説明

農作業車

【課題】 機体を容易に旋回させることができるようにする。
【解決手段】 本発明の農作業車1は、走行手段2により走行自在に支持された機体4に、作業者Mが着座する座部5と、走行手段2を駆動する駆動手段7と、駆動手段7を制御する制御手段6と、制御手段6に対する操作指示を入力する入力手段8とが装備されている。走行手段2は、機体4の後端部に軸支された後輪22と、その前側に軸支された前輪21とを備えている。機体4は、前輪21及び後輪22を接地させると作業者Mを乗せて走行可能な乗車用姿勢となり、機体4の前側を持ち上げると後輪22を支点に略起立し旋回可能な旋回用姿勢となるように構成されている。制御手段6は、入力手段8からの速度切替指示に応じて、前記乗車用姿勢に対して設定された速度で走行させる乗車用制御状態と、前記旋回用姿勢に対して設定された速度で走行させる旋回用制御状態とを切替可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を走行し、圃場に対し、播種、移植、作物の管理、収穫等の農作業を行うための農作業車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、本出願人による農作業車(特許文献1参照。)を例示する。この農作業車81は、図6に示すように、前輪82及び後輪83により単一の畝間を畝長さ方向である前後方向に走行自在に支持された機体84と、後輪83を駆動する駆動部87と、前輪82の前方で、畝の側面に周面が当接し機体84の進行に伴って転動するように機体84の両側にそれぞれ配設された一対の畝ガイドローラ89と、後輪83の後方で、畝の側面に周面が当接し機体84の進行に伴って転動するように機体84の両側にそれぞれ配設された一対の畝ガイドローラ89とを備えている。そして、機体84の前後方向の中央部に装備された座席85に作業者Mを載せ、畝間を畝に沿って走行するようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−245298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の農作業車81を旋回させるときは、駆動部87が停止した状態で、図6に示すように、作業者Mがハンドル98を持って後輪83を浮かせ、前輪82を中心に機体84を旋回させるようになっている。この旋回時における機体の移動を容易にするために、駆動部87を作動させて後輪83を駆動することも考えられる。しかし、旋回作業時は、畝を崩したり作物を傷めたりしないように、作業者を乗せて走行しているときよりも後輪83が走行する速度を低下させる必要があり、この速度の設定をいちいち調節し直す手間がかかるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の農作業車は、
走行手段により走行自在に支持された機体を備え、該機体には、作業者が着座する座部と、前記走行手段を駆動する駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段と、該制御手段に対する操作指示を入力する入力手段とが装備され、
前記走行手段は、前記機体の後端部に軸支された後輪と、その前側に軸支された前輪とを含んでおり、
前記機体は、前記前輪及び前記後輪を接地させると、前記作業者を乗せて走行可能な乗車用姿勢となり、該機体の前側を持ち上げると、前記後輪を支点に略起立し、該後輪により旋回可能な旋回用姿勢となるように構成された農作業車であって、
前記制御手段は、前記入力手段からの速度切替指示に応じて、前記乗車用姿勢に対して設定された速度で走行するように前記駆動手段を制御する乗車用制御状態と、前記旋回用姿勢に対して設定された速度で走行するように前記駆動手段を制御する旋回用制御状態とを切替可能に構成されている。
【0006】
この構成によれば、前記乗車用制御状態及び前記旋回用制御状態を切り替え可能に構成されているので、従来例とは異なり、作業者が前記機体に乗車して作業するときと、作業者が前記機体を旋回させるときとで、いちいち走行する速度の設定を調節し直す手間を省くことができる。
【0007】
前記入力手段は、前記速度切替指示を入力するための旋回スイッチが前記座部よりも前側に配設された態様を例示する。
【0008】
この構成によれば、作業者は、前記座部に着座している場合、前記機体を旋回させている場合のいずれの場合でも、前記速度切替指示を入力し易い。
【0009】
前記機体は、その前側を持ち上げて前記旋回用姿勢にするための持ち手が該前側に配設された態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記持ち手が前記前側に配設されているので、前記機体を前記乗車用姿勢から前記旋回用姿勢に変更し易い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る農作業車によれば、機体を容易に旋回させることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図5は本発明を具体化した一実施形態の農作業車1を示している。この農作業車1は、走行手段2により走行自在に支持された機体4を備えている。機体4は、前側部10と、後側部11と、これらの間に配設されたステップ部12とを備え、作業者Mを載せて畝間Wを畝Uに沿って走行するように構成されている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0013】
機体4の前側部10には、持ち手26、畝ガイドローラ15及び第一のコンテナ台17が装備されている。また、機体4の後側部11には、走行手段2、座部5、駆動手段7、制御手段6、入力手段8及び第二のコンテナ台17が装備されている。また、機体4のステップ部12には、座部5の上面よりも低い位置に、作業者Mの足を載せるためのステップ台25が装備されている。なお、本例では、走行手段2、制御手段6、駆動手段7を後側部11の後側に設け、しかも、該駆動手段7のなかでも特に重いバッテリー30を後側部11の後端側に搭載することにより、農作業車1の重心が機体4の後側に位置するようにしている。
【0014】
持ち手26は、機体4の前側を持ち上げるためのものであり、機体4の前側部10の左右方向へ突設されている。
【0015】
畝ガイドローラ15は、畝Uの側面に周面が当接し機体4の進行に伴って転動するように、該機体4の両側にそれぞれ配設されている(図3参照)。種々の畝間や畝形状に対応できるように、前側部10に対する畝ガイドローラ15の相対位置は調節可能になっている。この構成によれば、前側部10に配設された畝ガイドローラ15により機体4を確実に畝Uに沿うように導くこと、つまり、機体4の進行方向を畝Uに沿わせやすくすることができる。これにより、直線状に形成されていない畝Uや、傾斜地の等高線に沿って設けられた畝Uでも、機体全体を確実に畝Uに沿って走行させることができる。このため、作業者Mは農作業に集中することができる。
【0016】
コンテナ台17は、畝Uから収穫した作物や、畝Uに植える苗等を搭載するコンテナ(図示略)を機体4の前側部10及び後側部11にそれぞれ載置するためのものである。
【0017】
走行手段2は、後側部11の後端部に軸支された左右一対の後輪22と、その前側に軸支された左右一対の前輪21とを備えている。そして、機体4は、前輪21及び後輪22を接地させると、作業者Mを乗せて走行可能な乗車用姿勢(図1〜図3参照)となり、該機体4の前側を持ち上げると、後輪22を支点に略起立し、該後輪22により旋回可能な旋回用姿勢(図5参照)となるように構成されている。
【0018】
駆動手段7は、バッテリー30と、該バッテリー30により動作する電動モータ31と、該電動モータ31の回転力を各前輪21及び後輪22に伝動する動力伝動機構33とを備えている。
【0019】
入力手段8は、図2及び図4に示すように、前輪21及び後輪22を回転駆動させる操作スイッチ27と、前輪21及び後輪22の回転方向を切り替えることにより機体4の進行方向を切り替える前進後進切替スイッチ35と、前輪21及び後輪22の乗車用姿勢における回転速度を調節するための速度調節ダイヤル36と、後輪22(及び前輪21)の回転速度を切り替える速度切替指示を入力するための旋回スイッチ37とを備えている。
【0020】
操作スイッチ27は、ステップ台25の前部に配設されている。この操作スイッチ27は、プッシュ式スイッチとなっている。また、操作スイッチ27は、手で操作する手動スイッチとして、また、座部5に着座した作業者Mが足で操作するフットスイッチとして使用可能になっている。本例では、ステップ台25が強磁性体(本例では鉄)からなるとともに、操作スイッチ27の底面には磁石が配設されることにより、操作スイッチ27がステップ台25に吸着されるようになっている。このように、操作スイッチ27は、ステップ台25上における操作スイッチ27の配設位置を変更可能に取り付けられている。
【0021】
前進後進切替スイッチ35、速度調節ダイヤル36及び旋回スイッチ37は、座部5の前側に配設されている。
【0022】
制御手段6は、入力手段8からの各操作指示に応じて、次のように作動するように構成されている。
(A)操作スイッチ27が押下されている間だけ駆動手段7に前輪21及び後輪22を駆動させる。
(B)前進後進切替スイッチ35が接点35a側に切り替えられると前輪21及び後輪22の回転方向を前進側にし、接点35b側に切り替えられると同回転方向を後進側にする。
(C)旋回スイッチ37が接点37a側(「乗車側」)に切り替えられると前記乗車用姿勢に対して設定された速度で走行するように駆動手段7を制御する乗車用制御状態にし、接点37b側(「旋回側」)に切り替えられると前記旋回用姿勢に対して設定された速度で走行するように駆動手段7を制御する旋回用制御状態にする。なお、接点37a側の回路には、乗車用姿勢に対して設定された速度を調節するための可変抵抗Raが接続されており、該可変抵抗Raは、速度調節ダイヤルに接続されている。また、接点37b側の回路には、旋回用姿勢に対して設定された速度にするための抵抗Rbが接続されている。旋回用姿勢に対して設定する速度としては、特に限定されないが、乗車用制御状態における速度調節可能範囲における低速側の速度に適宜設定することを例示する。
【0023】
次に、この農作業車1を旋回させるときの操作方法について説明する。まず、作業者Mは、コンテナ台17からコンテナ(図示略)を降ろすとともに、旋回スイッチ37を「旋回側」に切り替える。次いで、作業者Mは、機体正面に対峙し、持ち手26を持って、後輪22を支点に機体4を持ち上げる。ここで、農作業車1の重心が機体4の後側に位置しているので、作業者Mは該機体4を容易に持ち上げることができる。このとき、作業者Mは操作スイッチ27を手で操作して機体4の後端部が作業者側へ前進するように後輪22を駆動させると、機体4を容易に略起立した状態にすることができる。そして、機体4は、図5(a)に示すように、後輪22を支点に略起立した状態、かつ、該後輪22により走行自在に支持された前記旋回用姿勢となる(図5(b)に示すように、起立した状態で保持させることも可能。)。ここで、農作業車1は重心が機体4の後側に位置しているので、この状態で機体4の姿勢が安定し易い。次いで、この略起立した状態のままで、作業者Mは機体4を所望の向きに旋回させる。ここで、持ち手26が機体4の左右方向へ突設されているので、作業者Mは機体4を旋回させるときの左右の傾きを支持し易い。また、このときも操作スイッチ27を手で操作することにより機体4を移動させるように適宜後輪22を駆動させることができる。この略起立した状態では、平面視での占有スペースが少ないので、狭いスペースでも機体4を旋回させることができる。最後に、作業者Mは、持ち手26を下げて後輪22を支点にして機体4を降ろすことにより前記乗車用姿勢にするとともに、旋回スイッチ37を「乗車側」に切り替えると、旋回が完了する。
【0024】
以上のように構成された本発明の農作業車1によれば、前記乗車用制御状態及び前記旋回用制御状態を切り替え可能に構成されているので、従来例とは異なり、作業者Mが機体4に乗車して作業するときと、作業者Mが機体4を旋回させるときとで、いちいち走行する速度の設定を調節し直す手間を省くことができる。
【0025】
また、入力手段8は、前記速度切替指示を入力するための旋回スイッチ37が座部5よりも前側に配設されているので、作業者Mは、座部37に着座している場合、機体4を旋回させている場合のいずれの場合でも、前記速度切替指示を入力し易い。
【0026】
また、持ち手26が機体4の前側に配設されているので、機体4を前記乗車用姿勢から前記旋回用姿勢に変更し易い。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)左右一対の畝ガイドローラ15を後側部11にも設けること。
(2)原動機として、バッテリー30で作動する電動モータ31に代えて、燃料で作動するエンジンを採用すること。
(3)前輪21及び後輪22の数を適宜変更すること。
(4)旋回用制御状態における速度を調節可能にすること。具体的には、本例の構成において、抵抗Rbを可変抵抗に変更することを例示する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る農作業車を示す側面図である。
【図2】同農作業車を示す平面図である。
【図3】同農作業車を示す正面図である。
【図4】同農作業車の制御系を示すブロック図である。
【図5】同農作業車の側面図であり、(a)は作業者による旋回中の状態を示す図、(b)は起立した状態を示す図である。
【図6】従来の農作業車の運搬(旋回)状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 農作業車
2 走行手段
4 機体
5 座部
6 制御手段
7 駆動手段
8 入力手段
10 前側部
11 後側部
12 ステップ部
21 前輪
22 後輪
26 持ち手
27 操作スイッチ
37 旋回スイッチ
M 作業者
U 畝
W 畝間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行手段により走行自在に支持された機体を備え、該機体には、作業者が着座する座部と、前記走行手段を駆動する駆動手段と、該駆動手段を制御する制御手段と、該制御手段に対する操作指示を入力する入力手段とが装備され、
前記走行手段は、前記機体の後端部に軸支された後輪と、その前側に軸支された前輪とを含んでおり、
前記機体は、前記前輪及び前記後輪を接地させると、前記作業者を乗せて走行可能な乗車用姿勢となり、該機体の前側を持ち上げると、前記後輪を支点に略起立し、該後輪により旋回可能な旋回用姿勢となるように構成された農作業車であって、
前記制御手段は、前記入力手段からの速度切替指示に応じて、前記乗車用姿勢に対して設定された速度で走行するように前記駆動手段を制御する乗車用制御状態と、前記旋回用姿勢に対して設定された速度で走行するように前記駆動手段を制御する旋回用制御状態とを切替可能に構成された農作業車。
【請求項2】
前記入力手段は、前記速度切替指示を入力するための旋回スイッチが前記座部よりも前側に配設された請求項1記載の農作業車。
【請求項3】
前記機体は、その前側を持ち上げて前記旋回用姿勢にするための持ち手が該前側に配設された請求項1又は2記載の農作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−154540(P2008−154540A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348654(P2006−348654)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】