説明

送信ダイバーシチ方法、移動局、基地局および無線通信システム

【課題】簡易な構成により実現可能な送信ダイバーシチ方法を得ること。
【解決手段】本発明は、複数の送信アンテナ11−1〜11−Nから信号を送信する基地局10と、基地局10が送信する信号を受信する移動局12、による送信ダイバーシチ方法であって、基地局10が、既知信号を含む送信データに送信アンテナ毎に異なる周波数オフセットを付加することにより生成した信号を送信し、移動局12が、受信信号に含まれる既知信号に基づいて周波数オフセットを推定し、その推定結果に関する周波数オフセット情報を送信データに含めて送信し、基地局10が、受信データに含まれる周波数オフセット情報に基づいて以降の送信に使用する送信アンテナを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ毎に異なる周波数オフセットを付加する送信ダイバーシチ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1では、一定の受信品質を得る送信ダイバーシチ方法が開示されている。具体的には、送信ダイバーシチ装置の基地局が、アンテナごとに異なるパイロットチャネル信号を送信し、移動局が、アンテナごと(パイロットチャネル信号ごと)にRAKE受信して受信電力を算出している。移動局では、算出した受信電力と事前に設定したしきい値を比較してアンテナごとに受信品質を判定し、この判定結果を基地局へ送信する。基地局では、受信した移動局からの判定結果に基づいて送信に使用するアンテナを選択している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−124854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、無線アクセス方式としてCDMA(Code Division Multiple Access)を採用し、移動局においてアンテナごとにRAKE合成して受信電力を算出しているので、受信品質判定の処理量が大きくなる。そのため、簡易な構成にできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成による送信ダイバーシチ方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の送信アンテナから信号を送信する送信装置と、当該送信装置が送信する信号を受信する受信装置、による送信ダイバーシチ方法であって、送信装置が、既知信号を含む送信データに送信アンテナ毎に異なる周波数オフセットを付加することにより生成した信号を送信する既知信号送信ステップと、受信装置が、受信信号に含まれる前記既知信号に基づいて周波数オフセットを推定し、その推定結果に関する周波数オフセット情報を送信データに含めて送信する周波数オフセット情報送信ステップと、送信装置が、受信データに含まれる周波数オフセット情報に基づいて以降の送信に使用する送信アンテナを決定する送信アンテナ決定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、簡易な構成により送信ダイバーシチを実現することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明にかかる送信ダイバーシチ方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる送信ダイバーシチ方法を実現可能な無線通信システムの構成例を示す図である。この通信システムは、基地局10と移動局12から構成されている。また、基地局10は、複数のアンテナ11−1,11−2,…,11−N(Nは正の整数)を備え、これらのアンテナを介して移動局12と通信を行う。
【0010】
図2は、上記基地局10の構成例を示す図である。この基地局は、周波数オフセット情報受信部20と、送信制御部21と、周波数オフセット付加部22−1,22−2,…,22−N(Nは正の整数)と、送信部23−1,23−2,…,23−Nとを備えている。周波数オフセット情報受信部20は、上り受信データから周波数オフセット情報を抽出する。送信制御部21は、周波数オフセット情報に基づき送信の可/不可を指示するための制御信号を生成する。各周波数オフセット付加部は、対応するアンテナ単位に予め規定された周波数オフセットを下り送信データに付加する。各送信部は、上記制御信号に基づき下り送信データをそれぞれ対応するアンテナから送信する。
【0011】
また、図3は、上記移動局12の構成例を示す図である。この移動局は、パイロット抽出部30と、パイロット成分除去部31と、周波数変換部32と、周波数オフセット情報抽出部33と、周波数オフセット情報付加部34とを備えている。パイロット抽出部30は、下り受信データからパイロット信号を抽出する。パイロット成分除去部31は、パイロット成分除去後の下り受信データを出力する。周波数変換部32は、パイロット成分除去後の下り受信データに対して周波数変換処理を行う。周波数オフセット情報抽出部33は、後述する周波数オフセット情報を生成する。周波数オフセット情報付加部34は、上り送信データに周波数オフセット情報を付加して送信する。
【0012】
つづいて、上記基地局10および移動局12の動作を図面にしたがって詳細に説明する。図4は、本実施の形態の送信ダイバーシチ方法を示すフローチャートである。
【0013】
まず、基地局10から移動局12へ下り送信信号を送信する下り回線の動作を説明する。図5は、下り回線のフレームフォーマットの一例を示す図である。下り回線では、既知系列であるパイロット信号を前半に配置し、データを後半に配置する。以降、パイロット信号とデータを合わせて下り送信データと称する。
【0014】
基地局10では、周波数オフセット付加部22−1が、アンテナ11−1に対応付けて予め規定された第1の周波数オフセットを下り送信データに付加し、周波数オフセット付加部22−2が、アンテナ11−2に対応付けて予め規定された第2の周波数オフセットを下り送信データに付加し、周波数オフセット付加部22−Nが、アンテナ11−Nに対応付けて予め規定された第Nの周波数オフセットを下り送信データに付加する。そして、それぞれを、第1の周波数オフセット付加後信号,第2の周波数オフセット付加後信号,…,第Nの周波数オフセット付加後信号として出力する。
【0015】
ここで、上記周波数オフセット付加処理の一例を示す。たとえば、下記(1)式において、式中iはアンテナ番号、tは時間、s(t)は下り送信データ、niは第iのアンテナの周波数オフセットを決めるための係数(niは整数)、Δfは単位周波数オフセット、xi(t)は第iの周波数オフセット付加後信号を示す。周波数オフセット付加後信号xi(t)は、下記(1)式に示すとおり、下り送信データs(t)に対して(ni×Δf)の周波数オフセットを付加することにより生成する。
【0016】
【数1】

【0017】
また、送信制御部21では、初期状態として、アンテナ11−1、アンテナ11−2、…,アンテナ11−Nの全てのアンテナで下り送信信号を送信するための制御信号を出力する。
【0018】
この状態で、送信部23−1は、送信制御部21から出力される制御信号に従って周波数オフセット付加部22−1から出力される第1の周波数オフセット付加後信号を、第1の下り送信信号としてアンテナ11−1から送出する。送信部23−2は、送信制御部21から出力される制御信号に従って周波数オフセット付加部22−2から出力される第2の周波数オフセット付加後信号を、第2の下り送信信号としてアンテナ11−2から送出する。送信部23−Nは、送信制御部21から出力される制御信号に従って周波数オフセット付加部22−Nから出力される第Nの周波数オフセット付加後信号を、第Nの下り送信信号としてアンテナ11−Nから送出する(ステップS10)。
【0019】
つぎに、移動局12における下り回線の受信動作を説明する。移動局12では、上記第1の下り送信信号,第2の下り送信信号,…,第Nの下り送信信号の合成波を図示しないアンテナで受信する。
【0020】
パイロット抽出部30は、上記アンテナで受信した下り受信信号から、パイロット成分を抽出し、抽出結果を受信パイロットとして出力する。下記(2)式は受信パイロットP(t)を示す式である。下記(2)式において、hiはアンテナ11−iと移動局12との間のチャネル応答、p(t)はパイロット成分、Nはアンテナ数である。
【0021】
【数2】

【0022】
パイロット成分除去部31は、パイロット抽出部30から出力される受信パイロットのパイロット成分を除去し、パイロット成分除去後信号として出力する。下記(3)式はパイロット成分除去後信号Q(t)を示す式である。下記(3)式において、p(t)*はパイロット成分の複素共役である。このパイロット成分除去後信号は、基地局10で与えられた各アンテナの周波数オフセット成分のチャネル応答結果を合成した信号に相当する。
【0023】
【数3】

【0024】
周波数変換部32は、パイロット成分除去部31から出力されるパイロット成分除去後信号に対して周波数変換処理(FFT,DFT等)を行い、チャネル応答として周波数成分を出力する。下記(4)式は(ni×Δf)に対する周波数変換式である。下記(4)式に示す周波数変換処理によって各アンテナに対するチャネル応答が得られる。
【0025】
【数4】

【0026】
周波数オフセット情報抽出部33は、予め定めたしきい値と上記で得られた周波数成分とを順次比較し、しきい値以下の場合は「0」を、しきい値を超える場合は「1」を、それぞれ周波数オフセット情報として出力する(ステップS11)。図6は、周波数変換部32により得られた周波数成分から周波数オフセット情報を抽出する処理を示す図である。横軸が周波数を表し、縦軸が周波数成分を表す。図6の例では、周波数オフセット情報として「00…01010」が得られている場合が示されている。
【0027】
そして、周波数オフセット情報付加部34では、周波数オフセット情報抽出部33から出力される周波数オフセット情報を上り送信データに付加し、その結果を上り送信信号として出力する(ステップS12)。
【0028】
つぎに、移動局12から通知される周波数オフセット情報に基づいて基地局10から移動局12へ下り送信信号を送信するためのアンテナを決定する動作、について説明する。
【0029】
上り送信信号を受信した基地局10では、周波数オフセット情報受信部20が、受信データから周波数オフセット情報を抽出し、出力する(ステップS13)。
【0030】
送信制御部21では、得られた周波数オフセット情報(図6参照)に基づいて、たとえば、「1」となっている周波数成分に対応するアンテナのみを選択して下り送信信号を送信するように、すなわち、当該選択されたアンテナに対応付けて規定された周波数オフセットが付加された下り送信信号のみが送信部から出力されるように、制御信号を生成する。たとえば、周波数オフセット情報の1ビット目と周波数オフセット情報のNビット目が「1」となっている場合には、アンテナ11−1と11−Nに対応する送信部23−1と送信部23−Nに対しては送信を許可する制御信号を出力し、その他の送信部に対しては送信不可の制御信号を出力する(ステップS14)。
【0031】
以降、基地局10では、送信制御部21によって送信を許可された送信部に対応するアンテナのみから、下り送信信号を送信する(ステップS15)。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、基地局が複数のアンテナについて異なる周波数オフセットを付加する送信ダイバーシチ方法において、移動局が周波数オフセット推定を行い、周波数成分を抽出し、所定のしきい値に基づく判定結果を周波数オフセット情報として上り送信する。具体的には、所定のしきい値を超える周波数成分に対応するアンテナを移動局における送受信に好適なアンテナとみなし、その内容を含めたしきい値判定結果を周波数オフセット情報として上り送信する。一方、基地局では、受信した周波数オフセット情報に基づき移動局との通信で用いるアンテナを決定するように構成した。したがって、処理量の大きいアンテナ毎の受信電力算出処理(RAKE合成)を実施していないので、従来と比較して簡易な構成で送信ダイバーシチを実現することができる。
【0033】
なお、周波数オフセット情報抽出部33で用いるしきい値として、最大値に対して固定係数を乗じた値や、実験で得られた値など他の手段で定められる値を用いてもよい。また周波数オフセット情報抽出部33が出力する周波数オフセット情報として、しきい値を超える周波数成分に対応する周波数値など他の手段を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上のように、本発明にかかる送信ダイバーシチ方法は、アンテナ毎に異なる周波数オフセットを付加して下り信号を送信する装置に有用であり、特に、より精度の高いダイバーシチ効果を得る場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明にかかる送信ダイバーシチ方法を実現可能な無線通信システムの構成例を示す図である。
【図2】基地局の構成例を示す図である。
【図3】移動局の構成例を示す図である。
【図4】送信ダイバーシチ方法を示すフローチャートである。
【図5】下り回線のフレームフォーマットの一例を示す図である。
【図6】周波数変換部により得られた周波数成分から周波数オフセット情報を抽出する処理を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 基地局
11−1,11−2,11−N アンテナ
12 移動局
20 周波数オフセット情報受信部
21 送信制御部
22−1,22−2,22−N 周波数オフセット付加部
23−1,23−2,23−N 送信部
30 パイロット抽出部
31 パイロット成分除去部
32 周波数変換部
33 周波数オフセット情報抽出部
34 周波数オフセット情報付加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナから信号を送信する送信装置と、当該送信装置が送信する信号を受信する受信装置、による送信ダイバーシチ方法であって、
前記送信装置が、既知信号を含む送信データに送信アンテナ毎に異なる周波数オフセットを付加することにより生成した信号を送信する既知信号送信ステップと、
前記受信装置が、受信信号に含まれる前記既知信号に基づいて周波数オフセットを推定し、その推定結果に関する周波数オフセット情報を送信データに含めて送信する周波数オフセット情報送信ステップと、
前記送信装置が、受信データに含まれる周波数オフセット情報に基づいて以降の送信に使用する送信アンテナを決定する送信アンテナ決定ステップと、
を含むことを特徴とする送信ダイバーシチ方法。
【請求項2】
前記既知信号として、パイロット信号を用いることとし、
前記周波数オフセット情報送信ステップでは、前記受信装置が、
受信信号から、各送信アンテナと自装置との間のチャネル応答および送信アンテナ毎のパイロット信号成分が合成された信号である受信パイロットを抽出する受信パイロット抽出ステップと、
前記受信パイロットから前記パイロット信号成分を除去するパイロット成分除去ステップと、
パイロット信号成分除去後の信号に対して周波数変換処理を行い、各送信アンテナに対応する周波数成分を取得する周波数変換ステップと、
前記周波数成分に基づいて前記周波数オフセット情報を生成し、生成した情報を送信データに含めて送信する周波数オフセット情報生成ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の送信ダイバーシチ方法。
【請求項3】
前記周波数オフセット情報生成ステップでは、
前記送信アンテナに対応する周波数成分単位にしきい値判定を行い、送信アンテナ単位のしきい値判定結果で構成された周波数オフセット情報を生成することを特徴とする請求項2に記載の送信ダイバーシチ方法。
【請求項4】
前記しきい値を、予め定めた固定値とすることを特徴とする請求項3に記載の送信ダイバーシチ方法。
【請求項5】
前記しきい値を、周波数成分の最大値に固定係数を乗じた値とすることを特徴とする請求項3に記載の送信ダイバーシチ方法。
【請求項6】
複数の送信アンテナを備えた基地局から送られてくる、パイロット信号が含まれた送信信号を受信する移動局であって、
前記送信アンテナ毎に異なる周波数オフセットが付加された前記送信信号を受信し、当該受信信号から、各送信アンテナと自局との間のチャネル応答および送信アンテナ毎のパイロット信号成分が合成された信号である受信パイロットを抽出する受信パイロット抽出手段と、
前記受信パイロットから前記パイロット信号成分を除去するパイロット成分除去手段と、
パイロット信号成分除去後の信号に対して周波数変換処理を行い、各送信アンテナに対応する周波数成分を取得する周波数変換手段と、
前記周波数成分に基づいて所定の周波数オフセット情報を生成し、生成した情報を送信データに含めて送信する周波数オフセット情報生成手段と、
を備えることを特徴とする移動局。
【請求項7】
前記周波数オフセット情報生成手段は、
前記送信アンテナに対応する周波数成分単位にしきい値判定を行い、送信アンテナ単位のしきい値判定結果で構成された周波数オフセット情報を生成することを特徴とする請求項6に記載の移動局。
【請求項8】
複数の送信アンテナを備え、請求項6また7に記載の移動局に対して、パイロット信号を含む送信データに送信アンテナ毎に異なる周波数オフセットを付加することにより生成した信号を送信する基地局であって、
請求項6また7に記載の移動局から得られる周波数オフセット情報に基づいて以降の送信に使用する送信アンテナを決定することを特徴とする基地局。
【請求項9】
請求項6または7に記載の移動局と、
請求項8に記載の基地局と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−278546(P2009−278546A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129875(P2008−129875)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】