/分の加熱勾配でASTM D3418による示差走査熱量測定法により測定して、20℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有するのが好ましい。該輻射線硬化性オリゴマーは0℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有するのが更に好ましい。
【0011】
本発明で使用される輻射線硬化性オリゴマーは、カルボキシル官能性ポリエステルから得られる。カルボキシル官能性ポリエステルは、遊離の、一般に末端の、-COOH(カルボキシル)基を含むポリエステルを示すように意図されている。該カルボキシル官能性ポリエステルは一般に10〜340mgのKOH/gの酸価を有する。本発明で使用されるポリエステルは、好ましくは少なくとも20の、より好ましくは少なくとも25の、最も好ましくは少なくとも30の酸価を有する。本発明で使用されるポリエステルは、好ましくは250mgKOH/gを超えない、より好ましくは190を超えない、最も好ましくは80mgKOH/gを超えない酸価を有する。
【0012】
カルボキシル官能性ポリエステルは、ヒドロキシル官能性ポリエステルと環状無水物との反応により得ることも出来る。
【0013】
ヒドロキシル官能性ポリエステルは本発明では、遊離の、一般に末端の、ヒドロキシル基を有し、一般に10〜340mgのKOH/gのヒドロキシル価を有するポリエステルを示すように意図されている。本発明で使用されるヒドロキシル官能性ポリエステルは、好ましくは25〜250mgのKOH/gの、より好ましくは30〜190mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0014】
本発明で使用されるカルボキシル及び(又は)ヒドロキシル官能性ポリエステルは、1種以上の多価酸を含む酸構成成分と1種以上のポリオールを含むアルコール構成成分との反応から得られる。該ポリエステルは、酸構成成分の全量に関して、75〜100モル%の4〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びに所望により0〜25モル%の少なくとも1種の他の脂肪族、脂環式及び(又は)芳香族ポリカルボン酸、及び、アルコール構成成分の全量に関して、25〜100モル%の少なくとも1種の分枝鎖脂肪族ジオール、並びに所望により0〜75モル%の少なくとも1種の他の脂肪族又は脂環式ポリオールから得られる。
【0015】
本発明で使用されるポリエステルに含まれる4〜14個の炭素原子を有する該直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸は好ましくは、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、及びそれらの無水物から、単独に又は混合物として選択される。該直鎖飽和脂肪族二価酸は最も好ましくはアジピン酸である。
【0016】
該ポリエステルに所望により含まれる他の該ポリカルボン酸は、一般にジカルボン酸及び(又は)それらの無水物から選択され、より具体的にはフマル酸、マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸から単独に又は混合物として選択される。該ポリエステルは、酸構成成分の全量に関して15モル%までの少なくとも3個のカルボン酸基を有する多価酸又はそれらの無水物、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びそれらの無水物、又はそれらの混合物を配合することにより得られる分枝ポリエステルであっても良い。
【0017】
該ポリエステルは、酸構成成分の全量に関して、より好ましくは85〜100モル%の、最も好ましくは95〜100モル%の、4〜14個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸から得られる。
【0018】
ポリカルボン酸を使用する代りに又はそれらに加えて、それらに対応する無水物、エステル、又はそれらの混合物を該ポリエステルの製造に使用してもよい。
【0019】
該ポリエステルで使用される該分枝鎖脂肪族ジオールは好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコールのヒドロキシピバル酸エステル、及びそれらの混合物から選択される。該分枝鎖脂肪族ジオールは最も好ましくはネオペンチルグリコールである。
【0020】
該ポリエステルに所望により含まれる他の該脂肪族又は脂環式ポリオールは、一般に二、三、及び(又は)四官能価ポリオールから選択される。ジオールは好ましくは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、及びそれらの混合物から選択される。ジ及びトリエチレン及びプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコールを使用することも出来る。該ジオールはより好ましくは、脂肪族ジオール、特に2〜12個の炭素原子を含むアルキルジオールである。該ポリエステルは、3個以上のアルコール基を有するポリオール、好ましくはトリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、及びそれらの混合物のような三官能価及び四官能価ポリオールを、アルコール構成成分の全量に関して30モルパーセントまで含む分枝ポリエステルであってもよい。
【0021】
本発明で使用されるポリエステルはより好ましくは、アルコール構成成分の全量に関して、45〜100モル%の分枝鎖脂肪族ジオール、0〜55モル%の他の脂肪族ジオール、及び0〜30モル%の三及び(又は)四官能価ポリオールから得られる。
【0022】
本発明で使用されるカルボキシル官能性ポリエステルは一般に、400〜9800の数平均分子量MNを有する。該ポリエステルは、好ましくは少なくとも600の、より好ましくは少なくとも800の、最も好ましくは少なくとも1000のMNを有する。該ポリエステルは、好ましくは6800を超えない、より好ましくは4800を超えない、最も好ましくは4500を超えないMNを有する。
【0023】
本発明において、数平均分子量MNは式
【0024】
【数1】


(式中、j及びkは該ポリエステル合成で使用された相異する多価酸及びポリオールを夫々示し、Macは該ポリエステル合成で使用された多価酸のグラム重量を表し、Mbは該ポリエステル合成で使用されたポリオールのグラム重量を表し、nac及びnbは該ポリエステル合成で使用された夫々多価酸及びポリオールのモル数であり、MH2O及びnH2Oは夫々該ポリエステル合成中に発生した水のグラム重量及びモル数である)から得ることが出来る。
【0025】
ヒドロキシル官能性ポリエステルと環状無水物との反応から得られたカルボキシル官能性ポリエステルを使用する特殊な場合、該カルボキシル官能性ポリエステルの分子量は、使用した無水物及びヒドロキシル官能性ポリエステルの相対的な量とそのヒドロキシル価を考慮して、該ヒドロキシル官能性ポリエステルの数平均分子量及び該無水物の分子量から計算することが出来る。
【0026】
本発明で使用されるポリエステルは好ましくは非晶質ポリエステルである。非晶質ポリエステルは本発明では、実質的に結晶化を示さず、更に20℃毎分の加熱勾配でASTM D3418による示差走査熱量測定法により測定して融点を示さないポリエステルを示すように意図されている。該ポリエステルは更に好ましくは、20℃毎分の加熱勾配でASTM D3418による示差走査熱量測定法により測定して-120〜25℃のガラス転移温度TGを有する。該ポリエステルは好ましくは25℃で液体である。
【0027】
ヒドロキシル官能性ポリエステルと環状無水物との反応から得られたカルボキシル官能性ポリエステルを使用する場合、この環状無水物は好ましくは一般式(1):
【0028】
【化1】


(式中、Rはアリーレン、シクロアルキレン、アルキレン、アルケニレン基を表し、Rはアルキル、アルケニル基、-COOH基及び(又は)もう一つの無水物基を有することが可能である)に対応する。典型的な無水物には、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、グルタル酸無水物、コハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物が含まれる。好ましい無水物は、Rが5〜20個の炭素原子を含むアルケニル鎖により置換されたアリーレン(より好ましくはフェニレン)又はアルキレン(より好ましくはエチレン)である無水物である。無水物の混合物を使用することも出来る。
【0029】
ヒドロキシル官能性ポリエステルからカルボキシル官能性ポリエステルを製造するのに使用される無水物の量は、該ポリエステル中に存在するp当量の-OH基当り、一般に少なくとも0.8pモルの、好ましくは少なくとも0.9pモルの、より好ましくは少なくとも0.95pモルの無水物である。使用される無水物の量は、該ポリエステルの-OH基p当量に関して、一般に多くても1.2pモル、好ましくは多くても1.1pモル、より好ましくは多くても1.0pモルである。
【0030】
ヒドロキシル官能性ポリエステル及び無水物からのカルボキシル官能性ポリエステルの製造は、それのエポキシドとの更なる反応前に該カルボキシル官能性ポリエステルを単離することなしに、その場で行うことが出来る。
【0031】
本発明の第一の変形によれば、該輻射線硬化性オリゴマーはカルボキシル官能性ポリエステルと1種以上の(メタ)アクリル化モノエポキシドとの反応生成物である。この場合、カルボキシル官能性ポリエステルと(メタ)アクリル化モノエポキシドの相対的な量は、1種以上の(メタ)アクリル化モノエポキシドから提供されるエポキシドの当量数yがカルボキシル官能性ポリエステルにより提供される-COOH基数x以上であるように使用することが好ましい。好ましくはy=xである。yがxより大きい場合、好ましくは少なくとも(y-x)の、より好ましくは(y-x)の量で、少なくとも1種のα,β不飽和カルボン酸をもカルボキシル官能性ポリエステルの反応混合物に添加することが好ましい。(メタ)アクリル化モノエポキシドは、1個のエポキシ基及び1個以上の(メタ)アクリレート基を含む化合物を示すように意図されている。使用することの出来る(メタ)アクリル化モノエポキシドの例は、グリシジル(メタ)アクリレートエステル、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテルモノアクリレートである。該(メタ)アクリル化モノエポキシドは好ましくはグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートから選択される。
【0032】
本発明の第二の好ましい変形によれば、該輻射線硬化性オリゴマーはカルボキシル官能性ポリエステルと少なくとも1種のポリエポキシド及び少なくとも1種のα,β-不飽和カルボン酸との反応生成物である。この場合、ポリエステル、ポリエポキシド及び不飽和カルボン酸の相対的な量は、該ポリエステルにより提供されるx当量の-COOH基に対して少なくともz当量のポリエポキシド及び少なくとも(z-x)当量のα,β-不飽和カルボン酸が存在するように使用することが好ましい。本発明のこの変形において、zは好ましくは少なくとも1.5x、より好ましくは少なくとも2xである。zは通常20xを超えず、好ましくは15xを超えない。zが2xよりも大きい場合、過剰のポリエポキシドは不飽和ポリエポキシド誘導体がその場で形成されるようにα,β-不飽和カルボン酸と反応する。
【0033】
ポリエポキシドは少なくとも2個のエポキシド官能基を含む任意の化合物を示すように意図されている。該ポリエポキシドは一般に、芳香族又は脂肪族ポリオールのグリシジルエーテルから、芳香族又は脂肪族多価酸のグリシジルエステルから、又は脂環式ポリエポキシドから選択される。好ましいのは、芳香族又は脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、又は芳香族又は脂肪族二価酸のジグリシジルエステル、又は脂環式ジエポキシド、例えば、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Fのジグリシジルエーテル、ポリ(エチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド)のジグリシジルエーテル(DER 736の名前で商品化されている)、ポリプロピレンオキシドのジグリシジルエーテル(DER 732の名前で商品化されている)、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル(NPEK-051の名前で商品化されている)、ブタンジオールのジグリシジルエーテル(Araldite DY 026 SPの名前で商品化されている)、リノール酸二量体のジグリシジルエステル(Erisys GS-120の名前で商品化されている)、セロキシド(celloxide)2081である。特に好ましいのは、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル、ポリ(エチレンオキシド-コ-プロピレンオキシド)のジグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキシドのジグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテルである。
【0034】
該α,β-不飽和カルボン酸は、好ましくはアクリル酸及びメタクリル酸、最も好ましくはアクリル酸から選択される。本発明の第二の変形で使用されるα,β-不飽和カルボン酸の量は、好ましくは(z-x)当量(式中、zはポリエポキシドの当量数であり、xはカルボキシル官能性ポリエステルの-COOH当量数である)である。本発明のこの第二変形においては、α,β-不飽和カルボン酸をポリエポキシドより前又は遅くとも同時にカルボキシル官能性ポリエステルに添加することにより輻射線硬化性オリゴマーを製造することが好ましい。
【0035】
本発明の第三の変形によれば、該輻射線硬化性オリゴマーは、1種以上のカルボキシル官能性ポリエステル(a)と、1種以上の(メタ)アクリル化モノエポキシドとの、及び1種以上のポリエポキシド並びに1種以上のα,β-不飽和カルボン酸との反応から得られる。
【0036】
該カルボキシル化ポリエステルと該エポキシドとの反応は、一般に1種以上の触媒の存在下で行われる。該反応の間又は後に1種以上の重合防止剤を添加してもよい。
【0037】
本発明による輻射線硬化性オリゴマーはそれだけで製造することが出来るが、非反応性希釈剤の存在下で製造することも出来る。非反応性希釈剤は、該カルボキシル官能性ポリエステル、該エポキシド、及び(又は)該不飽和カルボン酸とそれらの反応中に反応しない化合物を示すように意図されている。好ましい態様によれば、少なくとも1種の輻射線硬化性非反応性希釈剤が該輻射線硬化性オリゴマーにそれらの合成の間、終り、及び(又は)後に添加される。
【0038】
本発明による輻射線硬化性組成物は、重量で、一般に少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、最も好ましくは少なくとも25%の輻射線硬化性オリゴマーを含む。輻射線硬化性オリゴマーの量は、該硬化性組成物の通常95重量%を、好ましくは80重量%を超えない。
【0039】
本発明による輻射線硬化性組成物は、1種以上の輻射線硬化性オリゴマーの他に、好ましくは少なくとも1種の輻射線硬化性希釈剤を含有する。この希釈剤は、好ましくは共重合性エチレン状不飽和モノマー、より好ましくは一官能価又は多官能価(メタ)アクリレートモノマーである。共重合性エチレン状不飽和モノマーは、一般に光重合条件下で、特に照射により、輻射線硬化性オリゴマーと共重合可能なモノマーを示すように意図されている。好ましい共重合性エチレン状不飽和モノマーは、一官能価及び多官能価(メタ)アクリルアミド及び少なくとも1個の好ましくは6個以下の(メタ)アクリレート基を含む(メタ)アクリレートである。適切なモノマーの例には、オクチル-デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、n-ブチルアクリロイロキシエチルカーバメート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、ブタンジオールモノアクリレート、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、アクリル酸とネオデカン酸のような脂肪族カルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物及びそれらの混合物が含まれる。最も好ましい希釈剤は、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、n-ブチルアクリロイロキシエチルカーバメート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリロイルモルホリン、アクリル酸とネオデカン酸のような脂肪族カルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物及びそれらの混合物である。該輻射線硬化性組成物中に存在する輻射線硬化性希釈剤の量は、重量で、一般に0〜95%、より好ましくは5〜75%、より好ましくは10〜40%である。
【0040】
該輻射線硬化性組成物は好ましくは、ISO 12058により測定して、25℃で100〜8000mPa.s、好ましくは1500〜3500mPa.sの粘度を示す。
【0041】
本発明による方法で使用される輻射線硬化性組成物は通常少なくとも1種の重合防止剤をも含有する。重合防止剤には制限無く、ヒドロキノン、トルヒドロキノン、モノメチルエーテルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、フェノチアジンが含まれる。使用される重合防止剤の量は好ましくは0〜0.5重量%である。
【0042】
該輻射線硬化性組成物は又、該輻射線硬化性オリゴマー及び所望によりその中に存在する他の輻射線硬化性化合物の重合を開始することが出来る少なくとも1種の光化学的開始剤及び(又は)化学的開始剤を含むことが出来る。光化学的開始剤(光開始剤とも呼ばれる)は、光、典型的には紫外線の吸収によりラジカルを発生させることが出来る化合物である。該光開始剤は好ましくは遊離基光開始剤である。
【0043】
紫外線の下で硬化させる場合、少なくとも1種の光開始剤を含む硬化性組成物が好ましい。該組成物における光開始剤又は化学的開始剤の量は、好ましくは0.01重量%と5重量%の間で含まれる。
【0044】
或いは、該組成物は開始剤の不存在下、特に電子線照射により硬化させることが出来る。
【0045】
該輻射線硬化性組成物は又、1種以上の接着促進剤を含有することも出来る。接着促進剤の量は一般に0〜20重量%である。好ましくは2〜15重量%の量の接着促進剤が使用される。
【0046】
本発明による輻射線硬化性組成物は又、顔料、着色剤、及び(又は)他の添加剤、例えば、多官能価(メタ)アクリル化化合物、導電性顔料、分散剤、流れ調整剤、スリップ剤、難燃剤、紫外線防護剤を含むことも出来る。添加剤の量は好ましくは10重量%を超えない。
【0047】
本発明による輻射線硬化性組成物は好ましくは実質的に水及び揮発性有機溶剤(VOC’s)と考えられている有機溶剤を含まない。従って、該組成物は一般に、後の硬化中水又は溶剤の蒸発を必要としない(硬化後)100%固体の輻射線硬化性組成物と考えられる。
【0048】
本発明による輻射線硬化性組成物は、改良された可撓性、接着性、及び曲げ並びに急速な変形に対する耐亀裂性、及び改良された耐腐食性と共に、良好な耐薬品並びに溶剤性、耐引掻き性、及び表面硬度を有する塗膜を得ることを可能にする。該塗膜は可撓性及び表面特性の改良されたバランスを有する。該輻射線硬化性組成物は、又改良された耐熱性を有し、良好な電気絶縁性を示す。これらの性質により、該組成物は金属、プラスチック及びガラスのような基体上への塗布用途のような多数の用途に使用するのに適切となるのである。本発明による組成物は、金属塗装、コイル被覆、及び装飾のような、特に農業及び建設機械、家庭電化製品用の塗装、パイプ塗装、建物塗装、銅線被覆のような電線被覆、自動車関係用途、特に自動車の再塗装における下塗り、及び缶塗装のような多数の用途に適している。該輻射線硬化性組成物は又絵付け成形のような熱成形用途に使用することも出来る。該組成物は又電気スリーブ及び合せガラスの製造に使用するのにも適している。該組成物は包装用の材料及びプラスチックのような可撓性基体を塗装するのに特に有用である。該輻射線硬化性組成物は又高い可撓性及び耐衝撃性を示す紫外線硬化性スクリーンインクの配合にも有用である。
【0049】
従って本発明は又、上記に説明した組成物の塗布用途に対する使用、特に上記に説明した組成物で物品を塗布する工程を含む塗布物品の製造方法にも関する。
【0050】
該輻射線硬化性組成物は金属及びコイルの塗布用途に特に適していることが分った。従って本発明は又、金属塗布、特にコイル被覆用途に対する使用にも関し、より具体的には以下の工程:
(1)らせん状に巻かれた金属シートをほどき、
(2)該金属シートを、上記に説明した少なくとも1種の輻射線硬化性オリゴマーを含む硬化性組成物で塗布し、
(3)該組成物を硬化させ、そして
(4)該塗布金属シートを再びらせん状に巻くこと、
を含む塗布金属シートコイルの製造方法にも関する。
【0051】
該金属シートは一般に、冷間圧延鋼(前処理有り又は無し)、熱間圧延鋼(前処理有り又は無し)、ステンレス鋼、電気亜鉛めっき鋼及び溶融亜鉛めっき鋼のようなZn処理鋼(前処理有り又は無し)、Al(前処理有り又は無し)、及び溶融すずから選択される。
【0052】
本発明による方法において、該金属シートのほどき及び巻き直しはそれらに適した任意の手段により行うことが出来る。本発明による方法において、ほどいた金属シートは、それを該硬化性組成物で塗布する前に、任意の適切な処理に提供することが出来る。該ほどいた金属シートは、保護油層を除去するために通常清浄される。清浄後、腐食防護及び塗膜接着性を向上させるために、該シートに化学薬品前処理を適用することも出来る。
【0053】
本発明による方法において、該輻射線硬化性組成物は、浸漬塗装、吹付け塗り、静電塗装、フィルムコーティング、カーテンコーティング、真空コーティング、ロールコーティング等のようなそれに適した任意の手段により、塗布すべき物品、特に金属シートに塗布することが出来る。それは好ましくはロールコーティングにより塗布される。該物品、特に金属シートへの該硬化性組成物の塗布は、例えば、金属シート、ロールコーター、及び(又は)硬化性組成物を加熱することにより、室温又はそれより高温のような任意の適切な温度で行うことが出来る。
【0054】
該物品、即ち金属シートを該硬化性組成物で塗布した後、後者は硬化される。硬化、即ち重合は、熱硬化又は照射のような当業者に周知の任意の適切な手段により達成することが出来る。照射硬化は、紫外線、又はガンマ線、X線、電子線のような電離線を使用することにより行うことが出来る。本発明による方法では、電子線及び特に紫外線が好ましい。
【0055】
該硬化性組成物の硬化後、塗布された金属シートをすぐに巻き直すか、又は巻き直す前にそれに1つ以上の更なる塗膜を塗布するか、又は巻き直した塗布金属シートを他の塗布ラインに移動させてそこで1つ以上の更なる塗膜をそれに塗布することが出来る。本発明による方法においては、上記で定義した二つ以上の硬化性組成物で金属シートを塗布するために、工程(2)及び(3)を繰返すことが出来る。この場合、該硬化性組成物は同じであっても異なっていても良い。
【0056】
本発明による方法は、溶剤の量を減少させて又は溶剤の使用なしでも塗布物品、特に金属コイルを得ることを可能にし、それ故に火災危険の減少及びエネルギー使用の減少を可能にし、溶剤の除去又は再利用及び該ラインにおけるスペース節約(乾燥用オーブン全く必要なし)に対する要求を可能にするのである。
【0057】
本発明による方法は、塗布物品を後成形に使用するのに適したものとする、改良された可撓性、接着性、及び曲げ並びに急速な変形に対する耐亀裂性、及び改良された耐腐食性と共に、改良された耐薬品並びに溶剤性、耐引掻き性、及び表面硬度を有する塗布物品、特に金属シートを得ることを可能にする。該塗膜は可撓性及び表面特性の改良されたバランスを有する。
【0058】
本発明による方法は、金属表面上への亜鉛層の沈着後に亜鉛めっき、即ちエレクトロ亜鉛ライン上で硬化性下塗りを塗布するために使用された場合、現行方法の以下の工程:亜鉛めっき、即ちエレクトロ亜鉛ライン上における巻き直し前のストリップの油処理、化学洗浄、化学前処理、及び塗布ライン上における古典的下塗りの塗布、のいくつか又はすべてを避けることを可能にするであろう。化学前処理はしばしばCr(VI)を用いたクロメート処理であり、本発明による方法の使用はこの環境問題を解決することを可能にするであろう。本発明による方法は、例えば、クロメート処理による、金属の化学前処理の使用なしでも良好な耐腐食性を有する塗布金属コイルを得ることを可能にする。
【0059】
本発明は更に、電気スリーブ被膜製造のための該輻射線硬化性組成物の使用に関し、そして上記に説明した輻射線硬化性組成物で好ましくはガラス繊維から作られたスリーブを塗布及び(又は)含浸する電気スリーブ被膜の製造方法に関する。塗布及び(又は)含浸後、該輻射線硬化性組成物は上記に説明したように硬化させる。このスリーブは、絶縁耐熱性電気ケーブルが得られるように、電線又は電線束を包囲するために使用することが出来る。
【実施例】
【0060】
以下に続く実施例は本発明を制限することなく例証するものである。特に明記した場合を除き、実施例で述べる部は重量部である。
【0061】
〔準備例1〕ヒドロキシル官能性ポリエステルPE1
加熱ジャケットをつなぎ攪拌器を装着した2リットルの反応器に、513gのネオペンチルグリコール及び646gのアジピン酸を添加した。窒素流の下で該反応混合物を攪拌し215℃まで徐々に加熱し、水を蒸留により除去した。その酸価が約50mgKOH/gに到達した時に、0.20gのFASCAT 4102(すず触媒)を大気圧で添加しその反応混合物を215℃で更に加熱し、該酸価が1mgKOH/gより低くなるまで水を真空下で除去した。得られたポリエステルは56mgKOH/gのヒドロキシル価を有する透明な液体であり、その平均分子量は約2000であった。
【0062】
〔準備例2〕ヒドロキシルポリエステルPE2
223gの1,4-ブタンジオール、272gのネオペンチルグリコール、及び670gのアジピン酸を使用した以外は、準備例1に記載した方法によりポリエステルを製造した。該ポリエステルは56mgKOH/gのヒドロキシル価を有する透明な液体であり、その平均分子量は約2000であった。
【0063】
〔準備例3〕カルボキシルポリエステルPE3
加熱ジャケットをつなぎ攪拌器を装着した7リットルの反応器に、2023gのネオペンチルグリコール(NPG)及び3518gのアジピン酸を添加した。窒素流の下でその反応混合物を攪拌し215℃まで徐々に加熱し、水を蒸留により除去した。
その酸価が約50mgKOH/gに到達した時に、1.25gのFASCAT 4102を大気圧で添加し該反応混合物を215℃で更に加熱し、そのヒドロキシル価が1mgKOH/gより低くなるまで水を真空下で除去した。得られたポリエステルは56mgKOH/gの酸価を有する透明な液体であり、その平均分子量MNは約2000であった。
【0064】
〔実施例1〕輻射線硬化性オリゴマーの製造
攪拌器、液体添加漏斗及び温度計を装着した反応フラスコ中に、2504gのポリエステルPE1、371gのフタル酸無水物、及び10gのオクタン酸クロム触媒(AMC-2)を入れた。その混合物を115℃に加熱し、この温度で2時間維持した。180gのアクリル酸、2.88gのヒドロキノンHQ、及び5.96gのAMC-2の混合物を添加し、その反応混合物を攪拌し103℃で1時間維持した。
【0065】
次に926gのビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル(BADGE)を温度が120℃を超えないように該反応混合物に滴加し、酸価が2.5mgKOH/gより低くなりエポキシ価が0.1%より低くなるまで該反応混合物を110℃で更に攪拌した。
【0066】
90300mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、60℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0067】
〔実施例2〕
1749gのイソボルニルアクリレート(IBOA)をアクリル酸と一緒に反応混合物に添加した以外は、実施例1を繰返した。55700mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、25℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0068】
その代りに、反応の終りに80℃への冷却後、該IBOAを反応混合物に添加した。53200mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、25℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0069】
〔実施例3〕
次の量、即ち、626gのポリエステルPE2、93gのフタル酸無水物、45gのアクリル酸、232gのBADGE、3.99gのAMC-2、0.72gのHQ、及び271gのIBOAを用いて、実施例2に記載した操作によりオリゴマーを合成した。7800mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、60℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0070】
〔実施例4〕
攪拌器、液体添加漏斗及び温度計を装着した反応フラスコ中に、470gのポリエステルPE3及び0.48gのMeHQを入れた。反応混合物を103℃に加熱し、34gのアクリル酸、1.45gのAMC-2及び290gのIBOAの混合物を反応器に添加した。該温度を103℃で1時間維持した。次に174gのBADGEを温度が120℃を超えないように該反応混合物に滴加し、酸価が2.5mgKOH/gより低くなりエポキシ価が0.1%より低くなるまで該反応混合物を110℃で更に攪拌した。37300mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、25℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0071】
〔実施例5〕
ポリエステルPE2の代りに626gのポリエステルPE1を用いて、実施例3に記載した操作によりオリゴマーを合成した。32000mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、60℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0072】
〔実施例6〕
次の量、即ち、260gのポリエステルPE1、38gのフタル酸無水物、129gのアクリル酸、386gのBADGE、2.26gのAMC-2、0.65gのBHT、及び350gのIBOAを用いて、実施例2に記載した操作によりオリゴマーを合成した。700mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、60℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0073】
〔実施例7〕
IBOAの代りに290gのフェノキシエチルアクリレートを用いて、実施例4に記載した操作によりオリゴマーを合成した。21000mPasの粘度(コーンとプレートによる粘度、25℃におけるISO 3219)を有する生成物が得られた。
【0074】
〔比較例8R〕
アクリル化ポリエステルを以下のようにして準備した。油浴につなぎ攪拌器を装着した1lの二重ジャケット反応器に、400gのポリエステルPE1、31.7gのアクリル酸、14.2gのp-トルエンスルホン酸(PTSA)、288gのトルエン、0.73gのCu2O、0.55gのメチルヒドロキノン(MeHQ)及び0.73gのTNPPを添加した。反応混合物を酸素流の下で還流温度(115〜120℃)まで加熱した。水を共沸蒸留により除去した。もはや水が蒸留されなくなった時、0.6gのMeHQ及び0.36gのTNPPを加え、トルエンを減圧下蒸留した。得られたポリエステルアクリレートは60℃で1544mPa.sの粘度(ヘプラー、60℃におけるISO 12058)を有していた。
【0075】
〔比較例9R〕
400gのポリエステルPE2を用いた以外は比較例8Rのようにアクリル化ポリエステルを製造した。該ポリエステルアクリレートは60℃で898mPa.sの粘度(ヘプラー、60℃におけるISO 12058)を有していた。
【0076】
〔実施例10〜19及び比較例20R〜23R〕
紫外線硬化性配合物を、
90部の、夫々実施例2〜5、7、比較例8R及び9Rで得られた生成物、又は市販樹脂EBECRYL(登録商標)629及びEBECRYL(登録商標)3213、
5部の接着促進剤(EBECRYL(登録商標)171)、
3部の光開始剤(ADDITOL(登録商標)CPK)、
2部の光開始剤(TPO-L)、
を混合することにより製造した。
【0077】
該紫外線硬化性配合物を10μmバーコーターにより溶融亜鉛めっき鋼(実施例10〜14及び比較例22R並びに23R)又はクロメート処理エレクトロ亜鉛鋼(実施例15〜19及び比較例20R並びに21R)上に塗布し、120W/cmの焦点の合ってない中圧水銀蒸気ランプからの紫外線に曝して粘着性のない皮膜を得た。
【0078】
該試料を、耐溶剤性(ECCA T11)、クロス・ハッチ接着性(ISO 2409)、曲げに対する接着性及び耐亀裂性(T-曲げ試験、EN 13523-7)、急速な変形に対する接着性及び耐亀裂性(裏面衝撃、ISO/DIS 6272-ASTM D 2794)、及び低速延伸変形に対する接着性(ISO 1520)に関して試験した。
【0079】
〔実施例24及び25〕
紫外線硬化性配合物を、
45部の、実施例1で得られた生成物、
45部のフェノキシエチルアクリレート(EBECRYL(登録商標)114)、
5部の接着促進剤(EBECRYL(登録商標)171)、
3部の光開始剤(ADDITOL(登録商標)CPK)、
2部の光開始剤(TPO-L)、
を混合することにより製造した。
【0080】
該紫外線硬化性配合物を10μmバーコーターにより溶融亜鉛めっき鋼(実施例24)又はクロメート処理エレクトロ亜鉛鋼(実施例25)上に塗布し、実施例10におけるように硬化させ評価した。
【0081】
〔実施例26及び27〕
紫外線硬化性配合物を、
43.2部の、実施例1で得られた生成物、
46.8部のイソボルニルアクリレート、
5部の接着促進剤(EBECRYL(登録商標)171)、
3部の光開始剤(ADDITOL(登録商標)CPK)、
2部の光開始剤(TPO-L)、
を混合することにより製造した。
【0082】
該紫外線硬化性配合物を10μmバーコーターにより溶融亜鉛めっき鋼(実施例26)又はクロメート処理エレクトロ亜鉛鋼(実施例27)上に塗布し、実施例10におけるように硬化させ評価した。
【0083】
得られた結果を下の表に提示する。
【0084】
【表1】

【0085】
上記に得られた結果の比較から分かるように、本発明によるオリゴマーは、改良された可撓性、曲げ及び急速な変形に対する接着性及び耐亀裂性と一緒に、改良された耐薬品及び溶剤性を同時に有する塗膜を得ることを可能にする。
【0086】
〔実施例28〕
実施例7で得られた生成物100部と光開始剤5部を混合することにより、紫外線硬化性配合物を製造した。
【0087】
〔実施例29〕
実施例7で得られた生成物80部、アクリロイルモルホリン20重量部、及び光開始剤5部を混合することにより、紫外線硬化性配合物を製造した。
【0088】
実施例28及び29の配合物を用いて独立の皮膜を製造し、それらの機械的性質及び耐熱性を試験し、市販の可撓性エポキシアクリレート(EBECRYL(登録商標)3708)から得た皮膜と比較した。表中の結果から、本発明による組成物はより良い機械的及び熱的性質を示し、電気スリーブ用被膜として用いるのに特に適するものとなっている。
【0089】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
30℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有し、酸構成成分の全量に対して、75〜100モル%の4〜14個の炭素原子を有する少なくとも1種の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、及び所望により0〜25モル%の少なくとも1種の他の脂肪族、脂環式及び(又は)芳香族ポリカルボン酸、及び、アルコール構成成分の全量に対して、25〜100モル%の少なくとも1種の分枝鎖脂肪族ジオール、及び所望により0〜75モル%の少なくとも1種の他の脂肪族又は脂環式ポリオールから得られる1種以上のカルボキシル官能性ポリエステル(a)と、(b1)1種以上の(メタ)アクリル化モノエポキシド並びに(又は)(b2)1種以上のポリエポキシド及び1種以上のα,β不飽和カルボン酸、との反応から得られる、30℃未満のガラス転移温度TG及び(又は)溶融温度Tmを有する少なくとも1種の輻射線硬化性オリゴマーを含む、輻射線硬化性組成物。
【請求項2】
該カルボキシル官能性ポリエステルが10〜340mgのKOH/gの酸価を有する、請求項1に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項3】
該カルボキシル官能性ポリエステルが400〜9800の数平均分子量を有する、請求項1又は2に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項4】
該輻射線硬化性オリゴマーが1種以上のカルボキシル官能性ポリエステル(a)、並びに、1種以上のポリエポキシド並びにアクリル酸及び(又は)メタクリル酸から得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項5】
該ポリエポキシドが芳香族又は脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、芳香族又は脂肪族二価酸のジグリシジルエステル、及び脂環式ジエポキシドから選択される、請求項4に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項6】
少なくとも15重量%の輻射線硬化性オリゴマーを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項7】
5〜75重量%の少なくとも1種の輻射線硬化性希釈剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項8】
該輻射線硬化性希釈剤が一官能価(メタ)アクリレートである、請求項7に記載の輻射線硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の輻射線硬化性組成物の塗布用途に対する使用。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の輻射線硬化性組成物を用いて物品を塗布する工程を含む、塗布物品の製造方法。
【請求項11】
以下の工程、すなわち、
(1)巻かれた金属シートをほどき、
(2)該金属シートに該硬化性組成物を塗布し、
(3)該組成物を硬化させ、そして
(4)該塗布金属シートを再び巻くこと、
を含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該物品がガラス繊維スリーブである、請求項10に記載の方法。


【公表番号】特表2009−528413(P2009−528413A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556739(P2008−556739)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051048
【国際公開番号】WO2007/099016
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(505365965)サイテック サーフェース スペシャリティーズ、エス.エイ. (38)
【Fターム(参考)】