説明

農作物洗浄装置

【課題】農作物の保護、洗浄効率、確実な洗浄を確保した上で、洗浄する農作物毎で各種調整をすることなく、搬送される農作物の艶出しや根取りを行う。
【解決手段】ローラ部2の全周に突設された線状凸体3が、ローラ部2の搬送方向の回転により、農作物を搬送しながら、艶出し、及び根取りを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を搬送しながら、高圧洗浄水を噴射して農作物を洗浄する農作物洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件に係る農作物洗浄装置に関連する先行技術文献として、例えば、本出願人が出願した次の特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005-065702号公報
【0003】
前記特許文献1には、農作物の泥や土等の付着物を、ブラシ等の接触洗浄体を用いずに洗浄水の噴射のみで落とすことで農作物を洗浄する農作物洗浄装置が開示されている。
この農作物洗浄装置は、農作物を載置する載置部を複数備えた搬送装置(コンベア)と、農作物を回転させる複数のローラと、載置部に載置された農作物に上下から洗浄水を噴射するノズルを備えている。
前記載置部は、下方湾曲状に形成された多数の支持部と、該支持部間に確保された多数の空間部とが搬送方向と直交方向に並べられた略櫛歯形状に形成されおり、前記支持部で農作物を支持し、前記空間部には、載置部の搬送動作に伴って前記ローラが出入りすると共に、入った状態で空間部から上方に突出するようにされている。
すなわち、支持部に支持された農作物を搬送しながら、洗浄水を上下から噴射して洗浄し、空間部から突出するローラで農作物を持ち上げて、持ち上げられた農作物の重量によってローラが回転することで農作物を回転させて、洗浄水が作用する農作物の位置を変更するようにすることにより、農作物全体を満遍なく洗浄水の噴射のみで洗浄することができる。
【0004】
このような構成による農作物の非接触洗浄装置によれば、前記接触洗浄体を用いた洗浄による農作物の傷付き、及び傷付きを防止するために用いられる軟らかめの接触洗浄体による洗浄効率の低下、更には、農作物の表面形状の違いによる洗浄むらの発生等、洗浄動作における農作物の保護、洗浄効率、確実な洗浄を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人参や長いも、更には大根等の農作物を商品として出荷する場合、農作物の良好、且つ一貫性を有する外観を確保することが好ましい。
そのため、農作物の泥や土等の付着物を落とす洗浄だけでなく、よりきれいに仕上げるために、表皮を磨くようにして艶を出したり、表皮に生えている毛細状の根を取ったりしている。
前記特許文献1の農作物洗浄装置では、洗浄水を高圧で噴射して付着物の洗浄と同時に農作物の艶出しや根取りを行うようにしているが、農作物毎に皮の硬さや厚みが異なっているため、高圧噴射の水勢のみで艶出しや根取りを行うには、洗浄する農作物毎に水圧調整や搬送速度調整等の各種調整を行う必要があった。
【0006】
本発明は、農作物の保護、洗浄効率、確実な洗浄を確保した上で、洗浄する農作物毎で各種調整をすることなく、搬送される農作物の艶出しや根取りを行うことを課題とし、この課題を解決した農作物洗浄装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明が採用した技術的手段は、農作物を搬送する搬送部と、搬送される農作物に対して洗浄水を噴射するノズル部を備えた農作物洗浄装置において、前記搬送部は、軸線を回転中心として搬送方向に回転する複数のローラ部を搬送方向に沿って並列状に有し、該ローラ部の周面全域には、弾性材からなる線状凸体が複数本突設され、
該複数の線状凸体の全部、又は一部の線方向が、ローラ部の軸線に対して傾斜して交差する方向であることを特徴とする農作物洗浄装置にしたことである。
【0008】
本発明でいう弾性材とは、ゴム材、又は該ゴム材と同等の弾性を有する合成樹脂材等であり、農作物に対して傷付けずに、該農作物の艶出しや根取り行える程度の柔軟性を備えたものが好ましい。
【0009】
本発明の線状凸体は、前記ローラ部の周面に対して埋め込みや貼り付け、あるいは、弾性材を用いて線状凸体とローラ部を一体形成した形態等、任意であるが、メンテナンスを容易に、且つ安価に行うという観点から、線状凸体をローラ部の全周に巻回可能なシート状体の表面に一体形成した形態が好ましい。
【0010】
線状凸体の全部の線方向が、ローラ部の軸線に対して傾斜して交差する方向である場合、
例えば、線状凸体を、ローラ部の軸線上の選択された位置を境として線方向が逆向きとなるように振り分け、振り分けられた線状凸体の線方向が、前記位置からローラ部の端部に向かってローラ部の反回転方向側に拡がる方向にした形態が好ましい。
この場合、振り分けられた線状凸体の傾斜角度は、双方とも同角度でもよいし、異なる角度でもよい。
又、ローラ部の軸線上の選択された位置は、ローラ部の中央部でもよいし、中央部から軸線方向へずれた位置でもよい。
【0011】
又、線状凸体の一部の線方向が、ローラ部の軸線に対して傾斜して交差する方向である場合、例えば、交差する線状凸体と軸線方向で隣接するように、線方向が前記ローラ部の軸線と平行とする線状凸体を配し、前記交差する線状凸体の線方向を、前記平行とする線状凸体との境からローラ部の端部に向かって、ローラ部の反回転方向側に傾斜する方向とした形態が好ましい。
この場合、前記交差する線状凸体をローラ部の両端部側に夫々配し、該線状凸体の間に前記平行の線状凸体を配する形態が好ましい。
又、平行の線状凸体は、ローラ部の中央部でもよいし、中央部から軸線方向へずれた位置でもよい。
【0012】
又、前記交差する線状凸体は、螺旋状としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、農作物の保護、洗浄効率、確実な洗浄を確保した上で、洗浄する農作物毎で各種調整をすることなく、搬送される農作物の艶出しや根取りを行える農作物洗浄装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る農作物洗浄装置を実施するための最良の形態を図1〜図12に基づいて説明する。
本形態で例示する農作物洗浄装置1は、搬送上流側から下流側(矢印で示す搬送方向)へ、第1洗浄部A、第2洗浄部B、第3洗浄部Cの3個の洗浄部を備えたものであり、いずれの洗浄部も搬送部A1,A2,A3と、該搬送部A1,A2,A3の上方に洗浄水を噴射する多数のノズル部N1,N2,N3を備えており、各搬送部A1,A2,A3で農作物を搬送しながら、該農作物に対してノズル部N1,N2,N3から洗浄水を噴射することにより、農作物の泥や土等の付着物を落として洗浄する非接触型のものである。
本形態のノズル部N1,N2,N3により噴射される洗浄水は、水圧を6.8Mpa〜14.7Mpaとし、更に、1平方センチあたり300滴以上の細かい水滴とする洗浄水を噴射するものであり、このような洗浄水の噴射により、農作物に付着した土や泥等の付着物を落とすことができ、しかも農作物の細かい凹部等に入り込むように付着した細かい付着物も落とせるようにしている。
【0015】
以下、本形態の農作物洗浄装置1の構成を詳述する。
前記第1洗浄部Aは、収穫直後の付着物が最も付着した農作物を投入する部分であって、前記ノズル部N1から洗浄水を噴射して付着物を吹き飛ばすようにして洗浄すると共に、農作物の艶出しや根取りを行う部分である。
この第1洗浄部Aの搬送部A1は、軸線を回転中心として搬送方向に駆動回転する複数のローラ部2を搬送方向に沿って並列して構成されている。
前記各ローラ部2は、フレーム(図示せず)に回転可能に軸支され、例えば、モーター等の駆動原(図示せず)から、チェーンとスプロケット、又はベルトとプーリー等の回転伝達機構(図示せず)を介して夫々駆動回転するようにしている。
前記ノズル部N1は、隣り合うローラ部2の間で構成される谷部21に洗浄水を噴射可能な位置に固定状に配設され、且つローラ部2の軸線方向と平行に複数個配設されている。
前記谷部21が、農作物を支持すると共に、農作物を支持すると共に、該農作物を回転させながら搬送させたり、ローラ部の軸線方向に沿って移動させたりし、且つ農作物を磨く部位である。
尚、本形態では、ローラ部の軸線を回転中心とする回転方向が搬送方向であり、該ローラ部の反回転方向が反搬送方向である。
【0016】
前記ローラ部2には、その周面全域に農作物への接触により変形する程度の柔軟性を有するゴム材(弾性材)からなる線状凸体3が複数突設されている。
又、線状凸体3は、該線状凸体3と同様のゴム材を用いて、前記ローラ部2の全周に巻回可能な面積に形成されたシート状体31の表面に、該シート状体31と一体形成されており、該シート状体31を前記ローラ部2に巻回し、例えば、接着剤や凹凸係合等の周知の固着手段(図示せず)で固着することにより、線状凸体3が前記ローラ部2の周面に突設される。
又、前記線状凸体3が磨耗等で目的の効果が期待できなくなってしまった場合、前記シート状体31をローラ部2から剥がし、新たなシート状体に貼り換えることができる。
【0017】
すなわち、シート状体31の交換により線状凸体3の交換を行えるものであるため、線状凸体3が磨耗等した場合、ローラ部2ごと交換しなくてもよいし、ローラ部2を外さなくても行えるので、メンテナンスを容易に、且つ安価に行うことができる。
例えば、ローラ部が前記回転伝達機構に連結されているので、ローラ部ごと交換するとなると、前記回転伝達機構を分解した上で、前記フレームから取り外し、新たなローラ部を前記フレームに取り付けて前記回転伝達機構を組み立てるという面倒な作業を要することになるが、前記のようにシート状体の貼り換えであれば、このような面倒な作業は不要である。
又、前記シート状体31は、ローラ部に比べれば当然ながら安価であるので、交換部品としてのコストの削減に貢献できる。
【0018】
次に、本形態の線状凸体3の構成を詳述する。
本形態の線状凸体3は、図3及び図4に示すよう、シート状体31のローラ部2の軸線上の中央部に位置する線状凸体3Aと、該中央部の両側に位置する線状凸体3Bとから構成されており、該線状凸体3Aと線状凸体3Bの線方向を異なる方向にしている。
具体的には、線状凸体3Aの線方向がローラ部2の軸線方向と平行にされ、線状凸体3Bの線方向がローラ部2の軸線に対して斜めに交差する方向にされている。
更に、前記線状凸体3Bは、線方向が前記線状凸体3Aとの境部分から端部に向かい、且つ搬送方向側から反搬送方向側へ拡がるような方向にされている。
尚、以下では、線状凸体3Aを平行線状凸体3Aとし、線状凸体3Bを交差線状凸体3Bとする。
又、前記交差線状凸体3Bの形態として、螺旋状を呈する形態としてもよい(図示せず)。
【0019】
前記形態の平行線状凸体3Aが、ローラ部2の搬送方向への回転で、ローラ部2間の谷部21に載せられた農作物を、搬送方向に回転させると共に、ローラ部2を乗り越えさせるように力を加える。
又、前記形態の交差線状凸体3Bが、ローラ部2の搬送方向の回転で、ローラ部2間の谷部21に載せられた農作物を、搬送方向に回転させると共に、ローラ部2の軸線方向に沿って中央部方向へ移動させ、且つローラ部2を乗り越えさせるように力を加える。
すなわち、農作物は、平行線状凸体3A,及び交差線状凸体3Bにより搬送方向に回転するため、前記ノズル部N1から噴射される洗浄水が農作物の全周に作用する。
又、農作物は、前記交差線状凸体3Bによりローラ部2の軸線方向に移動するため、前記ノズル部N1から噴射される洗浄水が農作物の全長に作用する。
又、ローラ部2の回転時には、農作物に対して平行線状凸体3A,及び交差線状凸体3Bの接触により接触圧力が作用し、この接触圧力で該農作物に引っ掛かってその表面を削ろうとするが、このとき平行線状凸体3A,交差線状凸体3Bが変形し、更に農作物の回転によって、前記接触圧力が逃げてその力が低下するため、農作物の表面に傷等を付けるようなことがなく、該農作物に対して滑るような動作となるのでその表皮を磨くようにして艶を出すと共に、根取りを行うことができる。
又、前記したように平行線状凸体3A,及び交差線状凸体3Bが農作物に対して滑るような動作をすることから、該農作物の前記方向の移動の速度が低くゆっくりとした移動となるので、前記洗浄水による洗浄、及び農作物の艶出しや根取りの確実性が向上する。
【0020】
前記ローラ部2において農作物を乗り越えさせる部位は、基本的には、前記したように平行線状凸体3A,及び交差線状凸体3Bの双方であるが、前記洗浄水による洗浄、及び農作物の艶出しや根取りの確実性を向上させるには、農作物を最下流側に位置する谷部21における交差線状凸体3B部分から順次投入するとよい。
すなわち、平行線状凸体3Aは、その線方向がローラ部2の軸線と平行であるので、農作物に対してローラ部を乗り越えさせる力を作用させ、交差線状凸体3Bは、その線方向がローラ部2の軸線と前記した方向に交差しているので、農作物に対してローラ部を乗り越えさせる力と、及びローラ部の軸線方向に沿い、且つ中央部に向かって移動させる力を作用させることになる。
したがって、農作物を最下流側に位置する谷部21における交差線状凸体3B部分に投入すると、交差線状凸体3Bが農作物を回転させながら、徐々にローラ部2の中央部に移動させたり、ローラ部2を乗り越えさせたりして、最終的には、中央部に移動した農作物が平行線状凸体3A,3Bにより、次の谷部21に移動し、該谷部21から更に次の谷部21へというように、平行線状凸体3A,及び交差線状凸体3Bによって徐々に移動して、最上流部のローラ部2を乗り越えて第2洗浄部へ移動することになる。
【0021】
ちなみに、交差線状凸体3Bの線方向のローラ部2の軸線に対する角度を浅く(交差線状凸体3Bの線方向をローラ部2の軸線と平行に近付ける方向)すれば、交差線状凸体3Bの線方向がローラ部2の軸線と平行に近付くため、前記したようなローラ部2を乗り越えさせる力が、ローラ部2の軸線に沿って移動させる力を上回ることになる。
逆に、交差線状凸体3Bのローラ部2の軸線に対する角度を深く(交差線状凸体3Bの線方向を搬送方向と平行に近付ける方向)すれば、交差線状凸体3Bの線方向が搬送方向と平行に近付くため、前記したようなローラ部2を乗り越えさせる力が、ローラ部2の軸線に沿って移動させる力を下回ることになる。
又、前者においては、農作物の搬送方向への移動が早くなり、ローラ部2の軸線に沿う移動量が少なくなるため、交差線状凸体3Bの農作物に対する接触時間が短くなるが、後者においては、農作物の搬送方向への移動が遅くなり、ローラ部2の軸線に沿う移動量が多くなるため、交差線状凸体3Bの農作物に対する接触時間が長くなる。
すなわち、比較的表皮が柔らかい農作物を洗浄する場合には、交差線状凸体3Bの角度を浅くして交差線状凸体3Bとの接触時間を短くすることで、農作物の表皮の剥け過ぎを防ぎ、表皮が硬い農作物を洗浄する場合には、交差線状凸体3Bの角度を深くして交差線状凸体3Bとの接触時間を長くすることで、農作物の艶出しや根取り確実に行うことができる。
【0022】
図5、及び図6は、線状凸体3の他の形態を示している。
本形態の線状凸体3は、前記形態と同様構造のシート状体31の表面に一体形成されたものであり、具体的には、線状凸体3の線方向をローラ部2の軸線方向中心を境に対称となるように、前記軸線方向中心から前記ローラ部の両端部に向かって反搬送方向に拡がるように、ローラ部2の軸線に対して斜めに交差する方向にされている。
この形態の線状凸体3によっても、農作物を回転させながら、ローラ部2の軸線方向に移動させると共に、ローラ部2を乗り越えさせることができ、しかも、農作物の艶出しや根取りの行うことができる。
【0023】
次に、図7、及び図8に基づいて第2洗浄部Bを説明する。
第2洗浄部Bは、前記第1洗浄部Aの最下流から農作物が移送され、該第1洗浄部Aで落としきれなかった付着物を吹き飛ばすように洗浄すると共に、農作物を更に磨く部分である。
この第2洗浄部Bの搬送部A2は、軸線を回転中心として搬送方向と直交する方向に駆動回転する複数のローラ部4を有し、該ローラ部4の軸線を搬送方向に向け、且つ該搬送方向と直交する方向に沿って並列させてなる。
又、前記各ローラ部4は、搬送方向下流側が低くなるように傾斜させた状態でフレーム(図示せず)に回転可能に軸支され、例えば、モーター等の駆動原(図示せず)から、チェーンとスプロケット、又はベルトとプーリー等の回転伝達機構(図示せず)を介して夫々駆動回転するようにしている。
前記ノズル部N2は、隣り合うローラ部4の間で構成される谷部41に洗浄水を噴射可能な位置に固定状に配設され、且つローラ部4の軸線方向と平行に複数個配設されている。
前記谷部41は、農作物を支持すると共に、該農作物を回転させながら搬送方向へ移動させると共に、農作物を磨く部位である。
【0024】
前記ローラ部4には、その周面全域に農作物への接触により変形する程度の柔軟性を有するゴム材(弾性材)からなる凸片5が複数突設されている。
又、凸片5は、該凸片と同様のゴム材を用いて、前記ローラ部4の全周に巻回可能な面積とした長方形状に形成されたシート状体51の表面に、該シート状体51と一体形成されており、該シート状体51を前記ローラ部4に巻回し、例えば、接着剤や凹凸係合等の周知の固着手段(図示せず)で固着することにより、凸片5が前記ローラ部4の周面に突設される。
又、前記凸片5が磨耗等で目的の効果が期待できなくなってしまった場合、前記シート状体51をローラ部4から剥がし、新たなシート状体に貼り換えることができる。
【0025】
すなわち、シート状体51の交換により凸片5の交換を行えるものであるため、凸片5が磨耗等した場合、ローラ部4ごと交換しなくてもよいし、ローラ部4を外さなくても行えるので、メンテナンスを容易に、且つ安価に行うことができる。
例えば、ローラ部が前記回転伝達機構に連結されているので、ローラ部ごと交換するとなると、前記回転伝達機構を分解した上で、前記フレームから取り外し、新たなローラ部を前記フレームに取り付けて前記回転伝達機構を組み立てるという面倒な作業を要することになるが、前記のようにシート状体の貼り換えであれば、このような面倒な作業は不要である。
又、ゴム材の成形品であるシート状体は、ローラ部に比べれば当然ながら安価であるので、交換部品としてのコストの削減に貢献できる。
【0026】
ここで本形態の凸片5の構成を詳述すると、凸片5は、先端を球面状とした小径の円筒状に形成され、該凸片5を前記シート状体51の各辺に沿って整列させ、各凸片5の間に凸片5一本分の間隔を空けて突設している。
又、凸片5は、シート状体51の平面と直交するように突設されており、前記したようにシート状体51を、傾斜状に支持されたローラ部4に巻回して固着したときに、全ての凸片5が搬送方向に傾斜する状態にされる。
すなわち、ローラ部の回転に伴い、前記ローラ部4の傾斜、及び凸片5の傾斜と弾性により、農作物に対して下流側へ搬送する力と農作物を回転させる力を作用させることができる。
【0027】
本形態の第2洗浄部Bによれば、第1洗浄部Aから移送される農作物は、その線方向が搬送方向と交差した状態でローラ部4上に載せられるが、該農作物は、傾斜したローラ部4の回転により、線方向を搬送方向に沿わせると共に、谷部41に移動させる。
又、凸片5の弾性により、第1洗浄部Aからの移送時における落下のショックが緩衝されるので、移送時における農作物の傷付きを防止することができる。
又、凸片5は、谷部41に移動した農作物の重さによって曲がり、凸片5の周面で農作物を支持するような状態となるため、ローラ部4の回転に伴って前記凸片5の周面で谷部41に支持された農作物の周面を磨くような動作となる。
そして、ローラ部4の回転に伴い、ローラ部4の傾斜、及び凸片5の傾斜と弾性とで生じる搬送方向への力と農作物を回転させる力により、農作物が谷部41内で回転しながら下流側へ搬送され、この動作中において、前記凸片5の周面で谷部41に支持された農作物を磨くことで艶出しや根取りを行うことができる。
又、前記の搬送動作、及び磨き動作と同時に、ノズル部N2から噴射される洗浄水により、農作物が洗浄される。
【0028】
図9、及び図10は、第2洗浄部Bの他の形態を示している。
尚、前記形態と重複する部分については同符号を付すことにより説明を省略する。
本形態の第2洗浄部Bは、ローラ部4が搬送方向に平行に支持され、該ローラ部4の周面に突設された複数の凸片5が搬送方向に傾斜しているものである。
本形態の凸片5は、前記した形態の第2洗浄部と同様に、柔軟なゴム材を用いてなり、同ゴム材を用いてなる同形状に形成したシート状体51に一体形成されている。
又、本形態の凸片5は、シート状体51の表面に対して傾斜するように突設されており、シート状体51をローラ部4に巻回固着するときに、凸片5の傾斜方向を搬送方向に向けることによって、ローラ部4の回転に伴って、農作物に対して、凸片5の傾斜と弾性とで生じる搬送方向への力と、回転させる力とを作用させることができる。
又、農作物が谷部41内で回転しながら下流側へ搬送される動作中において、前記凸片5の周面で谷部41に支持された農作物を磨くことで艶出しや根取りを行うことができる。
【0029】
図11、及び図12は、第2洗浄部Bの他の形態を示している。
本形態の第2洗浄部Bは、2個のベルトコンベア6A,6Bを搬送方向と直交する方向に向かい合わせた一対のコンベア部6を、前記ベルトコンベア6A,6Bの搬送方向と直交する方向に複数対並列させてなるものである。
前記コンベア部6は、前記ベルトコンベア6A,6Bを、図12に示すように略V型になるように向かい合わせて構成され、ベルトコンベア6A,6Bが下方で近接する部位を、農作物が搬送される谷部61としている。
前記ベルトコンベア6A,6Bは、柔軟なゴム材からなるベルト62を巻き掛けて構成された周知の形態のものであり、前記谷部61に支持された農作物を両ベルトコンベア6A,6Bのベルト62の駆動で搬送するようにしている。
又、本形態では、前記ベルトコンベア6Aの搬送速度(駆動速度)と、ベルトコンベア6Bの搬送速度(駆動速度)に差をつけ、この速度差によって農作物を回転させながら搬送するようにしている。
すなわち、両ベルトコンベア6A,6Bに速度差をつけることによって、農作物を速度が高い側から低い側に向かって回転させることができ、この農作物の回転時に、農作物が接触しているベルト62によって該農作物が磨かれるので、艶出しや根取りを行うことができる。
尚、本形態の第2洗浄部Bにおいても、コンベア部の駆動構造、及び支持構造の図示を省略している。
【0030】
次に第3洗浄部Cを説明する。
第3洗浄部Cは、前記第2洗浄部Bの最下流から農作物が移送され、移送された農作物を最終的に洗浄すると共に、磨く部分である。
尚、本形態の第3洗浄部Cにおける搬送部A3、及びノズルN3の構成は、前記第1洗浄部Aにおける搬送部A1、及びノズルN1の構成と同様の構成であるので、その説明は、同符号を付すことにより省略する。
すなわち、この第3洗浄部Cにおいても、前記第1洗浄部Aと同様な動作によって、最終的に、洗浄され、磨かれて艶出し、及び根取りされながら農作物が搬送され、搬送部A3の最下流側から搬送コンベア(図示せず)に移送される。
又、この第3洗浄部Cの構成は、前記第2洗浄部Bと同様の構成でもよく、又、この場合、第2洗浄部Bの搬送方向の長さを延長して第3洗浄部Cを省略してもよい。
又、農作物の種類によっては、第3洗浄部Cを省略してもよく、この場合、第2洗浄部の下流部から前記搬送コンベアに移送する。
【0031】
本形態の農作物洗浄装置によれば、農作物の保護、洗浄効率、確実な洗浄を確保した上で、洗浄する農作物毎で各種調整をすることなく、搬送される農作物の艶出しや根取りを行うことができる。
【0032】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る農作物洗浄装置の一例を模式的に示す平面図。
【図2】同、側面図。
【図3】第1洗浄部のローラ部に巻回されるシート状体の平面図で一部拡大して示す。
【図4】図3の(4)-(4)線拡大断面図。
【図5】第1洗浄部のローラ部の他の形態を示す平面図。
【図6】図5のローラ部に巻回されるシート状体の平面図。
【図7】第2洗浄部のローラ部に巻回されるシート状体の平面図で一部拡大して示す。
【図8】図7の(8)-(8)線拡大断面図。
【図9】第2洗浄部の他の形態のローラ部を用いた農作物洗浄装置を模式的に示す側面図。
【図10】図9のローラ部に巻回されるシート状体の要部拡大断面図。
【図11】第2洗浄部の他の形態を模式的に示す平面図。
【図12】図11の正面図。
【符号の説明】
【0034】
1:農作物洗浄装置
A:第1洗浄部
B:第2洗浄部
C:第3洗浄部
A1:搬送部
A2:搬送部
A3:搬送部
N1:ノズル部
N2:ノズル部
N3:ノズル部
2:ローラ部
21:谷部
3:線状凸体
31:シート状体
3A:平行線状凸体
3B:交差線状凸体
4:ローラ部
41:谷部
5:凸片
51:シート状体
6:コンベア部
6A:ベルトコンベア
6B:ベルトコンベア
61:谷部
62:ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物を搬送する搬送部と、搬送される農作物に対して洗浄水を噴射するノズル部を備えた農作物洗浄装置において、
前記搬送部は、軸線を回転中心として搬送方向に回転する複数のローラ部を搬送方向に沿って並列状に有し、
該ローラ部の周面全域には、弾性材からなる線状凸体が複数本突設され、
該複数の線状凸体の全部、又は一部の線方向が、ローラ部の軸線に対して傾斜して交差する方向であることを特徴とする農作物洗浄装置。
【請求項2】
線状凸体がローラ部の全周に巻回可能なシート状体の表面に一体形成されていることを特徴とする請求項1に記載の農作物洗浄装置。
【請求項3】
線状凸体の全部の線方向が、ローラ部の軸線に対して傾斜して交差する方向であって、
該線状凸体は、ローラ部の軸線上の選択された位置を境として線方向が逆向きとなるように振り分けられ、振り分けられた線状凸体の線方向が、前記位置からローラ部の端部に向かって反回転方向側に拡がる方向であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の農作物洗浄装置。
【請求項4】
線状凸体の一部の線方向が、ローラ部の軸線に対して傾斜して交差する方向であって、
該線状凸体と軸線方向で隣接するように、線方向が前記ローラ部の軸線と平行とする線状凸体が配されてなり、
前記交差する線状凸体の線方向が、前記平行とする線状凸体との境からローラ部の端部に向かって、ローラ部の反回転方向側に傾斜する方向であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の農作物洗浄装置。
【請求項5】
前記交差する線状凸体をローラ部の両端部側に夫々配し、該線状凸体の間に前記平行の線状凸体を配していることを特徴とする請求項4に記載の農作物洗浄装置。
【請求項6】
前記交差する線状凸体が螺旋状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の農作物洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−55835(P2009−55835A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225623(P2007−225623)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(503166115)株式会社ヒロシ工業 (13)
【Fターム(参考)】