説明

農業用フィルム

【課題】透明性の持続性と流滴性能の持続性に優れる農業用フィルムを提供する。
【解決手段】2層以上からなる農業用フィルムであって、第一層が熱可塑性樹脂を含む層であり、第二層が、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含有する層である農業用フィルム。
成分(A):エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、流動の活性化エネルギーが35kJ/mol以上であるエチレン・α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレン・酢酸ビニル共重合体
成分(C):非イオン系界面活性剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
施設園芸用ハウス、トンネル等の被覆に用いられる農業用フィルムとしては、従来、ポリ塩化ビニルフィルムや、ポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムが汎用的に使用されている。中でも最近では、軽量で、焼却時に有毒ガスが発生し難いポリオレフィン系樹脂フィルムが施設園芸用に広く普及している。施設園芸において良好な作物生育性を発現するため、これら農業用フィルムに要求される性能としては、透明性、流滴性等が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる第一層、エチレン・酢酸ビニル共重合体からなる第三層、および第一層と第三層との間にある、エチレン・酢酸ビニル共重合体とエチレン・α−オレフィン共重合体からなる第二層からなり、少なくとも第三層に界面活性剤を含有してなる、農園芸用施設の被覆フィルムとして好適に用いることができる多層フィルムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−334612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の多層フィルムは、フィルム表面に界面活性剤が多量に析出して経時的に透明性が悪化したり、流滴性能を長期にわたって持続させることが困難になったりすることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、透明性の持続性と流滴性能の持続性に優れる農業用フィルムを開発するため鋭意検討した結果、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、2層以上からなる農業用フィルムであって、第一層が熱可塑性樹脂を含む層であり、第二層が、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20〜900重量部含有し、さらに該第二層における成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01〜5重量%含有する層である農業用フィルムである。
成分(A):エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、流動の活性化エネルギーが35kJ/mol以上であるエチレン・α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、酢酸ビニルから誘導される構成単位の含有量が3〜20wt%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(ただし成分(B)の重量を100%とする)
成分(C):非イオン系界面活性剤
【発明の効果】
【0008】
本発明の農業用フィルムは、透明性の持続性と流滴性能の持続性に優れるフィルムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の農業用フィルムは、2層以上からなる農業用フィルムであって、第一層が熱可塑性樹脂を含む層であり、第二層が、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20〜900重量部含有し、さらに該第二層における成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01〜5重量%含有する層である農業用フィルムである。
成分(A):エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、流動の活性化エネルギーが35kJ/mol以上であるエチレン・α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、酢酸ビニルから誘導される構成単位の含有量が3〜20wt%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(ただし成分(B)の重量を100%とする)
成分(C):非イオン系界面活性剤
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(A))とは、エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィン共重合体である。すなわち炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンと、エチレンとを共重合して得られる共重合体である。
【0010】
該エチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレンから誘導される構成単位の含有量は、50〜99重量%である(ただしエチレン・α−オレフィン共重合体の重量を100重量%とする)。
【0011】
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。より好ましくは、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどが挙げられる。前記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは、2種以上を組み合わせてもよく、例えば、1−ブテンと4−メチル−1−ペンテン、1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−オクテン、1−ブテンと1−デセンなどが挙げられる。より好ましくは、1−ブテンと4−メチル−1−ペンテン、1−ブテンと1−ヘキセンが挙げられる。
【0012】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体として好ましくは、エチレンと炭素原子数5〜10のα−オレフィンとの共重合体、あるいはエチレンと1−ブテンと炭素原子数5〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、さらに好ましくは、エチレンと炭素原子数6〜10のα−オレフィンとの共重合体、あるいはエチレンと1−ブテンと炭素原子数6〜10のα−オレフィンとの共重合体である。
【0013】
本発明における成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、流動の活性化エネルギー(Ea)が35kJ/mol以上である共重合体である。このような本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、長鎖分岐を有すると考えられる。長鎖分岐を有することにより、結晶化を制御することができ、非イオン系界面活性剤の溶出をコントロールすることができると考えられる。非イオン系界面活性剤(成分(C))を含む層を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギーが35kJ/molよりも低い場合には、流滴性能の持続性に劣るフィルムとなる。
成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体のEaは、流滴性能の持続性をより高める観点から、好ましくは40kJ/mol以上であり、より好ましくは50kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、耐衝撃性や透明性に優れるフィルムとするためには、エチレン・α−オレフィン共重合体のEaが100kJ/mol以下であることが好ましく、90kJ/mol以下であることがより好ましい。
【0014】
エチレン・α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギー(Ea)は、粘弾性測定装置として、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800を用いて、下記の条件(1)〜(4)で測定される各温度T(単位はKである。)における動的粘弾性データを、温度−時間重ね合わせ原理に基づいてシフトさせて190℃での動的粘度(η;単位はPa・secである。)の剪断速度(ω:単位はrad/secである。)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)のアレニウス型方程式から算出される数値である。
各温度T(K)における動的粘弾性データの測定条件
(1)ジオメトリー:パラレルプレート、直径25mm、プレート間隔:1.5〜2mm
(2)ストレイン:5%
(3)剪断速度:0.1〜100rad/sec
(4)温度:190、170、150、130℃
また、サンプルには予めイルガノックス1076などの酸化防止剤を、適量(例えば1000ppm以上)配合し、測定はすべて窒素下で実施する。
【0015】
シフトファクター(aT)のアレニウス型方程式
log(aT)=Ea/R(1/T−1/T0
(Rは気体定数であり、T0は基準温度(463K)である。)
また、計算ソフトウェアには、Rheometrics社 Rhios V.4.4.4を使用し、アレニウス型プロットlog(aT)−(1/T)において、直線近似をした時に得られる相関係数r2が0.99以上であるときのEa値を、エチレン・α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギーとする。
【0016】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、JIS K7210−1995に従い、温度190℃および荷重21.18Nの条件でA法により測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.01〜5g/10分であり、好ましくは0.1〜50g/10分である。
【0017】
本発明における成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、透明性、強度を高める観点から、好ましくは5〜25であり、より好ましくは5.5〜20である。該分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0018】
また、成分(A)のエチレン・α−オレフィン共重合体は、透明性、強度、防塵性を高める観点から、JIS K7210に規定された、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートをMFR(単位:g/10分)とし、190℃における溶融張力をMT(単位:cN)として、下記式(1)を充足することが好ましい。
2×MFR-0.59<MT<20×MFR-0.59 式(1)
【0019】
また、上記の式(1)における溶融張力(MT;単位はcNである。)は、東洋精機製作所等から販売されているメルトテンションテスターを用いて、190℃、押出速度5.5mm/分のピストンで、直径2.09mmφ、長さ8mmのオリフィスから溶融樹脂ストランドを押し出し、前記ストランドを直径50mmのローラーを用いて毎分40rpm/分づつ回転速度を上昇させながら巻き取ったときに、前記ストランドが切れる直前の張力値である。
【0020】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、極限粘度([η];単位はdl/gである。)と前記MFRとが下記式(2)の関係を満たすことが、成形性の点から好ましい。
1.02×MFR-0.094<[η]<1.50×MFR-0.156 式(2)
【0021】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体が満たす関係式として好ましくは、
1.05×MFR-0.094<[η]<1.47×MFR-0.156
であり、さらに好ましくは、
1.08×MFR-0.094<[η]<1.42×MFR-0.156
である。
【0022】
上記の式(2)における極限粘度([η];単位はdl/gである。)は、熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を5重量%含むテトラリン100mlに、エチレン・α−オレフィン共重合体100mgを135℃で溶解してサンプル溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて前記サンプル溶液とブランク溶液の降下時間から算出される135℃での相対粘度(ηrel)を求めた後、下式より算出されるものである。なお、ブランク溶液とは、熱劣化防止剤としてBHTのみを5重量%含むテトラリンである。
[η]=23.3×log(ηrel)
なお。上記の式(2)におけるメルトフローレート(MFR;単位はg/10分である。)は、前述の式(1)において用いられるメルトフローレート(MFR)と同じものである。
【0023】
JIS K6760−1981に規定された方法に従って測定される本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、通常、890〜950kg/m3である。該エチレン・α−オレフィン共重合体を用いて得られるフィルムの剛性と衝撃強度のバランスの観点から、好ましくは900〜930kg/m3であり、より好ましくは905〜925kg/m3である。
【0024】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体は、下記のメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて、水素の条件下でエチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造に用いられるメタロセン系オレフィン重合用触媒は、助触媒担体、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体および有機アルミニウム化合物を接触させて得られる触媒であり、前記助触媒担体はジエチル亜鉛、フッ素化フェノール、水、シリカおよびトリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させて得られる担体である。
【0025】
上記ジエチル亜鉛、フッ素化フェノール、水の使用量は特に制限はないが、各化合物の使用量のモル比率をジエチル亜鉛:フッ素化フェノール:水=1:p:qのモル比率とすると、pおよびqが下記式(3)を実質的に満足することが好ましい。
|2−p−2q|≦1 (3)
上記式(3)におけるyとして好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0026】
また、ジエチル亜鉛に対して使用するシリカの量としては、ジエチル亜鉛とシリカとの接触により得られる粒子に含まれるジエチル亜鉛に由来する亜鉛原子が、得られる粒子1gに含まれる亜鉛原子のモル数にして、0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましいので、該範囲になるように適宜決めればよい。シリカに対して使用するトリメチルジシラザンの量としては、シリカ1gにつきトリメチルジシラザン0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0027】
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体として、好ましくはラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドである。
また、有機アルミニウム化合物として、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムである。
【0028】
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体の使用量は、助触媒担体1gに対し、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物の使用量として、好ましくは、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体のジルコニウム原子モル数に対する有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数の比(Al/Zr)で表して、1〜2000である。
【0029】
重合方法として、好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う重合方法であり、例えば、気相重合、スラリー重合、バルク重合であり、好ましくは、気相重合である。
【0030】
本発明におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の製造に用いられるメタロセン系オレフィン重合用触媒の各成分を反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等を用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。触媒の各成分は個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合済触媒成分を本重合の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。
【0031】
重合温度としては、通常、共重合体が溶融する温度未満であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。
また、共重合体の溶融流動性を調節する目的で、水素を分子量調節剤として添加してもよい。そして、混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。
【0032】
本発明で第二層に含まれるエチレン・酢酸ビニル共重合体(成分(B))とは、エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体であって、該エチレン・酢酸ビニル共重合体重量を100%としたときの酢酸ビニルから誘導される構成単位の含有量が3〜20wt%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体である。
【0033】
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体(成分(B))のメルトフローレート(MFR)は、0.01〜5g/10分である。なお、該MFRは、JIS K7210−1995に従い、温度190℃および荷重21.18Nの条件でA法により測定される。成分(B)のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとを、公知のオレフィン重合用触媒を用いて公知の重合方法で重合することにより製造される。例えば、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法等があげられる。
【0034】
本発明における非イオン界面活性剤(成分(C))としては、例えば、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキサイド付加物等のソルビタン系界面活性剤、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、トリグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンジモンタネート、グリセリンモノオレエート、ジグリセリンモノオレエート、ジグリセリンセスキオレエート、テトラグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリントリオレエート、テトラグリセリントリオレエート、テトラグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキサイド付加物等のグリセリン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール系界面活性剤、アルキルフェノールのアルキレンオキシド付加物、ソルビタン/グリセリン縮合物と有機酸とのエステル、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(4モル)ステアリルアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルアミンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4モル)ラウリルアミンモノステアレート等のポリオキシエチレンアルキルアミン及びその脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の農業用フィルムにおける第二層は、前述したエチレン・α−オレフィン共重合体(成分(A))、エチレン・酢酸ビニル共重合体(成分(B))、非イオン系界面活性剤(成分(C))を含み、詳細には、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20〜900重量部含有し、さらに該第二層における成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(C)の含有量が0.01〜5重量%である。第二層における成分(A)の含有量が少なすぎる(成分(B)の含有量が多すぎる)と、フィルムの強度が弱くなる。第二層に含まれる成分(B)の量は、好ましくは400重量部以下である。また、第二層における成分(A)の含有量が多すぎる(成分(B)の含有量が少なすぎる)と、流滴性能の持続性に劣る。第二層に含まれる成分(B)の量は好ましくは、成分(B)の含有量が25重量部以上であり、より好ましくは、33重量部以上である。また第二層に含まれる非イオン系界面活性剤の量は、該第二層に含まれる成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜4重量%である。第二層における成分(C)の含有量を前記範囲とすることにより、流滴性に優れ、かつ流滴剤のフィルム表面へのブリードによる透明性の悪化を抑制することができる。
流滴性能を発現するためには、流滴剤がフィルム表面にブリードすることが必要である。しかしながら流滴剤が、使用初期に多量にブリードしてしまうと、フィルムの透明性を悪化させるほか、流滴性能を長期にわたって維持できなくなる。前記した構成の本発明の農業用フィルムは、流滴性能を発現するために十分な量の流滴剤を長期間にわたって徐々にフィルム表面にブリードさせることができるため、フィルムの透明性が悪化することもなく、流滴性能の持続性にも優れるものである。
【0036】
本発明の農業用フィルムは、前記した第二層と、熱可塑性樹脂を含む第一層の少なくとも2層以上からなる。第一層に含まれる熱可塑性樹脂は特に限定されるものではないが、オレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のα−オレフィンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体などのエチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂などのα−オレフィンを主成分とする異種単量体との共重合体、さらには、エチレン・スチレン共重合体などのオレフィンとビニル基含有芳香族系重合単量体との共重合体、エチレン・ノルボルネン共重合体、エチレン・スチレン・ノルボルネン共重合体などのオレフィンと環状重合単量体との共重合体が挙げられる。
【0037】
本発明の農業用フィルムにおける第一層は、下記成分(A)、(B)、(C)および(D)を含み、該第一層が、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20〜900重量部含有し、さらに該第一層における成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01〜5重量%、成分(D)を0.01〜3重量%含有する層であることが、流滴性能・防霧性能の持続性、および強度改良の観点から好ましい。
成分(A):エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、流動の活性化エネルギーが35kJ/mol以上であるエチレン・α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、酢酸ビニルから誘導される構成単位の含有量が3〜20wt%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(ただし成分(B)の重量を100%とする)
成分(C):非イオン系界面活性剤
成分(D):フッ素系界面活性剤および/またはシリコン系界面活性剤
【0038】
第一層に含まれる成分(A)、成分(B)および成分(C)は、第二層に含まれる成分(A)、成分(B)、成分(C)と同じである。
成分(D)のフッ素系界面活性剤としては、パ−フルオロアルキル基、ω−ヒドロフルオロアルキル基等を有するフッ素化合物、シリコン系界面活性剤としては、アルキルシロキサン基を有するシリコン系化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、ダイキン工業(株)製のユニダインDS−403、DS−406、DS−401(商品名)、セイミケミカル(株)製のサーフロンKC−40(商品名)等が挙げられ、シリコン系界面活性剤としては、東レダウコーニングシリコン(株)社製のSH−3746(商品名)が挙げられる。これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このような成分(D)は、フィルム表面にブリードして防霧剤として作用する。第一層に含まれる成分(D)の量は、第一層における成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計を100重量%とするとき、0.01〜3重量%が好ましく、0.02〜2重量%がより好ましく、0.05〜1重量%が特に好ましい。
【0039】
第一層が前記したような成分(A)、(B)、(C)および(D)を含む層である場合には、該第一層が農園芸用施設の内側となるようにフィルムを展張することが好ましい。
【0040】
また、本発明の農業用フィルムにおける第一層に含まれる成分(A)の含有量VA1と、第二層に含まれる成分(A)の含有量VA2とが、VA1 ≦VA2を満たす場合には、該農業用フィルムは外観に優れるものとなる。一方、VA1 >VA2の場合には、より流滴性能の持続性に優れるフィルムとなる。
【0041】
本発明の農業用フィルムは、前記した第一層と第二層以外の層を含んでいてもよい。第一層および第二層以外の層は、いずれも熱可塑性樹脂を含む層であればよく、特にオレフィン系樹脂を含む層であることが好ましい。本発明の農業用フィルムが3層以上の層からなる場合の構成としては、例えば、2種3層、3種3層、2種4層、3種4層、4種4層、2種5層、3種5層、4種5層、5種5層、2種6層、3種6層、4種6層、5種6層、6種6層、一般式でP種Q層(P≦Q、Pは2以上、Qは3以上の自然数)などが可能である。本発明の農業用フィルムが3層以上の層からなる場合には、前記第一層と熱可塑性樹脂を含む第三層とがともに外層であることが好ましい。すなわち、第二層は第一層と第三層の間に位置する。また、第二層は第一層と隣接して積層されてなることが好ましい。
なお、同一組成の層が2層以上隣接して積層されている場合には、これらの層を1層とみなす。
【0042】
本発明の農業用フィルムの厚みは、フィルム強度の観点から、0.01mm以上であることが好ましい。また、フィルムの被覆作業性などの観点から、0.3mm以下が好ましく、0.03〜0.25mmの範囲がより好ましい。
【0043】
本発明の農業用フィルムは必要に応じて、公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防霧剤、防曇剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、顔料、無機フィラー等が挙げられる。
【0044】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジアルキルフェノール誘導体や2−アルキルフェノール誘導体などのいわゆるヒンダードフェノール系化合物、フォスファイト系化合物、フォスフォナイト系化合物などの3価のリン原子を含むリン系エステル化合物が挙げられる。これら酸化防止剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。特に色相安定化の観点から、ヒンダードフェノール系化合物とリン系エステル化合物を併用して用いることが好ましい。また酸化防止剤は、各層の重量を100%とするとき、それぞれの層に0.01〜1重量%含まれることが好ましく、0.03〜0.5重量%含有されることがより好ましい。
【0045】
光安定剤としては、例えば、特開平8−73667号公報に記載の構造を有するヒンダードアミン系化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビン622−LD、キマソーブ944−LD(以上チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、ホスタビンN30、VP Sanduvor PR−31(以上クラリアント社製)、サイヤソーブUV3529、サイヤソーブUV3346(以上サイテック社製)などが挙げられる。さらには、特開平11−315067号公報に記載の構造を有する立体障害性アミンエーテル化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビンNOR371(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。各層に含まれる光安定剤の量は、0.01〜3重量%が好ましく、0.05〜2重量%がより好ましく、特に0.1〜1重量%が好ましい。
【0046】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。各層に含まれる紫外線吸収剤の量は、耐候性付与効果とフィルム表面へのブリード抑制の観点から、0.01〜3重量%が好ましく、0.03〜2重量%がより好ましい。
【0047】
無機フィラーとしては、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物などの複合水酸化物が挙げられる。ハイドロタルサイト類化合物の具体例としては、例えば、天然ハイドロタルサイトや商品名:DHT−4A(協和化学工業製)、マグクリスタ(協和化学工業製)のような合成ハイドロタルサイトが挙げられる。リチウムアルミニウム複合水酸化物の具体例としては、例えば、ミズカラック(水澤化学工業製)、フジレイン(富士化学工業製)などが挙げられる。さらには、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタンなどの金属酸化物;水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸塩類;硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩類;リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムリン酸ジルコニウム(例えば、特開平8−67774号公報に開示されたH型リン酸ジルコニウム)などのリン酸塩;珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸チタンなどの珪酸塩類;アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム、アルミン酸カルシウムなどのアルミン酸塩類;アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、アルミノ珪酸カルシウムなどのアルミノ珪酸塩類;カオリン、クレー、タルクなどの粘土鉱物、その他複合酸化物などが挙げられる。
【0048】
本発明の農業用フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、共押出インフレーション成形法、共押出T−ダイキャスティング成形法、押出ラミネーション成形法、ドライラミネーション成形法など通常の積層フィルムを形成する方法によって製造することができる。共押出インフレーション成形法により製造することが好ましい。本発明の農業用フィルムを共押出インフレーション成形法により製造する場合には、第一層がチューブの外側となるようにすることが好ましい。インフレーション成形によりフィルムを製造する場合、通常、インフレーションダイから筒状に押出されたフィルムの一箇所に、展張時に開けるように切り込み線を入れてフィルムを巻き取る。巻き取った状態では、筒状フィルムの内層同士が接している。該フィルムを農園芸用施設用フレームに展張して農園芸用施設とする場合には、巻き取った状態からフィルムを引き出し、切り込み線から開いて農園芸用施設用フレームに展張する。その際の作業性を考慮すると、前記したように第一層がチューブの外側となるようにすることが好ましい。
【0049】
本発明の農業用フィルムは、植物栽培用の温室やトンネルなどの農園芸用施設の被覆フィルムとして用いられる。特に本発明の農業用フィルムの第一層が農園芸用施設の内側となるように展張して使用することが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例及び比較例中の試験方法は次の通りである。
(1)透明性試験(Haze)
Haze(%)の測定は、JIS K7105に準拠し、直読式ヘーズコンピューターHGM−2DP;C光源(スガ試験機製)を用いて測定した。
(2)透明性持続性の評価(ΔHaze)
30℃×80%で1ヶ月保存後の各フィルムのHazeを測定し、製造直後の各フィルムのHaze値との差を求めた。
(3)流滴性試験・流滴持続性試験
フィルムを縦34×横5cmのアクリル製の枠に両面テープで貼り付け、第一層面を下にして、温度一定の環境試験室内に置いた恒温水槽の上に水平面に対して15度の傾斜をつけて設置する。このときの温度条件(環境試験室/恒温水槽)は、低温試験:−3℃/20℃、高温試験:23℃/40℃とした。7日後および3ヵ月後に、フィルム面の水滴の様子を観察して、以下の基準で判定した。
○:フィルム面が均一に濡れている。
△:部分的に水滴が付着しているところがある。
×:全体に水滴が付着し、白く曇っている。
(4)引張破断強度
JIS1号ダンベルで打抜いた試験片を、オートグラフDSS100(島津製作所製)を用いて、引張り試験を行い、引裂破断強度を測定した。MD方向、TD方向の平均値をそのフィルムの機械的強度(MPa)とした。
【0051】
第二層における成分(A)に該当する樹脂A1、およびA2を、以下の方法により製造した。
(A1の製造方法)
(1)助触媒担体の調製
特開2003−171415号公報の実施例10(1)および(2)の成分(A)と同様の方法で、固体生成物(以下、固体生成物(a−1)と称する。)を得た。
【0052】
(2)予備重合
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、上記助触媒担体(a−1)0.63kgと、ブタン80リットル、1−ブテン0.03kg、常温常圧の水素として11リットルを仕込んだ後、オートクレーブを40℃まで上昇した。さらにエチレンをオートクレーブ内のガス相分圧で0.21MPa仕込み、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム208mmol、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド70mmolを投入して重合を開始した。49℃へ昇温するとともに、エチレンと水素を連続で供給しながら、49℃で合計4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記助触媒担体(a−1)1g当り14.1gのエチレン・1−ブテン共重合体が予備重合された触媒成分(以下、予備重合触媒成分(a−1)と称する。)を得た。
【0053】
(3)連続気相重合
上記の予備重合触媒成分(a−1)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施した。重合条件は、温度75.6℃、全圧2MPa、ガス線速度0.36m/s、エチレンに対する水素モル比は0.67%、エチレンに対する1−ヘキセンモル比は1.39%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間3.8hrとなるように、上記予備重合触媒成分(a−1)と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、20.9kg/hrの生産効率でエチレン・1−ヘキセン共重合体(以下、PE−A1と称する。)のパウダーを得た。
【0054】
(4)エチレン・1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−A1のパウダーに、酸化防止剤(住友化学(株)製スミライザーGP)750ppmをブレンドしたものを、押出機((株)神戸製鋼所製LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、A1のペレットを得た。A1の基本物性を表1に示した。
【0055】
(A2の製造方法)
(1)助触媒担体の調製
特開2003−171415号公報の実施例10(1)および(2)の成分(A)と同様の方法で、固体生成物(以下、固体生成物(a−2)と称する。)を得た。
【0056】
(2)予備重合
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、上記助触媒担体(a−2)0.70kgと、ブタン80リットル、1−ブテン0.02kg、常温常圧の水素として11リットルを仕込んだ後、オートクレーブを41℃まで上昇した。さらにエチレンをオートクレーブ内のガス相分圧で0.21MPa仕込み、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム312mmol、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド105mmolを投入して重合を開始した。50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素を連続で供給しながら、50℃で合計4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記助触媒担体(a−2)1g当り12.8gのエチレン・1−ブテン共重合体が予備重合された触媒成分(以下、予備重合触媒成分(a−2)と称する。)を得た。
【0057】
(3)連続気相重合
上記の予備重合触媒成分(a−2)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施した。重合条件は、温度74.5℃、全圧2MPa、ガス線速度0.28m/s、エチレンに対する水素モル比は0.60%、エチレンに対する1−ヘキセンモル比は0.75%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間4.1hrとなるように、上記予備重合触媒成分(a−2)と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、19.4kg/hrの生産効率でエチレン・1−ヘキセン共重合体(以下、PE−A2と称する。)のパウダーを得た。
(4)エチレン・1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−A2のパウダーに、酸化防止剤(住友化学(株)製スミライザーGP)750ppmをブレンドしたものを、押出機((株)神戸製鋼所製LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、A2のペレットを得た。A2の基本物性を表1に示した。
【0058】
前記した樹脂A1およびA2と、比較例で用いた成分(A)の基本物性を表1に示した。なお、表中のA3、A4は以下の樹脂である。
A3::スミカセンE FV402 住友化学(株)製(エチレン・1−ヘキセン共重合体)
A4:スミカセンE FV401 住友化学(株)製(エチレン・1−ヘキセン共重合体)
【0059】
【表1】

【0060】
[実施例1]
樹脂A1 97.35重量%、熱安定剤E1 0.05重量%、耐候剤F1 0.8重量%、紫外線吸収剤G1 0.24重量%、滑剤K1 0.06重量%,K2 0.2重量%、流滴剤H1 0.5重量%、H2 0.8重量%となるように計量して、5Lバンバリーミキサーを用いて150℃で5分混練した後、造粒機により造粒して、第三層用のペレットを得た。
同様に、第二層、第一層に含まれる成分をそれぞれ計量し、5Lバンバリーミキサーを用いて150℃で5分混練した後、造粒機により造粒して、第二層、ならびに第一層用のペレットを得た。
各層用に40mm押出機を備えた3層インフレーション成形機で、100mmφダイス、1.2mmリップを用い、加工温度180℃にて、第一層が20μm、第二層が60μm、第三層が20μmとなるようにして三層のチューブ状フィルムを成形し、切り開いて3層の積層フィルムを得た。なお、チューブ状フィルムの内層が第三層、外層が第一層となるようにした。
[実施例2−6、比較例1−6]
各層の組成を表2、4に記載したようにした以外は実施例1と同様にして、3層の積層フィルムを製造した。
【0061】
得られたフィルムの評価結果を表2〜表5に示した。
なお、表2および表4に記載した略号は以下のとおりである。
B1:エバテートH2031(エチレン・酢酸ビニル共重合体、MFR=1、酢酸ビニル含量19%) 住友化学製
B2:エバテートD2011(エチレン・酢酸ビニル共重合体、MFR=1、酢酸ビニル含量5%) 住友化学製
E1:商品名:スミライザーBP76 住友化学製
F1:ヒンダードアミン系化合物(商品名:チヌビン111FDL チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
G1:商品名:スミソーブ130 住友化学製
H1: モノグリセリンモノステアレート/ジグリセリンセスキステアレートの重量比=3/7なる混合物(いずれも非イオン系界面活性剤)
H2:ソルビタンモノステアレートプロピレンオキシド1モル付加物(非イオン系界面活性剤)
I1:フッ素系界面活性剤(商品名:ユニダインDS403 ダイキン工業製)
J1: リチウムアルミニウム複合水酸化物(商品名:ミズカラック 水沢化学工業製)
K1:脂肪酸アミド化合物 エチレンビスオレイン酸アミド
K2:脂肪酸アミド化合物 エルカ酸アミド
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上からなる農業用フィルムであって、第一層が熱可塑性樹脂を含む層であり、第二層が、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20〜900重量部含有し、さらに該第二層における成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01〜5重量%含有する層である農業用フィルム。
成分(A):エチレンから誘導される構成単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンから誘導される構成単位を含むエチレン・α−オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、流動の活性化エネルギーが35kJ/mol以上であるエチレン・α−オレフィン共重合体
成分(B):エチレンから誘導される構成単位と、酢酸ビニルから誘導される構成単位を含むエチレン・酢酸ビニル共重合体であって、メルトフローレートが0.01〜5g/10分であり、酢酸ビニルから誘導される構成単位の含有量が3〜20wt%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(ただし成分(B)の重量を100%とする)
成分(C):非イオン系界面活性剤
【請求項2】
前記第一層が前記成分(A)、(B)、(C)に加えてさらに下記成分(D)を含む層であって、成分(A)を100重量部と、該成分(A)100重量部に対し成分(B)を20〜900重量部含有し、さらに該第一層における成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計を100重量%とするとき、成分(C)を0.01〜5重量%、成分(D)を0.01〜3重量%含有する層である請求項1に記載の農業用フィルム。
成分(D):フッ素系界面活性剤および/またはシリコン系界面活性剤
【請求項3】
さらに熱可塑性樹脂を含む第三層を有し、該第三層と前記第一層とがともに外層である請求項1または2に記載の農業用フィルム。

【公開番号】特開2007−289147(P2007−289147A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264174(P2006−264174)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(503076168)三善加工株式会社 (14)
【Fターム(参考)】