農学的価値の高いセイヨウアブラナ(Brassicanapus)の二重低含量回復系統を作成する方法
オグラ(ogura)型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量回復系統を作成する方法であり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有するものである。セイヨウアブラナ雑種の種子ならびにその後代を形成する方法。セイヨウアブラナの種子、ならびに、解析のための、PGIolマーカー、PGIuntマーカー、PGIintマーカー、BolJonマーカーおよびCP418マーカーの組み合わせの使用。
【選抜図】図2
【選抜図】図2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オグラ(ogura)型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法に関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、「雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有するものである本発明は、セイヨウアブラナ雑種の種子ならびにその後代を形成する方法および選抜のためのマーカーの使用に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
アブラナ(Brassica napus L.)においてOgu−INRA型細胞質雄性不稔(cms)の体系についての回復系統を育種することは、過去数年来の主要な目的となっている。それらの雌性稔性を高め、二重低含量回復系統を得るには、多大な戻し交配と系統育種を行うことが必要とされていた。所謂「二重低含量」品種とは、油中のエルカ酸含量が低く、油を抽出した後に残る固体穀粉の中のグルコシノレート含量が低いもののことを言う。しかしながら、ダイコン遺伝子導入のサイズが大きいことから、これらの系統を育種する上で幾つかの難点(導入遺伝子の再構成、望ましくない形質との連鎖の可能性)に直面することがある。
【非特許文献1】Desloires S et al 2003 EMBO reports 4, 6:588−594
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明者等は、農学的価値の高い、新たに改良された二重低含量回復系統を提供することを目標とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目標は、アブラナにおいて、Ogu−INRA型細胞質雄性不稔(cms)についての組換え二重低含量回復系統を作成する、新たな方法によって実現される。
【0005】
本発明の第一の目的は、オグラ型細胞質雄性不稔(cms)についての、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法に関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有しているものであり、当該方法は以下の手順を含むものである、
a)欠失したダイコン遺伝子を挿入した春のセイヨウアブラナの二重低含量cms系統を、春のDrakkarの二重低含量系統と交配して、セイヨウアブラナの異型接合体の回復植物を形成し、
b)減数分裂前に、手順a)で得られた異型接合体の回復植物に、ガンマ線照射を行い、
c)前記手順b)で得られた花の花粉を、cms二重低含量の春のWesroona系統と交配し、
d)その後代の生長力と雌性稔性、およびcms遺伝子の伝達率を試験し、
e)後代系統の選抜を行う。
【0006】
本発明においては、「(一つまたは複数の)系統」という用語は、基本的に同型接合体で、自己受粉で生殖可能な植物体を意味する。
【0007】
請求項1に記載の方法においては、手順b)における照射量は6分間に65グレイである。
【0008】
本発明の方法に関する一つの好適な実施態様によれば、手順a)の春のセイヨウアブラナの二重低含量cms系統は、R211である。
【0009】
R211は、INRAの春の回復系統である。
【0010】
Drakkarは、フランス産の春の登録品種である。
【0011】
Wesroonaは、オーストラリア産の春の登録品種である。
【0012】
本発明の方法に関する一つの好適な実施態様によれば、試験は、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカーの組み合わせによって行われる。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、オグラ型cmsのための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統に関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有するものである。
【0014】
一つの好適な実施態様によれば、二重低含量回復系統は、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカーの独自の組み合わせを有している。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、以下の手順を通して、セイヨウアブラナの雑種植物およびその後代を形成する方法に関するものであり、当該方法は、以下の手順によって得られるものである。
a)請求項1に従って作成された、同型接合体となるように育種された回復系統を準備し、
b)雑種を作成するフィールドにおいて、前記回復系統を花粉提供植物体として用い、
c)雑種を作成するフィールドにおいて、cms植物を雑種種子作成植物体として用い、そして
d)雄性不稔植物体から、雑種種子を得る。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、本発明の方法によって得られたアブラナ属(Brassica)植物の種子に関するものである。
【0017】
本発明の更にもう一つの目的は、英国の23,St Machar Drive,Aberdeen,Scotland,AB24 3RYに所在の、NCIMB Limited社に2003年7月4日付けで参照番号NCIMB41183で寄託された、セイヨウアブラナの種子に関するものである。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、PGIol、PGIint、BolJonおよびCP418の少なくとも四つのマーカー、あるいは、それらの、少なくとも一つの多型部位を含むいずれかの部位を用いて、オグラ型cmsのための、セイヨウアブラナの組換え回復系統を解析することに関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有しているものである。
【0019】
好ましい実施態様においては、その組み合わせは、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418の五つのマーカーからなるものである。
【0020】
本発明において「少なくとも一つの多型部位を含むいずれかの部位」というのは、少なくともキャベツ型の配列とカブ(B.rapa)型の配列との間の違いを示す配列のいずれかの部分のことを意味する。
【0021】
そのようなマーカーは、以下の図面とR2000系統について記載されている配列表に示されている。
【0022】
実施態様の一つの有利な実施態様によれは、本発明は、以下のものに関するものである。
‐プライマーPGIolUおよびPGIolLを用いて増幅するマーカーPGIol:
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIolL:5’TGTACATCAGACCCGGTAGAAAA3’)
‐プライマーPGIintUおよびPGIintLを用いて増幅するマーカーPGIint:
(PGIintU:5’CAGCACTAATCTTGCGGTATG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐プライマーPGIolUおよびPGIintLを用いて増幅するマーカーPGIUNT:
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐プライマーBolJonUおよびBolJonLを用いて増幅するマーカーBolJon:
(BolJonU:5’GATCCGATTCTTCTCCTGTTG3’;
BolJonL:5’GCCTACTCCTCAAATCACTCT3’)
‐プライマーSG129UおよびpCP418Lを用いて増幅するマーカーCP418:
(SG129U:cf Giancola et al,2003 Theor Appl.Genet.(in press)
pCP418L:5’AATTTCTCCATCACAAGGACC3’)
【0023】
本発明のもう一つの目的は、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418マーカーに関するものであり、それらマーカーの配列は以下の通りである。
【0024】
PGIol R2000マーカー:
【0025】
【表1】
【0026】
PGIUNT R2000マーカー:
【0027】
【表2】
【0028】
PGIint R2000マーカー:
【0029】
【表3】
【0030】
BolJon R2000マーカー:
【0031】
【表4】
【0032】
CP418L R2000マーカー:
【0033】
【表5】
【0034】
以下の添付図面において、つぎのような略称を用いる:
【0035】
【表6】
【0036】
‐図1は、ガンマ線照射とF2の作成とを示すものである。
【0037】
‐図2は、R211とR2000の結実を示すものである。
【0038】
‐図3は、様々な系統の莢ごとの種子数を示すものである。
【0039】
‐図4は、データベースによる、PGI配列のセグメントにおけるPGIolプライマーの位置を示すものである。この図においては、
PGIol:−プライマーPGIolU(SGAPでの名称はBnPGIch1U)
−プライマーPGIolL(SGAPでの名称はBnPGIch1L)
PGIint:−プライマーPGIintU
−プライマーPGIintL(これは配列には含まれていない)
【0040】
‐図5は、PCRマーカーであるPGI−2遺伝子(PGIol)、およびRfoに近いPCRマーカーであるSG34の電気泳動ゲルを示すものである。
【0041】
‐図6は、PGIolプライマーを用いてPCRで増幅した、DNAのPgi−2セグメントを示すものである。
【0042】
‐図7は、PCR産物であるPGIolのMselによる消化を示すものである。
この図においては、
SamとDarmには75bpのバンドがある。
Drak、R211.DKおよびR2000は、70bpのバンドを示す(15%アクリルアミド)。
8は、Samouraiに類似している(75bp);Drakkar(70bp)と混合することにより、二本のバンドが視覚化された。
【0043】
‐図8は、PGIUNTマーカーの電気泳動のアガロースゲルを示すものである。
この図においては、
PGIUNTバンド(約980bp)は、キャベツ、カブのAsko品種(B.rapa cv Asko)、維持系統および回復系統には存在するが、‘R211’には存在しない。
ダイコンおよびシロイヌナズナ属(Arabidopsis)に増幅はみられない。
様々なアブラナ属の遺伝子型において、一本のバンドだけが増幅された。バンドのサイズは類似しているが、配列は異なる。
【0044】
‐図9は、PGIint PCRマーカーの電気泳動ゲルを示すものである。
この図においては、ダイコン系統7のPGIintは、およそ950bpである。このバンドは、回復系統RRH1およびR113と同じものである。これは、R211では見られない。また、R2000でもみられない。しかしながら、PGIintバンドのサイズは、様々なアブラナ属の種において、約870bpでほぼ同じであるが、配列は異なる。
【0045】
‐図10は、BolJon PCRマーカーの電気泳動のアガロースゲルを示すものである。
【0046】
‐図11は、CP418マーカーの電気泳動のアガロースゲルを示すものである。
この図においては、(およそ670bpの)CP418バンドは、キャベツゲノム特有のものである。これは、キャベツ(B.ol)、セイヨウアブラナ(Samourai、Drakkar、Pactolおよび異型接合体のR2111*Dk)に存在するものである。これは、回復系統のアブラナ(RRH、R113およびR211)には存在しないものである。同型接合体のR2000には存在する。
【0047】
‐図12は、マーカーの概要を示す表である。
【0048】
‐図13(13(a)、13(b))は、シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIolマーカーの配列のアラインメントを示すものである。
【0049】
‐図14(14(a)、14(b)、14(c)、14(d))は、シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIint−UNTマーカーの配列のアラインメントを示すものである。
【0050】
‐図15(15(a)、15(b)、15(c))は、シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、CP418Lマーカーの配列のアラインメントを示すものである。
【0051】
‐図16(16および16bis)は、シロイヌナズナ属植物、ダイコンおよびカブのBolJonマーカーを示すものである。
これらは、シロイヌナズナ属植物(AC007190の末端−AC011000の開始点)、キャベツのEMBH959102の末端およびEMBH448336の開始点、ならびにセイヨウアブラナにおける(それぞれDrakkarおよびSamouraiにおける)SG129マーカーのバンド1および2の代表的なコンセンサス配列の、DB配列とアラインされている。
836bpのポイントからは、AC07190−AC11000およびGCPATpBOJ配列は、アブラナ属植物の配列とはもはや高度に相同ではなくなる。
ダイコンとカブ(GCPconsen RsRfBOJおよびBR)の配列は、それぞれ、858bpのポイントから900bpおよび981bpのポイントまで、セイヨウアブラナのものと依然として高度に相同である。
ダイコンにおいては、アブラナ属植物の配列の更に下流に部分的な相同が見いだされるに過ぎない。
カブのAsko品種においては、そのBolJon配列の左側を、78bpを欠失させた後に、セイヨウアブラナにおけるキャベツおよびカブのそれと、1057bpのポイントからBolJonLプライマーまで、更にアラインすることができる。
【0052】
‐図17(17および17bis)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis th)のMJB21.12配列におけるPgi−2プライマーの位置を示すものである。
【0053】
‐図18は、mipsAtl62850遺伝子におけるBolJonプライマーの位置と、シロイヌナズナのAC007190クローンおよびAC011000クローンの重複領域を示すものである。シロイヌナズナ属植物のBolJonのPCR産物(740bp)とのアラインメントが示されている。
【0054】
しかし、当然のことながら、ここにおいて示されている例は本発明の対象とするものを示すために挙げられているものであり、限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0055】
実施例I: ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法。
【0056】
材料と方法:
遺伝子型:欠失したダイコン遺伝子を挿入した‘R211’系統を、春の低GLSアブラナ‘Drakkar’と交配し、F1後代(‘R211*Dk’)を作成した。その後の交配には、春の低GLScms系統‘Wesroona’(オーストラリア原産)を用いた。分子分析における比較対照として、欧州のダイコンの系統7、アジアの回復系統ダイコンD81、セイヨウアブラナ*野生型ダイコンの雑種、キャベツ、そしてカブのAsko品種、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)と同様に、完全な(‘RRH1’)または不完全な(‘R113’)遺伝子導入を有する‘Samourai’に由来する冬の回復系統を用いた。
【0057】
ガンマ線照射:管理区域において、開花している植物体の全体をCo60放射線源からのガンマ線で処理する。致死未満量の65グレイを減数分裂前に照射した。
【0058】
検定交雑とF2作成:2mmよりも大きいつぼみを取り除いた後に、照射を施した植物を防虫温室に移し替えた。照射を施したF1後代を、cms‘Wesroona’系統の人工授粉に用いた。得られた回復系統のF1’植物はF2ファミリーを作成することが可能であり、このF2ファミリーは、個別に収穫し、照射を行っていないものと同様にフィールド分析において正確に播種した。
【0059】
表現型の選抜:1200のF2後代に44の比較対照例を加えたもの(用いられた82330本の植物体)について、フィールド分析において、2年間にわたり以下の三つの視覚的基準について(1から5の段階で)得点を付けた。
1−生長力
2−F2の分離における稔性/不稔性の植物体の比率の正常性、および
3−雌性稔性(莢の成育と結実)
【0060】
フィールドまたは温室のどちらかにおいて、自家受粉を繰り返して、選抜したファミリーの後代を得、そして更に分析を行うために、同型接合体系統(F4)を作成した。
【0061】
アイソザイム分析をDelourme R. and Eber F. 1992. Theor Appl Genet 85: 222−228に記載されているように行い、マーカーの開発(Fourmann M et al 2002. Theor Appl Genet 105: 1196−1206)に記載されているように行った。PCR産物は配列決定によって確認する。
【0062】
アラインメントは、Blast NcbiおよびUk Crop Net Brassica DBおよびToulouseにあるINRAのMultialin softwareを用いて行った。
【0063】
方法:
導入した遺伝子に欠失がある低GLSの春の同型接合体の回復系統の一つである‘R211’を選択した(Delourme R. and Eber F. 1992. Theor Appl Genet 85: 222−228. Delourme R. et al 1998. Theor Appl Genet 97: 129−134. Delourme R. et al 1999. 10th Int. Rapeseed Congress, Canberra.)。spATCHIA(Fourmann M et al 2002. Theor Appl. Genet 105: 1196−1206)、spSG91 (Giancola S et al 2003 Theor Appl. Genet.(近刊))など、Rfoの両側でいくつかの分子マーカーが欠けている。‘R211’は、ダイコン遺伝子のPgi−2対立遺伝子のアイソザイムの発現を失っただけでなく、キャベツゲノムのPgi−2対立遺伝子のアイソザイム発現も失った(1、2)。
【0064】
その上、同型接合体の‘R211’は、生長力が低く、結実も良くないというような、連鎖した望ましくない形質を示した。我々は、このような植物体にはアブラナの染色体断片が欠けているものと仮定した。この材料に由来するF2後代の稔性の割合は、予想されたものよりも低いものであった(75%ではなく64%)。我々は、この‘R211’系統からプログラムを開始し、この欠失した系統の遺伝子を導入したRfoと、二重低含量セイヨウアブラナ系統から得られたアブラナの相同染色体とを、強制的に組換えることを試みた。
【0065】
イオン化照射は、二本鎖の切断とそれに続く異常な再結合によって、染色体の再構成を誘発することが知られている。染色体の切断を誘発するために、ガンマ線照射を、減数分裂の直前に、‘R211’系統に由来する異型接合体のF1に用い、アブラナゲノムにおいて、欠失したダイコンの導入遺伝子を組換えることを目指した。
【0066】
結果:
試験した1200のF2ファミリーのうち、三つの基準で最高点を獲得したファミリーはほとんどなかった。
【0067】
ただひとつ、‘R2000’だけは、自家受粉して得られた後代ごとに、良好な雌性稔性といった良好な農業形質が安定して回復した正常な比率の稔性植物体を生産し、‘R211’と比較して結実が正常であるということが分かった(図2および3)。このファミリーは、毎時65グレイの線量で6分間の照射処理をすることから得られたものである。
【0068】
グルコシノレートの分析によって、それが低含量であることが確認された。
【0069】
図2(‘R211’および‘R2000’における結実)では、R2000は、正常な花序と正常な外観的構造を示している。
【0070】
図3(莢ごとの種子の数)において、以下のものについて評価した:
‐自家受粉および検定交雑における最良の‘R2000’F4ファミリー、
‐アブラナの‘Pactol’cms系統および‘R211’比較対照。
【実施例2】
【0071】
実施例II:Pgi−2遺伝子におけるマーカーの選択
PGIアイソザイム分析:‘R2000’後代は、‘R211’において既に失われている、キャベツゲノムに由来する、アブラナのPgi−2対立遺伝子を発現した。
【0072】
R2000ファミリーを既知の回復系統アブラナRRH1およびR113と比較して解析するために、三つのPCRマーカーを規定した。
1)アブラナ属のゲノムに特異的となるように、アブラナ属のDB配列からPGIolマーカーを開発した。ダイコンにもシロイヌナズナにも増幅はないが、アブラナ属植物にだけ一つの248bpのバンドがある。
2)PGIintマーカーがPgi−2遺伝子の長い部分を増幅したため、それにより、試験した様々な種であるアブラナ属、ダイコン属(Raphanus)およびシロイヌナズナ属の間を明確に区別することが可能になった。カブおよびキャベツは、アガロースゲルにおけるバンドのサイズでは区別ができなかったが、それらのPGINTバンドの配列では区別された。
3)PGIUntマーカーは、PGIolUプライマーとPGIintLプライマーとを組み合わせたものである。
【0073】
このマーカーはPGIolマーカーの特異性を有しているが、PGIintマーカーに関しては、長い部分を増幅する。
【0074】
II.1 PGIolマーカー
PGIolプライマーでは‘R211’親系統に増幅は見られないが、一方で、試験した春の系統では248bpのバンドが見られた。そのDNA配列は、アブラナ属の種におけるCrop Net UK DBから得られたPGI−2配列、および我々のグループが行った先の研究で得られたPGI−2配列(SGAP配列と呼ばれる)と相同である(プライマーSG PGI chouの位置決定、図4)。
【0075】
それは、シロイヌナズナ属植物における第5染色体上のクローンMJB21−12(34542bp)のオーソログであった(NCBI DB)。
【0076】
同型接合性の試験のためのPGIolとSG34:
混合のPCRにおいて、二組のプライマー、つまり同型接合体の回復系統の植物体には存在しないPgi−2遺伝子を標識するPGIol、およびRfo遺伝子に非常に近い標識であるSG34(S. Giancola et al, Giancola S et al 2003 Thor Appl. Genet.(近刊)から)を、組み合わせて使用することにより、‘R211’に由来するF2後代において分離している稔性植物のうち、異型接合体植物から同型接合体を識別した。SG34を用いる代わりに、Rfo遺伝子に近い、あるいはRfo遺伝子中にある、他のあらゆるマーカーを用いてもよい。
【0077】
ただ一つ、R2000ファミリーだけは、同型接合体の後代と異型接合体の後代との間に違いが見られなかった。
Pgi−2遺伝子はR2000の同型接合体には存在するが、親の同型接合体のR211には存在しない。
【0078】
図5(PGIolマーカーおよびSG34PCRマーカー)では:
同型接合体の‘R2000’ファミリーは、PGIolのバンドを回復した。
【0079】
バンドのDNA配列により、既知のシロイヌナズナ属植物およびアブラナ属植物のPgi−2配列との相同性が裏付けられた。比較対照の遺伝子型(Drakkar、PactolおよびSamourai、Darmor)も、ゲル上で同様のパターンを示した。この共通のバンドの配列により、一つの塩基置換を除いては殆ど同じである、それらの相同性の高さが確認された。
【0080】
同型接合体の‘R2000’ファミリーは、キャベツ型のPGIolバンドを回復した。それは、Samourai群の既知の回復とは異なるものである。
【0081】
Pgi−2のこの増幅された部分は非常によく保存されており、様々な遺伝子型の間ではほとんど違いが見られない。Pgi−2遺伝子の長い部分を詳しく調べた。
【0082】
II.2 PGIUNTマーカーおよびPGIintマーカー
PCR産物の電気泳動パターン:
PGIUNTマーカー:第二のリバースプライマーであるPGIintLを、Pgi−2配列の「更に下流」に設計して、遺伝子の保存領域と同様、可変領域も増幅した。PGIolUバンドと共に用いると、それは、アブラナ属ゲノムにおいてのみ980bpのバンドを増幅する。
【0083】
R211にはバンドは一切見られず、同型接合体の‘R2000’には、Drakkarの親と同様に、PGIUNTバンドが見られた。
【0084】
図8(PGIUNTマーカー)においては:
PGIintマーカーはPGIUNTのセグメントを増幅した。アッパープライマーPGIintは、試験したすべての種において増幅することが可能であり、シロイヌナズナ属、ダイコンおよびアブラナ属を明らかに区別することができる。カブおよびキャベツは、アガロースゲル上のバンドのサイズではなく、それらのPGIintの配列によって区別される。‘R211’系統を除いた、全ての試験した回復系統の遺伝子型は、カブのバンドに相同な、ヨーロッパダイコンのバンドおよびアブラナ属植物の一つのバンドを示した。
【0085】
同型接合体の‘R2000’には、欠失した‘R211’親系統におけるように、ダイコンのPGIintバンドが見られなかったが、キャベツのバンドと相同な、一つのアブラナ属植物のバンドが見られた。
【0086】
図9には、PGIintマーカーの電気泳動が示されている。
【0087】
配列分析:
データベースから得たPGI配列の比較。
【0088】
約490bpのPGIセグメントが知られている。
【0089】
様々な遺伝子型(キャベツ、カブ、セイヨウアブラナ)から得られた約490bpのセグメントの配列が、我々の研究室のグループによって研究されてきたが、いくつかの配列は、M.Fouramnn(4)によって、Brassica Crop Net DBにEMAF25875から25788として提供された。これらの配列は、非常に良く保存されている。
【0090】
カブとキャベツのPGI配列の比較(図13および14):
キャベツとカブの、試験した遺伝子型から得られたPGI配列間で比較したところ、それらは、21の塩基置換によって区別されることが判明した。これらの置換は、カブのAsko品種(RRH1およびR113)またはキャベツ(Drakkar、R211*DKのみならずR2000も)のいずれかと相同であるアブラナの他の試験した遺伝子型から、PGIint配列を区別することを可能にしている。
【実施例3】
【0091】
実施例III:Rfoに近い領域におけるマーカーの選択
Rfo遺伝子のクローニングを容易にするために、挿入したダイコン遺伝子におけるRfo遺伝子を囲むマーカーを決定した(Desloires S et al 2003 EMBO reports 4, 6:588−594)。これらのうちの一つであるSG129PCRマーカーは、Rfoに非常に近いところに位置する(Giancola S et al 2003 Theor Appl. Genet.(近刊)):それにより、セイヨウアブラナのキャベツおよびカブのゲノムにおいて異なったバンドが共増幅されたが、ダイコンのバンドはアガロースゲル上で確認するのは非常に困難であった。
【0092】
標的であるSG129配列は、シロイヌナズナにおけるクローン(AC011000、F16P17遺伝子座)のオーソログであった。このクローンは、シロイヌナズナ属の隣接するコンティグクローン(AC07190)とオーバーラップする。
【0093】
我々は、Brassica Crop Net DBから、A011000の開始点でBLASTを行って、一つのキャベツクローン(EMBH448336、764bp)を見出し、そして、AC07190の末端でBLASTを行って、シロイヌナズナ属の地図上で約300bp離れている二つ目のキャベツクローン(EMBH53971)を見出した。
【0094】
我々は、二つのキャベツクローンの間で、新しいPCRマーカーである、BolJonを設計した。我々は、それが、ここで比較された様々な遺伝子型における特有のPCRバンドを増幅することが可能であることを確認した。
【0095】
図16(BolJon PCR産物の電気泳動ゲル)において:
‐シロイヌナズナ属植物において、コンティグのオーバーラップしているセグメントと相同である、BolJonの815bpのバンドが増幅された。
‐アブラナ族(Brassiceae)の二倍体種においては、BolJonマーカーは、異なるバンドを示した。一つはキャベツにおける950bpのバンドであり、もう一方は、カブにおける870bpのバンドである。このことは、二つのキャベツクローン(EMBH53971とEMBH448336)が、シロイヌナズナ属におけるオーソログ配列がそうであるように、アブラナ属ゲノムにおいて順に連続しているということである。
‐セイヨウアブラナにおいては、これらの二つのバンドは、維持系統であるSamouraiまたはDrakkarにおいて共増幅される。
‐ダイコンの系統7においては、一つのBolJonバンドが約630bpの長さで増幅された。回復系統のダイコンであるcmsRd81のバンドはやや小さかった。
‐全ての回復系統のアブラナにおいて、BolJonバンドの一つがダイコンの系統7と同じ大きさであった。BolJonはダイコン遺伝子導入のマーカーである。
‐同型接合体の回復系統のアブラナである‘RRH1’、‘R113’および‘R211’には、カブのバンドと630bpのダイコンのバンドが見られたのみであるが、このことは、標的遺伝子のキャベツのオーソログが存在しないということか、あるいは、標的遺伝子のキャベツのオーソログが、染色体のダイコンのセグメントがアブラナのキャベツの構成ゲノムに挿入された際に改変されたことを示している。
【0096】
‘R2000’同型接合体の植物体には、PCRを行ったダイコンのBolJonに加えてアブラナ属の二つのBolJonのバンドが見られ、これにおいても、‘R211’およびその他の回復系統において失われていたキャベツのバンドが回復している
【0097】
我々は、試験した種におけるキャベツゲノムに特有のプライマーであるpCP418Lを設計した。SG129Uプライマーと共に、それはキャベツにおいて一つだけPCRバンド(670bp)を増幅した。(図17)
【0098】
カブにもダイコンにもシロイヌナズナ属植物にも増幅は見られなかったが、セイヨウアブラナの維持系統において明瞭なCP418バンドが見られた。その配列は、EMBH448336の配列と完全に相同であった。このマーカーは、非常によく保存されたDNA配列にあったため、存在の有無以外に遺伝子型間で多型現象はなかった。
【0099】
RRH1、R113およびR211にはCP418バンドは存在しないが、このことは、前述したように、標的遺伝子のキャベツのオーソログが存在しないか、あるいは、標的遺伝子のキャベツのオーソログが、ダイコン遺伝子が挿入された後に改変されたことを示している。
【0100】
‘R2000’の同型接合の植物体はCP418バンドを示し、これにおいても、特異的なキャベツのバンドは回復していた。
【0101】
本発明において、雌性稔性に優れた、新たな組換え低GLS回復系統が選抜された。‘R211’系統の低い値により、フィールドにおける稀な組換え現象の選択と、‘R2000’ファミリーの解析が可能となった。
【0102】
同型接合体の‘R2000’は、分析したアブラナの回復系統と比較すると、PGIolマーカー、PGIUNTマーカー、PGIintマーカーおよびBolJonマーカーの特有の組み合わせを示す:PGIintマーカーは、同型接合体の回復系統のアブラナであるRRH1およびR113で、ヨーロッパダイコンのバンドに加え、カブゲノムに相同である一つのアブラナ属のバンドが見られることを示す。‘R2000’には、その親である欠失したR211系統と同様に失われているダイコンのバンドは見られないが、キャベツに相同のアブラナ属のバンドが一つ見られた。このカブゲノムにおけるオーソログのPGIint配列は、R211およびDrakkarの遺伝的背景においては、このマーカーでは増幅されない。
【0103】
回復系統RRH1およびR113におけるPGIolマーカーおよびPGIUNTマーカーの配列は、カブのAsko品種のものと相同であった。‘R2000’においては、PGIUNTの配列はキャベツに相同である。そのカブゲノムにおけるオーソログのPGIUntの配列は、R211およびDrakkarの遺伝的背景においては、このマーカーでは増幅されない。
【0104】
BolJonマーカーは、‘R211’を含む同型接合体の回復系統のアブラナで、ヨーロッパダイコンのバンドに加え、唯一カブのバンドも見られることを示した。‘R2000’では、‘R211’の二つのバンドに加え、回復系統のキャベツのBolJonバンドも見られる。
【0105】
CP418マーカーは、‘R2000’が、この保存されたキャベツのセグメントを回復したことを示した。
【0106】
我々は、‘R2000’植物体を生じさせる花粉母細胞において組換え現象が起こるという仮説を立てた。そして、欠失したダイコンの導入遺伝子は、放射線照射した異型接合体の‘R211*DK’に存在するDrakkar‘00’ゲノムに恐らく由来するこれらのマーカーによって特徴づけられる、キャベツ型のPgi−2遺伝子およびBolJon標的配列を有する、正常な相同染色体のセグメントに組み込まれた。
【0107】
BolJonで観察されたパターンが示すところによると、組換え現象の結果、一方はダイコン、他方はキャベツに由来する、特殊な二本鎖領域が‘R2000’ファミリーに存在する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ガンマ線照射とF2の作成とを示した図。
【図2】R211とR2000の結実を示した図。
【図3】各系統の莢ごとの種子数を示した図。
【図4】データベースによる、PGI配列のセグメントにおけるPGIolプライマーの位置を示した図。
【図5】PGI−2遺伝子(PGIol)およびSG34の電気泳動を示した写真。
【図6】PGIolプライマーを用いてPCRで増幅した、DNAのPgi−2セグメントを示した図。
【図7】PCR産物であるPGIolのMselによる消化を示した写真。
【図8】PGIUNTマーカーの電気泳動を示す写真。
【図9】PGIint PCRマーカーの電気泳動を示す写真。
【図10】BolJon PCRマーカーの電気泳動を示す写真。
【図11】CP418マーカーの電気泳動を示す写真。
【図12】マーカーの概要を示した表。
【図13】シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIolマーカーの配列のアラインメント。
【図14】シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIint−UNTマーカーの配列のアラインメント。
【図15】シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、CP418Lマーカーの配列のアラインメント。
【図16】シロイヌナズナ属植物、ダイコンおよびカブのBolJonマーカーを示した図。
【図17】シロイヌナズナのMJB21.12配列におけるPgi−2プライマーの位置を示した図。
【図18】‐図18は、mipsAtl62850遺伝子におけるBolJonプライマーの位置と、シロイヌナズナのAC007190クローンおよびAC011000クローンの重複領域を示すものである。シロイヌナズナ属植物のBolJonのPCR産物(740bp)とのアラインメントが示されている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、オグラ(ogura)型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法に関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、「雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有するものである本発明は、セイヨウアブラナ雑種の種子ならびにその後代を形成する方法および選抜のためのマーカーの使用に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
アブラナ(Brassica napus L.)においてOgu−INRA型細胞質雄性不稔(cms)の体系についての回復系統を育種することは、過去数年来の主要な目的となっている。それらの雌性稔性を高め、二重低含量回復系統を得るには、多大な戻し交配と系統育種を行うことが必要とされていた。所謂「二重低含量」品種とは、油中のエルカ酸含量が低く、油を抽出した後に残る固体穀粉の中のグルコシノレート含量が低いもののことを言う。しかしながら、ダイコン遺伝子導入のサイズが大きいことから、これらの系統を育種する上で幾つかの難点(導入遺伝子の再構成、望ましくない形質との連鎖の可能性)に直面することがある。
【非特許文献1】Desloires S et al 2003 EMBO reports 4, 6:588−594
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明者等は、農学的価値の高い、新たに改良された二重低含量回復系統を提供することを目標とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目標は、アブラナにおいて、Ogu−INRA型細胞質雄性不稔(cms)についての組換え二重低含量回復系統を作成する、新たな方法によって実現される。
【0005】
本発明の第一の目的は、オグラ型細胞質雄性不稔(cms)についての、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法に関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有しているものであり、当該方法は以下の手順を含むものである、
a)欠失したダイコン遺伝子を挿入した春のセイヨウアブラナの二重低含量cms系統を、春のDrakkarの二重低含量系統と交配して、セイヨウアブラナの異型接合体の回復植物を形成し、
b)減数分裂前に、手順a)で得られた異型接合体の回復植物に、ガンマ線照射を行い、
c)前記手順b)で得られた花の花粉を、cms二重低含量の春のWesroona系統と交配し、
d)その後代の生長力と雌性稔性、およびcms遺伝子の伝達率を試験し、
e)後代系統の選抜を行う。
【0006】
本発明においては、「(一つまたは複数の)系統」という用語は、基本的に同型接合体で、自己受粉で生殖可能な植物体を意味する。
【0007】
請求項1に記載の方法においては、手順b)における照射量は6分間に65グレイである。
【0008】
本発明の方法に関する一つの好適な実施態様によれば、手順a)の春のセイヨウアブラナの二重低含量cms系統は、R211である。
【0009】
R211は、INRAの春の回復系統である。
【0010】
Drakkarは、フランス産の春の登録品種である。
【0011】
Wesroonaは、オーストラリア産の春の登録品種である。
【0012】
本発明の方法に関する一つの好適な実施態様によれば、試験は、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカーの組み合わせによって行われる。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、オグラ型cmsのための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統に関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有するものである。
【0014】
一つの好適な実施態様によれば、二重低含量回復系統は、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカーの独自の組み合わせを有している。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、以下の手順を通して、セイヨウアブラナの雑種植物およびその後代を形成する方法に関するものであり、当該方法は、以下の手順によって得られるものである。
a)請求項1に従って作成された、同型接合体となるように育種された回復系統を準備し、
b)雑種を作成するフィールドにおいて、前記回復系統を花粉提供植物体として用い、
c)雑種を作成するフィールドにおいて、cms植物を雑種種子作成植物体として用い、そして
d)雄性不稔植物体から、雑種種子を得る。
【0016】
本発明のもう一つの目的は、本発明の方法によって得られたアブラナ属(Brassica)植物の種子に関するものである。
【0017】
本発明の更にもう一つの目的は、英国の23,St Machar Drive,Aberdeen,Scotland,AB24 3RYに所在の、NCIMB Limited社に2003年7月4日付けで参照番号NCIMB41183で寄託された、セイヨウアブラナの種子に関するものである。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、PGIol、PGIint、BolJonおよびCP418の少なくとも四つのマーカー、あるいは、それらの、少なくとも一つの多型部位を含むいずれかの部位を用いて、オグラ型cmsのための、セイヨウアブラナの組換え回復系統を解析することに関するものであり、該系統は、ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有しているものである。
【0019】
好ましい実施態様においては、その組み合わせは、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418の五つのマーカーからなるものである。
【0020】
本発明において「少なくとも一つの多型部位を含むいずれかの部位」というのは、少なくともキャベツ型の配列とカブ(B.rapa)型の配列との間の違いを示す配列のいずれかの部分のことを意味する。
【0021】
そのようなマーカーは、以下の図面とR2000系統について記載されている配列表に示されている。
【0022】
実施態様の一つの有利な実施態様によれは、本発明は、以下のものに関するものである。
‐プライマーPGIolUおよびPGIolLを用いて増幅するマーカーPGIol:
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIolL:5’TGTACATCAGACCCGGTAGAAAA3’)
‐プライマーPGIintUおよびPGIintLを用いて増幅するマーカーPGIint:
(PGIintU:5’CAGCACTAATCTTGCGGTATG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐プライマーPGIolUおよびPGIintLを用いて増幅するマーカーPGIUNT:
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐プライマーBolJonUおよびBolJonLを用いて増幅するマーカーBolJon:
(BolJonU:5’GATCCGATTCTTCTCCTGTTG3’;
BolJonL:5’GCCTACTCCTCAAATCACTCT3’)
‐プライマーSG129UおよびpCP418Lを用いて増幅するマーカーCP418:
(SG129U:cf Giancola et al,2003 Theor Appl.Genet.(in press)
pCP418L:5’AATTTCTCCATCACAAGGACC3’)
【0023】
本発明のもう一つの目的は、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418マーカーに関するものであり、それらマーカーの配列は以下の通りである。
【0024】
PGIol R2000マーカー:
【0025】
【表1】
【0026】
PGIUNT R2000マーカー:
【0027】
【表2】
【0028】
PGIint R2000マーカー:
【0029】
【表3】
【0030】
BolJon R2000マーカー:
【0031】
【表4】
【0032】
CP418L R2000マーカー:
【0033】
【表5】
【0034】
以下の添付図面において、つぎのような略称を用いる:
【0035】
【表6】
【0036】
‐図1は、ガンマ線照射とF2の作成とを示すものである。
【0037】
‐図2は、R211とR2000の結実を示すものである。
【0038】
‐図3は、様々な系統の莢ごとの種子数を示すものである。
【0039】
‐図4は、データベースによる、PGI配列のセグメントにおけるPGIolプライマーの位置を示すものである。この図においては、
PGIol:−プライマーPGIolU(SGAPでの名称はBnPGIch1U)
−プライマーPGIolL(SGAPでの名称はBnPGIch1L)
PGIint:−プライマーPGIintU
−プライマーPGIintL(これは配列には含まれていない)
【0040】
‐図5は、PCRマーカーであるPGI−2遺伝子(PGIol)、およびRfoに近いPCRマーカーであるSG34の電気泳動ゲルを示すものである。
【0041】
‐図6は、PGIolプライマーを用いてPCRで増幅した、DNAのPgi−2セグメントを示すものである。
【0042】
‐図7は、PCR産物であるPGIolのMselによる消化を示すものである。
この図においては、
SamとDarmには75bpのバンドがある。
Drak、R211.DKおよびR2000は、70bpのバンドを示す(15%アクリルアミド)。
8は、Samouraiに類似している(75bp);Drakkar(70bp)と混合することにより、二本のバンドが視覚化された。
【0043】
‐図8は、PGIUNTマーカーの電気泳動のアガロースゲルを示すものである。
この図においては、
PGIUNTバンド(約980bp)は、キャベツ、カブのAsko品種(B.rapa cv Asko)、維持系統および回復系統には存在するが、‘R211’には存在しない。
ダイコンおよびシロイヌナズナ属(Arabidopsis)に増幅はみられない。
様々なアブラナ属の遺伝子型において、一本のバンドだけが増幅された。バンドのサイズは類似しているが、配列は異なる。
【0044】
‐図9は、PGIint PCRマーカーの電気泳動ゲルを示すものである。
この図においては、ダイコン系統7のPGIintは、およそ950bpである。このバンドは、回復系統RRH1およびR113と同じものである。これは、R211では見られない。また、R2000でもみられない。しかしながら、PGIintバンドのサイズは、様々なアブラナ属の種において、約870bpでほぼ同じであるが、配列は異なる。
【0045】
‐図10は、BolJon PCRマーカーの電気泳動のアガロースゲルを示すものである。
【0046】
‐図11は、CP418マーカーの電気泳動のアガロースゲルを示すものである。
この図においては、(およそ670bpの)CP418バンドは、キャベツゲノム特有のものである。これは、キャベツ(B.ol)、セイヨウアブラナ(Samourai、Drakkar、Pactolおよび異型接合体のR2111*Dk)に存在するものである。これは、回復系統のアブラナ(RRH、R113およびR211)には存在しないものである。同型接合体のR2000には存在する。
【0047】
‐図12は、マーカーの概要を示す表である。
【0048】
‐図13(13(a)、13(b))は、シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIolマーカーの配列のアラインメントを示すものである。
【0049】
‐図14(14(a)、14(b)、14(c)、14(d))は、シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIint−UNTマーカーの配列のアラインメントを示すものである。
【0050】
‐図15(15(a)、15(b)、15(c))は、シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、CP418Lマーカーの配列のアラインメントを示すものである。
【0051】
‐図16(16および16bis)は、シロイヌナズナ属植物、ダイコンおよびカブのBolJonマーカーを示すものである。
これらは、シロイヌナズナ属植物(AC007190の末端−AC011000の開始点)、キャベツのEMBH959102の末端およびEMBH448336の開始点、ならびにセイヨウアブラナにおける(それぞれDrakkarおよびSamouraiにおける)SG129マーカーのバンド1および2の代表的なコンセンサス配列の、DB配列とアラインされている。
836bpのポイントからは、AC07190−AC11000およびGCPATpBOJ配列は、アブラナ属植物の配列とはもはや高度に相同ではなくなる。
ダイコンとカブ(GCPconsen RsRfBOJおよびBR)の配列は、それぞれ、858bpのポイントから900bpおよび981bpのポイントまで、セイヨウアブラナのものと依然として高度に相同である。
ダイコンにおいては、アブラナ属植物の配列の更に下流に部分的な相同が見いだされるに過ぎない。
カブのAsko品種においては、そのBolJon配列の左側を、78bpを欠失させた後に、セイヨウアブラナにおけるキャベツおよびカブのそれと、1057bpのポイントからBolJonLプライマーまで、更にアラインすることができる。
【0052】
‐図17(17および17bis)は、シロイヌナズナ(Arabidopsis th)のMJB21.12配列におけるPgi−2プライマーの位置を示すものである。
【0053】
‐図18は、mipsAtl62850遺伝子におけるBolJonプライマーの位置と、シロイヌナズナのAC007190クローンおよびAC011000クローンの重複領域を示すものである。シロイヌナズナ属植物のBolJonのPCR産物(740bp)とのアラインメントが示されている。
【0054】
しかし、当然のことながら、ここにおいて示されている例は本発明の対象とするものを示すために挙げられているものであり、限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0055】
実施例I: ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツのPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法。
【0056】
材料と方法:
遺伝子型:欠失したダイコン遺伝子を挿入した‘R211’系統を、春の低GLSアブラナ‘Drakkar’と交配し、F1後代(‘R211*Dk’)を作成した。その後の交配には、春の低GLScms系統‘Wesroona’(オーストラリア原産)を用いた。分子分析における比較対照として、欧州のダイコンの系統7、アジアの回復系統ダイコンD81、セイヨウアブラナ*野生型ダイコンの雑種、キャベツ、そしてカブのAsko品種、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)と同様に、完全な(‘RRH1’)または不完全な(‘R113’)遺伝子導入を有する‘Samourai’に由来する冬の回復系統を用いた。
【0057】
ガンマ線照射:管理区域において、開花している植物体の全体をCo60放射線源からのガンマ線で処理する。致死未満量の65グレイを減数分裂前に照射した。
【0058】
検定交雑とF2作成:2mmよりも大きいつぼみを取り除いた後に、照射を施した植物を防虫温室に移し替えた。照射を施したF1後代を、cms‘Wesroona’系統の人工授粉に用いた。得られた回復系統のF1’植物はF2ファミリーを作成することが可能であり、このF2ファミリーは、個別に収穫し、照射を行っていないものと同様にフィールド分析において正確に播種した。
【0059】
表現型の選抜:1200のF2後代に44の比較対照例を加えたもの(用いられた82330本の植物体)について、フィールド分析において、2年間にわたり以下の三つの視覚的基準について(1から5の段階で)得点を付けた。
1−生長力
2−F2の分離における稔性/不稔性の植物体の比率の正常性、および
3−雌性稔性(莢の成育と結実)
【0060】
フィールドまたは温室のどちらかにおいて、自家受粉を繰り返して、選抜したファミリーの後代を得、そして更に分析を行うために、同型接合体系統(F4)を作成した。
【0061】
アイソザイム分析をDelourme R. and Eber F. 1992. Theor Appl Genet 85: 222−228に記載されているように行い、マーカーの開発(Fourmann M et al 2002. Theor Appl Genet 105: 1196−1206)に記載されているように行った。PCR産物は配列決定によって確認する。
【0062】
アラインメントは、Blast NcbiおよびUk Crop Net Brassica DBおよびToulouseにあるINRAのMultialin softwareを用いて行った。
【0063】
方法:
導入した遺伝子に欠失がある低GLSの春の同型接合体の回復系統の一つである‘R211’を選択した(Delourme R. and Eber F. 1992. Theor Appl Genet 85: 222−228. Delourme R. et al 1998. Theor Appl Genet 97: 129−134. Delourme R. et al 1999. 10th Int. Rapeseed Congress, Canberra.)。spATCHIA(Fourmann M et al 2002. Theor Appl. Genet 105: 1196−1206)、spSG91 (Giancola S et al 2003 Theor Appl. Genet.(近刊))など、Rfoの両側でいくつかの分子マーカーが欠けている。‘R211’は、ダイコン遺伝子のPgi−2対立遺伝子のアイソザイムの発現を失っただけでなく、キャベツゲノムのPgi−2対立遺伝子のアイソザイム発現も失った(1、2)。
【0064】
その上、同型接合体の‘R211’は、生長力が低く、結実も良くないというような、連鎖した望ましくない形質を示した。我々は、このような植物体にはアブラナの染色体断片が欠けているものと仮定した。この材料に由来するF2後代の稔性の割合は、予想されたものよりも低いものであった(75%ではなく64%)。我々は、この‘R211’系統からプログラムを開始し、この欠失した系統の遺伝子を導入したRfoと、二重低含量セイヨウアブラナ系統から得られたアブラナの相同染色体とを、強制的に組換えることを試みた。
【0065】
イオン化照射は、二本鎖の切断とそれに続く異常な再結合によって、染色体の再構成を誘発することが知られている。染色体の切断を誘発するために、ガンマ線照射を、減数分裂の直前に、‘R211’系統に由来する異型接合体のF1に用い、アブラナゲノムにおいて、欠失したダイコンの導入遺伝子を組換えることを目指した。
【0066】
結果:
試験した1200のF2ファミリーのうち、三つの基準で最高点を獲得したファミリーはほとんどなかった。
【0067】
ただひとつ、‘R2000’だけは、自家受粉して得られた後代ごとに、良好な雌性稔性といった良好な農業形質が安定して回復した正常な比率の稔性植物体を生産し、‘R211’と比較して結実が正常であるということが分かった(図2および3)。このファミリーは、毎時65グレイの線量で6分間の照射処理をすることから得られたものである。
【0068】
グルコシノレートの分析によって、それが低含量であることが確認された。
【0069】
図2(‘R211’および‘R2000’における結実)では、R2000は、正常な花序と正常な外観的構造を示している。
【0070】
図3(莢ごとの種子の数)において、以下のものについて評価した:
‐自家受粉および検定交雑における最良の‘R2000’F4ファミリー、
‐アブラナの‘Pactol’cms系統および‘R211’比較対照。
【実施例2】
【0071】
実施例II:Pgi−2遺伝子におけるマーカーの選択
PGIアイソザイム分析:‘R2000’後代は、‘R211’において既に失われている、キャベツゲノムに由来する、アブラナのPgi−2対立遺伝子を発現した。
【0072】
R2000ファミリーを既知の回復系統アブラナRRH1およびR113と比較して解析するために、三つのPCRマーカーを規定した。
1)アブラナ属のゲノムに特異的となるように、アブラナ属のDB配列からPGIolマーカーを開発した。ダイコンにもシロイヌナズナにも増幅はないが、アブラナ属植物にだけ一つの248bpのバンドがある。
2)PGIintマーカーがPgi−2遺伝子の長い部分を増幅したため、それにより、試験した様々な種であるアブラナ属、ダイコン属(Raphanus)およびシロイヌナズナ属の間を明確に区別することが可能になった。カブおよびキャベツは、アガロースゲルにおけるバンドのサイズでは区別ができなかったが、それらのPGINTバンドの配列では区別された。
3)PGIUntマーカーは、PGIolUプライマーとPGIintLプライマーとを組み合わせたものである。
【0073】
このマーカーはPGIolマーカーの特異性を有しているが、PGIintマーカーに関しては、長い部分を増幅する。
【0074】
II.1 PGIolマーカー
PGIolプライマーでは‘R211’親系統に増幅は見られないが、一方で、試験した春の系統では248bpのバンドが見られた。そのDNA配列は、アブラナ属の種におけるCrop Net UK DBから得られたPGI−2配列、および我々のグループが行った先の研究で得られたPGI−2配列(SGAP配列と呼ばれる)と相同である(プライマーSG PGI chouの位置決定、図4)。
【0075】
それは、シロイヌナズナ属植物における第5染色体上のクローンMJB21−12(34542bp)のオーソログであった(NCBI DB)。
【0076】
同型接合性の試験のためのPGIolとSG34:
混合のPCRにおいて、二組のプライマー、つまり同型接合体の回復系統の植物体には存在しないPgi−2遺伝子を標識するPGIol、およびRfo遺伝子に非常に近い標識であるSG34(S. Giancola et al, Giancola S et al 2003 Thor Appl. Genet.(近刊)から)を、組み合わせて使用することにより、‘R211’に由来するF2後代において分離している稔性植物のうち、異型接合体植物から同型接合体を識別した。SG34を用いる代わりに、Rfo遺伝子に近い、あるいはRfo遺伝子中にある、他のあらゆるマーカーを用いてもよい。
【0077】
ただ一つ、R2000ファミリーだけは、同型接合体の後代と異型接合体の後代との間に違いが見られなかった。
Pgi−2遺伝子はR2000の同型接合体には存在するが、親の同型接合体のR211には存在しない。
【0078】
図5(PGIolマーカーおよびSG34PCRマーカー)では:
同型接合体の‘R2000’ファミリーは、PGIolのバンドを回復した。
【0079】
バンドのDNA配列により、既知のシロイヌナズナ属植物およびアブラナ属植物のPgi−2配列との相同性が裏付けられた。比較対照の遺伝子型(Drakkar、PactolおよびSamourai、Darmor)も、ゲル上で同様のパターンを示した。この共通のバンドの配列により、一つの塩基置換を除いては殆ど同じである、それらの相同性の高さが確認された。
【0080】
同型接合体の‘R2000’ファミリーは、キャベツ型のPGIolバンドを回復した。それは、Samourai群の既知の回復とは異なるものである。
【0081】
Pgi−2のこの増幅された部分は非常によく保存されており、様々な遺伝子型の間ではほとんど違いが見られない。Pgi−2遺伝子の長い部分を詳しく調べた。
【0082】
II.2 PGIUNTマーカーおよびPGIintマーカー
PCR産物の電気泳動パターン:
PGIUNTマーカー:第二のリバースプライマーであるPGIintLを、Pgi−2配列の「更に下流」に設計して、遺伝子の保存領域と同様、可変領域も増幅した。PGIolUバンドと共に用いると、それは、アブラナ属ゲノムにおいてのみ980bpのバンドを増幅する。
【0083】
R211にはバンドは一切見られず、同型接合体の‘R2000’には、Drakkarの親と同様に、PGIUNTバンドが見られた。
【0084】
図8(PGIUNTマーカー)においては:
PGIintマーカーはPGIUNTのセグメントを増幅した。アッパープライマーPGIintは、試験したすべての種において増幅することが可能であり、シロイヌナズナ属、ダイコンおよびアブラナ属を明らかに区別することができる。カブおよびキャベツは、アガロースゲル上のバンドのサイズではなく、それらのPGIintの配列によって区別される。‘R211’系統を除いた、全ての試験した回復系統の遺伝子型は、カブのバンドに相同な、ヨーロッパダイコンのバンドおよびアブラナ属植物の一つのバンドを示した。
【0085】
同型接合体の‘R2000’には、欠失した‘R211’親系統におけるように、ダイコンのPGIintバンドが見られなかったが、キャベツのバンドと相同な、一つのアブラナ属植物のバンドが見られた。
【0086】
図9には、PGIintマーカーの電気泳動が示されている。
【0087】
配列分析:
データベースから得たPGI配列の比較。
【0088】
約490bpのPGIセグメントが知られている。
【0089】
様々な遺伝子型(キャベツ、カブ、セイヨウアブラナ)から得られた約490bpのセグメントの配列が、我々の研究室のグループによって研究されてきたが、いくつかの配列は、M.Fouramnn(4)によって、Brassica Crop Net DBにEMAF25875から25788として提供された。これらの配列は、非常に良く保存されている。
【0090】
カブとキャベツのPGI配列の比較(図13および14):
キャベツとカブの、試験した遺伝子型から得られたPGI配列間で比較したところ、それらは、21の塩基置換によって区別されることが判明した。これらの置換は、カブのAsko品種(RRH1およびR113)またはキャベツ(Drakkar、R211*DKのみならずR2000も)のいずれかと相同であるアブラナの他の試験した遺伝子型から、PGIint配列を区別することを可能にしている。
【実施例3】
【0091】
実施例III:Rfoに近い領域におけるマーカーの選択
Rfo遺伝子のクローニングを容易にするために、挿入したダイコン遺伝子におけるRfo遺伝子を囲むマーカーを決定した(Desloires S et al 2003 EMBO reports 4, 6:588−594)。これらのうちの一つであるSG129PCRマーカーは、Rfoに非常に近いところに位置する(Giancola S et al 2003 Theor Appl. Genet.(近刊)):それにより、セイヨウアブラナのキャベツおよびカブのゲノムにおいて異なったバンドが共増幅されたが、ダイコンのバンドはアガロースゲル上で確認するのは非常に困難であった。
【0092】
標的であるSG129配列は、シロイヌナズナにおけるクローン(AC011000、F16P17遺伝子座)のオーソログであった。このクローンは、シロイヌナズナ属の隣接するコンティグクローン(AC07190)とオーバーラップする。
【0093】
我々は、Brassica Crop Net DBから、A011000の開始点でBLASTを行って、一つのキャベツクローン(EMBH448336、764bp)を見出し、そして、AC07190の末端でBLASTを行って、シロイヌナズナ属の地図上で約300bp離れている二つ目のキャベツクローン(EMBH53971)を見出した。
【0094】
我々は、二つのキャベツクローンの間で、新しいPCRマーカーである、BolJonを設計した。我々は、それが、ここで比較された様々な遺伝子型における特有のPCRバンドを増幅することが可能であることを確認した。
【0095】
図16(BolJon PCR産物の電気泳動ゲル)において:
‐シロイヌナズナ属植物において、コンティグのオーバーラップしているセグメントと相同である、BolJonの815bpのバンドが増幅された。
‐アブラナ族(Brassiceae)の二倍体種においては、BolJonマーカーは、異なるバンドを示した。一つはキャベツにおける950bpのバンドであり、もう一方は、カブにおける870bpのバンドである。このことは、二つのキャベツクローン(EMBH53971とEMBH448336)が、シロイヌナズナ属におけるオーソログ配列がそうであるように、アブラナ属ゲノムにおいて順に連続しているということである。
‐セイヨウアブラナにおいては、これらの二つのバンドは、維持系統であるSamouraiまたはDrakkarにおいて共増幅される。
‐ダイコンの系統7においては、一つのBolJonバンドが約630bpの長さで増幅された。回復系統のダイコンであるcmsRd81のバンドはやや小さかった。
‐全ての回復系統のアブラナにおいて、BolJonバンドの一つがダイコンの系統7と同じ大きさであった。BolJonはダイコン遺伝子導入のマーカーである。
‐同型接合体の回復系統のアブラナである‘RRH1’、‘R113’および‘R211’には、カブのバンドと630bpのダイコンのバンドが見られたのみであるが、このことは、標的遺伝子のキャベツのオーソログが存在しないということか、あるいは、標的遺伝子のキャベツのオーソログが、染色体のダイコンのセグメントがアブラナのキャベツの構成ゲノムに挿入された際に改変されたことを示している。
【0096】
‘R2000’同型接合体の植物体には、PCRを行ったダイコンのBolJonに加えてアブラナ属の二つのBolJonのバンドが見られ、これにおいても、‘R211’およびその他の回復系統において失われていたキャベツのバンドが回復している
【0097】
我々は、試験した種におけるキャベツゲノムに特有のプライマーであるpCP418Lを設計した。SG129Uプライマーと共に、それはキャベツにおいて一つだけPCRバンド(670bp)を増幅した。(図17)
【0098】
カブにもダイコンにもシロイヌナズナ属植物にも増幅は見られなかったが、セイヨウアブラナの維持系統において明瞭なCP418バンドが見られた。その配列は、EMBH448336の配列と完全に相同であった。このマーカーは、非常によく保存されたDNA配列にあったため、存在の有無以外に遺伝子型間で多型現象はなかった。
【0099】
RRH1、R113およびR211にはCP418バンドは存在しないが、このことは、前述したように、標的遺伝子のキャベツのオーソログが存在しないか、あるいは、標的遺伝子のキャベツのオーソログが、ダイコン遺伝子が挿入された後に改変されたことを示している。
【0100】
‘R2000’の同型接合の植物体はCP418バンドを示し、これにおいても、特異的なキャベツのバンドは回復していた。
【0101】
本発明において、雌性稔性に優れた、新たな組換え低GLS回復系統が選抜された。‘R211’系統の低い値により、フィールドにおける稀な組換え現象の選択と、‘R2000’ファミリーの解析が可能となった。
【0102】
同型接合体の‘R2000’は、分析したアブラナの回復系統と比較すると、PGIolマーカー、PGIUNTマーカー、PGIintマーカーおよびBolJonマーカーの特有の組み合わせを示す:PGIintマーカーは、同型接合体の回復系統のアブラナであるRRH1およびR113で、ヨーロッパダイコンのバンドに加え、カブゲノムに相同である一つのアブラナ属のバンドが見られることを示す。‘R2000’には、その親である欠失したR211系統と同様に失われているダイコンのバンドは見られないが、キャベツに相同のアブラナ属のバンドが一つ見られた。このカブゲノムにおけるオーソログのPGIint配列は、R211およびDrakkarの遺伝的背景においては、このマーカーでは増幅されない。
【0103】
回復系統RRH1およびR113におけるPGIolマーカーおよびPGIUNTマーカーの配列は、カブのAsko品種のものと相同であった。‘R2000’においては、PGIUNTの配列はキャベツに相同である。そのカブゲノムにおけるオーソログのPGIUntの配列は、R211およびDrakkarの遺伝的背景においては、このマーカーでは増幅されない。
【0104】
BolJonマーカーは、‘R211’を含む同型接合体の回復系統のアブラナで、ヨーロッパダイコンのバンドに加え、唯一カブのバンドも見られることを示した。‘R2000’では、‘R211’の二つのバンドに加え、回復系統のキャベツのBolJonバンドも見られる。
【0105】
CP418マーカーは、‘R2000’が、この保存されたキャベツのセグメントを回復したことを示した。
【0106】
我々は、‘R2000’植物体を生じさせる花粉母細胞において組換え現象が起こるという仮説を立てた。そして、欠失したダイコンの導入遺伝子は、放射線照射した異型接合体の‘R211*DK’に存在するDrakkar‘00’ゲノムに恐らく由来するこれらのマーカーによって特徴づけられる、キャベツ型のPgi−2遺伝子およびBolJon標的配列を有する、正常な相同染色体のセグメントに組み込まれた。
【0107】
BolJonで観察されたパターンが示すところによると、組換え現象の結果、一方はダイコン、他方はキャベツに由来する、特殊な二本鎖領域が‘R2000’ファミリーに存在する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ガンマ線照射とF2の作成とを示した図。
【図2】R211とR2000の結実を示した図。
【図3】各系統の莢ごとの種子数を示した図。
【図4】データベースによる、PGI配列のセグメントにおけるPGIolプライマーの位置を示した図。
【図5】PGI−2遺伝子(PGIol)およびSG34の電気泳動を示した写真。
【図6】PGIolプライマーを用いてPCRで増幅した、DNAのPgi−2セグメントを示した図。
【図7】PCR産物であるPGIolのMselによる消化を示した写真。
【図8】PGIUNTマーカーの電気泳動を示す写真。
【図9】PGIint PCRマーカーの電気泳動を示す写真。
【図10】BolJon PCRマーカーの電気泳動を示す写真。
【図11】CP418マーカーの電気泳動を示す写真。
【図12】マーカーの概要を示した表。
【図13】シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIolマーカーの配列のアラインメント。
【図14】シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、PGIint−UNTマーカーの配列のアラインメント。
【図15】シロイヌナズナ属植物、ダイコン、カブ、キャベツおよびR2000の間における、CP418Lマーカーの配列のアラインメント。
【図16】シロイヌナズナ属植物、ダイコンおよびカブのBolJonマーカーを示した図。
【図17】シロイヌナズナのMJB21.12配列におけるPgi−2プライマーの位置を示した図。
【図18】‐図18は、mipsAtl62850遺伝子におけるBolJonプライマーの位置と、シロイヌナズナのAC007190クローンおよびAC011000クローンの重複領域を示すものである。シロイヌナズナ属植物のBolJonのPCR産物(740bp)とのアラインメントが示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、「雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法であり、以下の手順を含むものである方法。
a)欠失したダイコン遺伝子を挿入した春のセイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量cms系統を、春のDrakkarの二重低含量系統と交配して、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の異型接合体の回復植物を形成し、
b)減数分裂前に、手順a)で得られた異型接合体の回復植物に、ガンマ線照射を行い、
c)前記手順b)で得られた花の花粉を、cms二重低含量の春のWesroona系統と交配し、
d)その後代の生長力と雌性稔性、およびcms遺伝子の伝達率を試験し、
e)後代系統の選抜を行う。
【請求項2】
手順b)における照射量が6分間に65グレイであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
手順a)の春のセイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量cms系統がR211であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
手順d)における試験が、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカーの組み合わせによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo遺伝子が挿入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ(Ogura)型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量回復系統。
【請求項6】
PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカー独自の組み合わせを有していることを特徴とする、請求項5に記載のセイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量回復系統。
【請求項7】
以下の手順によって得られる、セイヨウアブラナ(Brassica napus)雑種植物およびその後代。
a)請求項1に従って作成された、同型接合体となるように育種された回復系統を準備し、
b)雑種を作成するフィールドにおいて、前記回復系統を花粉提供植物体として用い、
c)雑種を作成するフィールドにおいて、cms植物を雑種種子作成植物体として用い、そして
d)雄性不稔植物体から、雑種種子を得る。
【請求項8】
請求項1から得られるアブラナ属系統から得られることを特徴とする、アブラナ属植物の種子。
【請求項9】
請求項7で得られる、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の種子。
【請求項10】
英国の23,St Machar Drive,Aberdeen,Scotland,AB243 RYに所在の、NCIMB Limited社に2003年7月4日付けで参照番号NCIMB41183で寄託された、請求項1および2から得られたセイヨウアブラナ(Brassica napus)の種子。
【請求項11】
ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo遺伝子が挿入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ(ogura)型cmsのための、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の組換え回復系統を解析するための、PGIol、PGIint、BolJonおよびCP418の少なくとも四つのマーカーの組み合わせ、あるいは、それらの少なくとも一つの多型部位を含むいずれかの部位の使用方法。
【請求項12】
組み合わせが、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418の五つのマーカーからなるものであることを特徴とする、請求項11に記載の用法。
【請求項13】
‐マーカーPGIolがプライマーPGIolUおよびPGIolLを用いて増幅され、
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIolL:5’TGTACATCAGACCCGGTAGAAAA3’)
‐マーカーPGIintがプライマーPGIintUおよびPGIintLを用いて増幅され、
(PGIintU:5’CAGCACTAATCTTGCGGTATG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐マーカーPGIUNTがプライマーPGIolUおよびPGIintLを用いて増幅され、
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐マーカーBolJonがプライマーBolJonUおよびBolJonLを用いて増幅され、
(BolJonU:5’GATCCGATTCTTCTCCTGTTG3’;
BolJonL:5’GCCTACTCCTCAAATCACTCT3’)
‐マーカーCP418がプライマーSG129UおよびpCP418Lを用いて増幅される
(SG129U:cf Ginacola et al (5);
pCP418L:5’AATTTCTCCATCACAAGGACC3’)
ことを特徴とする、請求項12に記載の用法。
【請求項14】
以下の配列を有するPGIolマーカー:
【表1】
【請求項15】
以下の配列を有するPGIUNTマーカー:
【表2】
【請求項16】
以下の配列を有するPGIintマーカー:
【表3】
【請求項17】
以下の配列を有するBolJonマーカー:
【表4】
【請求項18】
以下の配列を有するCP418マーカー:
【表5】
【請求項1】
ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo回復遺伝子を有する、ダイコンの遺伝子が導入されており、「雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナの二重低含量回復系統を作成する方法であり、以下の手順を含むものである方法。
a)欠失したダイコン遺伝子を挿入した春のセイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量cms系統を、春のDrakkarの二重低含量系統と交配して、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の異型接合体の回復植物を形成し、
b)減数分裂前に、手順a)で得られた異型接合体の回復植物に、ガンマ線照射を行い、
c)前記手順b)で得られた花の花粉を、cms二重低含量の春のWesroona系統と交配し、
d)その後代の生長力と雌性稔性、およびcms遺伝子の伝達率を試験し、
e)後代系統の選抜を行う。
【請求項2】
手順b)における照射量が6分間に65グレイであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
手順a)の春のセイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量cms系統がR211であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
手順d)における試験が、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカーの組み合わせによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo遺伝子が挿入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ(Ogura)型細胞質雄性不稔(cms)のための、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量回復系統。
【請求項6】
PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418から選択された五つのマーカー独自の組み合わせを有していることを特徴とする、請求項5に記載のセイヨウアブラナ(Brassica napus)の二重低含量回復系統。
【請求項7】
以下の手順によって得られる、セイヨウアブラナ(Brassica napus)雑種植物およびその後代。
a)請求項1に従って作成された、同型接合体となるように育種された回復系統を準備し、
b)雑種を作成するフィールドにおいて、前記回復系統を花粉提供植物体として用い、
c)雑種を作成するフィールドにおいて、cms植物を雑種種子作成植物体として用い、そして
d)雄性不稔植物体から、雑種種子を得る。
【請求項8】
請求項1から得られるアブラナ属系統から得られることを特徴とする、アブラナ属植物の種子。
【請求項9】
請求項7で得られる、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の種子。
【請求項10】
英国の23,St Machar Drive,Aberdeen,Scotland,AB243 RYに所在の、NCIMB Limited社に2003年7月4日付けで参照番号NCIMB41183で寄託された、請求項1および2から得られたセイヨウアブラナ(Brassica napus)の種子。
【請求項11】
ダイコンのPgi−2対立遺伝子が欠失しキャベツ(Brassica oleracea)のPgi−2遺伝子と組換えられたRfo遺伝子が挿入されており、雌性稔性、高いRfo伝達率および高い生長力に特徴づけられる高い農学的価値を有する、オグラ(ogura)型cmsのための、セイヨウアブラナ(Brassica napus)の組換え回復系統を解析するための、PGIol、PGIint、BolJonおよびCP418の少なくとも四つのマーカーの組み合わせ、あるいは、それらの少なくとも一つの多型部位を含むいずれかの部位の使用方法。
【請求項12】
組み合わせが、PGIol、PGIUNT、PGIint、BolJonおよびCP418の五つのマーカーからなるものであることを特徴とする、請求項11に記載の用法。
【請求項13】
‐マーカーPGIolがプライマーPGIolUおよびPGIolLを用いて増幅され、
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIolL:5’TGTACATCAGACCCGGTAGAAAA3’)
‐マーカーPGIintがプライマーPGIintUおよびPGIintLを用いて増幅され、
(PGIintU:5’CAGCACTAATCTTGCGGTATG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐マーカーPGIUNTがプライマーPGIolUおよびPGIintLを用いて増幅され、
(PGIolU:5’TCATTTGATTGTTGCGCCTG3’;
PGIintL:5’CAATAACCCTAAAAGCACCTG3’)
‐マーカーBolJonがプライマーBolJonUおよびBolJonLを用いて増幅され、
(BolJonU:5’GATCCGATTCTTCTCCTGTTG3’;
BolJonL:5’GCCTACTCCTCAAATCACTCT3’)
‐マーカーCP418がプライマーSG129UおよびpCP418Lを用いて増幅される
(SG129U:cf Ginacola et al (5);
pCP418L:5’AATTTCTCCATCACAAGGACC3’)
ことを特徴とする、請求項12に記載の用法。
【請求項14】
以下の配列を有するPGIolマーカー:
【表1】
【請求項15】
以下の配列を有するPGIUNTマーカー:
【表2】
【請求項16】
以下の配列を有するPGIintマーカー:
【表3】
【請求項17】
以下の配列を有するBolJonマーカー:
【表4】
【請求項18】
以下の配列を有するCP418マーカー:
【表5】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図16】
【図17a】
【図17b】
【公表番号】特表2008−504801(P2008−504801A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516608(P2006−516608)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002491
【国際公開番号】WO2005/002324
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(503225629)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002491
【国際公開番号】WO2005/002324
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(503225629)アンスティテュ ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ アグロノミック (3)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA RECHERCHE AGRONOMIQUE
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]