追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置
【課題】主として、現場の状況に応じた適切な追加構造物を簡便且つ迅速に設計することができる追加構造物の設計支援装置等を提供する。
【解決手段】追加構造物の設計支援装置1は、構造物に追加される追加構造物(足場)の設計を支援する装置であって、構造物の三次元形状を示す構造物データD1と、足場に関するデータである仮設足場テンプレートT1とを格納するデータ格納装置14と、外部からの指示を入力する入力装置11と、構造物データD1に基づいた構造物とともに仮設足場テンプレートT1に基づいた足場の三次元表示が可能な表示装置12と、入力装置11に入力された指示に応じた仮設足場テンプレートT1を読み出し、読み出した仮設足場テンプレートT1に基づいた足場を入力装置11に入力された指示に基づいた状態に配置し、配置された足場を構造物とともに三次元表示させる制御を行うCPU15とを備える。
【解決手段】追加構造物の設計支援装置1は、構造物に追加される追加構造物(足場)の設計を支援する装置であって、構造物の三次元形状を示す構造物データD1と、足場に関するデータである仮設足場テンプレートT1とを格納するデータ格納装置14と、外部からの指示を入力する入力装置11と、構造物データD1に基づいた構造物とともに仮設足場テンプレートT1に基づいた足場の三次元表示が可能な表示装置12と、入力装置11に入力された指示に応じた仮設足場テンプレートT1を読み出し、読み出した仮設足場テンプレートT1に基づいた足場を入力装置11に入力された指示に基づいた状態に配置し、配置された足場を構造物とともに三次元表示させる制御を行うCPU15とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追加構造物の設計を支援する設計支援プログラム及び設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場、建設現場、建築現場等の各種現場においては、プラント、ビルディング、家宅、その他の構造物を構築するため、或いは既に構築されている構造物に対して補修等の作業を行うために、足場や敷鉄板等の簡単な追加構造物が用いられる。足場は、作業員の高所への移動を容易にしつつ、高所における作業員の安全な作業スペースを確保するものであり、敷鉄板は、現場における通路の確保、或いは作業場の養生を行うものである。
【0003】
構造物は、構造が複雑であるとともに数十年程度或いはそれ以上の長期に亘って用いられるものであり、ある程度の規模の地震が発生した場合にも、その揺れに耐え得る強度を有することが必須になる。このため、構造物の設計は、専門の設計者が三次元CAD(Computer Aided Design)を用いて、強度計算を行いながら時間及び費用をかけて行われるのが一般的である。
【0004】
これに対し、追加構造物は、構造が簡単であるとともに構造物の建築や補修等の作業終了後には撤収されるものであるため、作業を行っている間だけ作業員が無事に作業できる程度の強度が確保できれば良いものである。このため、追加構造物の設計は、現場監督の指示の下で職人が自己の経験に基づいて完成形を予測しつつ簡便且つ迅速に設計されるのが一般的である。
【0005】
図11は、従来の追加構造物の設計手法を説明するための図である。例えば、プラントの建設現場において足場を設計する場合には、まず現場監督が、配管101及び支持柱や梁等の支持部材102等が描かれたプラントの設計図面(平面図)を参照して足場を組むべき領域201を書き込み、その領域201内に組むべき足場の寸法や高さ等のコメント202を記入する。次に、現場監督から設計図面を手渡された職人が、自己の経験に基づいて完成形を予測しつつ具体的な足場を設計する。足場の設計が終了すると、職人の経験によって、足場を設置するために必要となる資材の種類及び数が特定される。
【0006】
尚、以下の特許文献1には、コンピュータ処理により、資材数量を基準として仮設足場工事のための資材及び工費等を積算する技術が開示されている。また、以下の特許文献2には、大規模プラントの建設時における各作業に応じて仮設足場が必要な領域を提示する支援技術が開示されている。更に、以下の特許文献3には、建物の立面図に足場資材を自動で割り付けることにより立面図側の仮設材配置図面を簡単に作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−141115号公報
【特許文献2】特許第3524389号公報
【特許文献3】特開2001−167137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来は、上述した通り、現場監督が二次元図面である紙の設計図面を参照して追加構造物の設計指示を行っているため、現場監督には構造物の構造に応じた適切な追加構造物を設計し得る十分な経験が必要である。また、現場監督の指示を受けた職人は、現場監督の指示に応じて追加構造物の適切な完成形を予測して設計し得る十分な熟練が必要である。
【0009】
現場監督及び職人は、お互いの意図を汲み取りつつ自己の経験に基づいて適切な追加構造物の設計指示及び具体的な設計を行う訳であるが、上述した設計図面を用いる手法においてお互いの意図が十分に汲み取れない場合には、適切な追加構造物を設計することができないという問題がある。また、設計された足場を設置するために必要となる資材の種類及び数の特定は、上述の通り、職人の経験に一任されていたため、足場を設置するために必要となるコストの予測精度が低いという問題があった。
【0010】
ここで、追加構造物の設計自体は、構造物を設計する場合と同様に、三次元CADを用いて行うことも可能である。つまり、追加構造物の三次元モデルを構造物の三次元モデルと同様に取り扱えば足場の設計は可能である。しかしながら、構造物の設計を行う専門家の多くは、構造物の設計に長けてはいるものの、基本的に追加構造物の設計は行わないため、構造物に応じた適切な足場を設計できるとは限らない。また、コスト及び工期の面から、時間及び費用をかけて行われる構造物の設計手法を、簡便且つ迅速に行う必要がある追加構造物の設計にそのまま適用することはできない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、現場の状況に応じた適切な追加構造物を簡便且つ迅速に設計することができ、加えて追加構造物の設置に必要となる資材の予測精度を高めることができる追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の追加構造物の設計支援プログラムは、構造物の三次元形状を示す第1形状データ(D1)に基づいて前記構造物の三次元表示が可能なコンピュータを、前記構造物に追加される追加構造物の設計を支援する手段として機能させる追加構造物の設計支援プログラム(P2)であって、前記コンピュータを、前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データ(D11)を外部からの指示に応じて読み込む読込手段と、前記読込手段で読み込まれた前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を外部からの指示に応じた状態に配置する配置手段と、前記配置手段によって配置された前記追加構造物の単位構造を前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに三次元表示させる表示制御手段として機能させることを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援プログラムは、前記コンピュータを、前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データ(D12)を用いて、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する集計手段として機能させることを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援プログラムは、前記集計手段が、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物のうち、外部からの指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴としている。
上記課題を解決するために、本発明の追加構造物の設計支援装置は、構造物に追加される追加構造物の設計を支援する追加構造物の設計支援装置(1)であって、前記構造物の三次元形状を示す第1形状データ(D1)と、前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データ(D11)とを格納する格納部(14)と、外部からの指示を入力する入力部(11)と、前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造の三次元表示が可能な表示部(12)と、前記入力部に入力された指示に応じた第2形状データを前記格納部から読み出し、読み出した第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を前記入力部に入力された指示に基づいた状態に配置し、配置された前記追加構造物の単位構造を、前記構造物とともに三次元表示させる制御を行う制御部(15)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援装置は、前記格納部が、前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データ(D12)を前記第2形状データに対応させて格納しており、前記制御部は、前記格納部に格納された前記物量データを用いて、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援装置は、前記制御部が、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物のうち、前記入力部から入力される指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部からの指示に応じた追加構造物を外部からの指示に応じた状態で配置して構造物とともに三次元表示しているため、現場の状況に応じた適切な追加構造物を簡便且つ迅速に設計することができるという効果がある。また、配置された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計しているため、追加構造物の設置に必要となる資材の予測精度を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】仮設足場テンプレートの種類を示す図である。
【図3】仮設足場テンプレートの内容を示す図である。
【図4】追加構造物の設計支援装置の初期画面を示す図である。
【図5】足場を配置する際に追加構造物の設計支援装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【図6】足場の配置を行う際に用いられる足場配置ウィンドウを示す図である。
【図7】追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の一例を示す図である。
【図8】追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の他の例を示す図である。
【図9】足場を配置した後に追加構造物の設計支援装置で行われる物量集計処理を示すフローチャートである。
【図10】物量集計結果の一例を示す図である。
【図11】従来の追加構造物の設計手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、追加構造物の設計支援装置1は、入力装置11(入力部)、表示装置12(表示部)、メモリ13、データ格納装置14(格納部)、及びCPU(中央処理装置)15(制御部)を備えており、予め作成された構造物データD1に基づいた構造物の三次元表示が可能であるとともに、その構造物に追加される追加構造物の設計を支援するものである。
【0016】
具体的に、追加構造物の設計支援装置1は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、又はノート型若しくはブック型等の携帯性を有するコンピュータで実現され、工事現場、建設現場、建築現場等の各種現場において現場監督や職人によって使用され、現場監督や職人によって行われる追加構造物の設計を支援する。尚、本実施形態では、構造物がボイラ等のプラントであり、追加構造物が足場である場合を例に挙げて説明する。また、以下では追加構造物の設計支援装置1を使用する現場監督や職人をユーザと総称する。
【0017】
入力装置11は、ユーザによって操作され、CPU15に対してユーザの各種の指示を入力するためのものである。この入力装置11は、例えばキーボードやマウス等により実現される。表示装置12は、CPU15の制御の下で、構造物データD1に基づいた構造物、及びその構造物に追加される追加構造物(足場)の三次元表示を行う。また、表示装置12は、CPU15の制御の下で、追加構造物を設計するための各種メニューを表示するとともに、設計された追加構造物を実現するために必要となる資材の種類及び数等の各種情報も表示する。この表示装置12は、液晶表示装置、有機EL装置、CRT(Cathode Ray Tube)等により実現される。
【0018】
メモリ13は、CPU15の処理で用いられるデータを一時的に記憶するものであり、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリで実現される。データ格納装置14は、追加構造物の設計支援装置1で実行される各種プログラム、並びに構造物を表示するためのデータ及び追加構造物を設計するための各種データを格納するものであり、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等によって実現される。
【0019】
本実施形態では、上記の追加構造物の設計支援装置1で実行される各種プログラムとして、図1に示す通り、構造物表示処理プログラムP1及び足場設計支援プログラムP2がデータ格納装置14に格納される。構造物表示処理プログラムP1は、構造物データD1に応じた構造物を表示装置12に三次元表示するプログラム(所謂、ビューアプログラム)である。この構造物表示処理プログラムP1は、ユーザの入力装置11に対する操作に応じて、構造物の表示方向、表示位置、表示倍率等を変更する処理が可能である。
【0020】
足場設計支援プログラムP2は、構造物データD1に応じた構造物に対して追加される追加構造物の設計を支援するプログラムである。この足場設計支援プログラムP2は、構造物表示処理プログラムP1にアドオン又はプラグインとして組み込まれ、構造物表示処理プログラムP1と協働することによって、構造物表示処理プログラムP1に対して追加構造物の設計を支援する機能を提供する。
【0021】
具体的に、足場設計支援プログラムP2は、追加構造物の種類毎に予め用意された追加構造物の単位構造の三次元形状を示す形状データD11(図3参照)のうちからユーザの指示に応じたものをCPU15に読み込む処理、読み込んだ形状データD11に基づいた追加構造物をユーザの指示応じた状態に配置する処理、及びユーザの指示に応じて配置された追加構造物を構造物データD1(図1参照)に応じた構造物とともに表示装置12に三次元表示させる処理を実現する。また、構造物とともに表示された追加構造物の全て、又はユーザの指示によって選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を、後述する物量データD12(図3参照)を用いて集計する処理を実現する。
【0022】
また、本実施形態では、図1に示す通り、上記の構造物を表示するためのデータとして構造物データD1(第1形状データ)がデータ格納装置14に格納され、上記の追加構造物を設計するための各種データとして設定ファイルF1、仮設足場テンプレートT1、仮設足場外形データD2、及び物量集計データD3がデータ格納装置14に格納される。構造物データD1は、構造物(プラント)の三次元形状を示すデータであって、例えばプラントの設計者が三次元CADを用いて、強度計算を行いながら時間及び費用をかけて作成されたデータである。
【0023】
上記の設定ファイルF1は、追加構造物を設計する足場設計支援プログラムP2を動作させるための動作環境を規定する設定データが格納されたファイルである。具体的に、設定ファイルF1には、データ格納装置14内における仮設足場テンプレートT1や仮設足場外形データD2の格納場所を示す設定データ、物量集計データD3を格納すべき場所を示す設定データ等の各種設定データが格納されている。
【0024】
仮設足場テンプレートT1は、追加構造物としての足場の単位構造に関する各種データをまとめた雛形データであって、構造物に追加される足場の種類毎に用意されるものである。図2は、仮設足場テンプレートの種類を示す図である。図2に示す例において、仮設足場テンプレートT1は、使用頻度の高い単管足場、吊足場、及び枠組足場と、使用頻度の低いその他の足場とに分類されている。尚、その他の足場としては、ブラケット一側足場、楔緊結式足場、張出足場、吊棚足場、丸太足場等の足場がある。尚、図2に示す分類は一例であって、任意の分類が可能である。
【0025】
図3は、仮設足場テンプレートの内容を示す図である。図3に示す通り、仮設足場テンプレートT1は、形状データD11(第2形状データ)と物量データD12とからなる。形状データD11は、足場の単位構造の三次元形状を示すデータである。足場には構造物に求められるような精密な寸法や強度計算が必要ではないため、形状データD11は、上記の構造物データD1のような高精度なデータではなく、足場のおおよその三次元形状を示す簡便なデータで良い。但し、構造物データD1と同様に、形状データD11を高精度なデータとしても良い。
【0026】
物量データD12は、仮設足場テンプレートT1で特定される種類の足場の単位構造を実現するための必要となる資材の種類及び数等を示すデータである。図3に示す例では、足場の名前、重量、及び設置面積を示すデータ、並びに、必要となる資材を示すデータが物量データD12に含まれている。具体的に、図3に示す例では、物量データD12に、「2.5m×8枚板上_手すり左右」なる名前のデータ、「30.5kg」なる重量のデータ、及び「5.5m2」なる設置面積を示すデータが含まれる。尚、足場の名前は、「2.5mの鉄板が8枚必要であり、左右に手すりが設けられた足場」の意味で付けられている。
【0027】
加えて、図3に示す物量データD12には、必要となる資材を示すデータとして、2.5m板が「10枚」、2.5m単管が「9本」、1m単管が「6本」、「1m」の長さの吊りチェーンが「6本」なるデータが含まれる。尚、図3に示す例において、上記の「2.5m×8枚板上_手すり左右」なる名前は「2.5mの鉄板が8枚必要」である意味で付けられたものであるが、実際に必要となる2.5m板は「10枚」である。この違いは、2枚の2.5m板が、本来の用途以外につま先板(幅木)等として用いられることによるものである。
【0028】
仮設足場外形データD2は、足場の単位構造の外形形状を示すデータ(例えば、二次元データ)であり、仮設足場テンプレートT1の種類毎に対応して設けられるデータである。物量集計データD3は、ユーザによって設計された足場を実現するために必要な資材の種類及び数を集計したデータである。この物量集計データD3は、構造物データD1及び仮設足場テンプレートT1等とは異なり、追加構造物の設計を終えた後に、ユーザによって物量集計指示がなされることによって生成されるデータである。
【0029】
CPU15は、入力装置11から入力されるユーザの指示に応じてデータ格納装置14に格納された各種プログラムを読み込んで実行することにより、プログラムに応じた処理を実行する。具体的に、ユーザによって構造物表示処理プログラムP1の起動指示がなされた場合には、CPU15はデータ格納装置14に格納された構造物表示処理プログラムP1を読み込んで実行する。これにより、CPU15には構造物表示処理部16が実現される。また、CPU15は、構造物表示処理プログラムP1の実行に伴ってデータ格納装置14に格納された足場設計支援プログラムP2を読み込んで実行する。これにより、CPU15には足場設計支援部17が実現される。
【0030】
上記の構造物表示処理部16は、構造物データD1に応じた構造物及び足場設計支援部17で設計された追加構造物を表示装置12に三次元表示するものであり、ユーザの入力装置11に対する操作に応じて、構造物及び追加構造物の表示方向、表示位置、表示倍率等の変更が可能である。また、上記の足場設計支援部17は、構造物データD1に応じた構造物に対し、ユーザの指示に応じて追加される追加構造物の設計を支援する処理を行うものである。
【0031】
具体的に足場設計支援部17は、仮設足場テンプレートT1に含まれる形状データD11のうちからユーザの指示に応じたものを読み込む処理(読込手段)、読み込んだ形状データD11に基づいた追加構造物をユーザの指示応じた状態に配置する処理(配置手段)、及びユーザの指示に応じて配置された追加構造物を構造物データD1に応じた構造物とともに表示装置12に三次元表示させる処理(表示制御手段)を行う。また、構造物とともに表示された追加構造物の全て、又はユーザの指示によって選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を、仮設足場テンプレートT1に含まれる物量データD12を用いて集計する処理(集計手段)を行う。
【0032】
次に、上記構成における追加構造物の設計支援装置1の動作について説明する。ユーザが追加構造物の設計支援装置1の電源を投入し、入力装置11を操作して構造物表示処理プログラムP1の起動を指示すると、データ格納装置14に格納された構造物表示処理プログラムP1がCPU15に読み込まれて実行され、これによりCPU15には構造物表示処理部16が実現される。また、構造物表示処理プログラムP1の実行に伴ってデータ格納装置14に格納された足場設計支援プログラムP2がCPU15に読み込まれて実行され、これによりCPU15には足場設計支援部17が実現される。
【0033】
以上の起動処理が終了すると、図4に示す初期画面が表示装置12に表示される。図4は、追加構造物の設計支援装置の初期画面を示す図である。図4に示す通り、表示装置12には、初期画面として表示ウィンドウW1とメインメニューM1とが表示される。表示ウィンドウW1は、構造物データD1に基づいた構造物及びユーザによって設計された追加構造物が三次元表示されるウィンドウである。この表示ウィンドウW1は、構造物表示処理プログラムP1が起動されることによって表示されるウィンドウである。
【0034】
また、メインメニューM1は、ユーザによって行われる追加構造物の設計を支援するために用意されたメニューである。このメインメニューM1は、足場設計支援プログラムP2が起動されることによって表示されるウィンドウである。図4に示す通り、メインメニューM1は、追加構造物としての足場の配置を行う配置メニュー、足場の操作を行う操作メニュー、及び物量を集計する集計メニューに大別される。
【0035】
配置メニューとしては、足場を個別に配置する「足場配置」メニューm11と、指定領域に足場を一括配置する「一括配置」メニューm12とが用意されている。操作メニューとしては、一旦配置された足場の削除を行う「足場削除」メニューm21、足場の移動を行う「足場移動」メニューm22、足場の回転を行う「足場回転」メニューm23、足場の置換を行う「足場置換」メニューm24、及び足場のコピーを行う「足場コピー」メニューm25が用意されている。集計メニューとしては、配置した足場を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する「物量集計」メニューm31が用意されている。
【0036】
ユーザが入力装置11を操作して、これらメインメニューM1に表示された各メニューを押下すると、押下したメニューの機能が実行される。尚、図4では、理解を容易にするために、メインメニューM1の各メニューが文字表示されている例を図示しているが、機能を図案化したアイコン表示によってメインメニューM1の各メニューを表示しても良い。アイコン表示することにより、メインメニューM1に用意された各メニューの機能を直感的に理解できるとともに、メインメニューM1を小型化することができる。また、図4では、メインメニューM1と表示ウィンドウW1とが別々に表示されている例を図示しているが、メインメニューM1が表示ウィンドウW1に組み込まれていても良い。
【0037】
追加構造物としての足場の設計は、ユーザが入力装置11を操作して図4の初期画面に表示されたメインメニューM1に用意されたメニューを適宜選択し、選択したメニューに応じた機能を実行することにより行われる。具体的には、まず「足場配置」メニューm11又は「一括配置」メニューm12を選択して足場の配置を行い、必要であれば「足場削除」メニューm21〜「足場コピー」メニューm25を押下して配置した足場の修正等を行う。このような操作を繰り返して足場の設計が完了すると、「物量集計」メニューm31を押下して設計した足場を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する。以下、「足場配置」メニューm11及び「物量集計」メニューm31が押下された場合に行われる処理の詳細について順に説明する。
【0038】
ユーザが入力装置11を操作して、図4に示すメインメニューM1中の「足場配置」メニューm11を押下すると、図5に示す処理が行われる。図5は、足場を配置する際に追加構造物の設計支援装置で行われる処理を示すフローチャートである。ユーザの操作によって「足場配置」メニューm11が押下されると、足場設計支援部17は、図6に示す足場配置ウィンドウW2を表示装置12に表示し、この足場配置ウィンドウW2を用いて、配置すべき足場種類の選択(ステップS11)、選択された足場種類のうちの仮設足場テンプレートT1の選択(ステップS12)、足場高さの設定(ステップS13)、及び方向の設定(ステップS14)を順に行う。
【0039】
図6は、足場の配置を行う際に用いられる足場配置ウィンドウを示す図である。図6に示す通り、足場配置ウィンドウW2には、足場種類選択ボックスB1、仮設足場テンプレート選択ボックスB2、足場高さ設定ボックスB3、方向設定ボックスB4、及び足場外形図表示ボックスB5が設けられている。足場種類選択ボックスB1は、配置すべき足場の種類を選択するために用いられるボックスであり、例えば選択可能な足場種類として、図2に示す「単管足場」、「吊足場」、「枠組足場」、及び「その他」が用意されている。ユーザが入力装置11を操作して、足場種類選択ボックスB1に対する入力を行うと、足場設計支援部17によって足場種類が選択される(ステップS11)。尚、図6に示す例では、「吊足場」が選択されている。
【0040】
仮設足場テンプレート選択ボックスB2は、足場種類選択ボックスB1で選択された足場種類に分類される足場であって、細部が異なる足場についての仮設足場テンプレートT1の名前が一覧表示されるボックスである。図6に示す例では、「4m×2枚板上_手すり右.nwd」,「4m×2枚板上_手すり左.nwd」等の名前が表示されている。ユーザが入力装置11を操作して、仮設足場テンプレート選択ボックスB2に表示された足場の名前を1つ選択すると、足場設計支援部17によってデータ格納装置14に格納された仮設足場テンプレートT1の1つが選択される(ステップS12)。尚、図6に示す例では、「4m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートが選択されている。
【0041】
足場高さ設定ボックスB3は、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートで規定される足場を配置する高さ(エレべーション)を設定するボックスである。ユーザが入力装置11を操作して、足場の高さを示す数値を足場高さ設定ボックスB3に入力すると、足場設計支援部17によって足場の高さが設定される(ステップS13)。方向設定ボックスB4は、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートで規定される足場を配置する方向を設定するボックスである。ユーザが入力装置11を操作して、足場の方向を示す角度を足場方向設定ボックスB4に入力すると、足場設計支援部17によって足場の方向が設定される(ステップS14)。
【0042】
足場外形図表示ボックスB5は、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートで規定される足場の外形図が表示されるボックスである。つまり、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で仮設足場テンプレートの1つが選択されると、その選択された仮設足場テンプレートに対応した仮設足場外形データが、仮設足場外形データD2から読み出されて足場外形図表示ボックスB5に表示される。この足場外形図表示ボックスB5の表示を参照することにより、ユーザは設置しようとしている足場のおおよその形状や大きさを知ることができる。図6に示す例では、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された「4m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートで特定される足場の外形図が足場外形図表示ボックスB5に表示されている。
【0043】
以上の操作が終了した後に、ユーザが入力装置11を操作して足場配置ウィンドウW2に設けられた「OK」ボタンB6を押下すると、足場設計支援部17は、以上の操作によって選択された足場を実際に配置する処理を行う(ステップS15)。具体的に、足場設計支援部17は、まずデータ格納装置14に格納された仮設足場テンプレートT1から、足場配置ウィンドウW2の仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートを読み込む(読込手段)。
【0044】
次いで、足場設計支援部17は、読み込んだ仮設足場テンプレートで特定される足場を、足場高さ設定ボックスB3に入力された高さに配置するとともに、方向設定ボックスB4に入力された角度に応じた方向に配置する(配置手段)。以上の配置が完了すると、足場設計支援部17は、構造物表示処理部16を制御して、配置が完了した足場を、データ格納装置14に格納された構造物データD1に応じた構造物とともに表示装置12に三次元表示させる(表示制御手段)。これにより、追加構造物としての足場が追加された状態で構造物データD1に応じた構造物が表示装置12に三次元表示される。
【0045】
ユーザが入力装置11を操作して図4に示すメインメニューM1中の「足場配置」メニューm11を押下し、図5に示す処理を繰り返し行うことにより、複数の足場を配置することができる。尚、足場を配置した後に、必要に応じてユーザがメインメニューM1中の「足場削除」メニューm21〜「足場コピー」メニューm25を押下することにより、配置した足場の削除や再配置等を行うことが可能である。
【0046】
図7は、追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の一例を示す図である。図7に示す通り、表示ウィンドウW1には、構造物データD1に応じた構造物の一部をなす支持柱21や梁22とともに、ユーザの操作によって配置された足場23(枠組足場)が三次元表示される。ここで、構造物及び足場の表示は、足場設計支援部17の制御の下で構造物表示処理部16により行われる。このため、構造物表示処理部16の機能を用いて構造物の表示方向、表示位置、表示倍率等を変更すれば、足場23の表示方向、表示位置、表示倍率等も同様に変更される。
【0047】
ユーザが入力装置11を操作して図4に示すメインメニューM1中の「足場配置」メニューm11を繰り返し押下することによって、足場を1つ1つ組み上げることは可能であるが、足場の数が多い場合には極めて煩雑な操作が必要になる。このような場合には、メインメニューM1中の「一括配置」メニューm12を使用する。この「一括配置」メニューm12を押下すると、図6に示す足場配置ウィンドウW2に対して足場を配置する領域を指定する入力ボックスが追加された足場配置ウィンドウが表示される。
【0048】
そして、この足場配置ウィンドウにて、ユーザが足場を配置する領域を指定し、仮設足場テンプレートT1を選択する操作を行うと、選択された仮設足場テンプレートで特定される足場が、指定された領域に自動的に配置される。具体的には、指定された領域の平面視における面積が足場の平面視における面積で除算されて、その領域に重ねないで配置することができる足場の数が求められ、この数の分だけ自動的に足場が配置される。このように、一度の操作で複数の足場を配置することができるため、ユーザの操作回数を低減することができる。
【0049】
図8は、追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の他の例を示す図である。図8に示す例では、構造物の一部をなすボイラー31の内部に同種の足場が配置されている。このような多数の足場を配置する場合には、メインメニューM1中の「一括配置」メニューm12を用い、足場を配置する領域として構造物の一部であるボイラー31の内部を指定すれば、少ない操作で容易に多数の足場を配置することができる。
【0050】
以上の足場の配置が終了した後に、ユーザが入力装置11を操作して図4に示すメインメニューM1中の「物量集計」メニューm31を押下すると、図9に示す処理が行われる。図9は、足場を配置した後に追加構造物の設計支援装置で行われる物量集計処理を示すフローチャートである。図9に示す処理が開始されると、足場設計支援部17は、ユーザの指示に応じて、図7,図8等に示す表示ウィンドウW1に三次元表示されている足場を選択する処理を行う(ステップS22)。
【0051】
足場の選択が終了すると、足場設計支援部17は、選択された足場の全てについて、仮設足場テンプレートT1に含まれる物量データD12をデータ格納装置14から読み出してその集計を行い(ステップS22:集計手段)、集計結果を表示装置12に表示する(ステップS23)。具体的に、足場設計支援部17は、仮設足場テンプレートの種類毎に、物量データD12を積算し、その積算結果を表示する。
【0052】
図10は、物量集計結果の一例を示す図である。図10に示す例では、「2.5m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートで特定される3つの足場を実現するために必要となる資材と、「4m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートで特定される1つの足場を実現するために必要となる資材と、それらの合計とが積算結果として求められる。このように、足場を配置する操作を行った後に、「物量集計」メニューm31を押下するだけで、足場を実現するために必要な資材が一覧表示されるため、足場を設置する経験が浅いユーザであっても、精度良く足場の設置に必要となるコストを試算することができる。
【0053】
以上の通り、本実施形態では、いわば積み木を積むように、極めて簡単な操作で足場を設計することができる。このため、足場の設計に熟練してはいるものの三次元CADの操作に不慣れな現場監督や職人であっても、追加構造物の設計支援装置1を用いれば、簡便且つ迅速に足場を設計することができる。ここで、追加構造物の設計支援装置1を用いて設計された足場は構造物とともに三次元表示され、様々な方向から設置状況を検討できるため、現場監督が足場を組む職人に対して的確な指示を行うことができ、現場の状況に応じた適切な追加構造物を設計することが可能である。また、配置された足場を実現するために必要となる資材が自動的に集計されるため、足場の設置に必要となる資材の予測精度を高めることもできる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、構造物データD1や仮設足場テンプレートT1等がデータ格納装置14に格納されている形態について説明した。しかしながら、これらのデータは、必ずしもデータ格納装置14に格納されている必要はない。例えば、追加構造物の設計支援装置1が無線等によってネットワーク(例えば、インターネット等)に接続可能である場合には、これらのデータをネットワークに接続されたサーバ装置に格納しておき、必要に応じてサーバ装置から取得するようにしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 追加構造物の設計支援装置
11 入力装置
12 表示装置
14 データ格納装置
15 CPU
D1 構造物データ
D11 形状データ
D12 物量データ
P2 足場設計支援プログラム
【技術分野】
【0001】
本発明は、追加構造物の設計を支援する設計支援プログラム及び設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場、建設現場、建築現場等の各種現場においては、プラント、ビルディング、家宅、その他の構造物を構築するため、或いは既に構築されている構造物に対して補修等の作業を行うために、足場や敷鉄板等の簡単な追加構造物が用いられる。足場は、作業員の高所への移動を容易にしつつ、高所における作業員の安全な作業スペースを確保するものであり、敷鉄板は、現場における通路の確保、或いは作業場の養生を行うものである。
【0003】
構造物は、構造が複雑であるとともに数十年程度或いはそれ以上の長期に亘って用いられるものであり、ある程度の規模の地震が発生した場合にも、その揺れに耐え得る強度を有することが必須になる。このため、構造物の設計は、専門の設計者が三次元CAD(Computer Aided Design)を用いて、強度計算を行いながら時間及び費用をかけて行われるのが一般的である。
【0004】
これに対し、追加構造物は、構造が簡単であるとともに構造物の建築や補修等の作業終了後には撤収されるものであるため、作業を行っている間だけ作業員が無事に作業できる程度の強度が確保できれば良いものである。このため、追加構造物の設計は、現場監督の指示の下で職人が自己の経験に基づいて完成形を予測しつつ簡便且つ迅速に設計されるのが一般的である。
【0005】
図11は、従来の追加構造物の設計手法を説明するための図である。例えば、プラントの建設現場において足場を設計する場合には、まず現場監督が、配管101及び支持柱や梁等の支持部材102等が描かれたプラントの設計図面(平面図)を参照して足場を組むべき領域201を書き込み、その領域201内に組むべき足場の寸法や高さ等のコメント202を記入する。次に、現場監督から設計図面を手渡された職人が、自己の経験に基づいて完成形を予測しつつ具体的な足場を設計する。足場の設計が終了すると、職人の経験によって、足場を設置するために必要となる資材の種類及び数が特定される。
【0006】
尚、以下の特許文献1には、コンピュータ処理により、資材数量を基準として仮設足場工事のための資材及び工費等を積算する技術が開示されている。また、以下の特許文献2には、大規模プラントの建設時における各作業に応じて仮設足場が必要な領域を提示する支援技術が開示されている。更に、以下の特許文献3には、建物の立面図に足場資材を自動で割り付けることにより立面図側の仮設材配置図面を簡単に作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−141115号公報
【特許文献2】特許第3524389号公報
【特許文献3】特開2001−167137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来は、上述した通り、現場監督が二次元図面である紙の設計図面を参照して追加構造物の設計指示を行っているため、現場監督には構造物の構造に応じた適切な追加構造物を設計し得る十分な経験が必要である。また、現場監督の指示を受けた職人は、現場監督の指示に応じて追加構造物の適切な完成形を予測して設計し得る十分な熟練が必要である。
【0009】
現場監督及び職人は、お互いの意図を汲み取りつつ自己の経験に基づいて適切な追加構造物の設計指示及び具体的な設計を行う訳であるが、上述した設計図面を用いる手法においてお互いの意図が十分に汲み取れない場合には、適切な追加構造物を設計することができないという問題がある。また、設計された足場を設置するために必要となる資材の種類及び数の特定は、上述の通り、職人の経験に一任されていたため、足場を設置するために必要となるコストの予測精度が低いという問題があった。
【0010】
ここで、追加構造物の設計自体は、構造物を設計する場合と同様に、三次元CADを用いて行うことも可能である。つまり、追加構造物の三次元モデルを構造物の三次元モデルと同様に取り扱えば足場の設計は可能である。しかしながら、構造物の設計を行う専門家の多くは、構造物の設計に長けてはいるものの、基本的に追加構造物の設計は行わないため、構造物に応じた適切な足場を設計できるとは限らない。また、コスト及び工期の面から、時間及び費用をかけて行われる構造物の設計手法を、簡便且つ迅速に行う必要がある追加構造物の設計にそのまま適用することはできない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、現場の状況に応じた適切な追加構造物を簡便且つ迅速に設計することができ、加えて追加構造物の設置に必要となる資材の予測精度を高めることができる追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の追加構造物の設計支援プログラムは、構造物の三次元形状を示す第1形状データ(D1)に基づいて前記構造物の三次元表示が可能なコンピュータを、前記構造物に追加される追加構造物の設計を支援する手段として機能させる追加構造物の設計支援プログラム(P2)であって、前記コンピュータを、前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データ(D11)を外部からの指示に応じて読み込む読込手段と、前記読込手段で読み込まれた前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を外部からの指示に応じた状態に配置する配置手段と、前記配置手段によって配置された前記追加構造物の単位構造を前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに三次元表示させる表示制御手段として機能させることを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援プログラムは、前記コンピュータを、前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データ(D12)を用いて、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する集計手段として機能させることを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援プログラムは、前記集計手段が、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物のうち、外部からの指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴としている。
上記課題を解決するために、本発明の追加構造物の設計支援装置は、構造物に追加される追加構造物の設計を支援する追加構造物の設計支援装置(1)であって、前記構造物の三次元形状を示す第1形状データ(D1)と、前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データ(D11)とを格納する格納部(14)と、外部からの指示を入力する入力部(11)と、前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造の三次元表示が可能な表示部(12)と、前記入力部に入力された指示に応じた第2形状データを前記格納部から読み出し、読み出した第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を前記入力部に入力された指示に基づいた状態に配置し、配置された前記追加構造物の単位構造を、前記構造物とともに三次元表示させる制御を行う制御部(15)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援装置は、前記格納部が、前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データ(D12)を前記第2形状データに対応させて格納しており、前記制御部は、前記格納部に格納された前記物量データを用いて、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴としている。
また、本発明の追加構造物の設計支援装置は、前記制御部が、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物のうち、前記入力部から入力される指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部からの指示に応じた追加構造物を外部からの指示に応じた状態で配置して構造物とともに三次元表示しているため、現場の状況に応じた適切な追加構造物を簡便且つ迅速に設計することができるという効果がある。また、配置された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計しているため、追加構造物の設置に必要となる資材の予測精度を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】仮設足場テンプレートの種類を示す図である。
【図3】仮設足場テンプレートの内容を示す図である。
【図4】追加構造物の設計支援装置の初期画面を示す図である。
【図5】足場を配置する際に追加構造物の設計支援装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【図6】足場の配置を行う際に用いられる足場配置ウィンドウを示す図である。
【図7】追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の一例を示す図である。
【図8】追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の他の例を示す図である。
【図9】足場を配置した後に追加構造物の設計支援装置で行われる物量集計処理を示すフローチャートである。
【図10】物量集計結果の一例を示す図である。
【図11】従来の追加構造物の設計手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援装置の要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、追加構造物の設計支援装置1は、入力装置11(入力部)、表示装置12(表示部)、メモリ13、データ格納装置14(格納部)、及びCPU(中央処理装置)15(制御部)を備えており、予め作成された構造物データD1に基づいた構造物の三次元表示が可能であるとともに、その構造物に追加される追加構造物の設計を支援するものである。
【0016】
具体的に、追加構造物の設計支援装置1は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ、又はノート型若しくはブック型等の携帯性を有するコンピュータで実現され、工事現場、建設現場、建築現場等の各種現場において現場監督や職人によって使用され、現場監督や職人によって行われる追加構造物の設計を支援する。尚、本実施形態では、構造物がボイラ等のプラントであり、追加構造物が足場である場合を例に挙げて説明する。また、以下では追加構造物の設計支援装置1を使用する現場監督や職人をユーザと総称する。
【0017】
入力装置11は、ユーザによって操作され、CPU15に対してユーザの各種の指示を入力するためのものである。この入力装置11は、例えばキーボードやマウス等により実現される。表示装置12は、CPU15の制御の下で、構造物データD1に基づいた構造物、及びその構造物に追加される追加構造物(足場)の三次元表示を行う。また、表示装置12は、CPU15の制御の下で、追加構造物を設計するための各種メニューを表示するとともに、設計された追加構造物を実現するために必要となる資材の種類及び数等の各種情報も表示する。この表示装置12は、液晶表示装置、有機EL装置、CRT(Cathode Ray Tube)等により実現される。
【0018】
メモリ13は、CPU15の処理で用いられるデータを一時的に記憶するものであり、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリで実現される。データ格納装置14は、追加構造物の設計支援装置1で実行される各種プログラム、並びに構造物を表示するためのデータ及び追加構造物を設計するための各種データを格納するものであり、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等によって実現される。
【0019】
本実施形態では、上記の追加構造物の設計支援装置1で実行される各種プログラムとして、図1に示す通り、構造物表示処理プログラムP1及び足場設計支援プログラムP2がデータ格納装置14に格納される。構造物表示処理プログラムP1は、構造物データD1に応じた構造物を表示装置12に三次元表示するプログラム(所謂、ビューアプログラム)である。この構造物表示処理プログラムP1は、ユーザの入力装置11に対する操作に応じて、構造物の表示方向、表示位置、表示倍率等を変更する処理が可能である。
【0020】
足場設計支援プログラムP2は、構造物データD1に応じた構造物に対して追加される追加構造物の設計を支援するプログラムである。この足場設計支援プログラムP2は、構造物表示処理プログラムP1にアドオン又はプラグインとして組み込まれ、構造物表示処理プログラムP1と協働することによって、構造物表示処理プログラムP1に対して追加構造物の設計を支援する機能を提供する。
【0021】
具体的に、足場設計支援プログラムP2は、追加構造物の種類毎に予め用意された追加構造物の単位構造の三次元形状を示す形状データD11(図3参照)のうちからユーザの指示に応じたものをCPU15に読み込む処理、読み込んだ形状データD11に基づいた追加構造物をユーザの指示応じた状態に配置する処理、及びユーザの指示に応じて配置された追加構造物を構造物データD1(図1参照)に応じた構造物とともに表示装置12に三次元表示させる処理を実現する。また、構造物とともに表示された追加構造物の全て、又はユーザの指示によって選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を、後述する物量データD12(図3参照)を用いて集計する処理を実現する。
【0022】
また、本実施形態では、図1に示す通り、上記の構造物を表示するためのデータとして構造物データD1(第1形状データ)がデータ格納装置14に格納され、上記の追加構造物を設計するための各種データとして設定ファイルF1、仮設足場テンプレートT1、仮設足場外形データD2、及び物量集計データD3がデータ格納装置14に格納される。構造物データD1は、構造物(プラント)の三次元形状を示すデータであって、例えばプラントの設計者が三次元CADを用いて、強度計算を行いながら時間及び費用をかけて作成されたデータである。
【0023】
上記の設定ファイルF1は、追加構造物を設計する足場設計支援プログラムP2を動作させるための動作環境を規定する設定データが格納されたファイルである。具体的に、設定ファイルF1には、データ格納装置14内における仮設足場テンプレートT1や仮設足場外形データD2の格納場所を示す設定データ、物量集計データD3を格納すべき場所を示す設定データ等の各種設定データが格納されている。
【0024】
仮設足場テンプレートT1は、追加構造物としての足場の単位構造に関する各種データをまとめた雛形データであって、構造物に追加される足場の種類毎に用意されるものである。図2は、仮設足場テンプレートの種類を示す図である。図2に示す例において、仮設足場テンプレートT1は、使用頻度の高い単管足場、吊足場、及び枠組足場と、使用頻度の低いその他の足場とに分類されている。尚、その他の足場としては、ブラケット一側足場、楔緊結式足場、張出足場、吊棚足場、丸太足場等の足場がある。尚、図2に示す分類は一例であって、任意の分類が可能である。
【0025】
図3は、仮設足場テンプレートの内容を示す図である。図3に示す通り、仮設足場テンプレートT1は、形状データD11(第2形状データ)と物量データD12とからなる。形状データD11は、足場の単位構造の三次元形状を示すデータである。足場には構造物に求められるような精密な寸法や強度計算が必要ではないため、形状データD11は、上記の構造物データD1のような高精度なデータではなく、足場のおおよその三次元形状を示す簡便なデータで良い。但し、構造物データD1と同様に、形状データD11を高精度なデータとしても良い。
【0026】
物量データD12は、仮設足場テンプレートT1で特定される種類の足場の単位構造を実現するための必要となる資材の種類及び数等を示すデータである。図3に示す例では、足場の名前、重量、及び設置面積を示すデータ、並びに、必要となる資材を示すデータが物量データD12に含まれている。具体的に、図3に示す例では、物量データD12に、「2.5m×8枚板上_手すり左右」なる名前のデータ、「30.5kg」なる重量のデータ、及び「5.5m2」なる設置面積を示すデータが含まれる。尚、足場の名前は、「2.5mの鉄板が8枚必要であり、左右に手すりが設けられた足場」の意味で付けられている。
【0027】
加えて、図3に示す物量データD12には、必要となる資材を示すデータとして、2.5m板が「10枚」、2.5m単管が「9本」、1m単管が「6本」、「1m」の長さの吊りチェーンが「6本」なるデータが含まれる。尚、図3に示す例において、上記の「2.5m×8枚板上_手すり左右」なる名前は「2.5mの鉄板が8枚必要」である意味で付けられたものであるが、実際に必要となる2.5m板は「10枚」である。この違いは、2枚の2.5m板が、本来の用途以外につま先板(幅木)等として用いられることによるものである。
【0028】
仮設足場外形データD2は、足場の単位構造の外形形状を示すデータ(例えば、二次元データ)であり、仮設足場テンプレートT1の種類毎に対応して設けられるデータである。物量集計データD3は、ユーザによって設計された足場を実現するために必要な資材の種類及び数を集計したデータである。この物量集計データD3は、構造物データD1及び仮設足場テンプレートT1等とは異なり、追加構造物の設計を終えた後に、ユーザによって物量集計指示がなされることによって生成されるデータである。
【0029】
CPU15は、入力装置11から入力されるユーザの指示に応じてデータ格納装置14に格納された各種プログラムを読み込んで実行することにより、プログラムに応じた処理を実行する。具体的に、ユーザによって構造物表示処理プログラムP1の起動指示がなされた場合には、CPU15はデータ格納装置14に格納された構造物表示処理プログラムP1を読み込んで実行する。これにより、CPU15には構造物表示処理部16が実現される。また、CPU15は、構造物表示処理プログラムP1の実行に伴ってデータ格納装置14に格納された足場設計支援プログラムP2を読み込んで実行する。これにより、CPU15には足場設計支援部17が実現される。
【0030】
上記の構造物表示処理部16は、構造物データD1に応じた構造物及び足場設計支援部17で設計された追加構造物を表示装置12に三次元表示するものであり、ユーザの入力装置11に対する操作に応じて、構造物及び追加構造物の表示方向、表示位置、表示倍率等の変更が可能である。また、上記の足場設計支援部17は、構造物データD1に応じた構造物に対し、ユーザの指示に応じて追加される追加構造物の設計を支援する処理を行うものである。
【0031】
具体的に足場設計支援部17は、仮設足場テンプレートT1に含まれる形状データD11のうちからユーザの指示に応じたものを読み込む処理(読込手段)、読み込んだ形状データD11に基づいた追加構造物をユーザの指示応じた状態に配置する処理(配置手段)、及びユーザの指示に応じて配置された追加構造物を構造物データD1に応じた構造物とともに表示装置12に三次元表示させる処理(表示制御手段)を行う。また、構造物とともに表示された追加構造物の全て、又はユーザの指示によって選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を、仮設足場テンプレートT1に含まれる物量データD12を用いて集計する処理(集計手段)を行う。
【0032】
次に、上記構成における追加構造物の設計支援装置1の動作について説明する。ユーザが追加構造物の設計支援装置1の電源を投入し、入力装置11を操作して構造物表示処理プログラムP1の起動を指示すると、データ格納装置14に格納された構造物表示処理プログラムP1がCPU15に読み込まれて実行され、これによりCPU15には構造物表示処理部16が実現される。また、構造物表示処理プログラムP1の実行に伴ってデータ格納装置14に格納された足場設計支援プログラムP2がCPU15に読み込まれて実行され、これによりCPU15には足場設計支援部17が実現される。
【0033】
以上の起動処理が終了すると、図4に示す初期画面が表示装置12に表示される。図4は、追加構造物の設計支援装置の初期画面を示す図である。図4に示す通り、表示装置12には、初期画面として表示ウィンドウW1とメインメニューM1とが表示される。表示ウィンドウW1は、構造物データD1に基づいた構造物及びユーザによって設計された追加構造物が三次元表示されるウィンドウである。この表示ウィンドウW1は、構造物表示処理プログラムP1が起動されることによって表示されるウィンドウである。
【0034】
また、メインメニューM1は、ユーザによって行われる追加構造物の設計を支援するために用意されたメニューである。このメインメニューM1は、足場設計支援プログラムP2が起動されることによって表示されるウィンドウである。図4に示す通り、メインメニューM1は、追加構造物としての足場の配置を行う配置メニュー、足場の操作を行う操作メニュー、及び物量を集計する集計メニューに大別される。
【0035】
配置メニューとしては、足場を個別に配置する「足場配置」メニューm11と、指定領域に足場を一括配置する「一括配置」メニューm12とが用意されている。操作メニューとしては、一旦配置された足場の削除を行う「足場削除」メニューm21、足場の移動を行う「足場移動」メニューm22、足場の回転を行う「足場回転」メニューm23、足場の置換を行う「足場置換」メニューm24、及び足場のコピーを行う「足場コピー」メニューm25が用意されている。集計メニューとしては、配置した足場を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する「物量集計」メニューm31が用意されている。
【0036】
ユーザが入力装置11を操作して、これらメインメニューM1に表示された各メニューを押下すると、押下したメニューの機能が実行される。尚、図4では、理解を容易にするために、メインメニューM1の各メニューが文字表示されている例を図示しているが、機能を図案化したアイコン表示によってメインメニューM1の各メニューを表示しても良い。アイコン表示することにより、メインメニューM1に用意された各メニューの機能を直感的に理解できるとともに、メインメニューM1を小型化することができる。また、図4では、メインメニューM1と表示ウィンドウW1とが別々に表示されている例を図示しているが、メインメニューM1が表示ウィンドウW1に組み込まれていても良い。
【0037】
追加構造物としての足場の設計は、ユーザが入力装置11を操作して図4の初期画面に表示されたメインメニューM1に用意されたメニューを適宜選択し、選択したメニューに応じた機能を実行することにより行われる。具体的には、まず「足場配置」メニューm11又は「一括配置」メニューm12を選択して足場の配置を行い、必要であれば「足場削除」メニューm21〜「足場コピー」メニューm25を押下して配置した足場の修正等を行う。このような操作を繰り返して足場の設計が完了すると、「物量集計」メニューm31を押下して設計した足場を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する。以下、「足場配置」メニューm11及び「物量集計」メニューm31が押下された場合に行われる処理の詳細について順に説明する。
【0038】
ユーザが入力装置11を操作して、図4に示すメインメニューM1中の「足場配置」メニューm11を押下すると、図5に示す処理が行われる。図5は、足場を配置する際に追加構造物の設計支援装置で行われる処理を示すフローチャートである。ユーザの操作によって「足場配置」メニューm11が押下されると、足場設計支援部17は、図6に示す足場配置ウィンドウW2を表示装置12に表示し、この足場配置ウィンドウW2を用いて、配置すべき足場種類の選択(ステップS11)、選択された足場種類のうちの仮設足場テンプレートT1の選択(ステップS12)、足場高さの設定(ステップS13)、及び方向の設定(ステップS14)を順に行う。
【0039】
図6は、足場の配置を行う際に用いられる足場配置ウィンドウを示す図である。図6に示す通り、足場配置ウィンドウW2には、足場種類選択ボックスB1、仮設足場テンプレート選択ボックスB2、足場高さ設定ボックスB3、方向設定ボックスB4、及び足場外形図表示ボックスB5が設けられている。足場種類選択ボックスB1は、配置すべき足場の種類を選択するために用いられるボックスであり、例えば選択可能な足場種類として、図2に示す「単管足場」、「吊足場」、「枠組足場」、及び「その他」が用意されている。ユーザが入力装置11を操作して、足場種類選択ボックスB1に対する入力を行うと、足場設計支援部17によって足場種類が選択される(ステップS11)。尚、図6に示す例では、「吊足場」が選択されている。
【0040】
仮設足場テンプレート選択ボックスB2は、足場種類選択ボックスB1で選択された足場種類に分類される足場であって、細部が異なる足場についての仮設足場テンプレートT1の名前が一覧表示されるボックスである。図6に示す例では、「4m×2枚板上_手すり右.nwd」,「4m×2枚板上_手すり左.nwd」等の名前が表示されている。ユーザが入力装置11を操作して、仮設足場テンプレート選択ボックスB2に表示された足場の名前を1つ選択すると、足場設計支援部17によってデータ格納装置14に格納された仮設足場テンプレートT1の1つが選択される(ステップS12)。尚、図6に示す例では、「4m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートが選択されている。
【0041】
足場高さ設定ボックスB3は、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートで規定される足場を配置する高さ(エレべーション)を設定するボックスである。ユーザが入力装置11を操作して、足場の高さを示す数値を足場高さ設定ボックスB3に入力すると、足場設計支援部17によって足場の高さが設定される(ステップS13)。方向設定ボックスB4は、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートで規定される足場を配置する方向を設定するボックスである。ユーザが入力装置11を操作して、足場の方向を示す角度を足場方向設定ボックスB4に入力すると、足場設計支援部17によって足場の方向が設定される(ステップS14)。
【0042】
足場外形図表示ボックスB5は、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートで規定される足場の外形図が表示されるボックスである。つまり、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で仮設足場テンプレートの1つが選択されると、その選択された仮設足場テンプレートに対応した仮設足場外形データが、仮設足場外形データD2から読み出されて足場外形図表示ボックスB5に表示される。この足場外形図表示ボックスB5の表示を参照することにより、ユーザは設置しようとしている足場のおおよその形状や大きさを知ることができる。図6に示す例では、仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された「4m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートで特定される足場の外形図が足場外形図表示ボックスB5に表示されている。
【0043】
以上の操作が終了した後に、ユーザが入力装置11を操作して足場配置ウィンドウW2に設けられた「OK」ボタンB6を押下すると、足場設計支援部17は、以上の操作によって選択された足場を実際に配置する処理を行う(ステップS15)。具体的に、足場設計支援部17は、まずデータ格納装置14に格納された仮設足場テンプレートT1から、足場配置ウィンドウW2の仮設足場テンプレート選択ボックスB2で選択された仮設足場テンプレートを読み込む(読込手段)。
【0044】
次いで、足場設計支援部17は、読み込んだ仮設足場テンプレートで特定される足場を、足場高さ設定ボックスB3に入力された高さに配置するとともに、方向設定ボックスB4に入力された角度に応じた方向に配置する(配置手段)。以上の配置が完了すると、足場設計支援部17は、構造物表示処理部16を制御して、配置が完了した足場を、データ格納装置14に格納された構造物データD1に応じた構造物とともに表示装置12に三次元表示させる(表示制御手段)。これにより、追加構造物としての足場が追加された状態で構造物データD1に応じた構造物が表示装置12に三次元表示される。
【0045】
ユーザが入力装置11を操作して図4に示すメインメニューM1中の「足場配置」メニューm11を押下し、図5に示す処理を繰り返し行うことにより、複数の足場を配置することができる。尚、足場を配置した後に、必要に応じてユーザがメインメニューM1中の「足場削除」メニューm21〜「足場コピー」メニューm25を押下することにより、配置した足場の削除や再配置等を行うことが可能である。
【0046】
図7は、追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の一例を示す図である。図7に示す通り、表示ウィンドウW1には、構造物データD1に応じた構造物の一部をなす支持柱21や梁22とともに、ユーザの操作によって配置された足場23(枠組足場)が三次元表示される。ここで、構造物及び足場の表示は、足場設計支援部17の制御の下で構造物表示処理部16により行われる。このため、構造物表示処理部16の機能を用いて構造物の表示方向、表示位置、表示倍率等を変更すれば、足場23の表示方向、表示位置、表示倍率等も同様に変更される。
【0047】
ユーザが入力装置11を操作して図4に示すメインメニューM1中の「足場配置」メニューm11を繰り返し押下することによって、足場を1つ1つ組み上げることは可能であるが、足場の数が多い場合には極めて煩雑な操作が必要になる。このような場合には、メインメニューM1中の「一括配置」メニューm12を使用する。この「一括配置」メニューm12を押下すると、図6に示す足場配置ウィンドウW2に対して足場を配置する領域を指定する入力ボックスが追加された足場配置ウィンドウが表示される。
【0048】
そして、この足場配置ウィンドウにて、ユーザが足場を配置する領域を指定し、仮設足場テンプレートT1を選択する操作を行うと、選択された仮設足場テンプレートで特定される足場が、指定された領域に自動的に配置される。具体的には、指定された領域の平面視における面積が足場の平面視における面積で除算されて、その領域に重ねないで配置することができる足場の数が求められ、この数の分だけ自動的に足場が配置される。このように、一度の操作で複数の足場を配置することができるため、ユーザの操作回数を低減することができる。
【0049】
図8は、追加構造物の設計支援装置を用いて設計された足場の他の例を示す図である。図8に示す例では、構造物の一部をなすボイラー31の内部に同種の足場が配置されている。このような多数の足場を配置する場合には、メインメニューM1中の「一括配置」メニューm12を用い、足場を配置する領域として構造物の一部であるボイラー31の内部を指定すれば、少ない操作で容易に多数の足場を配置することができる。
【0050】
以上の足場の配置が終了した後に、ユーザが入力装置11を操作して図4に示すメインメニューM1中の「物量集計」メニューm31を押下すると、図9に示す処理が行われる。図9は、足場を配置した後に追加構造物の設計支援装置で行われる物量集計処理を示すフローチャートである。図9に示す処理が開始されると、足場設計支援部17は、ユーザの指示に応じて、図7,図8等に示す表示ウィンドウW1に三次元表示されている足場を選択する処理を行う(ステップS22)。
【0051】
足場の選択が終了すると、足場設計支援部17は、選択された足場の全てについて、仮設足場テンプレートT1に含まれる物量データD12をデータ格納装置14から読み出してその集計を行い(ステップS22:集計手段)、集計結果を表示装置12に表示する(ステップS23)。具体的に、足場設計支援部17は、仮設足場テンプレートの種類毎に、物量データD12を積算し、その積算結果を表示する。
【0052】
図10は、物量集計結果の一例を示す図である。図10に示す例では、「2.5m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートで特定される3つの足場を実現するために必要となる資材と、「4m×8枚板上_手すり左右.nwd」なる名前の仮設足場テンプレートで特定される1つの足場を実現するために必要となる資材と、それらの合計とが積算結果として求められる。このように、足場を配置する操作を行った後に、「物量集計」メニューm31を押下するだけで、足場を実現するために必要な資材が一覧表示されるため、足場を設置する経験が浅いユーザであっても、精度良く足場の設置に必要となるコストを試算することができる。
【0053】
以上の通り、本実施形態では、いわば積み木を積むように、極めて簡単な操作で足場を設計することができる。このため、足場の設計に熟練してはいるものの三次元CADの操作に不慣れな現場監督や職人であっても、追加構造物の設計支援装置1を用いれば、簡便且つ迅速に足場を設計することができる。ここで、追加構造物の設計支援装置1を用いて設計された足場は構造物とともに三次元表示され、様々な方向から設置状況を検討できるため、現場監督が足場を組む職人に対して的確な指示を行うことができ、現場の状況に応じた適切な追加構造物を設計することが可能である。また、配置された足場を実現するために必要となる資材が自動的に集計されるため、足場の設置に必要となる資材の予測精度を高めることもできる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態による追加構造物の設計支援プログラム及び設計支援装置について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、構造物データD1や仮設足場テンプレートT1等がデータ格納装置14に格納されている形態について説明した。しかしながら、これらのデータは、必ずしもデータ格納装置14に格納されている必要はない。例えば、追加構造物の設計支援装置1が無線等によってネットワーク(例えば、インターネット等)に接続可能である場合には、これらのデータをネットワークに接続されたサーバ装置に格納しておき、必要に応じてサーバ装置から取得するようにしても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 追加構造物の設計支援装置
11 入力装置
12 表示装置
14 データ格納装置
15 CPU
D1 構造物データ
D11 形状データ
D12 物量データ
P2 足場設計支援プログラム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の三次元形状を示す第1形状データに基づいて前記構造物の三次元表示が可能なコンピュータを、前記構造物に追加される追加構造物の設計を支援する手段として機能させる追加構造物の設計支援プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データを外部からの指示に応じて読み込む読込手段と、
前記読込手段で読み込まれた前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を外部からの指示に応じた状態に配置する配置手段と、
前記配置手段によって配置された前記追加構造物の単位構造を前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに三次元表示させる表示制御手段と
して機能させることを特徴とする追加構造物の設計支援プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データを用いて、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する集計手段として機能させることを特徴とする請求項1記載の追加構造物の設計支援プログラム。
【請求項3】
前記集計手段は、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物のうち、外部からの指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴とする請求項2記載の追加構造物の設計支援プログラム。
【請求項4】
構造物に追加される追加構造物の設計を支援する追加構造物の設計支援装置であって、
前記構造物の三次元形状を示す第1形状データと、前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データとを格納する格納部と、
外部からの指示を入力する入力部と、
前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造の三次元表示が可能な表示部と、
前記入力部に入力された指示に応じた第2形状データを前記格納部から読み出し、読み出した第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を前記入力部に入力された指示に基づいた状態に配置し、配置された前記追加構造物の単位構造を、前記構造物とともに三次元表示させる制御を行う制御部と
を備えることを特徴とする追加構造物の設計支援装置。
【請求項5】
前記格納部は、前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データを前記第2形状データに対応させて格納しており、
前記制御部は、前記格納部に格納された前記物量データを用いて、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する
ことを特徴とする請求項4記載の追加構造物の設計支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物のうち、前記入力部から入力される指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴とする請求項5記載の追加構造物の設計支援装置。
【請求項1】
構造物の三次元形状を示す第1形状データに基づいて前記構造物の三次元表示が可能なコンピュータを、前記構造物に追加される追加構造物の設計を支援する手段として機能させる追加構造物の設計支援プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データを外部からの指示に応じて読み込む読込手段と、
前記読込手段で読み込まれた前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を外部からの指示に応じた状態に配置する配置手段と、
前記配置手段によって配置された前記追加構造物の単位構造を前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに三次元表示させる表示制御手段と
して機能させることを特徴とする追加構造物の設計支援プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータを、
前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データを用いて、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する集計手段として機能させることを特徴とする請求項1記載の追加構造物の設計支援プログラム。
【請求項3】
前記集計手段は、前記構造物とともに三次元表示された前記追加構造物のうち、外部からの指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴とする請求項2記載の追加構造物の設計支援プログラム。
【請求項4】
構造物に追加される追加構造物の設計を支援する追加構造物の設計支援装置であって、
前記構造物の三次元形状を示す第1形状データと、前記追加構造物の単位構造の三次元形状を示すデータであって前記追加構造物の種類毎に予め用意された第2形状データとを格納する格納部と、
外部からの指示を入力する入力部と、
前記第1形状データに基づいた前記構造物とともに前記第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造の三次元表示が可能な表示部と、
前記入力部に入力された指示に応じた第2形状データを前記格納部から読み出し、読み出した第2形状データに基づいた前記追加構造物の単位構造を前記入力部に入力された指示に基づいた状態に配置し、配置された前記追加構造物の単位構造を、前記構造物とともに三次元表示させる制御を行う制御部と
を備えることを特徴とする追加構造物の設計支援装置。
【請求項5】
前記格納部は、前記追加構造物の単位構造を実現するために必要な資材の種類及び数を示す物量データを前記第2形状データに対応させて格納しており、
前記制御部は、前記格納部に格納された前記物量データを用いて、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計する
ことを特徴とする請求項4記載の追加構造物の設計支援装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記構造物とともに前記表示部に三次元表示された前記追加構造物のうち、前記入力部から入力される指示に基づいて選択された追加構造物を実現するために必要な資材の種類及び数を集計することを特徴とする請求項5記載の追加構造物の設計支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−221618(P2011−221618A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87250(P2010−87250)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(503223223)株式会社IHIエスキューブ (27)
【出願人】(592009281)IHIプラント建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(503223223)株式会社IHIエスキューブ (27)
【出願人】(592009281)IHIプラント建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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