説明

追尾受信装置

【課題】 可変レートの変調波に対応して追尾受信を行うことができる追尾受信装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 周波数変換器5により中間周波数の受信信号をベースバンド信号に周波数変換し、狭帯域特性の帯域固定フィルタ6により濾波する。狭帯域受信レベル算出回路11は、帯域固定フィルタ6による濾波後の信号に基づき、狭帯域受信レベルを算出する。また、受信レベル推定回路12は、与えられたシンボルレートに基づいて、狭帯域受信レベル算出回路11により算出した狭帯域受信レベルから、もとの変調波受信レベルを推定する。算出した狭帯域受信レベル、又は推定した変調波受信レベルのいずれかを選択してアンテナ制御部4へ出力し追尾制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波の到来方向を追尾し受信する追尾受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムにおいて所望の変調波を受信する場合、まず受信変調波にアンテナを追尾させることが必要であり、通常、追尾受信装置を用いて所望の周波数の受信レベルを検出しアンテナを追尾させる。例えば、特許文献1には従来の追尾受信装置の一構成例が示されている。特許文献1に示された従来の追尾受信装置は、到来方向検出アンテナで受信した電波をダウンコンバータにより低周波変換し、同期検波器およびディジタル復調器へ入力する。同期検波器では、左右の到来方向検出アンテナで受信した到来電波の強さを検出し角度誤差電圧が出力され、ディジタル復調器では、左右のアンテナに対応した誤り訂正前のビットエラーレートを算出し、角度誤差電圧が出力されるものであり、この2つの角度誤差電圧に基づいて追尾受信が行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−66129
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来技術による追尾受信では、ディジタル復調器を用いて受信する必要があり、ディジタル復調器において受信変調波の帯域に合わせたフィルタを用いて受信し、さらにはキャリア再生、クロック再生といった機能が必要となり、回路規模が増大してしまうという問題点があった。さらに、変調波のシンボルレートが可変レートであるときには、波形整形の観点から受信フィルタの帯域を可変させて復調し、受信レベルを推測する必要があり、アナログフィルタを用いる場合、別々の特性をもつハードウェアを実装しなければならず、また、ディジタルフィルタを用いる場合、レートによりオーバサンプリング数の可変機能やフィルタ係数の変更機能を持たせなければならず、さらに回路規模の増大を招くという問題点もあった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、可変レートの変調波に対応して追尾受信を行うことができる追尾受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る追尾受信装置は、受信した変調波を固定の狭帯域特性により濾波する帯域固定フィルタと、この狭帯域固定フィルタにより濾波された信号により狭帯域受信レベルを算出する狭帯域受信レベル算出回路とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明に係る追尾受信装置は、請求項1の発明に係る追尾受信装置において、さらに、与えられたシンボルレートに基づいて上記狭帯域受信レベル算出回路により算出した狭帯域受信レベルから変調波受信レベルを推定する受信レベル推定回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1乃び請求項2に記載の発明によれば、受信した変調波を固定の狭帯域特性を有するフィルタにより濾波した上で、その狭帯域での受信レベルの算出又はシンボルレートに基づく変調波受信レベルの推定を行うので、可変レートの変調波に対しても、回路規模の増大を抑制して、受信信号レベルを検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1
【0010】
この発明の実施の形態1に係る追尾受信装置について図1乃至図3を用いて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係る追尾受信装置を含む端末装置の構成図である。図1において、1はアンテナ、2は受信信号を低雑音増幅し、高周波から中間周波数へ周波数変換する受信機(以下、「LNC2」と記載する)、3は追尾受信装置、4はアンテナを駆動するアンテナ制御部である。追尾受信装置3において、5は中間周波数の受信信号をベースバンド受信信号に周波数変換する周波数変換器であり、6は狭帯域特性の帯域固定フィルタ、7は帯域固定フィルタ6により濾波された受信信号を設定される利得制御量により増幅又は減衰させる可変利得器、8は可変利得器7の出力信号をAD変換するAD変換器、9はAD変換器8から入力された受信信号のレベルを平均化処理し、基準受信レベルから平均化処理後の受信信号レベルを減算して利得制御量として出力する自動利得制御器である。10は受信レベルを検出する受信レベル検出部であり、この受信レベル検出部10により検出された受信レベルはアンテナ制御部4へ出力される。受信レベル検出部10において、11は基準受信レベルから自動利得制御器9が出力する利得制御量を減算して狭帯域受信レベルを算出する狭帯域受信レベル算出回路であり、12は外部から入力されるシンボルレートに基づき、狭帯域受信レベル算出回路11により算出した狭帯域受信レベルから受信波に含まれていた変調波の受信レベル(変調波受信レベル)を推定する受信レベル推定回路であり、13は狭帯域受信レベル算出回路11が出力する狭帯域受信レベル又は受信レベル推定回路12が出力する変調波受信レベルのうちいずれかを選択してアンテナ制御部14へ出力する選択回路である。
【0011】
次に追尾受信装置3による信号レベルの算出及び推定の動作について説明する。アンテナ1により受信した受信信号は、LNC2により低雑音増幅され、高周波から中間周波数へ周波数変換されて、追尾受信装置3の周波数変換器5に入力される。図2は中間周波数帯の可変レートの変調波を示す模式図であり、図2(a)は変調波の帯域が狭いときを、図2(b)は変調波の帯域が広いときをそれぞれ表わしており、変調波の周波数特性がルートコサインロールオフ特性であるときには、帯域幅はシンボルレートとなる。周波数変換器5は、中間周波数帯の受信信号をさらに低周波変換してベースバンド信号を帯域固定フィルタ6へ出力する。図3は帯域固定フィルタ6におけるフィルタリングを示す模式図であり、図3(a)は変調波の帯域が狭いときを、図3(b)は変調波の帯域が広いときをそれぞれ表わしている。帯域固定フィルタ6のフィルタ特性は固定の狭帯域特性としており、フィルタリング後の出力波形は、図3に示す実線のように、もとの変調波の帯域に依存せず同一帯域幅のスペクトラムで可変利得器7へ出力される。帯域固定フィルタ6の通過帯域幅は、通信システムにおいて採用される可変レートの帯域幅うち、最も狭い帯域幅と同程度かそれよりも狭い帯域幅に設定する。可変利得器7は、自動利得制御器9から設定される利得制御量に基づき、帯域固定フィルタ6により濾波された受信信号を増幅又は減衰してAD変換器8へ出力し、AD変換器8は入力された信号をAD変換(アナログデジタル変換)して自動利得制御器9へ出力する。自動利得制御器9はAD変換器8から入力された受信信号のレベルを平均化処理し、基準受信レベルから平均化処理後の受信信号レベルを減算して利得制御量として可変利得器7及び狭帯域受信レベル算出回路11へ出力する。
【0012】
狭帯域受信レベル算出回路11は基準受信レベルから自動利得制御器9が出力する利得制御量を減算することにより、帯域固定フィルタ6の帯域あたりの受信レベルである狭帯域受信レベル(dB値)を算出し、受信レベル推定回路12及び選択回路13へ出力する。受信レベル推定回路12は外部から情報として与えられたシンボルレートに基づき、狭帯域受信レベル算出回路11により算出した狭帯域受信レベルから、帯域固定フィルタ6により帯域制限をする前の変調波の受信レベル(変調波受信レベル)を推定する。可変レートの変調波のスペクトラム帯域はシンボルレートに一致するため、変調波受信レベルPは、シンボルレートをR、帯域固定フィルタ6の帯域をB、狭帯域受信レベルをPsとすれば、P=10×log10(R−B)+Psにより算出することができる。選択回路13は狭帯域受信レベル算出回路11により算出した狭帯域受信レベルPsまたは受信レベル推定回路12により推定した変調波受信レベルPのうちいずれかを選択してアンテナ制御回路4へ出力し、アンテナ制御回路4は受信レベルが増加するようにアンテナの指向方向を駆動制御する。
【0013】
以上のように、追尾受信装置3においてベースバンド信号を狭帯域の固定帯域フィルタにより濾波した上で、その狭帯域での受信レベルの算出又はシンボルレートに基づく変調波受信レベルの推定を行うので、可変レートの変調波に対しても受信信号レベルを検出することができ、フィルタを固定帯域としたことにより追尾受信装置の回路規模の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施の形態1に係る追尾受信装置を含む端末装置の構成図である。
【図2】中間周波数帯の可変レートの変調波を示す模式図である。
【図3】帯域固定フィルタ6におけるフィルタリングを示す模式図である。
【符号の説明】
【0015】
3 追尾受信装置
6 帯域固定フィルタ
11 狭帯域受信レベル算出回路
12 受信レベル推定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した変調波を固定の狭帯域特性により濾波する帯域固定フィルタと、この狭帯域固定フィルタにより濾波された信号により狭帯域受信レベルを算出する狭帯域受信レベル算出回路とを備えたことを特徴とする追尾受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の追尾受信装置において、さらに、与えられたシンボルレートに基づいて上記狭帯域受信レベル算出回路により算出した狭帯域受信レベルから変調波受信レベルを推定する受信レベル推定回路とを備えたことを特徴とする追尾受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−204566(P2009−204566A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49561(P2008−49561)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】