説明

近赤外線吸収材料及びそれを用いた組成物

【課題】溶媒や樹脂への溶解度及び野外での耐久性を改善し、基板として用いるガラス、紙又は樹脂の表面における近赤外線を遮断するのに十分な量の色素を含有させることができる近赤外線吸収材料の提供。
【解決手段】下記一般式で表される赤外線吸収材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のジチオール系近赤外線吸収材料およびそれを用いた組成物、光学フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイ(PDP)では、800〜1050nmのネオンガスの輝線を発しており、近赤外線リモコンを用いた機器の誤作動を招くという問題があり、近赤外線を吸収し、かつ可視透過率の優れたフィルターが必要である。このフィルターに用いる材料は高い熱安定性、高耐光性が要求されており、経時での材料劣化によるフィルターの色度変化・近赤外線吸収能力の低下が課題となっている。
【0003】
有機ニッケル系錯体は、一般に950nm〜1100nmの近赤外部に吸収を有し、近赤外線吸収材料として優れた性質を有しており種々の用途に用いられている。公知のジチオール系錯体近赤外線吸収材料としては、ビス(ジチオベンジル)ニッケル錯体化合物(特開昭63−227597号公報、特開昭64−61492号公報)、ビス(1,2−アセナフチレンジチオラト)ニッケル錯体化合物(特許第2923084号公報)、4−tert−ブチル−1,2−ベンゼンジチオールニッケル錯体(特開昭63−307853号公報)、アルコキシ基を有するビス(ジチオベンジル)ニッケル錯体化合物(特開平2−264788号公報)、テトラキスアルキルチオビス1,2ジチオラトニッケル錯体化合物(昭64−69686、特開2006−195399)が知られている。また、高分子ジチオール錯体ではジチオラートニッケル高分子錯体(特開平4−198304号公報)、ビスジチオレン錯体ポリマー(USP5089585)などが知られている。ビスジチオレン錯体ポリマーは〜800nmと比較的短波長に吸収波長領域があり一般的な近赤外線吸収材料用途としては不適である。また錯体骨格部位に置換基を持たないため溶解性に乏しいという欠点があった。また多核型チオール錯体(特開2005−181966号公報)あるいは4級ホスホニウムビス(シス-1,2-エチレンジチオラト)ニッケレート誘導体(特公平6−72147号公報)、二級アルキル基を有するジチオレート金属錯体(特開2005-232185号公報)も長波長吸収材料として知られているが、溶媒に対する溶解性が低い、樹脂との相溶性に乏しい、あるいは低い温度に融点を持ち耐熱性に欠けるなど、実用的ではなかった。
【0004】
一方、同様に近赤外線吸収化合物としてフタロシアニン系材料が知られている。置換基を有するフタロシアニン化合物もしくはナフタロシアニン化合物(特開平10−78509号公報)、アミノ基を有するフタロシアニン化合物(特開2004−18561号公報、特開2001−106689号公報、特開2000−63691号公報、特許第2746293号公報、特許第3226504号公報)含フッ素フタロシアニン化合物(特許第2907624号公報、特許第3014221号公報)等が知られている。
【0005】
また、ジイモニウム系色素は、長波長(950nm〜1100nm)を幅広く吸収し、かつ可視光の透明性も極めて良好な材料であり、日本カーリット株式会社(特開平05−247437号公報、特開2005−325292号公報)、日本化薬株式会社(特許第3699464号公報、特開2003−096040号公報)記載の材料が知られている。この色素は、上記の特性を持ち、かつ高い溶解性、樹脂相溶性を有している。しかし、耐熱性や耐光性は、必ずしも満足できるものではない。
【特許文献1】特開昭63−227597号公報
【特許文献2】特開昭64−61492号公報
【特許文献3】特許第2923084号公報
【特許文献4】特開昭63−307853号公報
【特許文献5】特開平2−264788号公報
【特許文献6】昭64−69686号公報
【特許文献7】特開2006−195399号公報
【特許文献8】特開平4−198304号公報
【特許文献9】USP5089585
【特許文献10】特開2005−181966号公報
【特許文献11】特公平6−72147号公報
【特許文献12】特開2005-232185号公報
【特許文献13】特開平10−78509号公報
【特許文献14】特開2004−18561号公報
【特許文献15】特開2001−106689号公報
【特許文献16】特開2000−63691号公報
【特許文献17】特許第2746293号公報、
【特許文献18】特許第3226504号公報
【特許文献19】特許第2907624号公報、
【特許文献20】特許第3014221号公報
【特許文献21】特開平05−247437号公報
【特許文献22】特開2005−325292号公報
【特許文献23】特許第3699464号公報
【特許文献24】特開2003−096040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記近赤外線吸収材料は、一般的に、溶媒に溶解させた後、樹脂と混合してプラスチック等の基板にコーティングするか、或いは樹脂と加熱混練されて、シート状、板状或いはその他の形状に成形されて用いられる。そのため、上記近赤外線吸収材料には、溶媒に対する溶解性や樹脂との相溶性等に優れていることが求められる。さらに、上記近赤外線吸収材料は、野外で使用される場合もあるので、近赤外線吸収材料自身にも高い耐久性、熱安定性等が要求される。
【0007】
近赤外線吸収材料の溶媒に対する溶解性、樹脂に対する相溶性が低いと、近赤外線を遮断するのに十分な量の色素を含有させることが困難となる上、可視光の透明性、長波長(800〜1100nm)の吸収が低くなり、耐性も低くなる。
【0008】
従来近赤外線吸収材料として用いられている、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類、フタロシアニン類、アントラキノン類、ビスジチオベンジルニッケル錯体類等は、近赤外線吸収組成物に配合されて用いられたとき、必ずしも満足すべき効果を示しているとはいえない。例えば、フタロシアニン類は、種々の置換基で置換されて、溶媒への溶解性を向上させているが、その結果、耐光性、熱安定性等が劣ったものとなっている。また、吸収スペクトルがシャープであるため近赤外線を吸収できる波長範囲が小さい。一方、置換ベンゼンジチオールニッケル錯体類は、製造が比較的容易であること、耐久性が良好という等の点においては優れているが、溶媒への溶解性が小さく、また樹脂との相溶性に劣るという問題がある。
【0009】
溶媒、樹脂への溶解度が小さいと、近赤外線吸収材料を溶媒に溶解させて用いるときに、基板として用いるガラス、紙又は樹脂の表面に、近赤外線を遮断するのに十分な量の近赤外線吸収材料を含有させることが困難となる。結果として近赤外線吸収材料である色素分子の析出、スタッキングにより可視光吸収帯が現れ可視光透過率が低下し、また、分子間の強い相互作用により近赤外線の吸収特性の低下を招く。また、近赤外線吸収材料をモノマーと混合し、このモノマーを重合硬化させて近赤外線吸収組成物とするときも、モノマーへの溶解度が小さいと、十分な量の近赤外線吸収材料を含有させることが困難となり、未溶解の近赤外線吸収材料が原因となって、部分的に不透明になるという問題が生じる。さらに、上記近赤外線吸収材料と樹脂との相溶性が悪いと均一な近赤外線吸収組成物を得ることができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では近赤外領域に吸収を持つ色素分子に特殊な置換基を結合することによって分散力及び極性を向上させることにより、近赤外線吸収材料の溶剤もしくはバインダー樹脂に対する溶解性を上げることが出来た。これにより、相溶性の向上により耐性の高いフィルターを提供できる。
【0011】
本発明は、下記一般式[1]で表される近赤外線吸収材料に関する。
一般式[1]
【0012】
【化1】

【0013】
[式中Mは金属原子を表し、Aは4〜30員の複素環を表し、かつAは少なくともひとつの下記一般式[3]、または一般式[4]の置換基を有する。]

【0014】
一般式[3]
【化2】

[式中Ar3は(1+n3)価の置換もしくは無置換の芳香族基を表し、
Ar4は置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X3及びX4はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を表し、
n2は0または自然数を表し、
n3は自然数を表す。]

【0015】
一般式[4]
【化3】

【0016】
[式中Ar5〜Ar7はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X5からX8はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を表し、
Bは炭素原子または珪素原子を表し、
n4は0または自然数を表す。]
【0017】
また、本発明は、下記一般式[5]で表される近赤外線吸収材料に関する。
一般式[5]
【化4】

【0018】
[式中Mは金属原子を表し、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表すが、少なくともひとつは下記一般式[3]、または一般式[4]いずれかである。]

【0019】
一般式[3]
【化5】

[式中Ar3は(1+n3)価の置換もしくは無置換の芳香族基を表し、
Ar4は置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X3及びX4はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を表し、
n2は0または自然数を表し、
n3は自然数を表す。]

【0020】
一般式[4]
【化6】

【0021】
[式中Ar5〜Ar7はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X5からX8はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基または直接結合を表し、
Bは炭素原子または珪素原子を表し、
n4は0または自然数を表す。]
【0022】
また、本発明は、一般式[1]においてAが、下記一般式[6]または[7]で表される環である上記近赤外線吸収材料に関する。

【0023】
一般式[6]
【化7】

【0024】
[式中R5〜R8はそれぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表し、R5〜R8のうち少なくとも一つは、一般式[3]、または一般式[4]のいずれかである。]

【0025】
一般式[7]
【化8】

【0026】
[式中R9〜R14はそれぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表し、R9〜R14のうち少なくとも一つは、一般式[3]、または一般式[4]のいずれかである。]
【0027】
また、本発明は、分子内に芳香族環を4つ以上もつ上記近赤外線吸収材料に関する。
【0028】
また、本発明は、X1〜X8がエーテル基またはエステル基であり、n1、n2、n4は、それぞれ独立に1〜30である上記近赤外線吸収材料に関する。
【0029】
また、本発明は、Mがニッケル、白金、パラジウム、コバルトもしくは銅である上記近赤外線吸収材料に関する。
【0030】
また、本発明は、バインダー樹脂100重量部および上記近赤外線吸収材料0.1〜10重量部からなる組成物に関する。
【0031】
また、本発明は、粘着剤用途である上記組成物に関する。
【0032】
また、本発明は、塗布剤である上記記載組成物に関する。
【0033】
また、本発明は、基材上に、上記組成物を含む層を形成してなる積層体に関する。
【0034】
また、本発明は、上記積層体を含んでなる光学フィルターに関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、溶媒への溶解性及びバインダー樹脂との相溶性が高く、可視領域の光透過率が高く800nm〜1100nmの近赤外域に幅広い吸収を持ち、かつ高耐久性を持つ近赤外吸収材料を提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、置換基として一般式[3]および/または一般式[4]をもつ、一般式[1]および/または一般式[5]を骨格として持つ新規な近赤外線吸収材料として用いることを特徴とする。
【0037】
一般式[1]においてAは置換基を有しても良い環状アルキル基または環状エーテル基であれば特に問題ないが、4から30員環であるのが好ましく、特に好ましくは5から10員環である。また、これらの環の任意の位置にさらに置換基を有してもよい。例を表1に示すが、これらに限定されない。A-1〜A-18中のRは一般式[5]の説明で例示するような任意の置換基を示し、少なくともひとつ一般式[3]および/または一般式[4]をもてば特に限定されない。
【0038】
【表1】

【0039】
【表1】

【0040】
一般式[5]においてR1〜R4は少なくとも一つ一般式[3]、または一般式[4]を含めば、残りは水素原子または1価の置換基ならば特に問題ない。置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。)、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基または水素原子であるのが好ましく、また、置換基は、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換の共役もしくは非共役の環を形成しても良い。
【0041】
R1〜R4としてさらに好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1〜30のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、またはモノもしくはジ置換アミノ基である。
【0042】
一般式[3]においてArは、(1+n3)価の置換もしくは無置換の芳香族基を表し、(1+n3)価の、置換もしくは未置換のアリーレン基またはヘテロアリーレン基を示す。
【0043】
一般式[3]においてAr3は特に限定されないが、好ましくは原子数が4〜60、さらに好ましくは4〜30である。
【0044】
本発明において置換もしくは未置換アリーレン基としては、好ましくは炭素数4〜60の単環または縮合環のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基である。具体例としてはフェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントロリンジイル、ピレンジイル、トリフェニレンジイル、ベンゾフェナントロリンジイル、ペリレンジイル、ペンタフェニレンジイル、ペンタセンジイルなどが挙げられ、これらの基に置換基を有しても良い。
【0045】
本発明において置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基とは、好ましくは炭素数6〜60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくは窒素原子、酸素原子または硫黄原子の少なくとも一つを含有する炭素数6〜60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくは炭素数6〜30の5員または6員の芳香族ヘテロ環基である。芳香族ヘテロ環基の具体例としては、ピロールジイル、フランジイル、チエニレン、ピリジンジイル、ピリダジンジイル、ピリミジンジイル、ピラジンジイル、キノリンジイル、イソキノリンジイル、シンノリンジイル、キナゾリンジイル、キノキサリンジイル、フタラジンジイル、プテリジンジイル、アクリジンジイル、フェナジンジイル、フェナントロリンジイルなどが挙げられ、これらの基に置換基を有しても良い。
【0046】
一般式[3]および一般式[4]において、Ar4〜Ar7は置換もしくは未置換の、アリール基またはヘテロアリール基を示す。
【0047】
本発明において置換もしくは未置換のアリール基としては、好ましくは炭素数6〜60の単環または縮合環のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリール基である。具体例としては、フェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等がある。
【0048】
本発明において置換もしくは未置換のヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数4〜60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくは窒素原子、酸素原子または硫黄原子の少なくとも一つを含有する炭素数4〜60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくは炭素数4〜30の5員または6員の芳香族ヘテロ環基である。具体例としては、チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等がある。
【0049】
本発明において置換もしくは無置換の芳香族基の例を表2に示すが、これらに限定されず、さらに置換基を有してもよい。表中のXは少なくともひとつはX3を示し、残りはX4を示す。
【0050】
【表2】

【0051】
【表2】

【0052】
【表2】

【0053】
【表2】

【0054】
【表2】

【0055】
一般式[3]および一般式[4]において、X〜X8はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を示す。特に好ましくは、スルフィド基、スルホン基、エーテル基、エステル基、アルキレン基、直接結合である。
【0056】
一般式[3]および一般式[4]において、n2、n4は0または自然数を表す。特に好ましくは0〜30、さらに好ましくは0〜20である。
【0057】
一般式[3]において、n3は自然数を表し、特に好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜7である。
【0058】
一般式[4]において、Bは炭素原子または珪素原子を表し、特に好ましくは炭素原子である。
【0059】
一般式[6]および[7]において、R5〜R14は少なくとも一つ一般式[3]および/または一般式[4]を含めば、残りは水素原子もしくは1価の有機残基ならば特に問題ないが、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。)、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、水素原子であるのが好ましく、また、置換基は、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環を形成しても良い。
【0060】
さらに好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数が1〜30のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基またはモノもしくはジ置換アミノ基である。
【0061】
本発明においてモノまたはジ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等がある。
【0062】
本発明において置換もしくは未置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などがある。
【0063】
本発明において置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等がある。
【0064】
本発明において置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0065】
本発明において置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等がある。
【0066】
本発明において置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等がある。
【0067】
本発明における置換基がさらにとりうる置換基とは、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。)、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基を表し、また、置換基は、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換をもつ共役もしくは非共役の環を形成しても良い。
【0068】
また、好ましい置換基しては、水素原子、炭素数が1〜20のアルキル基、アルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基またはモノもしくはジ置換アミノ基である。また、隣接した置換基同士で5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環を形成してもよく、これらの環の任意の位置にさらに置換基を有してもよい。
【0069】
本発明の一般式[1]及び一般式[5]のMは金属原子であれば特に限定はないが、ニッケル、コバルト、白金、パラジウムもしくは銅が好ましく、ニッケルが更に好ましい。
【0070】
本発明の近赤外線吸収材料は耐熱性、耐光性を考えると重量平均分子量は特に限定しないが、一般式[1]および[5]は500〜5000程度であることが好ましい。
【0071】
本発明の近赤外線吸収材料の一般式[1]の具体例を表3に示すが、これに限定されるものではない。
【0072】
【表3】

【0073】
【表3】

【0074】
【表3】

【0075】
【表3】

【0076】
【表3】

【0077】
【表3】

【0078】
【表3】

【0079】
本発明の近赤外線吸収材料の一般式[5]の具体例を表4に示すが、これに限定されるものではない。
【0080】
【表4】

【0081】
【表4】

【0082】
【表4】

【0083】
【表4】

【0084】
【表4】

【0085】
【表4】

【0086】
【表4】

【0087】
前記一般式[3]、または一般式[4]において、Ar4〜Ar8において、置換もしくは未置換のアリール基または置換もしくは未置換のヘテロアリール基を用い、Ar3に置換もしくは無置換の芳香族基を用いることにより、分散性を増すことができ、溶媒への溶解性、樹脂との相溶性を増すことができる。特に分子内に芳香環を4つ以上、さらに好ましくは6つ以上持つことが好ましい。
【0088】
前記一般式[3]、または一般式[4]において、X1〜X8にスルフィド結合基、エーテル結合基、ウレタン結合基、アミド結合基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキレン基を用いることにより極性及び水素結合性を増大させることが可能であり、溶媒への溶解性、樹脂との相溶性を増すことができる。
【0089】
近赤外線吸収材料の溶媒への溶解性、樹脂との相溶性を増すことによってHaze値が低下し、可視領域の光透過率が高く、800nm〜1100nmの近赤外域を効率的にカットすることができ、かつ高耐久性を持つ近赤外吸収材料を作ることができる。
【0090】
本発明の近赤外線吸収材料は、前記一般式[3]および/または一般式[4]を置換基とする、前記一般式[1]および/または一般式[5]を含む近赤外線吸収材料を含有するものであれば、その用途、構成等により特に制限を受けることはない。また、本発明の近赤外線吸収材料には、他に補助的に他の光吸収性色素や各種安定剤等を含有させることもできる。
【0091】
本発明の近赤外吸収材料は、必要に応じてバインダー樹脂と共に、基材上に、近赤外吸収材料を含む層を形成して、積層体とすることができる。積層体は、例えば、光学フィルター、光学反射板、光学拡散板などに使用できる。
【0092】
近赤外線吸収材料に用いることができる上記の他の近赤外線吸収色素としては、例えば、シアニン系、キノリン系、クマリン系、チアゾール系、オキソノール系、アズレン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、アゾ系、ベンジリデン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ナフトキノン系、アントロキノン系、トリフェニルメタン系、ジイモニウム系、前記一般式[1]、一般式[5]で表される金属錯体以外のN含有金属錯体系化合物等が挙げられる。
【0093】
本発明の近赤外線吸収材料は一般式[1]及び一般式[5]のほかにさらに、ニッケル錯体系色素および/またはフタロシアニン系色素および/またはジイモニウム系色素を含んでもよい。本発明の近赤外線吸収材料に対するこれらの色素の添加量としては、本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して50〜200重量部である。吸収スペクトルとの兼ね合いでフィルムとしたときの可視光透過率が70〜80%以上、近赤外領域の透過率は10%以下となる比率が好ましい。
【0094】
上記ニッケル錯体系色素としては、下記一般式[8]の構造を含むものならば限定されず、さらに一価のカチオンとのイオン化化合物となっていても良い。
【0095】
一般式[8]
【化9】

【0096】
[式中R15〜R18はOまたはSまたはNを表す。Rは、アリール基、ヘテロアリール基、アルキル基、モノまたはジ置換アミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリールオキシ基、または、アリールチオ基を表す。具体例は、前述したものと同じである。]
具体的にはAmerican Dye Source, Ink(Laser Dyes & Near Infrared Dyes)カタログ記載のADS845MC、ADS870MC、ADS880MC、ADS890MC、ADS920MC、ADS990MC等が挙げられるがこれらに限定したものではない。
【0097】
フタロシアニン系色素としては、下記一般式[9]で挙げられるものが好ましい。
一般式[9]
【化10】

[M1は金属原子、式中R19〜R34は水素原子もしくは置換基を表し、M1にはさらに置換基を有しても良い。]
具体的には株式会社日本触媒製イーエクスカラーIR-10、IR-12、IR-14等があるがこれらに限定されるものではない。
【0098】
さらにジイモニウム系色素としては、下記一般式[10]の構造を含むものが好ましい。
一般式[10]
【化11】

【0099】
[式Xはハロゲンイオン、無機酸イオンまたは有機酸イオンを表す。]
上記一般式[10]においてXにおけるハロゲンイオンとしては例えばヨウ素イオン、臭素イオン、塩素イオン、フッ素イオン等が挙げられる。また、無機酸イオンとしては例えばヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。有機酸イオンとしては例えば酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。例えば日本化薬(株)製IRG-022、IRG-023、IRG-040等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0100】
本発明の近赤外線吸収材料に対する本発明の近赤外線吸収材料以外の補助的に他の光吸収性色素や各種安定剤等の添加量としては、本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して好ましくは20〜200重量部、更に好ましくは本発明の近赤外線吸収材料100重量部に対して50〜150重量部である。吸収スペクトルとの兼ね合いでフィルムとしたときの可視光透過率が70〜80%以上、近赤外領域の透過率は10%以下となる比率が好ましい。
【0101】
本発明の近赤外線吸収材料におけるバインダー樹脂としては、例えば、脂肪族エステル系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂およびそれらの共重合樹脂を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料も挙げられる。
【0102】
本発明の近赤外線吸収材料は、塗布剤、粘着剤または接着剤として用いることができる。
【0103】
本発明でいう塗布剤とは、樹脂および/または有機溶剤または水を含む液状組成物またはペースト状の組成物からなる近赤外線吸収性を有する加工材料である。本発明の塗布剤は、本発明の近赤外線吸収材料を適宜の塗布剤に溶解または分散させることにより調製することができる。本発明の塗布剤は、油性の塗布剤であってもよく、水性の塗布剤であってもよい。また、本発明の塗布剤には、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。本発明の塗布剤の用途は、基材の表面被覆を目的とするものであれば特に制限されるものではなく、本発明の塗布剤によれば、近赤外線吸収性を有する塗膜を形成することができる。油性の塗布剤を構成するバインダー樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変性樹脂、およびそれらの共重合樹脂を挙げることができる。また、油性の塗布剤を構成する有機溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、およびそれらの混合溶媒を挙げることができる。一方、水性の塗布剤の調製方法としては、本発明の近赤外線吸収材料を微粉化処理して数マイクロメーター以下の微粒子を得、当該微粒子を、未着色のアクリル系のポリマーエマルジョン中に分散させる方法を挙げることができる。
【0104】
粘着剤として用いる場合、バインダーとして粘着性バインダーを使用しても良い。粘着性バインダーとしては、アクリル系、ウレタン系、ゴム系などが挙げられる。アクリル系として用いることのできるモノマーとしてはアクリルモノマー、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。本発明においては、粘着物性を確保するという点で、炭素数が4〜12のアクリル系モノマーを共重合に供することが好ましい。さらに好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0105】
これらは、粘着剤としての望ましい物性を得る目的のため、適宜選択して単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0106】
上述粘着性バインダーにおいてアクリル系モノマー、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系モノマー、及びその他のモノマー等を共重合してなるアクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は5万〜100万であることが好ましく、5万〜20万の低分子量アクリル系共重合体であることがより好ましい。
【0107】
さらに、粘着性バインダーと本発明の近赤外吸収材料とを含んでなる粘着剤は、基材上に公知の方法で塗工されて、積層体である粘着剤シートとなる。ここで用いられる基材は、後に記載する基材のほか、紙、金属、布なども用いられる。また、粘着性バインダーが、単独でシートを構成できる場合は、基材を必要としない粘着剤シートとなる。また、基材の両面に粘着剤が塗工される形態であってもよい。ただし、一方の面の粘着剤が、本発明の粘着剤を含まない場合であってもよい。
【0108】
本発明の近赤外線吸収材料の樹脂に対する添加量としては、樹脂100重量部に対して近赤外線吸収材料0.01〜20重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜15重量部である。この割合が0.01重量部未満である場合には、近赤外線領域の波長光を効率よく吸収することができず、一方、20質量部を超える場合には、近赤外線吸収材料の分散性が低下して透明性(可視光線透過性)が損なわれることがある。
【0109】
本発明における接着剤は本発明の近赤外吸収材料および接着剤からなる近赤外線吸収性を有する加工材料である。本発明の接着剤は、本発明の近赤外線吸収材料を接着性を有する適宜の媒体に溶解または分散させることにより調製することができる。
【0110】
また、本発明の近赤外線吸収材料や上記他の光吸収性色素の、光あるいは熱に対する安定化を図る目的で使用される上記各種安定化剤としては、例えば、ハイドロキノン誘導体(米国特許3935016号明細書、米国特許3982944号明細書)、ハイドロキノンジエーテル誘導体(米国特許4254216号明細書)、フェノール誘導体(特開昭54−21004号公報)、スピロインダン又はメチレンジオキシベンゼンの誘導体(英国特許出願公開2077455号明細書、英国特許2062888号明細書)、クロマン、スピロクロマン又はクマランの誘導体(米国特許3432300号明細書、米国特許3573050号明細書、米国特許3574627号明細書、米国特許3764337号明細書、特開昭52−152225号公報、特開昭53−20327号公報、特開昭53−17729号公報、特開昭61−90156号公報)、ハイドロキノンモノエーテル又はパラアミノフェノールの誘導体(英国特許1347556号明細書、英国特許2066975号明細書、特公昭54−12337号公報、特開昭55−6321号公報)、ビスフェノール誘導体(米国特許3700455号明細書、特公昭48−31625号公報)、金属錯体(米国特許4245018号明細書、特開昭60−97353号公報)、ニトロソ化合物(特開平2−300288号公報)、ジインモニウム化合物(米国特許465612号明細書)、ニッケル錯体(特開平4−146189号公報)、酸化防止剤(欧州特許820057号明細書)が挙げられる。また、本発明の光学フィルターは、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよく、本発明の近赤外線吸収材料の効果を阻害しない範囲において、ビスチオラート金属錯体アニオン等のクエンチャーアニオンを用いてもよい。
【0111】
本発明の光学フィルターの構成として、基材に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けてもよい。本発明の近赤外線吸収材料、上記の他の光吸収性色素や各種安定剤を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、基材又は任意の各層に含有させる方法、基材又は任意の各層にコーティングする方法、各層間のポリマーバインダーや接着剤、粘着材に混入させる方法、本発明の近赤外線吸収材料等を含有する近赤外線吸収層を上記の各層とは別に設ける方法等が挙げられる。本発明の近赤外線吸収材料は、各層間のポリマーバインダーや接着剤、粘着剤に混入させる方法及び近赤外線吸収層を設ける方法に好適である。
【0112】
本発明の近赤外線吸収材料の使用量は、光学フィルターの単位面積当たり、1〜1000mg/m、好ましくは5〜100mg/mである。1mg/m未満の使用量では、近赤外線吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/mを超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもあるため好ましくない。
【0113】
上記基材の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;あるいは、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン等の高分子材料が挙げられる。光学フィルター用途で有れば、基材は透明支持体であることが好ましく、透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0114】
これらの基材中には、光吸収性色素、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機微粒子等を添加することができ、また、これらの基材には各種の表面処理を施すことができる。
【0115】
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等の無機微粒子が挙げられる。
【0116】
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0117】
上記下塗り層は、本発明の近赤外線吸収材料を含有する近赤外線吸収層を設ける場合に、基材と近赤外線吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、近赤外線吸収層側の表面が粗面である層又は近赤外線吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成される。なお、近赤外線吸収層が設けられていない基材の面に下塗り層を設けて、基材とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するのために設けてもよく、また、下塗り層は、光学フィルターと画像形成装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、基材と近赤外線吸収層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。上記ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に近赤外線吸収層を形成することで、基材と近赤外線吸収層とを接着する。表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、20nm〜3μmであることが好ましく、50nm〜1μmであることがさらに好ましい。近赤外線吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン、高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターにおいては、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、基材を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤や硬膜剤等を添加してもよい。
【0118】
上記反射防止層中においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、同6−115023号、同8−313702号、同7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、同6−299091号、同7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、同6−56478号、同7−92306号、同9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0119】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いることもできる。
【0120】
さらに高い屈折率を得るため、ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物又は硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。ここで、主成分とは、無機微粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。また、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマー等を用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0121】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成し、そしてその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0122】
上記ハードコート層は、透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)を用いて形成することができる。また、シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0123】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面には潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0124】
上記の近赤外線吸収層、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0125】
本発明の近赤外線吸収材料を樹脂材の溶着に用いれば、レーザーを照射することにより樹脂材同士の色調差を小さく接合することができ、また当接面同士を確実に溶着させて十分な接合強度を得ることができる。
【0126】
本発明の光学フィルターを用いれば太陽光の可視光線を有効に透過させ、かつ熱線を確実にカットできる。また耐久性に優れているため長期にわたって太陽光に暴露しても熱線遮断能力が損なわれることはない。
【0127】
本発明の光学フィルターは、撮像装置(画像入力装置)におけるCCD(例えばシリコンフォトダイオードからなる光電変換素子)のための視感度補正フィルターとして好適に用いることができる。ここに、『CCDのための視感度補正フィルター』には、CCDに至る光路中に単独で配置される視感度補正フィルターのほか、リッド、レンズおよび保護板などが含まれるものとする。また、CCDを搭載する撮像装置としては、例えばビデオカメラ、デジタルカメラ、ボードカメラ、カラースキャナ、カラーファックス、カラー複写機、カラーテレビ電話装置などを挙げることができる。本発明の光学フィルターを搭載してなる撮像装置によれば、CCD(シリコンフォトダイオード)への入射光を、実質的に可視領域の光に限定することができ、この結果、正確な測光(露出操作)を行なうことができ、しかも、赤色成分の再現にも支障を来すことはない。
【0128】
本発明の光学フィルターは、CMOSイメージセンサまたは人工網膜が搭載された撮像装置(画像入力装置)のための視感度補正フィルターとして好適に用いることができる。本発明の光学フィルターを備えたCMOSイメージセンサおよび人工網膜、並びにこれらを搭載してなる撮像装置によれば、上述したCCDにおける効果と同様の効果を奏することができる。
【0129】
また本発明の光学フィルターは、赤外線通信装置(850〜950nmの光を媒体とする通信装置)が使用される環境におけるノイズカットフィルターとして好適に用いることができる。かかるノイズカットフィルターによれば、近赤外線の発生源(例えば自動ドア、リモコンなど近赤外線を用いた機械)をカバーし、当該発生源からの赤外線を遮断することにより、通信中におけるノイズの発生を確実に防止することができる。
【0130】
また、本発明の光学フィルターを、プラズマディスプレイ装置もしくは液晶パネルディスプレイ装置のパネルの前面に配置することによって、当該パネルから照射される近赤外線を効率よくカットすることができる。この結果、当該ディスプレイ装置の周囲において、近赤外線に起因するリモコンの誤動作などを生じさせることはない。
【0131】
本発明の光学フィルターは好ましくは、ディスプレイ用フィルターまたはCCD、CMOSイメージセンサー用フィルターとして配置されその配置方法は何ら制限を受けるものけるものではない。
【0132】
(実施例)
以下、製造例および実施例にて本発明を詳細に説明する。しかし本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0133】
[製造例1]化合物1の合成
【化12】

【0134】
窒素雰囲気下、ポタシウムイソプロピルキサンテート(25g、143mmol)、アセトン80mlに対し、ジクロロアセテート10.2g、71.5mmol)を加え、5時間リフラックス撹拌を行った。室温まで戻し、ろ過、脱溶剤を行い、得られたペーストを1.5L濃硫酸に0℃〜5℃において滴下した。その後室温まで戻し、4Lの氷水にゆっくりと注いだ。固体をろ過して得られたペーストをメタノールから再結晶を行い、化合物1を収率75%で得た。
【0135】
[製造例2]化合物2の合成
【化13】

【0136】
窒素雰囲気下、2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノール(15g、46mmol)、トリフェニルホスフィン(12g、46mmol)、THF(200ml)に対しジエチルアゾジカルボキシレート40%トルエン溶液(20g、46mmol)、2.3ジブロモ1-プロパノール(10g、46mmol)、THF(160ml)を加え、20時間室温で攪拌を行った。その後沈殿物を濾去し、脱溶剤を行うことにより、化合物2を粗収率80%で得た。
【0137】
[製造例3]化合物3の合成
【化14】

【0138】
化合物1(5.5g、26.5mol)、メタノール100mlの混合溶液を5℃に冷却し、ナトリウムメトキシド(2.9g、53mmol)を加え、1時間室温で攪拌した。続いて化合物2(14g、26.5mmol)とメタノール(25ml)を加え、7時間室温で攪拌し、ろ過、乾燥することにより、化合物3を収率50%で得た。
【0139】
[製造例4]P−1の合成
【化15】

【0140】
化合物3(6.6g、12mmol)、メタノール(1l)に対し、ナトリウムメトキシド(1.3g、24mmol)を加え、3時間室温で攪拌した。続いて塩化ニッケル6水和物(5.7g、24mmol)を加え、3時間室温で攪拌した後にテトラエチルアンモニウムブロミド(3.78g、18mmol)を加えて空気をバブリングした。得られた沈殿をろ過、乾燥した後、アセトン(1l)に溶解させた溶液に対し、ヨウ素(1.3g、5mmol)のアセトン(200ml)溶液を加え、室温で2時間攪拌した。得られた沈殿をろ過、乾燥、続いてエタノールから再結晶を行い、P-1を収率72%で得た。
【0141】
[製造例5]化合物4の合成
【化16】

【0142】
2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノールの代わりに安息香酸3-ヒドロキシフェニルエステルを、2,3ジブロモ1-プロパノールの代わりに1,4ジブロモ2-ブタノールを用いた他は製造例2と同様の方法により、化合物4を収率76%で得た。
【0143】
[製造例6]化合物5の合成
【化17】

【0144】
化合物2の代わりに化合物4を用いた他は製造例3と同様の方法により、化合物5を収率36%で得た。
【0145】
[製造例7]P−4の合成
【化18】

【0146】
化合物3の代わりに化合物5、塩化ニッケル6水和物の代わりに塩化銅2水和物を用いた他は製造例4と同様の方法により、P−4を収率45%で得た。
【0147】
[製造例8]化合物6の合成
【化19】

【0148】
2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノールの代わりに3,5-ジヒドロキシベンジルアルコールを、2,3ジブロモ1-プロパノールの代わりに2,3-ジブロモプロピオン酸を用いた他は製造例2と同様の方法により、化合物6を収率87%で得た。
【0149】
[製造例9]化合物7の合成
【化20】

【0150】
化合物2の代わりに化合物6を用いた他は製造例3と同様の方法により、化合物7を収率40%で得た。
【0151】
[製造例10]化合物8の合成
【化21】

【0152】
化合物3の代わりに化合物6、塩化ニッケル6水和物の代わりに塩化銅2水和物を用いた他は製造例4と同様の方法により、化合物8を収率52%で得た。
【0153】
[製造例11]P−12の合成
【化22】

【0154】
化合物8(1.5g、2.0mmol)、DMF(20ml)に対し、イミダゾール(820mg、12mmol)、tert-ブチルジフェニルクロロシラン(2.6g、9.6mmol)を加え、室温で10時間攪拌した。続いてトルエンで抽出、ろ過、脱溶剤、エタノールによる再結晶により、P−12を収率82%で得た。
【0155】
[製造例12]化合物9の合成
【化23】

【0156】
2,3ジブロモ1-プロパノールの代わりに2-ブロモエタノールを用いた他は製造例2と同様の方法により、化合物9を収率90%で得た。
【0157】
[製造例13]化合物10の合成
【化24】

【0158】
化合物1(5.5g、26.5mol)、メタノール100mlの混合溶液を5℃に冷却し、ナトリウムメトキシド(2.9g、53mmol)を加え、1時間室温で攪拌した。続いて化合物9(23g、53mmol)とメタノール(50ml)を加え、10時間室温で攪拌し、ろ過、乾燥することにより、化合物10を収率44%で得た。
【0159】
[製造例14]P−21の合成
【化25】

【0160】
化合物3の代わりに化合物10を用いた他は製造例4と同様の方法により、P−21を収率64%で得た。
【0161】
[製造例15]化合物11の合成
【0162】
【化26】

【0163】
2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノールの代わりにビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを、2,3ジブロモ1-プロパノールの代わりに3-ブロモ1-プロパノールを用いた他は製造例2と同様の方法により、化合物11を収率87%で得た。
【0164】
[製造例16]化合物12の合成
【0165】
【化27】

【0166】
化合物1(5.5g、26.5mol)、メタノール100mlの混合溶液を5℃に冷却し、ナトリウムメトキシド(1.5g、26.5mmol)を加え、1時間室温で攪拌した後、化合物11(9.8g、26.5mmol)とメタノール(25ml)を加え、2時間室温で攪拌した。再び5℃に冷却し、ナトリウムメトキシド(1.5g、26.5mmol)を加え、1時間室温で攪拌した後、1-ブロモドデカン(6.6g、26.5mmol)とメタノール(25ml)を加え、さらに3時間室温で攪拌した。得られた懸濁液をろ過、乾燥することにより、化合物12を収率76%で得た。
【0167】
[製造例17]P−34の合成
【化28】

【0168】
化合物3の代わりに化合物12、塩化ニッケル6水和物の代わりに塩化パラジウムを用いた他は製造例4と同様の方法により、P−34を収率32%で得た。
【0169】
[製造例18]化合物13の合成
【0170】
【化29】

【0171】
2,4-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェノールの代わりに5,5’-チオジサリチル酸を、2,3ジブロモ1-プロパノールの代わりに3-ブロモ1-プロパノールを用いた他は製造例2と同様の方法により、化合物4を収率82%で得た。
【0172】

[製造例19]化合物14の合成
【化30】

【0173】
化合物9の代わりに化合物13を用いた他は製造例13と同様の方法により、化合物14を収率40%で得た。
【0174】
[製造例20]P−38の合成
【化31】

【0175】
化合物3の代わりに化合物14、塩化ニッケル6水和物の代わりに塩化コバルト6水和物を用いた他は製造例4と同様の方法により、P−38を収率44%で得た。
本件で合成した化合物について物性値を表5に示す。
【0176】
【表5】

【0177】
[実施例1]
P−1、P−12、P−21、P−34、化合物15及び化合物16(特開2006-195399公報)を固形分25%の以下に示す樹脂(Mw=100000)溶液(括弧内に記載)に固形分に対して約2%混合し、PETフィルムに塗工した。このフィルムについてHaze値を表6に示した。
【0178】
【化32】

【0179】
【表6】

上記表6より、溶媒、樹脂との相溶性が増すことによりコート剤のHaze値が低くなることが分かる。
【0180】
[実施例2]
P−1、P−12、P−21、P−34、化合物15および化合物16を固形分25%のアクリル系粘着材(モノマー組成:アクリル酸ブチル60%、アクリル酸イソブチル30%、アクリル酸3%、アクリル酸−2−エチルヘキシル7%、溶剤組成:酢酸エチル80%、トルエン20%)に固形分に対して約2.0%混合し、PETフィルムに塗工し、膜厚20μmとした。このフィルムについてHaze値、可視光及びλmaxの透過率を表7に示す。
【0181】
【表7】

【0182】
上記表7において、可視光透過率は450nm〜650nmにおける平均透過率、λmaxとは極大吸収波長を示す。上記表7より相溶性の高いフィルムほどHaze値が低くなり、可視光の透過率が高く、λmaxの吸収率が高いことが分かる。
[実施例3]
上記フィルムにおいて、湿度95%、温度80℃、48時間の条件でテストをし、前後のHaze値、色味変化Δy値を表8に示した。
【0183】
【表8】

【0184】
表8より試験前後でのHaze値の変化及び色味変化Δyは化合物15及び化合物16よりP−1、P−12、P−21、P−34のほうが小さいことが分かり、耐久性が増していることが分かる。
【0185】
[実施例4]
上記フィルムにおいて、温度80℃、500時間の条件でテストをし、前後のHaze値、色味変化Δy値を表9に示した。
【0186】
【表9】

【0187】
上記表9より試験前後でのHaze値及びΔyの変化は化合物15及び化合物16よりP−1、P−12、P−21、P−34のほうが小さいことが分かり、耐久性に優れることが分かる。
【0188】
[実施例5]
上記フィルムにおいて、温度60%、湿度60%、100W/m2の条件で耐光試験を行い、前後のHaze値、色味変化Δy値を表10に示した。
【0189】
【表10】

【0190】
上記表10より、前出の耐久試験と比較すると色味変化が大きいが、化合物15及び化合物16よりP−1、P−12、P−21、P−34のほうが耐久性に優れていることが分かる。
【0191】
実施例1〜5より、本発明の近赤外吸収材料は近赤外領域に吸収を持ち、溶剤に対する溶解性、樹脂に対する相溶性を向上させ、耐久性に優れた材料を提供することができるということが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
以上、記載した通り、本発明の近赤外吸収材料は、これまでの同種の近赤外吸収材料に比べて、格段の溶解性と耐久性を付与できたため、例えば、色目の調整剤、難燃剤、金属捕集剤、不可視マーカなど様々な用途に使用することが可能になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表される近赤外線吸収材料。

一般式[1]
【化1】

[式中Mは金属原子を表し、Aは4〜30員の複素環を表し、かつAは少なくともひとつの下記一般式[3]、または一般式[4]の置換基を有する。]

一般式[3]
【化2】

[式中Ar3は(1+n3)価の置換もしくは無置換の芳香族基を表し、
Ar4は置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X3及びX4はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を表し、
n2は0または自然数を表し、
n3は自然数を表す。]

一般式[4]
【化3】

[式中Ar5〜Ar7はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X5からX8はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を表し、
Bは炭素原子または珪素原子を表し、
n4は0または自然数を表す。]

【請求項2】
下記一般式[5]で表される近赤外線吸収材料。

一般式[5]
【化4】

[式中Mは金属原子を表し、R1〜R4は、それぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表すが、少なくともひとつは下記一般式[3]、または一般式[4]いずれかである。]

一般式[3]
【化5】

[式中Ar3は(1+n3)価の置換もしくは無置換の芳香族基を表し、
Ar4は置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X3及びX4はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基、または直接結合を表し、
n2は0または自然数を表し、
n3は自然数を表す。]

一般式[4]
【化6】

[式中Ar5〜Ar7はそれぞれ独立に置換もしくは無置換の、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
X5からX8はそれぞれ独立にスルフィド基、スルホン基、エーテル基、ウレタン基、アミド基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アルキレン基、シリル基または直接結合を表し、
Bは炭素原子または珪素原子を表し、
n4は0または自然数を表す。]
【請求項3】
一般式[1]においてAが、下記一般式[6]または[7]で表される環である請求項1記載の近赤外線吸収材料。

一般式[6]
【化7】

[式中R5〜R8はそれぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表し、R5〜R8のうち少なくとも一つは、一般式[3]、または一般式[4]のいずれかである。]

一般式[7]
【化8】

[式中R9〜R14はそれぞれ独立に水素原子または1価の置換基を表し、R9〜R14のうち少なくとも一つは、一般式[3]、または一般式[4]のいずれかである。]
【請求項4】
分子内に芳香族環を4つ以上もつ請求項1〜3いずれか記載の近赤外線吸収材料。
【請求項5】
X1〜X8がエーテル基またはエステル基であり、n1、n2、n4は、それぞれ独立に1〜30である請求項1〜4いずれか記載の近赤外線吸収材料。
【請求項6】
Mがニッケル、白金、パラジウム、コバルトもしくは銅である請求項1〜5いずれか記載の近赤外線吸収材料。
【請求項7】
バインダー樹脂100重量部および請求項1〜6いずれか記載の近赤外線吸収材料0.1〜10重量部からなる組成物。
【請求項8】
粘着剤用途である請求項7記載の組成物。
【請求項9】
塗布剤である請求項7または8記載の組成物。
【請求項10】
基材上に、請求項7〜9いずれか記載の組成物を含む層を形成してなる積層体。
【請求項11】
請求項10記載の積層体を含んでなる光学フィルター。


【公開番号】特開2008−88398(P2008−88398A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350782(P2006−350782)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】