説明

農作物の残留農薬低減剤

【課題】農薬を使用して栽培した農作物の残留農薬を分解或いは資化する乳酸菌を有効成分として含有するステビア濃縮発酵液を提供する。
【解決手段】ステビアの茎の乾燥粉末とステビア葉の乾燥粉末とを、重量にして9:1〜6:4の割合に配合した原末を煮沸抽出し、得られた抽出液を2.5リットル/kg原末以下になるまで濃縮した水溶液を冷却し、発生ガスを放出できる密封容器に移して常温で10か月以上熟成させて得られたステビア濃縮発酵液であって、上記熟成過程において、ステビア抽出液を濃縮後、冷却工程及び発酵容器に移す工程で混入した浮遊菌及び落下菌であって当該緩衝で生存し得た乳酸菌を有効成分として含有する農作物の残留農薬低減剤及びこの残留農薬低減剤を育成している農作物の施用することにより、残留農薬を除去或いは低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
農作物の栽培にあたって、農薬を使用した結果、残留した農薬を分解或いは資化する乳酸菌を有効成分として含有するステビア濃縮発酵液及びこれを用いた農作物の残留農薬を除去或いは低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成18年5月29日より、改正食品衛生法による残留農薬等ポジティブリスト制度が施行され、食品に残留する農薬等の限度量に関する規制が厳しくなった。この改正法の施行により、残留基準を超える量の農薬等が検出された農作物は出荷することができなくなった。
農作物の栽培にあたっては、農薬を使用しないことが望ましい。しかしながら、現実の問題として、各種のウイルス、細菌、カビ、昆虫等による被害は著しく、農薬を使用せずに農作物を栽培することは極度に困難である。更に、消費者は美味しく、形良く、農薬の残留しない、日持ちのする作物を要求する。この要求に応えるには品種を改良し、時には病虫害に弱い品種を栽培することもある。
【0003】
農薬を使用しない或いは使用量を低減させるために、化学肥料で衰えた土壌の改良をかねて有機堆肥を使用し、病虫害に強い農作物を栽培する試みもある。しかしながら、現実の問題として、病虫害が発生すれば或いは当然発生が予測される場合には、先立って速やかに農薬を用いて駆除しなければ病虫害は更に蔓延する。現実の対策としては、植物が元気に生育するように堆肥等を多用して土地を肥やす方法が採用されている。
【0004】
特許文献1には、ステビアの茎と葉の抽出液を濃縮し、発酵させたステビア液を500〜1500倍に水で希釈し、農作物に噴霧することにより果実や野菜の自然の甘味が増大する技術が開示されている。特許文献2には上記ステビア濃縮発酵液を植物に散布することにより、果実の生育途中における果樹からの落下を防止し、農作物の根張りを促進し、日持ちを向上させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開平3−220109号公報
【特許文献2】特開2000−53515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ステビア抽出液の発酵液を農作物に散布する方法は、この液自体が肥料ではないため、しかるべき時に施肥、灌水を行い、充分に管理された農作物に施用しなければ、満足すべき効果は得られない。近時、ステビア抽出発酵液の顕著な作用に着眼してステビア農法を採用する意欲的な農家が増加しつつある。そしてステビア農法による野菜や穀物は、品質が優れるため市場において高価に販売されている。
【0006】
ステビアの葉又は茎の煮沸抽出液はそのまま放置すると腐敗する。この抽出液を更に濃縮し、原料粉体1kgあたり1.5〜2.5リットル程度に濃縮し、腐敗菌が繁殖できない環境にすると腐敗を防止できる。腐敗菌は濃縮後の放冷期間や発酵容器に移し変える時に混入した空中の浮遊菌や落下菌に由来すると考えられる。腐敗菌をはじめ、一般細菌が繁殖しがたい環境下であっても特定の乳酸菌は生存することができる。そしてこの濃縮液を密栓して常温で熟成させると盛んに発酵し、炭酸ガスを放出する。したがって保存容器としては、密栓し、ガス圧が一定値に上昇したときに密封力に抗してガスを放出し、直ちに密封される特殊密封栓を有する容器に入れて保存する。
ステビア濃縮液は、最初は激しく発酵するが、次第に緩やかになり、半年熟成後には炭酸ガスの放出はきわめて緩徐になるが、商品として供給するには10か月以上熟成させたものが安定している。
【0007】
乳酸菌の培養は通常糖濃度1%で行う。糖濃度3%でも生育するが、5%以上では生育し難いと一般に考えられている。糖度10%にも達する濃厚液の中では一般の乳酸菌も生存できない。本発明者らは、腐敗菌は増殖できず、順調に発酵し、良質なステビア濃縮発酵液を得ているが、このこの糖度10〜11%の濃縮液の中で生存する菌の分離を図ったところ、特殊な乳酸菌が存在することが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成は、ステビアの茎の乾燥粉末とステビア葉の乾燥粉末とを、重量にして9:1〜6:4の割合に配合した原末を煮沸抽出し、得られた抽出液を2.5リットル/kg原末以下になるまで濃縮した水溶液を冷却し、発生ガスを放出できる密封容器に移して常温で10か月以上熟成させて得られたステビア濃縮発酵液であって、上記熟成過程において、ステビア抽出液を濃縮後、冷却工程及び発酵容器に移す工程で混入した浮遊菌及び落下菌であって当該環境下で生存し得た乳酸菌を有効成分として含有する農作物の残留農薬低減剤及びこの残留農薬低減剤を育成している農作物の施用することにより、残留農薬を除去或いは低減することを特徴とする。
【0009】
本発明は、ステビア濃縮発酵液が、農作物の残留農薬を除去或いは低減させる意外な事実を確認し、更に施用した農薬の効果は確実に得られている事実を確認して完成したものである。
これらの乳酸菌を分離し、その特性を研究すると共に一般農場での農作物の比較栽培を行った。その結果、特殊乳酸菌は農薬が高濃度に存在しても生存できるばかりでなく、逆に増殖が促進されるものもあり、これらの菌が残留農薬の低減に寄与している事実を確認した。ステビア濃縮発酵液を施用した農産物は、糖度も高く品質良好で、必要な農薬を施用しているにもかかわらず公的機関の検査において、すべての項目において農薬が検出されなかった。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ステビアの濃縮発酵液の水希釈液を散布したり、灌水したりする方法で農作物を育成させれば、高品質の農作物が得られるのみならず、残留農薬が除去或いは低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る農作物とは植物を介して得られる食品他は食品材料である。具体的には、米、麦等の穀物類、みかん、りんご等の果実類、きゅうり、白菜等の野菜類、さつま芋、大根等の根茎類等あらゆる種類の農作物を包含する。
【0012】
本発明のステビアとは南米パラグァイ及びブラジル原産のキク科の多年性植物、学名ステビア・レバウディアナ、ベルトニ(Stevia rebaudiana Bertoni) である。春から秋にかけて充分に生育したステビアを蕾を持つ前に採取する。刈り取ったステビアの葉を茎と分けて乾燥し粉体とする。茎は3〜10cmに切断し乾燥粉砕して粉体とする。茎と葉のそれぞれの粉体を茎:葉=9:1〜6:4、好ましくは8:2〜7:3に配合し、ステビア原末とする。茎:葉=9:1より茎が多いと抽出して得られる抽出液の量が少なく、茎:葉=6:4より葉が多いとステビア抽出発酵液の品質が低下する。
【0013】
抽出は次のようにして行う、配合粉体1kgに対し6〜10リットルの割合で沸騰水を用意し、沸騰水にステビア原末を投入して約1時間煮沸を続ける。煮沸抽出液を遠心分離機にかけて抽出液からカスを分離する。抽出液はそのまま保存すると腐敗菌により腐敗する。腐敗菌の繁殖を抑制するため、得られた抽出液を、減圧下に液量1/3程度になるまで、1.5時間〜2時間かけて濃縮する。原料粉体1kgから1.5〜2.5リットルの濃縮液が得られる。この液体を発生ガス放出性の密封容器に保存する。濃縮液をそのまま通常の密封容器に入れて保管又は輸送すると、その間の発酵により生じた炭酸ガスにより、容器の内圧が危険な程度の高圧に達するため市販に供することができない。
【0014】
煮沸も濃縮も以後の容器詰めも通常の大気中で行うため、空気中の浮遊菌や落下菌に汚染される。煮沸により、芽胞菌以外は死滅するものと考えられるため、配合粉体に付着している酵母や芽胞菌の胞子がステビア抽出濃縮液の中で発芽発酵すると考えられたが、芽胞菌以外でも冷却工程や容器に詰める工程で混入する菌がある。この中には腐敗菌もあるが、濃縮液中では増殖できずに死滅し、この時点で混入した菌の中で耐高糖度性の乳酸菌が生存し得るのである。
【0015】
発酵は始めは激しく、半年たつとやや穏やかになるが、できれば10か月以上熟成させることにより、発酵がほぼ終了し製品が安定する。濃縮終了直後のpHは5.6程度であるが、1日〜2日後には激しい発酵により4.7〜4.8に低下する。発酵は次第に緩徐になり熟成完了後のpHは3.8〜4.2である。これがビン詰めし、密封して市販できる状態であるが、なお耐高糖度性の菌が生存している。発酵期間を短縮するため、防腐剤等を添加した商品もあるが、自然に熟成させた商品と異なり、農作物の残留農薬低減効果が得られない。
【0016】
本発明者らは、ステビア濃縮発酵液を炭酸カルシウムを含有する特殊GYP培地で培養して得られたコロニーから乳酸菌を分離する作業を繰返して合計3種類の乳酸菌を単離した。GYP液体培地は、グルコース30g、イースト抽出物15g、バクトペプトン15g、酢酸ナトリウム・3H2 O15gに、塩溶液7.5ml、ツィーン80を0.75mlと水を加えて1500mlとする。この方法で分離した新規乳酸菌は、16S rDNAの全塩基配列は配列表の塩基配列1に示す通りであり、系統樹上、及びAP150CHLによる炭水化物資化性能の結果ではラクトバチラス ブッケニリ(Lactobacillus buchneri) に近縁であった。この乳酸菌をFOJB201と命名した。
【0017】
同様にして、他の実験においては、ラクトバチラス ジェノモスプ(Lactobacillus jenomosp. )に近縁で、16S rDNAの全塩基配列が配列表の配列番号2に示す新規乳酸菌を分離し、FOJB202と命名した。同じくラクトバチラス エスピー(Lactobacillus sp. )に近縁で、16S rDNAの全塩基配列が配列表の配列番号3に示す新規乳酸菌を分離し、FOJB203と命名した。
【0018】
これらの乳酸菌の農薬耐性の試験を行った。現実に使用される農薬の種類はあまりに多く列挙しかねるが、有機塩素系農薬、有機リン系農薬、合成ピレスロイド系農薬、カーバメイト系農薬から各々1種類を選んだ。
アルドリン、エンドリン、ディルドリン、ジコホール、クロルデン等の有機塩素系農薬から市販のケルセン乳剤(殺ダニ剤、ジコホール乳剤)を使用した。ジクロルボス、EPN、エトリホス、パラチオン、フェンチオン、フェントエート、アセフェート、マラチオン等の有機リン系農薬から市販のアセフェート(武田薬品工業社製、オルトラン乳剤)を使用した。アルジカルブ、オキサミル、ピリミカルブ、メソミル、フェノブカルブ等のカーバメイト系農薬から市販のメソミル(ランネート水和剤、メソミル45%)を、又合成ピレスロイド系農薬としてエトフェンプロックス(トレボン乳剤、20%)を使用した。
【0019】
試験例1
1)特殊GYP培地を作製した。
2)ケルセン乳剤0.255mlを特殊GYP液体培地に溶解させ250mlにメスアッ プし、1020ppm原液を作製した(培養液中最終濃度は1000ppmとなる)。3)2)を10倍希釈法により、培養液中最終濃度が100ppmになるもの、10pp mになるもの、1ppmになるもの、0.1ppmになるものをそれぞれ作製した。ケ ルセン乳剤0ppmはGYP培地のみを使用したものである。
4)試験管に各濃度のケルセン乳剤添加GYP培地を4.9mlずつ分注した後、オート クレーブで滅菌した。
5)活性化した乳酸菌、FOJB201、FOJB202及びFOJB203を、各10 mlの特殊GYP液体培地に植菌し、至適生育温度30℃で、24時間培養した。
6)5)の培養液を滅菌生理食塩水195mlに5ml分注(40倍希釈液)し、これか ら100μlを採り、スターラで撹拌しながら4)の4.9mlのケルセン乳剤添加G YP液体培地に分注し、至適生育温度30℃で、3日間培養した。これを各乳酸菌と各 濃度のケルセン乳剤添加GYP液体培地を用いて行った。
7)培養後1日目から3日間、FOJB203培養液のそれぞれの増殖をOD660 で測定 した。FOJB202及びFOJB203については、培養後1、2日目は原液を、3 日目は滅菌生理食塩水で10倍希釈した希釈液を用いてOD660 で測定した。(いずれ も3検体以上で試験を行った。)その総合結果を表1に示した。
【0020】
実験例2
ケルセン乳剤に代えてトレボン乳剤を使用した以外は、試験例1と同様にして試験を行った。その総合結果を表2に示した。
実験例3
ケルセン乳剤に代えてオルトラン乳剤を使用し、希釈倍率を0.4〜4000ppmとした以外は、試験例1と同様にして試験を行った。その総合結果を表3に示した。
実験例4
ケルセン乳剤に代えてランネート乳剤を使用した以外は、試験例1と同様にして試験を行った。その総合結果を表4に示した。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
【表4】

【0025】
表1ないし表4の結果より、ステビア粉末の煮沸抽出液の濃縮発酵液中には耐高糖度性の各種乳酸菌が生存する。そして、ある乳酸菌はある種の農薬の存在下でより顕著に増殖している。この事実は、ステビア抽出濃縮発酵液に生存し得るある種の乳酸菌は、ある種の農薬を資化していると考えられる。本発明者らが分離同定した乳酸菌はステビア濃縮発酵液の中で生存する乳酸菌の一部に過ぎない。また、これらの乳酸菌がステビア濃縮発酵液のすべてのロットから分離されるとも断言できない。しかしながら、ステビアの濃縮発酵液の中には多くの種類の特殊乳酸菌が生存し、相互に共働して膨大な種類の残留農薬を低減していることは確実である。
【0026】
試験例2
FOJB201株について、培養液中で農薬を減少させている効果を測定した。実験は下記の条件で行った。その結果を表5に示した。
培地: GYP液体培地
農薬濃度: 58.75ppm(ケルセン乳剤)及び406ppm(トレボン乳剤)
培養温度: 30℃
培養時間: 0時間及び24時間
使用機器: GCMS−QP2010(島津製作所社製)
分析方法: 農作物GC/MS一斉分析法
分析条件: Column; Inert Cap Pestisides 30×0.25mm,
Oven; 50℃( 3min) to 200℃ at 10℃ min => 200 ℃ at 3 ℃/min,
hold 5 min > 230℃ to 300 ℃ at 5 ℃/min, hold 8 min,
Carrier; helium 1ml /2min, Inj; 250℃,Det.; FID 280 ℃
【0027】
【表5】

【実施例1】
【0028】
(ステビア濃縮発酵液の製造)
春にステビアの株苗を定植し、蕾を持つ前に地上部を刈り取った。刈り取り後、葉と茎に分け、それぞれ75±3℃で乾燥させた。粉砕機により効率的に抽出が行われる粒度、径100μm以下の大きさとなるように粉砕した。得られたステビア茎粉末とステビア葉粉末を8:2の割合(重量比)で混合し、原末とした。
湯釜に水を張り沸騰させた。水8リットルに対してステビア原末1kgの割合となるように、湯釜にステビア原末を投入し、1時間沸騰させた。加熱を止め、抽出液冷却後、遠心分離機にかけてカスと抽出液を分離した。
【0029】
抽出液を、減圧下で液量が約1/3となるまで、約2時間かけて濃縮を行った。この結果、ステビア原末1kg当たり約1.9リットルの濃縮水溶液が得られた。
この濃縮水溶液を、貯蔵タンクに入れ、九州において、常温で約1年間、自然醗酵させた。なお、内圧が一定値を越えると一部開口して内圧を逃がすパッキン付きの蓋を有する容器に入れて熟成した。このようにして得られたステビア濃縮醗酵液は、pH4.1であり、ブリックス濃度は11%であった。
【実施例2】
【0030】
(水稲の栽培と米の残留農薬)
約20aの田んぼで後述する従来の方法で稲作を行っていた。今回、この田んぼを10aずつに2分し、一方を試験区とし、実施例1で製造したステビア濃縮発酵液を用いて稲作を行った。ステビア濃縮発酵液は箱苗への灌水に用い、中干しの時及び開花後に葉面に散布した。同一条件の他方では慣行区として従来法による稲作を続けた。
共に約600kgの米を収穫したが、試験区の味がはるかに優れていた。試験区と慣行区の米と土を、鹿児島県環境技術協会に持参し、それぞれの181種類の残留農薬の試験に供したが、試験区の土及び試験区で収穫された米からはいずれの農薬も検出されなかった。
【0031】
一方、慣行区で収穫された米からは、フェノカルブが存在の可能性が高い化合物として検出された。慣行区の田の土からは、エスプロカルブが存在の可能性が極めて高い化合物として検出され、フェノブカルブが存在の可能性の高い化合物として検出された。
試験区及び慣行区において使用した農薬の種類及び時期、更に、ステビア濃縮発酵液使用の量及び回数を表6に示した。
表6より、ステビア濃縮発酵液を噴霧するのみで農作物の残留農薬が除去される事実が、稲作において立証された。
【0032】
【表6】

【実施例3】
【0033】
(苺の栽培と残留農薬)
苺(さちのか)を用いて栽培を行った。苺栽培においては苗作りが重要であり、良い苗とはクラウンが太く、葉柄が短く葉が大きく分厚く艶のある苗である。このような苗を作るため、春先に苺の親株から伸びる蔓からランナー取りをして、180mlのポットに子苗を分けつしていく。置肥は行わず、ステビア濃縮発酵液の800倍希釈液に液肥を混ぜて少量ずつを回数多く散布して育成した。以後、ステビア濃縮発酵液の散布はユニパケーミン(研光通商社製、海藻液肥、強力なキレート効果によりリン酸の利用を促進する)と珪酸を配合した溶液で400倍から5000倍に薄めて使用した。
【0034】
葉数2〜3枚に調整した良好な苗を栽培した。苺の品質は苗によって決まるため慎重に栽培した。蔓の切り離しは最後に取った鉢から根が出た時とする。8月以降はポットの小苗に、ステビア濃縮発酵液の800倍希釈液を小まめに散布した。
定植は9月初旬に行い、ポットから取り出した苗の根をステビア濃縮発酵液の1000倍〜2000倍液に浸漬した後定植した。定植時3枚だった葉は定植後、週に1枚の割りで葉数が増え、4枚程増えた後花芽がくる。花は頂花が先ず咲き、次にえき花が更に2番花、3番花……と順次開花していく。開花後30日で結実する。定植後は頻繁にステビア濃縮発酵液を散水した。
【0035】
11月25日から収穫が始まり、7月10日まで続いた。直径4cmもある大玉の苺が得られ、総収量は4トン/10aであった。
5月に殺菌剤を3日に1回、防ダニ剤を3日に1回散布し、ステビア濃縮発酵液も3日に1回散布していた。市場流通している苺について、公的期間で検査した結果、58項目の残留農薬検査ですべて検出されなかった。なお、検出限界は0.01ppmである。ちなみに、この苺は農薬散布後、ステビア濃縮発酵液を散布することなく収穫したものであった。
この事実からステビア濃縮発酵液を散布して栽培していると、農薬を使用しても、農薬の効果を削減することなく、残留農薬は除去されるものと推量する。
【実施例4】
【0036】
(レモンの栽培及び残留農薬の測定)
常法により、レモンをビニールハウス内で栽培した。具体的には、12月にビニールを被せ、ステビア堆肥をやり、また、オマイト(有効成分としてBPPS(プロパルギット)を含有する亜硫酸エステル系殺虫剤)、モレスタン(有効成分としてキノキサリン系化合物を含有する殺虫剤)及び木酢液を散布した。3月には、実施例1で製造されたステビア濃縮醗酵液の希釈水溶液を、4月にはケルセンと木酢液を、5月にはモスピラン(有効成分としてアセタミプリドを含有するネオニコチノイド系殺虫剤)と木酢液を散布した。7月にビニールを除去し、実施例1で製造されたステビア濃縮醗酵液の希釈水溶液とマイトコーネ(有効成分としてビフェナゼートを含有する殺ダニ剤)を散布した。8月に収穫を開始した。また、9月にも、実施例1で製造されたステビア濃縮発酵液の希釈水溶液を散布した。なお、ステビア堆肥とは、牛糞にステビアの茎乾燥物と葉乾燥物を加えて調製した堆肥である。
【0037】
収穫されたレモンに残留した農薬の量を測定したところ、塩素系農薬、カーバメイト系農薬、キャプタン系農薬、有機リン系農薬、防黴剤であるオルトフェニルフェノール、ジフェニール、チアペンタゾール及びイマザリルの何れもが不検出であった。
また、各農薬の検出限界は0.01ppm、オルトフェニルフェノールの検出限界は0.0005g/kg、ジフェニールの検出限界は0.001g/kg、チアペンタゾールとイマザリルの検出限界は0.0001g/kgであった。
【実施例5】
【0038】
(大葉の栽培及び残留農薬の測定)
常法により大葉を栽培した。大葉は一般に病害虫に弱く、多種大量の農薬を使用しなければ市場に供することができない。本実施例においては、葉が展開した後、週に2回の割合で実施例1で製造されたステビア濃縮醗酵液の1,000倍希釈水溶液を葉面に散布した以外は、従来通りの方法で育成し、葉を摘み取った。
【0039】
摘み取った葉に残留した農薬の量を測定したところ、プロミシドン(ジカルボキシイミド系殺菌剤)、ジェトフェンカルブ(N−フェニルカーバメート系殺菌剤)、マラチオン(有機リン系殺虫剤)、フェノブカルブ(カーバメイト系殺虫殺菌剤)、クロルピリホス(有機リン系殺虫剤)、ジベルメトリンの何れもが不検出であった。
なお、各農薬の検出限界は、フェノブカルブが0.01μg/ml、クロルピリホスが0.05ppmで、それ以外は0.01ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステビアの茎の乾燥粉末とステビア葉の乾燥粉末とを、重量にして9:1〜6:4の割合に配合した原末を煮沸抽出し、得られた抽出液を2.5リットル/kg原末以下になるまで濃縮した水溶液を冷却し、発生ガスを放出できる密封容器に移して常温で10か月以上熟成させて得られたステビア濃縮発酵液であって、上記熟成過程において、生存し得た乳酸菌を有効成分として含有する農作物の残留農薬低減剤。
【請求項2】
ステビア濃縮発酵液が、ステビア抽出液を濃縮後、冷却工程及び発酵容器に移す工程で混入した浮遊菌及び落下菌により発酵熟成し、発酵が極めて緩徐になったステビア濃縮発酵液であることを特徴とする請求項1記載の農作物の残留農薬低減剤。
【請求項3】
ステビア濃縮発酵液が、ステビアの茎及び葉に付着した芽胞菌により発酵したことを特徴とする請求項1又は2に記載する農作物の残留農薬低減剤。
【請求項4】
ステビアの茎の乾燥粉末とステビア葉の乾燥粉末とを、重量にして9:1〜6:4の割合に配合した原末を煮沸抽出し、得られた抽出液を2.5リットル/kg原末以下になるまで濃縮した水溶液を冷却し、発生ガスを放出できる密封容器に移して常温で10か月以上熟成させて得られたステビア濃縮発酵液を、300倍〜5000倍に希釈して農作物に噴霧し、ステビア濃縮発酵液の環境下で生存した乳酸菌により農作物の残留農薬を低減する方法。
【請求項5】
請求項4の農作物への付与が、前記希釈水溶液への苗の浸漬、前記希釈水溶液の葉面散布、及び前記希釈水溶液を用いた苗定植後における灌水処理の中から選択される一種以上である、農作物の残留農薬の低減方法。
【請求項6】
前記乳酸菌が配列表の配列番号1に記載した配列を有する乳酸菌である請求項4記載の農作物の残留農薬を低減する方法。
【請求項7】
前記乳酸菌が配列表の配列番号2に記載した配列を有する乳酸菌である請求項4記載の農作物の残留農薬を低減する方法。
【請求項8】
配列表の配列番号1に記載した配列を有する新規乳酸菌。


【公開番号】特開2008−273843(P2008−273843A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241956(P2006−241956)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(505350488)株式会社ビーアンドエル (3)
【Fターム(参考)】