説明

農作業機

【課題】ピンロック部材がロック解除状態になってしまうことを防止する農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機4は、トップピン7と係合する上部係合凹部11、ロワピン8と係合する下部係合凹部12、および下部係合凹部12内からのロワピン8の抜出しを防止するロック状態となるピンロック部材15を有するクイックカプラ3に連結する3点連結部22を有する機体21を備える。機体21の3点連結部22のピン取付部30には、ピンロック部材15の下方への回動を規制してこのピンロック部材15をロック状態に維持するリンチピンを着脱可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クイックカプラに連結して使用する農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トラクタの3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)への農作業機の連結を容易にするものとしてクイックカプラ(オートヒッチフレーム)が知られている。
【0003】
クイックカプラは、例えば農作業機のトップマストの先端に装着されたトップピンと係合する上部係合凹部と、農作業機の左右のロワアームの先端に装着されたロワピンと係合する下部係合凹部と、各下部係合凹部に対応して設けられ一方向への回動により下部係合凹部内からのロワピンの抜出しを防止するロック状態となり他方向への回動により下部係合凹部内からのロワピンの抜出しを許容するロック解除状態となる回動可能なピンロック部材(フック部材)とを備えた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−325003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成のクイックカプラを使用してトラクタの3点リンクヒッチ部にそのクイックカプラを介して農作業機を連結した場合には、作業時にクイックカプラのピンロック部材が不本意にロック解除状態になってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、クイックカプラのピンロック部材が不本意にロック解除状態になってしまうことを防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の農作業機は、トップピンと係合する上部係合凹部、ロワピンと係合する下部係合凹部、および一方向への回動により前記下部係合凹部内からの前記ロワピンの抜出しを防止するロック状態となり他方向への回動により前記下部係合凹部内からの前記ロワピンの抜出しを許容するロック解除状態となる回動可能なピンロック部材を有するクイックカプラに連結して使用する農作業機であって、前記ピンロック部材の回動を規制してこのピンロック部材を前記ロック状態に維持する回動規制部材を有する機体と、この機体に設けられ、農作業を行なう作業体と備えるものである。
【0007】
そして、回動規制部材がピンロック部材の回動を規制してこのピンロック部材をロック状態に維持するため、クイックカプラのピンロック部材が不本意にロック解除状態になってしまうことを防止可能である。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、回動規制部材は、機体のピン取付部に着脱可能に取り付けられたリンチピンであるものである。
【0009】
そして、回動規制部材であるリンチピンを機体のピン取付部に取り付けることによりこのリンチピンにてピンロック部材をロック状態に適切に維持可能であり、また、リンチピンを機体のピン取付部から取り外せばピンロック部材をロック解除状態にすることが可能である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、回動規制部材がピンロック部材の回動を規制してこのピンロック部材をロック状態に維持するため、クイックカプラのピンロック部材が不本意にロック解除状態になってしまうことを防止できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、回動規制部材であるリンチピンを機体のピン取付部に取り付けることによりこのリンチピンにてピンロック部材をロック状態に適切に維持でき、また、リンチピンを機体のピン取付部から取り外せばピンロック部材をロック解除状態にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図1において、1は走行車であるトラクタで、このトラクタ1は、後部に3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持装置)2を有している。そして、トラクタ1の3点リンクヒッチ部2にはクイックカプラ(オートヒッチフレーム)3が装着され、このクイックカプラ3に牽引式の農作業機4が連結されている。すなわち、トラクタ1の3点リンクヒッチ部2にクイックカプラ3を介して農作業機4が連結されている。
【0014】
なお、農作業機4は、例えばトラクタ1の走行(牽引動作)により圃場を前方に移動しながら圃場の深い位置(作業深さは例えば30〜45cm)の土(例えば心土層の土である心土)まで耕耘する耕耘作業機(チゼルプラウ)である。
【0015】
クイックカプラ3は、図1、図3ないし図5に示すように、略三角形状のカプラ本体6を備えている。カプラ本体6の上部には農作業機4のトップピン7と係脱自在に係合する上部係合凹部11が上下2段に形成され、この各上部係合凹部11は上方に向って凹状のものである。カプラ本体6の下部左右両側には農作業機4のロワピン8と係脱自在に係合する左右一対の下部係合凹部12が形成され、この各下部係合凹部12は後方に向って凹状のものである。
【0016】
また、カプラ本体6には、左右方向の軸13を中心とする一方向(上方)への回動により凸部分14がロワピン8の後方側に位置して下部係合凹部12内からのロワピン8の抜出しを防止するロック状態となり左右方向の軸13を中心とする他方向(下方)への回動により凸部分14がロワピン8の後方側から離れて下部係合凹部12内からのロワピン8の抜出しを許容するロック解除状態となるフック状の左右一対のピンロック部材(フック部材)15が軸13を介して上下方向に回動可能に取り付けられ、各ピンロック部材15は対応する下部係合凹部12の近傍位置に配設されている。
【0017】
なお、ピンロック部材15は、操作レバー16の操作によりロック状態およびロック解除状態に選択的に切換え可能となっている。また、図示しないが、ピンロック部材15を付勢してロック状態またはロック解除状態に保持するばね等の付勢手段が取り付けられている。
【0018】
農作業機4は、図1ないし図5に示すように、クイックカプラ3に連結される機体(作業体取付フレーム)21を備えている。機体21は、クイックカプラ3に連結する3点連結部22を前部に有し、後部に作業体取付部23を有している。
【0019】
3点連結部22は、左右方向に長手状のフレーム部24から突出した1本のトップマスト25および左右一対で2本のロワアーム26を有し、トップマスト25の前端部には上部係合凹部11内に入り込んでこの上部係合凹部11と係脱自在に係合する左右方向のトップピン7が取り付けられ、ロワアーム26の前端部には下部係合凹部12内に入り込んでこの下部係合凹部12と係脱自在に係合する左右方向のロワピン(ロックピン)8がRピン27およびEリング28にて抜止めされた状態に取り付けられている。
【0020】
また、ロワアーム26の前端部にはピン取付部30を構成するコ字枠31が固着され、このコ字枠31には左右方向に貫通したピン用孔部32が形成されている。
【0021】
そして、コ字枠31のピン用孔部32には、トラクタ1の3点リンクヒッチ部2にクイックカプラ3を介して連結された農作業機4による作業時に、ロック状態のピンロック部材15の下面に当接することによりこのピンロック部材15の下方への回動を規制してこのピンロック部材15をロック状態に維持する回動規制部材であるリンチピン35が差し込まれて抜止めされた状態に取り付けられている。すなわち、リンチピン35が機体21の3点連結部22のロワアーム26のピン取付部30に着脱可能に取り付けられ、この取り付けられたリンチピン35の左右方向のピン部36にてロック状態のピンロック部材15の下方への回動が規制されてこのピンロック部材15がロック状態に維持される。
【0022】
また、農作業機4の連結解除時には、図2の2点鎖線で示すようにリンチピン35のばね部37を回動操作してから、リンチピン35を機体21のピン取付部30から取り外し、その後、図4の2点鎖線で示すように操作レバー16の操作によりピンロック部材15を下方回動させることによりこのピンロック部材15をロック解除状態にする。
【0023】
なお、リンチピン35は、図2および図3に示されるように、ピン部36およびこのピン部36に回動可能に設けられたばね部37を有している。ピン部36は、コ字枠31のピン用孔部32に挿通可能な軸部分41と、この軸部分41の一端に設けられた頭部分42とにて構成されている。ばね部37は、基端部にピン部36の頭部分42に回動可能に連結された連結部分43を有し、先端部にピン部36の軸部分41の他端に当接する略円弧状の当接部分44を有している。
【0024】
また、図1に示されるように、機体21の作業体取付部23には、農作業、例えば耕耘作業をする作業体51が取り付けられている。
【0025】
作業体51は、やや湾曲した縦長状のフレーム52を有し、このフレーム52の下端部前側には所定の作業幅をもって圃場の土(主として心土)を切削して持ち上げる金属製の第1切削面部である第1土作業板部(刃板部)53を前面部に有するチゼル54が取り付けられ、フレーム52の下端部後側にはウイング55が取り付けられている。
【0026】
また、フレーム52には、このフレーム52の前端縁に沿って位置して所定の作業幅をもって第1土作業板部53からの土を受け入れて圃場表面近傍まで持ち上げるとともに自らも圃場の土を切削して圃場表面近傍まで持ち上げる合成樹脂製の第2切削面部である第2土作業板部(センターボード部)56を前面部に有する切削部材57が取り付けられている。さらに、フレーム52には、所定の作業幅をもって第2土作業板部56からの土を受け入れて圃場表面上方まで持ち上げて側方に反転放てきする合成樹脂製の反転面部である第3土作業板部(トップボード部)58を前面部に有する反転部材59が取り付けられている。
【0027】
なお、第1土作業板部53および第2土作業板部56は互いに上下に隣接して位置し、第2土作業板部56および第3土作業板部58は互いに上下に隣接して位置する。また、土が付着しにくい合成樹脂製の第2土作業板部56は切削部材57の金属製の補強板部60にこの補強板部60上に重なり合うようにして着脱可能に設けられ、土が付着しにくい合成樹脂製の第3土作業板部58は反転部材59の金属製の補強板部61にこの補強板部61上に重なり合うようにして着脱可能に設けられている。
【0028】
次に、上記一実施の形態の作用等を説明する。
【0029】
トラクタ1の3点リンクヒッチ部2に予め装着されたクイックカプラ3に農作業機4の機体21の3点連結部22を連結する場合、まず、クイックカプラ3の上部係合凹部11に農作業機4の機体21の3点連結部22のトップピン7を引っ掛けて上部係合凹部11とトップピン7とを互いに係合させる。
【0030】
次いで、トラクタ1の3点リンクヒッチ部2を作動させることにより農作業機4全体をやや持上げ、機体21の3点連結部22のロワピン8を下部係合凹部12内に入り込ませて、下部係合凹部12とロワピン8とを互いに係合させる。
【0031】
その後、操作レバー16の操作でピンロック部材15を上方回動させることによりピンロック部材15をロック状態にし、このピンロック部材15の凸部分14を下部係合凹部12内のロワピン8の後方側に位置させて、ロワピン8が下部係合凹部12内から抜け出ないようにする。
【0032】
次いで、リンチピン35を機体21のピン取付部30に取り付けて、ロック状態のピンロック部材15が軸13を中心として下方回動しないようにする。すなわち、リンチピン35にてロック状態のピンロック部材15の下方回動を規制することでピンロック部材15をロック状態に維持する。
【0033】
このようにして農作業機4を3点リンクヒッチ部2にクイックカプラ3を介して連結した状態で、トラクタ1の走行により農作業機4全体を前方に移動させると、作業体51のチゼル54の第1土作業板部53および切削部材57の第2土作業板部56とにて圃場の土が切削されて持ち上げられる。そして、この持ち上げられた土は、反転部材59の第3土作業板部58にて例えば進行方向右側方に向けて反転放てきされる。
【0034】
なお、耕耘作業完了後、農作業機4をクイックカプラ3から外す場合には、リンチピン35を機体21のピン取付部30から取り外してから、操作レバー16の操作によりピンロック部材15を下方回動させてこのピンロック部材15をロック解除状態にする。
【0035】
そして、上記一実施の形態の農作業機4によれば、農作業機4のリンチピン35がクイックカプラ3のピンロック部材15の下方回動を規制してこのピンロック部材15をロック状態に維持するため、作業体51による農作業時にクイックカプラ3のピンロック部材15が不本意にロック解除状態になってしまうことを防止でき、農作業機4の脱落を確実に防止できる。
【0036】
なお、回動規制部材は、機体21のピン取付部30に対して着脱可能なリンチピン35からなるものには限定されず、例えばピンロック部材15の下方回動を規制する規制位置およびピンロック部材15の下方回動を許容する許容位置間で移動可能な可動部材等からなるものでもよい。また、作業体51による農作業は、耕耘作業には限定されず、例えば代掻き作業、畦塗り作業、播種作業等、任意である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の農作業機の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同上農作業機の部分平面図である。
【図3】同上農作業機の部分側面図である。
【図4】同上農作業機のリンチピンを取り外した状態での部分側面図である。
【図5】同上農作業機をトラクタに連結するためのカプラの分解側面図である。
【符号の説明】
【0038】
3 クイックカプラ
4 農作業機
7 トップピン
8 ロワピン
11 上部係合凹部
12 下部係合凹部
15 ピンロック部材
21 機体
30 ピン取付部
35 回動規制部材であるリンチピン
51 作業体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップピンと係合する上部係合凹部、ロワピンと係合する下部係合凹部、および一方向への回動により前記下部係合凹部内からの前記ロワピンの抜出しを防止するロック状態となり他方向への回動により前記下部係合凹部内からの前記ロワピンの抜出しを許容するロック解除状態となる回動可能なピンロック部材を有するクイックカプラに連結して使用する農作業機であって、
前記ピンロック部材の回動を規制してこのピンロック部材を前記ロック状態に維持する回動規制部材を有する機体と、
この機体に設けられ、農作業を行なう作業体と
を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
回動規制部材は、機体のピン取付部に着脱可能に取り付けられたリンチピンである
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−25736(P2006−25736A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211718(P2004−211718)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】