近赤外線吸収色素及び近赤外線吸収色素含有粘着剤
【課題】電子ディスプレイ画面から発生する近赤外線に対して優れた遮蔽機能を有し、かつ耐久性に優れた近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供することであり、特に、近赤外線波長域の中でも、比較的長波長領域に吸収を有する近赤外線吸収色素であって、耐久性に優れた近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収色素、それを含有した粘着剤、及びその粘着剤の層を有する近赤外線吸収フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルは、原理上、強い近赤外線と電磁波を放出する。この近赤外線は、特に750nm〜1200nmの波長領域において、コードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し誤動作を起こす原因となることから、750nm〜1200nmの範囲の近赤外線を遮蔽する機能を有したプラズマディスプレイパネルが望まれている。
【0003】
近赤外線の遮蔽に関しては、従来、銅や鉄等の金属イオンを含有させたもの、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、ジチオール金属錯体化合物、アミノチオフェノール金属錯体化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物等の近赤外線吸収色素を含有させたものが各種検討されている。
【0004】
上記のような近赤外線吸収色素は1種類の色素だけで上述の750nm〜1200nmといった範囲をカバーすることは不可能である。通常、複数種類の色素、具体的には近赤外線の中でも比較的短波長の近赤外線を吸収する色素と、比較的長波長の近赤外線を吸収する色素とを、通常は組み合わせて用いている。
【0005】
この使用形態として、(a)樹脂に近赤外線吸収色素を混練することによって作製した透明高分子フィルム、(b)樹脂又は樹脂モノマーを有機溶媒に溶解した樹脂濃厚液に、近赤外線吸収色素を分散又は溶解させ、キャスティグ法により作製した高分子フィルム、(c)樹脂バインダーと溶媒に色素を加え、透明高分子フィルムにコーティングしたもの、(d)近赤外線吸収色素を粘着剤に含有させたもの、等が考えられる。
【0006】
このうち、上記(a)から(c)の方法により、複数の層を貼りあわせて製品とすることが一般的である。しかしながら、製造時の手間、コスト及び光線透過率を考慮すると多くの層を積層するほど、コストアップ及び光線透過率の低下につながっているのが現実である。そこで、よりコストダウン及び光線透過率を向上させるためには、層数を削減するのが望ましい方向である。
【0007】
したがって、(d)の方法により層間の接着に用いる粘着剤中に色素を配合すれば、使用するプラスチックフィルムの層数が減り、コストダウン及び光線透過率の向上につながることが考えられる。この方法は、これまでに検討され、メチン色素や、テトラアザポルフィリン系色素等の可視光吸収色素を配合した着色粘着剤を用いたプラズマディスプレイ用前面フィルターが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0008】
また、プラズマディスプレイ用前面フィルターに好ましく用いられている従来の近赤外線吸収色素であるジインモニウム系色素、又は、ニッケルジチオール系色素も、粘着剤に配合することが提案されている(特許文献4〜8)。
【0009】
しかしながら、近赤外線吸収色素として、特に粘着剤用の近赤外線吸収色素として種々の性能に優れたニッケルジチオール系色素であっても、750nm〜1200nmの範囲の近赤外線領域の中でも比較的長波長領域に吸収域があるものは、耐久性が劣るという問題点があった。従って、近赤外線領域の中でも比較的長波長領域に吸収極大を有し、かつ耐久性に優れる色素が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−107566号公報
【特許文献2】特開2002−040233号公報
【特許文献3】特開2002−372619号公報
【特許文献4】特開平9−230134号公報
【特許文献5】特開平10−156991号公報
【特許文献6】特開2001−207142号公報
【特許文献7】国際公開WO 2006/118277号パンフレット
【特許文献8】国際公開WO 2008/050725号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献4〜8に提案された近赤外線吸収色素のうち比較的長波長に吸収極大を有するものは、粘着剤中に配合できても、実際にはその後の耐久性が悪化して退色が起こり、近赤外線の遮蔽ができなくなる等の問題があった。そのため、750nm〜1200nmの全波長域にわたって吸収を有する近赤外線吸収色素を粘着剤中に配合して用いることは、実用化には至っていなかった。
【0012】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、プラズマディスプレイパネル等の電子ディスプレイ画面から発生する近赤外線に対して優れた遮蔽機能を有し、かつ耐久性に優れた近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供することにある。また、特に、750nm〜1200nmの近赤外線波長域の中でも、比較的長波長領域に吸収を有する近赤外線吸収色素であって、耐久性に優れた近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する金属錯体が、粘着剤と混合しても、良好な耐熱性、耐湿熱性、耐光性等を有することを見出した。また、複数の近赤外線吸収色素を組み合わせることにより、必要な領域の近赤外線を有効に遮断できる粘着剤を提供できることを見出した。更に、750nm〜1200nmの近赤外線波長域の中で比較的長波長領域に吸収を有することと優れた耐久性とを両立できる近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[18]に存する。
[1]下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【化1】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【0015】
[2]前記一般式(1)において、X1及びX2が、それぞれ独立して、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)であることを特徴とする[1]に記載の近赤外線吸収色素。
[3]前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を有する複素環基であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の近赤外線吸収色素。
[4]前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいチエニル基であることを特徴とする[3]に記載の近赤外線吸収色素。
【0016】
[5]前記一般式(1)において、置換基Rf及び置換基Rgが、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基、又は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基であることを特徴とする[1]ないし[4]の何れかに記載の近赤外線吸収色素。
【0017】
[6]前記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素が、下記一般式(2a)又は(2b)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする[1]ないし[5]の何れかに記載の近赤外線吸収色素。
【化2】
[一般式(2a)及び(2b)中、
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
Rbは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す(ただし、Rbが分岐アルコキシ基である場合は、Rbは、ORaと同じ基である)。
M1は金属原子を示す。]
【0018】
[7]極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあることを特徴とする[1]ないし[6]の何れかに記載の近赤外線吸収色素。
【0019】
[8][1]ないし[7]の何れかに記載の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする近赤外線吸収色素含有粘着剤。
[9]更に、極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする[8]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
[10]極大吸収波長が、粘着剤に含有されている[1]ないし[7]の何れかに記載の近赤外線吸収色素より短波長であり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする[9]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【0020】
[11]前記第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする[10]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化3】
[一般式(3)中、
X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
M2は金属原子を示す。
(A)Xが置換基を有する窒素原子の場合;
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される化合物であり、
【化4】
(一般式(4a)中、
Rは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の置換基を示し、Rの末端が一般式(3)のベンゼン環に結合していてもよい。
R’は、任意の1価の置換基を示し、R’同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
R’同士が結合して縮合環を形成していないときは、n’は0〜4の整数であり、R’同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)
RX及びRYは、それぞれ独立して1価の置換基を示し、連結基を介して結合していてもよく、RX及びRYが結合して縮合環を形成していてもよい。)
(B)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合;
RYは1価の置換基を示す。
RXは下記一般式(4b)で表される化合物である。
【化5】
(一般式(4b)中、
Xhは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基を示す。
Rhは、任意の1価の置換基を示し、Rh同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
Rh同士が結合して縮合環を形成していないときは、pは0〜4の整数であり、Rh同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)]
【0021】
[12]前記一般式(3)で表される第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(5)で表される第二の近赤外線吸収色素であることを特徴とする[11]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化6】
[一般式(5)において、
R4は、水素原子;炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニルチオ基を示す。
R6は、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
R5は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基(ただし、R5が分岐アルコキシ基である場合は、R5は、OR6と同じ基である)。
M4は金属原子を表す。]
【0022】
[13]第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(6)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする[9]又は[10]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化7】
[一般式(6)中、
R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。
R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
M5は金属原子を示す。]
[14]更に、(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする[8]ないし[13]の何れかに記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【0023】
[15][8]ないし[14]の何れかに記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤の層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
[16][15]に記載の近赤外線吸収フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ用前面フィルター。
[17][16]に記載のプラズマディスプレイ用前面フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ。
【0024】
[18]下記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と、極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲内にある第二の近赤外線吸収色素を含有してなるものであることを特徴とする近赤外線吸収フィルター用色素混合物。
【化8】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、粘着剤との混合によっても色素の劣化が起こり難く、耐光性、耐熱性、耐湿熱性等に優れ、要すれば複数の近赤外線吸収色素を組み合わせることにより、750nm〜1200nmの範囲の近赤外線領域を広範囲に遮蔽する近赤外線吸収色素及びそれを含有する粘着剤を提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、近赤外線波長域の中で、例えば850nm〜1200nmの範囲のように比較的長波長領域に吸収を有し、かつ耐久性を兼ね備えた近赤外線吸収色素、及びそれを含有する粘着剤を提供できる。
【0027】
本発明によれば、反射防止層、電磁波遮蔽層等の別の機能を有する層との貼着に用いることにより、光学プラズマディスプレイパネル用フィルター等の電子ディスプレイ用フィルターの一部として用いることができ、電子ディスプレイ用フィルターの層の低減化と貼合加工の削減化によるコストダウンと光線透過率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】近赤外線吸収色素1の分光透過スペクトル測定結果である。
【図2】近赤外線吸収色素2の分光透過スペクトル測定結果である。
【図3】近赤外線吸収色素3の分光透過スペクトル測定結果である。
【図4】近赤外線吸収色素4の分光透過スペクトル測定結果である。
【図5】近赤外線吸収色素5の分光透過スペクトル測定結果である。
【図6】近赤外線吸収色素6の分光透過スペクトル測定結果である。
【図7】近赤外線吸収色素7の分光透過スペクトル測定結果である。
【図8】近赤外線吸収色素8の分光透過スペクトル測定結果である。
【図9】比較例1で製造した近赤外線吸収色素の分光透過スペクトル測定結果である。
【図10】近赤外線吸収色素1の、耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【図11】近赤外線吸収色素1の、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【図12】比較例1で製造した近赤外線吸収色素の、耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【図13】比較例1で製造した近赤外線吸収色素の、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0030】
<本発明の近赤外線吸収色素>
本発明の近赤外線吸収色素は、下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする。
【化9】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【0031】
一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。また、複素環を形成する炭素以外の原子(ヘテロ原子)としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が好適に挙げられる。また、該複素環は単環でも、2〜4個の環からなる縮合環でもよい。また、単環又は縮合環のそれぞれの環は何員環でもよいが、5員環又は6員環が好ましく、該複素環は、芳香族環であることが好ましい。更に、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、硫黄原子を有する複素環基であることが特に好ましい。
【0032】
「置換基を有していてもよい複素環基」の複素環としては、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピラン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イソベンゾフラン環、イソベンゾチオフェン環、イソインドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アクリジン環等由来の、5〜6員の単環又は2〜4縮合環を有する芳香族複素環基が共役的電子供与性を有する面から好ましい。中でも、近赤外線吸収性能、耐久性、化合物の溶解性、安定性等の点で、チオフェン環が特に好ましい。すなわち、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいチエニル基であることが特に好ましい。
【0033】
複素環基に結合している置換基としては、例えば、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子、−SRt(Rtは炭素数1〜15のアルキル基)、−CH2−(OCH2CH2)q−OCH2CH3等のエチレンオキサイド鎖含有基、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基、フェニル基、チエニル基等の芳香環基、ベンジル基、α-フェネチル基、β-フェネチル基等のアラルキル基、ニトリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシシカルボニル基、フッ素基を有するアルキル基等が挙げられる。上記のアルキル基は直鎖であっても分岐を有していてもよく、複素環基に結合している置換基は連結基を介して互いに結合していてもよい。
【0034】
また、複素環基の置換基としては、吸収極大をより長波長に微調整するためには、ハメットの置換基定数σpが、−0.9≦σp≦0.0であるものが好ましい。一方、複素環基の置換基としては、吸収極大をより短波長に微調整するためには、ハメットの置換基定数σpが、0.0≦σp≦0.9であるものが好ましい。より好ましい範囲は、吸収極大の波長と化合物の合成の容易さに依存するため、要求される特性に応じて適宜選択することができる。
【0035】
特に、合成の容易さからは、置換基が水素原子の場合が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基の場合も好ましい。また、置換基がハロゲン原子の場合も、複素環基の電子を吸引する効果があり好ましい。これらの中でも、質量当たりの吸光度を上げる目的から、また近赤外線吸収性能、耐久性等の点から、複素環基の置換基としては水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0036】
本明細書における「ハメットの置換基定数σp」とは、「化学の領域増刊122号 薬物の構造活性相関、96〜103頁(南江堂刊)」、「Hansch,C. et,al., J.Med.Chem.,16,1207 (1973)」、「Hansch,C. et,al., J.Med.Chem.,20,304 (1977)」等に記載されているハメットの置換基定数σpのことであり、σpは公知の方法によって測定することができる。
【0037】
また、複素環基に結合している置換基の数は特に限定はないが、1〜2個が好ましい。また、置換基が複素環基に結合している位置は特に限定はなく、ヘテロ原子に対してα位でもβ位でもよい。複素環基に結合している置換基は連結基を介して互いに結合していてもよい。
【0038】
一般式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示す。炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子は、特に限定はないが、X1及びX2中に1個だけ有することが好ましい。また、ベンゼン環A又はベンゼン環Bに直接結合する原子は、炭素原子、酸素原子、窒素原子又はケイ素原子の何れでもよい。X1及びX2中には、それぞれ炭素原子を2〜18有することが好ましく、3〜16有することが特に好ましい。炭素数が少な過ぎると、溶解性を低下させる場合があり、一方、炭素数が多過ぎると、融点が下がり化合物の単離に困難を伴う場合がある。炭素原子の鎖は、直鎖であっても、分岐を有していてもよいが、適度な溶解性を付与する点で分岐を有していた方が好ましい。
【0039】
X1及びX2としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、及び置換されていてもよい炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0040】
(a)炭化水素基
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、n−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;2−ヘキシン基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数4〜12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数4〜12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
【0041】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。このうち好ましくは炭素数6〜12程度の単環又は縮合2環式アリール基である。
【0042】
アラルキル基としては、上記した脂肪族炭化水素基とアリール基が結合した基が挙げられる。
【0043】
(b)複素環基
チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち好ましくは、炭素数3〜12の単環又は2環の複素環基である。
【0044】
(c)カルボニル基
アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、アシル基(−COR)のRは、先に挙げた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基等が挙げられる。また、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。更に、アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが、複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0045】
(d)炭化水素チオ基
炭化水素チオ基(−SR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
(e)シリル基
シリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基等のシリル基が挙げられる。好ましくは炭素数3〜18程度のアルキルシリル基である。
【0046】
(f)炭化水素アミノ基
炭化水素アミノ基(−NRR’)のR及びR’は、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
(g)炭化水素オキシ基
炭化水素オキシ基(−OR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0047】
以上の(a)〜(g)の基が置換基を有する場合、置換基の種類は色素の安定性や、粘着性樹脂への分散/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されない。
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。
【0048】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0049】
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有するアミノ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0050】
特に好ましくは、X1及びX2が、それぞれ独立して、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)、又は、−N(Ra)2(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)の場合であり、より好ましくは、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)の場合である。
【0051】
ここで、Raは炭素数3〜10の直鎖、分岐又はシクロアルキル基を示すが、より好ましくは、炭素数4〜9の直鎖、分岐又はシクロアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数5〜8の直鎖、分岐又はシクロアルキル基である。分岐アルキル基が上記した理由で更に好ましい。
【0052】
Raは、具体的には、例えば、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、5−メチルヘキシル基、6−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基等が挙げられる。
【0053】
Raは、フェニル基、シクロヘキシル基、ナフチル基、アントラセニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ベンジル基、フェネチル基等の置換基を有していてもよい。
【0054】
X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。「連結基」としては、単なる単結合「−」、−O−、−NH−、−OCH2CH2O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CONR−、−SS−、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニル基、ビフェニル基、エステル基等が挙げられる。
【0055】
一般式(1)において、Mは金属原子を示す。Mは、4配位の形態をとることができる金属原子であれば特に限定はされない。好ましくは、Ni、Pd、Pt等の10族金属原子;Co;Fe;Cu;Ag;Au;Zn等が挙げられる。より好ましくは10族金属原子であり、特に好ましくはNi又はPdである。
【0056】
一般式(1)において、ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよい。また、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数である。Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は1〜10個、好ましくは1〜5個の任意の1価の置換基を有していてもよい。
【0057】
また、ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよい。また、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数である。Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は1〜10個、好ましくは1〜5個の任意の1価の置換基を有していてもよい。
【0058】
ここで、置換基Rf及び置換基Rgは、それ独立に任意の置換基であり、近赤外線吸収色素の安定性、粘着性樹脂への溶解性等に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。
【0059】
置換基Rf及び置換基Rgは、具体的には、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基からなる群より選択される基が挙げられる。
【0060】
置換基Rf及び置換基Rgは、置換基を有していてもよい。置換基Rf及び置換基Rgが有する置換基としては、具体的には、例えば、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0061】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜10程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜10程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜10程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。上記具体的な基は、前記した置換基を有していることも好ましい。
【0062】
好ましくは、「フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等の置換基を有していてもよい『アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基』」;置換基を有するアミノ基;フッ素原子;塩素原子等である。
【0063】
より好ましい置換基Rf及び置換基Rgは、具体的には、それぞれ独立して、フッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基、又は、フッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基であり、特に好ましい置換基Rf及び置換基Rgは、一般式(2a)及び一般式(2b)に関して後述するRbである。
【0064】
隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。ここで、「連結基」としては、例えば、前記したものと同様のものが挙げられる。連結して形成された環は脂肪族環でも芳香族環でもよい。すなわち、結合して縮合環を形成していてもよい。縮合環としては、ベンゼン環(ベンゼン環Aと共に結果としてナフタレン環になる)、ナフタレン環等の炭素数6〜20程度の環が挙げられる。
【0065】
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1〜2の整数であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。mが0であると、合成時に混合物を形成する可能性や色素分子の相溶性低下の可能性があり、mが大き過ぎると分子量が大きくなり、吸光係数の低下を招く可能性がある。
【0066】
Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。すなわち、縮合環を形成するm個の原子とは関係なく、任意の1価の置換基を有していてもよい。
【0067】
置換基Rfのベンゼン環への置換位置は特に限定はないが、一般式(2a)及び一般式(2b)において、Rbとして示したような置換位置で置換されていることが、単一の構成中単体を得る点から好ましい。
【0068】
以上、ベンゼン環Aの置換基であるRfについて記載したが、ベンゼン環Bの置換基であるRgについても上記と同様である。
【0069】
前記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、下記一般式(2a)又は(2b)で表される近赤外線吸収色素であることが、近赤外線吸収色素の適切な吸収波長域(極大吸収波長);耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性;粘着剤中での安定性;粘着性樹脂への良分散・良溶解性;等の点で特に好ましい。
【0070】
【化10】
[一般式(2a)及び(2b)中、
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
Rbは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す(ただし、Rbが分岐アルコキシ基である場合は、Rbは、ORaと同じ基である)。
M1は金属原子を示す。]
【0071】
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示すが、ここでの置換基に関しては前記した通りである。Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示すが、Raに関しては上記した通りである。M1の金属原子に関しても上記した通りである。
【0072】
Rbは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す。Rbとしては、具体的には、例えば、メチル基;エチル基;n−プロピル基、イソプロピル基;n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基;n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基;n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0073】
Rbとしては、一般式(1)のRf、Rgにおいて好ましい基として挙げたものも挙げられ、その基に対する好ましい置換基についても同様である。
【0074】
また、Rbがアルコキシ基の場合は、該アルコキシ基中のアルキル基としては、具体的には、例えば、Rbとして上記した基のうち、メチル基とエチル基を除き、n−ヘプチル基、メチルヘキシル基、エチルペンチル基、ジメチルペンチル基;n−オクチル基、メチルヘプチル基、エチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基;n−ノニル基、メチルオクチル基、エチルヘプチル基、ジメチルヘプチル基;n−デシル基、メチルノニル基、エチルオクチル基、ジメチルオクチル基;等を加えた基が挙げられる。
【0075】
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、750nm〜1200nmの波長領域において、遮蔽効果を示すが、更に、極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあるものであることが特に好ましい。すなわち、本発明の近赤外線吸収色素は、耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性に優れ、同時に極大吸収波長域も長波長側(850nm〜1200nm)にすることが可能である。その性能両立の特長を生かすためにも、本発明の近赤外線吸収色素は、極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあるものが特に好ましく、880nm〜1100nmの範囲にあるものがより好ましく、900nm〜1000nmの範囲にあるものが特に好ましい。
【0076】
ここで、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、リガンド(配位子)部分の分子量が1000以下のものが好ましく、700以下のものが特に好ましい。
また、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素のモル吸光係数は、通常5000以上、好ましくは8000以上である。
【0077】
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒に対する溶解度は、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
【0078】
<<本発明の近赤外線吸収色素の具体例>>
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の好ましい例を、以下に例示する。
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】
【化14】
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
【化17】
【0085】
【化18】
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
【化21】
【0089】
【化22】
【0090】
【化23】
【0091】
【化24】
【0092】
【化25】
【0093】
【化26】
【0094】
【化27】
【0095】
【化28】
【0096】
【化29】
【0097】
【化30】
【0098】
【化31】
【0099】
【化32】
【0100】
【化33】
【0101】
【化34】
【0102】
<<本発明の近赤外線吸収色素の合成方法>>
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の好ましい製造方法は、特に限定はされるものではないが、例えば、以下の通りである。すなわち、まず、置換フェノール、置換アニリン等を出発原料とし、水酸基又はアミノ基を、KOH、NaOH、K2CO3、Na2CO3、Cs2CO3等を塩基として用い、相関移動触媒(テトラアルキルアンモニウム塩)の存在下、アルキルハライドにより、エーテル化又はN,N−アルキル化する。
【0103】
得られたエーテル体又はN,N−ジアルキルアニリンに対して、例えば、Chem.Rev.,106巻,2126〜2208ページ(2006年)記載の酸存在下Friedel−Craftsアシル化を行う。ここで、酸としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化スズ、ランタノイドトリフラート、ゼオライト、プロトン酸(硫酸、リン酸等)、塩化鉄、塩化亜鉛、ポリリン酸等が挙げられる。
【0104】
続いて、カルボニル基の隣のα−水素を、四級アンモニウムトリブロミド(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド等)、又は、ピリジニウムトリブロミドにより、選択的にα位のみをモノブロモ化する。
【0105】
次いで、エトキシキサントゲン酸カリウム又はイソプロポキシキサントゲン酸カリウム)により、ブロモ基を−SC(S)OEt基又は−SC(S)O−isoPr基(ここで、Etはエチル基、isoPrはイソプロピル基を意味する。)に変換し、臭化水素酢酸溶液(HBr−AcOH)中で閉環反応を行い、前駆体である1,3−ジチオール−2−オン誘導体を得る。ここで、臭化水素酢酸溶液にはハロゲン系溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなど)を共存させていてもよい。
【0106】
更に、例えば、Mol.Cryst.Liq.Crst.Lett,56巻,249頁(1980年)等に記載の公知の方法等で含金属錯体化して合成できる。
【0107】
<<本発明の近赤外線吸収色素の新規性>>
本願発明の近赤外線吸収色素は、一般式(1)において、R1及びR2が複素環基を有するものである。従来公知の一般式(1)におけるR1又はR2がベンゼン環である化合物については、以下のような臭素/酢酸(Br2/AcOH)によるブロモ化の方法が、一般的な方法として知られているにすぎない。
【0108】
【化35】
【0109】
一方、一般式(1)におけるR1及びR2が複素環の場合は、通常ヘテロ原子に対してα位にある部位の反応性が高いため、上記従来公知の方法では、一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の前駆体であるリガンド(配位子)部分の合成は困難であった。このことは、後述の実施例における、合成例1−2の条件1の方法からも明らかである。すなわち、下記反応式のように、複素環がチオフェン環の場合(すなわち、一般式(1)においてR1及びR2がチエニル基の場合)、ブロモ化工程で、Brがチオフェン環に反応してしまい、カルボニル基の隣のα−水素をBr2で選択的に置換することができなかった。
【0110】
【化36】
【0111】
本発明により、上記した通り、従来法の臭素(Br2)に代えて、四級アンモニウムトリブロミド(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド等)、ピリジニウムトリブロミド等のトリブロミド類を用いることによって、初めて、カルボニル基の隣のα−水素を、選択的にモノブロモ化することができたのである。このことは、後述の実施例における、合成例1−2の条件2の方法からも明らかである。
【0112】
また、上記反応式で、Brが結合した位置が既にアルキル基等で置換されている場合は、その位置にはBrは反応し得ないため、上記の従来法でも本発明の化合物は合成可能であると思われるが、実際には、第2工程(Friedel−Craftsアシル化)の段階から、ベンゼン環をα−アルキルチオフェン環に代える必要があり、現実的ではない。後述の実施例の合成例[2−1]〜[2−3]から明らかなように、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、本発明の製法によって初めて合成が可能になったのである。
【0113】
また、特開2004−069952号公報、特開2008−308622号公報には、R1、R2がチエニル基の場合が記載されている。しかしながら、そこに記載の発明は、X1、X2が短い基であり、一般式(1)の要件である「X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し」に該当しない。X1、X2が短い基の場合は、Hgを用いる方法等で合成が可能であり、これらの公報では、その方法が用いられたと考えられるが、かかる方法では、長い基であるX1、X2を有する本願発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素のリガンド部分は合成できない。
【0114】
<近赤外線吸収色素含有粘着剤>
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は粘着剤に含有されて使用されても、高い安定性を発揮できる。色素毎の層を形成させる必要はなく、色素の混合によっても粘着剤を調製できる点においても、本発明の近赤外線吸収色素は優れている。本発明の他の態様は近赤外線吸収色素を含有する粘着剤である。近赤外線吸収色素含有粘着剤中において、上記した本発明の近赤外線吸収色素は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0115】
<近赤外線吸収色素混合物>
また、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、一般式(1)で表される近赤外線吸収色素を1種又は2種以上を混合して近赤外線吸収色素混合物として用いることができる。また、後述する極大吸収波長が750nm〜1200nm、好ましくは750nm〜950nmの範囲内にある1種又は2種以上の第二の近赤外線吸収色素と混合して近赤外線吸収色素混合物として用いることができる。本発明の近赤外線吸収色素混合物は、固体状の近赤外線吸収色素を混合したものでもよいし、近赤外線吸収色素を溶媒に溶解又は分散させたものであってもよい。本発明の近赤外線吸収色素混合物は近赤外線吸収フィルター用に好適に用いることができる。
【0116】
<<第二の近赤外線吸収色素>>
上記した近赤外線吸収色素含有粘着剤(以下、単に「粘着剤」と略記する場合がある)は、前記「本発明の近赤外線吸収色素」に加えて、更に、極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することが、吸収波長域を広げるために好ましい。
【0117】
第二の近赤外線吸収色素としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げられる。無機系顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等が挙げられる。有機系顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が挙げられる。
【0118】
また、有機系染料、色素としては、後述する一般式(3)で表される近赤外線吸収色素等の金属錯体系、アジン系、アゾ系、ニッケルアゾ錯体系、アゾメチン系、アントラキノン系、インジゴイド系、インドアニリン系、オキサジン系、オキソノール系、キサンテン系、キノフタロン系、シアニン系、スクアリリウム系、スチルベン系、テトラアザポルフィリン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ピロメテン系、ジピロメテン系、ベンジリデン系、ポリメチン系、メチン系、クロム錯塩系等が挙げられる。
【0119】
上記した「本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素」は、近赤外線吸収色素の極大吸収波長として要求される750nm〜1200nmの中でも、長波長側(例えば、850nm〜1200nmの範囲)に極大吸収波長を有するため、粘着剤に更に含有させる「第二の近赤外線吸収色素」の極大吸収波長は、近赤外線領域の中でも比較的短波長側の750nm〜950nmの範囲にあることが好ましい。それによって、混合(併用)の効果として、広い波長領域に遮蔽効果を有するようになり、原理上、強い近赤外線を放出する、例えばプラズマディスプレイパネル等の周辺でも、コードレスホン、近赤外線リモコン、周辺にある他の電子機器等の誤動作を防止することができる。
【0120】
すなわち、「第二の近赤外線吸収色素」は、極大吸収波長が粘着剤に含有されている上記した「本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素」より短波長にあり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にあるものであることが好ましい。
【0121】
粘着剤の調製において併用される、極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素としては、上記した系のものが挙げられるが、特に好ましくは、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収色素である。
【0122】
【化37】
[一般式(3)中、
X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
M2は金属原子を示す。
(A)Xが置換基を有する窒素原子の場合;
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される化合物であり、
【化38】
[一般式(4a)中、
Rは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の置換基を示し、Rの末端が一般式(3)のベンゼン環に結合していてもよい。
R’は、任意の1価の置換基を示し、R’同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
R’同士が結合して縮合環を形成していないときは、n’は0〜4の整数であり、R’同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
RX及びRYは、それぞれ独立して1価の置換基を示し、連結基を介して結合していてもよく、RX及びRYが結合して縮合環を形成していてもよい。]
【0123】
(B)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合;
RYは1価の置換基を示す。
RXは下記一般式(4b)で表される化合物である。
【化39】
[一般式(4b)中、
Xhは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基を示す。
Rhは、任意の1価の置換基を示し、Rh同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
Rh同士が結合して縮合環を形成していないときは、pは0〜4の整数であり、Rh同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【0124】
以下、一般式(3)について詳述する。
【0125】
一般式(3)中、M2は、4配位の形態をとり得る金属原子であれば特に限定されない。好ましくは、Ni、Pd又はPtの10族金属原子;Co;Fe;Cu;Ag;Au;Znが挙げられる。より好ましくは10族金属原子であり、特に好ましくはNi又はPdである。
【0126】
X、Yはそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有する窒素原子を表わす。
【0127】
(1)Xが置換基を有する窒素原子の場合
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される基である。
【0128】
【化40】
【0129】
一般式(1)で表される化合物は、化合物全体としてRを2個有するが、R同士が連結基を介して結合していてもよい。また、(4a)は、縮合環を形成していてもよい。
一般式(4a)において、R’は、任意の置換基であり、R’同士が結合して縮合環を形成してもよい。n’は、単環の場合0〜4であり、縮合環の場合0〜10である。
【0130】
Rは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する、1価の置換基を示す。
【0131】
炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する、1価の置換基としては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、及び置換されていてもよい炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0132】
(a)炭化水素基
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、n−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;2−ヘキシン基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数4〜12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数4〜12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
【0133】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。このうち好ましくは炭素数6〜12程度の単環又は縮合2環式アリール基である。アラルキル基としては、上記した脂肪族炭化水素基と上記したアリール基の結合したものが挙げられる。
【0134】
(b)複素環基
チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち好ましくは、炭素数3〜12程度の単環又は2環式5員環複素環基である。
【0135】
(c)カルボニル基
アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、アシル基(−COR)のRは、先に挙げた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基等が挙げられる。また、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。更に、アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが、複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0136】
(d)炭化水素チオ基
炭化水素チオ基(−SR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0137】
(e)シリル基
シリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基等のシリル基が挙げられる。好ましくは炭素数3〜18程度のアルキルシリル基である。
【0138】
(f)炭化水素アミノ基
炭化水素アミノ基(−NRR’)のR及びR’は、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0139】
(g)炭化水素オキシ基
炭化水素オキシ基(−OR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0140】
以上の(a)〜(g)の基が置換基を有する場合、置換基の種類は色素の安定性や、粘着性樹脂への分散/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されない。
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。
【0141】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0142】
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有するアミノ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0143】
R’は、色素の安定性や、粘着性樹脂への分散/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されず、任意の1価の置換基である。
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。
【0144】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0145】
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有するアミノ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0146】
RX及びRYはそれぞれ独立に、1価の置換基を表し、RX及びRYが連結基を介して結合してもよい。好ましくは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子が挙げられる。これらの具体例は、先の一般式(A)のR’の具体例が当てはまる。
【0147】
より好ましくは、RX及びRYが連結基を介して結合する場合であり、具体的には、
【化41】
のような、単環、縮合環からなる構造が挙げられ、より好ましくは、
【0148】
【化42】
であり、特に好ましくは、
【0149】
【化43】
である。
【0150】
これらの構造は、1価の置換基を有していてもよい。具体的には(a)において置換していてもよい置換基として述べたものと同様である。この中でも好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子で、特に好ましくは3級、2級の分岐鎖状アルキル基である。
【0151】
RX及びRYが連結基を介して結合して上記の構造(ベンゼン環)を形成する場合の構造は、以下の式(3a)で表される。
【0152】
【化44】
【0153】
一般式(3a)中、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。R11及びR12は、連結基を介して結合していてもよい。
Zは、酸素原子、硫黄原子、又は置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
【0154】
芳香族環は、任意の置換基を有していてもよく、該置換基は隣り合う基が連結基を介して結合してもよく、又は、更に縮合環を形成していてもよい。
M2は金属原子を表す。
ここで、一般式(3a)のZは、一般式(3)のY、一般式(3a)のM2は一般式(3)のM2に該当する。また、一般式(3a)のR11及びR12は一般式(a)のRに該当する。
【0155】
更に好ましい例としては、以下の(1)−(i)〜(iii)が挙げられる。
(1)−(i)Xが置換基を有する窒素原子、かつ、Yが酸素原子、かつ、RxとRyとが連結基を介して結合している場合である。特に、ベンゼン環を形成している場合には、RxとRyとが結合して形成されたベンゼン環は、分岐鎖アルキル基で2個以上置換されていることが望ましい。窒素原子の置換基である上記式(4a)のRとしては、特に、炭素数3〜10程度の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖アルキル基、又は、炭素数2〜10程度の置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、アルキルチオ基、又は、置換アミノ基である。R同士は、連結基を介して結合していてもよい。
【0156】
(1)−(ii)Xが置換基を有する窒素原子、かつ、Yが硫黄原子、かつ、RxとRyとが連結基を介して、結合している場合である。特に、ベンゼン環を形成している場合には、RxとRyとが結合して形成されたベンゼン環は、置換基としてアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子を有するものが好ましい。窒素原子の置換基である上記式(4a)のRとしては、特に、炭素数3〜10程度の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖アルキル基、又は、炭素数2〜10程度の置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、アルキルチオ基、又は、置換アミノ基が好ましい。R同士は、連結基を介して結合していてもよい。
【0157】
(1)−(iii)Xが置換基を有する窒素原子、かつ、Yが水素を有する窒素原子、かつ、RxとRyとが連結基を介して、結合している場合である。特に、ベンゼン環を形成している場合には、RxとRyとが結合して形成されたベンゼン環の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。窒素原子Xの置換基である上記式(4a)のRとしては、特に、炭素数3〜10程度の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖アルキル基、又は、炭素数2〜10程度の置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、アルキルチオ基、又は、置換アミノ基が好ましい。R同士は、連結基を介して結合していてもよい。
【0158】
(2)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合
RXは下記一般式(4b)で表される基である。
【0159】
【化45】
【0160】
前記の一般式(3)で表される化合物は、化合物全体としてRを2個有するが、R同士で連結基を介して結合していてもよい。
一般式(4b)において、Xhは炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する、1価の置換基を示す。Xhとしては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基が挙げられる。具体的には先の一般式(3)の一般式(4a)のRのうち炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有するものである。
【0161】
Rhは、任意の置換基であり、Rh同士が結合して縮合環を形成してもよい。pは、単環の場合0〜4である。縮合環が形成されている場合は、置換基Rhの置換基は0〜10である。
Rhは、該置換基の種類は色素の安定性や、粘着性樹脂への分解/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されない。
【0162】
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。具体的には先の一般式(3)の一般式(4a)のR’の具体例と同様である。
【0163】
RYは、1価の置換基を表す。RYとしては、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子が挙げられる。具体的には先の一般式(3)の一般式(4a)のR’の具体例と同様である。
【0164】
以上述べた中で、より好ましい例としては、以下である。X、Yが硫黄原子、かつ、RXが一般式(4a)を有する場合。このときの構造は、以下の式(3b)で表される。
【0165】
【化46】
【0166】
一般式(3b)中、R13及びR14はそれぞれ独立に1価の置換基を示す。
X11及びX12は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基である。X11及びX12が連結基を介して結合していてもよい。
【0167】
芳香族環は、任意の置換基を有していてもよく、隣り合う基が連結基を介して結合してもよい。
M3は、金属原子を表す。
【0168】
ここで、一般式(3b)のR13及びR14は一般式(3)のRX、一般式(3b)のM3は一般式(3)のM2に該当する。一般式(3b)のX11及びX12は前記一般式(a)のRに該当する。
【0169】
なお、一般式(3b)で表される化合物の中でも、以下の一般式(5)に示す化合物は、粘着性樹脂と混合して近赤外線吸収粘着剤に使用する第二の近赤外線吸収色素として、特に好ましく使用できるものである。
【0170】
【化47】
[一般式(5)において、
R4は、水素原子;炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニルチオ基を示す。
R6は、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
R5は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基(ただし、R5が分岐アルコキシ基である場合は、R5は、OR6と同じ基である)。
M4は金属原子を表す。]
【0171】
一般式(5)のR4は、一般式(3)のRYに該当し、一般式(5)のR5は、一般式(3)中の一般式(4b)のRhに該当し、一般式(5)の「−OR6」は、一般式(3)中の一般式(4b)の「−Xh」に該当し、一般式(5)のM4は一般式(3)のM2に該当する。M4はNiであることが特に好ましい。
【0172】
また、第二の近赤外線吸収色素としては、下記一般式(6)で表される近赤外線吸収色素も好ましい。
【化48】
[一般式(6)中、
R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。
R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
M5は金属原子を示す。]
【0173】
一般式(6)中、R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。M5は、平面四座配位をとる金属であれば何でもよい。
M5としては、Ni,Pd,Pt,Co,Fe,Cu,Au,Cr,Mnが、好ましい。更に好ましくは、Ni,Pdであり、最も好ましくは、Niである。
【0174】
R7及びR8の炭化水素基として、以下の基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下の分岐鎖アルキル基である。
【0175】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。このうち好ましくは炭素数12以下の単環又は縮合2環式アリール基である。更に好ましくは、フェニル基である。
【0176】
複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち特に、好ましくは、チエニル基である。
【0177】
上記の置換基を有してもよいカルボニル基としては、アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。更に具体的には、アシル基(−COR)のR、及び、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものが挙げられる。アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが挙げられる。複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0178】
これらの中で、R7及びR8として更に好ましくは、フェニル基である。R9及びR10は、R7で述べた分岐鎖アルキル基、特に、2級アルキル基、又は、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
【0179】
特に好ましいR7及びR8の組み合わせは、以下の(a)〜(d)である。
(a)R7及びR8において、p−位かつ/又は、m−位に置換されていてもよいフェニル基を有する場合;
フェニル基の置換基は、1価の置換基で、隣りあった置換基は、直接、又は、連結基を介して結合していてもよい。例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基又はシリル基等が挙げられる。
【0180】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基又はアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0181】
特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基を置換するアミノ基、フッ素原子、塩素原子を有するフェニル基である。
【0182】
(b)R7は、置換基が少なくともオルト位にあるフェニル基であり、かつR8が、水素原子の場合;
オルト位の置換基が、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の置換基である場合が特に好ましい。具体的には、炭化水素基としては、以下の(1)〜(3)である。
【0183】
(1)脂肪族炭化水素基としては、n−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;2−ヘキシン基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数4から12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数4から12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
【0184】
(2)アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基等が挙げられる。このうち好ましいのは炭素数6以上、炭素数12以下の単環又は縮合2環式アリール基である。
【0185】
(3)複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち好ましいのは、炭素数3以上、12以下の単環又は2環式5員環複素環基である。
【0186】
カルボニル基としては、アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。更に具体的には、アシル基(−COR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基等が挙げられる。カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが挙げられる。複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0187】
炭化水素チオ基(−SR)のRとしては、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アミノ基(−NRR’)のR、R’としては、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0188】
炭化水素オキシ基(−OR)のRとしては、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
シリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基等のシリル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以上、18以下のアルキルシリル基である。
【0189】
これらの中でR7及びR8として、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくは、分岐鎖アルキル基、又は、分岐鎖アルコキシ基である。オルト位以外にも置換基を有していてもよいが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。
【0190】
(c)R7は、置換基が少なくともオルト位にあるフェニル基で、R8が、置換基を有するフェニル基の場合;
R7のオルト位の置換基は、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する、1価の置換基の場合が好ましい。特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。オルト位以外にも置換基を有していてもよいが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。R8の置換基は、フェニル基のメタ位かつ/又はパラ位にあることが好ましく、任意の1価の基であるが、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。
【0191】
(d)R7及びR8は、置換基が少なくともオルト位にあるフェニル基の場合;
R7及びR8のオルト位の置換基は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計2以上有する、1価の置換基の場合が好ましい。特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくは、分岐鎖アルキル基、又は、分岐鎖アルコキシ基である。オルト位以外にも置換基を有していてもよいが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。
【0192】
<<<第二の近赤外線吸収色素の具体例>>>
第二の近赤外線吸収色素の好ましい具体例を以下に示す。
【化49】
【0193】
【化50】
【0194】
【化51】
【0195】
【化52】
【0196】
【化53】
【0197】
<<粘着性樹脂>>
本発明の近赤外線吸収色素含有粘着剤は、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と粘着性樹脂とを含有するものである。また、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と、「極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素」、特に好ましくは「極大吸収波長が、粘着剤に実際に含有されている本発明の近赤外線吸収色素より短波長にあり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素」と、粘着性樹脂とを含有するものであってもよい。以下、「本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素」と「第二の近赤外線吸収色素」を総称して、単に「近赤外線吸収色素」と記載することがある。
【0198】
本発明の粘着剤に用いる粘着性樹脂とは、2つの同種又は異種の固体を結合する物質であり、3つの特性を有する必要がある。第1の特性としては、流動して2つの固体を密着させること。第2の特性としては、各々の被着体に対して濡れ性があり被着体表面と強固に結合すること。第3の特性は、粘着剤を介して結合した固体が粘着剤自体の破壊により剥がれないことが必要である。このため、粘着性樹脂(感圧接着剤)のガラス転移温度(Tg)は、流動性が良くなるようにTgが低い必要がある。具体的にはTgが10℃以下の成分(樹脂)を1種類以上含むことが好ましい。粘着性の点では、Tgが10℃以下の成分(樹脂)の、粘着性樹脂全体に対する割合は1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が最も好ましい。
【0199】
中でも粘着性樹脂全体としてTgが10℃以下であることが好ましい。また、被着体の表面との接着性を良好にするためには、被着体表面と親和性のある官能基を分子中に含有する必要がある。また、粘着性樹脂だけで十分でない時は、粘着性樹脂と反応する多官能基を含む硬化剤と反応させて粘着性樹脂自体の強度を高めて剥離を防ぐ必要がある。
【0200】
本発明の粘着性樹脂の酸価は、通常0mgKOH/g以上であり、通常50mgKOH/g以下、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mg/g以下である。水酸基価は、通常0mgKOH/g以上であり、通常20mgKOH/g以下、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0201】
粘着性樹脂の分子量としては、粘着特性に影響が無い範囲においては高分子量であることが望ましいが、高分子量化により粘着特性等が低下することがあるので、好ましい分子量は重量平均分子量10万〜1000万、より好ましくは100万〜500万である。また、数平均分子量の異なった樹脂を混合することにより耐久性と粘着特性の調整をしてもよい。
【0202】
本発明の粘着性樹脂は、実用可能な接着強度があれば、ゴム系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(EVA)、ポリビニルエーテル系樹脂、飽和無定形ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂等、何れでもよい。
【0203】
また、目的に応じて、以下のものを添加してもよい。
(1)老化防止剤として、フェノール系誘導体、アミン系誘導体、リン系誘導体、有機チオ酸塩等。
【0204】
(2)タック性向上のための粘着付与樹脂として、ロジン、ダンマル等の天然樹脂、変性ロジン、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等。
(3)低温特性等の改善のため、フタル酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバチン酸エステル系可塑剤、リシノール酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤等。
【0205】
粘着性樹脂としては、多くの種類の樹脂が使用可能であるが、多くの樹脂は、樹脂自身の光透過率が低く、透明性が悪かったり、太陽光や熱により変色したり、粘着性樹脂自身の変質により剥がれてしまうことがある。よって、光学特性が良く、耐光性も耐熱性も良好なアクリル樹脂系の粘着性樹脂がよい。また、老化防止剤、可塑剤等は、長期間の使用によりブリードし、徐々に性能が低下していくことがあるので、可能な限り添加剤は使用しない方がよい。
【0206】
本発明の粘着剤は光学フィルター用として特に好適に用いることができるが、その場合には、可視光線の透過性及び耐光性を要求されるため、主として(メタ)アクリル系樹脂を粘着性樹脂として用いることが好ましい。
【0207】
(メタ)アクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、ポリマー内に官能基を付与するために、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基含有の単量体を共重合させた(メタ)アクリル系樹脂、或いは、その他共重合可能な単量体及びオリゴマーと共重合させた(メタ)アクリル系樹脂、更に、その(メタ)アクリル系樹脂が有する官能基と反応する架橋剤を添加した(メタ)アクリル系樹脂組成物が使用可能である。
【0208】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0209】
分子内に官能基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0210】
架橋剤としては、アクリル系樹脂と反応可能な官能基を分子内に2個以上有していればよく、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、尿素樹脂、金属キレート剤が知られている。
【0211】
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル系樹脂であり、ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とした樹脂が特に好ましい。更に、(メタ)アクリル系樹脂を含有した感圧型接着剤であってシート状のものが加工性のし易さからより好適である。また、耐久性を向上させるため、上記架橋剤を添加して使用してもよい。
【0212】
本発明の粘着剤は、上記近赤外線吸収色素と粘着性樹脂とを混合して得られるが、近赤外線吸収色素の含有量が、粘着性樹脂の固形分に対して、1種類の近赤外線吸収色素を、通常0.001質量%〜50質量%含むように混合する。好ましくは0.01質量%〜40質量%、より好ましくは0.05質量%〜30質量%、特に好ましくは0.1質量%〜20質量%含むように混合する。2種類以上の本発明の近赤外線吸収色素や、更に第二の近赤外線吸収色素を含有する場合等、2種類以上の近赤外線吸収色素を含む場合は、それぞれの近赤外線吸収色素の含有量が、上記値の範囲となるように混合する。
【0213】
本発明の粘着剤は、公知の攪拌機や混練機等によって、色素と粘着性樹脂を均一に混合して調製してもよいし、近赤外線吸収色素を溶媒に分散又は溶解した後、粘着性樹脂と均一に混ぜて調製してもよい。
【0214】
近赤外線吸収色素を分散又は溶解する溶媒としては、1,2,3−トリクロロプロパン、テトラクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、プロピオン酸メチル、エナント酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル等のエステル類;シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、スクアラン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素等のアミド類;テトラヒドロフラン(以下「THF」という)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル類;又はこれらの混合物が挙げられる。
【0215】
色素を溶媒に分散するためには、ペイントシェーカーやサンドグラインドミルやホモミキサー、超音波分散機等、公知の分散装置を用いることができる。
色素と粘着性樹脂との混合は、所定の量比で全量を一度に混合してもよいし、一方に対して、他方を段階的に混合してもよい。通常、粘着性樹脂と色素を一度に混合する。
【0216】
本発明の粘着剤は、シート状、又は液状として使用することが好ましい。近赤外線吸収色素を含む粘着剤を有機溶媒に溶解し、塗工装置により成形し、乾燥工程を経て、シート状の粘着剤層を形成することができる。
【0217】
粘着剤を溶解する有機溶媒としては、上記した「近赤外線吸収色素を分散又は溶解する溶媒」(すなわち、粘着剤中の溶媒)と同様のものが挙げられる。
【0218】
塗工装置は、ロールコーター、リバースコーター、コンマコーター、リップコーター、ダイコーター等が好適に使用される。
乾燥後の膜厚が、1μm〜1000μmとなるように加工することが好ましい。より好ましくは、接着強度の維持、硬度の確保等から10〜100μmである。
通常フィルムや積層体上に膜状に成形する。具体的にはPET、TAC等のフィルム基材や反射防止フィルムや電磁波シールドフィルム等の機能性フィルムの裏面、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板、又は既に機能性材料を積層した物に枚葉塗布してもよい。
【0219】
フィルム基材上への粘着剤層の形成後、剥離処理を施した樹脂フィルム又は紙等をラミネーター等で貼り合せることにより、取り扱いの簡便化を図ることができる。
また、剥離処理したフィルム上に上記粘着剤を塗布し、更に乾燥後、上記剥離フィルムと剥離強度の違う剥離フィルムをラミネーター等で貼り合せることによりフィルム基材を有しない両面接着フィルムとして使用することが出来る。
【0220】
また、同様の方法でフィルム基材に上記粘着剤を塗布乾燥後、剥離処理を施した樹脂フィルム又は紙等をラミネーター等で貼り合せる。その後、更にフィルム基材の裏側に上記粘着剤を塗布乾燥後、剥離処理を施した樹脂フィルム又は紙等をラミネーター等で貼り合せることにより機材フィルム付きの両面接着フィルムとして使用することが出来る。
【0221】
実用可能な接着強度としては、ポリエステルフィルムに25μm厚さの粘着剤層を設け、温度23℃で7日間熟成後に、ステンレス板に貼り合わせた後、温度23℃湿度65%の雰囲気条件下で、180度剥離法による(引っ張り速度300mm/分、単位g/25mm幅)接着強度が、0.1〜10000g/25mmが好ましい。中でも、再剥離可能な粘着剤層においては、1.0g/25mm以上が好ましく、5.0g/25mm以上がより好ましく、10g/25mm以上が更に好ましい。再剥離が必要でない粘着剤層においては、10g/25mm以上が好ましく、50g/25mm以上がより好ましく、100g/25mm以上が更に好ましい。
【0222】
<<近赤外線吸収色素含有粘着剤の耐久性>>
本発明の近赤外線吸収色素含有粘着剤の耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性は、例えば、以下の方法により評価することができる。
【0223】
近赤外線吸収色素含有粘着剤を含有する塗工液を、ベーカー式アプリケータを用いてポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥して、近赤外線吸収色素を含む粘着剤の層を形成する。次いで、この近赤外線吸収色素含有の粘着剤層側に、同じ厚さのポリエチレンテレフタレート製フィルムをローラで圧着し、近赤外線吸収色素を含有する粘着剤の層を挟んだ積層体の試験片を作製する。
【0224】
乾燥後の近赤外線吸収色素を含む粘着剤層の厚さは、適宜選択することができるが、通常、15μm〜30μmとすることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの厚さも、適宜選択することができるが、通常、60μm〜120μm、好ましくは70μm〜100μmのものが好ましい。さらに、乾燥時の条件も粘着剤層に含まれる粘着性樹脂等に応じて適宜選択することができ、通常、80℃〜120℃で、1分〜10分程度乾燥させる。
【0225】
[耐熱性]
上記の方法で作製した試験片を、高温(例えば、温度70℃〜100℃)の恒温槽に入れ、長時間(例えば100時間〜500時間)放置し、放置前(試験前)の吸収強度に対する放置後(試験後)の吸収強度の変化を求めることにより、耐熱性の評価を行なうことができる。
【0226】
例えば、本発明においては、上記の方法で作製した試験片を温度80℃の恒温槽に入れ、120時間放置する耐熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0227】
また、上記のなかでも、温度80℃の恒温槽に入れ、240時間放置する耐熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0228】
さらに、上記のなかでもより好ましくは、温度80℃の恒温槽に入れ、480時間放置する耐熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0229】
近赤外線吸収色素は、いわゆる近赤外線領域以外にも極大吸収を示す場合もあるが、本発明の耐熱性評価においては、近赤外線吸収領域である800nm〜1050nmの範囲内の極大吸収波長における吸収強度の変化を測定する。後述する耐湿熱性、耐光性等の耐久性評価においても同様である。
【0230】
[耐湿熱性]
上記の方法で作製した試験片を、比較的高温で(例えば、温度50℃〜70℃)、高湿度(例えば、相対湿度80%〜95%)の恒温恒湿槽に入れ、長時間(例えば100時間〜500時間)放置し、放置前(試験前)の吸収強度に対する放置後(試験後)の吸収強度の変化を求めることにより、耐湿熱性の評価を行なうことができる。
【0231】
例えば、本発明においては、上記の方法で作製した試験片を、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、120時間放置する耐湿熱性試験において、耐湿熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0232】
また、上記のなかでも、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、240時間放置する耐湿熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0233】
さらに、上記のなかでもより好ましくは、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、480時間放置する耐湿熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0234】
[耐光性]
上記の方法で作製した試験片に対して、波長300〜400nmでの放射照度64.5W/m2の光を160時間照射することにより、耐光性の評価を行なうことができる。耐光性試験に用いる光は、波長300〜400nmでの放射照度64.5W/m2の光であるが、好ましくは耐光性の性能物性の指標となる、波長340nmで0.55W/m2、波長420nmで1.38W/m2、波長300〜400nmで64.5W/m2、波長300〜800nmで605.4W/m2の照射強度のキセノン光に対して、UV光をカットした光を用いるのがよい。
【0235】
例えば、本発明においては、上記の方法で作製した試験片に対して、波長300〜400nmでの放射照度64.5W/m2の光を160時間照射する耐光性試験において、耐光性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、試験前の該吸収強度に対して、通常50%以上であり、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
【0236】
また、本発明の近赤外線吸収色素の耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性についても、上記方法に準じて評価することができる
【0237】
<近赤外線吸収フィルター>
上記の近赤外線吸収色素含有粘着剤の層を有する近赤外線吸収フィルターは、耐久性に優れ、750nm〜1200nmの全波長域にわたって吸収を有する点で優れている。近赤外線吸収フィルターは、基材に本発明の近赤外線吸収色素を含む粘着剤により粘剤層を形成し、目的に応じて、多様な層を接着して製造することができる。本発明によれば、近赤外線吸収層を省くことが可能になり、光学フィルターの製造工程を簡便化することができる。
【0238】
<<近赤外線吸収フィルターの製造方法>>
本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法としては、透明基板に近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液をコーティングする方法、近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を溶融混錬してフィルム状に成形する方法等が挙られる。なかでも、近赤外線吸収色素に対する負荷を低減するため、塗工液をコーティングする方法が好ましい。
【0239】
以下に、透明基板に近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液を塗布して近赤外線吸収フィルターを製造する方法について詳細に説明する。
【0240】
(透明基板)
本発明の近赤外線吸収フィルターを構成する透明基板としては、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない基材であればよく、特に制限はない。その具体的な例としては、ガラス、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましい。
【0241】
これらの樹脂は、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、ハロゲン系、リン酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0242】
透明基板は、これらの樹脂を、射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶媒に溶解させてキャスティングする方法等の成形方法を用い、フィルム状に成形したものが用いられる。フィルム状に成形された樹脂は延伸されていても未延伸でもよい。また、異なる材料からなるフィルムが積層されていてもよい。
【0243】
透明基板の厚みは、目的に応じて通常10μm〜5mmの範囲から選択される。
更に、透明基板は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
【0244】
(粘着剤の塗工液)
近赤外線吸収色素を含む粘着剤の塗工液は、近赤外線吸収色素を粘着性樹脂とともに溶媒中に溶解又は分散させることにより、調製することができる。また、分散させる場合、近赤外線吸収色素を必要に応じて分散剤を用いて、粒径を通常0.1〜3μmに微粒子化し、粘着性樹脂とともに、溶媒に分散させて調製することもできる。
【0245】
このとき溶媒に溶解又は分散される近赤外線吸収色素、分散剤、及び粘着性樹脂等の全固形分の濃度は、通常5〜50質量%である。また、全固形分に対する近赤外線吸収色素の濃度は、近赤外線吸収色素の総量として通常0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜30質量%である。
尚、粘着性樹脂に対する近赤外線吸収色素の濃度としては、当然のことながら、近赤外線吸収色素含有粘着剤の厚さにも依存するため、溶融混練してフィルム状に成形するような場合には、上述の濃度よりは低くなる。
【0246】
分散剤としては、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル、マレイン化ロジン、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。その使用量は、近赤外線吸収色素に対して、通常0〜100質量%、好ましくは0〜70質量%である。
【0247】
溶媒としては、上記した「近赤外線吸収色素を分散又は溶解する溶媒」(すなわち、粘着剤中の溶媒)と同様のものが挙げられる。
【0248】
近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の透明基材へのコーティングは、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の塗工方法で行われる。
近赤外線吸収色素を含む粘着剤の乾燥後の膜厚が、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、通常5000μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下となるように塗布される。
【0249】
特に、電子ディスプレイ用の粘着剤として用いる場合には、透明度が高い必要があり、また、平坦性や加工効率の点から、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下となるように塗布される。
【0250】
(紫外線カット層)
本発明の赤外線吸収色素を含む粘着剤を塗布したフィルターは、更に紫外線カット層を設けることにより、近赤外線吸収色素との相乗効果によって、近赤外線吸収フィルターの耐光性を著しく向上させることができる。本発明の粘着剤によって紫外線カット層を基材と接着してもよいし、粘着剤と他の層とを接着した後、更に他の粘着剤によって紫外線カット層を接着してもよい。
【0251】
紫外線カット層としては、400nm以下の波長の紫外線を効率よくカットできるものであり、350nmの波長の光を70%以上吸収できることが好ましい。紫外線カット層の種類については、特に制限されないが、好ましくは紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルム(紫外線カットフィルム)が好ましい。
紫外線カット層に用いられる紫外線吸収剤としては、300〜400nmの間に極大吸収を有し、その領域の光を効率よくカットする化合物であれば、有機系、無機系のいずれも特に限定なく用いることができる。例えば有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤等が挙げられる。無機系紫外線級剤としては、酸化チタン系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、微粒子酸化鉄系紫外線吸収剤等が挙げられる。しかし、無機系紫外線吸収剤の場合は、紫外線カット層中においては微粒子状態で存在しているため、近赤外線吸収フィルターの効率を損なう恐れがあることから、有機系紫外線吸収剤が好ましい。
【0252】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、チバガイギー社製のチヌビンP、チヌビン120、213、234、320、326、327、328、329、384、400、571、住友化学社製のスミソーブ250、300、577、共同薬品社製のバイオソーブ582、550、591、城北化学社製のJFー86、79、78、80、旭電化社製のアデカスタブLA−32,LA−36,LA−34、シプロ化成社製のシーソルブ100、101、101S、102、103、501、201、202、612NH、大塚化学社製のRUVA93、30M、30S、BASF社製のユービナール3039等が挙げられる。
【0253】
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよいが、数種類組み合わせてもよい。また、紫外線を吸収して可視領域に波長変換するチバガイギー社製のユービテックスOB,OB−P等の蛍光増白剤も利用できる。
また、紫外線カットフィルムは、市販のUVカットフィルターを使用することもできる。例えば、富士フィルム社製のSC−38、SC−39、SC−42、三菱レーヨン社製のアクリプレン等が挙げられる。上記のUVカットフィルター、SC−39、アクリプレンは、ともに350nmの波長を99%以上吸収する紫外線カットフィルムである。
【0254】
このように紫外線吸収層を設けた本発明の近赤外線吸収フィルターは、Xeランプを160時間照射することによる耐光性試験後の色素残存率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上となり、可視光領域に新たな吸収ピークが出てくることもない。ここで、色素残存率は、800〜1050nm領域における試験前後の吸収強度の減少度合から求める。
【0255】
上記近赤外線吸収フィルターは透明のガラスや他の透明樹脂板等と貼り合わせた積層体として用いてもよい。
また、本発明により得られる近赤外線吸収フィルターは、本発明のディスプレイパネル用フィルター以外にも、熱線遮断フィルム、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器等幅広い用途に使用することができる。
【0256】
更に、本発明の近赤外線吸収色素を含有する粘着剤を粘着剤層として含む近赤外線吸収フィルターは、必要に応じて、色調補正層(可視光吸収層)、電磁波カット層、表面への蛍光灯等の外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止層(ノングレア層)を設け、電子ディスプレイ用、より好ましくはプラズマディスプレイパネル用フィルターとして使用することができる。
【0257】
電子ディスプレイ用フィルターとして用いる場合には、透明度が高い必要があり、また、平坦性や加工効率の点から、近赤外線吸収色素を含む粘着剤の乾燥後の膜厚が、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下となるように塗布される。
【0258】
更に、850〜1100nmの平均光線透過率が20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下となるように本発明の粘着剤の膜厚と、近赤外線吸収色素の濃度等を調整することがよい。
本発明の電子ディスプレイ用フィルターは、上記近赤外線吸収フィルターを用いる以外は、通常、用いられる構成や製造方法等を任意にとることができ、特に限定されるものではない。
【0259】
以下にプラズマディスプレイパネル用フィルターとして用いる場合を代表例として説明する。
(1)色調調整層(可視光吸収層)
通常のプラズマディスプレイの可視光の発光は、450nmをピークとして、400〜500nmに青色の発光が存在し、525nmをピークとして500〜550nmに緑の発光が存在し、また、赤色の発光は595nm、610nm、625nmにシャープな発光として存在している。
このうち、赤色の発光のうち595nmの発光は、プラズマディスプレイの赤色表示時の赤をオレンジ色がからせる発光であるので、この領域に吸収を持つ色素を前面フィルターに含有させてカットさせることが通常である。
【0260】
これらのことから、プラズマディスプレイ用途では、450nm、525nm、625nmの透過率を40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上とすることがディスプレイの画面の輝度確保の観点から好ましい。
本発明の近赤外線吸収フィルターを含め、一般的な近赤外線吸収フィルターはやや緑色を帯びることが多い。プラズマディスプレイ等のディスプレイ用途に使用する場合は、その色は無彩色であることが好ましいため、ディスプレイの輝度を大きく損なわない程度に、緑色の補色となるような500〜600nmに吸収を持つ色材を含有させ、無彩色化することが好ましい。
【0261】
また、電球やハロゲン球電灯等はその発光スペクトル中の赤色成分が多い。蛍光灯等の照明の下では無彩色に見えるが、電球やハロゲン球電灯等の照明の下では赤色を帯びてしまうことも多々ある。このような場合は、600〜700nm近傍に吸収を持つような色材をディスプレイの輝度を大きく損なわない程度に含有させ、電球やハロゲン球電灯等の照明の下でも無彩色となるようにすることが好ましい。
【0262】
更に、プラズマディスプレイ用フィルターとして使用する場合、プラズマディスプレイから発せられる590〜600nmのネオンオレンジ光を吸収できるような色材を含有させ色補正を行った方が好ましい。
これらの色素を含有する層は、近赤外線吸収層とは別の層として作成し、近赤外線吸収層と貼り合わせた積層体として用いてもよい。また、近赤外線吸収層と混合した際の発色性、耐久性等諸特性に問題がなければ、近赤外線吸収層と同一層となるようにしてもよい。なかでも、工程簡略化、コスト削減等の観点から後者の方が好ましい。
【0263】
ここで用いる色材としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げられる。無機系顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等が挙げられる。有機系顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が挙げられる。また有機系染料、色素としては、アジン系、アゾ系、ニッケルアゾ錯体系、アゾメチン系、アントラキノン系、インジゴイド系、インドアニリン系、オキサジン系、オキソノール系、キサンテン系、キノフタロン系、シアニン系、スクアリリウム系、スチルベン系、テトラアザポルフィリン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ピロメテン系、ジピロメテン系、ベンジリデン系、ポリメチン系、メチン系、クロム錯塩系等が挙げられる。
【0264】
緑色の補色となるような500〜600nmに吸収を持つ色材の具体例としては、保土谷化学工業社製のAizen S.O.T. Violet-1、Aizen S.O.T. Blue-3、Aizen S.O.T. Pink-1、Aizen S.O.T. Red-1、Aizen S.O.T. Red-2、Aizen S.O.T. Red-3、Aizen Spilon Red BEH Special、Aizen Spilon Red GEH Special、日本化薬社製のKayaset Blue A-S、Kayaset Red 130、Kayaset Red A-G、Kayaset Red 2G、Kayaset Red BR、Kayaset Red SF-4G、Kayaset Red SF-B、Kayaset Violet A-R、三菱化学社製のダイヤレジンBlue-J、ダイヤレジンBlue-G、ダイヤレジンViolet-D、ダイヤレジンRed H5B、ダイヤレジンRed S、ダイヤレジンRed A、ダイヤレジン Red K、ダイヤレジン Red Z.PTR63、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のViolet-RB、Red-G、Pink-5BGL、Red-BL、Red-2B、Red-3GL、Red-GR、Red-GA等が挙げられる。その中でも近赤外線吸収色素と同一層とする場合は、近赤外線吸収層の安定性の観点からニッケル錯塩又はクロム錯塩系が好ましい。
【0265】
また、600〜700nm近傍に吸収を持つような色材の具体例としては、保土谷化学工業社製のAizen S.O.T. Blue-1、Aizen S.O.T. Blue-2、Aizen S.O.T. Blue-3、Aizen S.O.T. Blue-4、Aizen Spilon Blue 2BNH、Aizen Spilon Blue GNH、日本化薬社製のKayaset Blue N、Kayaset Blue FR、KAYASORB IR-750、三菱化学社製のダイヤレジンBlue-H3G、ダイヤレジンBlue-4G、ダイヤレジンBlue-LR、PTB31、PBN、PGC、KBN、KBFR、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のBlue-GN、Blue-GL、Blue-BL、Blue-R、C.I.Solvent Blu3 63等が挙げられる。
【0266】
560〜600nmに吸収を持つ色材の具体例としては、特開2000−258624、特開2002−040233、特開2002−363434に記載の有機染料、特表2004−505157や特開2004−233979に記載のキナクリドン等の有機系顔料等が挙げられる。
【0267】
本発明の粘着剤に更に可視光吸収色素を含ませるか、本発明の粘着剤とは別に、可視光吸収色素を含む粘着剤を用いることによって、更に可視光吸収層を省略することができ、電子ディスプレイ用フィルターの製造工程を更に簡便化することができる。
【0268】
粘着剤へ混合する場合の可視光吸収色素としては、顔料系の、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が好ましい。また、染料、色素系では、アントラキノン系、インドアニリン系、テトラアザポルフィリン系等がより好ましい。
【0269】
このとき可視光吸収色素、及び粘着剤等の全固形分の濃度は、通常5〜50質量%である。全固形分に対する可視光吸収色素の濃度は、総量として通常0.001〜50質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。ただし、粘着剤に対する可視光吸収色素の濃度としては、当然のことながら、可視光吸収色素含有粘着剤の厚さにも依存する。
【0270】
可視光吸収色素を含む粘着剤の塗工液は、可視光吸収色素を粘着性樹脂とともに溶媒中に溶解又は分散させることにより、調製することができる。また、分散させる場合、必要に応じて分散剤を用いて、粒径を通常0.1〜3μmに微粒子化し、粘着性樹脂とともに、溶媒に分散させて調製することもできる。近赤外線吸収色素とともに可視光吸収色素を含む場合は、添加順序は特に決まっていないが、より溶解時間、分散時間の要する色素から添加することが好ましい。
【0271】
可視光吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の透明基材へのコーティングは、近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の場合と同様に、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の塗工方法で行われる。
膜厚も近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の場合と同様に、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下となるように塗布される。
【0272】
(2)電磁波カット層
プラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる電磁波カット層の作製は、金属酸化物等の蒸着又はスパッタリング方法等が利用できる。通常は酸化インジウムスズ(ITO)を用いることが一般的である。誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀又は銀−パラジウム合金が一般的である。通常、誘電体層から順次3層、5層、7層又は11層程度積層する。基材としては、本発明の近赤外線吸収フィルターをそのまま利用してもよいし、樹脂フィルム又はガラス上に蒸着又はスパッタリングによって電磁波カット層を設けた後に、本発明の近赤外線吸収フィルターと貼り合わせてもよい。
【0273】
(3)反射防止層
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる反射防止層としては、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層又は多層に積層させる方法や、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層又は多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0274】
(4)ノングレア層
上述の各層の他にぎらつき防止層(ノングレア層)を設けてもよい。ノングレア層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は、熱硬化又は光硬化を用いることができる。また、ノングレア処理したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。更に必要であれば、ハードコート層を設けることもできる。
【0275】
<<本発明の粘着剤を有する近赤外線吸収フィルターの物性>>
本発明の近赤外線吸収色素含有の粘着剤を含有する近赤外線吸収フィルターは、耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性に優れている。
【0276】
[耐光性]
電子ディスプレイ用フィルターとして必要な耐久性の一つが、耐光性である。電子ディスプレイからの発光光、照射光、及び電子ディスプレイに入射する環境光による劣化がないことが、実用上非常に重要である。
【0277】
波長340nmで0.55W/m2、波長420nmで1.38W/m2、波長300〜400nmで64.5W/m2、波長300〜800nmで605.4W/m2の照射強度のキセノン光を、UV光をカットした状態で160時間照射し、照射前の最大吸収波長において照射前後の吸収強度を対比した「照射後の吸収強度÷照射前の吸収強度×100」で算出される割合を電子ディスプレイ用フィルターの「耐光性」と定義する。電子ディスプレイ用フィルターの耐光性は、50%以上であることが、実用上必要である。好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0278】
吸収強度を求める波長としては、特に限定するものではないが、電子ディスプレイ用フィルターの近赤外線吸収として性能を最大限に発揮できる750nm〜1200nmが挙げられる。より好ましくは、電子ディスプレイ用フィルターとしては色の変化がないことが実用上求められることから、可視光線域である350〜800nmでの変化が小さいことも挙げられる。可視光吸収色素も本発明の粘着剤に含有させて、可視光線域の制御機能を持たせた場合は、特に、その機能を発揮する極大吸収波長での変化が小さく、残存率としては大きい方が、電子ディスプレイ用フィルターとして有効である。
【0279】
[耐熱性]
耐光性に加え、耐熱性を有するものは、保管中や運搬中の劣化低減に有効である。更に、電子ディスプレイのパネルへの直貼り用途にも有効である。例えば、電子ディスプレイの一つとして、注目されているプラズマディスプレイパネル(PDP)では、近年、前面ガラスフィルターの機能を持たせたフィルターを、直接、パネルへ貼りつけ、反射像映り込み排除による画像向上、部材数低減による工程簡略化、ガラス排除による軽量化を図った直貼り方式が提案されている。この方式では、電子ディスプレイ用フィルター自体に、パネルからの熱が直接伝わることから、従来の前面ガラスフィルターと電子ディスプレイパネルの間に空隙がある方式よりも耐熱性が求められている。
【0280】
温度80℃の環境下に250時間暴露し、暴露前の最大吸収波長において暴露前後の吸収強度を対比した「暴露後の吸収強度÷暴露前の吸収強度×100」で算出される割合が、50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
更に好ましくは、500時間の暴露において、該割合が50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
【0281】
吸収強度を求める波長は、耐光性と同様である。
特に好ましい耐熱性は、温度90℃の環境下に250時間暴露し、暴露前の最大吸収波長において暴露前後の吸収強度を対比した「暴露後の吸収強度÷暴露前の吸収強度×100」で算出される割合が50%以上、より好ましくは80%以上である。
また耐湿熱性を有するものには、実用上の耐性、信頼性向上はもちろんのこと、船便での運搬や保管での劣化低減にも非常に有効である。重量がある輸出製品は船便での運搬がなされるが、船底近くでの保管場所では、非常に湿度の高い環境となる。
【0282】
[耐湿熱性]
耐湿熱性の性能物性の指標は以下のとおりである。
温度60℃相対湿度90%の環境下に250時間暴露し、暴露前の最大吸収波長において暴露前後の吸収強度を対比した「暴露後の吸収強度÷暴露前の吸収強度×100」で算出される割合が、50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
更に好ましくは、500時間の暴露において、該割合が50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
【0283】
吸収強度を求める波長は、耐光性と同様である。
またこれら耐久性及び信頼性以外に、電子ディスプレイ用フィルターとして、特に750nm〜1200nmの波長領域において、コードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し誤動作を起こす原因となることから、750nm〜1200nmの近赤外線を遮蔽する機能が必要である。
【0284】
そのための遮蔽性能としては、シート形状の近赤外線吸収色素含有粘着剤は、極大吸収波長における分光透過率が、40%以下が好ましい。より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。
750nm〜1200nmの波長領域を遮蔽するためには、前記した通り、複数の近赤外線吸収色素を含有することが好ましい。1つの色素で分光透過率40%以下を達成できれば、複数の色素を含有することで、より好ましい分光透過率10%以下を達成することは可能である。
【0285】
以上のことから、電子ディスプレイ用フィルターとして要する耐久性には、耐光性が必要である。より好ましくは、耐熱性、耐湿熱性も必要であり、これにより、実用上有効である以外に、電子ディスプレイ用フィルターの活用方式の拡大、及び、実用範囲の拡大につながる。
【0286】
また、本発明の近赤外線吸収色素含有混合物、近赤外線吸収色素含有粘着剤及び近赤外線吸収フィルターは、波長850nmにおける透過率が15%以下、波長950nmにおける透過率が10%以下である。このような特性を有することにより、プラズマディスプレイ用前面フィルター用に使用した場合でも、周辺にある他の電子機器等の誤動作を防止することができる。
【実施例】
【0287】
以下に、実施例により本発明の実施態様を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0288】
合成例1
[合成例1−1]
【化54】
【0289】
公知の方法で得られた上記化合物1(10g、40.0mmol)を、室温で塩化メチレン(80mL)に溶解し、0℃まで冷却した。次いで、塩化アルミニウム(5.87g)を加え、市販の上記化合物2(5.4mL、44mmol)を滴下した。この反応溶液を0℃で、3時間攪拌した後、1mol/Lの塩酸水溶液に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物3を11.3g得た(収率76%)。
質量分析結果(EI−MS法):374
【0290】
[合成例1−2]
【化55】
【0291】
(条件1)
化合物3(1.5g、4.07mmol)を酢酸(10mL)に溶解し、臭素(0.65g、4.07mmol)の酢酸溶液(10mL)を室温で滴下した。滴下後、1時間室温で攪拌した後、氷水に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出し、有機層を炭酸水素ナトリウムで中和した。有機層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したが、目的化合物4は得られなかった。
【0292】
(条件2)
化合物3(2.55g、6.82mmol)を、室温でTHF(50mL)に溶解した。0℃まで冷却し、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド(2.69g、7.16mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した後、反応溶液を氷水に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、減圧濃縮したところ、目的とする化合物4が得られた。得られた化合物4は、そのまま次の反応(合成例1−3)に用いた。
質量分析結果(EI−MS法):452
【0293】
[合成例1−3]
【化56】
【0294】
合成例1−2(条件2)で得られた化合物4(6.82mmol)を、室温でアセトン(35mL)に溶解し、化合物5(1.09g、6.82mmol)を加え、30分室温で撹拌した。濾過して、生成した無機塩を除き、減圧濃縮した。得られたオイル状粗生成物を塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、目的とする化合物6を得た。得られた化合物6は、そのまま次の反応(合成例1−4)に用いた。
質量分析結果(EI−MS法):494
【0295】
[合成例1−4]
【化57】
【0296】
合成例1−3で得られた化合物6(6.82mmol)を酢酸(10mL)と、臭化水素酢酸溶液(以下、HBr−AcOHと表現する。)(10mL)に混合し、室温で一晩攪拌した。反応溶液を氷水に注いだ後、酢酸エチルで抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウムで中和した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の化合物7(前駆体1)を2.1g得た(収率69%、合成例1−2〜1−3の3工程)。
質量分析結果(EI−MS法):448
尚、本明細書においては、上記化合物7のように、金属原子と反応させて近赤外線吸収色素を得る化合物を単に「前駆体」と表現する場合がある。
【0297】
実施例1
【化58】
【0298】
合成例1で得られた化合物7(2.1g、4.69mmol)をTHF(25mL)に溶解し、室温下、1mol/Lのナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液(9.7mL、9.85mmol)を加え、30分攪拌した。この反応溶液に、塩化ニッケル6水和物(0.56g、2.35mmol)のメタノール溶液(1mL)を加え、更に30分攪拌した。得られた中間錯体の反応溶液を、トルエン(50mL)と酢酸(7mL)の混合液に注ぎ、空気をバブリングしながら、40℃で6時間攪拌した。反応溶液を、減圧濃縮した後、塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、メタノール懸洗して、前記した「例示化合物23−1」である目的の近赤外線吸収色素1を1.7g(収率82%)得た。
質量分析結果(EI−MS法):898
λmax(クロロホルム中) :935nm
【0299】
実施例2
【化59】
【0300】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体2を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物21−1」である近赤外線吸収色素2を87%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):898
λmax(クロロホルム中) :951nm
【0301】
実施例3
【化60】
【0302】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体3を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物21−2」である近赤外線吸収色素3を85%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):786
λmax(クロロホルム中) :936nm
【0303】
実施例4
【化61】
【0304】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体4を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物24−1」である近赤外線吸収色素4を79%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):838
λmax(クロロホルム中) :934nm
【0305】
実施例5
【化62】
【0306】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体5を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物24−2」である近赤外線吸収色素5を79%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :934nm
【0307】
実施例6
【化63】
【0308】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体6を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物24−3」である近赤外線吸収色素6を74%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):950
λmax(クロロホルム中) :950nm
【0309】
合成例2
[合成例2−1]
【化64】
【0310】
市販の上記化合物8(15g、91mmol)と市販のヨウ化イソアミル(20g、100mmol)とをN,N−ジメチルホルムアミド(80mL)に溶解し、炭酸カリウム(20g、140mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。得られた反応溶液を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、目的化合物10を18g得た(収率84%)。
質量分析結果(EI−MS法):234
【0311】
[合成例2−2]
【化65】
【0312】
合成例2−1で得られた化合物10(8.8g、38mmol)を四塩化炭素(100mL)に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(6.7g、38mmol)と過酸化ベンゾイル(0.36g、1.1mmol)を加え、窒素下、80℃で12時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、水で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、目的化合物11を11g(収率93%)得た。
質量分析結果(EI−MS法):312
【0313】
[合成例2−3]
【化66】
【0314】
マグネシウム(2.4g、100mmol)をTHF(15mL)に分散させ、少量のヨウ素片を加えた。これを室温で10分攪拌した後、合成例2−2で得られた化合物11(10g、32mmol)のTHF溶液(60mL)を滴下した。滴下後、反応溶液を室温で1時間攪拌した後、0℃まで冷却した。この反応溶液に市販の化合物12(4.6g、36mmol)のTHF溶液(60mL)を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌し、1mol/Lの塩酸水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物13を7.5g得た(収率65%)。
質量分析結果(EI−MS法):360
【0315】
[合成例2−4]
【化67】
【0316】
塩化オギサリル(2.0g、16mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液に、ジメチルスルホキシド(1.1g、14mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液を、−78℃で滴下した。この反応溶液に、合成例2−3で得られた化合物13(4.7g、13mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液を加え、15分攪拌した後、トリエチルアミン(9.4mL、66mmol)を加えた。この反応溶液を室温まで昇温し、塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物14を3.2g得た(収率68%)。
質量分析結果(EI−MS法):359
【0317】
[合成例2−5]
【化68】
【0318】
合成例1−2(条件2)、合成例1−3及び合成例1−4の方法に従って、合成例2−4で得られた化合物14から目的の化合物15(前駆体7)を2.2g得た(収率85%)。
質量分析結果(EI−MS法):432
【0319】
実施例7
【化69】
【0320】
実施例1の方法に従って、合成例2−5で得られた前駆体7から、前記した「例示化合物5−16」である近赤外線吸収色素7を73%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :970nm
【0321】
実施例8
【化70】
【0322】
合成例2−1〜2−5と同様にして前駆体8を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物5−15」である近赤外線吸収色素8を74%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :975nm
【0323】
合成例2−1〜2−5と同様にして前駆体8を得た。次いで、実施例1の方法に従って、近赤外線吸収色素8を74%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :975nm
【0324】
比較例1
公知の方法で得られた4,5−ビス(sec−プロピルチオ)−1,3−ジチオール−2−オン1.0g(3.75mmol)に1mol/Lナトリウムメトキシドーメタノール溶液9.4mL(2.5当量)を加え、25℃で30分撹拌した。これにメタノール1mLに溶かした0.5当量の塩化ニッケル六水和物を加え、更に25℃で30分撹拌した。この混合液にトルエン50mL及び酸型イオン交換樹脂(DIAION―PK212;H型)2.0gを加え、空気をバブリングしながら、3時間撹拌し反応を行った。得られた緑色反応溶液をろ過し、イオン交換樹脂を濾別後、濾液を水洗してから濃縮した。これにメタノール25mLを加え、懸洗後、固体を濾取し、下記式で表される近赤外線吸収色素を81%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):536
λmax(クロロホルム中) :1007nm
【0325】
【化71】
【0326】
評価例
上記実施例1〜8、及び比較例1で得られた近赤外線吸収色素の分光透過スペクトル測定の結果を、図1〜図9に示す。
また、これらの近赤外線吸収色素を用いて試験片を製造し、以下の熟成試験、耐熱湿性試験、耐熱性試験を行なった。結果を表1及び表2に示す。吸収強度は、分光透過スペクトル測定(株式会社島津製作所製分光光度計 UV−3600 による測定)により透過率を得て、該透過率から各試験片の極大吸収波長での吸収強度を算出した。
【0327】
(粘着剤の製造)
近赤外線吸収色素をトルエン8.0gに添加して攪拌し、更にアクリル系粘着主剤(綜研化学株式会社製、SKダイン「登録商標」1811L)16.0gを添加し、よく攪拌して溶解させた。その中に、イソシアネート系硬化剤(綜研化学株式会社製、L−45)を規定量添加し、よく攪拌して、近赤外線吸収色素含有粘着剤を製造した。攪拌時に巻き込んだ気泡は、超音波をかけるか、又は静止して気泡を上方へ集め、取り除いた。なお、SKダイン1811Lは、酸価が0mgKOH/g、水酸基価が0.2mgKOH/gである。
【0328】
(試験片の製造)
上記近赤外線吸収色素含有粘着剤を、ベーカー式アプリケータを用い、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム上に、厚さ200μmで塗工し、100℃で2分乾燥し、厚20μmの近赤外線吸収色素含有粘着剤層を形成した。次いで、近赤外線吸収色素含有粘着剤層側に厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムをローラで圧着し、近赤外線吸収色素含有粘着剤層を挟んだ積層体(近赤外線吸収フィルター)の試験片を得た。
【0329】
(熟成試験)
試験片を、温度24℃、相対湿度45%の条件下で3日間放置した。試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度の変化を求め、以下の基準で評価を行なった。
◎:実質的変化なし
△:10%未満の変化
×:10%以上の変化
【0330】
(耐湿熱性試験)
試験片を、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、120時間、240時間及び480時間放置した。試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度の変化を求め、以下の基準で評価を行なった。
◎:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が95%以上
○:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が90%以上95%未満
△:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%以上90%未満
×:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%未満
【0331】
(耐熱性試験)
試験片を、温度80℃の恒温槽に入れ、120時間、240時間及び480時間放置した。試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度の変化を求め、以下の基準で評価を行なった。
◎:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が95%以上
○:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が90%以上95%未満
△:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%以上90%未満
×:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%未満
【0332】
【表1】
【0333】
【表2】
【0334】
近赤外線吸収色素1の耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図10に、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図11に示す。また、比較例1で製造した近赤外線吸収色素の耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図12に、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図13に示す。
【産業上の利用可能性】
【0335】
本発明の近赤外線吸収色素やそれを含有する粘着剤を用いた近赤外線吸収フィルター等は、近赤外線吸収波長域が好適で、耐久性にも優れているため、プラズマディスプレイ等のディスプレイ用の前面フィルターをはじめ、近赤外線遮断フィルム、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器等、近赤外線を遮蔽したい分野に広く利用されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収色素、それを含有した粘着剤、及びその粘着剤の層を有する近赤外線吸収フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネルは、原理上、強い近赤外線と電磁波を放出する。この近赤外線は、特に750nm〜1200nmの波長領域において、コードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し誤動作を起こす原因となることから、750nm〜1200nmの範囲の近赤外線を遮蔽する機能を有したプラズマディスプレイパネルが望まれている。
【0003】
近赤外線の遮蔽に関しては、従来、銅や鉄等の金属イオンを含有させたもの、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、ジチオール金属錯体化合物、アミノチオフェノール金属錯体化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物等の近赤外線吸収色素を含有させたものが各種検討されている。
【0004】
上記のような近赤外線吸収色素は1種類の色素だけで上述の750nm〜1200nmといった範囲をカバーすることは不可能である。通常、複数種類の色素、具体的には近赤外線の中でも比較的短波長の近赤外線を吸収する色素と、比較的長波長の近赤外線を吸収する色素とを、通常は組み合わせて用いている。
【0005】
この使用形態として、(a)樹脂に近赤外線吸収色素を混練することによって作製した透明高分子フィルム、(b)樹脂又は樹脂モノマーを有機溶媒に溶解した樹脂濃厚液に、近赤外線吸収色素を分散又は溶解させ、キャスティグ法により作製した高分子フィルム、(c)樹脂バインダーと溶媒に色素を加え、透明高分子フィルムにコーティングしたもの、(d)近赤外線吸収色素を粘着剤に含有させたもの、等が考えられる。
【0006】
このうち、上記(a)から(c)の方法により、複数の層を貼りあわせて製品とすることが一般的である。しかしながら、製造時の手間、コスト及び光線透過率を考慮すると多くの層を積層するほど、コストアップ及び光線透過率の低下につながっているのが現実である。そこで、よりコストダウン及び光線透過率を向上させるためには、層数を削減するのが望ましい方向である。
【0007】
したがって、(d)の方法により層間の接着に用いる粘着剤中に色素を配合すれば、使用するプラスチックフィルムの層数が減り、コストダウン及び光線透過率の向上につながることが考えられる。この方法は、これまでに検討され、メチン色素や、テトラアザポルフィリン系色素等の可視光吸収色素を配合した着色粘着剤を用いたプラズマディスプレイ用前面フィルターが知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0008】
また、プラズマディスプレイ用前面フィルターに好ましく用いられている従来の近赤外線吸収色素であるジインモニウム系色素、又は、ニッケルジチオール系色素も、粘着剤に配合することが提案されている(特許文献4〜8)。
【0009】
しかしながら、近赤外線吸収色素として、特に粘着剤用の近赤外線吸収色素として種々の性能に優れたニッケルジチオール系色素であっても、750nm〜1200nmの範囲の近赤外線領域の中でも比較的長波長領域に吸収域があるものは、耐久性が劣るという問題点があった。従って、近赤外線領域の中でも比較的長波長領域に吸収極大を有し、かつ耐久性に優れる色素が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−107566号公報
【特許文献2】特開2002−040233号公報
【特許文献3】特開2002−372619号公報
【特許文献4】特開平9−230134号公報
【特許文献5】特開平10−156991号公報
【特許文献6】特開2001−207142号公報
【特許文献7】国際公開WO 2006/118277号パンフレット
【特許文献8】国際公開WO 2008/050725号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献4〜8に提案された近赤外線吸収色素のうち比較的長波長に吸収極大を有するものは、粘着剤中に配合できても、実際にはその後の耐久性が悪化して退色が起こり、近赤外線の遮蔽ができなくなる等の問題があった。そのため、750nm〜1200nmの全波長域にわたって吸収を有する近赤外線吸収色素を粘着剤中に配合して用いることは、実用化には至っていなかった。
【0012】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、プラズマディスプレイパネル等の電子ディスプレイ画面から発生する近赤外線に対して優れた遮蔽機能を有し、かつ耐久性に優れた近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供することにある。また、特に、750nm〜1200nmの近赤外線波長域の中でも、比較的長波長領域に吸収を有する近赤外線吸収色素であって、耐久性に優れた近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する金属錯体が、粘着剤と混合しても、良好な耐熱性、耐湿熱性、耐光性等を有することを見出した。また、複数の近赤外線吸収色素を組み合わせることにより、必要な領域の近赤外線を有効に遮断できる粘着剤を提供できることを見出した。更に、750nm〜1200nmの近赤外線波長域の中で比較的長波長領域に吸収を有することと優れた耐久性とを両立できる近赤外線吸収色素及び/又は近赤外線吸収色素含有粘着剤を提供できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]〜[18]に存する。
[1]下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【化1】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【0015】
[2]前記一般式(1)において、X1及びX2が、それぞれ独立して、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)であることを特徴とする[1]に記載の近赤外線吸収色素。
[3]前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を有する複素環基であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の近赤外線吸収色素。
[4]前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいチエニル基であることを特徴とする[3]に記載の近赤外線吸収色素。
【0016】
[5]前記一般式(1)において、置換基Rf及び置換基Rgが、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基、又は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基であることを特徴とする[1]ないし[4]の何れかに記載の近赤外線吸収色素。
【0017】
[6]前記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素が、下記一般式(2a)又は(2b)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする[1]ないし[5]の何れかに記載の近赤外線吸収色素。
【化2】
[一般式(2a)及び(2b)中、
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
Rbは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す(ただし、Rbが分岐アルコキシ基である場合は、Rbは、ORaと同じ基である)。
M1は金属原子を示す。]
【0018】
[7]極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあることを特徴とする[1]ないし[6]の何れかに記載の近赤外線吸収色素。
【0019】
[8][1]ないし[7]の何れかに記載の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする近赤外線吸収色素含有粘着剤。
[9]更に、極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする[8]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
[10]極大吸収波長が、粘着剤に含有されている[1]ないし[7]の何れかに記載の近赤外線吸収色素より短波長であり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする[9]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【0020】
[11]前記第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする[10]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化3】
[一般式(3)中、
X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
M2は金属原子を示す。
(A)Xが置換基を有する窒素原子の場合;
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される化合物であり、
【化4】
(一般式(4a)中、
Rは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の置換基を示し、Rの末端が一般式(3)のベンゼン環に結合していてもよい。
R’は、任意の1価の置換基を示し、R’同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
R’同士が結合して縮合環を形成していないときは、n’は0〜4の整数であり、R’同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)
RX及びRYは、それぞれ独立して1価の置換基を示し、連結基を介して結合していてもよく、RX及びRYが結合して縮合環を形成していてもよい。)
(B)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合;
RYは1価の置換基を示す。
RXは下記一般式(4b)で表される化合物である。
【化5】
(一般式(4b)中、
Xhは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基を示す。
Rhは、任意の1価の置換基を示し、Rh同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
Rh同士が結合して縮合環を形成していないときは、pは0〜4の整数であり、Rh同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)]
【0021】
[12]前記一般式(3)で表される第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(5)で表される第二の近赤外線吸収色素であることを特徴とする[11]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化6】
[一般式(5)において、
R4は、水素原子;炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニルチオ基を示す。
R6は、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
R5は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基(ただし、R5が分岐アルコキシ基である場合は、R5は、OR6と同じ基である)。
M4は金属原子を表す。]
【0022】
[13]第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(6)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする[9]又は[10]に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化7】
[一般式(6)中、
R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。
R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
M5は金属原子を示す。]
[14]更に、(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする[8]ないし[13]の何れかに記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【0023】
[15][8]ないし[14]の何れかに記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤の層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
[16][15]に記載の近赤外線吸収フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ用前面フィルター。
[17][16]に記載のプラズマディスプレイ用前面フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ。
【0024】
[18]下記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と、極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲内にある第二の近赤外線吸収色素を含有してなるものであることを特徴とする近赤外線吸収フィルター用色素混合物。
【化8】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、粘着剤との混合によっても色素の劣化が起こり難く、耐光性、耐熱性、耐湿熱性等に優れ、要すれば複数の近赤外線吸収色素を組み合わせることにより、750nm〜1200nmの範囲の近赤外線領域を広範囲に遮蔽する近赤外線吸収色素及びそれを含有する粘着剤を提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、近赤外線波長域の中で、例えば850nm〜1200nmの範囲のように比較的長波長領域に吸収を有し、かつ耐久性を兼ね備えた近赤外線吸収色素、及びそれを含有する粘着剤を提供できる。
【0027】
本発明によれば、反射防止層、電磁波遮蔽層等の別の機能を有する層との貼着に用いることにより、光学プラズマディスプレイパネル用フィルター等の電子ディスプレイ用フィルターの一部として用いることができ、電子ディスプレイ用フィルターの層の低減化と貼合加工の削減化によるコストダウンと光線透過率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】近赤外線吸収色素1の分光透過スペクトル測定結果である。
【図2】近赤外線吸収色素2の分光透過スペクトル測定結果である。
【図3】近赤外線吸収色素3の分光透過スペクトル測定結果である。
【図4】近赤外線吸収色素4の分光透過スペクトル測定結果である。
【図5】近赤外線吸収色素5の分光透過スペクトル測定結果である。
【図6】近赤外線吸収色素6の分光透過スペクトル測定結果である。
【図7】近赤外線吸収色素7の分光透過スペクトル測定結果である。
【図8】近赤外線吸収色素8の分光透過スペクトル測定結果である。
【図9】比較例1で製造した近赤外線吸収色素の分光透過スペクトル測定結果である。
【図10】近赤外線吸収色素1の、耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【図11】近赤外線吸収色素1の、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【図12】比較例1で製造した近赤外線吸収色素の、耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【図13】比較例1で製造した近赤外線吸収色素の、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果である。スペクトルの下から、試験前、480時間後の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0030】
<本発明の近赤外線吸収色素>
本発明の近赤外線吸収色素は、下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする。
【化9】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【0031】
一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。また、複素環を形成する炭素以外の原子(ヘテロ原子)としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が好適に挙げられる。また、該複素環は単環でも、2〜4個の環からなる縮合環でもよい。また、単環又は縮合環のそれぞれの環は何員環でもよいが、5員環又は6員環が好ましく、該複素環は、芳香族環であることが好ましい。更に、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、硫黄原子を有する複素環基であることが特に好ましい。
【0032】
「置換基を有していてもよい複素環基」の複素環としては、具体的には、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピラン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イソベンゾフラン環、イソベンゾチオフェン環、イソインドール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、プリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アクリジン環等由来の、5〜6員の単環又は2〜4縮合環を有する芳香族複素環基が共役的電子供与性を有する面から好ましい。中でも、近赤外線吸収性能、耐久性、化合物の溶解性、安定性等の点で、チオフェン環が特に好ましい。すなわち、R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいチエニル基であることが特に好ましい。
【0033】
複素環基に結合している置換基としては、例えば、水素原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子、−SRt(Rtは炭素数1〜15のアルキル基)、−CH2−(OCH2CH2)q−OCH2CH3等のエチレンオキサイド鎖含有基、アセチル基、プロピオニル基等のアシル基、フェニル基、チエニル基等の芳香環基、ベンジル基、α-フェネチル基、β-フェネチル基等のアラルキル基、ニトリル基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアリールオキシシカルボニル基、フッ素基を有するアルキル基等が挙げられる。上記のアルキル基は直鎖であっても分岐を有していてもよく、複素環基に結合している置換基は連結基を介して互いに結合していてもよい。
【0034】
また、複素環基の置換基としては、吸収極大をより長波長に微調整するためには、ハメットの置換基定数σpが、−0.9≦σp≦0.0であるものが好ましい。一方、複素環基の置換基としては、吸収極大をより短波長に微調整するためには、ハメットの置換基定数σpが、0.0≦σp≦0.9であるものが好ましい。より好ましい範囲は、吸収極大の波長と化合物の合成の容易さに依存するため、要求される特性に応じて適宜選択することができる。
【0035】
特に、合成の容易さからは、置換基が水素原子の場合が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基の場合も好ましい。また、置換基がハロゲン原子の場合も、複素環基の電子を吸引する効果があり好ましい。これらの中でも、質量当たりの吸光度を上げる目的から、また近赤外線吸収性能、耐久性等の点から、複素環基の置換基としては水素原子、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
【0036】
本明細書における「ハメットの置換基定数σp」とは、「化学の領域増刊122号 薬物の構造活性相関、96〜103頁(南江堂刊)」、「Hansch,C. et,al., J.Med.Chem.,16,1207 (1973)」、「Hansch,C. et,al., J.Med.Chem.,20,304 (1977)」等に記載されているハメットの置換基定数σpのことであり、σpは公知の方法によって測定することができる。
【0037】
また、複素環基に結合している置換基の数は特に限定はないが、1〜2個が好ましい。また、置換基が複素環基に結合している位置は特に限定はなく、ヘテロ原子に対してα位でもβ位でもよい。複素環基に結合している置換基は連結基を介して互いに結合していてもよい。
【0038】
一般式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示す。炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子は、特に限定はないが、X1及びX2中に1個だけ有することが好ましい。また、ベンゼン環A又はベンゼン環Bに直接結合する原子は、炭素原子、酸素原子、窒素原子又はケイ素原子の何れでもよい。X1及びX2中には、それぞれ炭素原子を2〜18有することが好ましく、3〜16有することが特に好ましい。炭素数が少な過ぎると、溶解性を低下させる場合があり、一方、炭素数が多過ぎると、融点が下がり化合物の単離に困難を伴う場合がある。炭素原子の鎖は、直鎖であっても、分岐を有していてもよいが、適度な溶解性を付与する点で分岐を有していた方が好ましい。
【0039】
X1及びX2としては、例えば、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、及び置換されていてもよい炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0040】
(a)炭化水素基
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、n−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;2−ヘキシン基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数4〜12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数4〜12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
【0041】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。このうち好ましくは炭素数6〜12程度の単環又は縮合2環式アリール基である。
【0042】
アラルキル基としては、上記した脂肪族炭化水素基とアリール基が結合した基が挙げられる。
【0043】
(b)複素環基
チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち好ましくは、炭素数3〜12の単環又は2環の複素環基である。
【0044】
(c)カルボニル基
アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、アシル基(−COR)のRは、先に挙げた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基等が挙げられる。また、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。更に、アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが、複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0045】
(d)炭化水素チオ基
炭化水素チオ基(−SR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
(e)シリル基
シリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基等のシリル基が挙げられる。好ましくは炭素数3〜18程度のアルキルシリル基である。
【0046】
(f)炭化水素アミノ基
炭化水素アミノ基(−NRR’)のR及びR’は、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
(g)炭化水素オキシ基
炭化水素オキシ基(−OR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0047】
以上の(a)〜(g)の基が置換基を有する場合、置換基の種類は色素の安定性や、粘着性樹脂への分散/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されない。
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。
【0048】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0049】
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有するアミノ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0050】
特に好ましくは、X1及びX2が、それぞれ独立して、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)、又は、−N(Ra)2(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)の場合であり、より好ましくは、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)の場合である。
【0051】
ここで、Raは炭素数3〜10の直鎖、分岐又はシクロアルキル基を示すが、より好ましくは、炭素数4〜9の直鎖、分岐又はシクロアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数5〜8の直鎖、分岐又はシクロアルキル基である。分岐アルキル基が上記した理由で更に好ましい。
【0052】
Raは、具体的には、例えば、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、5−メチルヘキシル基、6−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基等が挙げられる。
【0053】
Raは、フェニル基、シクロヘキシル基、ナフチル基、アントラセニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ベンジル基、フェネチル基等の置換基を有していてもよい。
【0054】
X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。「連結基」としては、単なる単結合「−」、−O−、−NH−、−OCH2CH2O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CONR−、−SS−、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニル基、ビフェニル基、エステル基等が挙げられる。
【0055】
一般式(1)において、Mは金属原子を示す。Mは、4配位の形態をとることができる金属原子であれば特に限定はされない。好ましくは、Ni、Pd、Pt等の10族金属原子;Co;Fe;Cu;Ag;Au;Zn等が挙げられる。より好ましくは10族金属原子であり、特に好ましくはNi又はPdである。
【0056】
一般式(1)において、ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよい。また、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数である。Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は1〜10個、好ましくは1〜5個の任意の1価の置換基を有していてもよい。
【0057】
また、ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよい。また、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数である。Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は1〜10個、好ましくは1〜5個の任意の1価の置換基を有していてもよい。
【0058】
ここで、置換基Rf及び置換基Rgは、それ独立に任意の置換基であり、近赤外線吸収色素の安定性、粘着性樹脂への溶解性等に悪影響を与えないものであれば特に限定されない。
【0059】
置換基Rf及び置換基Rgは、具体的には、それぞれ独立して、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基からなる群より選択される基が挙げられる。
【0060】
置換基Rf及び置換基Rgは、置換基を有していてもよい。置換基Rf及び置換基Rgが有する置換基としては、具体的には、例えば、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0061】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜10程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜10程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜10程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。上記具体的な基は、前記した置換基を有していることも好ましい。
【0062】
好ましくは、「フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等の置換基を有していてもよい『アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基若しくはアルキルチオ基』」;置換基を有するアミノ基;フッ素原子;塩素原子等である。
【0063】
より好ましい置換基Rf及び置換基Rgは、具体的には、それぞれ独立して、フッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基、又は、フッ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基であり、特に好ましい置換基Rf及び置換基Rgは、一般式(2a)及び一般式(2b)に関して後述するRbである。
【0064】
隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。ここで、「連結基」としては、例えば、前記したものと同様のものが挙げられる。連結して形成された環は脂肪族環でも芳香族環でもよい。すなわち、結合して縮合環を形成していてもよい。縮合環としては、ベンゼン環(ベンゼン環Aと共に結果としてナフタレン環になる)、ナフタレン環等の炭素数6〜20程度の環が挙げられる。
【0065】
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1〜2の整数であることが特に好ましく、1であることが最も好ましい。mが0であると、合成時に混合物を形成する可能性や色素分子の相溶性低下の可能性があり、mが大き過ぎると分子量が大きくなり、吸光係数の低下を招く可能性がある。
【0066】
Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。すなわち、縮合環を形成するm個の原子とは関係なく、任意の1価の置換基を有していてもよい。
【0067】
置換基Rfのベンゼン環への置換位置は特に限定はないが、一般式(2a)及び一般式(2b)において、Rbとして示したような置換位置で置換されていることが、単一の構成中単体を得る点から好ましい。
【0068】
以上、ベンゼン環Aの置換基であるRfについて記載したが、ベンゼン環Bの置換基であるRgについても上記と同様である。
【0069】
前記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、下記一般式(2a)又は(2b)で表される近赤外線吸収色素であることが、近赤外線吸収色素の適切な吸収波長域(極大吸収波長);耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性;粘着剤中での安定性;粘着性樹脂への良分散・良溶解性;等の点で特に好ましい。
【0070】
【化10】
[一般式(2a)及び(2b)中、
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
Rbは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す(ただし、Rbが分岐アルコキシ基である場合は、Rbは、ORaと同じ基である)。
M1は金属原子を示す。]
【0071】
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示すが、ここでの置換基に関しては前記した通りである。Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示すが、Raに関しては上記した通りである。M1の金属原子に関しても上記した通りである。
【0072】
Rbは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す。Rbとしては、具体的には、例えば、メチル基;エチル基;n−プロピル基、イソプロピル基;n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、tert−ブチル基;n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基;n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0073】
Rbとしては、一般式(1)のRf、Rgにおいて好ましい基として挙げたものも挙げられ、その基に対する好ましい置換基についても同様である。
【0074】
また、Rbがアルコキシ基の場合は、該アルコキシ基中のアルキル基としては、具体的には、例えば、Rbとして上記した基のうち、メチル基とエチル基を除き、n−ヘプチル基、メチルヘキシル基、エチルペンチル基、ジメチルペンチル基;n−オクチル基、メチルヘプチル基、エチルヘキシル基、ジメチルヘキシル基;n−ノニル基、メチルオクチル基、エチルヘプチル基、ジメチルヘプチル基;n−デシル基、メチルノニル基、エチルオクチル基、ジメチルオクチル基;等を加えた基が挙げられる。
【0075】
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、750nm〜1200nmの波長領域において、遮蔽効果を示すが、更に、極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあるものであることが特に好ましい。すなわち、本発明の近赤外線吸収色素は、耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性に優れ、同時に極大吸収波長域も長波長側(850nm〜1200nm)にすることが可能である。その性能両立の特長を生かすためにも、本発明の近赤外線吸収色素は、極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあるものが特に好ましく、880nm〜1100nmの範囲にあるものがより好ましく、900nm〜1000nmの範囲にあるものが特に好ましい。
【0076】
ここで、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、リガンド(配位子)部分の分子量が1000以下のものが好ましく、700以下のものが特に好ましい。
また、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素のモル吸光係数は、通常5000以上、好ましくは8000以上である。
【0077】
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒に対する溶解度は、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
【0078】
<<本発明の近赤外線吸収色素の具体例>>
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の好ましい例を、以下に例示する。
【化11】
【0079】
【化12】
【0080】
【化13】
【0081】
【化14】
【0082】
【化15】
【0083】
【化16】
【0084】
【化17】
【0085】
【化18】
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
【化21】
【0089】
【化22】
【0090】
【化23】
【0091】
【化24】
【0092】
【化25】
【0093】
【化26】
【0094】
【化27】
【0095】
【化28】
【0096】
【化29】
【0097】
【化30】
【0098】
【化31】
【0099】
【化32】
【0100】
【化33】
【0101】
【化34】
【0102】
<<本発明の近赤外線吸収色素の合成方法>>
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の好ましい製造方法は、特に限定はされるものではないが、例えば、以下の通りである。すなわち、まず、置換フェノール、置換アニリン等を出発原料とし、水酸基又はアミノ基を、KOH、NaOH、K2CO3、Na2CO3、Cs2CO3等を塩基として用い、相関移動触媒(テトラアルキルアンモニウム塩)の存在下、アルキルハライドにより、エーテル化又はN,N−アルキル化する。
【0103】
得られたエーテル体又はN,N−ジアルキルアニリンに対して、例えば、Chem.Rev.,106巻,2126〜2208ページ(2006年)記載の酸存在下Friedel−Craftsアシル化を行う。ここで、酸としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化スズ、ランタノイドトリフラート、ゼオライト、プロトン酸(硫酸、リン酸等)、塩化鉄、塩化亜鉛、ポリリン酸等が挙げられる。
【0104】
続いて、カルボニル基の隣のα−水素を、四級アンモニウムトリブロミド(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド等)、又は、ピリジニウムトリブロミドにより、選択的にα位のみをモノブロモ化する。
【0105】
次いで、エトキシキサントゲン酸カリウム又はイソプロポキシキサントゲン酸カリウム)により、ブロモ基を−SC(S)OEt基又は−SC(S)O−isoPr基(ここで、Etはエチル基、isoPrはイソプロピル基を意味する。)に変換し、臭化水素酢酸溶液(HBr−AcOH)中で閉環反応を行い、前駆体である1,3−ジチオール−2−オン誘導体を得る。ここで、臭化水素酢酸溶液にはハロゲン系溶媒(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなど)を共存させていてもよい。
【0106】
更に、例えば、Mol.Cryst.Liq.Crst.Lett,56巻,249頁(1980年)等に記載の公知の方法等で含金属錯体化して合成できる。
【0107】
<<本発明の近赤外線吸収色素の新規性>>
本願発明の近赤外線吸収色素は、一般式(1)において、R1及びR2が複素環基を有するものである。従来公知の一般式(1)におけるR1又はR2がベンゼン環である化合物については、以下のような臭素/酢酸(Br2/AcOH)によるブロモ化の方法が、一般的な方法として知られているにすぎない。
【0108】
【化35】
【0109】
一方、一般式(1)におけるR1及びR2が複素環の場合は、通常ヘテロ原子に対してα位にある部位の反応性が高いため、上記従来公知の方法では、一般式(1)で表される近赤外線吸収色素の前駆体であるリガンド(配位子)部分の合成は困難であった。このことは、後述の実施例における、合成例1−2の条件1の方法からも明らかである。すなわち、下記反応式のように、複素環がチオフェン環の場合(すなわち、一般式(1)においてR1及びR2がチエニル基の場合)、ブロモ化工程で、Brがチオフェン環に反応してしまい、カルボニル基の隣のα−水素をBr2で選択的に置換することができなかった。
【0110】
【化36】
【0111】
本発明により、上記した通り、従来法の臭素(Br2)に代えて、四級アンモニウムトリブロミド(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラブチルアンモニウムトリブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド等)、ピリジニウムトリブロミド等のトリブロミド類を用いることによって、初めて、カルボニル基の隣のα−水素を、選択的にモノブロモ化することができたのである。このことは、後述の実施例における、合成例1−2の条件2の方法からも明らかである。
【0112】
また、上記反応式で、Brが結合した位置が既にアルキル基等で置換されている場合は、その位置にはBrは反応し得ないため、上記の従来法でも本発明の化合物は合成可能であると思われるが、実際には、第2工程(Friedel−Craftsアシル化)の段階から、ベンゼン環をα−アルキルチオフェン環に代える必要があり、現実的ではない。後述の実施例の合成例[2−1]〜[2−3]から明らかなように、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、本発明の製法によって初めて合成が可能になったのである。
【0113】
また、特開2004−069952号公報、特開2008−308622号公報には、R1、R2がチエニル基の場合が記載されている。しかしながら、そこに記載の発明は、X1、X2が短い基であり、一般式(1)の要件である「X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し」に該当しない。X1、X2が短い基の場合は、Hgを用いる方法等で合成が可能であり、これらの公報では、その方法が用いられたと考えられるが、かかる方法では、長い基であるX1、X2を有する本願発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素のリガンド部分は合成できない。
【0114】
<近赤外線吸収色素含有粘着剤>
本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は粘着剤に含有されて使用されても、高い安定性を発揮できる。色素毎の層を形成させる必要はなく、色素の混合によっても粘着剤を調製できる点においても、本発明の近赤外線吸収色素は優れている。本発明の他の態様は近赤外線吸収色素を含有する粘着剤である。近赤外線吸収色素含有粘着剤中において、上記した本発明の近赤外線吸収色素は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0115】
<近赤外線吸収色素混合物>
また、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素は、一般式(1)で表される近赤外線吸収色素を1種又は2種以上を混合して近赤外線吸収色素混合物として用いることができる。また、後述する極大吸収波長が750nm〜1200nm、好ましくは750nm〜950nmの範囲内にある1種又は2種以上の第二の近赤外線吸収色素と混合して近赤外線吸収色素混合物として用いることができる。本発明の近赤外線吸収色素混合物は、固体状の近赤外線吸収色素を混合したものでもよいし、近赤外線吸収色素を溶媒に溶解又は分散させたものであってもよい。本発明の近赤外線吸収色素混合物は近赤外線吸収フィルター用に好適に用いることができる。
【0116】
<<第二の近赤外線吸収色素>>
上記した近赤外線吸収色素含有粘着剤(以下、単に「粘着剤」と略記する場合がある)は、前記「本発明の近赤外線吸収色素」に加えて、更に、極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することが、吸収波長域を広げるために好ましい。
【0117】
第二の近赤外線吸収色素としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げられる。無機系顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等が挙げられる。有機系顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が挙げられる。
【0118】
また、有機系染料、色素としては、後述する一般式(3)で表される近赤外線吸収色素等の金属錯体系、アジン系、アゾ系、ニッケルアゾ錯体系、アゾメチン系、アントラキノン系、インジゴイド系、インドアニリン系、オキサジン系、オキソノール系、キサンテン系、キノフタロン系、シアニン系、スクアリリウム系、スチルベン系、テトラアザポルフィリン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ピロメテン系、ジピロメテン系、ベンジリデン系、ポリメチン系、メチン系、クロム錯塩系等が挙げられる。
【0119】
上記した「本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素」は、近赤外線吸収色素の極大吸収波長として要求される750nm〜1200nmの中でも、長波長側(例えば、850nm〜1200nmの範囲)に極大吸収波長を有するため、粘着剤に更に含有させる「第二の近赤外線吸収色素」の極大吸収波長は、近赤外線領域の中でも比較的短波長側の750nm〜950nmの範囲にあることが好ましい。それによって、混合(併用)の効果として、広い波長領域に遮蔽効果を有するようになり、原理上、強い近赤外線を放出する、例えばプラズマディスプレイパネル等の周辺でも、コードレスホン、近赤外線リモコン、周辺にある他の電子機器等の誤動作を防止することができる。
【0120】
すなわち、「第二の近赤外線吸収色素」は、極大吸収波長が粘着剤に含有されている上記した「本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素」より短波長にあり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にあるものであることが好ましい。
【0121】
粘着剤の調製において併用される、極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素としては、上記した系のものが挙げられるが、特に好ましくは、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収色素である。
【0122】
【化37】
[一般式(3)中、
X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
M2は金属原子を示す。
(A)Xが置換基を有する窒素原子の場合;
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される化合物であり、
【化38】
[一般式(4a)中、
Rは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の置換基を示し、Rの末端が一般式(3)のベンゼン環に結合していてもよい。
R’は、任意の1価の置換基を示し、R’同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
R’同士が結合して縮合環を形成していないときは、n’は0〜4の整数であり、R’同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
RX及びRYは、それぞれ独立して1価の置換基を示し、連結基を介して結合していてもよく、RX及びRYが結合して縮合環を形成していてもよい。]
【0123】
(B)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合;
RYは1価の置換基を示す。
RXは下記一般式(4b)で表される化合物である。
【化39】
[一般式(4b)中、
Xhは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基を示す。
Rhは、任意の1価の置換基を示し、Rh同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
Rh同士が結合して縮合環を形成していないときは、pは0〜4の整数であり、Rh同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【0124】
以下、一般式(3)について詳述する。
【0125】
一般式(3)中、M2は、4配位の形態をとり得る金属原子であれば特に限定されない。好ましくは、Ni、Pd又はPtの10族金属原子;Co;Fe;Cu;Ag;Au;Znが挙げられる。より好ましくは10族金属原子であり、特に好ましくはNi又はPdである。
【0126】
X、Yはそれぞれ独立に、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有する窒素原子を表わす。
【0127】
(1)Xが置換基を有する窒素原子の場合
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される基である。
【0128】
【化40】
【0129】
一般式(1)で表される化合物は、化合物全体としてRを2個有するが、R同士が連結基を介して結合していてもよい。また、(4a)は、縮合環を形成していてもよい。
一般式(4a)において、R’は、任意の置換基であり、R’同士が結合して縮合環を形成してもよい。n’は、単環の場合0〜4であり、縮合環の場合0〜10である。
【0130】
Rは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する、1価の置換基を示す。
【0131】
炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する、1価の置換基としては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、及び置換されていてもよい炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0132】
(a)炭化水素基
炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、n−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;2−ヘキシン基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数4〜12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数4〜12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
【0133】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。このうち好ましくは炭素数6〜12程度の単環又は縮合2環式アリール基である。アラルキル基としては、上記した脂肪族炭化水素基と上記したアリール基の結合したものが挙げられる。
【0134】
(b)複素環基
チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち好ましくは、炭素数3〜12程度の単環又は2環式5員環複素環基である。
【0135】
(c)カルボニル基
アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。具体的には、アシル基(−COR)のRは、先に挙げた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基等が挙げられる。また、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。更に、アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが、複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0136】
(d)炭化水素チオ基
炭化水素チオ基(−SR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0137】
(e)シリル基
シリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基等のシリル基が挙げられる。好ましくは炭素数3〜18程度のアルキルシリル基である。
【0138】
(f)炭化水素アミノ基
炭化水素アミノ基(−NRR’)のR及びR’は、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0139】
(g)炭化水素オキシ基
炭化水素オキシ基(−OR)のRは、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0140】
以上の(a)〜(g)の基が置換基を有する場合、置換基の種類は色素の安定性や、粘着性樹脂への分散/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されない。
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。
【0141】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0142】
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有するアミノ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0143】
R’は、色素の安定性や、粘着性樹脂への分散/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されず、任意の1価の置換基である。
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。
【0144】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0145】
好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、置換基を有するアミノ基、フッ素原子、塩素原子である。
【0146】
RX及びRYはそれぞれ独立に、1価の置換基を表し、RX及びRYが連結基を介して結合してもよい。好ましくは、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子が挙げられる。これらの具体例は、先の一般式(A)のR’の具体例が当てはまる。
【0147】
より好ましくは、RX及びRYが連結基を介して結合する場合であり、具体的には、
【化41】
のような、単環、縮合環からなる構造が挙げられ、より好ましくは、
【0148】
【化42】
であり、特に好ましくは、
【0149】
【化43】
である。
【0150】
これらの構造は、1価の置換基を有していてもよい。具体的には(a)において置換していてもよい置換基として述べたものと同様である。この中でも好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子で、特に好ましくは3級、2級の分岐鎖状アルキル基である。
【0151】
RX及びRYが連結基を介して結合して上記の構造(ベンゼン環)を形成する場合の構造は、以下の式(3a)で表される。
【0152】
【化44】
【0153】
一般式(3a)中、R11及びR12はそれぞれ独立に炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。R11及びR12は、連結基を介して結合していてもよい。
Zは、酸素原子、硫黄原子、又は置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
【0154】
芳香族環は、任意の置換基を有していてもよく、該置換基は隣り合う基が連結基を介して結合してもよく、又は、更に縮合環を形成していてもよい。
M2は金属原子を表す。
ここで、一般式(3a)のZは、一般式(3)のY、一般式(3a)のM2は一般式(3)のM2に該当する。また、一般式(3a)のR11及びR12は一般式(a)のRに該当する。
【0155】
更に好ましい例としては、以下の(1)−(i)〜(iii)が挙げられる。
(1)−(i)Xが置換基を有する窒素原子、かつ、Yが酸素原子、かつ、RxとRyとが連結基を介して結合している場合である。特に、ベンゼン環を形成している場合には、RxとRyとが結合して形成されたベンゼン環は、分岐鎖アルキル基で2個以上置換されていることが望ましい。窒素原子の置換基である上記式(4a)のRとしては、特に、炭素数3〜10程度の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖アルキル基、又は、炭素数2〜10程度の置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、アルキルチオ基、又は、置換アミノ基である。R同士は、連結基を介して結合していてもよい。
【0156】
(1)−(ii)Xが置換基を有する窒素原子、かつ、Yが硫黄原子、かつ、RxとRyとが連結基を介して、結合している場合である。特に、ベンゼン環を形成している場合には、RxとRyとが結合して形成されたベンゼン環は、置換基としてアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子を有するものが好ましい。窒素原子の置換基である上記式(4a)のRとしては、特に、炭素数3〜10程度の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖アルキル基、又は、炭素数2〜10程度の置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、アルキルチオ基、又は、置換アミノ基が好ましい。R同士は、連結基を介して結合していてもよい。
【0157】
(1)−(iii)Xが置換基を有する窒素原子、かつ、Yが水素を有する窒素原子、かつ、RxとRyとが連結基を介して、結合している場合である。特に、ベンゼン環を形成している場合には、RxとRyとが結合して形成されたベンゼン環の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましい。窒素原子Xの置換基である上記式(4a)のRとしては、特に、炭素数3〜10程度の置換基を有していてもよい直鎖、分岐鎖アルキル基、又は、炭素数2〜10程度の置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は、アルキルチオ基、又は、置換アミノ基が好ましい。R同士は、連結基を介して結合していてもよい。
【0158】
(2)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合
RXは下記一般式(4b)で表される基である。
【0159】
【化45】
【0160】
前記の一般式(3)で表される化合物は、化合物全体としてRを2個有するが、R同士で連結基を介して結合していてもよい。
一般式(4b)において、Xhは炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する、1価の置換基を示す。Xhとしては、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基が挙げられる。具体的には先の一般式(3)の一般式(4a)のRのうち炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有するものである。
【0161】
Rhは、任意の置換基であり、Rh同士が結合して縮合環を形成してもよい。pは、単環の場合0〜4である。縮合環が形成されている場合は、置換基Rhの置換基は0〜10である。
Rhは、該置換基の種類は色素の安定性や、粘着性樹脂への分解/溶解性に影響を与えないものであれば特に限定されない。
【0162】
例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基等からなる群より選択された基が挙げられる。具体的には先の一般式(3)の一般式(4a)のR’の具体例と同様である。
【0163】
RYは、1価の置換基を表す。RYとしては、水素原子、置換されていてもよい炭化水素基、置換されていてもよいカルボニル基、置換されていてもよい炭化水素チオ基、置換されていてもよいシリル基、置換されていてもよい炭化水素アミノ基、置換されていてもよい炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子が挙げられる。具体的には先の一般式(3)の一般式(4a)のR’の具体例と同様である。
【0164】
以上述べた中で、より好ましい例としては、以下である。X、Yが硫黄原子、かつ、RXが一般式(4a)を有する場合。このときの構造は、以下の式(3b)で表される。
【0165】
【化46】
【0166】
一般式(3b)中、R13及びR14はそれぞれ独立に1価の置換基を示す。
X11及びX12は、それぞれ独立に、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基である。X11及びX12が連結基を介して結合していてもよい。
【0167】
芳香族環は、任意の置換基を有していてもよく、隣り合う基が連結基を介して結合してもよい。
M3は、金属原子を表す。
【0168】
ここで、一般式(3b)のR13及びR14は一般式(3)のRX、一般式(3b)のM3は一般式(3)のM2に該当する。一般式(3b)のX11及びX12は前記一般式(a)のRに該当する。
【0169】
なお、一般式(3b)で表される化合物の中でも、以下の一般式(5)に示す化合物は、粘着性樹脂と混合して近赤外線吸収粘着剤に使用する第二の近赤外線吸収色素として、特に好ましく使用できるものである。
【0170】
【化47】
[一般式(5)において、
R4は、水素原子;炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニルチオ基を示す。
R6は、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
R5は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基(ただし、R5が分岐アルコキシ基である場合は、R5は、OR6と同じ基である)。
M4は金属原子を表す。]
【0171】
一般式(5)のR4は、一般式(3)のRYに該当し、一般式(5)のR5は、一般式(3)中の一般式(4b)のRhに該当し、一般式(5)の「−OR6」は、一般式(3)中の一般式(4b)の「−Xh」に該当し、一般式(5)のM4は一般式(3)のM2に該当する。M4はNiであることが特に好ましい。
【0172】
また、第二の近赤外線吸収色素としては、下記一般式(6)で表される近赤外線吸収色素も好ましい。
【化48】
[一般式(6)中、
R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。
R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
M5は金属原子を示す。]
【0173】
一般式(6)中、R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。M5は、平面四座配位をとる金属であれば何でもよい。
M5としては、Ni,Pd,Pt,Co,Fe,Cu,Au,Cr,Mnが、好ましい。更に好ましくは、Ni,Pdであり、最も好ましくは、Niである。
【0174】
R7及びR8の炭化水素基として、以下の基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下の分岐鎖アルキル基である。
【0175】
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基等が挙げられる。このうち好ましくは炭素数12以下の単環又は縮合2環式アリール基である。更に好ましくは、フェニル基である。
【0176】
複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち特に、好ましくは、チエニル基である。
【0177】
上記の置換基を有してもよいカルボニル基としては、アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。更に具体的には、アシル基(−COR)のR、及び、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものが挙げられる。アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが挙げられる。複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0178】
これらの中で、R7及びR8として更に好ましくは、フェニル基である。R9及びR10は、R7で述べた分岐鎖アルキル基、特に、2級アルキル基、又は、置換基を有してもよいフェニル基が好ましい。
【0179】
特に好ましいR7及びR8の組み合わせは、以下の(a)〜(d)である。
(a)R7及びR8において、p−位かつ/又は、m−位に置換されていてもよいフェニル基を有する場合;
フェニル基の置換基は、1価の置換基で、隣りあった置換基は、直接、又は、連結基を介して結合していてもよい。例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基又はシリル基等が挙げられる。
【0180】
具体的にはメチル基、エチル基等の炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基等の炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基等炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の炭素数1〜20程度の置換基を有していてもよいアミノ基;アセチル基、ピバロイル基等の炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等の炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基等の炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等の炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基等の炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基等の炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基等の炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基等の炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基等の炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等の炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基等の炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基等の炭素数3〜20程度のヘテロアリールスルホニル基;フタルイミド等の炭素数4〜20程度のイミド基;アルキル基又はアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基等が挙げられる。
【0181】
特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキル基を置換するアミノ基、フッ素原子、塩素原子を有するフェニル基である。
【0182】
(b)R7は、置換基が少なくともオルト位にあるフェニル基であり、かつR8が、水素原子の場合;
オルト位の置換基が、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の置換基である場合が特に好ましい。具体的には、炭化水素基としては、以下の(1)〜(3)である。
【0183】
(1)脂肪族炭化水素基としては、n−ブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;2−ヘキシン基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数4から12程度の脂肪族炭化水素基、特に好ましくは、炭素数4から12程度の分岐鎖脂肪族炭化水素基である。
【0184】
(2)アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基等が挙げられる。このうち好ましいのは炭素数6以上、炭素数12以下の単環又は縮合2環式アリール基である。
【0185】
(3)複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基等が挙げられる。このうち好ましいのは、炭素数3以上、12以下の単環又は2環式5員環複素環基である。
【0186】
カルボニル基としては、アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基が挙げられる。更に具体的には、アシル基(−COR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基等が挙げられる。カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものに加え、エチル基、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものが挙げられる。複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものが挙げられる。
【0187】
炭化水素チオ基(−SR)のRとしては、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。アミノ基(−NRR’)のR、R’としては、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
【0188】
炭化水素オキシ基(−OR)のRとしては、先にあげた炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものに加え、n−プロピル基、2−プロペニル基、エチニル基等が挙げられる。
シリル基としては、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基等のシリル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以上、18以下のアルキルシリル基である。
【0189】
これらの中でR7及びR8として、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくは、分岐鎖アルキル基、又は、分岐鎖アルコキシ基である。オルト位以外にも置換基を有していてもよいが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。
【0190】
(c)R7は、置換基が少なくともオルト位にあるフェニル基で、R8が、置換基を有するフェニル基の場合;
R7のオルト位の置換基は、炭素原子、硫黄原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する、1価の置換基の場合が好ましい。特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。オルト位以外にも置換基を有していてもよいが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。R8の置換基は、フェニル基のメタ位かつ/又はパラ位にあることが好ましく、任意の1価の基であるが、特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。
【0191】
(d)R7及びR8は、置換基が少なくともオルト位にあるフェニル基の場合;
R7及びR8のオルト位の置換基は、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計2以上有する、1価の置換基の場合が好ましい。特に好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、特に好ましくは、分岐鎖アルキル基、又は、分岐鎖アルコキシ基である。オルト位以外にも置換基を有していてもよいが、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、フッ素原子、塩素原子、シアノ基である。
【0192】
<<<第二の近赤外線吸収色素の具体例>>>
第二の近赤外線吸収色素の好ましい具体例を以下に示す。
【化49】
【0193】
【化50】
【0194】
【化51】
【0195】
【化52】
【0196】
【化53】
【0197】
<<粘着性樹脂>>
本発明の近赤外線吸収色素含有粘着剤は、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と粘着性樹脂とを含有するものである。また、本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と、「極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素」、特に好ましくは「極大吸収波長が、粘着剤に実際に含有されている本発明の近赤外線吸収色素より短波長にあり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素」と、粘着性樹脂とを含有するものであってもよい。以下、「本発明の一般式(1)で表される近赤外線吸収色素」と「第二の近赤外線吸収色素」を総称して、単に「近赤外線吸収色素」と記載することがある。
【0198】
本発明の粘着剤に用いる粘着性樹脂とは、2つの同種又は異種の固体を結合する物質であり、3つの特性を有する必要がある。第1の特性としては、流動して2つの固体を密着させること。第2の特性としては、各々の被着体に対して濡れ性があり被着体表面と強固に結合すること。第3の特性は、粘着剤を介して結合した固体が粘着剤自体の破壊により剥がれないことが必要である。このため、粘着性樹脂(感圧接着剤)のガラス転移温度(Tg)は、流動性が良くなるようにTgが低い必要がある。具体的にはTgが10℃以下の成分(樹脂)を1種類以上含むことが好ましい。粘着性の点では、Tgが10℃以下の成分(樹脂)の、粘着性樹脂全体に対する割合は1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が最も好ましい。
【0199】
中でも粘着性樹脂全体としてTgが10℃以下であることが好ましい。また、被着体の表面との接着性を良好にするためには、被着体表面と親和性のある官能基を分子中に含有する必要がある。また、粘着性樹脂だけで十分でない時は、粘着性樹脂と反応する多官能基を含む硬化剤と反応させて粘着性樹脂自体の強度を高めて剥離を防ぐ必要がある。
【0200】
本発明の粘着性樹脂の酸価は、通常0mgKOH/g以上であり、通常50mgKOH/g以下、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mg/g以下である。水酸基価は、通常0mgKOH/g以上であり、通常20mgKOH/g以下、好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは5mgKOH/g以下である。
【0201】
粘着性樹脂の分子量としては、粘着特性に影響が無い範囲においては高分子量であることが望ましいが、高分子量化により粘着特性等が低下することがあるので、好ましい分子量は重量平均分子量10万〜1000万、より好ましくは100万〜500万である。また、数平均分子量の異なった樹脂を混合することにより耐久性と粘着特性の調整をしてもよい。
【0202】
本発明の粘着性樹脂は、実用可能な接着強度があれば、ゴム系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂(EVA)、ポリビニルエーテル系樹脂、飽和無定形ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂等、何れでもよい。
【0203】
また、目的に応じて、以下のものを添加してもよい。
(1)老化防止剤として、フェノール系誘導体、アミン系誘導体、リン系誘導体、有機チオ酸塩等。
【0204】
(2)タック性向上のための粘着付与樹脂として、ロジン、ダンマル等の天然樹脂、変性ロジン、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキルフェノール−アセチレン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体等。
(3)低温特性等の改善のため、フタル酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバチン酸エステル系可塑剤、リシノール酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤等。
【0205】
粘着性樹脂としては、多くの種類の樹脂が使用可能であるが、多くの樹脂は、樹脂自身の光透過率が低く、透明性が悪かったり、太陽光や熱により変色したり、粘着性樹脂自身の変質により剥がれてしまうことがある。よって、光学特性が良く、耐光性も耐熱性も良好なアクリル樹脂系の粘着性樹脂がよい。また、老化防止剤、可塑剤等は、長期間の使用によりブリードし、徐々に性能が低下していくことがあるので、可能な限り添加剤は使用しない方がよい。
【0206】
本発明の粘着剤は光学フィルター用として特に好適に用いることができるが、その場合には、可視光線の透過性及び耐光性を要求されるため、主として(メタ)アクリル系樹脂を粘着性樹脂として用いることが好ましい。
【0207】
(メタ)アクリル系樹脂としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、ポリマー内に官能基を付与するために、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基含有の単量体を共重合させた(メタ)アクリル系樹脂、或いは、その他共重合可能な単量体及びオリゴマーと共重合させた(メタ)アクリル系樹脂、更に、その(メタ)アクリル系樹脂が有する官能基と反応する架橋剤を添加した(メタ)アクリル系樹脂組成物が使用可能である。
【0208】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0209】
分子内に官能基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0210】
架橋剤としては、アクリル系樹脂と反応可能な官能基を分子内に2個以上有していればよく、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物、尿素樹脂、金属キレート剤が知られている。
【0211】
中でも好ましいのは、(メタ)アクリル系樹脂であり、ブチルアクリレートと2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とした樹脂が特に好ましい。更に、(メタ)アクリル系樹脂を含有した感圧型接着剤であってシート状のものが加工性のし易さからより好適である。また、耐久性を向上させるため、上記架橋剤を添加して使用してもよい。
【0212】
本発明の粘着剤は、上記近赤外線吸収色素と粘着性樹脂とを混合して得られるが、近赤外線吸収色素の含有量が、粘着性樹脂の固形分に対して、1種類の近赤外線吸収色素を、通常0.001質量%〜50質量%含むように混合する。好ましくは0.01質量%〜40質量%、より好ましくは0.05質量%〜30質量%、特に好ましくは0.1質量%〜20質量%含むように混合する。2種類以上の本発明の近赤外線吸収色素や、更に第二の近赤外線吸収色素を含有する場合等、2種類以上の近赤外線吸収色素を含む場合は、それぞれの近赤外線吸収色素の含有量が、上記値の範囲となるように混合する。
【0213】
本発明の粘着剤は、公知の攪拌機や混練機等によって、色素と粘着性樹脂を均一に混合して調製してもよいし、近赤外線吸収色素を溶媒に分散又は溶解した後、粘着性樹脂と均一に混ぜて調製してもよい。
【0214】
近赤外線吸収色素を分散又は溶解する溶媒としては、1,2,3−トリクロロプロパン、テトラクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、プロピオン酸メチル、エナント酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル等のエステル類;シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、スクアラン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素等のアミド類;テトラヒドロフラン(以下「THF」という)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテル類;又はこれらの混合物が挙げられる。
【0215】
色素を溶媒に分散するためには、ペイントシェーカーやサンドグラインドミルやホモミキサー、超音波分散機等、公知の分散装置を用いることができる。
色素と粘着性樹脂との混合は、所定の量比で全量を一度に混合してもよいし、一方に対して、他方を段階的に混合してもよい。通常、粘着性樹脂と色素を一度に混合する。
【0216】
本発明の粘着剤は、シート状、又は液状として使用することが好ましい。近赤外線吸収色素を含む粘着剤を有機溶媒に溶解し、塗工装置により成形し、乾燥工程を経て、シート状の粘着剤層を形成することができる。
【0217】
粘着剤を溶解する有機溶媒としては、上記した「近赤外線吸収色素を分散又は溶解する溶媒」(すなわち、粘着剤中の溶媒)と同様のものが挙げられる。
【0218】
塗工装置は、ロールコーター、リバースコーター、コンマコーター、リップコーター、ダイコーター等が好適に使用される。
乾燥後の膜厚が、1μm〜1000μmとなるように加工することが好ましい。より好ましくは、接着強度の維持、硬度の確保等から10〜100μmである。
通常フィルムや積層体上に膜状に成形する。具体的にはPET、TAC等のフィルム基材や反射防止フィルムや電磁波シールドフィルム等の機能性フィルムの裏面、ガラス、アクリル板、ポリカーボネート板、又は既に機能性材料を積層した物に枚葉塗布してもよい。
【0219】
フィルム基材上への粘着剤層の形成後、剥離処理を施した樹脂フィルム又は紙等をラミネーター等で貼り合せることにより、取り扱いの簡便化を図ることができる。
また、剥離処理したフィルム上に上記粘着剤を塗布し、更に乾燥後、上記剥離フィルムと剥離強度の違う剥離フィルムをラミネーター等で貼り合せることによりフィルム基材を有しない両面接着フィルムとして使用することが出来る。
【0220】
また、同様の方法でフィルム基材に上記粘着剤を塗布乾燥後、剥離処理を施した樹脂フィルム又は紙等をラミネーター等で貼り合せる。その後、更にフィルム基材の裏側に上記粘着剤を塗布乾燥後、剥離処理を施した樹脂フィルム又は紙等をラミネーター等で貼り合せることにより機材フィルム付きの両面接着フィルムとして使用することが出来る。
【0221】
実用可能な接着強度としては、ポリエステルフィルムに25μm厚さの粘着剤層を設け、温度23℃で7日間熟成後に、ステンレス板に貼り合わせた後、温度23℃湿度65%の雰囲気条件下で、180度剥離法による(引っ張り速度300mm/分、単位g/25mm幅)接着強度が、0.1〜10000g/25mmが好ましい。中でも、再剥離可能な粘着剤層においては、1.0g/25mm以上が好ましく、5.0g/25mm以上がより好ましく、10g/25mm以上が更に好ましい。再剥離が必要でない粘着剤層においては、10g/25mm以上が好ましく、50g/25mm以上がより好ましく、100g/25mm以上が更に好ましい。
【0222】
<<近赤外線吸収色素含有粘着剤の耐久性>>
本発明の近赤外線吸収色素含有粘着剤の耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性は、例えば、以下の方法により評価することができる。
【0223】
近赤外線吸収色素含有粘着剤を含有する塗工液を、ベーカー式アプリケータを用いてポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥して、近赤外線吸収色素を含む粘着剤の層を形成する。次いで、この近赤外線吸収色素含有の粘着剤層側に、同じ厚さのポリエチレンテレフタレート製フィルムをローラで圧着し、近赤外線吸収色素を含有する粘着剤の層を挟んだ積層体の試験片を作製する。
【0224】
乾燥後の近赤外線吸収色素を含む粘着剤層の厚さは、適宜選択することができるが、通常、15μm〜30μmとすることが好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート製フィルムの厚さも、適宜選択することができるが、通常、60μm〜120μm、好ましくは70μm〜100μmのものが好ましい。さらに、乾燥時の条件も粘着剤層に含まれる粘着性樹脂等に応じて適宜選択することができ、通常、80℃〜120℃で、1分〜10分程度乾燥させる。
【0225】
[耐熱性]
上記の方法で作製した試験片を、高温(例えば、温度70℃〜100℃)の恒温槽に入れ、長時間(例えば100時間〜500時間)放置し、放置前(試験前)の吸収強度に対する放置後(試験後)の吸収強度の変化を求めることにより、耐熱性の評価を行なうことができる。
【0226】
例えば、本発明においては、上記の方法で作製した試験片を温度80℃の恒温槽に入れ、120時間放置する耐熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0227】
また、上記のなかでも、温度80℃の恒温槽に入れ、240時間放置する耐熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0228】
さらに、上記のなかでもより好ましくは、温度80℃の恒温槽に入れ、480時間放置する耐熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0229】
近赤外線吸収色素は、いわゆる近赤外線領域以外にも極大吸収を示す場合もあるが、本発明の耐熱性評価においては、近赤外線吸収領域である800nm〜1050nmの範囲内の極大吸収波長における吸収強度の変化を測定する。後述する耐湿熱性、耐光性等の耐久性評価においても同様である。
【0230】
[耐湿熱性]
上記の方法で作製した試験片を、比較的高温で(例えば、温度50℃〜70℃)、高湿度(例えば、相対湿度80%〜95%)の恒温恒湿槽に入れ、長時間(例えば100時間〜500時間)放置し、放置前(試験前)の吸収強度に対する放置後(試験後)の吸収強度の変化を求めることにより、耐湿熱性の評価を行なうことができる。
【0231】
例えば、本発明においては、上記の方法で作製した試験片を、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、120時間放置する耐湿熱性試験において、耐湿熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0232】
また、上記のなかでも、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、240時間放置する耐湿熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0233】
さらに、上記のなかでもより好ましくは、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、480時間放置する耐湿熱性試験において、耐熱性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、該試験前の該吸収強度に対して85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0234】
[耐光性]
上記の方法で作製した試験片に対して、波長300〜400nmでの放射照度64.5W/m2の光を160時間照射することにより、耐光性の評価を行なうことができる。耐光性試験に用いる光は、波長300〜400nmでの放射照度64.5W/m2の光であるが、好ましくは耐光性の性能物性の指標となる、波長340nmで0.55W/m2、波長420nmで1.38W/m2、波長300〜400nmで64.5W/m2、波長300〜800nmで605.4W/m2の照射強度のキセノン光に対して、UV光をカットした光を用いるのがよい。
【0235】
例えば、本発明においては、上記の方法で作製した試験片に対して、波長300〜400nmでの放射照度64.5W/m2の光を160時間照射する耐光性試験において、耐光性試験後の近赤外線吸収色素の極大吸収波長における吸収強度が、試験前の該吸収強度に対して、通常50%以上であり、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
【0236】
また、本発明の近赤外線吸収色素の耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性についても、上記方法に準じて評価することができる
【0237】
<近赤外線吸収フィルター>
上記の近赤外線吸収色素含有粘着剤の層を有する近赤外線吸収フィルターは、耐久性に優れ、750nm〜1200nmの全波長域にわたって吸収を有する点で優れている。近赤外線吸収フィルターは、基材に本発明の近赤外線吸収色素を含む粘着剤により粘剤層を形成し、目的に応じて、多様な層を接着して製造することができる。本発明によれば、近赤外線吸収層を省くことが可能になり、光学フィルターの製造工程を簡便化することができる。
【0238】
<<近赤外線吸収フィルターの製造方法>>
本発明の近赤外線吸収フィルターの製造方法としては、透明基板に近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液をコーティングする方法、近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を溶融混錬してフィルム状に成形する方法等が挙られる。なかでも、近赤外線吸収色素に対する負荷を低減するため、塗工液をコーティングする方法が好ましい。
【0239】
以下に、透明基板に近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液を塗布して近赤外線吸収フィルターを製造する方法について詳細に説明する。
【0240】
(透明基板)
本発明の近赤外線吸収フィルターを構成する透明基板としては、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない基材であればよく、特に制限はない。その具体的な例としては、ガラス、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましい。
【0241】
これらの樹脂は、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、ハロゲン系、リン酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0242】
透明基板は、これらの樹脂を、射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶媒に溶解させてキャスティングする方法等の成形方法を用い、フィルム状に成形したものが用いられる。フィルム状に成形された樹脂は延伸されていても未延伸でもよい。また、異なる材料からなるフィルムが積層されていてもよい。
【0243】
透明基板の厚みは、目的に応じて通常10μm〜5mmの範囲から選択される。
更に、透明基板は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
【0244】
(粘着剤の塗工液)
近赤外線吸収色素を含む粘着剤の塗工液は、近赤外線吸収色素を粘着性樹脂とともに溶媒中に溶解又は分散させることにより、調製することができる。また、分散させる場合、近赤外線吸収色素を必要に応じて分散剤を用いて、粒径を通常0.1〜3μmに微粒子化し、粘着性樹脂とともに、溶媒に分散させて調製することもできる。
【0245】
このとき溶媒に溶解又は分散される近赤外線吸収色素、分散剤、及び粘着性樹脂等の全固形分の濃度は、通常5〜50質量%である。また、全固形分に対する近赤外線吸収色素の濃度は、近赤外線吸収色素の総量として通常0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜30質量%である。
尚、粘着性樹脂に対する近赤外線吸収色素の濃度としては、当然のことながら、近赤外線吸収色素含有粘着剤の厚さにも依存するため、溶融混練してフィルム状に成形するような場合には、上述の濃度よりは低くなる。
【0246】
分散剤としては、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル、マレイン化ロジン、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。その使用量は、近赤外線吸収色素に対して、通常0〜100質量%、好ましくは0〜70質量%である。
【0247】
溶媒としては、上記した「近赤外線吸収色素を分散又は溶解する溶媒」(すなわち、粘着剤中の溶媒)と同様のものが挙げられる。
【0248】
近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の透明基材へのコーティングは、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の塗工方法で行われる。
近赤外線吸収色素を含む粘着剤の乾燥後の膜厚が、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、通常5000μm以下、好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下となるように塗布される。
【0249】
特に、電子ディスプレイ用の粘着剤として用いる場合には、透明度が高い必要があり、また、平坦性や加工効率の点から、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下となるように塗布される。
【0250】
(紫外線カット層)
本発明の赤外線吸収色素を含む粘着剤を塗布したフィルターは、更に紫外線カット層を設けることにより、近赤外線吸収色素との相乗効果によって、近赤外線吸収フィルターの耐光性を著しく向上させることができる。本発明の粘着剤によって紫外線カット層を基材と接着してもよいし、粘着剤と他の層とを接着した後、更に他の粘着剤によって紫外線カット層を接着してもよい。
【0251】
紫外線カット層としては、400nm以下の波長の紫外線を効率よくカットできるものであり、350nmの波長の光を70%以上吸収できることが好ましい。紫外線カット層の種類については、特に制限されないが、好ましくは紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルム(紫外線カットフィルム)が好ましい。
紫外線カット層に用いられる紫外線吸収剤としては、300〜400nmの間に極大吸収を有し、その領域の光を効率よくカットする化合物であれば、有機系、無機系のいずれも特に限定なく用いることができる。例えば有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤等が挙げられる。無機系紫外線級剤としては、酸化チタン系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、微粒子酸化鉄系紫外線吸収剤等が挙げられる。しかし、無機系紫外線吸収剤の場合は、紫外線カット層中においては微粒子状態で存在しているため、近赤外線吸収フィルターの効率を損なう恐れがあることから、有機系紫外線吸収剤が好ましい。
【0252】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、チバガイギー社製のチヌビンP、チヌビン120、213、234、320、326、327、328、329、384、400、571、住友化学社製のスミソーブ250、300、577、共同薬品社製のバイオソーブ582、550、591、城北化学社製のJFー86、79、78、80、旭電化社製のアデカスタブLA−32,LA−36,LA−34、シプロ化成社製のシーソルブ100、101、101S、102、103、501、201、202、612NH、大塚化学社製のRUVA93、30M、30S、BASF社製のユービナール3039等が挙げられる。
【0253】
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよいが、数種類組み合わせてもよい。また、紫外線を吸収して可視領域に波長変換するチバガイギー社製のユービテックスOB,OB−P等の蛍光増白剤も利用できる。
また、紫外線カットフィルムは、市販のUVカットフィルターを使用することもできる。例えば、富士フィルム社製のSC−38、SC−39、SC−42、三菱レーヨン社製のアクリプレン等が挙げられる。上記のUVカットフィルター、SC−39、アクリプレンは、ともに350nmの波長を99%以上吸収する紫外線カットフィルムである。
【0254】
このように紫外線吸収層を設けた本発明の近赤外線吸収フィルターは、Xeランプを160時間照射することによる耐光性試験後の色素残存率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上となり、可視光領域に新たな吸収ピークが出てくることもない。ここで、色素残存率は、800〜1050nm領域における試験前後の吸収強度の減少度合から求める。
【0255】
上記近赤外線吸収フィルターは透明のガラスや他の透明樹脂板等と貼り合わせた積層体として用いてもよい。
また、本発明により得られる近赤外線吸収フィルターは、本発明のディスプレイパネル用フィルター以外にも、熱線遮断フィルム、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器等幅広い用途に使用することができる。
【0256】
更に、本発明の近赤外線吸収色素を含有する粘着剤を粘着剤層として含む近赤外線吸収フィルターは、必要に応じて、色調補正層(可視光吸収層)、電磁波カット層、表面への蛍光灯等の外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止層(ノングレア層)を設け、電子ディスプレイ用、より好ましくはプラズマディスプレイパネル用フィルターとして使用することができる。
【0257】
電子ディスプレイ用フィルターとして用いる場合には、透明度が高い必要があり、また、平坦性や加工効率の点から、近赤外線吸収色素を含む粘着剤の乾燥後の膜厚が、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であって、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下となるように塗布される。
【0258】
更に、850〜1100nmの平均光線透過率が20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下となるように本発明の粘着剤の膜厚と、近赤外線吸収色素の濃度等を調整することがよい。
本発明の電子ディスプレイ用フィルターは、上記近赤外線吸収フィルターを用いる以外は、通常、用いられる構成や製造方法等を任意にとることができ、特に限定されるものではない。
【0259】
以下にプラズマディスプレイパネル用フィルターとして用いる場合を代表例として説明する。
(1)色調調整層(可視光吸収層)
通常のプラズマディスプレイの可視光の発光は、450nmをピークとして、400〜500nmに青色の発光が存在し、525nmをピークとして500〜550nmに緑の発光が存在し、また、赤色の発光は595nm、610nm、625nmにシャープな発光として存在している。
このうち、赤色の発光のうち595nmの発光は、プラズマディスプレイの赤色表示時の赤をオレンジ色がからせる発光であるので、この領域に吸収を持つ色素を前面フィルターに含有させてカットさせることが通常である。
【0260】
これらのことから、プラズマディスプレイ用途では、450nm、525nm、625nmの透過率を40%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上とすることがディスプレイの画面の輝度確保の観点から好ましい。
本発明の近赤外線吸収フィルターを含め、一般的な近赤外線吸収フィルターはやや緑色を帯びることが多い。プラズマディスプレイ等のディスプレイ用途に使用する場合は、その色は無彩色であることが好ましいため、ディスプレイの輝度を大きく損なわない程度に、緑色の補色となるような500〜600nmに吸収を持つ色材を含有させ、無彩色化することが好ましい。
【0261】
また、電球やハロゲン球電灯等はその発光スペクトル中の赤色成分が多い。蛍光灯等の照明の下では無彩色に見えるが、電球やハロゲン球電灯等の照明の下では赤色を帯びてしまうことも多々ある。このような場合は、600〜700nm近傍に吸収を持つような色材をディスプレイの輝度を大きく損なわない程度に含有させ、電球やハロゲン球電灯等の照明の下でも無彩色となるようにすることが好ましい。
【0262】
更に、プラズマディスプレイ用フィルターとして使用する場合、プラズマディスプレイから発せられる590〜600nmのネオンオレンジ光を吸収できるような色材を含有させ色補正を行った方が好ましい。
これらの色素を含有する層は、近赤外線吸収層とは別の層として作成し、近赤外線吸収層と貼り合わせた積層体として用いてもよい。また、近赤外線吸収層と混合した際の発色性、耐久性等諸特性に問題がなければ、近赤外線吸収層と同一層となるようにしてもよい。なかでも、工程簡略化、コスト削減等の観点から後者の方が好ましい。
【0263】
ここで用いる色材としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料、色素等一般的なものが挙げられる。無機系顔料としては、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物等が挙げられる。有機系顔料としては、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が挙げられる。また有機系染料、色素としては、アジン系、アゾ系、ニッケルアゾ錯体系、アゾメチン系、アントラキノン系、インジゴイド系、インドアニリン系、オキサジン系、オキソノール系、キサンテン系、キノフタロン系、シアニン系、スクアリリウム系、スチルベン系、テトラアザポルフィリン系、トリフェニルメタン系、ナフトキノン系、ピラロゾン系、ピロメテン系、ジピロメテン系、ベンジリデン系、ポリメチン系、メチン系、クロム錯塩系等が挙げられる。
【0264】
緑色の補色となるような500〜600nmに吸収を持つ色材の具体例としては、保土谷化学工業社製のAizen S.O.T. Violet-1、Aizen S.O.T. Blue-3、Aizen S.O.T. Pink-1、Aizen S.O.T. Red-1、Aizen S.O.T. Red-2、Aizen S.O.T. Red-3、Aizen Spilon Red BEH Special、Aizen Spilon Red GEH Special、日本化薬社製のKayaset Blue A-S、Kayaset Red 130、Kayaset Red A-G、Kayaset Red 2G、Kayaset Red BR、Kayaset Red SF-4G、Kayaset Red SF-B、Kayaset Violet A-R、三菱化学社製のダイヤレジンBlue-J、ダイヤレジンBlue-G、ダイヤレジンViolet-D、ダイヤレジンRed H5B、ダイヤレジンRed S、ダイヤレジンRed A、ダイヤレジン Red K、ダイヤレジン Red Z.PTR63、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のViolet-RB、Red-G、Pink-5BGL、Red-BL、Red-2B、Red-3GL、Red-GR、Red-GA等が挙げられる。その中でも近赤外線吸収色素と同一層とする場合は、近赤外線吸収層の安定性の観点からニッケル錯塩又はクロム錯塩系が好ましい。
【0265】
また、600〜700nm近傍に吸収を持つような色材の具体例としては、保土谷化学工業社製のAizen S.O.T. Blue-1、Aizen S.O.T. Blue-2、Aizen S.O.T. Blue-3、Aizen S.O.T. Blue-4、Aizen Spilon Blue 2BNH、Aizen Spilon Blue GNH、日本化薬社製のKayaset Blue N、Kayaset Blue FR、KAYASORB IR-750、三菱化学社製のダイヤレジンBlue-H3G、ダイヤレジンBlue-4G、ダイヤレジンBlue-LR、PTB31、PBN、PGC、KBN、KBFR、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のBlue-GN、Blue-GL、Blue-BL、Blue-R、C.I.Solvent Blu3 63等が挙げられる。
【0266】
560〜600nmに吸収を持つ色材の具体例としては、特開2000−258624、特開2002−040233、特開2002−363434に記載の有機染料、特表2004−505157や特開2004−233979に記載のキナクリドン等の有機系顔料等が挙げられる。
【0267】
本発明の粘着剤に更に可視光吸収色素を含ませるか、本発明の粘着剤とは別に、可視光吸収色素を含む粘着剤を用いることによって、更に可視光吸収層を省略することができ、電子ディスプレイ用フィルターの製造工程を更に簡便化することができる。
【0268】
粘着剤へ混合する場合の可視光吸収色素としては、顔料系の、コバルト化合物、鉄化合物、クロム化合物、アゾ系、インドリノン系、キナクリドン系、バット系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系等が好ましい。また、染料、色素系では、アントラキノン系、インドアニリン系、テトラアザポルフィリン系等がより好ましい。
【0269】
このとき可視光吸収色素、及び粘着剤等の全固形分の濃度は、通常5〜50質量%である。全固形分に対する可視光吸収色素の濃度は、総量として通常0.001〜50質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。ただし、粘着剤に対する可視光吸収色素の濃度としては、当然のことながら、可視光吸収色素含有粘着剤の厚さにも依存する。
【0270】
可視光吸収色素を含む粘着剤の塗工液は、可視光吸収色素を粘着性樹脂とともに溶媒中に溶解又は分散させることにより、調製することができる。また、分散させる場合、必要に応じて分散剤を用いて、粒径を通常0.1〜3μmに微粒子化し、粘着性樹脂とともに、溶媒に分散させて調製することもできる。近赤外線吸収色素とともに可視光吸収色素を含む場合は、添加順序は特に決まっていないが、より溶解時間、分散時間の要する色素から添加することが好ましい。
【0271】
可視光吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の透明基材へのコーティングは、近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の場合と同様に、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の塗工方法で行われる。
膜厚も近赤外線吸収色素及び粘着性樹脂を含む塗工液の場合と同様に、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下となるように塗布される。
【0272】
(2)電磁波カット層
プラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる電磁波カット層の作製は、金属酸化物等の蒸着又はスパッタリング方法等が利用できる。通常は酸化インジウムスズ(ITO)を用いることが一般的である。誘電体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛等の透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀又は銀−パラジウム合金が一般的である。通常、誘電体層から順次3層、5層、7層又は11層程度積層する。基材としては、本発明の近赤外線吸収フィルターをそのまま利用してもよいし、樹脂フィルム又はガラス上に蒸着又はスパッタリングによって電磁波カット層を設けた後に、本発明の近赤外線吸収フィルターと貼り合わせてもよい。
【0273】
(3)反射防止層
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる反射防止層としては、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層又は多層に積層させる方法や、アクリル樹脂、フッ素樹脂等の屈折率の異なる樹脂を単層又は多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0274】
(4)ノングレア層
上述の各層の他にぎらつき防止層(ノングレア層)を設けてもよい。ノングレア層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法等を用いることができる。インキの硬化は、熱硬化又は光硬化を用いることができる。また、ノングレア処理したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。更に必要であれば、ハードコート層を設けることもできる。
【0275】
<<本発明の粘着剤を有する近赤外線吸収フィルターの物性>>
本発明の近赤外線吸収色素含有の粘着剤を含有する近赤外線吸収フィルターは、耐熱性、耐湿熱性、耐光性等の耐久性に優れている。
【0276】
[耐光性]
電子ディスプレイ用フィルターとして必要な耐久性の一つが、耐光性である。電子ディスプレイからの発光光、照射光、及び電子ディスプレイに入射する環境光による劣化がないことが、実用上非常に重要である。
【0277】
波長340nmで0.55W/m2、波長420nmで1.38W/m2、波長300〜400nmで64.5W/m2、波長300〜800nmで605.4W/m2の照射強度のキセノン光を、UV光をカットした状態で160時間照射し、照射前の最大吸収波長において照射前後の吸収強度を対比した「照射後の吸収強度÷照射前の吸収強度×100」で算出される割合を電子ディスプレイ用フィルターの「耐光性」と定義する。電子ディスプレイ用フィルターの耐光性は、50%以上であることが、実用上必要である。好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上である。
【0278】
吸収強度を求める波長としては、特に限定するものではないが、電子ディスプレイ用フィルターの近赤外線吸収として性能を最大限に発揮できる750nm〜1200nmが挙げられる。より好ましくは、電子ディスプレイ用フィルターとしては色の変化がないことが実用上求められることから、可視光線域である350〜800nmでの変化が小さいことも挙げられる。可視光吸収色素も本発明の粘着剤に含有させて、可視光線域の制御機能を持たせた場合は、特に、その機能を発揮する極大吸収波長での変化が小さく、残存率としては大きい方が、電子ディスプレイ用フィルターとして有効である。
【0279】
[耐熱性]
耐光性に加え、耐熱性を有するものは、保管中や運搬中の劣化低減に有効である。更に、電子ディスプレイのパネルへの直貼り用途にも有効である。例えば、電子ディスプレイの一つとして、注目されているプラズマディスプレイパネル(PDP)では、近年、前面ガラスフィルターの機能を持たせたフィルターを、直接、パネルへ貼りつけ、反射像映り込み排除による画像向上、部材数低減による工程簡略化、ガラス排除による軽量化を図った直貼り方式が提案されている。この方式では、電子ディスプレイ用フィルター自体に、パネルからの熱が直接伝わることから、従来の前面ガラスフィルターと電子ディスプレイパネルの間に空隙がある方式よりも耐熱性が求められている。
【0280】
温度80℃の環境下に250時間暴露し、暴露前の最大吸収波長において暴露前後の吸収強度を対比した「暴露後の吸収強度÷暴露前の吸収強度×100」で算出される割合が、50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
更に好ましくは、500時間の暴露において、該割合が50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
【0281】
吸収強度を求める波長は、耐光性と同様である。
特に好ましい耐熱性は、温度90℃の環境下に250時間暴露し、暴露前の最大吸収波長において暴露前後の吸収強度を対比した「暴露後の吸収強度÷暴露前の吸収強度×100」で算出される割合が50%以上、より好ましくは80%以上である。
また耐湿熱性を有するものには、実用上の耐性、信頼性向上はもちろんのこと、船便での運搬や保管での劣化低減にも非常に有効である。重量がある輸出製品は船便での運搬がなされるが、船底近くでの保管場所では、非常に湿度の高い環境となる。
【0282】
[耐湿熱性]
耐湿熱性の性能物性の指標は以下のとおりである。
温度60℃相対湿度90%の環境下に250時間暴露し、暴露前の最大吸収波長において暴露前後の吸収強度を対比した「暴露後の吸収強度÷暴露前の吸収強度×100」で算出される割合が、50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
更に好ましくは、500時間の暴露において、該割合が50%以上であることが、実用上必要である。より好ましくは80%以上である。
【0283】
吸収強度を求める波長は、耐光性と同様である。
またこれら耐久性及び信頼性以外に、電子ディスプレイ用フィルターとして、特に750nm〜1200nmの波長領域において、コードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し誤動作を起こす原因となることから、750nm〜1200nmの近赤外線を遮蔽する機能が必要である。
【0284】
そのための遮蔽性能としては、シート形状の近赤外線吸収色素含有粘着剤は、極大吸収波長における分光透過率が、40%以下が好ましい。より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。
750nm〜1200nmの波長領域を遮蔽するためには、前記した通り、複数の近赤外線吸収色素を含有することが好ましい。1つの色素で分光透過率40%以下を達成できれば、複数の色素を含有することで、より好ましい分光透過率10%以下を達成することは可能である。
【0285】
以上のことから、電子ディスプレイ用フィルターとして要する耐久性には、耐光性が必要である。より好ましくは、耐熱性、耐湿熱性も必要であり、これにより、実用上有効である以外に、電子ディスプレイ用フィルターの活用方式の拡大、及び、実用範囲の拡大につながる。
【0286】
また、本発明の近赤外線吸収色素含有混合物、近赤外線吸収色素含有粘着剤及び近赤外線吸収フィルターは、波長850nmにおける透過率が15%以下、波長950nmにおける透過率が10%以下である。このような特性を有することにより、プラズマディスプレイ用前面フィルター用に使用した場合でも、周辺にある他の電子機器等の誤動作を防止することができる。
【実施例】
【0287】
以下に、実施例により本発明の実施態様を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
【0288】
合成例1
[合成例1−1]
【化54】
【0289】
公知の方法で得られた上記化合物1(10g、40.0mmol)を、室温で塩化メチレン(80mL)に溶解し、0℃まで冷却した。次いで、塩化アルミニウム(5.87g)を加え、市販の上記化合物2(5.4mL、44mmol)を滴下した。この反応溶液を0℃で、3時間攪拌した後、1mol/Lの塩酸水溶液に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物3を11.3g得た(収率76%)。
質量分析結果(EI−MS法):374
【0290】
[合成例1−2]
【化55】
【0291】
(条件1)
化合物3(1.5g、4.07mmol)を酢酸(10mL)に溶解し、臭素(0.65g、4.07mmol)の酢酸溶液(10mL)を室温で滴下した。滴下後、1時間室温で攪拌した後、氷水に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出し、有機層を炭酸水素ナトリウムで中和した。有機層を減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製したが、目的化合物4は得られなかった。
【0292】
(条件2)
化合物3(2.55g、6.82mmol)を、室温でTHF(50mL)に溶解した。0℃まで冷却し、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド(2.69g、7.16mmol)を加え、0℃で1時間攪拌した後、反応溶液を氷水に注いだ。その後、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、減圧濃縮したところ、目的とする化合物4が得られた。得られた化合物4は、そのまま次の反応(合成例1−3)に用いた。
質量分析結果(EI−MS法):452
【0293】
[合成例1−3]
【化56】
【0294】
合成例1−2(条件2)で得られた化合物4(6.82mmol)を、室温でアセトン(35mL)に溶解し、化合物5(1.09g、6.82mmol)を加え、30分室温で撹拌した。濾過して、生成した無機塩を除き、減圧濃縮した。得られたオイル状粗生成物を塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、目的とする化合物6を得た。得られた化合物6は、そのまま次の反応(合成例1−4)に用いた。
質量分析結果(EI−MS法):494
【0295】
[合成例1−4]
【化57】
【0296】
合成例1−3で得られた化合物6(6.82mmol)を酢酸(10mL)と、臭化水素酢酸溶液(以下、HBr−AcOHと表現する。)(10mL)に混合し、室温で一晩攪拌した。反応溶液を氷水に注いだ後、酢酸エチルで抽出した。有機層を炭酸水素ナトリウムで中和した後、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的の化合物7(前駆体1)を2.1g得た(収率69%、合成例1−2〜1−3の3工程)。
質量分析結果(EI−MS法):448
尚、本明細書においては、上記化合物7のように、金属原子と反応させて近赤外線吸収色素を得る化合物を単に「前駆体」と表現する場合がある。
【0297】
実施例1
【化58】
【0298】
合成例1で得られた化合物7(2.1g、4.69mmol)をTHF(25mL)に溶解し、室温下、1mol/Lのナトリウムメトキシド(NaOMe)のメタノール溶液(9.7mL、9.85mmol)を加え、30分攪拌した。この反応溶液に、塩化ニッケル6水和物(0.56g、2.35mmol)のメタノール溶液(1mL)を加え、更に30分攪拌した。得られた中間錯体の反応溶液を、トルエン(50mL)と酢酸(7mL)の混合液に注ぎ、空気をバブリングしながら、40℃で6時間攪拌した。反応溶液を、減圧濃縮した後、塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した後、メタノール懸洗して、前記した「例示化合物23−1」である目的の近赤外線吸収色素1を1.7g(収率82%)得た。
質量分析結果(EI−MS法):898
λmax(クロロホルム中) :935nm
【0299】
実施例2
【化59】
【0300】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体2を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物21−1」である近赤外線吸収色素2を87%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):898
λmax(クロロホルム中) :951nm
【0301】
実施例3
【化60】
【0302】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体3を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物21−2」である近赤外線吸収色素3を85%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):786
λmax(クロロホルム中) :936nm
【0303】
実施例4
【化61】
【0304】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体4を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物24−1」である近赤外線吸収色素4を79%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):838
λmax(クロロホルム中) :934nm
【0305】
実施例5
【化62】
【0306】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体5を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物24−2」である近赤外線吸収色素5を79%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :934nm
【0307】
実施例6
【化63】
【0308】
合成例1−1〜1−4と同様にして上記前駆体6を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物24−3」である近赤外線吸収色素6を74%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):950
λmax(クロロホルム中) :950nm
【0309】
合成例2
[合成例2−1]
【化64】
【0310】
市販の上記化合物8(15g、91mmol)と市販のヨウ化イソアミル(20g、100mmol)とをN,N−ジメチルホルムアミド(80mL)に溶解し、炭酸カリウム(20g、140mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。得られた反応溶液を酢酸エチルで抽出し、水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、目的化合物10を18g得た(収率84%)。
質量分析結果(EI−MS法):234
【0311】
[合成例2−2]
【化65】
【0312】
合成例2−1で得られた化合物10(8.8g、38mmol)を四塩化炭素(100mL)に溶解し、N−ブロモスクシンイミド(6.7g、38mmol)と過酸化ベンゾイル(0.36g、1.1mmol)を加え、窒素下、80℃で12時間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却し、水で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、目的化合物11を11g(収率93%)得た。
質量分析結果(EI−MS法):312
【0313】
[合成例2−3]
【化66】
【0314】
マグネシウム(2.4g、100mmol)をTHF(15mL)に分散させ、少量のヨウ素片を加えた。これを室温で10分攪拌した後、合成例2−2で得られた化合物11(10g、32mmol)のTHF溶液(60mL)を滴下した。滴下後、反応溶液を室温で1時間攪拌した後、0℃まで冷却した。この反応溶液に市販の化合物12(4.6g、36mmol)のTHF溶液(60mL)を滴下した。滴下後、室温で1時間攪拌し、1mol/Lの塩酸水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物13を7.5g得た(収率65%)。
質量分析結果(EI−MS法):360
【0315】
[合成例2−4]
【化67】
【0316】
塩化オギサリル(2.0g、16mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液に、ジメチルスルホキシド(1.1g、14mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液を、−78℃で滴下した。この反応溶液に、合成例2−3で得られた化合物13(4.7g、13mmol)を塩化メチレン(20mL)に溶解した溶液を加え、15分攪拌した後、トリエチルアミン(9.4mL、66mmol)を加えた。この反応溶液を室温まで昇温し、塩化メチレンで抽出し、飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的化合物14を3.2g得た(収率68%)。
質量分析結果(EI−MS法):359
【0317】
[合成例2−5]
【化68】
【0318】
合成例1−2(条件2)、合成例1−3及び合成例1−4の方法に従って、合成例2−4で得られた化合物14から目的の化合物15(前駆体7)を2.2g得た(収率85%)。
質量分析結果(EI−MS法):432
【0319】
実施例7
【化69】
【0320】
実施例1の方法に従って、合成例2−5で得られた前駆体7から、前記した「例示化合物5−16」である近赤外線吸収色素7を73%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :970nm
【0321】
実施例8
【化70】
【0322】
合成例2−1〜2−5と同様にして前駆体8を得た。次いで、実施例1の方法に従って、前記した「例示化合物5−15」である近赤外線吸収色素8を74%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :975nm
【0323】
合成例2−1〜2−5と同様にして前駆体8を得た。次いで、実施例1の方法に従って、近赤外線吸収色素8を74%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):866
λmax(クロロホルム中) :975nm
【0324】
比較例1
公知の方法で得られた4,5−ビス(sec−プロピルチオ)−1,3−ジチオール−2−オン1.0g(3.75mmol)に1mol/Lナトリウムメトキシドーメタノール溶液9.4mL(2.5当量)を加え、25℃で30分撹拌した。これにメタノール1mLに溶かした0.5当量の塩化ニッケル六水和物を加え、更に25℃で30分撹拌した。この混合液にトルエン50mL及び酸型イオン交換樹脂(DIAION―PK212;H型)2.0gを加え、空気をバブリングしながら、3時間撹拌し反応を行った。得られた緑色反応溶液をろ過し、イオン交換樹脂を濾別後、濾液を水洗してから濃縮した。これにメタノール25mLを加え、懸洗後、固体を濾取し、下記式で表される近赤外線吸収色素を81%の収率で得た。
質量分析結果(EI−MS法):536
λmax(クロロホルム中) :1007nm
【0325】
【化71】
【0326】
評価例
上記実施例1〜8、及び比較例1で得られた近赤外線吸収色素の分光透過スペクトル測定の結果を、図1〜図9に示す。
また、これらの近赤外線吸収色素を用いて試験片を製造し、以下の熟成試験、耐熱湿性試験、耐熱性試験を行なった。結果を表1及び表2に示す。吸収強度は、分光透過スペクトル測定(株式会社島津製作所製分光光度計 UV−3600 による測定)により透過率を得て、該透過率から各試験片の極大吸収波長での吸収強度を算出した。
【0327】
(粘着剤の製造)
近赤外線吸収色素をトルエン8.0gに添加して攪拌し、更にアクリル系粘着主剤(綜研化学株式会社製、SKダイン「登録商標」1811L)16.0gを添加し、よく攪拌して溶解させた。その中に、イソシアネート系硬化剤(綜研化学株式会社製、L−45)を規定量添加し、よく攪拌して、近赤外線吸収色素含有粘着剤を製造した。攪拌時に巻き込んだ気泡は、超音波をかけるか、又は静止して気泡を上方へ集め、取り除いた。なお、SKダイン1811Lは、酸価が0mgKOH/g、水酸基価が0.2mgKOH/gである。
【0328】
(試験片の製造)
上記近赤外線吸収色素含有粘着剤を、ベーカー式アプリケータを用い、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム上に、厚さ200μmで塗工し、100℃で2分乾燥し、厚20μmの近赤外線吸収色素含有粘着剤層を形成した。次いで、近赤外線吸収色素含有粘着剤層側に厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムをローラで圧着し、近赤外線吸収色素含有粘着剤層を挟んだ積層体(近赤外線吸収フィルター)の試験片を得た。
【0329】
(熟成試験)
試験片を、温度24℃、相対湿度45%の条件下で3日間放置した。試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度の変化を求め、以下の基準で評価を行なった。
◎:実質的変化なし
△:10%未満の変化
×:10%以上の変化
【0330】
(耐湿熱性試験)
試験片を、温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に入れ、120時間、240時間及び480時間放置した。試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度の変化を求め、以下の基準で評価を行なった。
◎:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が95%以上
○:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が90%以上95%未満
△:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%以上90%未満
×:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%未満
【0331】
(耐熱性試験)
試験片を、温度80℃の恒温槽に入れ、120時間、240時間及び480時間放置した。試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度の変化を求め、以下の基準で評価を行なった。
◎:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が95%以上
○:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が90%以上95%未満
△:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%以上90%未満
×:試験前の吸収強度に対する試験後の吸収強度が85%未満
【0332】
【表1】
【0333】
【表2】
【0334】
近赤外線吸収色素1の耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図10に、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図11に示す。また、比較例1で製造した近赤外線吸収色素の耐湿熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図12に、耐熱性試験前後の分光透過スペクトル測定結果を図13に示す。
【産業上の利用可能性】
【0335】
本発明の近赤外線吸収色素やそれを含有する粘着剤を用いた近赤外線吸収フィルター等は、近赤外線吸収波長域が好適で、耐久性にも優れているため、プラズマディスプレイ等のディスプレイ用の前面フィルターをはじめ、近赤外線遮断フィルム、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器等、近赤外線を遮蔽したい分野に広く利用されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【化1】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、X1及びX2が、それぞれ独立して、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を有する複素環基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいチエニル基であることを特徴とする請求項3に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項5】
前記一般式(1)において、置換基Rf及び置換基Rgが、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基、又は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素が、下記一般式(2a)又は(2b)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素。
【化2】
[一般式(2a)及び(2b)中、
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
Rbは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す(ただし、Rbが分岐アルコキシ基である場合は、Rbは、ORaと同じ基である)。
M1は金属原子を示す。]
【請求項7】
極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項9】
更に、極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項8に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項10】
極大吸収波長が、粘着剤に含有されている請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素より短波長であり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項9に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項11】
前記第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項10に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化3】
[一般式(3)中、
X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
M2は金属原子を示す。
(A)Xが置換基を有する窒素原子の場合;
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される化合物であり、
【化4】
(一般式(4a)中、
Rは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の置換基を示し、Rの末端が一般式(3)のベンゼン環に結合していてもよい。
R’は、任意の1価の置換基を示し、R’同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
R’同士が結合して縮合環を形成していないときは、n’は0〜4の整数であり、R’同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)
RX及びRYは、それぞれ独立して1価の置換基を示し、連結基を介して結合していてもよく、RX及びRYが結合して縮合環を形成していてもよい。)
(B)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合;
RYは1価の置換基を示す。
RXは下記一般式(4b)で表される化合物である。
【化5】
(一般式(4b)中、
Xhは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基を示す。
Rhは、任意の1価の置換基を示し、Rh同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
Rh同士が結合して縮合環を形成していないときは、pは0〜4の整数であり、Rh同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)]
【請求項12】
前記一般式(3)で表される第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(5)で表される第二の近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項11に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化6】
[一般式(5)において、
R4は、水素原子;炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニルチオ基を示す。
R6は、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
R5は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基(ただし、R5が分岐アルコキシ基である場合は、R5は、OR6と同じ基である)。
M4は金属原子を表す。]
【請求項13】
第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(6)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化7】
[一般式(6)中、
R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。
R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
M5は金属原子を示す。]
【請求項14】
更に、(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする請求項8ないし請求項13の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項15】
請求項8ないし請求項14の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤の層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
【請求項16】
請求項15に記載の近赤外線吸収フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ用前面フィルター。
【請求項17】
請求項16に記載のプラズマディスプレイ用前面フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ。
【請求項18】
下記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と、極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲内にある第二の近赤外線吸収色素を含有してなるものであることを特徴とする近赤外線吸収フィルター用色素混合物。
【化8】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする近赤外線吸収色素。
【化1】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、X1及びX2が、それぞれ独立して、−ORa(Raは、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。)であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を有する複素環基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項4】
前記一般式(1)において、R1及びR2が、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいチエニル基であることを特徴とする請求項3に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項5】
前記一般式(1)において、置換基Rf及び置換基Rgが、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、アリール基、アルキル基の炭素数1〜10のアラルキル基、又は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルコキシ基であることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素が、下記一般式(2a)又は(2b)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素。
【化2】
[一般式(2a)及び(2b)中、
R3は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
Raは炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
Rbは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基を示す(ただし、Rbが分岐アルコキシ基である場合は、Rbは、ORaと同じ基である)。
M1は金属原子を示す。]
【請求項7】
極大吸収波長が850nm〜1200nmの範囲にあることを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項9】
更に、極大吸収波長が750nm〜1200nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項8に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項10】
極大吸収波長が、粘着剤に含有されている請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素より短波長であり、かつ極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲にある第二の近赤外線吸収色素を含有することを特徴とする請求項9に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項11】
前記第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項10に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化3】
[一般式(3)中、
X及びYは、それぞれ独立して、硫黄原子、酸素原子、又は、置換基を有していてもよい窒素原子を示す。
M2は金属原子を示す。
(A)Xが置換基を有する窒素原子の場合;
窒素原子の置換基は、下記一般式(4a)で表される化合物であり、
【化4】
(一般式(4a)中、
Rは、炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の置換基を示し、Rの末端が一般式(3)のベンゼン環に結合していてもよい。
R’は、任意の1価の置換基を示し、R’同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
R’同士が結合して縮合環を形成していないときは、n’は0〜4の整数であり、R’同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)
RX及びRYは、それぞれ独立して1価の置換基を示し、連結基を介して結合していてもよく、RX及びRYが結合して縮合環を形成していてもよい。)
(B)Xが酸素原子又は硫黄原子の場合;
RYは1価の置換基を示す。
RXは下記一般式(4b)で表される化合物である。
【化5】
(一般式(4b)中、
Xhは、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基を示す。
Rhは、任意の1価の置換基を示し、Rh同士は結合して縮合環を形成していてもよい。
Rh同士が結合して縮合環を形成していないときは、pは0〜4の整数であり、Rh同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。)]
【請求項12】
前記一般式(3)で表される第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(5)で表される第二の近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項11に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化6】
[一般式(5)において、
R4は、水素原子;炭素数1〜5の直鎖又は分岐アルキル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニル基;アルキル基、アルコキシ基、置換アミノ基又はハロゲン原子を置換基として有していてもよいフェニルチオ基を示す。
R6は、炭素数3〜10の直鎖又は分岐アルキル基を示す。
R5は、炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐アルキル基、又は、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルコキシ基(ただし、R5が分岐アルコキシ基である場合は、R5は、OR6と同じ基である)。
M4は金属原子を表す。]
【請求項13】
第二の近赤外線吸収色素が、下記一般式(6)で表される近赤外線吸収色素であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【化7】
[一般式(6)中、
R7及びR8は、置換基を有していてもよい炭化水素基、置換基を有していてもよいカルボニル基、シアノ基、ハロゲン原子、又は、水素原子を示す。
R9及びR10は、置換基を有していてもよいアルキル基、又は、置換基を有していてもよいアリール基を示す。
M5は金属原子を示す。]
【請求項14】
更に、(メタ)アクリル系樹脂を含有することを特徴とする請求項8ないし請求項13の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤。
【請求項15】
請求項8ないし請求項14の何れかの請求項に記載の近赤外線吸収色素含有粘着剤の層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
【請求項16】
請求項15に記載の近赤外線吸収フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ用前面フィルター。
【請求項17】
請求項16に記載のプラズマディスプレイ用前面フィルターを有することを特徴とするプラズマディスプレイ。
【請求項18】
下記一般式(1)で表される近赤外線吸収色素と、極大吸収波長が750nm〜950nmの範囲内にある第二の近赤外線吸収色素を含有してなるものであることを特徴とする近赤外線吸収フィルター用色素混合物。
【化8】
[一般式(1)中、
R1及びR2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい複素環基を示す。
X1及びX2は、それぞれ独立して、炭素原子、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種類の原子を合計4以上有する1価の基を示し、X1及びX2は連結基を介して互いに結合していてもよい。
Mは金属原子を示す。
ベンゼン環Aは、X1以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rfを有していてもよく、隣り合うRfは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rf同士が結合して縮合環を形成していないときは、mは0〜4の整数であり、Rf同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。
ベンゼン環Bは、X2以外に、それぞれ異なっていてもよい置換基Rgを有していてもよく、隣り合うRgは連結基を介して結合していてもよく、結合して縮合環を形成していてもよい。
Rg同士が結合して縮合環を形成していないときは、nは0〜4の整数であり、Rg同士が結合して縮合環を形成しているときは、該縮合環は任意の1価の置換基を有していてもよい。]
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−7038(P2012−7038A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142771(P2010−142771)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】
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