説明

近接場露光装置および近接場露光方法

【課題】 近接場露光装置における光エネルギーの利用効率を向上させること。
【解決手段】 光源10と、露光ヘッド100と、を含み、露光ヘッド100は、少なくとも第1開口87aおよび第2開口87bを有する近接場光発生部80と、光源10からの露光光LSを、第1開口87aに対応する第1ビームLB1および第2開口87bに対応する第2ビームLB2を含む複数のビームに分割する回折光学素子40を含む光学系55と、を有し、第1ビームLB1を、第1開口87aに入射させて第1開口87aの光射出側から近接場光ELV1を発生させ、第2ビームをLB2、第2開口87bに入射させて第2開口87bの光射出側から近接場光ELV2を発生させ、第1開口87aおよび第2開口87bの各々から発生する前記近接場光の各々によって、並行に被露光物を露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場露光装置および近接場露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細ナノパターンの作製を可能にする近接場露光装置は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載される近接場露光装置では、露光用光源の波長よりも小さい開口(微小開口)を有する露光マスクを、基板上のフォトレジストに密着させ、この状態で、露光マスクに、露光光源からの露光光を照射する。この結果、微小開口の周辺に露光光による近接場光(エバネッセント光)が発生する。発生した近接場光によって、フォトレジストが露光(感光)される。
【0003】
近接場露光装置は、一般に、スループットが著しく低いという課題を有している。スループット向上のためには、露光用マスクに複数の微小開口を形成しておき、それらの微小開口の各々を、露光光源からの露光光によって同時に露光し、微小開口の各々に対応したパターンを、フォトレジストに一括形成することが有効である。特許文献1では、この一括露光方法が採用されている。
【0004】
なお、フォトレジストを現像することによって、フォトレジストに、露光マスクの微小開口に対応したパターンが形成される。このフォトレジストを加工用マスクとして用いて下地の基板を加工することによって、例えば、微細ナノパターン構造体を作製することができる。作製された微細ナノパターン構造体は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した試料分析のための分析素子として利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−141087号公報(図6および図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の微小開口が形成された露光マスクを用いて近接場光を発生させる場合、露光マスクにおける露光領域での照射光強度がほぼ均一となるように、入射光(露光光源の出力光)のビーム径を広げる必要がある。つまり、露光光源の出力光の照射光強度の分布は、例えばガウス分布に従う。よって、ビーム径が小さいと、同時に照射される複数の微小開口の各々毎に、照射強度が異なってしまい、均一な強度の入射光によるフォトレジストの露光を実現することができなくなる。したがって、複数の微小開口の各々において、露光強度がほぼ均一と見なせるように、入射光のビーム径を広げて露光を実行する必要がある。
【0007】
しかし、入射光のビーム径を広げると、入射光の光エネルギーが分散することから、各微小開口における光エネルギーの密度が、著しく低下するといった問題が生じる。したがって、微小開口毎に、十分な光強度を確保するためには、大出力の光源が必要となる。このことは、近接場露光装置の大型化や高コスト化の原因となる。
【0008】
また、微小開口の大きさは、例えば、数十ナノメートルから数百ナノメートルであり、露光マスク全体に占める面積は非常に狭い。つまり、大部分の入射光は露光マスクで反射あるいは吸収されることになり、よって、入射光の光エネルギーの大部分が無駄になっていることになる。
【0009】
すなわち、従来の近接場露光装置は、大出力の光源を要し、多くの電力を消費する、エネルギー利用効率が低い大型の装置になり易い。
【0010】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、近接場露光装置における光エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の近接場露光装置の一態様は、光源と、露光ヘッドと、を含み、前記露光ヘッドは、少なくとも第1開口および第2開口を有する近接場光発生部と、前記光源からの露光光を、前記第1開口に対応する第1ビームおよび前記第2開口に対応する第2ビームを含む複数のビームに分割する光分割器と、を有し、前記第1ビームを、前記第1開口に入射させて前記第1開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第2ビームを、前記第2開口に入射させて前記第2開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第1開口および前記第2開口の各々から発生する前記近接場光の各々によって、並行に被露光物を露光する。
【0012】
上述したように、開口(以下、微小開口という場合もある)の大きさは、例えば、数十ナノメートルから数百ナノメートルであり、露光マスク全体に占める面積は非常に狭い。従来は、露光マスクを広範囲に照射していたことから、大部分の入射光は露光マスクで反射あるいは吸収されることになり、よって、入射光の光エネルギーの大部分が無駄になっていた。しかし、微細ナノパターンの形成のためには、開口の近傍だけを照射すれば十分である。
【0013】
そこで、本態様では、露光光源(以下、単に光源という)からの露光光を、光分割器を用いて、少なくとも第1ビームおよび第2ビームを含む複数のビームに分割し、第1ビームを、近接場光発生部に設けられている第1開口に入射させ、また、第2ビームを、近接場光発生部に設けられている第2開口に入射させ、各開口から並行的に近接場光(エバネッセント光)を発生(あるいは出力)させ、近接場光の各々によって、並行に被露光物(例えば、フォトレジスト)を露光するようにした。この構成によって、露光マスク自体による、無駄な光エネルギーの消費が十分に抑制され、光エネルギーの利用効率が大きく向上する。
【0014】
すなわち、本態様によれば、例えば、光エネルギーを均等に分割し、効率よく開口を照射することができることから、光エネルギーの無駄が最小限に抑制される。したがって、例えば、露光時間が短縮されスループットが向上する。また、同時に照射する微小開口の数を増やすことができ、このことによってもスループットが向上する。また、例えば、低出力のレーザー光源を採用することが可能となり、近接場露光装置の小型化、ローコスト化も実現することができる。
【0015】
(2)本発明の近接場露光装置の他の態様は、前記光分割器は、前記第1開口の光入射側における前記第1ビームの光強度と、前記第2開口の光入射側における前記第2ビームの光強度とが同じになるように、前記露光光を分割する。
【0016】
光分割器として、例えば、回折光学素子を含む光学系(回折光分割器)を使用すれば、光の回折を用いて、入射光のエネルギーを均等に分割することができる。また、例えば、低損失の光ファイバーを用いて、入射光のエネルギーを均等に分割することができる。第1ビームと第2ビームの光強度を同じにすることによって、第1開口および第2開口の各々から発生する、増強された近接場光の光強度が揃い、被露光物(フォトレジスト等)を均等に露光(感光)することができる。よって、均一な微細ナノパターン構造を形成することができる。
【0017】
(3)本発明の近接場露光装置の他の態様では、前記光分割器として、回折光学素子を含む光学系を使用する。
【0018】
本態様では、光分割器として、回折光学素子を含む光学系を使用する。この光学系は、例えば、入射光の波長より長い周期構造を有する回折格子等の回折光学素子と、レンズとを組み合わせて構成することができ、また、回折光学素子単独で構成することも可能である。
【0019】
(4)本発明の近接場露光装置の他の態様は、前記光源と前記回折光学素子を含む光学系との間に設けられた、前記光源の出力光の偏光特性を制御する偏光部を有する。
【0020】
偏光部は、例えば、波長板のような偏光変換素子によって構成することができる。露光マスクのパターン、すなわち、開口の形状や配置等に合わせて、入射光の偏光特性(例えば偏光方位)を制御することによって、例えば、開口における光エネルギー密度を高めて、開口から出力される近接場光を最大に増幅することができる。また、ビームが分割される前に光の偏光特性を制御することによって、分割された複数のビームの各々の偏光方位を、一箇所にて一括して制御することが可能である。
【0021】
なお、回折光学素子の光の分割特性(分岐特性)を、入射光の偏光方位に依存しないようにしておくのが好ましい。例えば、回折光学素子の周期構造を、入射光の波長よりも十分に長くすることによって、光の分割特性が、入射光の偏光方位に依存しないようにすることができる。
【0022】
(5)本発明の近接場露光装置の他の態様では、前記第1開口および前記第2開口の光入射側の面は、前記光学系から所定距離だけ離れた面に設けられており、また、前記回折光学素子を含む光学系によって分割された光の、前記光学系から所定距離だけ離れた面における照射位置は、前記面上に仮想的に設定されるグリッド線の交点によって決定され、前記第1開口は、前記グリッド線の第1交点の位置に設けられ、前記第2開口は、前記グリッド線の、前記第1交点とは異なる第2交点の位置に設けられる。
【0023】
回折光学素子を含む光学系によって入射光を分割する場合、分割された第1ビームおよび第2ビームをスポットライトとして用いて、近接場光発生部に設けられる第1開口および第2開口の各々を、正確に照射することが重要である。このためには、回折光学素子を含む光学系と各開口との相対的な位置関係を調整する必要がある。そこで、本態様では、同一面(同一平面)内に仮想的なグリッド線(格子状の線)を設定し、行方向のグリッド線と列方向のグリッド線とが交わる第1交点上に第1開口を形成し、第1交点とは異なる第2交点上に第2開口を形成する。
【0024】
すなわち、回折光学素子を含む光学系によって入射光を分割したとき、分割された各ビームは、その光学系から所定距離だけ離れた面上において、仮想的なグリッド線の交点によって決定される離散的なパターンを形成する。ここで、所定距離とは、光学系と面との間の最短距離をいう。その面においてどのようなパターンが形成されるかは、回折光学素子を含む光学系の特性によって決定される。光学系から面までの距離は既知であり、また、その面上における第1開口と2開口の配置は、被露光物に対する露光パターンに基づいて一義的に定まる。したがって、近接場露光装置の設計では、光学系から所定距離だけ離れた面上における第1開口および第2開口の箇所に、仮想的なグリッド線の交点が位置するように、回折光学素子を含む光学系の特性、すなわち、回折光学素子の回折特性やレンズの集光特性等を決定すればよい。このように設計することによって、分割された第1ビームおよび第2ビームをスポットライトとして用いて、近接場光発生部に設けられる第1開口および第2開口の各々を、正確に照射することが可能となる。
【0025】
(6)本発明の近接場露光装置の他の態様では、前記光分割器として、中空光ファイバーを使用する。
【0026】
本態様では、光分割器として、中空光ファイバーを使用する。例えば、n本(nは2以上の整数)の光ファイバーの入射口の位置を共通とし、各光ファイバーの出射口の位置を個別に設定することによって、入射光を、各光ファイバーによってn分割することができる。
【0027】
中空光ファイバーとしては、例えば、直径1ミリメートル以下のガラスもしくはプラスチックチューブの内側に、金属や樹脂の薄膜が形成された低損失の光ファイバーを使用することができる。入射光は、各光ファイバーのチューブの内面で反射を繰り返しながら、チューブ内の空洞を伝搬する。光ファイバーの材料や構造を選択することによって、伝送可能波長域を例えばテラヘルツに対応した波長域にまで拡大することができる。よって、例えば、通常のガラスファイバーでは伝送できない、強力なレーザー光を低損失で効率よく伝送することができる。
【0028】
(7)本発明の近接場露光方法の一態様では、少なくとも第1開口および第2開口を有する近接場光発生部を有する露光ヘッドを用いて、被露光物を近接場光によって露光する近接場露光方法であって、光源の出力光を、光分割器によって、前記第1開口に対応する第1ビームおよび前記第2ビームに対応する第2ビームを含む複数のビームに分割し、前記第1ビームによって、前記第1開口の近傍のみを照射し、これによって前記第1開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第2ビームによって、前記第2開口の近傍のみを照射し、これによって前記第2開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第1開口および前記第2開口の各々から発生する前記近接場光の各々によって、並行に被露光物を露光する。
【0029】
本態様の近接場露光方法によれば、分割された第1ビームおよび第2ビームをスポットライトとして用いて、近接場光発生部に設けられる第1開口および第2開口の各々を局所的に照射することができる。よって、露光マスク自体による、無駄な光エネルギーの消費が十分に抑制され、光エネルギーの利用効率が大きく向上する。すなわち、本態様によれば、光エネルギーを均等に分割し、効率よく開口を照射することができることから、光エネルギーの無駄が最小限に抑制される。したがって、例えば、露光時間が短縮されスループットが向上する。また、同時に照射する微小開口の数を増やすことができ、このことによってもスループットが向上する。また、例えば、低出力のレーザー光源を採用することが可能となり、近接場露光装置の小型化、ローコスト化も実現することができる。
【0030】
(8)本発明の近接場露光方法の他の態様では、前記光分割器として、回折光学素子を含む光学系を使用し、また、前記第1開口および前記第2開口の光入射側の面が、前記光学系から所定距離だけ離れた面上に位置するように、かつ、前記被露光物における所望露光箇所に対応するように、前記第1開口および前記第2開口を設定し、また、前記回折光学素子を含む光学系によって分割された光の各々の、前記面上における照射位置を示す、前記面上に仮想的に設定されるグリッド線の交点が、前記被露光物の厚み方向からみた平面視で、前記第1開口および前記第2開口と重なりを有するように前記回折光学素子を含む光学系の特性を設定する。
【0031】
本態様では、光分割器として、回折光学素子を含む光学系を使用する。また、第1開口および第2開口の光入射側の面が、光学系から所定距離だけ離れた位置にある面内になるようにする。第1開口および第2開口の、その面上における位置は、被露光物における所望露光箇所に対応するように設定する。
【0032】
上述のとおり、回折光学素子を含む光学系によって入射光を分割したとき、分割された各ビームは、その光学系から所定距離だけ離れた面上において、仮想的なグリッド線の交点によって決定される離散的なパターンを形成する。ここで、所定距離とは、光学系と面との間の最短距離をいう。その面上においてどのようなパターンが形成されるかは、回折光学素子を含む光学系の特性によって決定される。そこで、本態様では、その面上に仮想的に設定されるグリッド線の交点が、被露光物の厚み方向からみた平面視で、第1開口および第2開口と重なりを有するように、回折光学素子を含む光学系の特性を設定する。このようにすれば、分割された第1ビームおよび第2ビームをスポットライトとして用いて、近接場光発生部に設けられる第1開口および第2開口の各々を、正確に照射することが可能となる。
【0033】
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、近接場露光装置における光エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)および(B)は、近接場露光装置の構成の一例を示す断面図
【図2】(A)〜(C)は、光分割器の具体的な構成例を示す図
【図3】回折光学素子を含む光学系によって分割された各ビームのパターンについて説明するための図
【図4】分割された各ビームによる並行露光の具体例を示す図
【図5】(A)および(B)は、微小開口を有する露光マスクの例を示す図
【図6】(A)および(B)は、近接場露光装置の構成の他の例を示す断面図
【図7】(A)〜(C)は、露光光の偏光制御の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0036】
(第1実施形態)
図1(A)および図1(B)は、近接場露光装置の構成の一例を示す断面図である。図1(A)は、露光前の状態を示し、図1(B)は、露光中の状態を示している。図1(A)に示されるように、近接場露光装置は、露光ヘッド100を備える。露光ヘッド100は着脱自在としてもよい。このようにすれば、露光ヘッド100の交換によって、露光パターンを適宜、変更することができる。この露光ヘッド100は、光源10と、ビームエクスパンダー20と、光分割器としての、回折光学素子40を含む光学系55と、近接場光発生部80と、微細ナノパターン構造物を形成するための基板を載置するXYステージ90と、駆動部92と、制御部94と、を有する。
【0037】
また、光分割器としての、回折光学素子40を含む光学系55は、回折格子等からなる回折光学素子40と、レンズ50と、を含む。また、近接場光発生部80は、マスク基板ホルダー70によって保持された露光マスクMKを含む。露光マスクMKは、マスク基板ホルダー70と、マスク基板81(マスクの基部)と、露光光に対する透過性を有する材料からなるマスク母材83と、マスク母材83の、XY平面側の表面上に形成された所定パターンの遮光膜(遮光材)85と、遮光膜(遮光材)85の一部を除去することによって形成された複数の開口(微小開口)87a〜87cを有する。
【0038】
回折光学素子40を含む光学系55ならびに近接場光発生部80における露光マスクMKは着脱自在とすることもできる。但し、回折光学素子40を含む光学系55と近接場光発生部80における露光マスクMKとは一対の関係にあるため、いずれかを交換する場合には、回折光学素子40を含む光学系55と近接場光発生部80における露光マスクMKとを一括して交換する必要がある。この交換によって、露光パターンを適宜、変更することができる。なお、以下の説明では、開口(微小開口)87a〜87cの各々を、第1開口、第2開口、第3開口という。各開口87a〜87cの大きさは、例えば、数十ナノメートルから数百ナノメートルである。
【0039】
また、XYステージ90は、例えば、5軸のピエゾステージを含むことができる。ピエゾステージは、例えば、ピエゾ素子と歪ゲージで構成される変位検出機構を鋼製のステージ内に組み込んだ超微動ステージである。ピエゾステージによれば、例えば、ナノメートルオーダーの高い分解能と高い位置決め精度を実現することができる。ピエゾステージを、例えば、精密位置決めテーブルと組み合わせることによって、高精度かつコンパクトなXYステージ90を構成することができる。
【0040】
XYステージ90は、X軸方向(第1方向)およびY軸方向(第2方向)に移動することができる。また、微細ナノパターン構造物を形成するための基板200(図1(B)参照)をセットするときは、Z軸方向(第3方向)に沿って下降し、また、基板200がセットされると、所定の露光位置にまで上昇する。
【0041】
また、XYステージ90の駆動のために、駆動部92が設けられている。また、XYステージ90の位置は、制御部(位置制御部)94によって制御される。
【0042】
図1(B)では、XYステージ90上に、微細ナノパターン構造物を形成するための基板200が載置されている。この基板200上には、被露光物としてのフォトレジスト(感光性レジスト)210が形成されている。露光マスクMKの光射出側の表面とレジスト200との間の距離は、所定距離(例えば100nm以下の距離)に維持されている。
【0043】
この状態で、光源10から出力光(露光光)LSが出力される。光源10としては、例えば、LD(レーザーダイオード)を用いた固体レーザー(例えば波長355nm)を使用することができる。露光光LSのビーム径(光束径)は、ビームエクスパンダー20によって拡大される。拡大後のビーム径は、例えば10mmである。ビームエクスパンダーによって拡大されたビームは、回折光学素子40およびレンズ50を含む光学系55に入射する。
【0044】
入射光は、光学系55によってm本(mは2以上の整数であり、ここでは、m=3)の光ビーム(光束)LB1〜LB3に分割される。光学系55は、光源10の出力光(露光光)LSを、均等に分割する。すなわち、光分割器としての、回折光学素子を含む光学系(回折光分割器)55は、光の回折を利用して、第1開口87aの光入射側における第1ビームLB1の光強度と、第2開口87bの光入射側における第2ビームLB2の光強度と、第3開口87cの光入射側における第3ビームLB3の光強度とが同じになるように、光源10から照射される露光光LSを均等に分割する。
【0045】
第1ビームLB1〜第3ビームLB3の各々の光強度を同じにすることによって、第1開口87a〜第3開口87cの各々から出力される、増強された近接場光ELV1〜ELV3の各々の光強度を揃えることができる。よって、フォトレジスト210を均等に露光(感光)することができる。よって、均一な微細ナノパターン構造を形成することができる。なお、光ビームの分割数(分岐数)は、3に限定されるものではなく、異なる分割数(分岐数)であってもかまわない。また、光分割器は、回折光学素子に限定されるものではない。例えば、低損失の光ファイバーを用いて、入射光のエネルギーを均等に分割することもできる。
【0046】
例えば、レンズ50の焦点距離を50mmとすると、各開口87a〜87cに集光するビームのスポット径は約4.3μmとなる。また、回折光学素子40の表面に設けられる周期性をもつ構造の1周期を、例えば1775μmとしたとき、分割(分岐)されたビーム間のピッチ(分割ピッチあるいは分岐ピッチ:すなわち、露光マスクMKの入射側の面における、隣接する2つのビーム間の距離)は、例えば10μmである。分割ピッチは、露光マスクMKに形成されている複数の開口87a〜87cの配置間隔と一致する。
【0047】
なお、分割ピッチ(分岐ピッチ)を調整することもできる。例えば、レンズ50として非テレセントリックレンズを用いて、露光マスクMKの表面に入射する分岐ビームの入射角を僅かに傾け、この状態で、ビームエクスパンダー20によって、光ビームの波面の曲率をコントロールする。これによって、分割ピッチ(分岐ピッチ)を微調整することができる。
【0048】
このようにして、第1光ビームLB1,第2光ビームLB2ならびに第3光ビームLB3の各々によって、露光マスクMKにおける第1開口87a,第2開口87bおよび第3開口87cの各々が、局所的(スポット的)に照射される。これによって、各開口87a〜87cの光射出側から、局所的に増幅された近接場光(エバネッセント光)ELV1〜ELV3の各々が出力される。近接場光(エバネッセント光)ELV1〜ELV3の各々によって、フォトレジスト210が露光される。
【0049】
すなわち、本実施形態では、回折光学素子40を含む光学系55によって分割された3本の光ビームLB1,LB2,LB3の各々をスポットライトとして用いて、露光マスクMKに形成されている3個の開口87a〜87cの各々を並行に、すなわち同時に照射する。上述したとおり、露光マスクMKと、被露光物であるフォトレジスト210との間の距離は一定(所定距離)に保たれている。よって、XYステージ90を移動させることにより、基板200上の、複数の場所において、さまざまな形状のパターニングを同時に行うことができる。
【0050】
従来は、光ビームが、露光マスクを広範囲に照射していたことから、大部分の光ビームは露光マスクで反射あるいは吸収されることになり、よって、光ビームの光エネルギーの大部分が無駄になっていた。これに対して、本実施形態では、分割された各ビームLB1〜LB3の各々を各開口87a〜87cに入射させており、したがって、各開口87a〜87cの近傍のみが局所的に照射されることになる。これによって、各開口87a〜87cの各々から並行的に近接場光(エバネッセント光)ELV1〜ELV3が発生、出力され、近接場光ELV1〜ELV3の各々によって、並行に被露光物であるフォトレジスト210が露光される。したがって、露光マスク自体による、無駄な光エネルギーの消費が十分に抑制され、光エネルギーの利用効率が大きく向上する。
【0051】
すなわち、本実施形態によれば、露光用の光源10から出力された出力光LSの光エネルギーを均等に分割し、複数の開口(微小開口)の各々を効率的に照射することができることから、光エネルギーの無駄が最小限に抑制される。よって、例えば、露光時間が短縮されスループットが向上する。また、同時に照射する開口の数を増やすことができ、このことによってもスループットが向上する。また、例えば、低出力のレーザー光源を採用することが可能となり、近接場露光装置の小型化、ローコスト化も実現することができる。
【0052】
次に、光分割器の具体的な構成例について説明する。図2(A)〜図2(C)は、光分割器の具体的な構成例を示す図である。図2(A)は、デジタル型の回折光学素子40の具体例を示している。図2(B)は、アナログ型の回折光学素子40の具体例を示している。図2(C)は、光分割器として複数本の光ファイバー(中空光ファイバー)を使用した例を示している。なお、図2(A)および図2(B)に示される構造をもつ回折光学素子の参考文献として、「レーザー加工へ用いる高性能回折ビームスプリッター,レーザー学会 第354回研究報告会(回折光学素子)」を挙げることができる。
【0053】
図2(A)および図2(B)に示される回折光学素子40は、表面に、1周期が露光光の波長よりも長い周期構造を有しており、光の回折を用いて入射光のエネルギーを均等に分割することができる。図2(A)に示されるデジタル型の回折光学素子40は、表面に形成された複数の溝GVを有する。この溝GVの深さは、例えば238nmであり、また、周期構造の1周期は、例えば1775μmである。
【0054】
また、図2(B)に示されるアナログ型の回折光学素子40は、表面に滑らかなレリーフ(浮き彫り)形状を有する。アナログ型の回折光学素子40の周期構造の1周期は、例えば1775μmである。また、レリーフ形状における、最も深い谷の部分の高さは、例えば287nmとすることができる。
【0055】
なお、素子周期は、Λ=λ・f/dという式にしたがって、決定することができる。ここで、Λは素子周期であり、λは入射光の波長であり、fは焦点距離であり、dは分割ピッチ(分岐ピッチ)である。また、入射光の位相と素子深さ(溝の深さ)との関係は、φ=2πh(n−1)/λという式にしたがって、決定することができる。ここで、φは入射光の位相であり、hは素子深さであり、nは基板の屈折率であり、λは入射光の波長である。
【0056】
図2(B)に示されるアナログ型の回折光学素子40の光利用効率は9割を超える(上記参考文献参照)。また、不要な高次高調波も十分に抑制される。よって、アナログ型の回折光学素子40は、ビームを分岐する素子として好ましい性能を備えている。また、アナログ型の回折光学素子40は、その1周期が、露光光(レーザー光)の波長よりも十分に長い周期構造を有している。よって、回折光学素子40における光分割性能(光分岐性能)は、入射光の偏光特性に依存しない。
【0057】
図2(A)に示されるデジタル型の回折光学素子40は、光利用効率は4〜7割程度となり、光利用効率の点ではアナログ型の回折光学素子40に劣るが、作製が比較的容易であるという利点を有する。
【0058】
このように、光分割器として、回折光学素子40を含む光学系55(図1参照)を使用することができる。この光学系55は、例えば、入射光の波長より長い周期構造を有する回折格子等の回折光学素子40と、レンズ50とを組み合わせて構成することができ、また、回折光学素子単独で構成することも可能である。
【0059】
図2(C)に示される例では、光分割器として、光ファイバー、具体的には中空光ファイバーを使用する。例えば、n本(nは2以上の整数,図2(C)ではn=3)の光ファイバーFB1〜FB3の入射口の位置を共通とし、光ファイバーFB1〜FB3の各々の出射口の位置を個別に設定する。これによって、入射光LSを、各光ファイバーFB1〜FB3によって3分割することができる。この結果、第1ビームLB1〜第3ビームLB3の各々を得ることがきる。
【0060】
中空光ファイバーとしては、例えば、直径1ミリメートル以下のガラスもしくはプラスチックチューブの内側に、金属や樹脂の薄膜が形成された低損失の光ファイバーを使用することができる。入射光LSは、各光ファイバーのチューブの内面で反射を繰り返しながら、チューブ内の空洞を伝搬する。光ファイバーの材料や構造を選択することによって、伝送可能波長域を、例えばテラヘルツに対応した波長域にまで拡大することができる。よって、例えば、通常のガラスファイバーでは伝送できない、強力なレーザー光を低損失で効率よく伝送することができる。
【0061】
次に、光ビームの分割(分岐)の具体例について説明する。図3は、回折光学素子40を含む光学系55によって分割された各ビームのパターンについて説明するための図である。回折光学素子40を含む光学系55によって、入射光LSを分割する場合、分割された各ビームをスポットライトとして用いて、近接場光発生部80に設けられる各開口等を、正確に照射することが重要である。このためには、回折光学素子40を含む光学系55と、各開口との相対的な位置関係を調整する必要がある。したがって、近接場露光装置の設計に際しては、光学系55から所定距離にある面内に仮想的なグリッド線(格子状の線)を設定し、行方向のグリッド線と列方向のグリッド線とが交わる交点の位置を決定し、その交点の位置に、開口を配置するのが好ましい。
【0062】
以下、具体的に説明する。なお、図3においては、入射光LSは、5本のビームに分割される。また、分割された各ビームに対応して、5個の開口(微小開口)87a〜87eが同一面(同一平面)上に配置されている。
【0063】
上述のとおり、回折光学素子40を含む光学系55によって入射光(露光光)LSを分割したとき、分割された各ビームは、光学系55から所定距離だけ離れた面上において、仮想的なグリッド線の交点によって決定される離散的なパターンを形成する。所定距離とは、光学系と面との間の最短距離をいう。また、光学系55から所定距離だけ離れた面は、すなわち、露光マスクMKの複数の開口が設けられている表面とみることができる。
【0064】
図3において、5個の開口(微小開口)87a〜87eの各々は、黒塗りの三角形で示されている。また、図3において、仮想的なグリッド線は破線で示されており、また、仮想的なグリッド線の交点は、参照符号P1〜P9で示されている。図3の例において、1つの格子(四角形)の横の長さはL1であり、縦の長さはL2である。
【0065】
光学系55から所定距離だけ離れた面上、すなわち、5個の開口(微小開口)87a〜87iの各々が配置されている同一面上において、どのようなビームパターンが形成されるかは、回折光学素子40を含む光学系55の特性によって決定される。
【0066】
光学系55から、上記の同一面までの距離は既知であり、また、その同一面上における第1開口87a〜第5開口87eの各々の配置は、被露光物であるフォトレジスト210に対する露光パターンに基づいて一義的に定まる。
【0067】
したがって、近接場露光装置の設計では、面上における第1開口87a〜第5開口87eの箇所に、仮想的なグリッド線の交点P1〜P9のいずれかが位置するように、回折光学素子40を含む光学系55の特性、すなわち、回折光学素子40の回折特性やレンズ50の集光特性等を決定すればよい。
【0068】
図3に示される例では、第1開口87aは、第1交点P1上に配置され、第2開口87bは、第3交点P3上に配置され、第3開口87cは、第5交点P5上に配置され、第4開口87dは、第7交点P7上に配置され、第5開口87eは、第9交点P9上に配置されている。
【0069】
近接場露光装置の設計ならびに露光の方法を具体的に述べれば、以下のとおりである。上述のとおり、ここでは、光分割器として、回折光学素子40を含む光学系55を使用するものとする。また、第1開口87a〜第5開口87eの光入射側の面の各々が、光学系55から所定距離だけ離れた位置にある面内になるようにする。第1開口87a〜第5開口87eの、面上における位置(配置)は、被露光物であるフォトレジスト210における所望露光箇所に対応するように設定する。
【0070】
そして、その面上において仮想的に設定されるグリッド線の交点P1〜P9の各々が、
被露光物であるフォトレジスト210の厚み方向からみた平面視において、第1開口87a〜第5開口87eのいずれかと重なりを有するように、回折光学素子40を含む光学系55の特性を設定する。このようにすれば、分割された5本のビーム(第1ビーム〜第5ビーム)の各々をスポットライトとして用いて、近接場光発生部80に設けられる第1開口87a〜第5開口87eの各々を、正確に照射することが可能となる。
【0071】
次に、分割された各ビームによる、複数の開口の各々の並行的な露光の具体例について説明する。図4は、分割された各ビームによる並行露光の具体例を示す図である。図4の例では、露光マスクMKを構成する遮光膜(例えば、Cr等の金属膜)85をパターニングすることによって、3個の開口、すなわち第1開口87a、第2開口87bならびに第3開口87cが設けられている。そして、所定間隔で直線状に配置された第1開口87a〜第3開口87cの各々は、第1ビームLB1〜第3ビームLB3の各々によって並行に露光される。なお、分割された複数のビームが互いに干渉しないように(つまり、各ビームが重複しないように)、各ビーム間のピッチを決めることが望ましい。
【0072】
図4の下側に示されるように、第1ビームLB1〜第3ビームLB3の各々の光強度は、ガウス分布に従った分布を示すが、第1開口87a〜第3開口87cの各々の中心における光強度は、どれも同じであり、均等な強度の光ビームによって、各開口87a〜87cを露光することができる。
【0073】
また、XYステージ90を移動させると、開口部とレジストとの相対的な位置関係が変化する。よって、自在なパターン形成が可能となる。例えば、回折光学素子によって、X方向に複数のビーム列を生成しておき、XYステージ90を、Y方向に移動させることによって、同時に多点を加工することができる。XYステージ90の移動によって、選択的なパターン形成が可能となり、周期構造に限らず、自在なパターンを、高速に形成することができる。
【0074】
このように、分割された複数のビームをスポットライトとして用いて、近接場光発生部80に設けられる複数の開口の各々を、正確に、かつ効率的に照射することができる。
【0075】
次に、露光マスクの例について説明する。図5(A)および図5(B)は、微小開口を有する露光マスクの例を示す図である。図3および図4に示される例では、開口(微小開口)は、黒塗りの三角形で示されていたが、実際の開口は、種々のパターンを採ることができる。
【0076】
図5(A)に示される露光マスクMKには、同心円状の3つの開口パターン87x,87y,87zが形成されている。開口の横幅は、露光光であるレーザー光の波長よりも短く、例えば、30nmとする。なお、開口が形成されていない部分は、金、銀、クロム等の遮光膜(金属膜)85で覆われている。
【0077】
図5(A)では、2次元の露光マスクを使用しているが、これに限定されるものではなく、図5(B)に示すように、3次元の露光マスクを使用することもできる。図5(B)に示される露光マスクMKは、断面の形状が、ボータイ(蝶ネクタイ)形状を有している。図5に示される露光マスクMKに設けられる開口87jのギャップd2は、例えば30nmであり、また、露光マスクMKの高さd3は、例えば200nmである。なお、近接場のエネルギー密度を増幅させる開口の形状は、同心円構造やボータイ型構に限定されるものではない。
【0078】
(第2実施形態)
図6(A)および図6(B)は、近接場露光装置の構成の他の例を示す断面図である。図6(A)は、露光前の状態を示し、図6(B)は、露光中の状態を示している。本実施形態における近接場露光装置の構成は、基本的には図1に示される装置の構成と同じである。但し、本実施形態の近接場露光装置では、光源10の出力光LSの偏光特性を制御する偏光部(偏光板、波長板あるいは偏光変換素子)30が設けられており、この点で、図1の装置とは構成が異なる。偏光部30は、光源10と回折光学素子40を含む光学系55との間に設けられている。
【0079】
図6(A)に示されるように、偏光部30は、例えば、波長板のような偏光変換素子によって構成することができる。露光マスクMKのパターン、すなわち、開口の形状や配置等に合わせて、入射光LSの偏光特性(例えば偏光方位)を制御することによって、例えば各開口における光エネルギー密度を高めて、各開口から出力される近接場光を最大に増幅することができる。
【0080】
また、図6(B)に示されるように、光源10の出力光LSが分割される前に光の偏光特性を制御することができることから、分割された複数のビームLB1〜LB3の各々の偏光方位を、一箇所にて一括して制御することが可能である。
【0081】
なお、回折光学素子40における光の分割特性(分岐特性)を、入射光の偏光方位に依存しないようにしておくのが好ましい。例えば、回折光学素子40の周期構造を、入射光の波長よりも十分に長くすることによって、光の分割特性が、入射光の偏光方位に依存しないようにすることができる。
【0082】
図7(A)〜図7(C)は、露光光の偏光制御の一例を示す図である。図7(A)の例では、偏光部30として、フォトニック結晶から構成される軸対称偏光変換素子(複合型波長板)が使用されている。軸対称偏光変換素子は、直線偏光を、軸対称偏光(放射状偏光や同心円状偏光)に変換する機能をもつ。図7(A)の例では、偏光部30は、直線偏光を、放射状偏光(ラジアル偏光)に変換している。なお、直線偏光をつくるために、λ/2板を追加することもできる。
【0083】
図7(B)に示されるように、同心円構造の開口を有する露光マスクMKを使用する場合には、同心円の半径方向に沿った放射状偏光(ラジアル偏光)を照射するのが好ましい。図7(B)において、入射光の偏光方位は、太線の矢印で示されている。この場合、各微小開口の光射出側において、効率的に増幅された近接場光ELVを発生させることができる。
【0084】
また、図7(C)に示すように、ボータイ型構造を有する露光マスクMKを使用する場合には、ギャップd2に沿った直線偏光を開口87jに照射するのが好ましい。図7(C)において、入射光の偏光方位は、太線の矢印で示されている。この場合、各微小開口の光射出側において、効率的に増幅された近接場光ELVを発生させることができる。
【0085】
以上説明したように、本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、近接場露光装置における光エネルギーの利用効率を向上させることができる。
【0086】
本発明は、微小開口マスクのアレイ化に限らず、近接場プローブなどの金属プローブのアレイ化に対しても応用することができる。また、作製された微細ナノパターン構造は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した試料分析のための分析素子として利用可能である。また、本発明は、光の反射を低減する光反射防止ナノ構造の製造などにも応用が可能である。また、磁性ドットナノパターン媒体(大容量記憶媒体)の製造に応用することもできる。また、本発明は、太陽電池の高効率化やディスプレイの高輝度化にも応用することができる。
【0087】
以上、幾つかの実施形態について本発明を説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0088】
10 光源(露光光源)、 20 ビームエクスパンダー、
30 偏光部(偏光板や偏光素子)、40 回折光学素子、50 レンズ、
55 回折光学素子を含む光学系、70 マスク基板ホルダー、80 近接場光発生部、
81 マスク基板(マスクの基部)、83 マスク母材、
87(87a〜87c) 開口あるいは微小開口(第1開口〜第3開口)、
90 XYステージ、92 駆動部、94 制御部、
100 露光ヘッド、200 基板、210 フォトレジスト
LB(LB1〜LB3) 分割されたビーム(第1ビーム〜第3ビーム)、
ELV(ELV1〜ELV3) 近接場光、LS 露光光、MK 露光用マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
露光ヘッドと、を含み、
前記露光ヘッドは、
少なくとも第1開口および第2開口を有する近接場光発生部と、
前記光源からの露光光を、前記第1開口に対応する第1ビームおよび前記第2開口に対応する第2ビームを含む複数のビームに分割する光分割器と、を有し、
前記第1ビームを、前記第1開口に入射させて前記第1開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第2ビームを、前記第2開口に入射させて前記第2開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第1開口および前記第2開口の各々から発生する前記近接場光の各々によって、並行に被露光物を露光することを特徴とする近接場露光装置。
【請求項2】
請求項1記載の近接場露光装置であって、
前記光分割器は、前記第1開口の光入射側における前記第1ビームの光強度と、前記第2開口の光入射側における前記第2ビームの光強度とが同じになるように、前記露光光を分割することを特徴とする近接場露光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の近接場露光装置であって、
前記光分割器として、回折光学素子を含む光学系を使用することを特徴とする近接場露光装置。
【請求項4】
請求項3記載の近接場露光装置であって、
前記光源と前記回折光学素子を含む光学系との間に設けられた、前記光源の出力光の偏光特性を制御する偏光部を有することを特徴とする近接場露光装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の近接場露光装置であって、
前記第1開口および前記第2開口の光入射側の面は、前記光学系から所定距離だけ離れた面に設けられており、
また、前記回折光学素子を含む光学系によって分割された光の、前記光学系から所定距離だけ離れた面における照射位置は、前記面上に仮想的に設定されるグリッド線の交点によって決定され、
前記第1開口は、前記グリッド線の第1交点の位置に設けられ、前記第2開口は、前記グリッド線の、前記第1交点とは異なる第2交点の位置に設けられることを特徴とする近接場露光装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載の近接場露光装置であって、
前記光分割器として、中空光ファイバーを使用することを特徴とする近接場露光装置。
【請求項7】
少なくとも第1開口および第2開口を有する近接場光発生部を有する露光ヘッドを用いて、被露光物を近接場光によって露光する近接場露光方法であって、
光源の出力光を、光分割器によって、前記第1開口に対応する第1ビームおよび前記第2ビームに対応する第2ビームを含む複数のビームに分割し、
前記第1ビームによって、前記第1開口の近傍のみを照射し、これによって前記第1開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第2ビームによって、前記第2開口の近傍のみを照射し、これによって前記第2開口の光射出側から近接場光を発生させ、前記第1開口および前記第2開口の各々から発生する前記近接場光の各々によって、並行に被露光物を露光することを特徴とする近接場露光方法。
【請求項8】
請求項7記載の近接場露光方法であって、
前記光分割器として、回折光学素子を含む光学系を使用し、
また、前記第1開口および前記第2開口の光入射側の面が、前記光学系から所定距離だけ離れた面上に位置するように、かつ、前記被露光物における所望露光箇所に対応するように、前記第1開口および前記第2開口を設定し、
また、前記回折光学素子を含む光学系によって分割された光の各々の、前記面上における照射位置を示す、前記面上に仮想的に設定されるグリッド線の交点が、前記被露光物の厚み方向からみた平面視で、前記第1開口および前記第2開口と重なりを有するように前記回折光学素子を含む光学系の特性を設定することを特徴とする近接場露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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