説明

近赤外線消色トナー

【課題】 近赤外線の照射前の画像濃度が高く、短時間の近赤外線の照射で消色可能な近赤外線消色トナー及び消色方法を提供すること。
【解決手段】 結着樹脂と、近赤外線感光色素と、消色剤を含む消色剤マスターバッチとを溶融混練してなり、前記消色剤マスターバッチは、前記結着樹脂と同種の樹脂であって前記結着樹脂よりも軟化点の低い樹脂と消色剤とを、80:20ないし50:50の比率で溶融混練して得たことを特徴とする近赤外線消色トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線消色トナー及び消色方法に係り、特に、短時間の近赤外線の照射で消色可能な近赤外線消色トナー及び消色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源化のため、オフィス内で一度コピーやプリントした紙を再利用することが検討されている。しかしながら、これらの印刷物は一般には企業秘密とされている機密文書が大半を占めている。このため、大部分の印刷物は廃棄処理されており、再利用することは少ないのが現状である。
【0003】
そこで、近赤外線を吸収して分解、消去しうる近赤外光消色型記録材料を用いたトナー(例えば、特許文献1参照)が提案されている。このトナーによりコピー又はプリントされた画像の十分な消去を行うためには、長い光照射時間が必要になることから、着色剤とバインダーのマスターバッチ化を行う方法(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、まだ光照射時間が長いという問題がある。
【0004】
また、着色剤と消色剤を含めてマスターバッチ化する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、近赤外線の照射前に着色剤と消色剤の反応がある程度進行し、画像濃度が十分大きくならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−119529号公報
【特許文献2】特開2002−357922号公報
【特許文献3】特開平6−332239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされ、近赤外線の照射前の画像濃度が高く、短時間の近赤外線の照射で消色可能な近赤外線消色トナー及び消色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、結着樹脂と、近赤外線感光色素と、消色剤を含む消色剤マスターバッチとを溶融混練してなり、前記消色剤マスターバッチは、前記結着樹脂と同種の樹脂であって前記結着樹脂よりも軟化点の低い樹脂と消色剤とを、80:20ないし50:50の比率で溶融混練して得たことを特徴とする近赤外線消色トナーを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、近赤外線の照射前の画像濃度が高く、短時間の近赤外線の照射で消色可能な近赤外線消色トナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例に係る近赤外線消色トナーを用いた消色方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態について説明する。
【0011】
本発明の一実施形態に係る消色トナーは、結着樹脂と、近赤外線感光色素と、消色剤を含む消色剤マスターバッチとを溶融混練してなる。消色剤マスターバッチは、結着樹脂と同種の樹脂であって結着樹脂よりも軟化点の低い樹脂と消色剤とを、80:20ないし50:50の比率で溶融混練して得たものを用いる。
【0012】
消色剤マスターバッチにおける樹脂と消色剤の比率が上記範囲外では、消色性が劣ってしまう。特に消色剤の比率が多い場合には、マスターバッチ化が困難となる。
【0013】
このような消色トナーを用いて、電子写真プロセスにより印字又は画像を形成すると、印字又は画像は、可視光下では高い画像濃度であるが、近赤外線を照射すると、印字又は画像が消色する。これは、次のような現象に基づく。
【0014】
すなわち、印字又は画像に近赤外線を照射すると、トナー中の近赤外線感光色素が励起状態になり、消色剤と反応し、消色現象が生ずる。その結果、印字又は画像が消色し、用紙を再利用することが可能となる。
【0015】
なお、消色反応は、近赤外線感光色素の色素カチオンが消色剤のアルキル基と結合することにより生ずる。なお、消色トナーにおける近赤外線感光色素と消色剤の比率は、消色反応後に未反応の近赤外線感光色素が残留しないように、適宜選択される。
【0016】
本実施形態に係る消色トナーに含まれる近赤外線感光色素としては、従来公知のものを用いることが出来る。そのような近赤外線感光色素として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な近赤外線感光色素の例として、例えば、下記式に示すようなIR−T(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【化1】

【0017】
式中、X及びYは、いずれもN(Cを表し、Zは下記式に示す対イオンである。
【化2】

【0018】
消色剤としては、従来公知の4級アンモニウムホウ素錯体を用いることが出来る。そのような4級アンモニウムホウ素錯体として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な4級アンモニウムホウ素錯体の例として、下記式に示すP3B(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【化3】

【0019】
結着樹脂としては、公知のものを含む広い範囲から選択することができる。具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、およびスチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂をはじめ、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示でき、これらの樹脂を二種類以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0020】
消色剤マスターバッチを構成する樹脂は、結着樹脂と同種のものであり、マスターバッチを形成するために、結着樹脂より軟化点の低い樹脂を用いる必要がある。特にポリエステル系樹脂が好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態に係る消色トナーは、結着樹脂、近赤外線感光色素、消色剤マスターバッチ(樹脂及び消色剤を含む)以外に、離型材、帯電制御剤を含むことができる。離型剤及び帯電制御剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
【0022】
以下、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明について、より具体的に説明する。
【0023】
実施例1
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 50質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して消色剤マスターバッチ(1)を得た。
【0024】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(1) 15質量部
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 1.5質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行社) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 79.5質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(1)を得た。
【0025】
微粒子(1) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して、消色トナー(1)を得た。
【0026】
この消色トナー(1)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字して、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.00であった。
【0027】
図1に示すように、この印刷用紙1を、ヒーター2上に載置して190℃に加熱し、900Wのハロゲンランプ3及び光反射板4を備える光源から光を2.5秒間照射した後、再度印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.09であり、良好に消色されていた。
【0028】
実施例2
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 30質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 70質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して、消色剤マスターバッチ(2)を得た。
【0029】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(2) 25質量部
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 1.5質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)製) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 69.5質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(2)を得た。
【0030】
微粒子(2) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(2)を得た。
【0031】
この消色トナー(2)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字し、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.01であった。
【0032】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.10であり、良好に消色されていた。
【0033】
実施例3
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 20質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 80質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して、消色剤マスターバッチ(3)を得た。
【0034】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(3) 37.5質量部
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 1.5質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行社) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 57.0質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(3)を得た。
【0035】
微粒子(3) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(3)を得た。
【0036】
この消色トナー(3)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字し、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.03であった。
【0037】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.10であり、良好に消色されていた。
【0038】
比較例1
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 10質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 90質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して、消色剤マスターバッチ(4)を得た。
【0039】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(4) 75.0質量部
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 1.5質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)製) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 19.5質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(4)を得た。
【0040】
微粒子(4) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(4)を得た。
【0041】
この消色トナー(4)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字して、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ1.03であった。
【0042】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.18であり、消色が不十分であった。
【0043】
比較例2
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 18質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 82質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して、消色剤マスターバッチ(5)を得た。
【0044】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(5) 41.7質量部
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 1.5質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 52.8質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(5)を得た。
【0045】
微粒子(5) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(5)を得た。
【0046】
この消色トナー(5)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字して、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.03であった。
【0047】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.13であり、消色がやや不十分であった。
【0048】
比較例3
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 52質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 48質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して、マスターバッチ消色剤(6)を得た。
【0049】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(6) 41.7質量部
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 1.5質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 52.8質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(6)を得た。
【0050】
微粒子(6) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(6)を得た。
【0051】
この消色トナー(6)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字し、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.02であった。
【0052】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.14であり、消色がやや不十分であった。
【0053】
比較例4
(近赤外線感光色素マスターバッチの作製)
近赤外線感光色素「IR−T」(昭和電工(株)製) 50質量部
樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 50質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間紺錬を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕して、感光色素マスターバッチ(1)を得た。
【0054】
(トナーの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 7.5質量部
感光色素マスターバッチ(1) 3質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)製) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 85.5質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機によって溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒径9.0μmの微粒子(7)を得た。
【0055】
微粒子(7) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(7)を得た。
【0056】
この消色トナー(7)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形画像を印字して、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.02であった。
【0057】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が、0.32であり、消色が不十分であった。
【0058】
比較例5
比較例4と同様にして、近赤外線感光色素マスターバッチ(1)を作製した。
【0059】
(トナーの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 15質量部
感光色素マスターバッチ(1) 3質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)製) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 78質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒子径9.0μmの微粒子(8)を得た。
【0060】
微粒子(8) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(8)を得た。
【0061】
この消色トナー(8)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形を印字して、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、1.00であった。
【0062】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.26であり、消色が不十分であった。
【0063】
比較例6
実施例1と同様にして消色剤マスターバッチ(1)を作製し、また、比較例4と同様に近赤外線感光染料マスターバッチ(1)を作製した。
【0064】
(トナーの作製)
消色剤マスターバッチ(1) 15質量部
近赤外線感光染料マスターバッチ(1) 3質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)製) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 78質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却後ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒子径9.0μmの微粒子(9)を得た。
【0065】
微粒子(9) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(9)を得た。
【0066】
この消色トナー(9)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形を印字し、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、0.73であった。
【0067】
実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.08であり、発色が不十分であった。
【0068】
比較例7
(トナーの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 7.5質量部
近赤外線感光色素「IR―T」(昭和電工(株)製) 3質量部
帯電制御剤「LR−147」(日本カーリット(株)製) 1.5質量部
カルナバワックス1号粉末(加藤洋行(株)製) 2.5質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂2:軟化点温度135℃) 78質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで3分間混合した後、二軸押出機により溶融混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕し、更に衝突板式ジェット粉砕機で粉砕し、次いで風力分級機で分級し、質量平均粒子径9.0μmの微粒子(10)を得た。
【0069】
微粒子(10) 100質量部
シリカ(RY−50:日本アエロジル(株)製) 2.5質量部
上記割合の合計1.025kgを10Lのヘンシェルミキサーに投入し、2000rpmで2分間混合した後、篩別して消色トナー(10)を得た。
【0070】
この消色トナー(10)を「SPEEDIA N3500」(カシオ計算機(株)製)に実装して、1辺が1cmの正方形を印字し、X−RITE 938で印字濃度を測定したところ、0.72であった。実施例1と同様にして、光照射後の印字濃度を測定したところ、印字濃度が0.28であり、発色、消色とも不十分であった。
【0071】
比較例8
(消色剤マスターバッチの作製)
消色剤「P3B」(昭和電工(株)製) 60質量部
結着樹脂(ポリエステル樹脂1:軟化点105℃) 40質量部
上記配合組成の合計3kgを20Lのヘンシェルミキサーに投入し、3000rpmで10分間混合した。これをロール表面温度130℃にした2本ロール混練機により60分間混練を行い、冷却した後、ロートプレックス(2mmパス)で粗砕したところ、ぼそぼその状態であり、マスターバッチができなかった。
【0072】
以上の実施例1〜3、比較例1〜7について、照射前の画像濃度、及び消色性を以下のように評価した。
【0073】
画像濃度の評価
○:画像濃度1.00以上
△:画像濃度0.90以上、1.00未満
×:画像濃度0.90未満
1.00未満:×
消色性の評価
照射前の画像濃度と照射後の画像濃度から、濃度減少率を次式で算出した。
【0074】
濃度消色率(%)=100−(照射後画像濃度/照射前画像濃度)×100
数値が大きいほど、消色反応が良いことを示す。
【0075】
95%以上:○
80%〜95%未満:△
80%未満:×
以上の結果を下記表1にまとめた。
【表1】

【0076】
上記表1から次のことがわかる。即ち、樹脂と消色剤とを80:20ないし50:50の比率で溶融混練して得た消色剤マスターバッチを用いた実施例1〜3に係るトナーは、近赤外線照射前の画像濃度が高く、一方、消色性が優れており、優れた近赤外線消色トナーであることがわかる。
【0077】
これに対し、マスターバッチ中の樹脂と消色剤の比率が上記範囲外の比較例1、2及び3に係るトナーは、照射前の画像濃度は高いが、消色性はやや低い。また、消色剤をマスターバッチ化せずに、近赤外線感光色素をマスターバッチ化した比較例4及び5に係るトナーは、照射前の画像濃度は高いが、消色性はかなり低い。また、消色剤と近赤外線感光色素の双方をマスターバッチ化した比較例6に係るトナーもまた、照射前の画像濃度は高いが、消色性はかなり低い。
【0078】
なお、消色剤と近赤外線感光色素のいずれもマスターバッチ化していない比較例7に係るトナーは、照射前の画像濃度も消色性もいずれも低い。また、マスターバッチ中の消色剤の比率が高すぎる比較例8では、良好なマスターバッチ化を行うことが出来ないことがわかる。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらはいずれも特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0080】
以下に、特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0081】
1.結着樹脂と、近赤外線感光色素と、消色剤を含む消色剤マスターバッチとを溶融混練してなり、前記消色剤マスターバッチは、前記結着樹脂と同種の樹脂であって前記結着樹脂よりも軟化点の低い樹脂と消色剤とを、80:20ないし50:50の比率で溶融混練して得たことを特徴とする近赤外線消色トナー。
【0082】
2.前記消色剤マスターバッチの樹脂は、ポリエステルであることを特徴とする付記1に記載の近赤外線消色トナー。
【0083】
3.付記1に記載の近赤外線消色トナーを用いて電子写真プロセスにより画像を形成された媒体に、近赤外線を照射することにより、前記画像を消色することを特徴とする消色方法。
【符号の説明】
【0084】
1…印刷用紙、2…ヒーター、3…ハロゲンランプ、4…反射板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、近赤外線感光色素と、消色剤を含む消色剤マスターバッチとを溶融混練してなり、前記消色剤マスターバッチは、前記結着樹脂と同種の樹脂であって前記結着樹脂よりも軟化点の低い樹脂と消色剤とを、80:20ないし50:50の比率で溶融混練して得たことを特徴とする近赤外線消色トナー。
【請求項2】
前記消色剤マスターバッチの樹脂は、ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線消色トナー。
【請求項3】
請求項1に記載の近赤外線消色トナーを用いて電子写真プロセスにより画像を形成された媒体に、近赤外線を照射することにより、前記画像を消色することを特徴とする消色方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−150392(P2012−150392A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10659(P2011−10659)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】