説明

農作業車の散布ブーム伸縮装置

【課題】散布ブームの伸縮装置において、構成を簡単化し、円滑に伸縮させる。
【解決手段】センター散布ブームの左右両側に左右散布ブームを設けた農作業車の散布ブーム伸縮装置において、左右散布ブームを所定長さの左右散布フレームと、左右散布フレームに長手方向に沿わせて取り付けている左右固定散布ブームと、左右散布フレームに長手方向に沿わせて移動自在に取り付けている左右移動散布ブームとにより構成し、左右散布フレームの両端部に取り付けているブラケットに左右散布フレームに平行状にチエーンレールを張り状態で取り付け、左右移動散布ブームに取り付けている左右駆動モータの左右駆動スプロケットをチエーンレールに噛み合わせたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業車の散布ブーム伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作業機の散布ブーム伸縮装置において、センター散布ブームの左右両側部に左右散布ブームを設け、左右散布ブームを伸縮自在に構成したものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−13935号公報(5頁、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術の左右散布ブームは、所定長さの左右散布フレームに固定散布ブームを固定状態で取り付け、左右散布フレームに左右移動散布ブームを長手方向に沿って移動自在に取り付ける。そして、左右散布フレームの一旦側の駆動モータの駆動スプロケットと他端側の従動ローラとの間にループ状にチエーンを巻回し、このチエーンの一端に左右移動散布ブームを固着し、駆動モータの正逆転により左右移動散布ブームを往復移動させる構成である。従って、往復移動構成が複雑となってコスト高となり、また、チエーンを張ると駆動スプロケットが引っ張った側に傾き、駆動モータの負荷が増大し、駆動モータの寿命を縮めるという不具合があった。
【0005】
そこで、この発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような不具合を解消するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、センター散布ブーム(11)の左右両側に左右散布ブーム(12,12)を設け、該左右散布ブーム(12,12)を所定長さの左右散布フレーム(12a,12a)と、該左右散布フレーム(12a,12a)に長手方向に沿わせて取り付けている左右固定散布ブーム(12b,12b)と、該左右散布フレーム(12a,12a)に長手方向に沿わせて移動自在に取り付けている左右移動散布ブーム(12c,12c)とにより構成し、前記左右散布フレーム(12a,12a)の両端部に取り付けているブラケット(21a,21b)に左右散布フレーム(12a,12a)と平行状にチエーンレール(22,22)を張り状態で取り付け、前記左右移動散布ブーム(12c,12c)に取り付けている左右駆動モータ(24,24)の左右駆動スプロケット(25,25)を前記チエーンレール(22,22)に噛み合わせたことを特徴とする農作業車の散布ブーム伸縮装置とする。
【0007】
請求項2の発明は、前記左右散布フレーム(12a,12a)に長手方向に沿った案内レール(27,27)を設け、前記左右移動散布ブーム(12c,12c)に取り付けているスライドブラケット(30,30)の内側面に上側スライドローラ(28,28)、及び、左右下側スライドローラ(29,29)を前記駆動スプロケット(25)の移動方向両側に略等距離隔てた状態で設け、前記案内レール(27,27)により前記スライドローラ(28,28、29,29)を介してスライドブラケット(30,30)を移動自在に支持したことを特徴とする請求項1に記載の農作業車の散布ブーム伸縮装置とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、構成を簡単化し、駆動モータ(24)の負荷を大幅に減少させ、移動速度を高めながら左右移動散布ブーム(12c,12c)を移動させ、駆動モータ(24)の耐久性を高めることができる。
【0009】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の前記効果に加えて、左右移動散布ブーム(12c,12c)を支持するスライドローラ(28,28、29,29)には略均等に加重がかかった状態で支持することができ、駆動モータ(24)を平衡に保持しながら左右移動散布ブーム(12c,12c)を円滑に移動させ、前後ローラ(28,…)の偏摩耗を防止し、耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】農作業車の側面図。
【図2】農作業車の平面図。
【図3】散布装置の正面図。
【図4】散布装置の側面図、一部の平面図。
【図5】散布装置の長手方向に沿った図。
【図6】散布装置の正面図。
【図7】散布装置の正面図。
【図8】散布装置の側面図、正面図。
【図9】散布装置の側面図、正面図。
【図10】散布装置の側面図。
【図11】散布装置の正面図。
【図12】農作業車の側面図。
【図13】農作業車の平面図。
【図14】農作業車の側面図、ボンネット後部の側面図、背面図。
【図15】農作業車の分解した平面図。
【図16】農作業車の側面図。
【図17】農作業車の一部省略した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明を備えた薬液を散布する散布作業車1について説明する。
散布作業車1の走行車体2には略等径の左右前輪3,3、左右後輪4,4が設けられていて、車体2の前側部には防除散布装置Yを取り付けている。走行車体2の左右前輪3,3間上方にはエンジンEを搭載し、エンジンE回りをボンネット5で被覆している。左右前輪3,3と左右後輪4,4間上方には操縦席6を設け、操縦席6の前方にハンドル7を設けている。ハンドル7を左右に操舵すると、左右前輪3,3及び左右後輪4,4が同時に操舵される四輪操舵構成としている。また、操縦席6の回りを取り囲むように薬液タンク9を着脱自在に設け、その下方に防除ポンプ10を設けている。
【0012】
しかして、薬液タンク9の薬液は防除ポンプ10により防除散布装置Yに送られ、センター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12の散布ノズル14,…から薬液を散布する。
【0013】
次に、図3〜図5に基づき防除散布装置Yのセンター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12について具体的に説明する。
センター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12は、機体前側部のブーム支持部材15に支持されている。ブーム支持部材15にセンター散布ブーム11を左右方向に沿うように取り付け、ブーム支持部材15を左右方向の軸で軸支し、昇降シリンダ(図示省略)により回動するように構成している。また、ブーム支持部材15の左右両側部に、左右散布ブーム12,12の基部を前後方向の軸回りに回動可能に支持し、左右開閉シリンダ17,17により左右両側に突出した散布姿勢、機体内側の収納姿勢に回動可能に構成している。
【0014】
左右散布ブーム12,12は、所定長さの左右散布フレーム12a,12aと、所定間隔毎に散布ノズル14,…を備えた固定散布ブーム12b,12bと、左右散布フレーム12a,12aに長手方向にスライド調節自在に取り付けている移動散布ブーム12c,12cにより構成されていて、左右移動散布ブーム12c,12cは駆動モータ24により往復移動調節できる構成である。
【0015】
次に、左右散布ブーム12,12の往復移動構成について説明する。
左右散布フレーム12a,12aに固定散布ブーム12b,12bを長手方向に沿わせて取り付け、左右散布フレーム12a,12aに固定散布ブーム12b,12bに近接して平行状に左右移動散布ブーム12c,12cを移動可能に設け、この左右移動散布ブーム12c,12cを往復移動調節し、散布幅を任意に変更可能に構成している。
【0016】
左右散布フレーム12a,12aの左右両側部に基端側ブラケット21a、先端側ブラケット21bを上方へ突出するように取り付け、基端側ブラケット21a,先端側ブラケット21bの上下方向中間部に左右固定散布ブーム12b,12bと平行状にチエーンレール22,22を引っ張り状態で取り付け、このチエーンレール22,22の長さだけ左右移動散布ブーム12c,12cが移動するようにしている。
【0017】
左右移動散布ブーム12c,12cの基端部にステー23,23を取り付け、このステー23,23に左右駆動モータ24,24を取り付け、左右駆動モータ24,24の駆動軸に左右駆動スプロケット25,25を取り付けている。そして、左右駆動スプロケット25,25を上側からチエーンレール22,22に噛み合わせ、左右駆動スプロケット25,25を正逆回転させて、左右移動散布ブーム12c,12cを往復移動させるように構成している。
【0018】
従来の左右移動散布ブーム12c,12cの往復移動構成は、例えば次のように構成されていた。左右散布フレーム12a,12aの一側に駆動モータ24,24を取り付け、この駆動モータ24,24の駆動軸に駆動スプロケット25,25を取り付け、左右散布フレーム12a,12aの他側に従動スプロケットを設け、この駆動スプロケット25,25と従動スプロケットの間にループ状のチエーンを巻回し、駆動モータ24,24により正逆駆動していた。そして、このチエーンの一端に左右移動散布ブーム12c,12cを取り付け、往復移動させる構成であった。従って、部品点数が多く、構成が複雑でコスト高となる不具合があった。また、チエーンを引っ張ると、駆動モータ24がチエーンに引っ張られて傾き、駆動モータ24の負荷が大きくなり、駆動モータ24の寿命を縮める原因ともなっていた。
【0019】
しかし、前記構成によると、駆動モータ24の負荷を大幅に減少せせながら左右移動散布ブーム12c,12cを移動させることができる。また、左右移動散布ブーム12c,12cの移動速度を高め、駆動モータ24の耐久性を高めることができる。
【0020】
また、左右散布フレーム12a,12aの前後両側には、図5に示すように、案内レール27,27を長手方向に沿わせて設けている。また、左右移動散布ブーム12c,12cの前後一側には、逆U字型のスライドブラケット30を取り付け、このスライドブラケット30の両内側面には、左右上側スライドローラ28,28、及び、左右下側スライドローラ29,29を軸支している。
【0021】
また、左右散布フレーム12a,12aの前後外周部に設けた案内レール27,27により前記スライドローラ28,28、29、29を嵌合支持している。そして、この左右上側ローラ28,28、下側前後ローラ29,29の移動方向中間部に駆動モータ24の駆動スプロケット25を位置させ、駆動スプロケット25がチエーンレール22の上側に位置する状態で噛み合いして駆動している。しかして、案内レール27,27を左右上側下側ローラ28,…、29,…で案内レール27,27を上下から挟持しながら、左右移動散布ブーム12c,12cを往復移動させ、散布幅を任意に変更可能に構成している。
【0022】
前記構成によると、左右上側前後ローラ28,28、左右下側前後ローラ29,29には略均等に加重がかかった状態で、左右移動散布ブーム12c,12c及び駆動モータ24を支持することができ、ローラ28,…、29,…の一部の偏摩耗を防止し、耐久性を高めることができる。
【0023】
また、左右散布フレーム12a,12aの左右両側部に設けた基端側ブラケット21a,先端側ブラケット21aにチエーンレール22を取り付けるにあたり、左右固定散布ブーム12b,12bと平行状に取り付けているので、左右移動散布ブーム12c,12cを一定の移動速度で左右方向に往復移動させることができる。
【0024】
また、駆動モータ24の駆動軸に取り付けている駆動スプロケット25をチエーンレール22を噛み合わせるにあたり、駆動スプロケット25をチエーンレール22の上側に位置する状態で噛み合わせ、左右移動散布ブーム12c,12cを往復移動させるので、駆動スプロケット25は移送手段であると共に、左右移動散布ブーム12c,12cの基端部を支持しているため、上側ローラ28,28の転がり抵抗が小さくなり、円滑に移動させることができる。
【0025】
また、基端側ブラケット21a,先端側ブラケット21bの上端部には、固定散布ブームと平行状に支持棒31を取り付けている。また、防除ポンプ10から吐出する散布薬液を基部散布ホース13により左右固定散布ブーム12b,12bの近傍まで送り、基部散布ホース13の先端を分岐し、その一方を左右固定散布ブーム12b,12bの基部に接続し、その他方をスパイラル状の散布ホース33の基端部に接続し、散布ホース33の先端を左右移動散布ブーム12c,12cの基端部に接続している。
【0026】
また、前記支持棒31における前記駆動モータ24の上方部位にスパイラル状の散布ホース33を左右方向に沿わせて移動自在に支持し、駆動モータ24の駆動スプロケット25が正逆転し左右移動散布ブーム12c,12cが駆動モータ24と共に左右方向に往復移動すると、スパイラル状の散布ホース33が長手方向に広がったり、あるいは、狭まったりしながら、左右移動散布ブーム12c,12cに薬液を送るようにしている。
【0027】
前記構成によると、左右移動散布ブーム12c,12cが左右先端側に移動する際に、スパイラル状の散布ホース33を支持棒31の先端側で支持し、基端側のスパイラル状の散布ホース33はホースの巻き間隔を広げながら移動するので、スパイラル状の散布ホース33の引っ張り抵抗を少なくし、円滑に先端側に移動させることができる。
【0028】
次に、図6に基づき左右散布ブーム12,12の着脱構成について説明する。
機体前側部のブーム支持部材15にはセンター散布ブーム11を左右方向に沿うように取り付け、ブーム支持部材15の左右両側部には左右散布ブーム12,12の基端部を前後方向の軸41回りに上下回動自在に支持している。
【0029】
ブーム支持部材15の左右両側部に左右マスト42,42を立設し、左右マスト42,42の上端部に昇降シリンダ43,43の一端を前後方向の軸43a,43a回りに回動自在に軸支している。また、左右散布ブーム12,12の左右散布フレーム12a,12aの内側寄りに基端側ブラケット21bを立設し、この基端側ブラケット21bの下部に昇降シリンダ43,43の他端を前後方向の軸43b回りに回動自在に軸支連結している。
【0030】
しかして、ブーム支持部材15のマスト42に左右昇降シリンダ43,43の一端を支持した状態で、軸41を取り外すと共に、左右昇降シリンダ43,43の他端から軸43bを取り外すことにより、左右昇降シリンダ43,43を左右方向マスト42,42に支持したままの状態で、左右散布ブーム12,12を取り外すことができる。また、左右昇降シリンダ43,43の他端側をブーム支持部材15の左右両側部に軸41,41で支持することができる。
【0031】
前記構成によると、左右昇降シリンダ43,43を機体に支持したままの状態で、左右散布ブーム12,12を楽に取り外すことができる。また、左右昇降シリンダ43,43の他端を軸41,41でブーム支持部材15の左右両側部に支持することにより、左右昇降シリンダ43,43のぶらぶらを防止しながら、機体内側寄りに支持することができる。
【0032】
また、左右散布ブーム12,12を機体から取り外した状態で、左右昇降シリンダ43,43を機体側の左右マスト42,42に支持するにあたり、図7に示すように、最短縮状態の左右昇降シリンダ43,43を収納支持できるように、マスト42に支持ステー44を設けると、左右昇降シリンダ43,43を最小寸法にして収納することができ、左右昇降シリンダ43,43の伸縮ロッド部のさびの発生を抑制し、耐久性を高めることができる。
【0033】
次に、図8に基づき左右散布ブーム12,12の左右移動構成の他の実施例について説明する。
左右散布ブーム12,12は、所定長さの左右散布フレーム12a,12aに固定散布ブーム12b,12bを長手方向に沿わせて取り付け、左右散布フレーム12a,12aには固定散布ブーム12b,12bに近接して平行状に左右移動散布ブーム12c,12cを移動自在に設けている。
【0034】
左右移動散布ブーム12c,12cの一側面には、図8(B)に示すように、逆U字型のスライドブラケット57を取り付けている。このスライドブラケット57の内側面には、左右上側スライドローラ58,58、及び、左右下側スライドローラ59,…を設けている。そして、左右散布フレーム12a,12aに長手方向に沿って設けた案内レール60,60に前記スライドローラ58,58、59、59を嵌合させて、左右移動散布ブーム12c,12cを往復移動自在に支持し、散布幅を任意に変更可能に構成している。
【0035】
また、左右散布フレーム12a,12aの基端部に駆動モータ24を設け、左右散布フレーム12a,12aの先端部に従動ローラ61を設けている。そして、駆動モータ24の駆動スプロケット25と従動ローラ61を、図8(B)に示すように、左右散布フレーム12a,12aに対して右側にオフセット状に設け、この駆動スプロケット25と従動ローラ61の間にループ状のチエーン56を巻き掛けている。そして、チエーン56の一端に左右移動散布ブーム12c,12cを取り付け、駆動モータ24を正逆転させて左右移動散布ブーム12c,12cを往復移動させるようにしている。
【0036】
また、基端側ブラケット21aと先端側ブラケット21bの上端部には左右固定散布ブーム12b,12bと平行状に支持棒31を取り付け、この支持棒31の基端部側にスパイラル状に巻いた散布ホース33を支持している。また、防除ポンプ10から薬液を基部散布ホース13により左右固定散布ブーム12b,12b近傍まで送り、基部散布ホース13の先端を分岐し、その一方を左右固定散布ブーム12bの基部に接続し、その他方をスパイラル状の散布ホース33の基端部に接続し、散布ホース33の先端を左右移動散布ブーム12c,12cの基端部に接続している。しかして、左右移動散布ブーム12c,12cが左右方向に往復移動すると、スパイラル状の散布ホース33が左右方向に広がったり、狭まったりしながら、左右移動散布ブーム12c,12cに薬液を送るようにしている。
【0037】
前記基端側ブラケット21a、先端側ブラケット21bの上下中間部にワイヤ51を張力がかかるように連結している。また、左右移動散布ブーム12c,12cには、図8(B)に示すように、左右散布フレーム12a,12aに左側にオフセットするように支持棒52を立設し、その支持棒52の先端にローラ53を取り付け、このローラ53をワイヤ51により下方から支持している。
【0038】
前記チエーン56を所定の張力で張った場合には、チエーン56が左右移動散布ブーム12c,12cに対して一側にオフセットしている関係で、左右移動散布ブーム12c,12cのチエーン56側が持ち上げ傾向になって左右に移動する。しかし、前記構成によると、ワイヤ51とローラ53とにより、左右移動散布ブーム12c,12cのチエーン56側の上方への移動を阻止し、左右移動散布ブーム12c,12cの先端側が上り傾斜のときにも移動を停止させずに円滑に移動することができる。
【0039】
また、支持棒52にローラ53を設けるにあたり、図8(A)に示すように、スライドブラケット57の左右方向中間部に支持棒52を立設し、その先端のローラ53をワイヤ51で下方から支持している。そして、左右移動散布ブーム12c,12cと一体的に左右に移動するスライドブラケット57には、ウエイト上側スライドローラ58,…、下側スライドローラ59,…を内包状にし支持しているので、左右移動散布ブーム12c,12cの傾きを矯正しながら姿勢を良好に保ち、ローラ53及び上側スライドローラ58,…、下側スライドローラ59,…の回転を円滑にし、偏摩耗を防止することができる。
【0040】
また、図9に示すように、左右散布フレーム12a,12aの左右両側部に取り付けている基端側ブラケット21a,先端側ブラケット21bの上下方向中間部に、長孔61,61を設け、ワイヤ51を上下調整自在に取り付け、スライドローラ58,…によりスライドブラケット57をやや持ち上げ状態として、ワイヤ51を固定できるように構成している。このように構成すると、上側スライドローラ58,…の転がり抵抗を少なくし、左右移動散布ブーム12c,12cを円滑に移動させることができる。
【0041】
また、図10に示すように構成してもよい。左右散布フレーム12a,12aには左右移動散布ブーム12c,12cを左右方向に移動自在に支持し、左右散布フレーム12a,12aのできるだけ先端側に駆動モータ24を取り付け、基端側に従動ローラ61を設ける。そして、左右散布フレーム12a,12aからの駆動モータ24の駆動スプロケット25の上端縁部と従動ローラ61の上端縁部とを同一高さに設定し、チエーン56がこの同じ高さに沿って移動するように構成する。
【0042】
図11に示すように、左右散布フレーム12a,12aの基端側に駆動モータ24を取り付けると、駆動スプロケット25の周辺に駆動モータ24取付用のモータカバー24aを設ける必要から、マスト42との間隔が狭くなり、上方への回動が制限されるという不具合がある。
【0043】
しかし、前記構成によると、従動ローラ61の周辺に空間部が形成され、左右散布ブーム12,12の上方への回動角度を大きくすることができる。また、左右散布フレーム12a,12aの先端部に設けた駆動モータ24の駆動スプロケット25の直径を大きくすることができ、左右移動散布ブーム12c,12cの移動速度を速くすることができる。
【0044】
次に、図12及び図13に基づき左右散布ブーム12,12の収納構成について説明する。
この実施例は、センター散布ブーム11及び左右散布ブーム12,12を備えた農用作業車両において、センター散布ブーム11に対して左右散布ブーム12,12を機体内側部から左右両側の拡開位置に回動調節する左右開閉シリンダ17,17,と、該左右開閉シリンダ17,17,の開閉位置を検出するシリンダ開閉位置検出センサSE1と、車速センサ(図示省略)と、制御用のコントローラ62を備えている。
【0045】
しかして、左右散布ブーム12,12が拡開調節状態で、基準速度を超えた車速が所定時間継続すると、コントローラ62の指令により、左右開閉シリンダ17,17を閉調節し左右散布ブーム12,12を機体内側寄りに収納する。また、左右散布ブーム12,12が拡開調節状態で、車速が基準速度を超えると、コントローラ62の指令により、左右開閉シリンダ17,17を閉調節し、左右散布ブーム12,12をすぐ機体内側寄りに収納するようにしてもよい。
【0046】
前記構成によると、操作を簡単化しながら、高速走行時に左右散布ブーム12,12を収納することができ、損傷を防止することができる。
また、左右散布ブーム12,12が左右両側に小拡開状態のときには、車速を速くし、大拡開状態のときには、車速を遅くするように制御してもよい。
【0047】
次に、図14に基づきボンネット5の冷却風の排出構成について説明する。
車体前側部のボンネット5内にはエンジンEを搭載し、ボンネット5の後方にはハンドルコラム63を立ち上げ、ハンドルコラム63の上部にステアリングハンドル7を設けている。エンジンEの後方にラジエータ(図示省略)を配設し、ボンネット5の後側上部には網を張設した上部吸気口5aを、後側下部に網を張設した下部吸気口5bを設け、ボンネット5の後側上部及び後側下部から冷却風を吸入するように構成している。
【0048】
前記構成によると、ボンネット5の上部吸気口5a及び下部吸気口5bから冷却風を吸入することができ、下部吸気口5bからの吸い込み量を軽減し、下部吸気口5bからの稲の花等のダストの吸い込みを少なくし、ラジエータのゴミ詰まりを抑制し、エンジンEのオーバーヒートを防止することができる。
【0049】
また、機体に防除ポンプ6を設けるにあたり、図15に示すように、2個の防除ポンプ10,10を設けるようにしてもよい。このように構成すると、薬液の少量散布時において車速が速い高馬力のときには、1個の防除ポンプ10のみを使用することにより、使用馬力を減らし過負荷運転を回避することができる。また、走行動力に高馬力がかかり走行速度が減速した場合には、1個の防除ポンプ10のみを使用し、PTO軸65の回転数をPTO変速装置66で減速して負荷を軽減することにより、低速走行に対応した薬液の少量散布をすることができる。
【0050】
次に、図16及び図17に基づき散布作業車1の他の実施例について説明する。
走行車体2の下部には下部カバー64を装着し、ボンネット5内のエンジンEを含めた走行車体1の下側全面にカバーを施し、稲などの作物を巻き込まないようにしている。また、操縦席6の下方に防除ポンプ10を配設し、この防除ポンプ10にはファン10aを取り付け、防除ポンプ10の前側にパンチングメタル等の孔明き板体67を設け、外部へ排気可能にしている。しかして、防除ポンプ10と共にファン10aを回転させることにより、下部カバー64内に溜まったエンジンEの熱風を送風し、孔明き板体67から機外へ排出し、下部カバー64内の温度上昇を防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 センター散布ブーム
12 左右散布ブーム
12a 左右散布フレーム
12b 左右固定散布ブーム
12c 左右移動散布ブーム
21a ブラケット
21b ブラケット
22 チエーンレール
24 左右駆動モータ
25 左右駆動スプロケット
27 案内レール
28 前後ローラ
30 スライドブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター散布ブーム(11)の左右両側に左右散布ブーム(12,12)を設け、該左右散布ブーム(12,12)を所定長さの左右散布フレーム(12a,12a)と、該左右散布フレーム(12a,12a)に長手方向に沿わせて取り付けている左右固定散布ブーム(12b,12b)と、該左右散布フレーム(12a,12a)に長手方向に沿わせて移動自在に取り付けている左右移動散布ブーム(12c,12c)とにより構成し、前記左右散布フレーム(12a,12a)の両端部に取り付けているブラケット(21a,21b)に左右散布フレーム(12a,12a)に平行状にチエーンレール(22,22)を張り状態で取り付け、前記左右移動散布ブーム(12c,12c)に取り付けている左右駆動モータ(24,24)の左右駆動スプロケット(25,25)を前記チエーンレール(22,22)に噛み合わせたことを特徴とする農作業車の散布ブーム伸縮装置。
【請求項2】
前記左右散布フレーム(12a,12a)に長手方向に沿った案内レール(27,27)を設け、前記左右移動散布ブーム(12c,12c)に取り付けているスライドブラケット(30,30)の移動方向前後内側面に上側スライドローラ(28,28)、及び、左右下側スライドローラ(29,29)を前記駆動スプロケット(25)の移動方向両側に略等距離隔てた状態で設け、前記案内レール(27,27)により前記スライドローラ(28,28、29,29)を介してスライドブラケット(30,30)を支持したことを特徴とする請求項1に記載の農作業車の散布ブーム伸縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−4715(P2011−4715A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153955(P2009−153955)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】