説明

農作業機

【課題】遠隔操作をより最適な位置で行うことができるトラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【解決手段】トラクタ1に装着して農作業を行う農作業機2において、アクチュエータ26、28と、アクチュエータ26、28と接続される制御部20と、一端にコネクタ11aを有するハーネス11の他端と接続される操作部10とを備え、制御部20には、異なる位置に配置される複数のコネクタ21a、23aとハーネス21、23を介して接続され、操作部10と接続されているコネクタ11aは、制御部20と接続されている複数のコネクタ21a、23aとそれぞれ脱着可能であり、制御部20は、接続されている操作部10の操作信号を受信してアクチュエータ26、28を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関し、特に、遠隔操作をより最適な位置で行うことができるトラクタに装着して農作業を行う農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着(連結)して農作業を行う農作業機は、アクチュエータ等の電装品を遠隔で操作できるようになっているものがある。その場合、通常、遠隔操作可能な電装品を操作する操作部はトラクタから操作できるようにトラクタ上に配置してある。その一例として、特許文献1にハーネス(配線)の収納に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−11222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業者がトラクタを降りて農作業機の周囲から操作するような場合には、トラクタ上に配置した操作部を農作業機側に配線とともに持ち出す必要があり、この場合、配線の長さに制約があり、操作するのに最適かつ安全な位置での操作を行えない場合がある。また、無線通信により操作をする場合には操作部と農作業機の両方に送受信機を設ける必要があり、コストアップとなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて、遠隔操作をより最適な位置で行うことができるトラクタに装着して農作業を行う農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の農作業機は、トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、アクチュエータと、制御部と、操作部側コネクタを有する操作部とを備え、前記制御部は、接続されている前記操作部の操作信号を検出して前記アクチュエータを制御し、前記操作部側コネクタと脱着可能で前記制御部と接続されてそれぞれ異なる位置に配置される複数の制御部側コネクタを有することを特徴とする。
【0007】
さらに本発明の農作業機は、前記制御部と接続されている複数のコネクタの内の少なくとも1つは、トラクタ側に配置されることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記制御部と接続されている複数のコネクタの内の少なくとも1つは、農作業機側に配置されることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記制御部と接続されている複数のコネクタの内の1つは、農作業機の側面に配置されることを特徴とする。
さらに本発明の農作業機は、前記制御部と接続されている複数のコネクタの内の1つは、農作業機の後部に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、遠隔操作をより最適な位置で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の農作業機の全体構成図を示す。
【図2】実施例1の農作業機の側面図を示す。
【図3】実施例2の農作業機の全体構成図を示す。
【図4】実施例2の農作業機の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、実施例1の農作業機の全体構成図を示す。図2は、実施例1の農作業機の側面図を示す。
【0012】
トラクタ1の後部には、農作業機2が装着されている。トラクタ1にはバッテリー15を有しており、操作部10がトラクタ1の運転席近傍に配置されている。農作業機2には制御部20と、制御部20と配線等を介して接続される第1の回転センサ25、25、第1のモータ26、26、第2の回転センサ27、27、第2のモータ28、28、リミットスイッチ29等を有している。第1の回転センサ25、25、第1のモータ26、26、第2の回転センサ27、27、第2のモータ28、28は、それぞれ左右の両側に設けられており、左右の半分側の動力の提供や回転の検知ができるようになっている。操作部10は操作スイッチ等を配して後述する操作を可能としている。また、制御部20は、電子デバイス等により構成され後述する制御を可能とする。
【0013】
制御部20には、第1操作ハーネス21が接続されその先端はコネクタ21aとなっている。一方、操作部10には、操作部ハーネス11が接続されその先端はコネクタ11aとなっている。これらのコネクタ21a、11aは脱着が可能であり、(トラクタ1と農作業機2の脱着を考慮して)トラクタ1と農作業機2の連結部近辺で接続されている。連結部近辺として、例えばトラクタ1側の後側や農作業機2の前側、トラクタ1と農作業機3の連結部などである。また、ハーネスがたわまないようにコネクタ21aを固定しておいてもよい。この接続により、制御部20と操作部10の情報のやりとりが可能となる。
【0014】
また、制御部20には、電源ハーネス22が接続されその先端はコネクタ22aとなっている。一方、バッテリー15には、バッテリーハーネス16が接続されその先端はコネクタ16aとなっている。これらのコネクタ22a、16aは脱着が可能であり、トラクタ1と農作業機2の連結部近辺で接続されている。これにより、バッテリー15から電源を確保することができる。
【0015】
さらに、制御部20には、第2操作ハーネス23が接続されその先端はコネクタ23aとなっている。コネクタ23aは、例えば、農作業機2の側面等の農作業機2側の適した位置に配置されている。このコネクタ23aとは、操作部10のコネクタ11aと脱着可能となっている。そのため、コネクタ23aと操作部10のコネクタ11aを接続した場合、農作業機2の近辺からも制御部20と操作部10の情報のやりとりが可能となる。
【0016】
実施例1の農作業機2は、施肥播種機である。装着部37をトラクタ1(図2では前方部図示省略)の後部に装着し、トラクタのPTO動力により耕耘爪などを回転させて耕耘を行うロータリー38を有している。ロータリー38の上部には、肥料ホッパ31が設置されており、内容物として内部に肥料を有している。肥料ホッパ31の下部には凹部等を有する操出ローラが設けられ、これを第1のモータ26に連動して回転させることで肥料が肥料ホース32を通り肥料出口33から排出される。さらに、肥料ホッパ31の後部には、種子ホッパ34が設置されており、内容物として内部に種子を有している。種子ホッパ34の下部には凹部等を有する操出ローラが設けられ、これを第2のモータ28に連動して回転させることで種子が種子ホース35を通り種子出口36から排出される。肥料出口33は、ロータリー38の前側に設置されているため、排出された肥料は、土中に攪拌される。一方、種子出口36は、ロータリー38より後ろに位置し、耕耘した土中に種子が排出される。
【0017】
第1の回転センサ25は、第1のモータ26又はそれと連動する操出ローラの回転速度を検出し、第2の回転センサ27は、第2のモータ28又はそれと連動する操出ローラの回転速度を検出する。なお、リミットスイッチ29は、ワイヤ30により、農作業機2を上に上げたときに作用して、旋回時などにモータ26、28を停止して内容物の無駄な排出が行われないようになっている。
【0018】
これらの構成により、操作部10のコネクタ11aがコネクタ21aと接続されている場合、作業者は、トラクタ1に乗車しながら、操作部10に有するスイッチを操作する。すると操作信号は制御部20へ送られ、アクチュエータである第1のモータ26や第2のモータ28を回転させて、肥料や種子の散布のON,OFFや各モータ26、28の回転数の変更を操作することができる。さらに、このとき、第1の回転センサ25や第2の回転センサ27の情報を制御部20を介して送信し操作部10が有する表示部に表示させて作業者に知らせることができる。操作信号の通信方式は、CANなどのシリアル通信によるバスラインによっても可能であるし、スイッチ毎に配線されるパラレル入出力の方式でも可能である。
【0019】
一方、肥料や種子の排出量の変更方法として、一つは、第1のモータ26や第2のモータ28の回転数を変更する方法である。モータ26,28の回転数が変更されて操出ローラの回転数が変更すれば内容物の時間当たりの排出量も変更される。この場合、操作部10により変更させることができる。また、操作部10に液晶などにより表示部を設けて、回転センサ25、27から得られるモータや操出ローラの回転の情報を表示させることで、現在の状況を作業者が把握することができる。
【0020】
また、もう一つの排出量の変更方法として、肥料ホッパ31や種子ホッパ34の下に設けられた調節ダイヤルを作業者が操作して、操出ローラの凹部の大きさを変更する方法である。凹部の大きさが変更されることにより、そこの中に入る肥料や種子の量が変わるため一度に排出する内容物の量が変更される。この場合、作業者は、トラクタ1から降りて農作業機2側で操作する必要がある。
【0021】
作業者は、新たな種類の肥料や種子の散布を始める前に、調量作業を行う。計量カップやストップウォッチ等の機器を使用して、実際に肥料出口33や種子出口36から排出される時間当たりの排出量をはかって確認を行う。これは、わずかな違いが散布量のトータルでは大きな違いになるからである。しかし、操作部10はトラクタ1の運転席近傍にあるため、通常ではハーネスの長さが届かず、肥料出口33や種子出口36の側で操作部10の操作を行うことができない。
【0022】
そのため、作業者は、操作部10のコネクタ11aをコネクタ21aから取り外し、農作業機2側のコネクタ23aに取り付ける。このことにより、操作部10を肥料ホッパ31や種子ホッパ34の近くまで持ってくることができ、実際に排出量を調量しながら調整を行うことができる。
【0023】
コネクタ23aの位置としては、左右両側に配置されていてもよい。図1の例では、回転センサ25、25と第1のモータ26、26が右と左で分かれて制御されている。そのため、作業者は、それぞれモータに対する調量を行う場合に、左右のコネクタを使用すれば操作部ハーネス11を長くする必要がなくなる。また、コネクタ21aとコネクタ23aは、ハーネスの途中から分岐していてもよい。
【実施例2】
【0024】
図3は、実施例2の農作業機の全体構成図を示す。
【0025】
トラクタ1の後部には、農作業機3が装着されている。トラクタ1にはバッテリー15を有しており、操作部10’がトラクタ1の運転席近傍に配置されている。農作業機3には制御部40と、制御部40と配線等を介して接続されるアクチュエータ50を有している。アクチュエータ50の具体例は後述する。操作部10’は操作スイッチ等を配して後述する操作を可能としている。また、制御部40は、電子デバイス等により構成され後述する制御を可能とする。
【0026】
制御部40には、第1操作ハーネス41が接続されその先端はコネクタ41aとなっている。一方、操作部10’には、操作部ハーネス11’が接続されその先端はコネクタ11a’となっている。これらのコネクタ41a、11a’は脱着が可能であり、(トラクタ1と農作業機3の脱着を考慮して)トラクタ1と農作業機3の連結部近辺に接続されている。連結部近辺の位置や固定は実施例1と同様である。これにより、制御部40と操作部10’の情報のやりとりが可能となる。
【0027】
また、制御部40には、電源ハーネス42が接続されその先端はコネクタ42aとなっている。一方、バッテリー15には、外部電源ハーネス17が接続されスイッチ18を介してその先端はコネクタ17aとなっている。これらのコネクタ42a、17aは脱着が可能であり、トラクタ1と農作業機3の連結部近辺で接続されている。これにより、バッテリー15から電源を確保することができる。なお、スイッチ18はトラクタ1のエンジン始動のスイッチと共有でき、例えば、エンジン始動のためのキーを回転させるときにONとなるキースイッチの構成とすることができる。コネクタ17aの形状は、例えば、日農工規格で規定されるコネクタ形状とすることができる。これらにより、トラクタ1による作業を行わないときの無駄な電力消費を防止できる。
【0028】
さらに、制御部40には、第2操作ハーネス43が接続されその先端はコネクタ43aとなっている。コネクタ43aは、例えば、農作業機3の後側中央付近等の農作業機3側の適した位置に配置されている。このコネクタ43aは、操作部10’のコネクタ11a’と脱着可能となっている。そのため、コネクタ43aと操作部10’のコネクタ11a’を接続した場合、農作業機3の近辺からも制御部40と操作部10’の情報のやりとりが可能となる。
【0029】
図4は、実施例2の農作業機の正面図を示す。農作業機3は折りたたみ機構を備えた代掻き機であり、入力軸51側をトラクタ1に装着し、カバー52内で代掻き爪が回転することにより代掻き作業を行う。
【0030】
電動油圧シリンダ56は、シリンダが伸び縮みすることにより、回動機構57を作用させサイド作業部55を(図4の左側のように)上側に折りたたみ、代掻き機3の全幅を短くすることができる。延長レーキ開閉装置60は、内部のモーターが回転することにより、制御バー62やワイヤ63を介して延長レーキ61を左右に回動させ、延長レーキ61を使用するか否かを選択することができる。
【0031】
これら、電動油圧シリンダ56や、延長レーキ開閉装置60(のモーター)などをアクチュエータ50として、操作部10’で操作することができ、効率のよい農作業を行うことができる。
【0032】
通常、操作部10’のコネクタ11a’がコネクタ41aと接続されて、作業者は、トラクタ1の運転席からアクチュエータ50の操作をすることができる。そして、メンテナンスなどにより農作業機3側からアクチュエータ50の操作をしたい場合は、操作部10’のコネクタ11a’をコネクタ41aから取り外し、農作業機3側のコネクタ43aに取り付ける。このことにより、操作部10’は、農作業機3の近くに持って行くことが可能となる。なお、操作部10’と制御部40との通信方式は実施例1と同様である。また、コネクタ41aとコネクタ43aは、ハーネスの途中から分岐していてもよい。
【0033】
以上のように実施例1、2と2種類の農作業機について例を示したが、これ以外でも、トラクタに装着してアクチュエータを制御する農作業機全般に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 トラクタ
2、3 農作業機
10、10’ 操作部
11a、11a’ コネクタ
20 制御部
21a、23a コネクタ
26 第1のモータ
28 第2のモータ
31 肥料ホッパ
34 種子ホッパ
40 制御部
41a、43a コネクタ
50 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタに装着して農作業を行う農作業機において、
アクチュエータと、制御部と、操作部側コネクタを有する操作部とを備え、
前記制御部は、接続されている前記操作部の操作信号を検出して前記アクチュエータを制御し、
前記操作部側コネクタと脱着可能で前記制御部と接続されてそれぞれ異なる位置に配置される複数の制御部側コネクタを有することを特徴とする農作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業機において、
前記制御部と接続されている複数の制御部側コネクタの内の少なくとも1つは、トラクタ側に配置されることを特徴とする農作業機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の農作業機において、
前記制御部と接続されている複数の制御部側コネクタの内の少なくとも1つは、農作業機側に配置されることを特徴とする農作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の農作業機において、
前記制御部と接続されている複数の制御部側コネクタの内の1つは、農作業機の側面に配置されることを特徴とする農作業機。
【請求項5】
請求項3に記載の農作業機において、
前記制御部と接続されている複数の制御部側コネクタの内の1つは、農作業機の後部に配置されることを特徴とする農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−120499(P2012−120499A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275220(P2010−275220)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000188009)松山株式会社 (285)
【Fターム(参考)】