説明

近接場光発生素子、記録ヘッドおよび記録装置

【課題】微小で強度が強く、かつ、強度の経時変化が小さい近接場光を得ることができ、容易に加工できる近接場光発生素子を提供する。
【解決手段】入射光を近接場光に変換する近接場光発生素子10は、金属材料からなる金属体11と、誘電材料からなる誘電体12とを含み、金属体11は、誘電体12を狭んで配されている第1の界面16と第2の界面18とを含み、第1の界面16と、第2の界面18は、それぞれ屈曲部P16・P18により屈曲されており、第1の界面16と、第2の界面18との対向する距離である界面間距離は、屈曲部P16・P18間で最小となっており、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光発生素子、記録ヘッドおよび記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、伝播光を近接場光に変換する近接場光発生素子が精力的に開発されており、光回路、記録ヘッドおよび記録装置への応用が盛んに提案されている。光記録においては、高密度化のために光スポットの微小化が進み、近接場光を用いることが提案されている。このとき、高S/Nのために強い近接場光の強度が求められるが、このために、特に表面プ
ラズモンポラリトン技術を用いて、伝播光を近接場光に変換する近接場光発生素子が用いられる。
【0003】
また、光アシスト磁気記録においては、磁気ポールや再生素子との相対位置なども考慮する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている光アシスト磁気記録用ヘッドでは、半導体レーザの出力端に開口を有する金属膜を形成することで、金属膜で表面プラズモンポラリトン増強を用いて近接場光を発生させている。図18は、特許文献1に記載の金属膜の構成を表す図である。図18に示すように、金属膜95に、十字状の開口96が設けられている。このとき、十字状開口を形成することにより現れる、偏光方向に対になっている頂点同士に、近接場光が発生する。
【0005】
また、特許文献2に開示されている光アシスト磁気記録用ヘッドでは、磁界発生用コイルの内側に、近接場光を発生させるための導電性を有する散乱体が配置されている。そして、コイルの内側の幅は前記コイルに入射する光の波長以下であり、コイルの外径は前記コイルに入射する光のスポット径より大きい。このヘッドのコイルと散乱体の一例として、図19に示す構成が開示されている。
【0006】
図19は、特許文献2に記載のヘッドのコイルと散乱体の構成を表す図である。図19に示すように、三角形の形状をした金属の散乱体92が2つ、磁気発生用コイル93に接するように配置されている。
【0007】
ここで、図19の矢印の向きの偏光方向を持った入射光が、散乱体92に照射されることにより、散乱体92で近接場光が発生する。一方、磁界発生用コイル93に電流を流すことにより、磁界発生用コイル93の中心部分に磁界が発生するため、散乱体92を磁界発生用コイル93の中心に形成しておくことで、磁界と近接場光を同じ位置に発生させることができる。
【0008】
一方で、非特許文献1より、V字型近接場光発生素子にV字の幅方向の偏光を入射した場合、発生した表面プラズモンポラリトンがV字先端に集中することが知られている。これについて、図20(a)〜(d)を用いて説明する。
【0009】
図20(a)は、非特許文献1に記載の近接場光発生素子の構成を表す斜視図であり、(b)は(a)の近接場光発生素子のXY平面に平行な方向の断面図を表し、(c)は(a)の近接場光発生素子のYZ平面の断面図を表し表面プラズモンポラリトンの伝播の様子を表す図であり、(d)は(c)の表面プラズモンポラリトンの伝播の様子を説明する図である。
【0010】
図20(a)に示すように、XYZ軸をとる。近接場光発生素子100は、金属体101と、誘電体102とからなっている。金属体101には、XY平面に平行な方向の断面がV字形状となる溝が設けられており、その溝に誘電体102が設けられている。
【0011】
図20(b)に示すように、金属体101に設けられた溝のX軸方向の幅(すなわち誘電体102の幅)は、Y軸+方向から−方向に向けて狭くなっていく。この近接場光発生素子100に、X軸方向の偏光を照射した場合に励起される表面プラズモンポラリトンにとっては、X軸方向の溝の幅が狭いほど、実効屈折率が大きくなる。このときの、金属体101の溝内を伝播する表面プラズモンポラリトンの伝播の軌跡は、図20(c)に示す矢印Aのようになる。つまり、金属体101の溝内を伝播する表面プラズモンポラリトンは、溝の先端部分へと伝播方向を変化させる。
【0012】
ここで、入射光が屈折率の小さい媒質から、屈折率の大きい媒質に向かって入射されると、スネルの法則により、図20(d)に示すようにθ4<θ3となる。近接場光発生素子100のようなV字型近接場光発生素子の溝は、屈折率が徐々に変化する層の集まりと考えることができるので、金属体101の溝を伝播する表面プラズモンポラリトンは、溝のV字先端に集まることになる。
【0013】
また、図20(d)の破線で示すように、通常、屈折率の異なる媒質の界面では、光(表面プラズモンポラリトン)は反射される。しかし、屈折率差が非常に小さければ、反射率も小さくなる。つまり、溝のV字の開き角を小さくすることで、実効屈折率の変化率を小さくすることができる。このため、V字型の近接場光発生素子100で反射を少なくし、表面プラズモンポラリトンをZ軸(溝の先端)に集めることができる。
【0014】
また、非特許文献2および3により、2つの金属三角柱を向かい合わせた際、頂点を伝播する表面プラズモンポラリトンの結合モードが存在することが知られている。
【0015】
図21は、非特許文献2に記載の近接場光発生素子の構成を表す斜視図である。図21に示すように、近接場光発生素子200は、金属材料からなる金属三角柱200aと、金属三角柱200bとを備えている。金属三角柱200aと、金属三角柱200bとは、それぞれの頂角同士が離間して、対向して配置されている。このような金属三角柱200aの頂角と、金属三角柱200bの頂角との延設方向(図21のX軸方向)に、表面プラズモンポラリトンが伝播していく。
【0016】
非特許文献1で説明されている現象と、非特許文献2および3で説明されている現象のいずれが起こるかは、V字型近接場光発生素子(または金属三角柱)の頂角や、屈曲部に対しての表面プラズモンポラリトンの入射方向、屈曲部およびその周辺での界面間距離などに依存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−351091号公報(2006年12月28日公開)
【特許文献2】特許第4081480号(2008年2月15日登録)
【特許文献3】特開2009−163806号公報(2009年7月23日公開)
【特許文献4】特開2005−4901号公報(2005年1月6日公開)
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】“Adiabatic nanofocusingof plasmons by sharp metallic grooves: Geometrical optics approach” D.K.Gramotnev, J.App.Phys. 98, 104302(2005)
【非特許文献2】“Numerical analysis of coupled wedge plasmons in a structure of two metal wedges separated by a gap” D. F. Pile et al., J.App.Phys. 100, 013101 (2006)
【非特許文献3】”New Plasmon Waveguides Composed of Twin Metal Wedges with a Nano Gap” Masanobu Haraguchi et al., Optical Review 13, 228(2006)
【非特許文献4】”Japanese Journal of Applied Physics”vol. 43, No.11A, 2004, pp.7483-7488
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1、2の方法では、頂点で強い近接場光を発生させているため、頂点がなまるという経時変化を起こす。よって、近接場光の強度が経時変化を起こすという問題があった。
【0020】
さらに、非特許文献2、3に開示された近接場光発生素子でも、金属三角柱の頂点に表面プラズモンポラリトンの強度が集中するため、頂点が溶けて、得られる近接場光の経時変化が起きる。すなわち、金属三角柱の頂点を伝播する表面プラズモンポラリトン、および最終的に得られる近接場光の強度が経時変化を起こすという問題があった。
【0021】
また、図20を用いて説明した非特許文献1に開示された構成では、十分な近接場光の強度を得るには、近接場光が発生するV字型の先端部分を鋭く尖ったV字型に加工する必要があり、近接場光発生素子の加工が困難である。十分な強度の近接場光を得ることができない。
【0022】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、微小で強度が強く、かつ、強度の経時変化が小さい近接場光を得ることができ、容易に加工できる近接場光発生素子、記録ヘッドおよび記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の課題を解決するために、本発明の近接場光発生素子は、入射光を近接場光に変換する近接場光発生素子であって、上記近接場光発生素子は、金属材料からなる金属体と、誘電材料からなる誘電体とを含み、上記金属体は、上記誘電体を狭んで配されている第1及び第2の界面を含み、上記第1の界面と、上記第2の界面とのうち少なくとも一方は、屈曲部により屈曲されており、上記第1の界面と、上記第2の界面との対向する距離である界面間距離は、上記屈曲部で最小となっており、上記第1の界面と、上記第2の界面との界面間距離の変化率が、上記屈曲部を境に非対称となっていることを特徴としている。
【0024】
上記構成によると、上記金属体には、上記誘電体を挟んで、第1及び第2の界面が配されているので、金属体に対する入射光を、上記第1及び第2の界面で、表面プラズモンポラリトンに変換することができる。
【0025】
また、上記構成によると、上記第1の界面と、上記第2の界面とのうち少なくとも一方は、屈曲部により屈曲されており、上記第1の界面と、上記第2の界面との対向する距離である界面間距離は、上記屈曲部で最小となっている。
【0026】
これにより、第1の界面及び第2の界面を伝播する表面プラズモンポラリトンを、実効屈折率が最も大きい屈曲部近辺に集中させることができる。
【0027】
すなわち、上記構成によると、第1及び第2の界面の入射面側で励起された表面プラズモンポラリトンの伝播方向を変え、第1及び第2の界面の出射面側で屈曲部の近辺に集中させることができる。このように、屈曲部の近辺に集中された表面プラズモンポラリトンは、微小なサイズで、かつ強い強度の表面プラズモンポラリトンとなる。
【0028】
このため、近接場光発生素子の出射面から、微小なスポットサイズで、かつ強い強度の近接場光を出射することができる。
【0029】
このように、上記構成によると、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へと変換することができる。
【0030】
さらに、上記構成によると、上記第1の界面と、上記第2の界面との界面間距離の変化率が、上記屈曲部を境に非対称となっている。
【0031】
このため、第1及び第2の界面を伝播していく表面プラズモンポラリトンを、屈曲部からずれた位置に集中させることができる。これにより、最も界面間距離が近い上記屈曲部の、熱による形状の経時変化を小さくすることができる。すなわち、発生する近接場光強度の経時変化を小さくすることができる。
【0032】
さらに、上記構成によると、上記第1の界面と、上記第2の界面との界面間距離の変化率が、上記屈曲部を境に非対称となるように、上記屈曲部が配されている。このため、例えば、V字形状の溝の先端に表面プラズモンポラリトンを集中させるような構成と比べて、表面プラズモンポラリトンを集中させるための構成としての上記屈曲部を設けるための加工がし易い。
【0033】
このように、上記構成によると、微小で強度が強く、かつ、強度の経時変化が小さい近接場光を得ることができ、容易に加工できる近接場光発生素子を得ることができる。
【0034】
また、上記第1及び上記第2の界面のうち、上記屈曲部を境として、それぞれが対向する領域を、それぞれ第1及び第2の領域とし、上記第1の領域の上記第1及び上記第2の界面の延長線がなす角を第1の頂角とし、上記第2の領域の上記第1及び第2の界面の延長線がなす角を第2の頂角としたとき、上記第1の頂角及び上記第2の頂角は、何れも0度より大きく180度未満であることが好ましい。
【0035】
上記構成によると、第1及び第2の界面のうち、界面間距離が入射光の波長以上となるとことで、入射光により表面プラズモンポラリトンが励起されず、入射光をそのまま透過させてしまう部分を小さく、かつ近接場光が発生する領域から離すことができる。よって、得られる近接場光に対するバックグラウンドノイズをなくす、または影響を小さくすることができる。
【0036】
また、上記第1の頂角と、上記第2の頂角とのうち、少なくとも一方は、0度より大きく90度以下であることが好ましい。
【0037】
上記構成によると、第1及び第2の界面のうち、表面プラズモンポラリトンが励起されず、入射光をそのまま透過させてしまう部分をさらに小さくすることができ、かつ近接場光が発生する領域から離すことができる。よって、得られる近接場光に対するバックグラウンドノイズをなくす、または影響を小さくすることができる。
【0038】
上記第2の頂角は、上記第1の頂角より小さいことが好ましい。上記構成により、第2の領域に強度中心が位置するように、上記近接場光発生素子に対して入射光を入射させることで、表面プラズモンポラリトンを励起せず、入射光がそのまま透過することを防止することができる。このため、上記構成によると、入射光の利用効率を向上することができる。
【0039】
また、上記第1及び第2の界面のうち、上記第2の領域に含まれる端部間は接続されていることが好ましい。
【0040】
上記構成により、上記第1及び第2の界面のうち、上記屈曲部から、接続されている端部までの距離を調整することにより、近接場光を発生する位置を調整することができる。また、金属体に電流を流すことにより、磁界を発生することができる。
【0041】
また、上記第2の領域に含まれる上記第1及び第2の界面の端部間の界面間距離は、上記第1の領域に含まれる上記第1及び第2の界面の端部間の界面間距離より小さいことが好ましい。
【0042】
上記構成により、第2の領域に強度中心が位置するように、上記近接場光発生素子に対して入射光を入射させることで、表面プラズモンポラリトンを励起せず、入射光がそのまま透過することを防止することができる。このため、上記構成によると、入射光の利用効率を向上することができる。
【0043】
また、上記屈曲部は、上記第1の界面と、上記第2の界面との両方に配されており、上記第1の界面と、上記第2の界面とは、対称な形状となっていることが好ましい。
【0044】
上記構成により、第1の界面と、第2の界面との間に作用する表面プラズモンポラリトンの電界成分が常に、一定方向となる。このため、上記第1及び第2の界面のそれぞれを伝播する表面プラズモンポラリトンのロスが小さくなり、得られる近接場光の強度が強くなる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0045】
また、上記近接場光発生素子に対して入射させる光は直線偏光であり、上記直線偏光の偏光方向は、上記第1及び第2の界面のうち、上記屈曲部を境としたいずれかの領域で、上記第1及び第2の界面に対して垂直な断面における、上記第1及び第2の界面からの距離が等しい点を結ぶ直線に対して垂直な方向の偏光方向を少なくとも含むことが好ましい。
【0046】
上記構成により、第1及び第2の界面を伝播させる表面プラズモンポラリトンの励起強度が大きくなり、得られる近接場光の強度が強くなる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0047】
また、上記第1の界面と第2の界面とが対向する領域には、上記誘電体のみが配されており、当該誘電体は、上記近接場光発生素子に対して入射させる光を透過する誘電体材料からなることが好ましい。
【0048】
上記構成により、第1の界面と、第2の界面とが対向する領域には、上記近接場光発生素子に対して入射させる光を透過する誘電体材料だけが存在することになる。このように、第1の界面及び第2の界面の間に入射させた光を遮光する部材が存在しないので、第1の界面及び第2の界面の間に入射させた光を効率よく、近接場光へと変換することができる。
【0049】
本発明の記録ヘッドは、上記近接場光発生素子と、上記近接場光発生素子に対して、直線偏光の光を入射させるための光源とを備えていることが好ましい。
【0050】
上記構成によると、光源から出射される直線偏光を上記近接場光発生素子の入射光として、上記近接場光発生素子の上記第1及び第2の界面で表面プラズモンポラリトンを伝播させ、上記近接場光発生素子から、強い強度の近接場光を得ることができる。
【0051】
このため、例えば、上記近接場光を媒体に対して照射することで、S/N比が高いマークを記録することができる記録ヘッドを構成することができる。
【0052】
また、上記光源は、上記屈曲部を含んで、上記近接場光発生素子に対して直線偏光の光を入射させることが好ましい。
【0053】
上記構成によると、第1及び第2の界面を伝播する表面プラズモンポラリトンの励起強度が大きくなり、得られる近接場光の強度が強くなる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0054】
また、上記光源と、上記近接場光発生素子とは一体化して形成されていることが好ましい。
【0055】
上記構成により、記録ヘッドを小型化することができると共に、余計な光学系が必要なく、光軸のズレなどの経時変化が起こり難い。また、記録ヘッドを製造するためのコストを抑えることができる。
【0056】
また、上記近接場光発生素子に含まれている上記金属体に電流を流すことにより、上記界面間距離が最小となる上記屈曲部間の上記近接場光発生素子の出射面の近傍に磁界を発生させる磁界発生部を備えていることが好ましい。
【0057】
上記構成により、上記界面間距離が最小となる屈曲部間の上記近接場光発生素子の出射面の近傍に近接場光を発生させると共に、磁界を発生させることができる。このため、上記近接場光発生素子の出射面側に、例えば媒体などを配することで、当該媒体に対して磁気記録を行うことができる。
【0058】
また、上記近接場光発生素子により、近接場光のスポットサイズを小さくすることができるので、媒体に対して記録する磁気ビットのサイズも小さくすることできる。このため、上記構成によると高密度な磁気記録を行うことができる記録ヘッドを構成することができる。
【0059】
また、上記記録ヘッドは、さらに、磁界を発生させる磁気ポールを備えていることが好ましい。
【0060】
上記近接場光発生素子により、近接場光のスポットサイズを小さくすることができるため、さらに磁気ポールを備えることで、媒体に対して記録する磁気ビットのサイズも小さくすることできる。このため、上記構成によると、高密度な磁気記録を行うことが可能な記録ヘッドを実現することができる。
【0061】
また、上記記録ヘッドは、さらに、上記金属体と隣接する磁気ポールを備え、上記磁気ポールは、電流を流すためのコイルと、上記金属体との隣接面に絶縁層とを備え、上記コイルの電流が、上記金属体に流れており、上記コイルを流れる電流の向きと、上記金属体に流れる電流の向きとが、近接場が照射される被照射物から見て逆向きであることが好ましい。
【0062】
上記構成により、磁気ポールを、上記金属体で発生する磁界に対するリターンヨークとして機能させることができる。すなわち、上記金属体に電流を流すことにより発生する磁界が、被照射物を通って、磁気ポールへ戻ってくる磁界の経路ができるため、発生する磁界の領域が広がらず、媒体に対して記録する磁気ビットのサイズを小さくすることができる。さらに、上記金属体で発生する磁界により、磁気ポールから発生する磁界を増強することもできる。
【0063】
また、本発明の記録装置は、上記記録ヘッドを備えていることが好ましい。
【0064】
上記構成によると、上記記録装置に装填された媒体に対して、S/Nの高いマークを記
録できる記録装置、または小型で経時変化が小さく低コストの記録装置、または高密度な光アシスト磁気記録が可能である記録装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の近接場光発生素子は、入射光を近接場光に変換する近接場光発生素子であって、金属材料からなる金属体と、誘電材料からなる誘電体とを含み、上記金属体は、上記誘電体を狭んで配されている第1及び第2の界面を含み、上記第1の界面と、上記第2の界面とのうち少なくとも一方は、屈曲部により屈曲されており、上記第1の界面と、上記第2の界面との対向する距離である界面間距離は、上記屈曲部で最小となっており、上記第1の界面と、上記第2の界面との界面間距離の変化率が、上記屈曲部を境に非対称になっている。
【0066】
これにより、微小で強度が強く、かつ、強度の経時変化が小さい近接場光を得ることができ、容易に加工できる近接場光発生素子を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の近接場光発生素子の斜視図である。
【図2】本発明の近接場光発生素子の断面図である。
【図3】(a)は本発明の近接場光発生素子のY軸方向に対する界面間距離を表す図であり、(b)は(a)の界面間距離の変化率の様子を表す図である。
【図4】本発明の近接場光発生素子の断面図である。
【図5】本発明の近接場光発生素子に光を照射した場合の、出射面における強度分布を示す図である。
【図6】本発明の近接場光発生素子に光を照射した場合の、出射面における強度分布を示す図である。
【図7】比較例の近接場光発生素子に光を照射した場合の、出射面における強度分布を示す図である。
【図8】本発明の近接場光発生素子、比較例の近接場光発生素子の出射面におけるY方向の強度分布を示す図である。
【図9】本発明の別の近接場光発生素子の断面図である。
【図10】(a)は本発明の第2の変形例の近接場光発生素子のY軸方向に対する界面間距離を表す図であり、(b)は(a)の界面間距離の変化率の変化率の様子を表す図である。
【図11】(a)は比較例の近接場光発生素子のY軸方向に対する界面間距離の変化率の様子を表す図であり、(b)は(a)の界面間距離の変化率の様子を表す図である。
【図12】本発明の別の近接場光発生素子の断面図である。
【図13】本発明の記録ヘッドの製造方法を示す断面図である。
【図14】本発明の記録ヘッドの斜視図である。
【図15】本発明の記録ヘッドの斜視図である。
【図16】本発明の近接場光発生素子に流れる電流及び発生する磁界の様子を説明する図である。
【図17】本発明の記録ヘッドを用いた記録装置の斜視図である。
【図18】従来技術の近接場光発生素子の構成を表す平面図である。
【図19】従来技術の近接場光発生素子の断面図である。
【図20】(a)は、従来の導波路の構成を表す斜視図であり、(b)は(a)の導波路のXY平面に平行な方向の断面図を表し、(c)は(a)の導波路のYZ平面の断面図を表し表面プラズモンポラリトンの伝播の様子を表す図であり、(d)は(c)の表面プラズモンポラリトンの伝播の様子を説明する図である。
【図21】従来の近接場光発生素子の構成を表す斜視図である。
【図22】本発明の記録ヘッドの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係る近接場光発生素子10について、図1〜12を参照して説明すると以下の通りである。
【0069】
(近接場光発生素子の構成)
まず、図1、2を用い、本実施の形態に係る近接場光発生素子10の構成について説明する。
【0070】
図1は、本実施形態に係る近接場光発生素子10の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、本実施形態に係る近接場光発生素子10の入射面を示す図である。
【0071】
近接場光発生素子10は、金属体材料からなる金属体11と、誘電体材料からなる誘電体12とからなる。近接場光発生素子10の、光が照射される側の面が入射面である。近接場光発生素子10は、入射面側からの入射光を表面プラズモンポラリトンポラリトンへと変換し、当該変換した表面プラズモンポラリトンを、入射面と逆側の面である出射面から近接場光として外部に出射する。
【0072】
金属体11を構成する金属体材料は、金属体11への入射光の波長にも依るが、表面プラズモンポラリトンを強く励起するものであればよい。具体的には、金属体11を構成する金属体材料は、金、銀、銅、プラチナ、クロム、アルミニウムのいずれかを主成分とすることが好ましい。
【0073】
誘電体12は、光源の波長の光を透過する材料であればよく、空気、酸化珪素、ガラス類、酸化アルミ、酸化チタンなどの酸化物、窒化アルミなどの窒化物でもよい。
【0074】
金属体11は、誘電体12との界面である第1の界面16及び第2の界面18を有している。第1の界面16と、第2の界面18とは、誘電体12を挟んで、互いに傾いて、対向して配されている。
【0075】
第1の界面16と、第2の界面18とは、対称軸に対して対称となるように配されている。
【0076】
そして、第1の界面16は、屈曲部P16を有しており、この屈曲部P16によって、互いに屈曲して配されている第1の界面16aと、第1の界面16bとを有する。
第2の界面18は、屈曲部P18を有しており、この屈曲部P18によって、互いに屈曲して配されている第2の界面18aと、第2の界面18bとを有する。
【0077】
また、第1の界面16及び第2の界面18は、互いの界面間距離が異なる一方の端部16c・端部18cと、他方の端部16d・端部18dとを有する。
【0078】
なお、以下の説明では、近接場光発生素子10は、第1の界面16及び第2の界面18の両方に、それぞれ屈曲部P16・P18が存在しているものとして説明する。しかし、本発明の近接場光発生素子10では、第1の界面16及び第2の界面18の少なくとも一方に屈曲部P16・P18が存在し、この屈曲部P16・P18において第1の界面16及び第2の界面18の界面間距離が最小となっていればよい。
【0079】
また、第1の界面16及び第2の界面18の界面間距離は、屈曲部P16・P18において界面間距離が最小となっている方向に取ればよい。
【0080】
ここで、近接場光発生素子10を、第1の領域13、第2の領域14、及び第3の領域15の順に隣接して配されている3つの領域に分割して説明する。
【0081】
第1の界面16及び第2の界面18のうち、屈曲部P16・P18を境として、それぞれが対向する領域が第1の領域13、及び第2の領域14である。
【0082】
第1の領域13と、第2の領域14とは、誘電体12を挟む金属体11の領域及び金属体11に挟まれている誘電体12を含む領域である。第1の領域13と、第2の領域14とは、屈曲部P16・及び屈曲部P18によって区別(区画)される領域である。
【0083】
また、第3の領域15は、第1の界面16の端部16d及び第2の界面18の端部18dによって区別(区画)される領域である。
【0084】
第1の界面16のうち、第1の界面16a及び端部16cは、第1の領域13に含まれており、第1の界面16b及び端部16dは、第2の領域14に含まれている領域である。
【0085】
第2の界面18のうち、第2の界面18a及び端部18cは、第1の領域13に含まれている領域であり、第2の界面18b及び端部18dは、第2の領域14に含まれている。
【0086】
第3の領域15は、誘電体12を含まず、金属体11の一部領域のみからなる領域である。第3の領域15によって、第1の界面16及び第2の界面18のうち、第2の領域14に含まれる端部16d・18d間は接続されている。
【0087】
これにより、第1の界面16及び第2の界面18のうち、屈曲部P16から接続されている端部16dまでの距離、及び屈曲部P18から端部18dまでの距離を調整することにより、近接場光発生素子10の出射面での近接場光を発生する位置を調整することができる。また、金属体11に電流を流すことにより、磁界を発生することができる。
【0088】
さらに、第3の領域15の金属体11により、第1の領域13及び第2の領域14の金属体11を接続することで、近接場光発生素子10の強度を向上することができる。
【0089】
また、対向する端部16d・18d間の界面間距離は、対向する端部16c・18c間の界面間距離より小さい。
【0090】
これにより、第2の領域14に強度中心が位置するように、近接場光発生素子10に対して入射光を入射させることで、表面プラズモンポラリトンを励起せず、入射光がそのまま透過することを防止することができる。このため、近接場光発生素子10によると、入射光の利用効率を向上することができる。
【0091】
また、以降の説明では、図1等に示すように、X、Y、Z軸を取る。すなわち、第1の界面16及び第2の界面18において、第1の界面16及び第2の界面18の界面間距離が最小となっている方向(すなわち、屈曲部P16・P18間を結ぶ直線方向)にX軸を取る。また、第1の領域13と第2の領域14との境界面をXZ平面としている。X、Z軸と直交する方向をY軸方向とする。
【0092】
また、Z軸のうち、近接場光発生素子10の光の出射面側から入射面側への方向をZ軸の+(正)方向とし、逆方向をZ軸の−(負)方向とする。また、X軸のうち、第1の界面16から第2の界面18へ向かう方向をX軸の+方向とし、逆方向をX軸の−方向とする。そして、Y軸のうち、第1の領域13から第2の領域14へ向かう方向を+方向とし、第2の領域14から第1の領域13へ向かう方向を−方向とする。
【0093】
近接場光発生素子10は、Y軸を対称軸とし、このY軸に対して対称な形状である。すなわち、第1の界面16と、第2の界面18とは、Y軸に対して対称となるように配置されている。
【0094】
また、第1の界面16と第2の界面18との界面間距離とは、対称軸であるY軸に対して直交する方向の界面間の距離と表現できる。
(近接場光発生素子の界面間距離)
次に、近接場光発生素子10の第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率と、屈曲部P16・P18との関係について説明する。
【0095】
近接場光発生素子10の界面間距離の変化率は、第1の界面16a・16bと、第2の界面18a・18bとの接線同士の成す角、又は近接場光発生素子10のYの位置における界面間距離の微分値で考えればよい。
【0096】
まず、図2を用いて、近接場光発生素子10の界面間距離の変化率と、屈曲部P16・P18との関係を、近接場光発生素子10のYの位置における第1の界面16a・16bと、第2の界面18a・18bとの接線同士の成す角を用いて説明する。
【0097】
図2に示すように、第1の領域13の第1の界面16aの延長線(すなわち第1の界面16aの接線)と第2の界面18aの延長線(すなわち第2の界面18aの接線)とが交わる位置をQ1とする。そして、第1の領域13の第1の界面16aの延長線と第2の界面18aの延長線とがなす角(端部16c・位置Q1・端部18cが成す角)を第1の頂角θ1(図2におけるθ1)とする。
【0098】
また、第2の領域14の第1の界面16bの延長線(すなわち第1の界面16bの接線)と第2の界面18bの延長線(すなわち第2の界面18bの接線)とが交わる位置をQ2とする。そして、第2の領域14の第1の界面16bの延長線と第2の界面18bの延長線とがなす角(屈曲部P16・位置Q2・屈曲部P18が成す角)を第2の頂角θ2(図2におけるθ2)と称する。
【0099】
そして、近接場光発生素子10のXY断面における、屈曲部P16・P18のY座標の位置を位置Y0、端部16c・18cのY座標の位置を位置Y1とする。なお、位置Y1は近接場光発生素子10の一方の端面のY座標を表す。
【0100】
すなわち、位置Y0は、第1の界面16と第2の界面18との界面間距離が最も近くなるY座標の位置である。また、端部16d・18dのY座標の位置を位置Y2とする。
【0101】
また、近接場光発生素子10の位置Y1に位置する一方の端面に対応する他方の端面のY座標を位置Y3と称する。位置Y1から位置Y3までの距離が、近接場光発生素子10のXY平面における長さである。
【0102】
なお、位置Y0は、XYZ座標の原点の位置とする。また、近接場光発生素子10では、Y軸は、第1の頂角θ1と第2の頂角θ2との二等分線である。
【0103】
金属体11の誘電体12との界面である第1の界面16と第2の界面18とは、第1の領域13において、Y軸の正方向に向かうにつれ、次第に接近していき、屈曲部P16・P18で最小の界面間距離となる。そして、第1の界面16と第2の界面18とは、第2の領域14において、Y軸の正方向に向かうにつれ次第に離間していき、端部16d・18dに至る。
【0104】
また、近接場光発生素子10では、第1の頂角θ1と、第2の頂角θ2とが異なっている。
【0105】
近接場光発生素子10のXY平面に平行な断面では、第1の領域13と、第2の領域14とのうち、Y軸の正方向に向かうにつれ次第に接近、又は離間していく第1の界面16と第2の界面18との界面間距離の変化率は、第1の領域13の方が、第2の領域14内より、急になっている。このため、第2の頂角θ2は、第1の頂角θ1より小さい。
【0106】
換言すると、近接場光発生素子10のXY平面に平行な断面では、屈曲部P16・P18は、端部16c・端部18cと、端部16d・端部18dとの間の直線の傾きを変化させる(界面間距離が変化する変化率を変化させる)変化点であるとも表現できる。
【0107】
また、近接場光発生素子10には、金属体11に、誘電体12からなり、端部16d・18dを先端部とする溝が形成されており、その溝の幅を規定するそれぞれの側面(すなわち第1の界面16及び第2の界面18)には、溝の幅が減少する割合が変化する屈曲部P16・P18が配されており、その屈曲部P16・P18を境に界面間距離の変化率が異なっているとも言える。
【0108】
上述したように、近接場光発生素子10では、第1の界面16・第2の界面18は、屈曲部P16・P18を境として、界面間距離の変化する割合が、Y軸に対して異なっている。つまり、第1の界面16a・16b及び第2の界面18a・18bは、共に平面であり、互いに傾いて配されている。
【0109】
ここで、入射面側または出射面側から近接場光発生素子10を見た場合、第1の界面16a及び第2の界面18aを延長してY軸上で交わる位置を位置Q1とし、第1の界面16b及び第2の界面18bを延長してY軸上で交わる位置を位置Q2とすると、近接場光発生素子10は、端部16c・位置Q1・端部18cからなり、成す角が第1の頂角θ1であるV字型の傾斜と、屈曲部P16・位置Q2・屈曲部P18とからなり、成す角が第2の頂角θ2であるV字型の傾斜とを有している。
【0110】
近接場光発生素子10は、端部16c・18cから屈曲部P16・P18までと、屈曲部P16・P18から端部16d・18dにかけての第1の界面16・第2の界面18の界面間距離の変化量は、それぞれ一定である。つまり、近接場光発生素子10のX-Y平面に平行な方向の断面形状では、第1の界面16a・第2の界面18aと、第1の界面16b・第2の界面18bとが直線となっている。このため、近接場光発生素子10のX‐Y平面に平行な断面の形状は、2つのV字型の傾斜が向き合って組み合わされた形状をしているとも表現できる。
【0111】
このように、近接場光発生素子10は、第1の界面16と、第2の界面18と界面間距離は、屈曲部P16・P18で最小となっており、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっている(異なっている)。
【0112】
次に、図3(a)(b)を用いて、近接場光発生素子10の界面間距離の変化率と、屈曲部P16・P18との関係を、近接場光発生素子10のYの位置における界面間距離の微分値によって説明する。
【0113】
図3(a)は近接場光発生素子10のY軸方向に対する界面間距離を表す図であり、図3(b)は図3(a)の界面間距離の変化率の様子を表す図である。
【0114】
図3(a)(b)では、横軸は図2のY軸を表す。図3(a)の縦軸は、Yの位置における第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離を表している。また、図3(b)の縦軸は、Yの位置における図3(a)の界面間距離の変化率を表している。つまり、図3(b)では図3(a)の界面間距離の微分値を表している。
【0115】
近接場光発生素子10は、図1、2に示すように、第1の界面16a・第2の界面18aと、第1の界面16b・第2の界面18bとは、平面である。
【0116】
このため、図3(a)(b)に示すように位置Y1からY0にかけて、第1の界面16aと、第2の界面18aとの界面間距離の変化率は一定のまま、界面間距離が次第に小さくなっていく。そして、屈曲部P16・P18が形成されている位置である位置Y0で界面間距離が最小となる。そして、位置Y0を境にして界面間距離の変化率の符号(プラスマイナス)が変化する。そして、位置Y0からY2にかけて、第1の界面16bと、第2の界面18bとの界面間距離の変化率は一定のまま、界面間距離が次第に大きくなっていく。
【0117】
このように、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離は、屈曲部P16・P18で最小となっており、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっている。
(近接場光発生素子の構成と利点)
このように、入射光を近接場光に変換する近接場光発生素子10は、金属材料からなる金属体11と、誘電材料からなる誘電体12とを備え、金属体11には、誘電体12を挟んで、第1の界面16及び第2の界面18が配されている。これにより、金属体11に対する入射光を、第1の界面16及び第2の界面18で、表面プラズモンポラリトンに変換することができる。
【0118】
また、近接場光発生素子10では、第1の界面16と、第2の界面18とは、それぞれ屈曲部P16、屈曲部P18により屈曲されており、第1の界面16と、第2の界面18との対向する距離である界面間距離は、屈曲部P16・P18間で最小となっている。
【0119】
これにより、第1の界面16及び第2の界面18を伝播する表面プラズモンポラリトンを、実効屈折率が最も大きい屈曲部P16・P18近辺に集中させることができる。
【0120】
すなわち、第1の界面16及び第2の界面18の入射面側で励起された表面プラズモンポラリトンの伝播方向を変え、第1の界面16及び第2の界面18の出射面側で屈曲部P16・P18の近辺に集中させることができる。このように、屈曲部P16・P18の近辺に集中された表面プラズモンポラリトンは、微小なサイズで、かつ強い強度の表面プラズモンポラリトンとなる。
【0121】
このため、近接場光発生素子10の出射面から、微小なスポットサイズで、かつ強い強度の近接場光を出射することができる。このように、近接場光発生素子10によると、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へと変換することができる。
【0122】
また、近接場光発生素子10では、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっている(異なっている)。換言すると、第1の頂角θ1と、第2の頂角θ2とが異なっている。
【0123】
このため、第1の界面16及び第2の界面18を伝播していく表面プラズモンポラリトンを、屈曲部P16・P18からずれた位置に集中させることができる。
【0124】
これにより、第1の界面16及び第2の界面18のうち、最も界面間距離が近い屈曲部P16・P18の、熱による形状の経時変化を小さくすることができる。すなわち、近接場光発生素子10で発生する近接場光強度の経時変化を小さくすることができる。
【0125】
ここで、記録媒体に記録する記録マークサイズを小さくするには、磁界発生位置と近接場光発生位置をヘッドにおいて一致させるのではなく、記録媒体上で一致するための最適な距離としなければならない。すなわち、記録媒体に照射された近接場光で発生する熱分布と、媒体に照射された磁界を一致させることが重要である。
【0126】
例えば、図18を用いて説明した特許文献1に記載の金属膜95の構成によると、近接場光の発生位置と、磁界発生位置とを調整するには、磁気ポールの位置を調整するしかなく、微細な加工精度が必要とされ、現実的に困難である。
【0127】
また、図19を用いて説明した特許文献2の金属の散乱体92、磁気発生用コイル93の構成では、散乱体の頂点をコイルの中心から最適な距離だけ離して形成することになる。このとき、コイルの内側の幅は前記コイルに入射する光の波長以下であり、コイルの外径は前記コイルに入射する光のスポット径より大きいという制限の中、このような構成とするには、微細な加工精度が必要とされ、現実的に困難である。
【0128】
このように、特許文献1、2の方法では、媒体に照射された近接場光で発生する熱分布と、媒体に照射された磁界を一致させることは現実的ではない。
【0129】
また、特許文献3に開示された光アシスト磁気記録用ヘッドでは、主磁極の少なくとも一部が、三角柱の形状をした金属体である第1及び第2の近接場光発生部の間の領域を含むスポット領域内に位置しているので、双方の近接場光発生部の先端と主磁極を近接させ、高密度の記録を行っている。
【0130】
しかし、特許文献3の光アシスト磁気記録用ヘッドでも、特許文献1、2と同様に、第1及び第2の近接場光発生部と主磁極の位置を調整するしかなく、微細な加工精度が必要とされ、現実的に困難である。
【0131】
一方、近接場光発生素子10では、第1の界面16と、第2の界面18との対向する距離である界面間距離は、屈曲部P16・P18で最小となっており、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっている。
【0132】
このように、近接場光発生素子10によると、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっているので、第1の界面16及び第2の界面18を伝播していく表面プラズモンポラリトンを、屈曲部P16・P18からずれた位置に集中させることができる。これにより、近接場光発生位置を屈曲部P16・P18近傍で調整することができるので、近接場光発生位置と、金属体11で発生させる磁界発生位置との相対関係を調整することができる。すなわち、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率を調整することで、近接場光発生位置と、磁界発生位置との距離を短縮・調整することができる。
【0133】
このため、近接場光発生素子10によると、記録媒体に記録されるマークサイズを小さくすることができる。
【0134】
また、図20を用いて説明した非特許文献1に開示された構成では、十分な近接場光の強度を得るには、近接場光が発生するV字型の先端部分を鋭く尖ったV字型に加工する必要があり、近接場光発生素子の加工が困難である。V字型の先端部分に曲率が発生すると、発生した曲率の分だけ、誘電体を挟む界面間の距離が離れてしまうことと、曲率により表面プラズモンポラリトンが反射されてしまうため、十分な強度の近接場光を得ることができない。
【0135】
一方、近接場光発生素子10によると、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となるように、第1の界面16と、第2の界面18とに、それぞれ屈曲部P16、屈曲部P18が配されている。このため、上述した非特許文献1に記載のような、V字形状の溝の先端に表面プラズモンを集中させるために、先端を鋭く尖らせたV字形状の溝を形成する場合と比べて、屈曲部P16・P18を設けるための加工がし易い。
【0136】
また、近接場光発生素子10によると、第1の界面16と、第2の界面18とに屈曲部P16・P18が配されている。
【0137】
このため、例えば、上述した非特許文献1のV字型の内部が平面である近接場光発生素子と比べて、屈曲部P16・P18屈曲部に電場が集中しやすい構造となっている。
【0138】
さらに、屈曲部P16・P18の両側に光の透過部が存在するため、さらに強い強度を得ることができる。これは、金属体11中の自由電子が、屈曲部P16・P18の両側で入射光により表面プラズモンポラリトンとして励起され、屈曲部P16・P18に集中するとも言える。
【0139】
このため、上記近接場光発生素子によると、界面間距離が同じであっても、例えば、上述した非特許文献1のV字型の溝を備えた近接場光発生素子と比べて、強い強度の近接場光を得ることができる。なお、第1の界面16と、第2の界面18とのうち、少なくとも一方に屈曲部P16・P18が配されていれば、その屈曲部P16又は屈曲部P18に電場を集中させることができる。
【0140】
このように、近接場光発生素子10によると、微小で強度が強く、かつ、強度の経時変化が小さい近接場光を得ることができ、容易に加工できる近接場光発生素子を提供することができる。
【0141】
また、第2の頂角θ2は、第1の頂角θ1より小さい。このため、第2の領域14に強度中心が位置するように、近接場光発生素子10に対して入射光を入射させることで、表面プラズモンポラリトンを励起せず、入射光がそのまま透過することを防止することができる。このため、近接場光発生素子10によると、入射光の利用効率を向上することができる。
【0142】
さらに、第1の頂角θ1及び第2の頂角θ2は、何れも0度より大きく180度未満であり、さらに好ましくは、0度より大きく90度以下である。
【0143】
このため、第1の界面16及び第2の界面18のうち、界面間距離が入射光の波長以上となるとことで、入射光により表面プラズモンポラリトンが励起されず、入射光をそのまま透過させてしまう部分を小さく、かつ近接場光が発生する領域から離すことができる。よって、近接場光発生素子10では、得られる近接場光に対するバックグラウンドノイズをなくす、または影響を小さくすることができる。
【0144】
また、近接場光発生素子10では、屈曲部P16・P18は、それぞれ、第1の界面16と、第2の界面18とに配されており、第1の界面16と、第2の界面18とは、Y軸に対して対称な形状となっている。
【0145】
これにより、第1の界面16と、第2の界面18との間に作用する表面プラズモンポラリトンの電界成分が常に、一定方向となる。このため、第1の界面16及び第2の界面18のそれぞれを伝播する表面プラズモンポラリトンのロスが小さくなり、得られる近接場光の強度が強くなる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0146】
また、近接場光発生素子10に対して入射させる光は、直線偏光であり、当該直線偏光の偏光方向は、屈曲部P16・P18において、第1の界面16及び第2の界面18の界面間距離が最小となっている方向(X軸方向)の偏光方向を少なくとも含んでいればよい。
【0147】
これにより、第1の界面16及び第2の界面18を伝播させる表面プラズモンポラリトンの励起強度が大きくなり、得られる近接場光の強度が強くなる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0148】
また、上述した図18の金属膜95の開口96の形状を十字状にしていることにより、所望の一対の頂点の近辺で、光を遮る部分が存在することになる。このため、金属膜への入射光のうち、ほとんどが金属膜に反射されることになり、半導体レーザの利用効率が悪い。
【0149】
同様に、特許文献3の方法では、入射光が照射される第1及び第2の近接場光発生部の間の領域を含むスポット領域内に主磁極が存在するため、入射光のほとんどが主磁極で反射・散乱され、光の利用効率が悪い。
【0150】
一方、近接場光発生素子10では、第1の界面16と第2の界面18とが対向する領域には、誘電体12のみが配されており、誘電体12は、近接場光発生素子10に対して入射させる光を透過する誘電体材料からなる。
【0151】
上記構成により、第1の界面16と、第2の界面18とが対向する領域には、近接場光発生素子10に対して入射させる光を透過する誘電体材料だけが存在することになる。このように、第1の界面16及び第2の界面18の間に入射させた光を遮光する部材が存在しないので、第1の界面16及び第2の界面18の間に入射させた光を効率よく、近接場光へと変換することができる。
【0152】
このような、近接場光発生素子10に対して入射させる光を透過する誘電体材料としては上述したように、空気、酸化珪素、ガラス類、酸化アルミ、酸化チタンなどの酸化物、窒化アルミなどの窒化物などを挙げることができる。
【0153】
このようにすることで、第1の界面16及び第2の界面18の間に入射させた光を遮光する部材が存在しないので、第1の界面16及び第2の界面18の間に入射させた光から効率よく表面プラズモンポラリトンを励起することができ、近接場光への変換効率を向上させることができる。
【0154】
(近接場光発生素子の変形例1)
次に、図4を用いて、近接場光発生素子10の変形例である近接場光発生素子20の構成について説明する。
【0155】
図1、2で示した近接場光発生素子10では、端部16dと、端部18dとが、別の界面である第3の領域15の誘電体12との界面によって接続された構成になっていた。しかし、図4で示す近接場光発生素子20のように、端部26dと、端部28dとが、接続されていなくてもよい。
【0156】
図4は、本実施の形態に係る近接場光発生素子の第1の変形例を表す断面図である。
【0157】
図4に示す近接場光発生素子20は、近接場光発生素子10の金属体11のうち、第3の領域15を貫通することで、Y軸を対称軸として対称な形状の一対の金属体21a・21bに分離した構成である。
【0158】
近接場光発生素子20は、金属材料からなる金属体21と、誘電材料からなる誘電体22とを備えている。また、金属体21は、誘電体22を挟んで互いに対称となるように配置されている金属体21aと、金属体21bとからなる。
【0159】
第1の界面26は、第1の界面16の第1の界面16a・16b、端部16c・16dと同様の第1の界面26a・26b、端部26c・26dを備えている。第2の界面28は、第2の界面18の第2の界面18a・18b、端部18c・18dと同様の第2の界面28a・28b、端部28c・28dを備えている。
【0160】
また、第1の領域23及び第2の領域24は、第1の領域13及び第2の領域14と同様に、誘電体22を挟む金属体21a・21bの領域及び金属体21a・21bに挟まれている誘電体22を含む領域である。第1の領域23と、第2の領域24とは、屈曲部P26及び屈曲部P28によって区別(区画)される領域である。
【0161】
第1の界面26と第2の界面28との界面間距離は、短い方から順に、屈曲部P26・P28間、端部26d・28d間、及び端部26c・28c間となっている。
【0162】
このように、近接場光発生素子20は、第1の界面26と、第2の界面28と界面間距離は、屈曲部P26・P28で最小となっており、第1の界面26と、第2の界面28との界面間距離の変化率が、屈曲部P26・P28を境に非対称となっている。
【0163】
さらに、近接場光発生素子20では、屈曲部P26・P28から端部26d・28dまでの距離が、屈曲部P26・P28から端部26c・28cまでの距離と比べて長い。このように、第1の界面26a・第2の界面28aより、近接場光発生素子20に対する入射光の強度中心である位置Y2を挟む第1の界面26b・第2の界面18bの面積を広くすることで、より、より強い表面プラズモンポラリトンの励起強度を得ることができる。このため、近接場光発生素子20では、近接場光発生素子10と比べ、さらに、強度が強い近接場光を得ることができる。
【0164】
(近接場光について)
次に、本実施形態の近接場光発生素子10および20で生成される近接場光について、FDTD法(finite-difference time-domain method)を用いたシミュレーション結果である図5〜8、及び図2、4を参照して説明する。
【0165】
図5は、図2の近接場光発生素子10の第1の頂角θ1を、第2の頂角θ2より大きくした場合に出射面で得られる表面プラズモンポラリトンの強度分布を表す図である。
【0166】
図6は、図4の近接場光発生素子20の第1の頂角θ1を、第2の頂角θ2より大きくした場合に出射面で得られる表面プラズモンポラリトンの強度分布を表す図である。
【0167】
図7は、図4の近接場光発生素子20の第1の頂角θ1と、第2の頂角θ2とを同じにした近接場光発生素子220の出射面で得られる表面プラズモンポラリトンの強度分布を表す図である。
【0168】
図5に示すシミュレーションでは、図2に示す近接場光発生素子10において膜厚を500nm、第1の頂角θ1を36.9°、第2の頂角θ2を20.8°とした。
【0169】
図6に示すシミュレーションでは、図4に示す近接場光発生素子20において、膜厚を500nm、第1の頂角θ1を36.9°、第2の頂角θ2を7.6°とした。
【0170】
図7に示すシミュレーションでは、図4に示す近接場光発生素子20において、膜厚を500nm、第1の頂角θ1および第2の頂角θ2の両方を36.9°とした。
【0171】
また、何れも、Y0とY2との距離を300nmとした。
【0172】
図8は、図5〜7の結果において、図2、4のY軸上の強度分布をグラフ化したものである。
【0173】
いずれのシミュレーションでも、入射光は、波長780nmで、放射角は1/eとな
る角度がX方向に10°、Y方向に20°であるガウス分布とし、入射面の位置Y2(図2等参照)を入射光の強度中心に設定してシミュレーションした。入射光の偏光方向はX軸方向としている。また、Y0の位置における界面間距離は、すべて50nmとした。
【0174】
図8の結果より、図6に示した第2の領域24が広い近接場光発生素子20の方が、図5に示した第2の領域14が狭い近接場光発生素子10と比べて、位置Y0近辺での表面プラズモンポラリトンの最高強度が大きい。これは、近接場光発生素子10より、近接場光発生素子20の方が、照射された光の利用できる量が多いためと考えられる。
【0175】
近接場光発生素子220では、第1の頂角θ1と、第2の頂角θ2とを同じ値とした。このため、図8に示すように、近接場光発生素子220では、表面プラズモンポラリトンの最高強度は、位置Y0に位置している。このため、近接場光発生素子220では、位置Y0に位置し、界面間距離が最も近い屈曲部の経時劣化を早めることになる。
【0176】
一方、近接場光発生素子10・20では、第1の頂角θ1と、第2の頂角θ2とを異なる値とすることにより、表面プラズモンポラリトンの最高強度を、Y0の位置からずらすことが可能となっていることがわかる。このため、近接場光発生素子10・20では、界面間距離が最も近い屈曲部P16・P18、P26・P28の経時劣化を抑制することができる。
【0177】
なお、図8に示すように、近接場光発生素子10、近接場光発生素子20、及び近接場光発生素子220のうち、表面プラズモンポラリトンの最高強度のみを比較すると、近接場光発生素子10及び近接場光発生素子20で得られた表面プラズモンポラリトンの最高強度は、近接場光発生素子220で得られた表面プラズモンポラリトンの最高強度と比べて、若干、値が低い。
【0178】
しかし、これら近接場光発生素子10及び近接場光発生素子20で得られた表面プラズモンポラリトンの最高強度は、充分に実用的な値が得られている。加えて、近接場光発生素子10及び近接場光発生素子20では、上述したように、表面プラズモンポラリトンの最高強度を位置Y0からずらすことが可能であり、屈曲部の劣化の抑止効果も得ることができる。
【0179】
このため、近接場光発生素子10及び近接場光発生素子20によると、充分に強度が高く、かつ信頼性が高い近接場光を得ることができる。このため、近接場光発生素子10及び近接場光発生素子20は、近接場光発生素子220と比べて、より実用的である。
【0180】
また、近接場光発生素子10・20で発生した表面プラズモンポラリトンの最高強度位置がずれる方向は、第1の頂角θ1と第2の頂角θ2とのうち、なす角の小さい頂角が位置する方向となっている。上述したように、近接場光発生素子10・20の何れも第1の頂角θ1と比べ、第2の頂角θ2の方が小さい。
【0181】
このため、近接場光発生素子10・20で発生した表面プラズモンポラリトンの最高強度は、何れも、位置Y0から、第2の頂角θ2が位置する方向であるマイナスY方向へずれていることがわかる。なお、第1の頂角θ1・第2の頂角θ2が小さくなると、Y方向への強度分布の広がりが大きくなっている。
【0182】
このように、第1の頂角θ1と、第2の頂角θ2との角度を制御することで、表面プラズモンポラリトンの最高強度の位置を制御することができることがわかる。
【0183】
よって、本実施形態の近接場光発生素子10のように、金属体11の誘電体12との第1の界面16・第2の界面18を、第1の界面16a・第2の界面18aと、第1の界面16a・第2の界面18aに対して屈曲して配される第1の界面16b・第2の界面18bとからなる構成にすることで、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0184】
また、近接場光発生素子10では、第1の界面16及び第2の界面18を伝播する表面プラズモンポラリトンを、屈曲部P16・P18近傍に集中させることができるので、膜厚(図1のZ方向の距離)が薄くても十分に強度が高い近接場光を得ることができる。このように、近接場光発生素子10によると、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換でき、かつ、作成が容易な程度に膜厚を十分薄くすることができる。
【0185】
また、第1の界面16a・第2の界面18aの界面間距離の変化率に対して、第1の界面16b・第2の界面18bの界面間距離の変化率が異なることによって、光の強度分布を、屈曲部からずらすことが可能となり、光強度により金属体11の屈曲部の形状が経時変化し、ひいては発生する近接場光強度が経時変化することを防ぐことができる。
【0186】
また、本実施の形態では、Z軸方向に形状の変化がないものを示したが、本願の特徴を維持した状態で、形状変化があってもよい。
【0187】
例えば、図5〜図8の例では、近接場光発生素子10・20の厚さ(Z方向の距離)が500nmの場合のシミュレーション結果を示したが、特許文献2および特許文献3のような近接場光発生素子として用いる場合でも、θ1、θ2といった構造パラメータを調整することによって、他の膜厚の場合でも、近接場光発生素子10・20の出射面で強い強度が得られる。
【0188】
従って、近接場光発生素子10・20の長さ(Z方向の距離)に依らず、金属体11の誘電体12との第1の界面16・第2の界面18は、第1の界面16a・第2の界面18aと、第1の界面16a・第2の界面18aと屈曲して配される第1の界面16b・第2の界面18bとが配された構成が好ましいことがわかる。
【0189】
(近接場光発生素子の変形例2について)
次に、図9用い、近接場光発生素子10および20の変形例2について説明する。近接場光発生素子10は、図9に示す近接場光発生素子30などの構成であってもよい。
【0190】
図9は、第1の界面と第2の界面とがなだらかな曲面である近接場光発生素子30の構成を表す図である。
【0191】
図4で示した近接場光発生素子20の第1の界面26と、第2の界面28とは、図9の第1の界面36と、第2の界面38とに示すように、湾曲した形状であってもよい。
【0192】
図9に示すように、近接場光発生素子30の金属体31の誘電体32との界面には、第1の界面36と、第2の界面38とが配されている。
【0193】
第1の界面36には、互いに屈曲して配されている第1の界面36aと、第1の界面36bとが配されている。第1の界面36aと第1の界面36bとの境界部分が屈曲部P36である。
【0194】
第2の界面38には、互いに屈曲して配されている第2の界面38aと、第2の界面38bとが配されている。第2の界面38aと第2の界面38bとの境界部分が屈曲部P38である。
【0195】
第1の界面36と、第2の界面38との界面間距離は、屈曲部P36・P38間で最小となっている。位置Y0は、屈曲部P36・P38のY座標の位置である。
【0196】
第1の領域33と、第2の領域34とは、誘電体32を挟む金属体31の領域及び金属体31に挟まれている誘電体32を含む領域である。第1の領域33と、第2の領域34とは、屈曲部P36及び屈曲部P38によって区別(区画)される領域である。
【0197】
第1の界面36a・36b及び第2の界面38a・38bは、なだらかな曲面となっている。他の構成は近接場光発生素子20と同様である。
【0198】
第1の界面36のうち、第1の界面36aは、第1の領域33に含まれ、第1の界面36bは、第2の領域34に含まれている。また、第2の界面38のうち、第2の界面38aは、第1の領域33に含まれ、第2の界面38bは、第2の領域34に含まれている。
【0199】
このように、第1の界面36a及び第2の界面38aと、第1の界面36b及び第2の界面38bとを曲面とする(湾曲させる)ことにより、第1の界面16a及び第2の界面18aと、第1の界面16b及び第2の界面18bとのように平面とした場合と比較して、端部36d・端部38d間から、屈曲部P36・屈曲部P38間にかけて変化する界面間距離の変化率、及び屈曲部P36・屈曲部P38間から端部36c・端部38c間にかけて変化する界面間距離の変化率を大きくすることができる。
【0200】
このため、第1の界面36a及び第2の界面38aと、第1の界面36b及び第2の界面38bとを伝播する表面プラズモンポラリトンを、より、屈曲部P36・屈曲部P38へと集光することができる。このため、近接場光発生素子20の出射面で得られる近接場光の強度を強くすることができる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へと変換することができる。
【0201】
次に、図10(a)(b)を用いて、近接場光発生素子30の界面間距離の変化率と、屈曲部P36・P38との関係を、近接場光発生素子30のYの位置における界面間距離の微分値によって説明する。
【0202】
図10(a)は近接場光発生素子30のY軸方向に対する界面間距離を表す図であり、図10(b)は図10(a)の界面間距離の変化率の様子を表す図である。
【0203】
図10(a)(b)では、横軸は図9のY軸を表す。図10(a)の縦軸は、Yの位置における第1の界面36と、第2の界面38との界面間距離を表している。また、図10(b)の縦軸は、Yの位置における図10(a)の界面間距離の変化率を表している。つまり、図10(b)では図10(a)の界面間距離の微分値を表している。
【0204】
上述したように、近接場光発生素子30では、図9に示すように、第1の界面36a・第2の界面38aと、第1の界面36b・第2の界面38bとは、湾曲している。
【0205】
このため、図10(a)(b)に示すように位置Y1からY0にかけて、第1の界面36aと、第2の界面38aとの界面間距離の変化率は一定ではなく、位置Y1からY0に近づくにつれ次第に変化率が急になるように界面間距離が小さくなっていく。
【0206】
そして、屈曲部P36・P38が形成されている位置である位置Y0で界面間距離が最小となる。そして、位置Y0を境にして界面間距離の変化率の符号(プラスマイナス)が変化する。そして、位置Y0からY2にかけて、第1の界面16bと、第2の界面18bとの界面間距離の変化率は一定ではなく、位置Y0からY2に近づくにつれ次第に変化率が緩やかになるように界面間距離が大きくなっていく。
【0207】
このように、第1の界面36と、第2の界面38と界面間距離は、屈曲部P36・P38で最小となっており、第1の界面36と、第2の界面38との界面間距離の変化率が、屈曲部P36・P38を境に非対称となっている。
【0208】
一方、図7で示した近接場光発生素子220の界面間距離の変化率と、屈曲部との関係は、図11(a)(b)のようになる。
【0209】
図11(a)は近接場光発生素子220のY軸方向に対する界面間距離を表す図であり、図11(b)は図11(a)の界面間距離の変化率の様子を表す図である。
【0210】
図11(a)(b)に示すように、近接場光発生素子220でも、位置Y1からY0に近づくにつれ次第に変化率が急になるように界面間距離が小さくなっている。そして、位置Y0で界面間距離が最小となり、位置Y0を境にして界面間距離の変化率の符号(プラスマイナス)が変化する。そして、位置Y0からY2に近づくにつれ次第に変化率が緩やかになるように界面間距離が大きくなっていく。
【0211】
しかし、図11(a)(b)に示すように、近接場光発生素子220では、上述した近接場光発生素子30とは異なり、第1の領域と第2の領域における界面間距離は、位置YY0(すなわち屈曲部)を軸とした線対称となっており、また、界面間距離の変化率は、位置Y0(すなわち屈曲部)を中心とした点対称となっている。
【0212】
このようにして、屈曲部を境として界面間距離の変化率が異なっているか(非対称性であるか)を判断することができる。
【0213】
このように、第1の界面36・第2の界面38のように、屈曲部P36・P38近辺が曲率を持っていてもよく、屈曲部P36・P38近辺が表面プラズモンポラリトンの波長より十分に小さければ、屈曲部P36・P38も近接場光発生素子10の屈曲部P16・P18と同様に、第1の界面36a・第2の界面38aと、第1の界面36b・第2の界面38bとの境界として認識される。
【0214】
第1の界面36a・第2の界面38aは、端部36c・38cから、屈曲部P36・P38に向かうにつれて、次第に曲率が大きくなるように湾曲している。また、第1の界面36b・第2の界面38bは、屈曲部P36・P38から端部36d・38dに向かうにつれ、次第に曲率が小さくなるように湾曲している。
【0215】
そして、第1の界面36と、第2の界面38との界面間距離の変化率が、屈曲部P36・P38を境に異なっている。すなわち、第1の界面36及び第2の界面38では、第1の界面36a・第2の界面38aと比べて、第1の界面36b・第2の界面38bの方が曲率が小さい。
【0216】
このように、第1の界面36a及び第2の界面38aと、第1の界面36b及び第2の界面38bとの湾曲に差があることにより、近接場光発生素子10と同様に、近接場光の発生する位置を屈曲部P36・屈曲部P38からずらすことができる。
【0217】
(近接場光発生素子の変形例3について)
次に、図12を用い、近接場光発生素子10および20の変形例3について説明する。近接場光発生素子10は、図12に示す近接場光発生素子40などの構成であってもよい。
【0218】
図12は、金属体の誘電体との界面のうち、一方の界面に屈曲部が配されている近接場光発生素子40の構成を表す図である。
【0219】
近接場光発生素子40は、近接場光発生素子30の金属体31の第1の界面36と、第2の界面38とのうち、第1の界面36を1つの平面とした構成である。他の構成は、近接場光発生素子30と同様である。
【0220】
つまり、金属体41の第1の界面46は、屈曲部が配されておらず、1つの平面からなる。そして、金属体41の第2の界面48には、上述した金属体31の第2の界面38a・38b、屈曲部P38と対応する第2の界面48a・48b、屈曲部P48が配されている。
【0221】
第1の界面46と、第2の界面48との界面間距離は、屈曲部P48での位置と、屈曲部P48とX軸に沿って対向する位置と、の間で最小となっている。位置Y0は、屈曲部P48及び屈曲部P48とX軸に沿って対向する位置のY座標の位置である。
【0222】
第1の領域43と、第2の領域44とは、屈曲部P48によって区別(区画)される領域である。
【0223】
第2の界面48のうち、第2の界面48aは、第1の領域43に含まれ、第2の界面48bは、第2の領域44に含まれている。
【0224】
また、第2の界面48a・第2の界面48bのそれぞれは、近接場光発生素子10のように平面であってもよい。
【0225】
ここで、第2の界面48a・48bが曲面の場合、曲面を伝播する表面プラズモンポラリトンは、常に伝播方向を変えなければならなくなる。曲面の曲率が緩やかであれば問題ないが、曲率が急である場合は、曲面を伝播する表面プラズモンポラリトンに散乱・反射などが起こり、ロスとなってしまう。
【0226】
また、近接場光発生素子40のように、金属体41の誘電体42との一方の界面である第2の界面48のみが屈曲することにより、第1の界面46と、第2の界面48とが非対称である場合、屈曲部P48の位置を境に、第1の界面46と、第2の界面48との間に作用している電界ベクトルの向きが変わることになる。これにより、第1の界面46・第2の界面48を伝播する表面プラズモンポラリトンにロスが生じることになる。
【0227】
このため、近接場光発生素子20のように、第1の界面46と、第2の界面48とが対象な形状となっており、第1の界面26a・26bと、第2の界面28a・28bとが平面であり、互いに傾いて配されている構成が、最も界面を伝播する表面プラズモンポラリトンのロスの発生を防止することができる。
【0228】
近接場光発生素子40の界面間距離の変化率と、屈曲部P48との関係は、図10(a)(b)を用いて説明した近接場光発生素子30と同様である。
【0229】
すなわち、第1の界面と第2の界面とのうち、少なくとも一方が曲面の場合は、図10(a)(b)に示したような、界面間距離、界面間距離の変化率と同様である。
【0230】
近接場光発生素子40では、第2の界面48aと、第2の界面48bとは、湾曲している。
【0231】
このため、位置Y1からY0にかけて、第1の界面46aと、第2の界面48aとの界面間距離の変化率は一定ではなく、位置Y1からY0に近づくにつれ次第に変化率が急になるように界面間距離が小さくなっていく。
【0232】
そして、屈曲部P48が形成されている位置である位置Y0で界面間距離が最小となる。そして、位置Y0を境にして界面間距離の変化率の符号(プラスマイナス)が変化する。そして、位置Y0からY2にかけて、第1の界面46bと、第2の界面48bとの界面間距離の変化率は一定ではなく、位置Y0からY2に近づくにつれ次第に変化率が緩やかになるように界面間距離が大きくなっていく。
【0233】
このように、第1の界面46と、第2の界面48と界面間距離は、屈曲部P48で最小となっており、第1の界面46と、第2の界面48との界面間距離の変化率が、屈曲部P48を境に非対称となっている。
【0234】
また、第2の界面48aは、端部48cから、屈曲部P48に向かうにつれて、次第に曲率が大きくなるように湾曲している。また、第2の界面48bは、屈曲部P48から端部48dに向かうにつれ、次第に曲率が小さくなるように湾曲している。
【0235】
そして、第1の界面46と、第2の界面48との界面間距離の変化率が、屈曲部P48を境に異なっている。すなわち、第1の界面46及び第2の界面48では、第2の界面48aと比べて、第2の界面48bの方が曲率が小さい。
【0236】
このように、第2の界面48aと、第2の界面48bとの湾曲に差があることにより、近接場光発生素子10と同様に、近接場光の発生する位置を屈曲部P48からずらすことができる。
【0237】
(近接場光発生素子の製造方法)
次に、図13の(a)〜(d)を用いて、本実施の形態に係る近接場光発生素子10の製造方法について説明する。図13の(a)はフォトレジストを塗布した金属体を表す図であり、(b)は(a)のフォトレジストにマスク露光を行なっている様子を表す図であり、(c)は(b)のフォトレジストをパターニングした様子を表す図であり、(d)は(c)のフォトレジストを取り除いた金属体の様子を表す図である。
【0238】
なお、図13の(a)〜(d)は、−Y方向から近接場光発生素子10を見た図である。
【0239】
まず、図13の(a)に示すように、金属体11となる金属材11aの一面に、フォトレジスト6をスピンコーター等により塗布する。図13の(b)に示すように、金属体11の断面形状(X‐Y平面に平行な面の断面形状)に対応したマスク7を用いて、金属材11aに塗布したフォトレジスト6を露光および現像すると、フォトレジスト6はマスク7に対応する形状にパターニングされる。
【0240】
図13の(c)に示すように、パターニングされたフォトレジスト6をマスクとして、金属材11aをエッチングすると、フォトレジスト6に対応した形状に金属材11aがパターングされる。図13の(d)に示すように、フォトレジスト6を取り除くことにより、金属体11が形成される。誘電体12が空気の場合は、これにより近接場光発生素子10は完成する。
【0241】
また、誘電体12に空気以外の材料を用いる場合は、図13の(c)に示すパターニングされたフォトレジスト6上から、誘電材料をスパッタまたは蒸着することにより成膜した後、フォトレジスト6と、不要な部分の誘電材料を取り除くことにより、近接場光発生素子10が形成される。
【0242】
また、上述と同様の方法で、誘電材料の一部をエッチングすることで、先に誘電体12を形成してから、金属体11を形成することにより近接場光発生素子10を形成してもよい。また、金属体11または誘電体12を基板に製膜したのち、上述の工程を行ってもよい。
【0243】
なお、上述の工程は、Z方向から行ってもよいし、Y方向から異方性エッチングを用いて近接場光発生素子10を製造してもよい。
【0244】
エッチングには、ウェットエッチングプロセス、およびイオンエッチングや反応性イオンエッチング(RIE)等のドライエッチングプロセスが用いられる。また、露光には主にアライナーもしくはステッパーが使用される。さらに、エッチングの代わりにFIB(Focused ion beam)や電子線露光や、ナノインプリントによるプロセスを用いてもよい。
【0245】
(記録ヘッド)
次に、図14、図15を用いて、近接場光発生素子10を備える記録ヘッドについて説明する。
【0246】
図14は、近接場光発生素子10を備える記録ヘッド50の構成を表す斜視図である。
【0247】
記録ヘッド50は、少なくとも近接場光発生素子10と光源51とスライダ52とからなっている。
【0248】
光源51は、小型化のために半導体レーザが好ましい。波長は近接場光発生素子10にて表面プラズモンポラリトンを励起できるように選ぶため、主に金属体11の金属膜材料との組み合わせで選択するのが好ましい。
【0249】
記録ヘッド50では、光源51は、近接場光発生素子10に対して、直線偏光の光を入射させる。
【0250】
これにより、光源51から出射される直線偏光を近接場光発生素子10の入射光として、近接場光発生素子10の第1の界面16・第2の界面18で表面プラズモンポラリトンを伝播させ、強い強度の近接場光を得ることができる。このため、例えば、近接場光を媒体に対して照射する場合、S/N比が高いマークを記録することができる記録ヘッド50を構成することができる。
【0251】
また、光源51は、近接場光発生素子10の屈曲部P16・P18を含んで、近接場光発生素子10に対して直線偏光の光を入射させ、上記直線偏光の偏光方向は、第1の界面16及び第2の界面18に対して垂直な断面(XY平面)における、第1の界面16及び第2の界面18からの距離が等しい点を結ぶ直線(図2に示すY軸)に対して垂直な方向(X軸方向)の偏光方向である。
【0252】
これにより、第1の界面16及び第2の界面18を伝播する表面プラズモンポラリトンの励起強度が大きくなり、得られる近接場光の強度が強くなる。すなわち、入射光を効率よく、スポットサイズの小さな近接場光へ変換できる。
【0253】
なお、他の偏光方向を含んでいてもよいが、光源51は、少なくともX軸方向の偏光成分が含まれていればよい。これはすなわち、屈曲部において界面間距離が最小となっている方向である。
【0254】
さらに、近接場光発生素子10が、例えば図12の近接場光発生素子40のように、Y軸に対して非対称である場合、光源51の偏光方向は、第1の界面46に対して垂直方向としてもよい。
【0255】
スライダ52の材料は、AlTiCが好ましいが、光源51を構成する材料の1つでもよい。スライダ52の一面には、媒体上を安定に浮上するために空気流および空気圧を制御するための凹凸(ABS)が形成されている。
【0256】
近接場光発生素子10と光源51とスライダ52とは、図14に示すように、小型化のために一体化されていることが好ましい。これにより、記録ヘッド50を小型化することができると共に、余計な光学系が必要なく、光軸のズレなどの経時変化が起こり難い。また、記録ヘッド50を製造するためのコストを抑えることができる。
【0257】
また、光源51の出射面に近接場光発生素子10が形成されていることが好ましい。
【0258】
すなわち、記録ヘッド50は、スライダ52の一面(側面)に光源51が配されており、その光源51の出射面に近接場光発生素子10が配されている。近接場光発生素子10の出射面は、スライダ52に配されているABSを含む同一平面上か、それより媒体側に出ていることが好ましい。これにより、近接場光発生素子10で発生させる近接場光を、十分短い距離で媒体に照射することができる。
【0259】
光源51と近接場光発生素子10との間には、屈折率制御や密着性向上、光源51のショート防止などのため、別の膜を設けてもよい。また、近接場光発生素子10の出射面に、保護膜を設けてもよい。
【0260】
また、光源51と近接場光発生素子10は一体化されていなくてもよく、間に別の近接場光発生素子やレンズ、プリズムなどの光学系などを設けてもよい。この場合、光源51は、スライダ52のうち、近接場光発生素子10が形成される面とは別の面に形成することができる。
【0261】
記録ヘッド50は、媒体のトラック方向に対して図1などで示した近接場光発生素子10のY軸方向が平行であっても、垂直であってもよい。
【0262】
なお、近接場光発生素子10は、近接場光のみを発生させるものとして説明したが、磁界を発生させることもできる。この近接場光発生素子10に電流を流すと、発生する磁界は、第2の領域14における誘電体12に集中するため、近接場光とほぼ同じ位置に磁界を発生させることができる。よって、高効率で作成容易な光アシスト磁気記録ヘッドとなる。
【0263】
以下、近接場光発生素子10の金属体11に電流を流し、磁界を発生させる原理について、図16を用いて説明する。近接場光発生素子10に電流Iを流すと、右ネジの法則により、図16の矢印のように磁界Hは金属体11のくびれ部分(金属体11の第2の領域14及び第3の領域15の部分)に集中する。よって、本願の近接場光発生素子10の場合、Y0−Y2間に磁界Hが集中する。なお、具体的な磁界強度の中心位置は、屈曲部P16・P18を境とした界面間距離の変化率に依存する。
【0264】
このように、近接場光発生素子10によると、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっている。このため、第1の界面16及び第2の界面18を伝播していく表面プラズモンポラリトンを、屈曲部P16・P18からずれた位置に集中させることができる。すなわち、近接場光の発生する位置を屈曲部P16・P18近傍で調整できるため、磁界発生位置と近接場光発生位置の相対関係を調整することができる。
【0265】
これは、媒体に近接場光が照射されてから磁界がかかるまでの時間を変えることになり、媒体に記録されるマークサイズを小さくするための最適化が可能であることを意味する。
【0266】
このように、記録ヘッド56では、磁界発生位置と近接場光発生位置とを、記録ヘッド56において一致させるのではなく、媒体上で一致するための最適な距離に効率よく調整することができる。すなわち、記録ヘッド56によると、入射光を効率よく、スポットサイズの小さなマークを記録することができる。
【0267】
加えて、記録ヘッド56によると、近接場光強度の経時変化を小さくすることができるとともに、また、屈曲部近辺で近接場光を発生させ、かつ入射光がそのまま透過しない構造でありながら、発生する近接場光の位置を調整することができる。
【0268】
また、通常、スライダ52は媒体に対して傾いて浮上する。近接場光発生素子10を備える記録ヘッド56によると、近接場光発生素子10は、屈曲部P16・P18の近傍で発生する近接場光の発生位置を調整することができるので、近接場光発生位置を媒体に近づけることができる。
【0269】
媒体上で一致させるための磁界発生位置と近接場光発生位置との一例としては、例えば特許文献4や非特許文献4に記載されており、光をパルス照射する場合、光照射位置が磁界より0nm〜45nm媒体回転方向に離れているのが好ましい。ただし、光を連続照射する場合は、さらに光照射位置と磁界発生位置とを長くする必要がある。
【0270】
なお、媒体上で一致させるための近接場光発生位置及び磁界発生位置との距離と、近接場光発生素子10の出射面及び媒体面との距離等は、媒体の構成や記録密度・線速度などにも依存し、適宜、最適となるように調整すればよい。
【0271】
さらに、記録ヘッド56では、近接場光発生素子10の金属体11は、スライダ52に近い側から順に、第1の領域13、第2の領域14、及び第3の領域15となるように配されている。つまり、近接場光発生素子10は、金属体11の第3の領域15より、屈曲部P16・P18の方が、スライダ52に近くなるように配されている。
【0272】
これにより、媒体に磁気記録を行う際、位置Y1‐Y0‐Y2の順に、記録媒体67を通過することになる。つまり、媒体に、屈曲部P16・P18近傍を先に透過させることで近接場光を先に媒体に照射し、後から金属体11の第3の領域15を透過させることで、近接場光が照射された箇所に、磁界を照射することができる。
【0273】
このため、記録ヘッド56によると、近接場光が照射されることによる媒体上の熱分布が、ピーク値を持つときから減衰し切るまでに磁界をかけることができる。
【0274】
このため、強い強度での磁気記録を行うことができる。
【0275】
上記に限らず、媒体に先に磁界を照射し、後から近接場光を照射しても、磁界と近接場光とによる熱の強度分布が媒体上で重なっていれば、磁気記録を行うことはできる。
【0276】
また、記録ヘッド56によると近接場光発生素子10の出射面に対して磁気ポール53が並置されており、第1の界面16と第2の界面18との間には空気が配されているだけである。このため、光源51から出射された光は、磁気ポール53で反射されることなく、近接場光発生素子10の入射面に入射するので、光の利用効率が高い。
【0277】
図15は、別の記録ヘッド56の構成を表す図である。
【0278】
記録ヘッド56は、磁界を発生させることで、媒体に磁気記録を行う光アシスト磁気記録ヘッドである。以下、特に図14において説明した内容と異なる点を説明する。
【0279】
記録ヘッド56では、光源51が、スライダ52のABSが配されている面とは反対側の面から突出して配されており、この突出している部分の光源51の端面に、ミラー55が形成されている。なお、記録ヘッド56は、ミラー55を利用せずに、図14のようにスライダ52の側面に光源51を設置してなる構成で実現されてもよい。
【0280】
記録ヘッド56では、スライダ52の側面に再生素子54が配され、さらに、その再生素子54の側面であって、スライダ52と接する側とは反対側の側面に近接場光発生素子10が配されている。そして、近接場光発生素子10の再生素子54が配されている側とは逆側の側面に磁気ポール53が配されている。つまり、スライダ52が配されている側から順に、再生素子54、近接場光発生素子10、磁気ポール53が配されている。
【0281】
本記録ヘッド56では、光源51から出射された光は、ミラー55により伝播方向を変え、近接場光発生素子10の入射面へと入射する。
【0282】
磁気ポール53は、例えば、CoFe合金やFeNi合金といった軟磁性体からなり、コイルが巻かれ、コイルに電流を流すことで、発生させる磁界の向きを制御することができる。コイルを巻く場合には、コイルと近接場光発生素子10が導通しないように、磁気ポール53と近接場光発生素子10の間に絶縁層を設けられる。
【0283】
再生素子54は、周囲の磁界強度を検出するものであり、公知の、例えばGMR素子やTMR素子を利用すればよい。
【0284】
ミラー55は、光源51から出射された光を反射すればよく、誘電体材料のみからなっていてもよく、また、反射面に金属膜を形成しておいてもよい。
【0285】
記録ヘッド56の構成によると、磁気ポール53から磁界を発生させることで、近接場光発生素子10から出射される近接場光とほぼ同じ位置に磁界を発生させることができる。
【0286】
すなわち、記録ヘッド56によると、界面間距離が最小となる屈曲部P16・P18間の近接場光発生素子10の出射面の近傍に近接場光を発生させると共に、磁気ポール53から磁界を発生させることができるので、近接場光発生素子10の出射面側に、例えば媒体などを配することで、当該媒体に対して磁気記録を行うことができる。
【0287】
さらに、記録ヘッド56では、近接場光発生素子10の金属体11は、スライダ52に近い側から順に、第1の領域13、第2の領域14、及び第3の領域15となるように配されている。つまり、近接場光発生素子10は、金属体11の第3の領域15より、屈曲部P16・P18の方が、スライダ52に近くなるように配されている。すなわち、記録媒体67に磁気記録を行う際、位置Y1‐Y0‐Y2の順に、さらにこの後磁気ポール53が、記録媒体67を通過することになる。
【0288】
媒体に対して、屈曲部P16・P18近傍を磁気ポール53よりも先に通過させることで、まず近接場光を媒体に照射し、その後磁気ポール53を通過させることで、近接場光が照射された箇所に磁界を照射することができる。
【0289】
このため、記録ヘッド56によると、近接場光が照射されることによる媒体上の熱分布が、ピーク値を持つときから減衰し切るまでに磁界をかけることができる。
【0290】
近接場光発生素子10によると、第1の界面16と、第2の界面18との界面間距離の変化率が、屈曲部P16・P18を境に非対称となっている。このため、第1の界面16及び第2の界面18を伝播していく表面プラズモンポラリトンを、屈曲部P16・P18からずれた位置に集中させることができる。すなわち、近接場光の発生する位置を屈曲部P16・P18近傍で調整できるため、近接場光強度の経時変化を小さくすることができるとともに、磁界発生位置と近接場光発生位置の相対関係を調整することができる。特に、近接場光発生素子10の第1の頂角θ1を、第2の頂角θ2より大きくし、近接場光発生位置を第3の領域15側にずらすことにより、近接場光発生位置を磁気ポール53に近づけることができる。
【0291】
磁界発生位置と近接場光発生位置との相対関係を調整することは、媒体に近接場光が照射されてから磁界がかかるまでの時間を変えることになり、媒体に記録されるマークサイズを小さくするための最適化が可能であることを意味する。
【0292】
すなわち、記録ヘッド56では、磁界発生位置と近接場光発生位置とを、記録ヘッド56において一致させるのではなく、磁界発生位置と近接場光により発生する熱の分布とを媒体上で一致するための最適な距離に調整することができる。
【0293】
媒体上で一致させるための磁界発生位置と近接場光発生位置との一例としては、例えば特許文献4や非特許文献4に記載されており、光をパルス照射する場合、光照射位置が磁界より0nm〜45nm媒体回転方向に離れているのが好ましい。ただし、光を連続照射する場合は、さらに光照射位置と磁界発生位置とを長くする必要がある。
【0294】
なお、媒体上で一致させるための近接場光発生位置及び磁界発生位置との距離と、近接場光発生素子10の出射面及び媒体面との距離等は、媒体の構成や記録密度・線速度などにも依存し、適宜、最適となるように調整すればよい。
【0295】
上記構成によると、高密度な磁気記録を行うことができる記録ヘッドを構成することができる。
【0296】
上記に限らず、媒体に先に磁界を照射し、後から近接場光を照射しても、磁界と近接場光とによる熱の強度分布が媒体上で重なっていれば、磁気記録を行うことはできる。
【0297】
加えて、記録ヘッド56によると、近接場光強度の経時変化を小さくすることができるとともに、また、屈曲部近辺で近接場光を発生させ、かつ入射光がそのまま透過しない構造でありながら、発生する近接場光の位置を調整することができる。
【0298】
また、記録ヘッド56によると、近接場光発生素子10の出射面に対して磁気ポール53が並置されており、第1の界面16と第2の界面18との間には空気または誘電体が配されているだけである。このため、光源51から出射された光は、磁気ポール53で反射されることなく、近接場光発生素子10の入射面に入射するので、光の利用効率が高い。
【0299】
図15の記録ヘッド56の変形例を、図22により説明する。図22は、記録ヘッド56とは別の記録ヘッド57の構成を表す図である。以下、特に上述の説明と異なる点を説明する。
【0300】
記録ヘッド57の構成によると、磁気ポール53から近接場光発生素子10に対して電流を流すことで、近接場光発生素子10から出射される近接場光とほぼ同じ位置に磁界を発生させることができる。この詳細は、図16を用いて説明したとおりである。
【0301】
磁気ポール53は、主磁極530とコイル531と絶縁層532とを備えている。コイル531は、主磁極530に巻きつけられている。また、絶縁層532は、主磁極530と近接場光発生素子10との間に設けられている。このような構成において、コイル531から、近接場光発生素子10に含まれている金属体11に電流を流すことにより、界面間距離が最小となる屈曲部P16・P18間の近接場光発生素子10の出射面の近傍に磁界を発生させる。
【0302】
このように、記録ヘッド57によると、界面間距離が最小となる屈曲部P16・P18間の近接場光発生素子10の出射面の近傍に近接場光を発生させると共に、磁界を発生させることができるので、近接場光発生素子10の出射面側に、例えば媒体などを配することで、当該媒体に対して磁気記録を行うことができる。
【0303】
このとき、コイル531に流す電流の向きと、金属体11に流す電流の向きとを、媒体(換言すると、近接場光が照射される被照射物)から見て逆方向にすることで、磁気ポール53は、金属体11で発生する磁界に対してリターンヨークとしての役割も果たす。すなわち、金属体11に電流を流すことで発生する磁界が、媒体を通って、磁気ポール53へ戻ってくる磁界の経路ができるため、発生する磁界の領域が広がらず、媒体に対して記録する磁気ビットのサイズを小さくすることができる。
【0304】
また、金属体11で発生する磁界により、磁気ポール53から発生する磁界を増強することもできる。
【0305】
また、近接場光発生素子10により、近接場光のスポットサイズを小さくすることができるので、媒体に対して記録する磁気ビットのサイズも小さくすることできる。このため、上記構成によると高密度な磁気記録を行うことができる記録ヘッドを構成することができる。
(記録装置)
次に、図17を用いて、本実施の形態に係る記録ヘッドを用いて光記録を行う記録装置70について説明する。なお、本実施の形態に係る記録装置70は、上述した記録ヘッド50・56・57を適用することが可能である。以下の説明では、記録ヘッド50を用いた記録装置70について説明する。
【0306】
図17は、本実施の形態に係る記録ヘッド50を用いた記録装置70の構成を表す図である。
【0307】
記録装置70は、図17に示すように、スピンドル61と、駆動部59と、制御部60とを備えている。記録装置70は、少なくとも光を利用して、記録媒体(被照射物)67に情報を記録するためのものである。
【0308】
スピンドル61は、記録媒体67を回転させるスピンドルモータに相当するものである。駆動部59は、アーム57と、回転軸58と、記録ヘッド50とを備えている。アーム57は、ディスク形状の記録媒体67の略半径方向に記録ヘッド50を移動させるためのものであり、スイングアーム構造の支持部である。アーム57は、回転軸58によって支持されており、回転軸58を中心に回転することが可能となっている。スライダ52を含む記録ヘッド50は、記録媒体67に対して、設計された距離を保って浮上するためのものである。本発明の近接場光発生素子10及び光源51は、スライダ52に搭載され、記録媒体67に光スポットを照射する。
【0309】
制御部60は、制御回路62と、アクセス回路63と、記録用回路64と、スピンドル駆動回路65とを備えている。アクセス回路63は、スライダ52を記録媒体67の所望の位置に走査するために、駆動部59におけるアーム57の回転位置を制御するためのものである。記録用回路64は、記録ヘッド50の光源51の強度および照射時間を制御するためのものである。スピンドル駆動回路65は、記録媒体67の回転駆動を制御するためのものである。制御回路62は、アクセス回路63、記録用回路64およびスピンドル駆動回路65を統括的に制御するためのものである。
【0310】
次に、記録装置70の動作について図17を参照して説明する。
【0311】
記録装置70が記録媒体67に対して情報を記録または再生等を行うとき、つまり動作時には、制御部60中のスピンドル駆動回路65は、記録媒体67が設置されたスピンドル61を適切な回転数で回転させる。また、制御部60中のアクセス回路63は、駆動部59を動かすことによって、上述したスライダ52を記録媒体67上の所望の場所へと走査する。
【0312】
記録用回路64は、決められた強度および時間間隔で光源51を発光させる。具体的には、記録用回路64は、光源51を発光させることにより、近接場光発生素子10に光が照射され、近接場光スポットが発生し、記録媒体67へ照射される。光だけでなく磁界も利用する場合には、記録用回路64は、磁界の強度および時間間隔を制御し、記録媒体67に対して磁界を照射する。このとき、光源51は、磁界と同様の時間制御をしてもよいし、照射し続けてもよい。
【0313】
以上のようにして光源51の発光に対応した強さ、時間間隔で発生する光スポットにより、記録媒体67にマークが記録される。制御回路62では、光源51の発光、駆動部59の動作、スピンドル61の回転を総括し、各回路に指示を出すことで、所望の場所に所望の記録ができるようにしている。
【0314】
記録媒体67は、光によって情報が記録される光記録媒体であり、相変化媒体を用いればよく、その場合、記録媒体67の記録層が光スポットにより昇温されると、結晶相からアモルファス相へと変化し、記録マークとなる。
【0315】
また、記録媒体67は、光と磁界によって記録される磁気記録媒体であってもよく、その場合、記録媒体67の記録層が光スポットにより昇温されると同時に磁界を印加されることによって、記録層内部の磁気モーメントの向きが反転され、記録マークとなる。本願の構成では、既に述べたように、近接場光発生素子10に電流を流すことにより、屈曲部P16・P18近辺の近接場光スポットとほぼ同じ位置に、磁界を発生させることができる。電流の流す方向により、記録媒体67へ印加される磁界の方向を上向きまたは下向きに制御することができる。
【0316】
また、記録媒体67の記録マークの形成速度すなわち記録速度は記録層の昇温速度に依存し、この昇温速度は加えられる光スポットの強度に依存する。つまり、照射される光スポットの強度が強いと、記録媒体67を必要な温度まで昇温する時間が短くなるため、転送レートを向上させることができる。
【0317】
このように、記録装置70は、記録ヘッド50を備えているので、記録装置70に装填された記録媒体67に対して、S/Nの高いマークを記録でき、小型で経時変化が小さく
低コストであり、高密度な光アシスト磁気記録が可能である。
【0318】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔補足〕
ここで、以下、補足する。記録ヘッド56は、磁界を発生させることで、媒体に磁気記録を行う光アシスト磁気記録ヘッドである。また、記録ヘッド56は、光源51が、スライダ52のABSが配されている面とは逆側の面から突出して配されており、この突出している部分である光源51の端面に、ミラー55が形成されている。スライダ52の側面に、再生素子54が形成されており、さらに、近接場光発生素子10が配されている。そして、近接場光発生素子10の再生素子54が配されている側とは逆側の端面に磁気ポール53が配されている。つまり、スライダ52が配されている側から順に、再生素子54、近接場光発生素子10、磁気ポール53が配されている。また、本記録ヘッド56では、光源51から出射された光は、ミラー55により伝播方向を変え、近接場光発生素子10の入射面へと入射される。
【0319】
また、磁気ポール53は、特許文献3のように主磁極を近接場光発生素子10の外部に置いてもよい。
【0320】
さらに、磁気ポール53を用いずに図16に示すように、近接場光発生素子10に電流Iを流し(図16の矢印I参照)、右ネジの法則により、磁界H(図16の矢印H参照)を発生させることで近接場光発生素子10が磁界発生部53を兼ねるようにしてもよい。この場合、磁気ポール53を省略した構成とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0321】
本発明は、記録媒体に対して光記録を行う記録装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0322】
10・20・30・40 近接場光発生素子
11・21・31・41 金属体
12・22・32・42 誘電体
13・23・33・43 第1の領域
14・24・34・44 第2の領域
16・26・36・46 第1の界面
16c・26c・36c・46c 端部(一方の端部)
16d・26d・36d・46d 端部(他方の端部)
18・28・38・48 第2の界面
18c・28c・38c・48c 端部(一方の端部)
18d・28d・38d・48d 端部(他方の端部)
50・56・57 記録ヘッド
51 光源
53磁気ポール(磁界発生部)
P16・P26・P36 屈曲部
P18・P28・P38・P48 屈曲部
θ1 第1の頂角
θ2 第2の頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を近接場光に変換する近接場光発生素子であって、
金属材料からなる金属体と、誘電材料からなる誘電体とを含み、
上記金属体は、上記誘電体を狭んで配されている第1及び第2の界面を含み、
上記第1の界面と、上記第2の界面とのうち少なくとも一方は、屈曲部により屈曲されており、
上記第1の界面と、上記第2の界面との対向する距離である界面間距離は、上記屈曲部で最小となっており、
上記第1の界面と、上記第2の界面との界面間距離の変化率が、上記屈曲部を境に非対称となっていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項2】
上記第1及び上記第2の界面のうち、上記屈曲部を境として、それぞれが対向する領域を、それぞれ第1及び第2の領域とし、
上記第1の領域の上記第1及び上記第2の界面の延長線がなす角を第1の頂角とし、
上記第2の領域の上記第1及び第2の界面の延長線がなす角を第2の頂角としたとき、
上記第1の頂角及び上記第2の頂角は、何れも0度より大きく180度未満であることを特徴とする請求項1に記載の近接場光発生素子。
【請求項3】
上記第1の頂角と、上記第2の頂角とのうち、少なくとも一方は、0度より大きく90度以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の近接場光発生素子。
【請求項4】
上記第2の頂角は、上記第1の頂角より小さいことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の近接場光発生素子。
【請求項5】
上記第1及び第2の界面のうち、上記第2の領域に含まれる端部間は接続されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の近接場光発生素子。
【請求項6】
上記第2の領域に含まれる上記第1及び第2の界面の端部間の界面間距離は、上記第1の領域に含まれる上記第1及び第2の界面の端部間の界面間距離より小さいことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の近接場光発生素子。
【請求項7】
上記屈曲部は、上記第1の界面と、上記第2の界面との両方に配されており、上記第1の界面と、上記第2の界面とは、対称な形状となっていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の近接場光発生素子。
【請求項8】
上記近接場光発生素子に対して入射させる光は直線偏光であり、
上記直線偏光の偏光方向は、上記第1及び第2の界面のうち、屈曲部において上記第1及び第2の界面の界面間距離が最小となる方向であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の近接場光発生素子。
【請求項9】
上記第1の界面と第2の界面とが対向する領域には、上記誘電体のみが配されており、当該誘電体は、上記近接場光発生素子に対して入射させる光を透過する誘電体材料からなることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の近接場光発生素子。
【請求項10】
請求項8に記載の近接場光発生素子と、
上記近接場光発生素子に対して上記直線偏光の光を入射させるための光源とを備えたことを特徴とする記録ヘッド。
【請求項11】
上記光源は、上記屈曲部を含んで、上記近接場光発生素子に対して直線偏光の光を入射させることを特徴とする請求項10に記載の記録ヘッド。
【請求項12】
上記光源と、上記近接場光発生素子とは一体化して形成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の記録ヘッド。
【請求項13】
上記近接場光発生素子に含まれている上記金属体に電流を流すことにより、上記界面間距離が最小となる上記屈曲部間の上記近接場光発生素子の出射面の近傍に磁界を発生させる磁界発生部を備えていることを特徴とする請求項10〜12の何れか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項14】
上記記録ヘッドは、さらに、磁界を発生させる磁気ポールを備えていることを特徴とする請求項10〜12の何れか1項に記載の記録ヘッド。
【請求項15】
上記記録ヘッドは、さらに、上記金属体と隣接する磁気ポールを備え、
上記磁気ポールは、電流を流すためのコイルと、上記金属体との隣接面に絶縁層とを備え、
上記コイルの電流が、上記金属体に流れており、
上記コイルを流れる電流の向きと、上記金属体に流れる電流の向きとが、近接場が照射される被照射物から見て逆向きであることを特徴とする請求項13に記載の記録ヘッド。
【請求項16】
請求項10〜15の何れか1項に記載の記録ヘッドを備えていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−22764(P2012−22764A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107652(P2011−107652)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】