説明

送信アンテナを介してディジタル信号を伝送するトランスポンダシステム用の送信回路

本発明は、例えば自動車において鍵なし立入り監視システムのために使用されるように、所定の搬送周波数を持つ電波用の送信アンテナを介してディジタル信号を伝送するトランスポンダシステム用の送信回路に関する。
動作電圧の低い範囲にわたって送信回路を少ない損失で動作させるため、所定のクロック周波数のパルス幅変調された信号を発生するPWM信号発生器が設けられ、PWM信号のクロック周波数がディジタル信号の周波数より大きく、なるべくその倍数であり、ディジタル信号の伝送のため、ディジタル信号がPWM信号に重畳される。PWM信号はスイッチング動作で半導体スイッチを制御し、送信アンテナの前に帯域フィルタが接続されている。
PWM信号のパルス−休止比を合わせかつ送信電流を目標値に設定するためなるべく制御回路が設けられ、ディジタル信号の伝送の前に、所定のテスト期間中PWM信号のテスト列が送信され、送信アンテナを通る電流が検出され、電流がほぼ目標値に一致するようにPWM信号のパルス−休止比が制御され、続いて所定の送信期間中ディジタル信号が送信され、パルス−休止比が一定に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のトランスポンダシステム用の送信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポンダシステムは、ディジタル信号例えば自動車への立入り監視用確認符号又は対比可能なデータの伝送に使用される。データ伝送のため、所定の搬送周波数を持つ電波が使用され、必要な到達距離は実際に小さく、送信回路は、大量使用のため費用の理由から非常に安価でなければならない。更に送信出力、帯域幅及び高調波減衰に関する適当な負担の遵守は、当局の無線認可のために必要である。
【0003】
従ってトランスポンダシステムの送信アンテナを励振するため、一般に半導体トランジスタが限定された立上がり辺を持つA級動作で、従ってスイッチング動作でなく使用された。なぜならば、スイッチング動作は著しい高調波妨害をひき起こすからである。更に今まで動作電圧を比較的一定に保持せねばならず、特に将来車両製造者は一部異なる車載電源電圧を利用することになるので、この一定保持は特に自動車での利用において問題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、広範囲に使用可能であるにもかかわらず安価で認可の条件に応じている送信回路を紹介することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1の特徴によって解決される。有利な展開は従属請求項からわかる。
【0006】
こうして半導体スイッチはスイッチング動作において送信アンテナを励振するために使用され、PWM動作でパルス幅変調されて開閉され、それにより回路は従来のトランスポンダ用回路に対して著しく少ない損失出力を持ち、他方比較的大きい電圧範囲にわたって使用可能である。パルス−休止比は送信アンテナを通る電流従って送信出力を決定する。高調波妨害を除去するため、送信アンテナの前に帯域フィルタが接続される。
【0007】
送信アンテナを通る電流が検出されて、目標値と比較され、この電流が目標値と一致するように、パルス−休止比が制御される。自動車に使用する場合防止されないような供給電圧の変動及び温度の影響も、それにより補償される。
【0008】
しかし重畳されたディジタル信号の送信中に送信アンテナを通る電流が変動するので、送信期間中制御を中止し、パルス−休止比を一定に保つことが特に有利である。従って送信前に所定のテスト期間中PWM信号のテスト列が動作されるので、制御回路が調節可能である。
【0009】
ディジタル信号の伝送は所定の送信期間内に行われ、この期間の間にそれぞれ1つのテスト列が送信され、制御回路が再制御される。
【0010】
PWM信号発生器におけるパルス−休止比のほかに、制御自体も送信期間中設定された値に保たれ、電流の検出とは分離され、従って制御回路内でも設定された値が送信期間中保たれ、それにより送信期間及びテスト列の動作及び制御の終わりに所定値として利用可能である。それにより立上がり時間が著しく減少される。
【0011】
動作開始の再にもこの立上がりを短くするため、制御回路はその場合にもなるべく所定値に設定される。
【0012】
本発明が実施例及び図により以下に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、ディジタル信号、ここでは自動車への立入り監視用確認符号を伝送するトランスポンダシステムの送信回路を機能回路図で示している。
【0014】
エネルギを節約する簡単な駆動のために、PWM回路6からプッシュプル回路3へのPWM駆動信号が発生される。しかし妨害高調波なしの送信信号を発生するため、アンテナ2のために前置フィルタ1が使用される。この二重回路フィルタにより、第1の回路1(位置F)において第3高調波が45dBだけ減衰される。こうして制御装置から送信アンテナへの接続部7が不必要な高調波を負荷されない。
【0015】
第2の回路2はインダクタンスLAntと容量CAntから成ってぃる。この直列共振回路は、ここでは例えば共振周波数f0=125kHgに合わされている。LAntは例えばフェライト棒から成り、送信電波を放射する。
【0016】
注意すべきことは、理論的結果も実際の結果も65dBにわたって送信アンテナ回路により第3高調波(電流及び電圧)の減衰を生じることである。従って電波認可に必要なすべての規定が遵守される。
【0017】
二重帯域フィルタは、L1,C1を持つ前置回路1と、LAnt,C2を持つ第2のフィルタ回路2から成っている。複合体LAnt−C2は、例えば5〜7.5mの長さを持つアンテナ供給導線7を介して、制御装置に接続されている。この二重帯域フィルタは、測定点Mにおいて、CMOSトランジスタT1及びT2を介して方形信号で駆動される。トランジスタT1及びT2はスイッチとして使用され、レベル変換器3を介して制御される。
【0018】
測定点Gには、直列抵抗R_IAntにかかるAC電圧が生じる。この電圧は、送信アンテナ(LAnt)を経て流れる電流の表現である。同期整流器を介してこの電圧が波高直流値として整流される。直流電圧は測定点Jに存在し、制御フィルタへ達する。
【0019】
送信アンテナ(LAnt)における電流の制御動作は次の通りである。
【0020】
時間軸発生器は、周期的な125kHz方形ディジタル信号(信号B)を発生する。この信号Bの正の辺を介して傾斜辺(信号C)が形成されて、比較器の反転入力端へ供給される。この比較器の非反転入力端は、制御フィルタから、LAnt電流の振幅に関係する電圧を受ける。
【0021】
アンテナ電流の目標値又は電波強度(VA)は、測定点Lを介して規定されている。演算増幅器は制御フィルタとして役立つ。アンテナ電流が増大するものと仮定すると、測定点Gにおける交流電圧も上昇する。従って測定点Jの直流電圧も比例して大きくなる。それにより演算増幅器OPV2の反転入力端は、非反転入力端に電圧目標値Lより正の値をとる。
【0022】
この電圧差はR1及びC4を介して積分される。従って測定点Kにおける制御フィルタの出力電圧が低下する。測定点Kの電圧はランプ比較器の非反転入力端へ達し、測定点Cのランプレベルは低下する。従って測定点Dにおいて、繰返し周期(8μs=125kHz)に対するパルス幅比は狭い。
【0023】
それにより点Eは、レベル変換器3及びスイッチT1,T2を介して同じ電圧値を受取る。正のパルスは幅狭くなっているので、二重PI帯域フィルタにおけるエネルギは少なくなっている。その結果測定点Gnの電圧(送信アンテナによる電流の表現)は小さくなっている。上述したように、測定点Jの直流電圧も減少する。実際値(IW)と目標値(SW)との差が小さくなるので、測定点K又は測定点Dを介して、正しい値への制御が行われる。
【0024】
送信アンテナを通る電流の精度又は電波強度は、最終的にOPV1及びOPV2のオフセット及び直流電圧温度係数の精度及び絶対目標値精度に関係している。
【0025】
制御装置は、アンテナ電流又は約0.5%の電波強度の精度を可能にする。
【0026】
次に図2による回路装置により、制御フィルタを説明する。
【0027】
波高値整流器(ダイオード)を介して、帯域フィルタを通る電流が求められる。得られる電圧は送信アンテナ電流に比例し、正である。この電圧は、T545及びR591を通って積分フィルタとして配線されている演算増幅器21の反転入力端に達する。
【0028】
フィルタ(又は送信アンテナ)を通る電流が大きいほど、積分回路21の出力端の電圧が多く低下する。従ってC526がそれに応じて充電される。「U Korektur」と称されるこの電圧は、PWMへの入力である。波高値整流器を介して得られる情報飛起しが大きいほど、PWMの出力端におけるパルス幅は狭くなる。
【0029】
図3によるタイミング図により、制御の経過を説明する。
【0030】
新出発の際又は特定の送信時間後不定の動作状態において、実際値U_korrekturができるだけ速く指令量に設定されるようにするため、段階P1中に積分フィルタ(図2の21)が粗い値U0(図2参照)に前設定される。これはLF_FILT_SETUP_UPO=LOWまで、信号LF_DC_FILT_VAL_UPOにより行なわれる。
【0031】
前設定の打切り及びPWMの動作のため、信号LF_MODULATION_UPO及びLF_FILT_SEYUP_UPO=HIGHによる開放後、トランジスタT545(図2参照)が導通せしめられ(FILT_OUT_VAL_HLD_UPO=LOW)、即ち段階P2における制御動作が上述したように始まる。
【0032】
こうして段階2.1に搬送波信号が変調されずに送信され(PWM out),アンテナを通る電流(I_Antenne)が検出され、U_Korrekturの変動により認められるように、再制御される。I_Antenneの変動は、図3には殆ど認められないが、実際には存在する。
【0033】
このU_Korrekturの所定の期間中に一般に正しい値への設定が行われるので、T545は高抵抗になる。それによりU_Korrekturはその前に設定された値を維持する。なぜならば、電流がR591を通ってもOPVの入力抵抗を通っても流れない時、C526にその電荷を保持するからである。
【0034】
続く送信段階3.1において、スイッチT545が遮断され(図3において信号FILT_OUT_VAL_HLD_UPO=HIGH)、従ってデータ伝送サイクルが終了するまで、PWM比が保持される。
【0035】
この時点にデータビットを、搬送波の100%変調を介して伝送することができる。搬

6)ので、以前の手段及びデータ伝送サイクルの適当に設定される期間によって、U_Korrektur従って搬送波振幅の変動が起こるのが回避される。
【0036】
データ伝送サイクルの所定の期間P3後、制御回路が再び使用可能にされ、従って新しいテスト段階P2が開始され、即ちスイッチT545が閉じられ、所定の期間変調されない搬送波信号が送信され、送信電流I_Antenneが目標値に制御され、それから再び次の送信段階P3.2が続く。
【0037】
前置フィルタ及び送信アンテナの動作のシミュレーションにより前置フィルタパラメータを決定するために、更にここに選ばれた125kHzの搬送周波数用の回路が、図4に示すようにRLC並列回路に変形された。等価回路素子の大きさは、そこに示されている式に従って出力値から得られる。
【0038】
動作電圧の広い範囲にわたって送信回路を少ない損失で動作させるため、所定のクロック周波数のパルス幅変調される信号を発生するためのPWM信号発生器が設けられ、PWM(基本)信号のクロック周波数は大きく、なるべくディジタル信号の周波数の倍数である。ディジタル信号を伝送するため、ディジタル信号がPWM信号に重畳され、即ちPWM基本信号上で適当な低周波振幅変調が行われる。PWM信号はスイッチング動作で半導体スイッチを制御し、送信アンテナの前に帯域フィルタが接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】 送信回路の動作回路図を示す。
【図2】 制御の動作回路図を示す。
【図3】 PWM制御のタイミング図を示す。
【図4】 前置フィルタ及び送信アンテナをシミュレーションするための等価回路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送周波数を持つ電波用の送信アンテナ(2)を介してディジタル信号を伝送するトランスポンダシステム用の送信回路において、
a)所定の搬送周波数のパルス変調された信号を発生するPWM信号発生器(6)が設けられ、ディジタル信号を伝送するため、ディジタル信号をPWM信号に重畳され、
b)こうして生じる信号が、レベル変換器(3)を介して、2つの半導体スイッチ(T1,T2)をプッシュプル動作範囲において駆動し、一方の半導体スイッチ(T1)が供給電圧に接続され、他方の半導体スイッチ(T2)が接地電位に接続され、両方の半導体スイッチ(T1,T2)のそれぞれ他方の端子が帯域予備フィルタ(1)に接続され、
c)帯域予備フィルタ(1)の出力端に送信アンテナ(2)が接続されている
ことを特徴とする、送信回路。
【請求項2】
a)送信アンテナ(2)を通る電流(I_Ant)用の制御回路が設けられ、
b)送信アンテナを通る電流(R_I_Ant)が検出され、比較器において目標値(I)と比較され、
c)偏差(J)があると、PWM信号のパルス−休止比(D)をPWM信号発生器に合わせる制御信号(K)を制御回路が発生する
ことを特徴とする、請求項1に記載の送信回路。
【請求項3】
a)ディジタル信号の伝送前に、所定のテスト期間(P2)中に、PWM信号のテスト列が送信され、その際送信アンテナを通る電流が検出され、この電流が目標値にほぼ一致するように、PWMのパルス−休止比が制御され、
b)続いて所定の送信期間(P3)中に、ディジタル信号が送信され、その際パルス−休止比が一定に保たれる
ことを特徴とする、請求項2に記載の送信回路。
【請求項4】
電流が波高値整流回路により検出されて、閾値比較器を持つ積分フィルタ(21)に供給され、この閾値比較器の出力信号がPWM信号発生器のパルス−休止比を制御することを特徴とする、請求項1に記載の送信回路。
【請求項5】
波高値整流回路と積分フィルタとの間に制御可能なスイッチ手段(T545)が設けられ、送信期間中にこれが開かれ、その際最後に設定される値がほぼ保たれることを特徴とする、請求項1に記載の送信回路。
【請求項6】
閾値比較器を持つ積分フィルタ(21)が、出力端から反転入力端への帰還路中にあるコンデンサ(C526)及び抵抗(R592)を持つ演算増幅器を持ち、積分フィルタの時定数が送信期間より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の送信回路。
【請求項7】
始動(P1)の際積分フィルタが直ちに所定の値に予備設定され、続いてテスト列(P2)の送信が行われることを特徴とする。請求項1に記載の送信回路。
【請求項8】
自動車にある中央装置と携帯用確認送信器との間で無線データ伝送するトランスポンダのため、先行する請求項の1つに記載の送信回路の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−536880(P2007−536880A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513663(P2007−513663)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/DE2005/000680
【国際公開番号】WO2005/111911
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(503355292)コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (79)
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D−90411 Nuernberg, Germany
【Fターム(参考)】