説明

農薬粒剤組成物

【課題】二種以上の農薬活性成分を含有し、且つこれらの農薬活性成分の徐放性能を変更することができる農薬粒剤組成物を提供すること。
【解決手段】第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、25℃における水溶解度が500mg/L以下である第2の農薬活性成分と、固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、を含有する農薬粒剤組成物;並びに、前記第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物の含有量が0.5〜30重量%、前記第2の農薬活性成分の含有量が0.1〜30重量%、前記固体担体の含有量が15〜98.8重量%、前記結合剤の含有量が0.5〜10重量%、前記界面活性剤の含有量が0.1〜15重量%、である農薬粒剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬粒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬効の持続、薬害の軽減等を目的として、農薬活性化合物を徐放化することのできる農薬製剤(以下、徐放性農薬製剤と記す。)が各種提案されている。このような徐放性農薬製剤としては、農薬活性化合物を含有する液体をマイクロカプセル化したもの(特許文献1参照)、農薬活性化合物を含有する顆粒を被覆したもの(特許文献2参照)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−314032号公報
【特許文献2】特開平11−005704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二種以上の農薬活性成分を含有し、且つ優れた徐放性能を有する農薬粒剤組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、25℃における水溶解度が500mg/L以下である第2の農薬活性成分と、固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、を含有する農薬粒剤組成物。
[発明2]
第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物の含有量が0.5〜30重量%、第2の農薬活性成分の含有量が0.1〜30重量%、固体担体の含有量が15〜98.8重量%、結合剤の含有量が0.5〜10重量%、界面活性剤の含有量が0.1〜15重量%、である発明1記載の農薬粒剤組成物。
[発明3]
熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂である発明1又は2記載の農薬粒剤組成物。
[発明4]
第1の農薬活性成分が、25℃における水溶解度が100mg/L以上1000mg/L以下の農薬活性成分である発明1〜3のいずれかに記載の農薬粒剤組成物。
[発明5]
第1の農薬活性成分及び第2の農薬活性成分の組み合わせが、殺虫活性成分及び殺菌活性成分の組み合わせである発明1〜3のいずれかに記載の農薬粒剤組成物。
[発明6]
第1の農薬活性成分が、(E)−N−((2−クロロ−5−チアゾリル)メチル)−N’−メチル−N”−ニトログアニジンであり、第2の農薬活性成分が、2−シアノ−N−[(1R)−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]−3,3−ジメチルブタンアミド及び2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である発明1〜3のいずれかに記載の農薬粒剤組成物。
[発明7]
固体担体が、炭酸カルシウム、又は炭酸カルシウムと1種以上の他の固体担体とを組み合わせたものであり、結合剤が、アルファー化デンプンである発明6記載の農薬粒剤組成物。
[発明8]
界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である発明1〜7のいずれかに記載の農薬粒剤組成物。
[発明9]
播種時対応を含む水稲育苗箱処理用である発明1〜8のいずれかに記載の農薬粒剤組成物。
[発明10]
第2の農薬活性成分が、25℃における水溶解度が50mg/L以下である発明1〜9のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
[発明11]
(一)第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、25℃における水溶解度が500mg/L以下である第2の農薬活性成分と、固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、水と、を含む混合物を混練する第一工程、(二)第一工程で得られた混練物を押出造粒する第二工程、及び(三)第二工程で得られた造粒物を乾燥する第三工程、を有してなる農薬粒剤の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の農薬粒剤組成物は、使用する熱硬化性樹脂の種類や量を適宜変更することにより、二種以上の農薬活性成分を含有する農薬粒剤組成物の徐放性能を優れたものにすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物(以下、本粉状農薬組成物を記す。)が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、25℃における水溶解度が500mg/L以下である第2の農薬活性成分と、固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、を含有する農薬粒剤組成物である。
【0008】
本発明において、前記農薬活性成分としては、一般的に殺虫化合物、殺菌化合物、除草化合物、昆虫成長制御化合物、植物成長制御化合物、昆虫忌避剤等を挙げることができ、例えば次に示す化合物を具体的に挙げることができる。これらは、常温(20℃)において固体であるが、より融点の高い、例えば50℃において固体であるものが好ましい。また、第1の農薬活性成分は、25℃における水溶解度が通常100mg/L以上の農薬活性成分であり、好ましくは100〜1000mg/Lである。また、本粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物を含む農薬粒剤は、水中溶出試験において、第1の農薬活性成分の50%溶出するまでの日数を5〜35日に調整することにより水稲育苗箱処理における効力を十分に持続することができる。
第2の農薬活性成分は、25℃における水溶解度が500mg/L以下であれば、第1の農薬活性成分と同一でも相異なってもよい。また、第1の農薬活性成分と第2の農薬活性成分の各々は単一の農薬活性化合物から構成されていてもよく、或いは複数の農薬活性化合物から構成されていてもよい。
また、第1の農薬活性成分及び第2の農薬活性成分の組み合わせが、例えば殺虫活性成分及び殺菌活性成分の組み合わせであってもよい。なお、この殺虫活性成分には複数の殺虫化合物を含んでもよく、また殺菌活性成分には複数の殺菌化合物を含んでもよい。
なお、第2の農薬活性成分は、好ましくは25℃における水溶解度が50mg/L以下である。また、第2の農薬活性成分は、好ましくは体積中位径が30μm以下、融点が100℃以上である。
【0009】
殺虫化合物としては、デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、テトラメトリン等のピレスロイド系化合物;プロポキサー、イソプロカルブ、キシリルカルブ、メトルカルブ、XMC、カルバリル、ピリミカルブ、カルボフラン、メソミル、フェノキシカルブ、クロラントラニリプロール等のカーバメート系化合物;アセフェート、トリクロルホン、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、ピリダフェンチオン、アジンホスエチル、アジンホスメチル等の有機リン系化合物;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−(6−ヨード−3−ピリジルメトキシ)ピリダジン−3(2H)−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアゾン−4−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のウレア系化合物;イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、ジアクロデン等のクロロニコチル系化合物;カルタップ、ブプロフェジン、チオシクラム、ベンスルタップ、フェノキシカルブ、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリダベン、ヒドラメチルノン、チオジカルブ、クロルフェナピル、フェンプロキシメート、ピメトロジン、ピリミジフェン、テブフェノジド、テブフェンピラド、トリアザメート、インドキサカーブ、スルフルラミド、ミルベメクチン、アバメクチン、スピノサド、スピメトラム、ホウ酸、パラジクロロベンゼン、エトキサゾール等を挙げることができる。
これらの中で、25℃における水溶解度が50mg/L以下である農薬活性成分としては、エトキサゾール、ベンスルタップ、スピメトラム等が挙げられる。
【0010】
殺菌化合物としては、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート系化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド系化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール系化合物;メタラキシル等のアシルアラニン系化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、イソチアニル、ボスカリド等のカルボキシアミド系化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン系化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン系化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール系化合物;ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン等の抗生物質;アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、SSF−126等のメトキシアクリレート系化合物;クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、CGA245704、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、テトラクロオロイソフタロニトリル、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメイト、パラヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、1−[(2−プロペニルチオ)カルボニル]−2−(1−メチルエチル)−4−(2−メチルフェニル)−5−アミノ−1H−ピラゾール−3−オン等を挙げることができる。
これらの中で、25℃における水溶解度が50mg/L以下である農薬活性成分としては、オキソリニック酸、ジエトフェンカルブ、ジクロシメット、トルクロホスメチル、プロシミドン、1−[(2−プロペニルチオ)カルボニル]−2−(1−メチルエチル)−4−(2−メチルフェニル)−5−アミノ−1H−ピラゾール−3−オン、イソチアニル等が挙げられる。
【0011】
除草化合物としては、アトラジン、メトリブジン等のトリアジン系化合物;フルオメツロン、イソプロチュロン等のウレア系化合物;ブロモキシニル、アイオキシニル等のヒドロキシベンゾニトリル系化合物;ペンディメサリン、トリフルラリン等の2、6―ジニトロアニリン系化合物;2,4−D、ジカンバ、フルロキシピル、メコプロップ等のアリロキシアルカノイック酸系化合物;ベンスルフロンメチル、メツルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン等のスルホニルウレア系化合物;イマザピル、イマザキン、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物;ビスピリバックNa塩、ビスチオバックNa塩、アシフルオルフェンNa塩、サルフェントラゾン、パラコート、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップ−p−エチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルフォシネートアンムニウム塩、グリフォセート、ベンタゾン、メフェナセット、プロパニル、フルチアミド、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン、ブロモブチド、ウニコナゾールP等を挙げることができる。
これらの中で、25℃における水溶解度が50mg/L以下である農薬活性成分としては、フルミオキサジン、ブロモブチド、ウニコナゾールP等が挙げられる。
【0012】
昆虫成長制御化合物としては、4−フェノキシフェニル 2−(2−ピリジルオキシ)プロピル エーテル(以下、ピリプロキシフェンと記す。)、メトプレン等の幼若ホルモン様化合物、ジフルベンズロン、トリフルムロン、ルフェヌロン、テフルベンズロン等のキチン形成阻害性化合物、抗幼若ホルモン様化合物、脱皮ホルモン様化合物等を挙げることができる。
【0013】
植物成長調節化合物としては、マレイックヒドラジド、クロルメカット、エテフォン、ジベレリン、メピカットクロライド、チジアズロン、イナベンファイド、パクロブトラゾール 、ウニコナゾール等を挙げることができる。
【0014】
昆虫忌避剤としては、1S,3R,4R,6R−カラン−3、4−ジオール、ジプロピル 2,5−ピリジンジカルボキシレート等を挙げることができる。
【0015】
本粉状農薬組成物は、第1の農薬活性成分が粉状体となり得る場合にはそのまま用いてもよく、また第1の農薬活性成分と希釈粉体とを含有するものであってもよい。この場合、第1の農薬活性成分の量は粉状農薬組成物に対して通常1〜95重量%、好ましくは10〜90重量%であり、希釈粉体の量は粉状農薬組成物に対して通常5〜99%、好ましくは10〜90%である。当該粉状農薬組成物中に希釈粉体を存在させる目的は、例えば体積中位径が1〜100μmの粉状農薬組成物を製造する際の粉砕性の改善、粉状農薬組成物の流動性等の粉体物性の改善、並びに粉状農薬組成物の粉塵爆発下限等の防災物性の改善等である。
また、前記希釈粉体の体積中位径は好ましくは1〜100μmの範囲である。当該希釈粉体としては、一般的に農薬粉剤において用いられる粉状の固体担体を使用することができ、例えば鉱物質粉体等が挙げられる。
この鉱物質粉体としては、例えばカオリナイト、ディッカナイト、ナクライト、ハロサイト等のカオリン鉱物、クリソタイル、リザータイト、アンチコライト、アメサイト等の蛇紋石、ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト等のモンモリロナイト鉱物、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ハイデライト等のスメクタイト、パイロフィライト、タルク、ロウ石、白雲母、フェンジャイト、セリサイト、イライト等の雲母、クリストバライト、クォーツ等のシリカ、アタパルジャイト、セピオライト等の含水珪酸マグネシウム、石膏等の硫酸塩鉱物、ドロマイト、炭酸カルシウム、ギプサム、ゼオライト、沸石、凝灰石、バーミキュライト、ラポナイト、軽石、珪藻土、酸性白土、活性白土等が挙げられる。これらの鉱物質粉体は単独で用いてもよく、あるいは2種以上で併用してもよい。また、好ましくは比重が大きなものである。
【0016】
また、本粉状農薬組成物は、第1の農薬活性成分及び前記希釈粉体の他に、粉状農薬組成物に対して好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下の範囲で、界面活性剤、安定化剤、着色剤、香料等の農薬補助剤を含有していてもよい。
【0017】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノールホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキロールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤、ドデシルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩等のアルキル四級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ポリアルキルビニルピリジニウム塩等のカチオン性界面活性剤、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のエーテルカルボン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等の高級脂肪酸のアミノ酸縮合物、高級アルキルスルホン酸塩、ラウリン酸エステルスルホン酸塩等の高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、ジオクチルスルホサクシネートのどのジアルキルスルホコハク酸塩、オレイン酸アミドスルホン酸等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ペンタデカン−2−サルフェート等の高級アルコール硫酸エステル塩、ジポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸塩等のポリオキシエチレンアルキルリン酸塩、スチレン−マレイン酸塩共重合体等のアニオン性界面活性剤、N−ラウリルアラニン、N,N,N−トリメチルアミノプロピオン酸、N,N,N−トリヒドロキシエチルアミノプロピオン酸、N−ヘキシル−N,N−ジメチルアミノ酢酸、1−(2−カルボキシエチル)ピリミジニウムベタイン、レシチン等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
安定化剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化菜種油等のエポキシ化植物油、イソプロピルアシッドホスフェート、流動パラフィン、エチレングリコール等が挙げられる。
【0019】
着色剤としては、例えば、ローダミンB,ソーラーローダミン等のローダミン類、黄色4号、青色1号、赤色2号等の色素等が、香料としては、例えば、アセト酢酸エチル、エナント酸エチル、桂皮酸エチル、酢酸イソアミル等のエステル系香料、カプロン酸、桂皮酸等の有機酸系香料、桂皮アルコール、ゲラニオール、シトラール、デシルアルコール等のアルコール系香料、バニリン、ピペロナール、ペリルアルデヒド等のアルデヒド類、マルトール、メチルβ−ナフチルケトン等のケトン系香料、メントール等が挙げられる。
【0020】
本粉状農薬組成物は、第1の農薬活性成分、必要に応じて前記希釈粉体、更に必要に応じて農薬用補助剤を混合し、粉砕して得られる。また、予め粉末状に粉砕された各々を混合して得ることもできる。
【0021】
本粉状農薬組成物を固めて被覆する熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、尿素樹脂、ウレタン−尿素樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。特に本発明で用いる熱硬化性樹脂としてはウレタン樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂は、一般的に2種類の異なる液状原料を反応させて得られ、本発明における被覆粒状農薬組成物は、例えば本粉状農薬組成物と熱硬化性樹脂の原料となる第1液状原料とを混合し、次いで得られた混合物に熱硬化性樹脂の原料となる第2液状原料を添加し、当該第1液状原料と当該第2液状原料とを反応させて熱硬化性樹脂を生成させて粒状農薬を得て、更に得られた粒状農薬に熱硬化性樹脂の原料となる第1液状原料と第2液状原料とを同時又は順次加え、当該第1液状原料と当該第2液状原料とを反応させて、当該粒状農薬を熱硬化性樹脂で被覆することにより製造することができる。
なお、第1液状原料及び第2液状原料は、各々必ずしも1種の成分のみから構成されるもののみに限定されず、複数種の成分から構成される混合物であってもよい。
【0022】
ウレタン樹脂とは、ポリオールとポリイソシアナートとを液体原料とする熱硬化性樹脂である。ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを、例えば40〜100℃に加熱して反応させることにより生成する。その際、必要により有機金属やアミン等の硬化触媒の存在下に反応させる場合もある。
ポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリ(メタ)アクリル酸ポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、天然ポリオールやその変性物等が挙げられる。縮合系ポリエステルポリオールは、通常、ポリオールと二塩基酸との縮合反応によって得られる。ポリエーテルポリオールは、通常、多価アルコール等にプロピレンオキサイドやエチレンオキサイドを付加重合によって得られる。ポリ(メタ)アクリル酸ポリオールは、通常、ポリ(メタ)アクリル酸とポリオールとの縮合反応、(メタ)アクリル酸とポリオールとの縮合反応、または、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの重合反応によって得られる。ラクトン系ポリエステルポリオールは多価アルコールを開始剤とするε−カプロラクトンの開環重合によって得られる。ポリカーボネートポリオールは、通常、グリコールとカーボネートとの反応によって得られる。
なお、本発明において使用するポリオールとしては、分岐型ポリオールと直鎖型ポリオールとを、各々のポリオール中に存在する水酸基の数が40:60〜100:00の比率になるように混合したものが好ましい。分岐型ポリオールとは、分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールであり、分子中に3個の水酸基を有するポリオールが好ましい。直鎖型ポリオールとは、分子中に2個の水酸基を有するポリオールであり、通常は分子の両末端に水酸基を有する。
また、当該ポリオールとしては、OH当量が100以下の直鎖型ポリオールとOH当量が100以上の直鎖型ポリオールとを、各々のポリオール中に存在する水酸基の数が40:60〜100:00の比率になるように混合したものも好ましい。OH当量が100以下の直鎖型ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール等が挙げられる。
【0023】
ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェイト、及び、これらの混合物等が挙げられる。なお、上記のポリイソシアネートモノマーに代えて、流動性を有する限りにおいて、これらの変性体やオリゴマーを用いることもできる。
変性体としては、アダクト変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、ブロック変性体、プレポリマー変性体、2量化変性体等が挙げられる。アニリンとホルマリンの縮合によりポリアミンを経て、これをホスゲン化して得られるポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)が、反応制御が容易である点ならびに蒸気圧が低く作業性に優れる点で好ましい。
【0024】
硬化触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチルチオ錫酸、オクチル酸第一錫、ジ−n−オクチル錫ジラウレート等の有機金属、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N,N−ジメチルジドデシルアミン、N−ドデシルモルホリン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N−エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、イソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、オキシイソプロピルバナデート、n−プロピルジルコネート、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等が挙げられる。ウレタン樹脂の原料であるポリイソシアネートとポリオールは通常モノマー単独で使用される。
【0025】
尿素樹脂は、ポリアミンとポリイソシアナートとを液状原料とする熱硬化性樹脂である。
ポリイソシアネートとしては、前記のポリイソシアネートが挙げられる。
ポリアミンとしては、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラアミン等が挙げられ
る。
【0026】
ウレタン−尿素樹脂は、ポリイソシアネートと、ポリオールおよびポリアミンとを液状原料とする熱硬化性樹脂である。
【0027】
エポキシ樹脂は、硬化剤とグリシジル基含有の化合物とを液状原料とする熱硬化性樹脂である。特に本発明における硬化剤としてはポリアミンが好ましく、グリシジル基含有の化合物としては、ポリグリシジルエーテル又はポリグリシジルアミンが好ましい。
また、当該ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、メンセンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ポリアミド変性ポリアミン、ケトン変性ポリアミン、エポキシ変性ポリアミン、チオ尿素変性ポリアミン、マンニッヒ変性ポリアミン、マイケル付加変性ポリアミン等が挙げられる。
また、当該ポリグリシジルエーテルとしては、ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル、ビスフェノールF型ポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル、ナフタレン型ポリグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールA型ポリグリシジルエーテル、ビスフェノールS型ポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAF型ポリグリシジルエーテル、ビフェニル型ポリグリシジルエーテル、フルオレイン型ポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型ポリグリシジルエーテル、O−クレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテル、DPPノボラック型ポリグリシジルエーテル、トリスヒドロキシフェニルメタン型ポリグリシジルエーテル、テトラフェニロールエタン型ポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、当該ポリグリシジルアミンとしては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型ポリグリジジルアミン、ヒダントイン型ポリグリシジルアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアモノメチル)シクロヘキサン、アニリン型ポリグリシジルアミン、トルイジン型ポリグリシジルアミン、トリグリシジルイソシアヌレート型ポリグリシジルアミン、アミノフェノール型ポリグリシジルアミン等が挙げられる。
【0028】
前記ウレタン樹脂において、第1液状原料としてポリオール(2種以上のポリオールの混合物も含む)又はポリイソシアネート(2種以上のポリイソシアネートの混合物も含む)のいずれを用いてもよいが、好ましくは第1液状原料としてポリオールが用いられ、第2液状原料としてポリイソシアネートが用いられる。なお、硬化触媒を用いる場合は、硬化触媒は第1液状原料又は第2液状原料のいずれに添加されていてもよい。
また、前記尿素樹脂において、第1液状原料としてポリアミン(2種以上のポリアミンの混合物も含む)又はポリイソシアネート(2種以上のポリイソシアネートの混合物も含む)のいずれを用いてもよいが、好ましくは第1液状原料としてポリアミンが用いられ、第2液状原料としてポリイソシアネートが用いられる。
また、前記ウレタン−尿素樹脂において、好ましくは第1液状原料としてポリアミンとポリオールの混合物が用いられ、第2液状原料としてポリイソシアネートが用いられる。
また、前記エポキシ樹脂において、好ましくは第1液状原料としてポリアミンが用いられ、第2液状原料としてポリグリシジルエーテル又はポリグリシジルアミンが用いられる。
【0029】
本発明における第1液状原料及び第2液状原料は、通常2000mPa・s以下の粘度である。特に、本発明においてウレタン樹脂の原料としてポリオールを用いた場合、当該ポリオールの粘度は1000mPa・s以下、更に好ましくは800mPa・s以下(B型粘度計、25℃、12回転)であり、ポリイソシアネートを用いた場合、当該ポリイソシアネートの粘度は300mPa・s以下、更に好ましくは200mPa・s以下(B型粘度計、25℃、12回転)である。
【0030】
前記被覆粒状農薬組成物は、例えば次のようにして製造される。即ち、その製造方法は、
(1)本粉状農薬組成物と熱硬化性樹脂の原料となる第1液状原料とを混合する工程、
(2)前工程で得られた混合物に熱硬化性樹脂の原料となる第2液状原料を添加する工程、(3)前記第1液状原料と前記第2液状原料とを反応させて熱硬化性樹脂を生成させるこ
とで粒状農薬(内核)を得る工程、
(4)前工程で得られた粒状農薬に熱硬化性樹脂の原料となる前記第1液状原料と前記第2液状原料とを同時又は順次加え、当該第1液状原料と当該第2液状原料とを反応させて、当該粒状農薬を熱硬化性樹脂で被覆する工程、
を含むことができる。
【0031】
工程(1)は、本粉状農薬組成物を液体媒体に分散させない乾式条件下において、通常、本粉状農薬組成物を容器内で転動させながら容器に熱硬化性樹脂の原料となる第1液状原料を添加することにより、本粉状農薬組成物と第1液状原料とを混合して、本粉状農薬組成物と第1液状原料との混合物を得る工程である。本粉状農薬組成物と第1液状原料との混合物を容器内にて適当な時間転動させることにより、本粉状農薬組成物における個々の粒子が第1液状原料により被覆された状態となる。工程(1)は通常、0〜100℃、好ましくは10〜90℃で行われる。安全性の観点から、窒素雰囲気下における実施が好ましい。
また、本工程(1)において、本粉状農薬組成物を乾式条件下に容器内で転動させる方法としては、例えば以下に示すような方法が用いられる。
a)本粉状農薬組成物が入ったパン型またはドラム型形状の容器を斜め又は水平軸の周りに回転させる方法;
b)本粉状農薬組成物が入った容器にて、この容器の底面部の直径と同程度の大きさの攪拌羽根を設置し、これを回転させる方法;
c)本粉状農薬組成物が入った容器にて、本粉状農薬組成物に気流を当てる方法。
本工程(1)において、転動状態にある本粉状農薬組成物に対して第1液状原料が添加されると、第1液状原料は本粉状農薬組成物の個々の粒子の表面上に延展され、本粉状農薬組成物の個々の粒子が第1液状原料により被覆された状態となる。更に転動を続けることにより、通常、第1液状原料が本粉状農薬組成物の全ての粒子表面にほぼ均一に行き渡る。この場合、第1液状原料で本粉状農薬組成物の全ての粒子を均一に被覆する為に、粘度の低い(例えば、1000m・Pa(25℃)以下)第1液状原料を用いることが好ましい。
【0032】
工程(2)は、工程(1)で得られた混合物、即ち本粉状農薬組成物と第1液状原料との混合物を容器内で転動させながら、当該容器に熱硬化性樹脂の原料となる第2液状原料を添加することにより、前記粉状農薬と第1液状原料と第2液状原料との混合物を得る工程である。本工程(2)は、通常、工程(1)と同じ温度、即ち0〜100℃、好ましくは10〜90℃で行われる。また、安全性の観点から、窒素雰囲気下における実施が好ましい。
ここで添加される第2液状原料は、工程(1)で添加された第1液状原料における反応性官能基の当量に対して、当該第2液状原料における反応性官能基の当量が通常、0.9〜1.05、好ましくは0.95〜1.00となるような量が用いられる。
例えば、熱硬化性樹脂がウレタン樹脂で、第1液状原料がポリオールである場合、第2液状原料はポリイソシアネートとなるが、工程(1)で用いられたポリオールにおける水酸基(OH)の当量に対して、工程(2)で添加されるポリイソシアネートにおけるイソシアネート基(NCO)の当量が0.8〜1.1、好ましくは0.9〜1.1、更に好ましくは0.95〜1.05となるように、ポリイソシアネートの量を適宜調整する。
また、添加される第2液状原料は、本粉状農薬組成物と第1液状原料との混合物と混合される際、粘度が低いことが好ましく、例えば、300m・Pa(25℃)第2液状原料を用いることが好ましい。
【0033】
工程(3)は、工程(2)で得られた混合物に、回転する羽根等で適度なせん断力を与えながら、当該第1液状原料と当該第2液状原料とを反応させて熱硬化性樹脂を生成させることで、熱硬化性樹脂を介在して本粉状農薬組成物が凝集した粒状農薬を得る工程である。なお、本粉状農薬組成物の量に対して、生成された熱硬化性樹脂の量が少ない場合は、工程(1)〜(3)を適当な回数繰り返して、粒状農薬を得る。本工程(3)は通常0〜100℃、好ましくは10〜90℃で行われるが、更に好ましくは40〜90℃で行われる。なお、前記工程(1)と工程(2)とを同じ温度で行えば操作上簡便である。また、本工程(3)も、安全性の観点から窒素雰囲気下における実施が好ましい。
工程(3)の操作温度、用いる熱硬化性樹脂の種類、硬化触媒の有無等の条件により、未硬化の熱硬化性樹脂が硬化するまでに要する時間が変化する。例えば、熱硬化性樹脂の硬化速度が十分に速い場合、工程(2)における第2液状原料の全てを添加し終わる前に、実質的に工程(3)における第1液状原料と第2液状原料との反応が開始して当該熱硬化樹脂の一部が生成され始める。このような場合には、工程(2)において、本粉状農薬組成物と第1液状原料との混合物を容器内で転動させ、更に当該混合物に回転する羽根等でせん断力を与えながら、第2液状原料を添加することが好ましい。
また、本工程(3)における本粉状農薬組成物と第1液状原料と第2液状原料との混合物に対して、回転する羽根によりせん断力を与える方法としては、具体的には先端部分が50〜3000m/分、好ましくは100〜2000m/分、更に好ましくは200〜1000m/分の範囲で回転している羽根を、本粉状農薬組成物と第1液状原料と第2液状原料との混合物と接触させる方法が挙げられる。この際、このせん断力を与える操作は熱硬化性樹脂が粘着性を示さなくなるまで行われ、本粉状農薬組成物と第1液状原料と第2液状原料との混合物の全体にほぼ均等にせん断力を与えられるように、容器に仕込まれる粉状農薬組成物の量、回転する羽根の組数等を適宜調整することが好ましい。
【0034】
工程(4)は、工程(3)で得られた粒状農薬を容器内で転動させながら熱硬化性樹脂の原料となる前記第1液状原料と前記第2液状原料とを同時又は順次加え、得られた混合物に、回転する羽根等で適度なせん断力を与えながら当該第1液状原料と当該第2液状原料とを反応させて粒状農薬を熱硬化性樹脂で被覆する工程である。本工程(4)は適度な厚みの熱硬化性樹脂の被膜が得られるまで、必要により複数回繰り返される。本工程(4)においては、好ましくは第1液状原料と第2液状原料とを順次加えることで行われるが、粒状農薬に先に第1液状原料を加えて、その後に第2液状原料を加えても、或いは当該粒状農薬に先に第2液状原料を加えて、その後に第1液状原料を加えてもよい。
被覆粒状農薬組成物は、工程(4)の繰り返し回数、及び、1回の工程(4)における前記第1液状原料と第2液状原料との合計使用量を変化させることにより、当該被覆粒状農薬組成物における熱硬化性樹脂の割合を変化させることができる。即ち、これにより農薬活性成分の徐放性能を調整することが出来る。例えば、粒状農薬に対して熱硬化性樹脂の原料を少量ずつ、更に好ましい態様においては第1液状原料と第2液状原料とを別箇に添加すれば、農薬活性成分の溶出を徐放化する為の熱硬化性樹脂の被膜が均一に形成され、粒径の比較的揃った農薬含有の粒子を得ることができる。また、熱硬化性樹脂の被膜が均質に形成される為、好ましい徐放性能が得られる。また、工程(4)を複数回繰り返して行うことにより、粒状農薬を被覆する熱硬化性樹脂の被膜の形成と成長が生じ、場合により粒状農薬の粒子同士の凝集が生じる。
【0035】
工程(1)及び工程(2)、或いは工程(4)の1回の操作で添加される第1液状原料及び第2液状原料の合計量、即ち未硬化熱硬化性樹脂の量は、熱硬化性樹脂の種類、操作温度、使用する機器等の条件により変化させることができるが、粉状農薬100重量部に対して0.3〜15重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0036】
前記工程(1)〜工程(4)は連続する工程として、一つの容器内にて行われることが好ましい。また、回転する羽根によって内容物を転動させ、且つ、せん断力を十分に与えることができる容器を使用することが好ましい。
このような手段を備えた容器としては、例えば下記のような容器が挙げられる。
(a)斜め又は水平軸の周りにパン型またはドラム型形状の容器全体を回転させることができ、更に容器の下部位置で、容器内の内容物と接触する位置に回転する羽根を設けた容器(容器が回転させられることにより容器内の粒子全体が転動させられ、容器の下部に集積された粒子が回転する羽根によりせん断力を与えられる。);
(b)略円筒形状の容器の底部に、容器の底面部に設けた底面部の直径と同程度の大きさの羽根(以下、攪拌羽根と記す。)を有し、更に該容器の側面より突出させた水平軸の周りに回転する羽根を設けた容器(容器の底面部に設けられた攪拌翼が回転することにより容器内の粒子全体が転動させられ、更に粒子が側面より突出させた水平軸の周りに回転する羽根によりせん断力を与えられる。);
(c)容器内の内容物の全体を動かすのに十分な量の気流を送る手段を有し、更に容器内の内容物と接触する位置に回転する羽根を設けた容器(気流により容器内の粒子全体が転動させられ、更に粒子が容器内に設置された回転する羽根によりせん断力を与えられる。)。
【0037】
以下、前記(b)の容器について説明する。
回転する羽根により与えられるせん断力の強さは、容器の側面より突出させた水平軸の周りに回転する羽根(以下、解砕羽根と記す。)の回転数や羽根の大きさを変更することにより、調整することができる。(b)の容器においては、攪拌羽根によってもせん断力を与えることができる。また、前記解砕羽根の回転数や熱硬化性樹脂の硬化速度を調節することにより、得られる被覆粒状農薬組成物の体積中位径を変化させることができる。具体的には、解砕羽根の回転数を上げるか、熱硬化性樹脂の硬化速度が遅くなると、本粒状農薬組成物の体積中位径は小さくなる。具体的な容器として、粒子が容器内を外周に沿って円運動を起こす装置として、株式会社セイシン企業製ニューグラマシンが挙げられ、混合機内に低速回転のアジテータと側面部に高速回転のチョッパーを備え、投入した原料を両羽根の作用により、短時間で混合・分散・せん断する装置として、深江パウテック株式会社製ハイスピードミキサーやハイフレックスグラルが挙げられる。更に、同様の性能を有する装置として、フロイント産業株式会社製ハイスピードミキサー、株式会社パウレック製バーチカルグラニュレーター、岡田精工株式会社製ニュースピードミルを挙げることができる。例えば、特開平9−75703号公報に記載の装置が具体的に挙げられる。
【0038】
被覆粒状農薬組成物において、熱硬化性樹脂の量は、粉状農薬組成物100重量部に対して通常5〜150重量部、好ましくは10〜100重量部、更に好ましくは20〜80重量部である。また、被覆粒状農薬組成物中の熱硬化性樹脂の割合は、好ましくは25〜70重量%である。また、原料として用いる粉状農薬組成物の体積中位径に対して、得られる被覆粒状農薬組成物の体積中位径は、通常2〜20倍となる。被覆粒状農薬組成物は、粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる組成物であるが、当該被覆粒状農薬組成物における個々の粒子の構造は、凡そ、中心部に粉状農薬組成物の凝集部分を有し、その周囲に熱硬化性樹脂の被膜が形成されてなる多核粒子である。例えば粉状農薬組成物の体積中位径が1〜100μmであり、被覆粒状農薬組成物中の体積中位径が30〜200μmである。
【0039】
本発明において、用いられる粉状農薬組成物の体積中位径は通常1〜100μm、好ましくは1〜30μmであり、得られる被覆粒状農薬組成物の体積中位径は通常10〜200、好ましくは20〜150μmである。
被覆粒状農薬組成物の体積中位径は、例えば、原料として用いた前記粒状農薬の体積中位径の3〜10倍である。
なお、これらの体積中位径は、MALVERN製MASTERSIZER2000等のレーザー回折式粒子径測定機によって測定することができる。被覆粒状農薬組成物の形状は通常、略球状であり、被覆粒状農薬組成物の見掛け比重は好ましくは1.0g/ml以下、さらに好ましくは0.6g/ml以下である。
【0040】
本発明に係る農薬粒剤組成物(以下、本農薬粒剤組成物と記すこともある)は、
(一)第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、25℃における水溶解度が500mg/L以下、好ましくは50mg/L以下である第2の農薬活性成分と、固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、水と、を含む混合物を混練する第一工程、
(二)第一工程で得られた混練物を押出造粒する第二工程、及び
(三)第二工程で得られた造粒物を乾燥する第三工程、を経て製造することができる。
第一工程で使用される農薬活性成分、被覆粒状農薬組成物、固体担体、結合剤及び界面活性剤等は前述した通りである。また、第二工程及び第三工程では、通常の方法を用いて造粒及び乾燥させることができる。
【0041】
また、本農薬粒剤組成物は、前記被覆粒状農薬組成物の含有量が0.5〜30重量%、前記第2の農薬活性成分の含有量が0.1〜30重量%、前記固体担体の含有量が15〜98.8重量%、前記結合剤の含有量が0.5〜10重量%、前記界面活性剤の含有量が0.1〜15重量%であることが好ましい。
【0042】
本農薬粒剤組成物に用いられる固体担体としては、例えばカオリナイト、ディッカナイト、ナクライト、ハロサイト等のカオリン鉱物、クリソタイル、リザータイト、アンチコライト、アメサイト等の蛇紋石、ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト等のモンモリロナイト鉱物、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ハイデライト等のスメクタイト、パイロフィライト、タルク、ロウ石、白雲母、フェンジャイト、セリサイト、イライト等の雲母、クリストバライト、クォーツ等のシリカ、アタパルジャイト、セピオライト等の含水珪酸マグネシウム、石膏等の硫酸塩鉱物、ドロマイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ギプサム、ゼオライト、沸石、凝灰石、バーミキュライト、ラポナイト、軽石、珪藻土、酸性白土、活性白土等の鉱物質系担体;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉、籾殻、小麦粉、木粉、糠、ふすま、大豆粉等の植物系担体;尿素、乳糖、ショ糖、食塩、芒硝、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、硫酸アンモニウム等の水溶性担体が挙げられる。本発明においては、鉱物質系担体が好ましく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム及びロウ石が更に好ましく挙げられる。
なお、固体担体は、炭酸カルシウム、又は炭酸カルシウムと1種以上の他の固体担体とを組み合わせたものでもよい。
【0043】
また、本農薬粒剤組成物に用いられる結合剤としては、例えばアラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、トラガントガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルファー化デンプン、デキストリン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等が挙げられ、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びアルファー化デンプンが挙げられる。また、本発明において、結合剤としてアルファー化デンプンを用いると、水と接触時に非崩壊である農薬粒剤を製造することができる。
【0044】
また、本農薬粒剤組成物に用いられる界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノールホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキロールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性(非イオン性)界面活性剤;脂肪酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸エステルスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸アミドスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩のホルマリン縮合物、高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0045】
本農薬粒剤組成物における前記熱硬化性樹脂の被膜は強固であり、混練及び造粒時における被膜の破壊がほとんど生じず、農薬活性化合物の徐放性能が維持されることが好ましい。本農薬粒剤組成物は、防除すべき有害生物に対して、又は保護すべき植物や土壌に対して、直接散布して使用することができる。
【0046】
本農薬粒剤組成物は、播種時対応を含む水稲育苗箱処理用であることが好ましい。
播種時対応とは、床土→潅水→播種→覆土の播種行程の中に育苗箱処理剤を組み込むことにより、具体的には床土→粒剤処理→潅水→播種→覆土とすることで一連の播種作業で育苗箱処理剤の散布が可能となる簡易散布法である。また、この播種時対応により育苗期間に発生する病害(苗いもち,細菌病害等)の防除も可能性となる。
水稲育苗箱とは30cm×60cm(内径:28cm×58cm)サイズで、イネ苗を田植え(一般的には20〜40日間)まで育苗する苗箱である。水稲育苗箱処理とは、田植え後、本田で発生する病害虫を防除するために、育苗箱に粒剤を散布する簡易防除手段である。
【0047】
なお、前述した本発明に関する各々の方法、装置、並びに材料等の記載は、本発明を実施するための最良の形態等を記載したものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0048】
本発明を以下の実施例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例1
(1)粉状農薬組成物1の調製
70.0重量部の(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)及び30.0重量部の勝光山クレーS(勝光山鉱業所製)を均一に混合し、遠心粉砕機にて全量粉砕して、体積中位径が8.20μm(MALVERN製MASTERSIZER2000)の(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジンを含有する粉状農薬組成物(以下、粉状農薬組成物1と記す。)を得た。
(2)ポリオールプレミックス1の調製
46.3重量部のスミフェンTM(住化バイエルウレタン製分岐型ポリエーテルポリオール)、52.2重量部のスミフェン1600U(住化バイエルウレタン製直鎖型ポリエーテルポリオール)、及び1.5重量部の2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(化薬アクゾ製)を均一に混合し、ポリオールと触媒との液状混合物(以下、ポリオールプレミックス1と記す。)を得た。
(3)被覆粒状農薬組成物1の調製
ハイスピードミキサー装置(深江パウテック株式会社製LFS−GS−1J型;丸皿型の容器部の底面の中心を通る垂直線を回転軸とするアジテータ羽根および丸皿型の容器部の側面を貫通するの水平線を回転軸とするチョッパー羽根を有する装置)の容器内に、100重量部の粉状農薬組成物1を仕込み、該装置のアジテータ羽根(回転数:170rpm)及びチョッパー羽根(回転数:2500rpm)を回転させた。次に、混合容器を加温し、粉状農薬組成物1の品温を85±5℃に保持したまま、1.93重量部のポリオールプレミックス1を添加した。当該ポリオールプレミックス1が粉状農薬組成物1に湿潤される様子が観察された。3分後、品温を85±5℃に保持したまま、1.07重量部のスミジュール44V10(住化バイエルウレタン製ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、粘度130m・Pa(25℃))を添加した。添加直後から、増粘現象が確認され、その後、粘度が低下し、ポリウレタン樹脂の硬化が観察された(100重量部の粉状農薬組成物1に対して、3.0重量部のポリウレタン樹脂に相当)。5分後、品温を85±5℃に保持したまま、以下の操作を34回繰り返し行った。
1.86重量部のポリオールプレミックス1を添加して3分間待機、その後1.14重量部のスミジュール44V10を添加して5分間待機。
上記の操作の間、ハイスピードミキサー装置は、同条件にてせん断力のある攪拌混合を継続させた。
100重量部の粉状農薬組成物1に対し、合計105重量部のポリウレタン樹脂原料を添加した。混合容器を冷却し、被覆粒状農薬組成物1(ウレタン樹脂原料添加回数:35回、1回当たりのウレタン原料添加量:3.0重量部、ウレタン樹脂原料総添加量:87重量部、体積中位径:75μm、見掛比重:0.41g/ml)を得た。
(4)農薬粒剤組成物の調製
被覆粒状農薬組成物1 4.4重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、イソチアニル2.0重量部(農薬活性化合物として2.0重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)77.6部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、実施例1の農薬粒剤組成物を得た。
【0050】
実施例2
被覆粒状農薬組成物1 4.4重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、ジクロシメット3.0重量部(農薬活性化合物として3.0重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)76.6部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、実施例2の農薬粒剤組成物を得た。
【0051】
実施例3
被覆粒状農薬組成物1 4.4重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、イソチアニル2.0重量部(農薬活性化合物として2.0重量部)、ジクロシメット3.0重量部(農薬活性化合物として3.0重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)74.6部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、実施例3の農薬粒剤組成物を得た。
【0052】
実施例4
(1)粉状農薬組成物2の調製
45.5重量部の5−クロロ−N−(1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−4−イソベンゾフラニル)−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボキサミド(一般名:フラメトピル)、9重量部のトクシールGU−N(株式会社トクヤマ製含水非晶質二酸化珪素)及び45.5重量部のベントナイト富士印(株式会社ホージュン製)を均一に混合し、遠心粉砕機にて全量粉砕して、体積中位径が5.0μm(MALVERN製MASTERSIZER2000)の5−クロロ−N−(1,3−ジヒドロ−1,1,3−トリメチル−4−イソベンゾフラニル)−1,3−ジメチルピラゾール−4−カルボキサミドを含有する粉状農薬組成物(以下、粉状農薬組成物2と記す。)を得た。
(2)被覆粒状農薬組成物2の調製
ハイスピードミキサー装置(深江パウテック株式会社製LFS−GS−1J型;丸皿型の容器部の底面の中心を通る垂直線を回転軸とするアジテータ羽根および丸皿型の容器部の側面を貫通するの水平線を回転軸とするチョッパー羽根を有する装置)の容器内に、100重量部の前記粉状農薬組成物2を仕込み、当該装置のアジテータ羽根(回転数:850rpm)およびチョッパー羽根(回転数:3500rpm)を回転させた。次に、混合容器を加温し、粉状農薬組成物2の品温を75±5℃に保持したまま、1.86重量部の上記のポリオールプレミックス1を添加した。このポリオールプレミックス1が粉状農薬組成物2に湿潤されてゆく様子が観察された。3分後、品温を75±5℃に保持したまま、1.14重量部のスミジュール44V10(住化バイエルウレタン製ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、粘度130m・Pa(25℃))を添加した。添加直後から、増粘現象が確認され、その後、粘度が低下し、ポリウレタン樹脂の硬化が観察された(100重量部の農薬原末に対して、3.0重量部のポリウレタン樹脂に相当)。5分後、品温を75±5℃に保持したまま、以下の操作を6回繰り返し行った。
1.86重量部のポリオールプレミックス1を添加して3分間待機、その後1.14重量部のスミジュール44V10を添加して5分間待機。
上記の操作の間、ハイスピードミキサー装置は、同条件にてせん断力のある攪拌混合を継続させた。
100重量部の粉状農薬組成物2に対し、合計21重量部のポリウレタン樹脂原料を添加した。混合容器を冷却し、被覆粒状農薬組成物2(ウレタン樹脂原料添加回数:7回、1回当たりのウレタン原料添加量:3.0重量部、ウレタン樹脂原料総添加量:21重量部、体積中位径:40μm、見掛比重:0.37g/ml)を得た。
(3)農薬粒剤組成物の調製
被覆粒状農薬組成物1 4.4重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、前記被覆粒状農薬組成物2 10.6重量部(農薬活性化合物として4.0重量部)、イソチアニル2.0重量部(農薬活性化合物として2.0重量部)、ジクロシメット3.0重量部(農薬活性化合物として3.0重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)64.0部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、実施例4の農薬粒剤組成物を得た。
【0053】
実施例5
被覆粒状農薬組成物1 4.4重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、イソチアニル2.0重量部(農薬活性化合物として2.0重量部)、フラメトピル4.0重量部(農薬活性化合物として4.0重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)73.6部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、実施例5の農薬粒剤組成物を得た。
【0054】
実施例6
被覆粒状農薬組成物1 5.9重量部(農薬活性化合物として2.0重量部)、イソチアニル2.0重量部(農薬活性化合物として2.0重量部)、イマゾスルフロン0.9重量部(農薬活性化合物として0.9重量部)、ブロモブチド濃粉12.9重量部(農薬活性化合物として9.0重量部)、ベントナイト(クニゲルV1、クニミネ工業製)26.9部、炭酸カルシウム(東北タンカル(#250)、東和石灰工業製)48.9重量部の混合物に、ポリカルボン酸系界面活性剤(トキサノンGR−31A、三洋化成工業製)2.0重量部およびジオクチルスルホコハク酸塩(ネオコールSW−CP、第一工業製薬製)0.5部を含有する水 約17重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、1.0mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、実施例6の農薬粒剤組成物を得た。
【0055】
比較例1
クロチアニジン1.5重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)82.5部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、比較例1の農薬粒剤組成物を得た。
【0056】
比較例2
(1)被覆粒状農薬組成物3の調製
ポリビニルアルコール(非イオン性物質、商品名:Gohsenol GH-17R、日本合成化学(株)社製)0.7重量部、ラウリル硫酸ナトリウム(イオン性界面活性剤、商品名:エマール10パウダー、花王(株)製)0.1重量部を84.15重量部のイオン交換水に溶解した水相に、常温で固体の農薬原体である(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(一般名:クロチアニジン)2.5重量部を分散させた。次いで、この分散液に、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)(重合開始剤、商品名:V−70、和光純薬(株)製)0.15重量部を溶解した12.4重量部のメタクリル酸ブチル(重合性モノマー、和光純薬(株)製)を加えた。この混合物を5℃に冷却しながら、LSCホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製)を用いてOUT PUT値2で10分間超音波照射し、その後、1時間ゆるやかにスターラーを用いて攪拌し、次いで、30℃で緩やかに24時間攪拌して、60℃で乾燥し、被覆粒状農薬組成物3を得た。
(2)農薬粒剤組成物の調製
被覆粒状農薬組成物3 9.4重量部(農薬活性化合物として1.5重量部)、アルファ化澱粉(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS♯80、日東粉化工業製)10.0重量部、ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)74.6部の混合物に、界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水 約20重量部を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを、0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所機)に投入し、まず10秒間だけ当該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、当該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、当該造粒物を70℃で30分間乾燥して、比較例2の農薬粒剤組成物を得た。

*1:ブロモブチド/ベントナイト妙義=7/3の混合物(ベントナイト妙義:ホージュン製)
*2:アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製
*3:重質炭酸カルシウム(SS80、日東粉化工業製)
*4:ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)
*5:ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製
*6:トキサノンGR−31A、三洋化成工業製
*7:ネオコールSW−CP、第一工業製薬製
*8:クニゲルV1、クニミネ工業製
*9:東北タンカル(#250)、東和石灰工業製
【0057】
試験例1
(1)クロチアニジン溶出試験
500mlのビーカーに、3度硬水450ml計量し、25±1℃にて温度管理する。3度硬水を円形攪拌子(直径25mm,厚み15mm)を用いて100rpmにて攪拌下、実施例1〜4、比較例1、2で得られた農薬粒剤組成物及び実施例1で得られた被覆粒状農薬組成物1及び比較例2で得られた被覆粒状農薬組成物3を以下に示す量(溶液中のクロチアニジン濃度:50ppm)を投入する。試験開始から1、3日後、溶液をLC−IS法により溶液中のクロチアニジンを定量し、1式により溶出率をそれぞれ算出する。
1式・・溶出率(%)=溶液中のクロチアニジン量/試料の全クロチアニジン量×100
その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
試験例2
(2)クロチアニジン溶出試験
試験例1と同様のクロチアニジンの定量法により、試験開始35日、84日後の溶出率をそれぞれ算出した。その結果を表2〜4に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
試験例3
(1)水稲の播種時覆土前処理によるイネに対する薬害試験
水稲育苗箱(30cm×60cm)の播種前覆土前に供試粒剤組成物を100g/育苗箱の割合で処理し、湿籾(品種:ヒノヒカリ)を160g播種した。育苗器(終日30℃)で3日間発芽させた後、屋外に移動させて育苗を行った。播種2週間後に下記の薬害調査基準に従い、薬害発現状況を目視により調査した(2連制)。
≪薬害調査基準≫
− :薬害症状なし
± :薬害の兆候が認められるが実用上問題なし
+ :薬害が認められ、実用上問題あり
++:激しい薬害が認められ、実用性なし

各々の粒剤組成物における調査結果を表5に示す。
【0064】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の農薬粒剤組成物は、使用する熱硬化性樹脂の種類や量を適宜変更することにより、二種以上の農薬活性成分を含有する農薬粒剤組成物の徐放性能を優れたものにすることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、
25℃における水溶解度が500mg/L以下である第2の農薬活性成分と、
固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、
を含有する農薬粒剤組成物。
【請求項2】
第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物の含有量が0.5〜30重量%、
第2の農薬活性成分の含有量が0.1〜30重量%、
固体担体の含有量が15〜98.8重量%、
結合剤の含有量が0.5〜10重量%、
界面活性剤の含有量が0.1〜15重量%、
である請求項1記載の農薬粒剤組成物。
【請求項3】
熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂である請求項1又は2記載の農薬粒剤組成物。
【請求項4】
第1の農薬活性成分が、25℃における水溶解度が100mg/L以上1000mg/L以下の農薬活性成分である請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
【請求項5】
第1の農薬活性成分及び第2の農薬活性成分の組み合わせが、殺虫活性成分及び殺菌活性成分の組み合わせである請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
【請求項6】
第1の農薬活性成分が、(E)−N−((2−クロロ−5−チアゾリル)メチル)−N’−メチル−N”−ニトログアニジンであり、
第2の農薬活性成分が、2−シアノ−N−[(1R)−(2,4−ジクロロフェニル)エチル]−3,3−ジメチルブタンアミド及び2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
【請求項7】
固体担体が、炭酸カルシウム、又は炭酸カルシウムと1種以上の他の固体担体とを組み合わせたものであり、
結合剤が、アルファー化デンプンである請求項6記載の農薬粒剤組成物。
【請求項8】
界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である請求項1〜7のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
【請求項9】
播種時対応を含む水稲育苗箱処理用である請求項1〜8のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
【請求項10】
第2の農薬活性成分が、25℃における水溶解度が50mg/L以下である請求項1〜9のいずれか一項に記載の農薬粒剤組成物。
【請求項11】
(一)第1の農薬活性成分を含む粉状農薬組成物が熱硬化性樹脂で固められ被覆されてなる被覆粒状農薬組成物と、25℃における水溶解度が500mg/L以下である第2の農薬活性成分と、固体担体と、結合剤と、界面活性剤と、水と、を含む混合物を混練する第一工程、
(二)第一工程で得られた混練物を押出造粒する第二工程、及び
(三)第二工程で得られた造粒物を乾燥する第三工程、
を有してなる農薬粒剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−73820(P2009−73820A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212651(P2008−212651)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】