送信器、光通信システム及び光通信方法
【課題】本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る送信器、光通信システム及び光通信方法は、EVMの劣化要因となるパルス間干渉をコヒーレンスの高いLDを用いるのではなく、インコヒーレント光、例えばASE光を用いたスペクトルスライス技術を適用する。
【解決手段】本発明に係る送信器、光通信システム及び光通信方法は、EVMの劣化要因となるパルス間干渉をコヒーレンスの高いLDを用いるのではなく、インコヒーレント光、例えばASE光を用いたスペクトルスライス技術を適用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロードバンド・ユビキタスネットワークに用いられる送信器、これを含む光通信システム、及びその光通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的な普及に伴い、高速通信サービスを提供するFTTHの加入者が急速に増加している。現行FTTH(Fiber To The Home)システムでは、通信速度1Gbit/sの1G−EPON(Gigabit−Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)が利用されているが、今後、更なるインターネット普及による加入者増大や、放送通信融合時代に向けたHD映像の配信・利用サービスなどへの対応に向け、更なる高速化が求められている。現在、これら要求に対し、現行の10倍のスループットを実現する10Gbit/sの高速通信が可能な10G−EPONや更なる高速化・広帯域化に向けた次世代PONシステムに関する検討がIEEEやFSAN(Full Service Access Network)等の標準化団体で活発に議論されている。
【0003】
一方、移動体通信の分野では、無線技術の発展に伴い、ピーク伝送速度は2年でほぼ倍のペースで向上している。移動体通信は、「どこからでも利用できる」という特徴を持っており、多くのベンダーや通信事業者が、新しい無線技術の開発に取り組んでいる。例えば、モバイルWiMAXは、伝送距離1〜3キロメートル、最大伝送速度20Mbit/sで、120km/hの移動体からでも利用できる。また、IEEE802.11nは、802.11a/gとの下位互換性を保ちながら、実効速度100Mbit/s以上を実現する高速無線LAN規格で、大容量のデータ通信が可能である。更には、将来システムとして、国際電気通信連合無線通信部門(ITU−R: International Telecommunication Union−Radio communication sector)で検討されているIMT−Advancedにおいては、新周波数帯を利用した最高1Gbit/s伝送の実現が想定されており、次世代の無線アクセスにおいても、ギガビットクラスの高速サービス実現への期待が高まってきている。
【0004】
近年、通信サービスの世界においては「高速化」「IP化」「ユビキタス化」が重要なキーワードとなっており、特に、いつでも、どこでも、だれもがインターネットに接続できる環境を実現する「ユビキタス化」においては、光ファイバ通信技術の広帯域かつ長距離伝送に適しているという特徴と、接続ポイントを選ばないという無線技術が融合したRoF(Radio over Fiber)技術が注目を集めている。RoFとは無線信号を光信号に変換し、光ファイバ上で伝送する技術であり、光ファイバは低損失で広帯域なため、高周波の無線信号を数km先の遠隔地まで伝送することができる。
【0005】
図1は、前記「高速化」「IP化」「ユビキタス化」実現のためのブロードバンド・ユビキタスネットワークの概念図を示している。光アクセス区間(集線装置〜基地局間)には、無線信号の長距離化、電波不感地帯を解消するRoF技術を適用し、無線基地局(BS:Radio Base Station)400には、高周波数帯の利用、または基地局の高密度化により移動体通信の安定性を強化するフェムトセルを設置している。また、無線アクセス区間(BS〜移動端末(UE:User Equipment)600)は、モバイルデータトラフィックのマルチメディア化、更なる大容量化を実現するためMIMO(Multi−input Multi−output)技術とSDMA(Space Division Multiple Access)多重化方式を採用したユビキタスアンテナシステムの構成となっている(例えば、非特許文献1を参照。)。更に、光アクセス区間の多重化方式には、MIMO技術を利用するためWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術が適用されている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】宮本健司、西海達也、東野武史、塚本勝俊、小牧省三、田代隆義、原一貴、谷口友宏、可児淳一、吉本直人、岩月勝美、「ブロードバンド光伝送を適用したユビキタスアンテナシステム−AP波長多重/セクタ・サービス時間多重実験−」、MWP研究会、November 26,2010.
【非特許文献2】Katsumi Iwatsuki, Jun−ichi Kani, “Applications and Technical Issues of Wavelength−Division Multiplexing Passive Optical Networks with Colorless Optical Network Units,” IEEE/OSA Trans. on Optical Commun. and Networking, Vol.1, No.4, pp.C17−C24, September 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2は、図1のブロードバンド・ユビキタスネットワークの概略図において、波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合の構成を示している。無線規格は、例えばIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)が挙げられる。本システムは、複数のMIMO信号を1つの波長チャネル上に多重し、WDM技術を用いて複数波長を束ね、BS600毎に1波長を割り当てることで,多数のBS600を収容可能な高い拡張性が得られる。また、各MIMO信号を帯域サンプリングすることで1つのBS600に送られる2つの隣接セルへの信号を多重したセクタ多重と、2.4GHz帯と5GHz帯の802.11n無線LAN信号を多重したサービス多重とを時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)で実現する方式である。なお、図2及び以降の図面において、RBS及びBSは、共に無線基地局(Radio Base Station)を示します。
【0008】
図3は、図2のブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいてセクタ多重とサービス多重を実現するCS(セントラルステーション)200が有する一般的な送信器250の構成を示している。また、図4は、図3における各ポイントでのタイムチャート示している。
【0009】
2波長の光信号(λ1、λ2)をレーザ(201−1、201−2)にて発生させ、光合波器202で波長多重を行い(図4‘a’)、パターンジェネレータ(Pattern Generator)203と光パルス変調器204を用いて各々の波長に対してパルス信号を生成する(図4‘b’)。例えば、レーザ(201−1、201−2)はDFB−LD(Distributed−Feedback Lazer Diode)、光パルス変調器204はLN−MZM(Lithium Niobate−Mach−Zehnder Modulator)である。
【0010】
分波器205で各波長を分波した後、波長λ1においては、4分岐光カプラ206でパルス信号を2.4GHz帯のANT1用及びANT2用、5GHz帯のANT1’用及びANT2’用に分割する(図4‘c’)。そして、上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ208を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する(図4‘d’)。この下り信号が2.4GHz帯無線信号及び5GHz帯無線信号となる。例えば、分波器205はAWG(Arrayed−Waveguide Grating)、信号変調器207はLN−MZMである。
【0011】
次いで、2.4GHz帯、5GHz帯無線信号で変調したパルス信号をそれぞれの遅延回路209により遅延させ、第1光合波器210でANT1とANT2へ送信する信号、ANT1’とANT2’へ送信する信号をそれぞれ時間領域で多重する(図4‘e’)。更に、2.4GHz帯と5GHz帯の信号の一方を遅延回路211で遅延させ、第2光合波器212で時間領域で多重する(図4‘f’)。波長λ2においても同様の過程を経てλ1とλ2のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。例えば、光波長合波器213はAWGである。
【0012】
図3では、ANT1用及びANT2用の2.4GHz帯の無線信号をレーザ201−1の信号を分岐して各々の信号変調器207で変調している構成を示しているが、ANT1用及びANT2用の波長λ1の2台のレーザからの光をそれぞれ2.4GHz帯無線信号で変調する構成でもよい。5GHz帯についても同様である。
【0013】
このように、上記、ブロードバンド・ユビキタスネットワークは、様々な無線通信サービスが汎用的に利用できるアクセスネットワークの構築が可能であり、トラフィックや端末の移動に対する高い柔軟性が得られ、ギガビットクラスの様々な無線通信サービスを実現することができる。
【0014】
しかしながら、上記、送信器構成は、コヒーレンス性の高いLDを使用しているため光領域で同一波長による時分割多重信号を生成することによる信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉により、M−ary I/Q変調の品質尺度を示すEVM(Error Vector Magnitude)の劣化が生じる。図5は、一般的なLN−MZMとEAMの消光比を測定した結果である。変調信号のON/OFF比は、20dB程度である。信号のOFFレベルは、完全に0レベルとはならず、図3の送信器構成に示されるように、例えばANT1及びANT2への2.4GHz無線変調信号を同一波長で合波することで、信号のマーク/スペースレベル間で干渉が生じ、結果として信号品質が劣化することがあるという課題があった。
【0015】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、CSに具備する送信器において、EVMの劣化要因となるパルス間干渉をコヒーレンスの高いLDを用いるのではなく、インコヒーレント光、例えばASE(Amplified Spontaneous Emission)光、LED(Light Emitting Diode)、SLD(Super Luminescent Diode)を用いたスペクトルスライス技術を適用する。
【0017】
具体的には、本発明に係る送信器は、インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波器と、前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐器と、前記光分岐器で4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、前記信号変調器で変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波器と、前記第1光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波器と、前記第2光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、を備える。
【0018】
本発明に係る光通信システムは、前記送信器と、前記送信器で波長多重された光信号を分波する波長フィルタと、前記波長フィルタからの波長毎の光パルスを無線信号に変換する複数の無線基地局と、を有する。
【0019】
本発明に係る送信器の光通信方法は、インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波ステップと、前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐ステップと、前記光分岐ステップで4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、前記信号変調ステップで変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波ステップと、前記第1光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波ステップと、前記第2光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、を順に行う。
【0020】
光源にインコヒーレント光を使用することでパルス間の干渉を抑圧することができる。従って、本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明に係る他の送信器は、インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波器と、前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐器と、前記光分岐器で4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、前記信号変調器で変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波器と、前記第1光合波器でクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波器と、前記第2光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波器と、前記第3光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、を備える。
【0022】
本発明に係る他の送信器の光通信方法は、インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波ステップと、前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐ステップと、前記光分岐ステップで4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、前記信号変調ステップで変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波ステップと、前記第1光合波ステップでクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波ステップと、前記第2光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波ステップと、前記第3光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、を順に行う。
【0023】
さらに、単一の光源で複数波長を一括して生成することで、ユビキタスアンテナシステムによるブロードバンド・ユビキタスネットワークの更なる経済化及び効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ブロードバンド光伝送を適用したユビキタスアンテナシステムによるブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図2】波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合のブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図3】セクタ多重とサービス多重を実現するCSでの一般的な送信器構成を説明する図である。
【図4】送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【図5】LN−MZMとEAMの消光比を測定した結果を示した図である。
【図6】本発明に係る送信器の構成を説明する図である。
【図7】本発明に係る送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【図8】波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を2nとした場合のブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図9】本発明に係る送信器の構成を説明する図である。
【図10】本発明に係る送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【図11】波長数をm(上り/下りでは波長数は2m)、BS数をM、セル当たりのMIMOアンテナ数を2nとした場合のブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図12】本発明に係る送信器の構成を説明する図である。
【図13】本発明に係る送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(第1実施形態)
図6は、本実施形態の送信器251の構成を説明する図である。本実施形態では簡単のために、図2に示すような波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合の構成を示している。無線規格は、従来技術と同様にIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)とする。
【0028】
図3の送信器250との相違点は、パルス光を生成するための光源がコヒーレンス性の高いLDではなくASE光の光源201’に変わった点である。また、図7は、図6における各ポイントでのタイムチャートを示している。
【0029】
光源201’から出力された複数の波長成分を含むASE光は(図7の‘a’)、パターンジェネレータ203で生成された電気パルス信号を用いた光パルス変調器204が光領域で一括して変調し、光パルス信号となる(図7の‘b’)。これらの光パルス信号は、分波器205で所望の波長(λ1、λ2)にスペクトルスライスされる(図7の‘c’)。
【0030】
波長λ1においては、4分岐光カプラ206でパルス信号を2.4GHz帯のANT1用及びANT2用、5GHz帯のANT1’用及びANT2’用に分割する(図7の‘d’)。そして、上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ208を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する(図7の‘e’)。
【0031】
次いで、2.4GHz帯、5GHz帯無線信号で変調したパルス信号をそれぞれの遅延回路209により遅延させ、第1光合波器210でANT1とANT2へ送信する信号、ANT1’とANT2’へ送信する信号をそれぞれ時間領域で多重する(図7の‘f’)。更に,2.4GHz帯と5GHz帯の信号を遅延回路211で遅延させ、第2光合波器212で時間領域で多重する。波長λ2においても同様の過程を経てλ1とλ2のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。(図7の‘g’)。
【0032】
ここで、「発明が解決しようとする課題」で示した同一波長の合波による干渉は、コヒーレンス長と密接な関係にあり、コヒーレンス長は次式で示される。
【数1】
Lc、c、τ、n、Δνは、それぞれ、コヒーレンス長、光速、光子寿命、屈折率、レーザの線幅を示している。一般的なレーザ光源、例えばDFB−LD(Distributed−feedback lazer diode)の線幅は、1〜10MHz程度であり、光ファイバ中の屈折率n=1.5とすると、上式よりコヒーレンス長は、20〜200m程度となる。このコヒーレンス長以内で同一波長による合波が行なわれた場合に干渉による光強度の変動により受信側でビート雑音が発生し、結果としてEVMが劣化する。
【0033】
図6の波長λ1の2.4GHz帯の構成から明らかなように、Arm1とArm2の伝送距離差は、ANT1とANT2への異なる2.4GHz帯のMIMO信号を時分割多重するための遅延回路209のみである。一般的な光領域での遅延回路は、数百ps程度の遅延量しかなく、上記コヒーレンス長と比較すると十分に短い。Arm2に光ファイバを導入し、コヒーレンス長以上の遅延を与えることで上記課題を回避することも可能であるが、このような構成は、各MIMO信号を帯域サンプリングし、1つのBSに送られる2つの隣接セルへの信号の多重を行うため、遅延回路209の遅延量の整数倍に応じた正確な遅延量を実現しなければならず非現実的である。更に、システムを構成する上で、波長多重するために用いるレーザの線幅は、それぞれ異なることが一般的であり、光ファイバを用いて波長毎にコヒーレンス長以上の遅延量を変えることはシステム構成上、コスト高となり好ましくない。
【0034】
このような課題に対して、本実施形態では、ASE光から一括してパルス光を生成し、スペクトルスライス技術により各波長を分波する構成とした。本実施形態では、コヒーレンス性の低いASE光源を用いることで、前述のようなパルス間の干渉雑音が発生しない。また、スペクトルスライス技術を適用することで、波長毎にパルス光を切り出すので、単一光源で複数の波長を生成することができ、従来構成と比較してコスト低減が可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
図8は本実施形態の光通信システムの構成を示す図である。これまでは、簡単のために、波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合であったが、送信/受信アンテナ数を増やすことで、アンテナ数にほぼ比例して伝送容量を増大することが可能である。そこで、本実施形態では、図8に示すように波長数を2、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を2n(各BS毎ではn)と一般化した場合の基地局の構成について示す。無線規格は、これまでと同様にIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)とする。
【0036】
ここで、BS600に設置されるアンテナをANT(BS#、セル#、アンテナ#)と定義すれば、
BS600−1かつセル1へのアンテナを
ANT111,ANT112,・・・,ANT11n、
BS600−1かつセル2へのアンテナを
ANT121,ANT122,・・・,ANT12n、
BS600−2かつセル1へのアンテナを
ANT211,ANT212,・・・,ANT21n、
BS600−2かつセル3へのアンテナを
ANT231,ANT232,・・・,ANT23n、
と記述することができる。また、図8では、2.4GHz帯用アンテナと5GHz帯用アンテナをまとめて1つのアンテナとして記述している。例えば、ANT111は、2.4GHz帯用のアンテナANT111と5GHz帯用アンテナANT111’をANT111として記述している。
【0037】
図9は、本実施形態の送信器252の構成を示している。また、図10は、図9の各ポイントでのタイムチャートを示している。図9の‘c’までは、第1実施形態と同様の過程となるためここでは省略する。分波器205で波長λ1とλ2に分波された光パルスのうち、波長λ1の光パルスは、BS600−1かつセル1へのアンテナとBS600−1かつセル2へのアンテナへ2.4GHz帯、5GHz帯のMIMO信号を出力するため1:4n光カプラ206’で分割される(図10の‘d’)。上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ(図9において不図示)を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する。
【0038】
次いで、遅延回路209で、(ANT111、ANT121)、、、、、(ANT11n、ANT12)への信号を時間軸上で遅延量D1だけ遅延し(図10の‘e’)、第1光合波器210で時間多重する。その後、2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれの信号を遅延回路211で遅延量Dnだけ遅延させ、第2光合波器212で時間多重する(図10の‘f’)。更に2.4GHz帯と5GHz帯の信号を遅延回路214を用いて遅延量Dn”だけ遅延させ、第3光合波器215で時間多重(図10の‘g’)する。波長λ2においても同様の過程を経てλ1とλ2のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。
【0039】
本実施形態では、アンテナペアを(ANT111,ANT121)、、、、(ANT11n,ANT12n)と定義し、セル1とセル2とのアンテナ間(例えば、ANT111とANT121)で時間多重し、セル1へのアンテナペア間((ANT111,ANT121)、、、、(ANT11n,ANT12n))で時間多重し、更に2.4GHz帯、5GHz帯で時間多重した構成としているが、それぞれ独立した遅延を与え信号を時間的に多重しても同様の効果が得られる。
【0040】
(第3実施形態)
図11は、本実施形態の送信器の構成を説明する図である。これまでは、簡単のために、波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合であったが、波長数を増やすことで、BS数を大幅に収容することが可能となる。そこで、本実施形態では、図11に示すように波長数をm、BS数をM、セル当たりのMIMOアンテナ数を2n(各BS毎ではn)と一般化した場合の基地局の構成について示す。無線規格は、これまでと同様にIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)とする。
【0041】
図11のように一般化した場合、セルijは、BS600−ijとBS600−i(j+1)に囲まれた領域となる。BS600に設置されるアンテナをANT(BS#、セル#、アンテナ#)と定義すれば、
BS600−ij、かつセルijへ向けられるアンテナを
ANT(ij)(ij)1,・・・,ANT(ij)(ij)n、
BS600−i(j+1)、かつセルijへ向けられるアンテナを
ANT(i(j+1))(ij)1,・・・,ANT(i(j+1))(ij)n、
と記述することができる。また、図12においても2.4GHz帯用アンテナと5GHz帯用アンテナをまとめて1つのアンテナとして記述している。
【0042】
図12は、本実施形態のλjにおける送信器253の構成を示している。また、図13は、図12におけるタイムチャートを示している。光源201’から出力された複数の波長成分を含むASE光は(図13の‘a’)、パターンジェネレータ203で生成された電気パルス信号が入力された光パルス変調器204で一括して変調され、光パルス信号となる(図13の‘b’)。分波器205で所望の波長(λ1、λ2、、、λj、、、λn)をスペクトルスライスする(図13の‘c’)。分波器205にて複数波長に分波された光パルスのうち、波長λjの光パルスは、BS600−ijかつセルijへのアンテナとBS600−ijかつセルi(j−1)へのアンテナへ2.4GHz帯及び5GHz帯のMIMO信号無線信号を出力するため1:4n光カプラ206’で分割される(図13の‘d’)。上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ(図12において不図示)を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する。
【0043】
次いで、遅延回路209で、ANT(ij)(ij)1、ANT(ij)(i(j−1))1、・・・、ANT(ij)(ij)m、ANT(ij)(i(j−1))mへの信号を時間軸上で遅延量D1だけ遅延し(図13の‘e’)、第1光合波器210で時間多重する。その後、2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれの信号を遅延回路211で遅延量Dnだけ遅延させ、第2光合波器212で時間多重する(図13の‘f’)。更に2.4GHz帯と5GHz帯の信号を遅延回路214を用いて遅延量Dn”だけ遅延させ、第3光合波器215で時間多重する(図13の‘g’)。他の波長(λ1、λ2、・・・、λn)においても同様の過程を経て複数波長のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。また、本実施形態においても第2実施形態と同様にそれぞれ独立した遅延を与え信号を時間的に多重しても同様の効果が得られる。
【0044】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、便宜上、光アクセス区間でのネットワークトポロジをバス型として記述しているが、これに制限されるものではない。例えば、特開2010−245987号公報に示されるようにリング構成、スター構成のトポロジーにおいても同様の効果を得ることができる。また、実施形態で記述した遅延線は遅延を与えるものであれば光遅延回路でも伝送線路等でも良く、構成や材料に依らない。更に本実施例では、信号変調器207にLN−MZMを用いているが、EAM(Electronic Absorption modulator)等の変調器を利用しても同様の効果を得ることができる。
【0045】
(実施形態の効果)
以上,説明した実施形態のように、EVMの劣化要因となるパルス間干渉をコヒーレンス性の高いLDを用いるのではなく、インコヒーレント光、またはASE光を用いたスペクトルスライス技術を適用することでパルス間の干渉を抑圧し、高い信号品質を実現すると共に、単一の光源で複数波長を一括して生成することで、ユビキタスアンテナシステムによるブロードバンド・ユビキタスネットワークの更なる経済化、効率化が実現できる。
【符号の説明】
【0046】
100:携帯事業者コア網
200:セントラルステーション(CS)
201−1、201−2:レーザ
201’:光源
202:光合波器
203:パターンジェネレータ
204:光パルス変調器
205:分波器
206:4分岐光カプラ
206’:1:4n光カプラ
207:信号変調器
208:MIMO信号プロセッサ
209:遅延回路
210:第1光合波器
211:遅延回路
212:第2光合波器
213:光波長合波器
214:遅延回路
215:第3光合波器
250、251、252、253:送信器
300:波長フィルタ
400:無線基地局(BS)
500:光ファイバ
600、600−1、600−2、・・・、600−(ij)(ij)1、・・・、600−(ij)(ij)n、・・・:移動端末(UE)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロードバンド・ユビキタスネットワークに用いられる送信器、これを含む光通信システム、及びその光通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの爆発的な普及に伴い、高速通信サービスを提供するFTTHの加入者が急速に増加している。現行FTTH(Fiber To The Home)システムでは、通信速度1Gbit/sの1G−EPON(Gigabit−Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)が利用されているが、今後、更なるインターネット普及による加入者増大や、放送通信融合時代に向けたHD映像の配信・利用サービスなどへの対応に向け、更なる高速化が求められている。現在、これら要求に対し、現行の10倍のスループットを実現する10Gbit/sの高速通信が可能な10G−EPONや更なる高速化・広帯域化に向けた次世代PONシステムに関する検討がIEEEやFSAN(Full Service Access Network)等の標準化団体で活発に議論されている。
【0003】
一方、移動体通信の分野では、無線技術の発展に伴い、ピーク伝送速度は2年でほぼ倍のペースで向上している。移動体通信は、「どこからでも利用できる」という特徴を持っており、多くのベンダーや通信事業者が、新しい無線技術の開発に取り組んでいる。例えば、モバイルWiMAXは、伝送距離1〜3キロメートル、最大伝送速度20Mbit/sで、120km/hの移動体からでも利用できる。また、IEEE802.11nは、802.11a/gとの下位互換性を保ちながら、実効速度100Mbit/s以上を実現する高速無線LAN規格で、大容量のデータ通信が可能である。更には、将来システムとして、国際電気通信連合無線通信部門(ITU−R: International Telecommunication Union−Radio communication sector)で検討されているIMT−Advancedにおいては、新周波数帯を利用した最高1Gbit/s伝送の実現が想定されており、次世代の無線アクセスにおいても、ギガビットクラスの高速サービス実現への期待が高まってきている。
【0004】
近年、通信サービスの世界においては「高速化」「IP化」「ユビキタス化」が重要なキーワードとなっており、特に、いつでも、どこでも、だれもがインターネットに接続できる環境を実現する「ユビキタス化」においては、光ファイバ通信技術の広帯域かつ長距離伝送に適しているという特徴と、接続ポイントを選ばないという無線技術が融合したRoF(Radio over Fiber)技術が注目を集めている。RoFとは無線信号を光信号に変換し、光ファイバ上で伝送する技術であり、光ファイバは低損失で広帯域なため、高周波の無線信号を数km先の遠隔地まで伝送することができる。
【0005】
図1は、前記「高速化」「IP化」「ユビキタス化」実現のためのブロードバンド・ユビキタスネットワークの概念図を示している。光アクセス区間(集線装置〜基地局間)には、無線信号の長距離化、電波不感地帯を解消するRoF技術を適用し、無線基地局(BS:Radio Base Station)400には、高周波数帯の利用、または基地局の高密度化により移動体通信の安定性を強化するフェムトセルを設置している。また、無線アクセス区間(BS〜移動端末(UE:User Equipment)600)は、モバイルデータトラフィックのマルチメディア化、更なる大容量化を実現するためMIMO(Multi−input Multi−output)技術とSDMA(Space Division Multiple Access)多重化方式を採用したユビキタスアンテナシステムの構成となっている(例えば、非特許文献1を参照。)。更に、光アクセス区間の多重化方式には、MIMO技術を利用するためWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術が適用されている(例えば、非特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】宮本健司、西海達也、東野武史、塚本勝俊、小牧省三、田代隆義、原一貴、谷口友宏、可児淳一、吉本直人、岩月勝美、「ブロードバンド光伝送を適用したユビキタスアンテナシステム−AP波長多重/セクタ・サービス時間多重実験−」、MWP研究会、November 26,2010.
【非特許文献2】Katsumi Iwatsuki, Jun−ichi Kani, “Applications and Technical Issues of Wavelength−Division Multiplexing Passive Optical Networks with Colorless Optical Network Units,” IEEE/OSA Trans. on Optical Commun. and Networking, Vol.1, No.4, pp.C17−C24, September 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2は、図1のブロードバンド・ユビキタスネットワークの概略図において、波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合の構成を示している。無線規格は、例えばIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)が挙げられる。本システムは、複数のMIMO信号を1つの波長チャネル上に多重し、WDM技術を用いて複数波長を束ね、BS600毎に1波長を割り当てることで,多数のBS600を収容可能な高い拡張性が得られる。また、各MIMO信号を帯域サンプリングすることで1つのBS600に送られる2つの隣接セルへの信号を多重したセクタ多重と、2.4GHz帯と5GHz帯の802.11n無線LAN信号を多重したサービス多重とを時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)で実現する方式である。なお、図2及び以降の図面において、RBS及びBSは、共に無線基地局(Radio Base Station)を示します。
【0008】
図3は、図2のブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいてセクタ多重とサービス多重を実現するCS(セントラルステーション)200が有する一般的な送信器250の構成を示している。また、図4は、図3における各ポイントでのタイムチャート示している。
【0009】
2波長の光信号(λ1、λ2)をレーザ(201−1、201−2)にて発生させ、光合波器202で波長多重を行い(図4‘a’)、パターンジェネレータ(Pattern Generator)203と光パルス変調器204を用いて各々の波長に対してパルス信号を生成する(図4‘b’)。例えば、レーザ(201−1、201−2)はDFB−LD(Distributed−Feedback Lazer Diode)、光パルス変調器204はLN−MZM(Lithium Niobate−Mach−Zehnder Modulator)である。
【0010】
分波器205で各波長を分波した後、波長λ1においては、4分岐光カプラ206でパルス信号を2.4GHz帯のANT1用及びANT2用、5GHz帯のANT1’用及びANT2’用に分割する(図4‘c’)。そして、上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ208を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する(図4‘d’)。この下り信号が2.4GHz帯無線信号及び5GHz帯無線信号となる。例えば、分波器205はAWG(Arrayed−Waveguide Grating)、信号変調器207はLN−MZMである。
【0011】
次いで、2.4GHz帯、5GHz帯無線信号で変調したパルス信号をそれぞれの遅延回路209により遅延させ、第1光合波器210でANT1とANT2へ送信する信号、ANT1’とANT2’へ送信する信号をそれぞれ時間領域で多重する(図4‘e’)。更に、2.4GHz帯と5GHz帯の信号の一方を遅延回路211で遅延させ、第2光合波器212で時間領域で多重する(図4‘f’)。波長λ2においても同様の過程を経てλ1とλ2のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。例えば、光波長合波器213はAWGである。
【0012】
図3では、ANT1用及びANT2用の2.4GHz帯の無線信号をレーザ201−1の信号を分岐して各々の信号変調器207で変調している構成を示しているが、ANT1用及びANT2用の波長λ1の2台のレーザからの光をそれぞれ2.4GHz帯無線信号で変調する構成でもよい。5GHz帯についても同様である。
【0013】
このように、上記、ブロードバンド・ユビキタスネットワークは、様々な無線通信サービスが汎用的に利用できるアクセスネットワークの構築が可能であり、トラフィックや端末の移動に対する高い柔軟性が得られ、ギガビットクラスの様々な無線通信サービスを実現することができる。
【0014】
しかしながら、上記、送信器構成は、コヒーレンス性の高いLDを使用しているため光領域で同一波長による時分割多重信号を生成することによる信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉により、M−ary I/Q変調の品質尺度を示すEVM(Error Vector Magnitude)の劣化が生じる。図5は、一般的なLN−MZMとEAMの消光比を測定した結果である。変調信号のON/OFF比は、20dB程度である。信号のOFFレベルは、完全に0レベルとはならず、図3の送信器構成に示されるように、例えばANT1及びANT2への2.4GHz無線変調信号を同一波長で合波することで、信号のマーク/スペースレベル間で干渉が生じ、結果として信号品質が劣化することがあるという課題があった。
【0015】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、CSに具備する送信器において、EVMの劣化要因となるパルス間干渉をコヒーレンスの高いLDを用いるのではなく、インコヒーレント光、例えばASE(Amplified Spontaneous Emission)光、LED(Light Emitting Diode)、SLD(Super Luminescent Diode)を用いたスペクトルスライス技術を適用する。
【0017】
具体的には、本発明に係る送信器は、インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波器と、前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐器と、前記光分岐器で4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、前記信号変調器で変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波器と、前記第1光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波器と、前記第2光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、を備える。
【0018】
本発明に係る光通信システムは、前記送信器と、前記送信器で波長多重された光信号を分波する波長フィルタと、前記波長フィルタからの波長毎の光パルスを無線信号に変換する複数の無線基地局と、を有する。
【0019】
本発明に係る送信器の光通信方法は、インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波ステップと、前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐ステップと、前記光分岐ステップで4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、前記信号変調ステップで変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波ステップと、前記第1光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波ステップと、前記第2光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、を順に行う。
【0020】
光源にインコヒーレント光を使用することでパルス間の干渉を抑圧することができる。従って、本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明に係る他の送信器は、インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波器と、前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐器と、前記光分岐器で4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、前記信号変調器で変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波器と、前記第1光合波器でクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波器と、前記第2光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波器と、前記第3光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、を備える。
【0022】
本発明に係る他の送信器の光通信方法は、インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波ステップと、前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐ステップと、前記光分岐ステップで4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、前記信号変調ステップで変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波ステップと、前記第1光合波ステップでクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波ステップと、前記第2光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波ステップと、前記第3光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、を順に行う。
【0023】
さらに、単一の光源で複数波長を一括して生成することで、ユビキタスアンテナシステムによるブロードバンド・ユビキタスネットワークの更なる経済化及び効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ユビキタスアンテナシステムを用いたブロードバンド・ユビキタスネットワークにおいて、EVMを劣化させる要因の1つである光領域での同一波長による時分割多重信号を生成するため信号のマーク/スペースレベルでのパルス間干渉を抑圧できる送信器、光通信システム及び光通信方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ブロードバンド光伝送を適用したユビキタスアンテナシステムによるブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図2】波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合のブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図3】セクタ多重とサービス多重を実現するCSでの一般的な送信器構成を説明する図である。
【図4】送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【図5】LN−MZMとEAMの消光比を測定した結果を示した図である。
【図6】本発明に係る送信器の構成を説明する図である。
【図7】本発明に係る送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【図8】波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を2nとした場合のブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図9】本発明に係る送信器の構成を説明する図である。
【図10】本発明に係る送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【図11】波長数をm(上り/下りでは波長数は2m)、BS数をM、セル当たりのMIMOアンテナ数を2nとした場合のブロードバンド・ユビキタスネットワークを説明する図である。
【図12】本発明に係る送信器の構成を説明する図である。
【図13】本発明に係る送信器の各ポイントにおけるタイムチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(第1実施形態)
図6は、本実施形態の送信器251の構成を説明する図である。本実施形態では簡単のために、図2に示すような波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合の構成を示している。無線規格は、従来技術と同様にIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)とする。
【0028】
図3の送信器250との相違点は、パルス光を生成するための光源がコヒーレンス性の高いLDではなくASE光の光源201’に変わった点である。また、図7は、図6における各ポイントでのタイムチャートを示している。
【0029】
光源201’から出力された複数の波長成分を含むASE光は(図7の‘a’)、パターンジェネレータ203で生成された電気パルス信号を用いた光パルス変調器204が光領域で一括して変調し、光パルス信号となる(図7の‘b’)。これらの光パルス信号は、分波器205で所望の波長(λ1、λ2)にスペクトルスライスされる(図7の‘c’)。
【0030】
波長λ1においては、4分岐光カプラ206でパルス信号を2.4GHz帯のANT1用及びANT2用、5GHz帯のANT1’用及びANT2’用に分割する(図7の‘d’)。そして、上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ208を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する(図7の‘e’)。
【0031】
次いで、2.4GHz帯、5GHz帯無線信号で変調したパルス信号をそれぞれの遅延回路209により遅延させ、第1光合波器210でANT1とANT2へ送信する信号、ANT1’とANT2’へ送信する信号をそれぞれ時間領域で多重する(図7の‘f’)。更に,2.4GHz帯と5GHz帯の信号を遅延回路211で遅延させ、第2光合波器212で時間領域で多重する。波長λ2においても同様の過程を経てλ1とλ2のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。(図7の‘g’)。
【0032】
ここで、「発明が解決しようとする課題」で示した同一波長の合波による干渉は、コヒーレンス長と密接な関係にあり、コヒーレンス長は次式で示される。
【数1】
Lc、c、τ、n、Δνは、それぞれ、コヒーレンス長、光速、光子寿命、屈折率、レーザの線幅を示している。一般的なレーザ光源、例えばDFB−LD(Distributed−feedback lazer diode)の線幅は、1〜10MHz程度であり、光ファイバ中の屈折率n=1.5とすると、上式よりコヒーレンス長は、20〜200m程度となる。このコヒーレンス長以内で同一波長による合波が行なわれた場合に干渉による光強度の変動により受信側でビート雑音が発生し、結果としてEVMが劣化する。
【0033】
図6の波長λ1の2.4GHz帯の構成から明らかなように、Arm1とArm2の伝送距離差は、ANT1とANT2への異なる2.4GHz帯のMIMO信号を時分割多重するための遅延回路209のみである。一般的な光領域での遅延回路は、数百ps程度の遅延量しかなく、上記コヒーレンス長と比較すると十分に短い。Arm2に光ファイバを導入し、コヒーレンス長以上の遅延を与えることで上記課題を回避することも可能であるが、このような構成は、各MIMO信号を帯域サンプリングし、1つのBSに送られる2つの隣接セルへの信号の多重を行うため、遅延回路209の遅延量の整数倍に応じた正確な遅延量を実現しなければならず非現実的である。更に、システムを構成する上で、波長多重するために用いるレーザの線幅は、それぞれ異なることが一般的であり、光ファイバを用いて波長毎にコヒーレンス長以上の遅延量を変えることはシステム構成上、コスト高となり好ましくない。
【0034】
このような課題に対して、本実施形態では、ASE光から一括してパルス光を生成し、スペクトルスライス技術により各波長を分波する構成とした。本実施形態では、コヒーレンス性の低いASE光源を用いることで、前述のようなパルス間の干渉雑音が発生しない。また、スペクトルスライス技術を適用することで、波長毎にパルス光を切り出すので、単一光源で複数の波長を生成することができ、従来構成と比較してコスト低減が可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
図8は本実施形態の光通信システムの構成を示す図である。これまでは、簡単のために、波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合であったが、送信/受信アンテナ数を増やすことで、アンテナ数にほぼ比例して伝送容量を増大することが可能である。そこで、本実施形態では、図8に示すように波長数を2、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を2n(各BS毎ではn)と一般化した場合の基地局の構成について示す。無線規格は、これまでと同様にIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)とする。
【0036】
ここで、BS600に設置されるアンテナをANT(BS#、セル#、アンテナ#)と定義すれば、
BS600−1かつセル1へのアンテナを
ANT111,ANT112,・・・,ANT11n、
BS600−1かつセル2へのアンテナを
ANT121,ANT122,・・・,ANT12n、
BS600−2かつセル1へのアンテナを
ANT211,ANT212,・・・,ANT21n、
BS600−2かつセル3へのアンテナを
ANT231,ANT232,・・・,ANT23n、
と記述することができる。また、図8では、2.4GHz帯用アンテナと5GHz帯用アンテナをまとめて1つのアンテナとして記述している。例えば、ANT111は、2.4GHz帯用のアンテナANT111と5GHz帯用アンテナANT111’をANT111として記述している。
【0037】
図9は、本実施形態の送信器252の構成を示している。また、図10は、図9の各ポイントでのタイムチャートを示している。図9の‘c’までは、第1実施形態と同様の過程となるためここでは省略する。分波器205で波長λ1とλ2に分波された光パルスのうち、波長λ1の光パルスは、BS600−1かつセル1へのアンテナとBS600−1かつセル2へのアンテナへ2.4GHz帯、5GHz帯のMIMO信号を出力するため1:4n光カプラ206’で分割される(図10の‘d’)。上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ(図9において不図示)を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する。
【0038】
次いで、遅延回路209で、(ANT111、ANT121)、、、、、(ANT11n、ANT12)への信号を時間軸上で遅延量D1だけ遅延し(図10の‘e’)、第1光合波器210で時間多重する。その後、2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれの信号を遅延回路211で遅延量Dnだけ遅延させ、第2光合波器212で時間多重する(図10の‘f’)。更に2.4GHz帯と5GHz帯の信号を遅延回路214を用いて遅延量Dn”だけ遅延させ、第3光合波器215で時間多重(図10の‘g’)する。波長λ2においても同様の過程を経てλ1とλ2のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。
【0039】
本実施形態では、アンテナペアを(ANT111,ANT121)、、、、(ANT11n,ANT12n)と定義し、セル1とセル2とのアンテナ間(例えば、ANT111とANT121)で時間多重し、セル1へのアンテナペア間((ANT111,ANT121)、、、、(ANT11n,ANT12n))で時間多重し、更に2.4GHz帯、5GHz帯で時間多重した構成としているが、それぞれ独立した遅延を与え信号を時間的に多重しても同様の効果が得られる。
【0040】
(第3実施形態)
図11は、本実施形態の送信器の構成を説明する図である。これまでは、簡単のために、波長数を2(上り/下りでは波長数は4)、BS数を2、セル当たりのMIMOアンテナ数を4とした場合であったが、波長数を増やすことで、BS数を大幅に収容することが可能となる。そこで、本実施形態では、図11に示すように波長数をm、BS数をM、セル当たりのMIMOアンテナ数を2n(各BS毎ではn)と一般化した場合の基地局の構成について示す。無線規格は、これまでと同様にIEEE802.11n(2.4GHz、5GHz)とする。
【0041】
図11のように一般化した場合、セルijは、BS600−ijとBS600−i(j+1)に囲まれた領域となる。BS600に設置されるアンテナをANT(BS#、セル#、アンテナ#)と定義すれば、
BS600−ij、かつセルijへ向けられるアンテナを
ANT(ij)(ij)1,・・・,ANT(ij)(ij)n、
BS600−i(j+1)、かつセルijへ向けられるアンテナを
ANT(i(j+1))(ij)1,・・・,ANT(i(j+1))(ij)n、
と記述することができる。また、図12においても2.4GHz帯用アンテナと5GHz帯用アンテナをまとめて1つのアンテナとして記述している。
【0042】
図12は、本実施形態のλjにおける送信器253の構成を示している。また、図13は、図12におけるタイムチャートを示している。光源201’から出力された複数の波長成分を含むASE光は(図13の‘a’)、パターンジェネレータ203で生成された電気パルス信号が入力された光パルス変調器204で一括して変調され、光パルス信号となる(図13の‘b’)。分波器205で所望の波長(λ1、λ2、、、λj、、、λn)をスペクトルスライスする(図13の‘c’)。分波器205にて複数波長に分波された光パルスのうち、波長λjの光パルスは、BS600−ijかつセルijへのアンテナとBS600−ijかつセルi(j−1)へのアンテナへ2.4GHz帯及び5GHz帯のMIMO信号無線信号を出力するため1:4n光カプラ206’で分割される(図13の‘d’)。上位ネットワークからの下り信号をIEEE802.11n信号へ変換するMIMO信号プロセッサ(図12において不図示)を介して信号変調器207に入力し、各光パルスを下り信号で変調する。
【0043】
次いで、遅延回路209で、ANT(ij)(ij)1、ANT(ij)(i(j−1))1、・・・、ANT(ij)(ij)m、ANT(ij)(i(j−1))mへの信号を時間軸上で遅延量D1だけ遅延し(図13の‘e’)、第1光合波器210で時間多重する。その後、2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれの信号を遅延回路211で遅延量Dnだけ遅延させ、第2光合波器212で時間多重する(図13の‘f’)。更に2.4GHz帯と5GHz帯の信号を遅延回路214を用いて遅延量Dn”だけ遅延させ、第3光合波器215で時間多重する(図13の‘g’)。他の波長(λ1、λ2、・・・、λn)においても同様の過程を経て複数波長のTDM信号を光波長合波器213で合波し、伝送路へ送信する。また、本実施形態においても第2実施形態と同様にそれぞれ独立した遅延を与え信号を時間的に多重しても同様の効果が得られる。
【0044】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、便宜上、光アクセス区間でのネットワークトポロジをバス型として記述しているが、これに制限されるものではない。例えば、特開2010−245987号公報に示されるようにリング構成、スター構成のトポロジーにおいても同様の効果を得ることができる。また、実施形態で記述した遅延線は遅延を与えるものであれば光遅延回路でも伝送線路等でも良く、構成や材料に依らない。更に本実施例では、信号変調器207にLN−MZMを用いているが、EAM(Electronic Absorption modulator)等の変調器を利用しても同様の効果を得ることができる。
【0045】
(実施形態の効果)
以上,説明した実施形態のように、EVMの劣化要因となるパルス間干渉をコヒーレンス性の高いLDを用いるのではなく、インコヒーレント光、またはASE光を用いたスペクトルスライス技術を適用することでパルス間の干渉を抑圧し、高い信号品質を実現すると共に、単一の光源で複数波長を一括して生成することで、ユビキタスアンテナシステムによるブロードバンド・ユビキタスネットワークの更なる経済化、効率化が実現できる。
【符号の説明】
【0046】
100:携帯事業者コア網
200:セントラルステーション(CS)
201−1、201−2:レーザ
201’:光源
202:光合波器
203:パターンジェネレータ
204:光パルス変調器
205:分波器
206:4分岐光カプラ
206’:1:4n光カプラ
207:信号変調器
208:MIMO信号プロセッサ
209:遅延回路
210:第1光合波器
211:遅延回路
212:第2光合波器
213:光波長合波器
214:遅延回路
215:第3光合波器
250、251、252、253:送信器
300:波長フィルタ
400:無線基地局(BS)
500:光ファイバ
600、600−1、600−2、・・・、600−(ij)(ij)1、・・・、600−(ij)(ij)n、・・・:移動端末(UE)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、
前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、
前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波器と、
前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐器と、
前記光分岐器で4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、
前記信号変調器で変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波器と、
前記第1光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波器と、
前記第2光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、
を備える送信器。
【請求項2】
インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、
前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、
前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波器と、
前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐器と、
前記光分岐器で4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、
前記信号変調器で変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波器と、
前記第1光合波器でクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波器と、
前記第2光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波器と、
前記第3光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、
を備える送信器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の送信器と、
前記送信器で波長多重された光信号を分波する波長フィルタと、
前記波長フィルタからの波長毎の光パルスを無線信号に変換する複数の無線基地局と、
を有する光通信システム。
【請求項4】
インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、
前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波ステップと、
前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐ステップと、
前記光分岐ステップで4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、
前記信号変調ステップで変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波ステップと、
前記第1光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波ステップと、
前記第2光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、
を順に行う光通信方法。
【請求項5】
インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、
前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波ステップと、
前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐ステップと、
前記光分岐ステップで4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、
前記信号変調ステップで変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波ステップと、
前記第1光合波ステップでクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波ステップと、
前記第2光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波ステップと、
前記第3光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、
を順に行う光通信方法。
【請求項1】
インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、
前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、
前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波器と、
前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐器と、
前記光分岐器で4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、
前記信号変調器で変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波器と、
前記第1光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波器と、
前記第2光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、
を備える送信器。
【請求項2】
インコヒーレント光又はASE光を出力する光源と、
前記光源からの光を光パルスに変調する光パルス変調器と、
前記光パルス変調器が変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波器と、
前記分波器が出力する光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐器と、
前記光分岐器で4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調器と、
前記信号変調器で変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波器と、
前記第1光合波器でクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波器と、
前記第2光合波器でグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波器と、
前記第3光合波器で波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波器と、
を備える送信器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の送信器と、
前記送信器で波長多重された光信号を分波する波長フィルタと、
前記波長フィルタからの波長毎の光パルスを無線信号に変換する複数の無線基地局と、
を有する光通信システム。
【請求項4】
インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、
前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波して2波長の光パルスを出力する分波ステップと、
前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4分岐する光分岐ステップと、
前記光分岐ステップで4分岐した光パルスを2つずつ2グループに分け、グループ固有の周波数帯の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、
前記信号変調ステップで変調されたグループ内の光パルスの一方を他方より遅延させてグループ毎に合波する第1光合波ステップと、
前記第1光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第2光合波ステップと、
前記第2光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、
を順に行う光通信方法。
【請求項5】
インコヒーレント光又はASE光を光パルスに変調する光パルス変調ステップと、
前記光パルス変調ステップで変調した光パルスを分波してm(mは2以上の自然数)波長の光パルスを出力する分波ステップと、
前記分波ステップで分波した光パルスをそれぞれ4n(nは自然数)分岐する光分岐ステップと、
前記光分岐ステップで4n分岐した光パルスを2nずつ2グループに分け、さらに各グループ内の光パルスを2つずつnクラスに分け、グループ固有の周波数帯でクラス固有の周波数の変調信号で光パルスを変調する信号変調ステップと、
前記信号変調ステップで変調されたクラス内の光パルスの一方を他方より遅延させてクラス毎に合波する第1光合波ステップと、
前記第1光合波ステップでクラス毎に合波された光パルスをそれぞれクラス固有の遅延量で遅延させてグループ毎に合波する第2光合波ステップと、
前記第2光合波ステップでグループ毎に合波された一方の光パルスを他方より遅延させて波長毎に合波する第3光合波ステップと、
前記第3光合波ステップで波長毎に合波された光パルスを波長多重する光波長合波ステップと、
を順に行う光通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−9025(P2013−9025A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138292(P2011−138292)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
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