説明

送信装置、受信装置、通信システム、通信方法、および集積回路

【課題】NLP MU−MIMOシステムにおいてDMRSを空間多重してDMRS挿入によるオーバーヘッドの増加を最小限に抑えながら、端末装置において正常にデータ信号の振幅および位相(複素利得)受信ゲインを推定する。
【解決手段】複数の受信装置に対して同一時刻・同一周波数でデータ信号を送信する送信装置であって、第1の受信装置宛の復調用参照信号と、前記第1の受信装置とは異なる第2の受信装置宛の復調用参照信号とを、同一時刻・同一周波数で送信する送信部、
を有することを特徴とする送信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、通信システム、通信方法、および集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
<MIMO>
近年、無線データ通信の高速化を限られた周波数帯域で実現するため、周波数利用効率向上のための研究が多くなされてきた。その中でも、複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすMIMO(Multi−Input Multi−Output;多入力多出力)技術は注目されている。
【0003】
<LP MU−MIMO>
MIMOには、基地局装置(Base Station: BS)が1つの端末装置(Mobile Station:MS)に同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSingle−User MIMO(SU−MIMO)と、異なる端末装置に同一時刻・同一周波数で信号を送信するMulti−User MIMO(MU−MIMO)がある。
【0004】
SU−MIMOは、端末装置が持つアンテナ数より多くのストリームを多重できないため、最大ストリーム数は端末装置の物理的なアンテナ数により制限される。一方で、基地局装置は端末装置よりも多くのアンテナを持つことができるため、基地局装置の余ったアンテナを最大限活かすためには、MU−MIMOも必須となる。既にLTE(Long Term Evolution)やLTE−Advancedでは、線形プレコーディング(Linear Precoding:LP)を用いたダウンリンク(Downlink:DL)MU−MIMOが仕様化されている(下記非特許文献1参照)。
【0005】
<NLP MU−MIMO>
しかし、LPを用いたMU−MIMO(LP MU−MIMO)は、基地局装置が線形フィルタを乗算することで、送信信号を直交させて、端末装置間の干渉(Multi−User Interference:MUI)を除去しなければならず、空間多重できる端末装置の組み合わせの柔軟性が低下してしまう。
【0006】
一方で、空間多重を実現する別の方法として、非線形プレコーディング(Nonlinear Precoding:NLP)MU−MIMOが提案されている。NLP MU−MIMOにおいて、端末装置は、受信信号を同相成分(In−phase channel:I−ch)と直交成分(Quadrature channel:Q−ch)の方向に、一定の幅(Modulo幅)の整数倍だけ平行移動した点を同一の点とみなすModulo演算を行う。これにより、基地局装置は、Modulo幅の任意の整数倍の信号(摂動ベクトル)を変調信号に加算可能となり、摂動ベクトルを適切に選択して各端末装置宛の信号に加算して送信電力を低減する(下記非特許文献2参照)。
【0007】
<VP MU−MIMO>
端末装置が受信信号に対してModulo演算を施すことによって、基地局装置は、各変調信号に対してModulo幅の任意の整数倍の信号を加算する自由度を得る。この加算可能な信号を摂動ベクトル(Perturbation Vector)と呼ぶ。そして、この摂動ベクトルのうち最も電力効率を改善するものを、空間多重する全ての端末装置の伝搬路状態を考慮して、全探索する方法がVP(Vector Perturbation)MU−MIMO方式である。VP MU−MIMOは基地局装置の演算量が大きいものの、フル送信ダイバーシチ利得を得ることができ、非常に良好な特性を示すNLP
MU−MIMO方式である(下記非特許文献2参照)。
【0008】
<THP MU−MIMO>
VP MU−MIMOと異なり、各端末装置が受けるユーザ間干渉を考慮して、逐次的に各端末装置宛の信号に加算する摂動ベクトルを算出する方法をTHP(Tomson−Harashima precoding)MU−MIMOと呼ぶ。THP MU−MIMOは、基地局装置の送信処理の複雑度が低いものの、全端末装置でフル送信ダイバーシチを得ることができない(下記非特許文献3参照)。
【0009】
<LR−THP>
また、THP MU−MIMOに、格子基底縮小(Lattice Reduction:LR)という処理を加えることで、VP MU−MIMOより少ない演算量でフル送信ダイバーシチ利得を得ることができる方法がLR−THPである(下記非特許文献3参照)。
【0010】
<DMRS>
NLP MU−MIMOシステムにおいては、基地局装置が、DMRS(DeModulation Reference Signal:復調用参照信号)を各端末装置に対して送信する必要がある。しかし、基地局装置がデータ信号と同じ非線形プレコーディングをDMRSに施して送信しても、端末装置は、伝搬路推定することができないという問題がある。
【0011】
DMRSは、基地局装置が、NLP MU−MIMOによってプレコーディングを施したデータ信号の振幅と位相を予め各端末装置に通知するための信号である。DMRSに非線形プレコーディングを施したとすると基地局装置は、DMRSに対して摂動ベクトルを加算して(またはModulo演算を施して)から送信するため、端末装置においてもDMRSに対してModulo演算を施す必要がある。そのため、端末装置は、Modulo演算に必要なModulo幅をあらかじめ知っておく必要がある。Modulo幅は、受信信号における変調信号の振幅に比例するため、端末装置は、非線形プレコーディング後のデータ信号の受信ゲイン(伝搬路の複素複素利得)を知る必要がある。しかし、端末装置は、DMRSを用いて伝搬路推定をしなければ、受信ゲイン(伝搬路の複素複素利得)を知ることができない。つまり、端末装置は、「DMRSから伝搬路推定しなければ受信ゲイン(伝搬路の複素複素利得)が得られないが、その受信ゲインを知らなければ、DMRSを伝搬路推定できない。」という状態となるため、上記問題が起こる。
【0012】
そこで、特許文献1に記載の技術では、直交した無線リソース(時間方向および周波数方向に分割した領域であって、異なるデータ信号や参照信号を割り当てても互いに干渉しない領域)で、各端末装置にDMRSを送信する。この場合、端末装置は、DMRSにModulo演算を施す必要が無いため、受信ゲインを得ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−182894号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】3GPP Technical Specification 36.211 v8.9.0
【非特許文献2】B.M.Hochwald,C.B.Peel,A.L.Swindlehurst,“A Vector−Perturbation Technique for Near−Capacity MUMIMO Part II Perturbation,” IEEE TRANSACTIONS ON COMMUNICATIONS, VOL.53,NO.3,MARCH 2005
【非特許文献3】F. Liu, L. Jiang, C. He, “Low complexity lattice reduction aided MMSE precoding design for MIMO systems,” Proceedings of ICC 2007, pp. 2598 − 2603, June 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1に示したように、直交した無線リソースに各端末装置宛のDMRSを配置する方法は、DMRS専用の無線リソースが端末装置数分だけ必要であるため、DMRS挿入によるオーバーヘッドの増加が大きくなるという問題があった。
【0016】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、NLP MU−MIMOシステムにおいてDMRSを空間多重してDMRS挿入によるオーバーヘッドの増加を最小限に抑えながら、端末装置において正常にデータ信号の振幅および位相(複素利得・受信ゲイン)を推定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一観点によれば、複数の受信装置に対して同一時刻・同一周波数でデータ信号を送信する送信装置であって、第1の受信装置宛の復調用参照信号と、前記第1の受信装置とは異なる第2の受信装置宛の復調用参照信号とを、同一時刻・同一周波数で送信する送信部、を有することを特徴とする送信装置が提供される。
【0018】
送信装置において、空間多重された復調用参照信号(DMRS)は、一つの無線リソースで全移動局装置に対して復調用参照信号を送信できるので、データ信号を配置するための無線リソースを十分確保しながら、複数の復調用参照信号を全移動局装置に送信することができる。また各移動局装置(下記受信装置)は、複数の復調用参照信号を用いて伝搬路推定することができる。そのため本発明を用いれば復調用参照信号の挿入損を大きく低減できる。
【0019】
前記復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算する非線形プレコーディング部を有することが好ましい。また、前記復調用参照信号に対して、非線形プレコーディングを施す非線形プレコーディング部を有するようにしても良い。
【0020】
前記送信部は、同一時刻・同一周波数で複数のデータ信号を送信し、前記非線形プレコーディング部は、前記復調用参照信号を、前記データ信号と同じ非線形プレコーディング処理することが好ましい。これにより、データ信号と全く同じフィルタを用いて同じ原理で非線形プレコーディングを行うことができる。
【0021】
また、復調用参照信号を補正するDMRS補正部を有するようにしても良い。前記DMRS補正部は、前記復調用参照信号に2次元ユークリッド互除法を適用する2次元ユークリッド互除法部を有することが好ましい。また、前記2次元ユークリッド互除法部は、第1の前記復調用参照信号から、第2の前記復調用参照信号、第2の前記復調用参照信号の位相を90度回転させた信号、第2の前記復調用参照信号の位相を180度回転させた信号、および第2の前記復調用参照信号の位相を270度回転させた信号を減算して、差分ベクトル算出部を有するようにすると良い。
【0022】
また、本発明は、復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算する摂動ベクトル加算部を有することを特徴とする受信装置である。前記信号を加算した復調用参照信号を用いて伝搬路推定する仮伝搬路推定部を有することが好ましい。複数の異なる前記信号を選択する摂動ベクトル候補選択部と、前記信号それぞれを用いて前記仮伝搬路推定部で伝搬路推定した伝搬路推定結果に基づいて、1つの前記信号を選択する摂動ベクトル推定部を有するようにすると良い。また、複数の異なる前記信号に対応する前記伝搬路推定結果それぞれに基づいてデータ信号を軟推定して対数尤度比をそれぞれ算出する復調部と、前記対数尤度比ぞれぞれの分散を算出する摂動ベクトル評価値算出部と、を有し、前記摂動ベクトル推定部は、前記分散のうち最も大きいものに対応する前記信号を選択することが好ましい。複数の前記復調用参照信号に対して2次元ユークリッドの互除法を適用し、既約ベクトルを算出する2次元ユークリッドの互除法部を有することが好ましい。前記既約ベクトルを用いて伝搬路の複素利得を算出する複素利得算出部を有することが好ましい。
【0023】
また、本発明は、復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算する非線形プレコーディング部と、復調用参照信号と他の信号を、同一時刻・同一周波数で送信する送信部とを有する送信装置と、復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算する摂動ベクトル加算部を有する受信装置と、を有することを特徴とする通信システムである。
【0024】
また、本発明は、復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算するステップと、復調用参照信号と他の信号を、同一時刻・同一周波数で送信するステップを有する送信方法と、復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算するステップを有する受信方法と、を有することを特徴とする通信方法である。
【0025】
また、本発明は、復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算する非線形プレコーディング部と、復調用参照信号と他の信号を、同一時刻・同一周波数で送信するステップを有する送信部と、を有することを特徴とする集積回路である。
【0026】
また、本発明は、復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算する摂動ベクトル加算部を有することを特徴とする集積回路である。
【0027】
まあ、本発明は、上記に記載の通信方法を、コンテンツに実行させるためのプログラムであっても良く、当該プログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る通信システムの一構成例を示す概念図である。
【図2】本実施形態に係る通信システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【図3】本実施形態に係る基地局装置の概略構成例を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る固有信号の構成の一例を示す概略図である。
【図5A】本実施形態に係るフレームの構成の一例を示す概略図である。
【図5B】第1から第Nまでの各アンテナa101−nで送信するフレームの第1の構成例を示す図である。
【図5C】第1から第Nまでの各アンテナa101−nで送信するフレームの第2の構成例を示す図である。
【図6】本実施形態に係る端末装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図7】DMRS伝搬路推定部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図8】2つのDMRS(DMRS1およびDMRS2と呼ぶ。)の位置の一例を信号点平面上に示す図である。
【図9】既約ベクトルが、QPSKの信号点と一致しない位置の一例を信号点平面上に示す図である。
【図10】2次元ユークリッドの互除法部の一構成例を示す図である。
【図11】DMRS補正部の一構成例を示す図である。
【図12】DMRS伝搬路推定部(a)と、複素利得算出部(b)、とを示す図である。
【図13】非線形プレコーディング部の一構成例を示す図である。
【図14】非線形プレコーディング部の動作を示すフローチャート図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態による基地局装置の概略構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
(第1の実施形態: 対数尤度比の分散ベース)
<通信システム1について>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信システム1の一構成例を示す概念図である。通信システム1は、基地局装置A1、および、第1から第Nまでの端末装置B11〜B1Nを具備する(図1は、基地局装置A1が、第1から第4までの端末装置B11、B12、B13、およびB14を選択した場合の一例(N=4)を示す図である。)。
【0031】
基地局装置A1は、共通参照信号(Common Reference Signal:CRS)を送信する。なお、CRSは、基地局装置A1と第1から第4までの端末装置B11〜B14とが、その基準信号を予め記憶する信号である。第1から第4までの端末装置B11〜B14各々は、基地局装置A1が送信したCRSに基づいて伝搬路状態を推定し、推定した伝搬路状態に基づいて伝搬路状態情報を、基地局装置A1に通知する。
【0032】
基地局装置A1は、第1から第4までの端末装置B11〜B14に対して、DMRSおよびデータ信号を送信する。ここで、基地局装置A1は、DMRSおよびデータ信号に対して、プレコーディングを施し、乗算後のDMRSおよびデータ信号を送信する。
【0033】
多重された第1から第4までの端末装置B11〜B14は、基地局装置A1から受信したDMRSに基づいて、プレコーディング処理を伝搬路の一部とみなした等価伝搬路(以下、単に等価伝搬路と称する。)の伝搬路状態を推定し、推定した等価伝搬路の伝搬路状態を示す等価伝搬路状態情報に基づいてデータ信号を取得する。
【0034】
図2は、本実施形態に係る通信システム1の動作の一例を示すシーケンス図である。この図は、図1の場合の通信システム1の動作の例を示す図である。
【0035】
(ステップS101) 基地局装置A1は、第1から第4までの端末装置B11〜B14に、CRSを送信する。その後、ステップS102に進む。
(ステップS102) 第1から第4までの端末装置B11〜B14は、ステップS101で送信されたCRSに基づいて伝搬路状態を推定する。その後、ステップS103に進む。
(ステップS103) 第1から第4までの端末装置B11〜B14は、ステップS102で推定した伝搬路状態に基づいて伝搬路状態情報を算出する。その後、ステップS104に進む。
(ステップS104) 第1から第4までの端末装置B11〜B14は、ステップS103で算出した伝搬路状態情報を、基地局装置A1へ通知する。その後、ステップS105に進む。
【0036】
(ステップS105) 基地局装置A1は、ステップS104で通知された伝搬路状態情報に基づいて、非線形プレコーディングに用いるフィルタを算出する。基地局装置A1は、生成したDMRSおよびデータ信号に対して、当該フィルタを用いて非線形プレコーディングを行い、DMRSおよびデータ信号を生成する。その後、ステップS106に進む。
(ステップS106) 基地局装置A1は、ステップS105で生成したDMRSの信号を、第1から第4までの端末装置B11、B12、B13、およびB14へ送信する。その後、ステップS107に進む。
(ステップS107) 第1から第4までの端末装置B11〜B14は、ステップS106で送信されたDMRSの信号に基づいて、等価伝搬路の伝搬路状態を推定する。その後、ステップS108に進む。
(ステップS108) 基地局装置A1は、ステップS105で生成したデータ信号を、各端末装置B11〜B14へ送信する。その後、ステップS109に進む。
(ステップS109) 第1から第4までの端末装置B11〜B14は、ステップS108で推定した等価伝搬路の伝搬路状態を示す等価伝搬路状態情報に基づいて、データ信号を検出して取得する。
【0037】
以下、図1・2では端末装置B11〜B14まで4個多重したが、以降N個の第1から第Nまでの端末装置B11〜B1Nを多重するとする。また、端末装置B11〜B1Nを総称して端末装置B1nと呼ぶ。
【0038】
<基地局装置A1について>
図3は、本実施形態に係る基地局装置A1の概略構成例を示す機能ブロック図である。この図において、基地局装置A1は、第1から第Nまでのアンテナa101−1〜a101−N、第1から第Nまでの受信部a102−1〜a102−N、第1から第NまでのGI(Guard Interval;ガードインターバル)除去部a103−1〜a103−N、第1から第NまでのFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)部a104−1〜a104−N、伝搬路状態情報取得部a105、フィルタ算出部a11、第1から第Nまでの符号部a121−1〜a121−N、第1から第Nまでの変調部a122−1〜a122−N、DMRS生成部a124、固有信号構成部a125、非線形プレコーディング部a13、CRS生成部a141、フレーム構成部a142、第1から第NまでのIFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)部a143−1〜a143−N、第1から第NまでのGI挿入部a144−1〜a144−N、および、第1から第Nまでの送信部a145−1〜a145−Nを含んで構成される。
【0039】
なお、図3の基地局装置A1は、N本のアンテナa101−1〜a101−Nを備え、N個の端末装置を多重する場合の基地局装置である(例えば、図1、2の例では、N=4)。また、図3の基地局装置A1では、一例として上りリンクおよび下りリンクともに直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)方式を用いる場合について説明するが、本発明はこれに限らず、基地局装置A1は、上りリンクおよび下りリンクの一方又は両方で、時間分割多重(Time Division Multiplexing:TDM)方式や周波数分割多重(Frequency Division Multiplexing:FDM)方式を用いてもよい。
【0040】
第1から第Nまでの受信部a102−n(n=1、2、・・・、N)は、第1から第Nまでのアンテナa101−nを介して、各端末装置B1nから送信された信号(搬送波周波数の信号)を受信する。この信号には、伝搬路状態情報が含まれる。第1から第Nまでの受信部a102−nは、受信した信号をダウンコンバージョンし、A/D(アナログ/デジタル)変換することで、ベースバンドのデジタル信号を生成する。第1から第Nまでの受信部a102−nは、生成したデジタル信号を第1から第NまでのGI除去部a103−nに出力する。
【0041】
第1から第NまでのGI除去部a103−nは、第1から第Nまでの受信部a102−nから入力されたデジタル信号からGIを除去し、除去後の信号を第1から第NまでのFFT部a104−nに出力する。
【0042】
第1から第NまでのFFT部a104−nは、第1から第NまでのGI除去部a103−nから入力された信号に対して、FFTを行うことで、周波数領域の信号を生成する。第1から第NまでのFFT部a104−nは、生成した周波数領域の信号を伝搬路状態情報取得部a105に出力する。
【0043】
伝搬路状態情報取得部a105は、第1から第NまでのFFT部a104−nから入力された信号を復調し、復調した情報から伝搬路状態情報を抽出する。伝搬路状態情報取得部a105は、抽出した伝搬路状態情報をフィルタ算出部a11に出力する。なお、第1から第NまでのFFT部a104−nが出力する信号のうち伝搬路状態情報の信号以外の信号は、制御部(図示せず)で復調される。復調された情報のうち制御情報は基地局装置A1の制御に用いられ、また、制御情報以外のデータは他の基地局装置やサーバ装置等へ送信される。
【0044】
フィルタ算出部a11は、伝搬路状態情報取得部a105から入力された伝搬路状態情報に基づいて、非線形プレコーディングに用いるフィルタを算出する。フィルタ算出部a11が行うフィルタ算出処理の詳細については、後述する。フィルタ算出部a11は、算出したフィルタを非線形プレコーディング部a13に入力する。
【0045】
第1から第Nまでの符号部a121−nには、各端末装置B1n宛(例えば、図1、2の例では、N=4)の情報ビット(データ)が入力される。第1から第Nまでの符号部a121−nは、入力された情報ビットを誤り訂正符号化し、符号化後の符号化ビットを第1から第Nまでの変調部a122−nに出力する。
【0046】
第1から第Nまでの変調部a122−nは、第1から第Nまでの符号部a121−nから入力された符号化ビットを変調することで、端末装置B1n宛のデータ信号を生成する。第1から第Nまでの変調部a122−nは、生成したデータ信号を固有信号構成部a125に出力する。なお、基地局装置A1は、伝搬路状態情報に基づいて第1から第Nまでの変調部a122−nで用いる変調方式を決定し、決定した変調方式を示す変調情報を、変調部a122−nに出力し、基地局装置A1から第1から第Nまでの端末装置B1nへ通知する。
【0047】
DMRS生成部a124は、第1から第Nまでの各端末装置B1n宛のDMRSを生成する。DMRS生成部a124は、生成したDMRSを、固有信号構成部a125に出力する。
【0048】
固有信号構成部a125は、第1から第Nまでの各変調部122−nから入力された第1から第Nまでの端末装置B1n宛のデータ信号とDMRS生成部a124から入力された第1から第Nまでの端末装置B1n宛のDMRSとを関係付ける。固有信号構成部a125が関係付けた第1から第Nまでの端末装置B1n宛の情報各々を、第1から第Nまでの端末装置B1nの固有信号という。固有信号構成部a125は、関係付けることで生成した第1から第Nまでの端末装置B1nの固有信号各々を、非線形プレコーディング部a13に出力する。
【0049】
非線形プレコーディング部a13は、固有信号構成部a125から入力された第1から第Nまでの端末装置B1nの固有信号(データ信号およびDMRS)に対して非線形プレコーディングを行う。非線形プレコーディング部a13が行う非線形プレコーディングの詳細については、後述する。非線形プレコーディング部a13は、非線形プレコーディングを行った固有信号を、フレーム構成部a142に出力する。
【0050】
CRS生成部a141は、基地局装置A1と第1から第Nまでの端末装置B1nで既知の基準信号を有するCRSを生成し、生成したCRSをフレーム構成部a142に出力する。
【0051】
フレーム構成部a142は、非線形プレコーディング部a13から入力された固有信号、および、CRS生成部a141から入力されたCRSをマッピングする。なお、フレーム構成部a142は、固有信号とCRSとを別のフレームにマッピングしてもよいし、同じフレームにマッピングしてもよい。例えば、CRSのみをあるフレームにマッピングし、CRSおよび固有信号を他のフレームにマッピングしてもよい。なお、基地局装置A1は、あらかじめ決められたマッピングに従ってCRSと固有信号をフレームにマッピングし、第1から第Nまでの端末装置B1nは、マッピングをあらかじめ把握しているものとする。
【0052】
フレーム構成部a142は、マッピング後の信号のうちアンテナa101−nで送信する信号を、第1から第NまでのIFFT部a143−nに、フレーム単位で出力する。
【0053】
第1から第NまでのIFFT部a143−nは、フレーム構成部a142から入力された信号に対して、IFFTを行うことで、時間領域の信号を生成する。第1から第NまでのIFFT部a143−nは、生成した時間領域の信号を第1から第NまでのGI挿入部a144−nに出力する。
【0054】
第1から第NまでのGI挿入部a144−nは、第1から第NまでのIFFT部a143−nから入力された信号に対して、ガードインターバルを付与し、付与後の信号を第1から第Nまでの送信部a145−nに出力する。
【0055】
第1から第Nまでの送信部a145−nは、第1から第NまでのGI挿入部a144−nから入力された信号(ベースバンドのデジタル信号)をD/A(デジタル/アナログ)変換する。第1から第Nまでの送信部a145−nは、変換後の信号をアップコンバージョンすることで搬送波周波数の信号を生成する。第1から第Nまでの送信部a145−nは、生成した信号を第1から第Nまでのアンテナa101−nを介して送信する。
【0056】
図4は、本実施形態に係る固有信号の構成の一例を示す概略図である。この図において、横軸は時間を表す。この図は、固有信号構成部a125が出力した固有信号を表す。また、この図は、同一の周波数で送信する、第1から第Nまでの端末装置B1nの固有信号の配置を時間軸を揃えて表したものである。
【0057】
なお、図4では、第1から第Nまでの端末装置B1n宛のDMRSを「DMRS−MSn」との表記で表している。この図は、固有信号が、第1から第Nまでの端末装置B1n毎の信号であってDMRSとデータ信号とから構成されることを示す。例えば、符号S11を付した信号は、端末装置B11宛のDMRS(DMRS−MS11)を示す。
【0058】
図4は、第1から第Nまでの端末装置B1n宛のDMRS各々が、固有信号構成部a125から全て同じ時間に出力されることを示す。また、この図は、第1から第Nまでの各端末装置B1n宛のデータ信号も、固有信号構成部a125から同じ時間に出力されることを示す。なお、上述のように、同時刻に割り当てられたデータ信号同士、DMRS同士はともに非線形プレコーディングa13で空間多重され、基地局装置A1から同一時刻・同一周波数(つまり同一OFDMシンボルの同一サブキャリア)で送信される。また、図4は、DMRSとデータ信号とが、固有信号構成部a125から異なる時間に出力されることを示す。例えば、第1から第Nまでの端末装置B1n宛のDMRSは時間tと時間tに出力され、データ信号はt〜tに出力される。
【0059】
なお、図4における固有信号の構成は一例であり、本発明はこれに限られない。例えば、図4では、端末装置B1n宛のDMRSが出力された後(t以降)にデータ信号が出力されているが、固有信号構成部a125は、データ信号を出力後にDMRSを出力してもよい。また、固有信号構成部a125は、データ信号とDMRSを時間軸上で交互に出力してもよいし、その他の順序で出力してもよい。
【0060】
また、図5Aは、本実施形態に係るフレームの構成の一例を示す概略図である。この図は、フレーム構成部a142が信号をマッピングしたフレームの構成を示す。また、この図は、第1から第Nまでの各アンテナa101−nで送信するフレームの構成を、時間軸を揃えて表したものである。
【0061】
なお、図5Aでは、第1から第Nまでのアンテナa101−nから送信するCRSを「CRS−Txn」との表記で表している。この図は、第1から第Nまでのアンテナa101−n毎のフレーム各々が、CRSと固有信号(データ信号とDMRSから構成される非線形プレコーディング後の固有信号)とから構成されることを示す。例えば、符号S21を付した信号は、アンテナa101−1で送信するCRS(CRS−Tx1)を示す。また、符号S22を付した信号は、アンテナa101−1で送信する固有信号であって、非線形プレコーディング後の固有信号を示す。
【0062】
図5Aは、アンテナa101−nで送信するCRS各々が、フレーム構成部a142で互いに異なる時間帯域に配置され、基地局装置A1から送信されることを示す。例えば、アンテナa101−1で送信されるCRSは時間tに送信され、アンテナa101−2で送信されるCRSは時間tに送信される。
【0063】
また、図5Aは、CRSと固有信号とが、フレーム構成部a142で異なる時間帯域に配置されることを示す。例えば、アンテナa101−nで送信するCRSは時間t〜tに送信される時間帯域に配置され、固有信号はtN+1以降の帯域に配置される。また、この図は、第1から第Nまでのアンテナa101−nで送信する固有信号が、全てフレーム構成部a142で同じ時間帯域に配置されることを示す。
【0064】
なお、図5Aにおけるフレームの構成は一例であり、本発明はこれに限られない。例えば、図5Aでは、アンテナa101−nで送信するCRSの全てが先の時間帯域(tN+1より前)に配置され、後の時間帯域(tN+1以降)に固有信号が配置されているが、フレーム構成部a142は、固有信号を先の時間帯域に配置してCRSを後の時間帯域に配置してもよい。また、フレーム構成部a142は、固有信号とCRSとを交互する時間帯域に配置してもよいし、他の順序で配置してもよい。例えば、フレーム構成部a142は、アンテナa101−1で送信するCRSを時間tN+1以降の時間帯域に配置し、固有信号を時間tN+1より前の時間帯域に配置してもよい。なお、基地局装置A1は、固有信号の送信を開始する前には、CRSのみを配置したフレームを送信する。
【0065】
さらに図5Bおよび図5Cに、第1から第Nまでの各アンテナa101−nで送信するフレームの一構成例を示す。図4および図5Aでは、DMRSとデータ信号、または、CRSと固有信号(DMRSとデータ信号が含まれる。)を時間方向に並べた例を図示したが、図5Bおよび図5Cに示すように、時間方向(t)および周波数方向(f)の2次元マトリックス上にCRS、DMRS、およびデータ信号を配置してもよい。
【0066】
<端末装置B1nについて>
図6は、本実施形態に係る端末装置B1nの一構成例を示す機能ブロック図である。この図において、端末装置B1nは、アンテナb101、受信部b102、GI除去部b103、FFT部b104、信号分離部b105、CRS用伝搬路推定部b107、DMRS用伝搬路推定部b12、伝搬路補償部b106、Modulo演算部b109、復調部b110、復号部b111、伝搬路状態情報生成部b108、IFFT部b131、GI挿入部b132、および、送信部b133を含んで構成される。
【0067】
受信部b102は、アンテナb101を介して、各端末装置B1nから送信された信号(搬送波周波数の信号)を受信する。受信部b102は、受信した信号をダウンコンバージョンし、A/D(アナログ/デジタル)変換することで、ベースバンドのデジタル信号を生成する。受信部b102は、生成したデジタル信号をGI除去部b103に出力する。
【0068】
GI除去部b103は、受信部b102から入力されたデジタル信号からGIを除去し、除去後の信号をFFT部b104に出力する。
【0069】
FFT部b104は、GI除去部b103から入力された信号に対して、高速フーリエ変換を行うことで、周波数領域の信号を生成する。FFT部b104は、生成した周波数領域の信号を信号分離部b105に出力する。
【0070】
信号分離部b105は、基地局装置A1から通知されたマッピング情報に基づいて、FFT部b104から入力された信号をデマッピングする。信号分離部b105は、デマッピングした信号のうち、CRSをCRS用伝搬路推定部b107に出力し、DMRSをDMRS用伝搬路推定部b12に出力する。信号分離部b105は、データ信号を伝搬路補償部b106に出力する。さらに信号分離部b105は、データ信号をDMRS用伝搬路推定部b12に入力する。
【0071】
CRS用伝搬路推定部b107は、信号分離部b105から入力されたCRSに基づいて伝搬路状態を推定し、推定した伝搬路状態を示す情報を伝搬路状態情報生成部b108に出力する。
【0072】
DMRS用伝搬路推定部b12は、信号分離部b105から入力されたDMRSに基づいて非線形プレコーディングに用いるフィルタを伝搬路の一部とみなした等価伝搬路の伝搬路状態を推定する。なお、DMRS用伝搬路推定部b12の詳細については後述する。DMRS用伝搬路推定部b12は、推定した等価伝搬路の伝搬路状態を示す等価伝搬路状態情報を伝搬路補償部b106に出力する。伝搬路補償部b106は、DMRS用伝搬路推定部b12から入力された等価伝搬路状態情報を用いて、信号分離部b105から入力された信号に対して伝搬路補償を行う。伝搬路補償部b106は、伝搬路補償後の信号をModulo演算部b109に出力する。
【0073】
Modulo演算部b109は、基地局装置A1から通知された変調情報に基づいて、伝搬路補償部b106から入力された信号に対して、Modulo演算を行う。Modulo演算は、下式で表すことが出来る。
mod(α)=α-floor((α+τ/2)/τ)τ-i×floor((α+τ/2)/τ)τ (1−1)
【0074】
ここで、式(1−1)は信号αにModulo幅τのModulo演算を施した場合を示している。また、floor(x)はxを超えない最大の整数を示し、iは虚数単位である。また、τはModulo幅を表す。データ信号の変調方式がQPSKならばτは、QPSK信号の平均振幅の2√2倍、16QAMならば16QAM信号の8/√10倍、64QAMならば64QAM信号の16/√42倍にすることが望ましい。ただし、基地局装置と端末装置とで共通の値を用いればModulo幅は他の値でもよい。
【0075】
Modulo演算部b109は、Modulo演算後の信号を復調部b110に出力する。
復調部b110は、基地局装置A1から通知された変調情報が示す変調方式で、Modulo演算部b109から入力された信号を復調する。復調部b110は、復調後の情報(硬判定した符号化ビット又は符号化ビットの軟推定値)を復号部b111に出力する。
【0076】
復号部b111は、復調部b110から入力された情報を復号することで、情報ビットを取得し、取得した情報ビットを出力する。
【0077】
伝搬路状態情報生成部b108は、CRS用伝搬路推定部b107から入力された伝搬路状態から伝搬路状態情報を生成する(伝搬路状態情報生成処理という)。ここで、推定した伝搬路状態を行ベクトルh=[hn1,hn2,…,hnN]とおく。hn1,hn2,…hnNはそれぞれアンテナa101−1、アンテナa101−2、…、アンテナa101−Nと端末装置B1nの間の伝搬路状態である。伝搬路状態情報生成部b108は、必ずしも行ベクトル|h|をそのまま伝搬路状態情報にして基地局装置A1に通知する必要は無い。例えば、行ベクトルのノルム|h|を、所定の数Cに正規化した行ベクトルC×h/|h|を伝搬路状態情報として、基地局装置A1に通知しても良いし、あらかじめ決められた値に近似したものを伝搬路状態情報として基地局装置A1に通知してもよい。
【0078】
伝搬路状態情報生成部b108は、生成した伝搬路状態情報を変調し、変調後の伝搬路状態情報の信号をIFFT部b131に出力する。
【0079】
IFFT部b131は、伝搬路状態情報生成部b108から入力された信号に対して、逆高速フーリエ変換を行うことで、時間領域の信号を生成する。IFFT部b131は、生成した時間領域の信号をGI挿入部b132に出力する。
【0080】
GI挿入部b132は、IFFT部b131から入力された信号に対して、ガードインターバルを付与し、付与後の信号を送信部b133に出力する。
【0081】
送信部b133は、GI挿入部b132から入力された信号(ベースバンドのデジタル信号)をD/A(デジタル/アナログ)変換する。送信部b133は、変換後の信号をアップコンバージョンすることで搬送波周波数の信号を生成する。送信部b133は、生成した信号を、アンテナb101を介して送信する。
【0082】
<フィルタ算出部a11>
図3に示すフィルタ算出部a11は、伝搬路状態情報取得部a105から入力された伝搬路状態情報から伝搬路行列Hを構成する。Hは、N行N列の行列であり、p行q列成分が、p番目の端末装置B1pと基地局装置のq番目のアンテナa101−qの間の伝搬路の複素利得を示す(ここでpとqは1からNまでの任意の整数である。)。つまり、各端末装置B1pから通知された伝搬路状態情報から取得した伝搬路状態が行ベクトルとなり、全端末装置に対応する行ベクトルを各行に持つ行列を生成することで伝搬路行列Hを生成できる。また端末装置B1nで伝搬路状態情報のノルムが正規化されていても基地局装置A1は、端末装置B1nから通知された伝搬路状態情報をそのまま、つまり、正規化後の伝搬路状態を各行に用いて伝搬路行列Hを生成する。
【0083】
フィルタ算出部a11は、伝搬路行列Hの逆行列W(=H−1)を算出し、非線形プレコーディング部a13に入力する。
【0084】
<非線形プレコーディング部a13詳細>
固有信号構成部a125から入力された各固有信号をsnとおき、全s1〜sNを各成分に持つ縦ベクトルをsとする。ここで固有信号とは、テータ信号およびDMRS生成部a124で生成されたDMRSを示す。ここでDMRS信号はデータ信号とは独立にτの値を決めることが出来るが、基地局装置と端末装置とで共通の値を用いる必要がある。例えばDMRS信号がQPSK信号の1点に一致するとすれば、データ信号が16QAMで変調されていてもτ=2√2とする。非線形プレコーディング部a13は、フィルタWを乗算後の送信信号のノルムが最小となるようなN次元整数縦ベクトルz1とz2の組み合わせを探索する。これを式で表すと以下のようになる。
(Z1,Z2)=argmin(z1,z2)|W(s+z1τ+iz2τ)| (1−2)
【0085】
右辺のノルム|W(s+z1τ+iz2τ)|を最小にする(z1,z2)の組み合わせを(Z1,Z2)とおく。z1とz2の各成分はいかなる整数をも取り得るので、総当たりで探索するのは不可能である。そこで、z1とz2の各成分の探索範囲を、あらかじめ決められた範囲(たとえば絶対値がLBS以下の整数:[−LBS,−LBS+1,...,−2,−1,0,1,2,...,LBS−1,LBS])に限定する。このように信号点Wsを中心とした点を候補にして探索を行うのが望ましいが、これ以外の方法で、ノルムを最小とする点を探索してもよい。いまz1τ+iz2τを摂動ベクトルと呼ぶ。算出した(Z1,Z2)を用いた信号x=W(s+Z1τ+iZ2τ)の、電力正規化を行う。
【0086】
基地局装置A1は、送信電力を一定にするために、一定数のサブキャリアおよび一定数のOFDMシンボル(「電力正規化単位」と呼ぶ。)内のデータ信号の総送信電力を正規化しなければならない。電力正規化単位は、例えば図5Bや図5Cに示したフレーム単位全体を示す。まず、非線形プレコーディングにより算出したデータ信号xの電力の電力正規化単位に亘る総和Pを算出する。1つの電力正規化単位のデータ信号の送信に基地局装置A1が割り当てられる総電力がPtrであるとすると、電力正規化係数g( =(P/Ptr1/2 )を算出する。非線形プレコーディング部a13は電力正規化係数gの逆数を固有信号x(データ信号およびDMRS)に乗算し、乗算後のデータ信号をフレーム構成部a142に入力する。ここで、信号xの各成分は、順番に第1から第Nまでの各アンテナa101−1〜a101−Nで送信する送信信号を示す。
【0087】
なお、端末装置B1nでは、DMRS信号自体がg−1倍されているので、DMRS用伝搬路推定部b12で伝搬路推定し、伝搬路補償部b106で、データ信号に対して振幅をg倍して補償することが出来る。すなわち受信したデータ信号をg倍することで正しく信号を検出できる。
【0088】
以上のように、本発明に係る非線形プレコーディング部a13は電力の正規化も含めてデータ信号と同じ非線形プレコーディングをDMRSに対しても施す。
【0089】
<DMRS伝搬路推定部b12詳細>
基地局装置B1でW(=H−1)をデータ信号に乗算しているので理想的な環境では受信信号がHWs=sとなり、データ信号を伝搬路補償する必要が無い。しかし、1)基地局装置A1で電力の正規化を行っており、2)端末装置B1nが伝搬路状態情報をフィードバックした時と基地局装置A1がデータ信号を送信する時とで伝搬路状態が変動するため、あらためて、データ信号受信時に、データ信号と同じプレコーディング処理が施されたDMRSを使ってデータ信号の受信ゲイン(プレコーディングも含めた等価的な伝搬路の複素利得)を推定する必要がある。
【0090】
DMRS伝搬路推定部b12の詳細な構成を図7に示す。DMRS伝搬路推定部b12は、摂動ベクトル候補選択部b121、摂動ベクトル加算部b122、仮伝搬路推定部b123、伝搬路補償部b124、Modulo演算部b125、復調部b126、摂動ベクトル評価値算出部b127、および摂動ベクトル推定部b128から構成される。
【0091】
(ステップS21) まず、摂動ベクトル候補選択部b121が、候補となる摂動ベクトル候補を選択して、選択した摂動ベクトルを摂動ベクトル加算部b122に入力する。ここで候補となる摂動ベクトルZaは、
Za=(z1a+iz2a)τ (1−3)
で表される。ここでz1aとz2aは、N次元縦ベクトルであり、各成分があらかじめ決められた範囲(たとえば絶対値がLMS以下の整数:[−LMS,−LMS+1,...,−2,−1,0,1,2,...,LMS−1,LMS])をとる。そのため式(1−3)の摂動ベクトルの候補は、(2LMS+1)2N個存在する。ここでは、基地局装置A1と端末装置B1nで共通のDMRS用のModulo幅を用いる。
【0092】
なお、式(1−3)において、基地局装置でも摂動ベクトルの候補を同様に制限したが、ここではLBS=LMSであることが望ましいが、端末装置B1nの演算量低減のためLBS>LMSとしても良い。
【0093】
また、第3の実施形態で後述するTHPやLR−THPの場合においては、LBSを決めることが出来ないので、端末装置B1nの演算量によってLMSを決めても良い。
【0094】
(ステップS22) 次に、摂動ベクトル加算部b122は、基準信号g(基地局装置から送信される信号であって、非線形プレコーディング前のDMRS信号)qに摂動ベクトル候補Za=(Z1a+iZ2a)τを加算して信号q+Zaを算出する。摂動ベクトル加算部b122は、信号q+Zaを仮伝搬路推定部b123に入力する。
【0095】
(ステップS23) 次に、仮伝搬路推定部b123は、信号q+Zaで受信したDMRSpを除算する。すると複素利得は、h=p/(q+Za)と推定できる。
【0096】
仮伝搬路推定部b123は、複素利得hの振幅|h|と位相arg(h)とを伝搬路補償部b124、および、摂動ベクトル推定部b128に入力する。
【0097】
(ステップS24) 伝搬路補償部b124は、仮伝搬路推定部b123から入力された振幅および位相を用いて、当該DMRSが配置されたフレーム内のデータ信号を伝搬路補償する。つまり受信信号を複素利得hで除算する。伝搬路補償後のデータ信号をModulo演算部b125に入力する。
【0098】
(ステップS25) Modulo演算部b125は、伝搬路補償部b124が伝搬路補償したデータ信号に対してModulo演算を行う。基地局装置A1と端末装置B1nで共通のデータ信号用のModulo幅を用いる。Modulo演算部b125はModulo演算後のデータ信号を復調部b126に入力する。
【0099】
(ステップS26) 復調部b126は、入力されたModulo演算後のデータ信号に対して、軟推定を行い、軟推定値を摂動ベクトル評価値算出部b127に入力する。
【0100】
なお、復調部b126は軟推定値を対数尤度比(Log Likelihood Ratio:LLR)で算出するとする。LLRは次式で算出する。
【0101】
【数1】

【0102】
【数2】

【0103】

【0104】
復調部b126は式(1−4)と式(1−5)に基づいて、各データ信号に割り当てられた各ビットに対応するLLRを摂動ベクトル評価値算出部b127に入力する。すなわち、QPSKの場合はデータ信号の数×2個、16QAMの場合はデータ信号の数×4個のLLRを算出して、摂動ベクトル評価値算出部b127に入力する。
【0105】
(ステップS27) 摂動ベクトル評価値算出部b127は、入力されたLLRの分散を算出し、算出したLLRの分散および対応するLLRを摂動ベクトル推定部b128に入力する。なおLLRの分散は下式で算出する。
【0106】
【数3】

【0107】
ここで、Vは摂動ベクトルの候補毎に軟推定したデータ信号の個数である。またMは各変調方式に割り当てられたビット数であり、QPSKで2、16QAMで4となる。またLは第v番目のデータ信号に割り当てられたm番目のビットのLLRを示す。
【0108】
(ステップS28) 摂動ベクトル推定部b128は、摂動ベクトル評価値算出部b127から入力された各摂動ベクトル候補に対応するLLRの分散の中で最も大きいものを選択し、最大の分散を有する摂動ベクトルに対応するデータ信号の振幅と位相(「等価伝搬路状態情報」と呼ぶ。)を出力し、DMRS伝搬路推定部b12の外の伝搬路補償部b106(図6)に入力する。
【0109】
LLRの分散が大きいということは、各摂動ベクトル候補を仮定した時に、基地局装置A1から伝わった相互情報量が最も大きいということを示す。LLRは、各ビットが1か0かという「確からしさ・確率」が高いほど、絶対値が大きくなる。そのため、各摂動ベクトル候補を仮定した中で、それぞれのLLRの分散を算出し、LLRの分散が最も大きい摂動ベクトルを選ぶことで、その摂動ベクトルが最も「確からしさ・確率」が高い摂動ベクトルであると推定できる。
【0110】
尚、DMRS伝搬路推定部b12内の伝搬路補償部b124、Modulo演算部b125、および復調部b126は、DMRS伝搬路推定部b12外の伝搬路補償部b106、Modulo演算部b109、および復調部b110とそれぞれ同じ動作を行うので、回路規模低減のため、両構成部分を共通の回路としても良い。また、一度復調部b126で算出した軟推定値のうち摂動ベクトル推定部b128で推定された摂動ベクトルに対応する軟推定値を復号部b111で用いることで、二重に軟推定値を算出することを避けて演算量を低減しても良い。
【0111】
<効果>
本実施形態で示したように、基地局装置がDMRSをNLP MU−MIMOにより、空間多重して送信することで、電力効率良く、DMRS挿入によるオーバーヘッドを低減できる。
【0112】
尚、摂動ベクトルの推定のために軟推定するデータ信号は、フレームの一部のデータ信号でもよい。また、LLRの分散以外の指標を用いて摂動ベクトルを推定してもよい。
【0113】
(第2の実施形態: 2次元ユークリッドの互除法)
第1の実施形態では、端末装置B1nが摂動ベクトルの候補から最尤な摂動ベクトルを推定した。これによりDMRSをNLP MU−MIMOによって空間多重することが可能となった。本実施形態では、本実施形態に係る基地局装置A2と本実施形態に係る端末装置B2nの両装置が、「2次元ユークリッドの互除法」という処理を導入することで、端末装置B2nの演算量を第1の実施形態よりも低減する。
【0114】
また本実施形態に係る基地局装置A2はDMRS補正部a226を有すること以外、本実施形態に係る端末装置B2nにおいてはDMRS伝搬路推定部b22の動作以外、第1の実施形態の基地局装置A1、端末装置B1nと全く同じ構成を有するので、相違する部分を除き詳細な説明は省略する。図15に基地局装置A2の構成を示す。上述の通り、図3に対して、DMRS補正部a226が新たに追加されている。
【0115】
以降、基地局装置A2のDMRS補正部a226と端末装置B2nのDMRS伝搬路推定部b22について詳細に説明する。
【0116】
<2次元ユークリッドの互除法>
本実施形態に係る基地局装置A2および端末装置B2nは、両方とも「2次元ユークリッドの互除法」という処理を行う2次元ユークリッドの互除法部を有する。2次元ユークリッドの互除法部は、本実施形態の特徴部分の1つであるため、原理を先に説明する。
【0117】
2次元ユークリッドの互除法は、通常のユークリッドの互除法を2次元に拡張したアルゴリズムである。ここでは通常のユークリッドの互除法を1次元ユークリッドの互除法と呼ぶ。1次元ユークリッドの互除法は、異なる2つの整数の最大公約数を求めるアルゴリズムである。一例として15と36の最大公約数を求める。まず、15と36のうち大きい方から小さい方を減算する。すると、36−15=21となり、21が得られる。次は15と36のうち小さい方である15と21を対象として、大きい方から小さい方を減算する。すると21−15=9となる。この処理を順に繰り返す。すると、以下のように算出できる。
(36,15)⇒(21,15)⇒(15,6)⇒(9,6)⇒(6,3)⇒(3,3)⇒(3,0)
【0118】
最後に0が出てきたところでアルゴリズムは終了する。残った数の0以外の数「3」が最大公約数となる。以上が1次元ユークリッドの互除法である。
【0119】
次に、これを複素数に拡張する。複素数に拡張したものが、2次元ユークリッドの互除法である。対象とするのは、実部および虚部が整数の複素数(ガウス整数)が2つ有る場合に、両ガウス整数の最大公約数に対応する「基底ベクトル」を算出する方法である。一例として、ガウス整数3+iと−1+iに2次元ユークリッドの互除法を適用する例について説明する。
【0120】
まず、3+iと−1+iのノルム(絶対値)が大きいガウス整数と、+1倍、−1倍、+i倍および−i倍した小さいガウス整数を加算する(ガウス整数を−1倍、+i倍および−i倍することは、それぞれガウス整数の位相を+180度、+90度、+270度回転させることに対応する。)。
すると、
(3+i)+(+1)(−1+i)=2+2i
(3+i)+(−1)(−1+i)=4
(3+i)+(+i)(−1+i)=2
(3+i)+(−i)(−1+i)=4+2i
となる。この4つの値(2+2i、4、2、4+2i)の中で最もノルムが小さいガウス整数は2となる。次に、3+iと−1+iのノルムが小さい方と2を用いて同様の処理を繰り返す。
【0121】
2+(+1)(−1+i)=1+i
2+(−1)(−1+i)=3−i
2+(+i)(−1+i)=1−i
2+(−i)(−1+i)=3+i
この4つの値の中で最もノルムが小さいのは1+iと1−iである。ノルムが同じものが2つ以上ある時は、どちらを選択しても良い。例えば1+iを選択したとして、−1+iと1+iで同様の処理を行うと、
(−1+i)+(+1)(1+i)=2i
(−1+i)+(−1)(1+i)=−2
(−1+i)+(+i)(1+i)=−2+2i
(−1+i)+(−i)(1+i)=0
となる(2つのガウス整数のノルムが等しい時はどちらを、+1倍、−1倍、+i倍および−i倍してもよい。)。
【0122】
よって、0が出てきたので、1+iまたは−1+iが1次元ユークリッドの互除法における最大公約数に相当するもの(「既約ベクトル」と呼ぶ。)であり、以上で2次元ユークリッドの互除法は終了となる。
【0123】
本実施形態は、前に述べたように2次元ユークリッドの互除法を使ってDMRSの伝搬路推定を行うことが特徴であるが、この伝搬路推定の原理を説明する。本実施形態では基準となるDMRSは、必ずQPSK信号の各点のうち1つであるとする。
【0124】
図8に、2つのDMRS(DMRS1およびDMRS2と呼ぶ。)の位置の一例を信号点平面上に示す。ここで、基地局装置は、DMRS1を3+iの位置で送信し、DMRS2が−1+iの位置で送信したとする。また本信号点平面の単位は、QPSK信号の振幅が√2となるようにする。すなわち、QPSKの各信号点は、(±1±i)の点であり、Modulo幅は4となる(便宜上、実施形態1と振幅の単位を変えている。)。また、DMRS1およびDMRS2を示す●とそれ以外の点○はすべてQPSKの信号点、およびQPSKの信号点に対して任意の摂動ベクトルが加算された点であり、図8に示したように格子点上に整列した点となっている。DMRS1は、QPSK信号の−1+iに摂動ベクトル+4が加算された信号である。
【0125】
このような信号点平面において、3+iと−1+iに対して、先ほどの2次元ユークリッドの互除法を実行すれば、「最大公約数」の複素数1+iを得ることが出来る。これは、図8に示した格子点群(○および●)の最小の格子ベクトル(既約ベクトル)を算出したことを意味する。そして、この既約ベクトルルはQPSKの4点のうちいずれかに相当する。また、最初の信号がa(3+i)とa(−1+i)というように、「a」という複素数の共通因数が乗算されている場合は、既約ベクトルもa倍されて、a(1+i)という既約ベクトルを得ること出来る。
【0126】
ここで、端末装置においては、DMRS1およびDMRS2は伝搬路の複素利得hが乗算されたh(3+i)とh(−1+i)である。ここで雑音は無視している。この2つの信号に対して、前述の2次元ユークリッドの互除法を適用すると既約ベクトルh(1+i)が得られる。これは、摂動ベクトルが加算されていないQPSK信号の4点のうち1点に伝搬路の複素利得が乗算された信号である。QPSKの各点はノルムが√2であることが分かっているので、伝搬路の複素利得の絶対値|h|を求めることが出来る。またarg(h)も求めることが出来るので、伝搬路の複素利得hの位相を求めることが出来る。
【0127】
ただし、端末装置はDMRS伝搬路推定時に2次元ユークリッドの互除法で得た信号h(1+i)は、QPSKの4点(±1±i)とhが乗算されたものか判断できないので、仮に(1+i)とおいて位相arg(h)を求める。もし、他の3点(−1+i)、(1−i)および(−1−i)であったとしても、実際の複素利得の位相差は必ず+90度、+180度または+270度のうちいずれかとなる。
【0128】
次に、DMRS1とDMRS2に対してModulo演算を行う。ここでModulo演算は、I−ch、Q−chともに同様の処理を行い、各軸に線対称な処理であって、90度の回転に対称な演算である。そのためarg(h)が90度×整数倍だけ回転しても問題無く、DMRS1とDMRS2に対してModulo演算を施すことが出来る。
【0129】
この場合、Modulo演算後のDMRS1はh(1+i)に、DMRS2はh(−1+i)となる。雑音μ1、μ2を考慮すれば、DMRS1はh(1+i)+μ1、DMRS2はh(−1+i)+μ2となる。ここで端末装置は、非線形プレコーディング前、DMRS1は(1+i)、DMRS2は(−1+i)という形となっていることを知っているので、各DMRSにより、
{h(1+i)+μ1}/(1+i)=h+μ1/(1+i)
{h(−1+i)+μ2}/(−1+i)=h+μ1/(−1+i)
という形で伝搬路推定をすることができる。μ1/(1+i)とμ1/(−1+i)は伝搬路推定誤差であり、DMRS1とDMRS2の伝搬路推定結果を最大比合成することで伝搬路推定誤差を低減できる。
【0130】
ここで、注意すべきなのが、一部のDMRSの組み合わせにおいては、2次元ユークリッドの互除法によって、既約ベクトルに対応するh(±1±i)を算出することができないことがある点である。DMRSが図9のような配置になったときは、既約ベクトルが3+3iとなり、QPSKの信号点と一致しない。このような状態を回避すべく、基地局装置においても、2次元ユークリッドの互除法を用いて、図9のような場合が起こることを判断し、信号点を変えて問題のない2点を送信する。
【0131】
以上が、本実施形態の2次元ユークリッド互除法部の処理の概要である。これらの処理を、2次元ユークリッドの互除法部の構成を示した図10を用いて再度説明する。前述のように、2次元ユークリッドの互除法部300は、基地局装置と端末装置との両方に存在するが、まず、端末装置の2次元ユークリッドの互除法部について説明する。
【0132】
図10に示した2次元ユークリッドの互除法部300は、ベクトル保存部301、差分ベクトル算出部303、差分ベクトルノルム算出部305、収束判定部307、ノルム算出部309からなる。
【0133】
(ステップS31) まず、ベクトル保存部301は、入力された2つのDMRSをノルム算出部309に入力する。ここで2つのDMRSには、基地局装置から送信されたDMRSに、伝搬路の複素利得hが乗算され、さらに雑音が加算されている。
【0134】
(ステップS32) ノルム算出部309は、入力された2つのDMRSのノルムをそれぞれ算出し、各ノルムをベクトル保存部301に入力する。
【0135】
(ステップS33) ベクトル保存部301は、入力された2つのDMRSと対応するノルムを差分ベクトル算出部303に入力する。
【0136】
(ステップS34) 差分ベクトル算出部303は、入力された2つのベクトル(以降、DMRSおよびDMRSに対して再帰的に差分ベクトル算出部303で算出した信号を「ベクトル」と呼ぶ。)のうちノルムが大きいベクトルをaとし、小さいベクトルをbとして、c1=a+b, c2=a−b, c3=a+ib,c4=a−ibの4つのベクトルを算出し、差分ベクトルノルム算出部305に入力する。またベクトルbとベクトルbのノルムをベクトル保存部301に入力する。
【0137】
(ステップS35) 差分ベクトルノルム算出部305は、入力された4つのベクトルc1〜c4のノルムを算出し、最もノルムが小さいベクトルとそのベクトルに対応するノルムをベクトル保存部301に入力し、最もノルムが小さいベクトルのノルムを収束判定部307に入力する。
【0138】
(ステップS36) 収束判定部307は、入力されたノルムと所定の正の数Tとの大小関係を比較する。Tよりノルムが大きい場合、入力されたノルムとベクトルをベクトル保存部301に入力する。Tよりノルムが小さい場合、ベクトル保存部301に、2次元のユークリッドの互除法が終了したことを示す情報を入力する。
【0139】
ここで、前述の2次元ユークリッド互除法の原理のように、ノルムが0になったときを収束条件としないのは、端末装置側では、DMRSが雑音を含むことから、最終的に、収束判定部307のノルムが0にならないからである。しかし、雑音は、DMRSよりも通常小さいので、所定の定数Tを用いて、ノルムがTより小さくなったときに収束したと判定する。
【0140】
Tの値は、次の2つの要素のトレードオフで、事前にコンピュータシミュレーションによってあらかじめ決定しておく。
1)Tが大きくなると、収束判定条件が緩くなり、雑音による誤差が無い時に0でないのに収束していると判定してしまう確率が上昇する。
2)Tが小さくなると、収束判定条件が厳しくなり、雑音による誤差のために、収束したと判定すべきであるにもかかわらず、まだ収束していないと判定してしまうことがある。
そのため、この2つの要素のトレードオフで事前に決めておく。
【0141】
(ステップS37) ベクトル保存部301は、
1)差分ベクトル算出部303から入力されたベクトルと対応するノルム、
2)差分ベクトルノルム算出部305から入力されたベクトルと対応するノルム
の2つを差分ベクトル算出部303に入力し、再びステップS34から処理を繰り返す。
【0142】
(ステップS38) ベクトル保存部301は、収束判定部307から、2次元のユークリッドの互除法が終了したことを示す情報が入力された場合、ベクトルb(既約ベクトル)を出力する。
【0143】
また、基地局装置における2次元ユークリッドの互除法部300は、DMRSに対して伝搬路の複素利得hが乗算されておらず、雑音も加算されていないので収束判定部307は判定条件としているT=0とする。
【0144】
<DMRS補正部a226詳細>
次に、基地局装置A2において2次元ユークリッドの互除法を行うDMRS補正部a226の詳細な構成と動作を説明する。図11は、DMRS補正部a226の構成を示したものである。DMRS補正部a226は、2次元ユークリッドの互除法部300、既約ベクトル確認部320、および摂動ベクトル加算部340、からなる。
【0145】
このDMRS補正部a226は、前述の、既約ベクトルが最小の格子ベクトルと一致しない問題を、基地局装置A2で処理することで、あらかじめ回避することを目的とする。
【0146】
DMRS補正部a226は、まず非線形プレコーディング部a13から摂動ベクトルが加算されたDMRSを取得する。ここで、DMRS補正部a226が取得するDMRSは、摂動ベクトルが加算されている。フィルタWを加算する前の信号(q+z1τ+iz2τ)とする。また、取得するDMRSは1度に2つであり、この2つは、あらかじめ2つずつ対になっており、どの2つを対にするかは基地局装置A2と端末装置B2nとで既知である。
【0147】
次に2次元ユークリッドの互除法部300が、この2つのDMRSに対して2次元ユークリッドの互除法を適用して得た既約ベクトル(「d」とおく。)と非線形プレコーディング部a13から取得した2つのDMRSを既約ベクトル確認部320に入力する。
【0148】
既約ベクトル確認部320は、既約ベクトルdが摂動ベクトル加算前のDMRS信号qすなわちQPSK信号のうちの1つ(±1±i)であれば、非線形プレコーディング部a13から取得した2つのDMRSを再び非線形プレコーディング部a13に入力する。
【0149】
一方、既約ベクトル確認部320は、既約ベクトルdが摂動ベクトル加算前のDMRSすなわちQPSK信号のうちの1つ(±1±i)でない場合、非線形プレコーディング部a13から取得したDMRSを2つとも摂動ベクトル加算部340に入力する。
【0150】
摂動ベクトル加算部340は、非線形プレコーディング部a13から取得したDMRSのうちどちらか一方に対して摂動ベクトルτ(または−τ、iτ、−iτ)を加算する。ここで、どの摂動ベクトルτをどちらのDMRSに加算するかは、乱数などを用いてランダムに選択する。摂動ベクトル加算部340は、摂動ベクトルを加算したDMRSを含む2つのDMRSを再び2次元ユークリッド互除法部300に入力する。
【0151】
2次元ユークリッド互除法部300は、新たなDMRSを用いて再び2次元ユークリッドの互除法を行う。以降、既約ベクトル確認部320が、既約ベクトルdが摂動ベクトル加算前のDMRSすなわちQPSK信号のうちの1つ(±1±i)であると判定するまで、2次元ユークリッドの互除法部300、既約ベクトル確認部320、摂動ベクトル加算部340の処理を続ける。
【0152】
最終的に、既約ベクトル確認部320が、補正後のDMRSを2つ出力し、非線形プレコーディング部a13に入力する。
【0153】
また、非線形プレコーディング部a13は、DMRS補正部a226でDMRSが補正された場合、新たに摂動ベクトルを探索することなく、当該DMRSにフィルタWを乗算し、電力正規化係数gの逆数g−1を乗算する。
【0154】
<DMRS伝搬路推定部b107詳細>
次に、端末装置b2に係るDMRS伝搬路推定部b12の詳細な構成と動作とを説明する。図12(a)は、DMRS伝搬路推定部b12の詳細な構成を示したものである。DMRS伝搬路推定部b12は、2次元ユークリッドの互除法部300と複素利得算出部350から構成される。
【0155】
また複素利得算出部350は,図12(b)に示したように、内部に仮複素利得算出部351、DMRS伝搬路補償部352、DMRS−Modulo部353、およびベクトル除算部354を有する。
【0156】
まず、DMRS伝搬路推定部b12は、端末装置B2nが受信した2つのDMRSを取得する。この2つは、基地局装置におけるDMRS補正部a226でも説明した対となるDMRS(ここではpとpとおく。)である。
【0157】
この2つのDMRSに対して2次元ユークリッドの互除法部300で2次元ユークリッドの互除法を行い、既約ベクトルpredを算出する。なお、既約ベクトルpredは、複素利得hが乗算されているため、DMRS補正部a226で算出した既約ベクトルdとは異なる。ここで前述のように、既約ベクトルpredは、摂動ベクトルが加算されていないQPSK信号の4点のうち1点に伝搬路の複素利得hが乗算され、さらに雑音による誤差を加算した信号である。
【0158】
仮複素利得算出部351は、この既約ベクトルpredが、QPSK信号の4点のうち(1+i)に複素利得が乗算されたものと仮定して、位相θ( =arg(pred/(1+i)) )を求める(前述のように、もし、他の(−1+i)、(1−i)および(−1−i)であったとしても、実際の複素利得の位相差は必ず+90度、−90度または+180度となる。)。QPSKの各点はノルムが√2であることが分かっているので、伝搬路の複素利得の絶対値|h|(=pred/√2)も求めることが出来る。仮複素利得算出部351は、ここで算出した伝搬路の複素利得の絶対値|h|と位相θ( =arg(pred/(1+i)) )をDMRS伝搬路補償部352に入力する。
【0159】
DMRS伝搬路補償部352は、入力された伝搬路の複素利得の絶対値|h|と位相θとを用いて各DMRSpとpの伝搬路補償を行う。具体的には、DMRSの振幅を1/|h|倍し、位相を−θだけ回転する。つまり、
=p/|h|×exp(−2πiθ)
=p/|h|×exp(−2πiθ)
とする。DMRS伝搬路補償部352は、伝搬路補償後のDMRSqとq、伝搬路の複素利得の絶対値|h|、および位相θをDMRS−Modulo部353に入力する。
DMRS−Modulo部353は、入力された伝搬路補償後の各DMRSqとqに対してModulo演算を行って信号e、eを算出する。DMRSは振幅・位相ともに伝搬路補償されているため、通常のQPSK信号に対応するModulo幅τ(=2√2)を用いたModulo演算を行うことができる。DMRS−Modulo部353はModulo演算を行った信号e、eに対して、DMRS伝搬路補償部352から入力された複素利得の絶対値|h|と位相θを用いて、信号pmod1( =|h|×e×exp(2πiθ) )およびpmod2( =|h|×e×exp(2πiθ) )を算出する。その後信号pmod1とpmod2をベクトル除算部354に入力する。
【0160】
ベクトル除算部354は、信号pmod1とpmod2を、端末装置が受信したDMRSをあらかじめ端末装置が把握している各DMRSの基準信号q(すなわち基地局装置で摂動ベクトルが加算される前のDMRSの信号点であり、ここではQPSKの信号点4点のうちいずれか1つ。)で除算することで伝搬路の複素利得h(=pmod1/qまたはpmod2/q)を推定する。ここでDMRSが2つあるため、同じ伝搬路の複素利得hに対する推定値が2つ得られるが、最大比合成することで雑音の影響による誤差を抑えてもよい。ベクトル除算部354は、推定した伝搬路の複素利得hを、伝搬路補償部b106に入力する。
【0161】
<効果>
本実施形態に示したように基地局装置A2と端末装置B2nでそれぞれ2次元ユークリッド互除法に基づく処理を行うことにより、比較的少ない端末装置B2nの演算量によってDMRSをNLP MU−MIMOによる空間多重することが可能となる。これによりDMRSを挿入することによるオーバーヘッドを低減することが可能となる。
【0162】
(第3の実施形態: VP⇒THPなど)
第1の実施形態、第2実施形態に係る基地局装置B1n、B2nは、いずれも非線形プレコーディング部a13およびフィルタ算出部a11でVPを行っていた。本実施形態は、VPより演算量の低いTHPを用いた方式である。本実施形態に係る基地局装置を基地局装置A3とし、本実施形態に係る端末装置を端末装置B31〜B3Nと呼び、任意の1つを端末装置B3nと呼ぶ。
【0163】
本実施形態に係る非線形プレコーディング部を非線形プレコーディング部a33と呼び、本実施形態に係るフィルタ算出部をフィルタ算出部a31と呼ぶ。
【0164】
まず、フィルタ算出部a31では、実施形態1と同じ伝搬路行列Hを算出した後、HをQR分解する。
=QR (3−1)
【0165】
ここでRは上三角行列、Qはユニタリ行列である。またを行列の共役転置とする。Rの対角成分だけ取り出した対角行列をAとおく。AとQを用いて線形フィルタPを下式により算出する。
=QA−1 (3−2)
【0166】
また、AとRを用いて干渉係数フィルタFを下式により算出する。
F=R−1−I (3−3)
ここで、Iはn行n列の単位行列とする。最後に、フィルタ算出部a31は線形フィルタPと干渉係数フィルタFを非線形プレコーディング部a33に入力する。
【0167】
なお、電力正規化を行うために、フィルタ算出部a31で、
g=trace{((P)/Ptr1/2} (3−4)
により電力正規化係数gを算出する。ここで、Pを変調信号の平均電力、PをModulo演算後のデータ信号の平均電力とすると、Cは対角成分が左上から順に
[P,P,P,…P] (3−5)
となる対角行列である。なお、PはModulo幅τによって変化し、P=1とすると、QPSK(τ=2√2)では4/3、16QAM(τ=8/√10)では16/15、64QAM(τ=16/√42)では64/63となる。これは、Modulo演算後のデータ信号が統計的に原点を中心とするModulo幅の範囲に、等確率で分布することを利用したものである。フィルタ算出部a31は、式(3−2)で算出した線形フィルタPにg−1を乗算した行列を新たに線形フィルタPとして非線形プレコーディング部a33に入力する。このときは第1の実施形態に示したような電力の正規化は行わない。
【0168】
非線形プレコーディング部a33の構成を、図13に、その動作を示すフローチャートを図14に示した。以下、順番に非線形プレコーディング部a33内の動作を説明する。
【0169】
(ステップS1) 干渉算出部a131と線形フィルタ乗算部a134は、それぞれ干渉係数フィルタFと線形フィルタ乗算部Pとをフィルタ算出部a31から取得する。
(ステップS2) 送信信号を計算中の端末装置の番号を示す番号nに1を代入する。
(ステップS3) 端末装置B31宛の固有信号s1をv1とおく。
(ステップS4) nにn+1を代入する。すなわちn=2とする。
(ステップS5) 干渉算出部a131は、v1を用いて端末装置B32が受ける干渉信号f2を下式により算出する。
f2=F(2,1)*v1 (3−6)
ここで、F(p,q)は行列Fの2行1列成分を表す。
【0170】
(ステップS6) 干渉減算部a133−2は端末装置B32宛の固有信号s2からf2を減算し、信号s2−f2を算出する。
(ステップS7) 第1のModulo演算部a132−2がs2−f2に対してModulo演算を適用し、信号v2を算出する。
(ステップS8) n=2なので、ステップS4から再び次の端末装置B33宛の信号の演算(ステップS4〜ステップS7)を行う。
【0171】
以降、ステップS4〜S8の処理をn=Nになるまで繰り返すので、一例としてn番目の端末装置B3n宛の信号を算出する処理を説明する。
【0172】
(ステップS4) nの値を1増やす。
(ステップS5) 干渉算出部a131はv1〜v(n−1)を用いて端末装置nが受ける干渉信号fnを下式により算出する。
fn=F(n,1:n−1)*[v1,v2,...,v(n−1)] (3−7)
ここで、F(n,1:n−1)は、行列Fのn行目の1〜n−1列目の成分を示す横ベクトルを示す。
【0173】
(ステップS6) 第nの干渉減算部a133−nは、第nの端末装置B3n宛の固有信号snからfnを減算し、信号sn−fnを算出する。
(ステップS7) Modulo演算部a132−nが、sn−fnに対してModulo演算を適用し、信号vnを算出する。このModulo演算によって各端末装置宛の送信信号電力を低減する。
(ステップS8) n<Nのときは、再びステップS4を行う。またn=NのときはステップS9に進む。
(ステップS9) 信号v=(v1,v2,...,vN)に線形フィルタPを乗算して得た信号をxとおく。ここで第1の実施形態と同様に信号xの各成分は、順番に各アンテナa101−1〜a101−Nで送信する送信信号である。この信号xをフレーム構成部a142に入力する。
【0174】
THPは、VPと同様に摂動ベクトル探索アルゴリズムと考えることが出来ることを説明する。ただし、THPの場合は、真に最適な摂動ベクトルを探索するアルゴリズムではなく,VPと比較して少量の演算量で準最適な摂動べクトルを探索するアルゴリズムである。
【0175】
まず、非線形プレコーディング部a33のModulo演算部a132−2〜a132−Nが無いものと仮定して信号を演算すると、電力の正規化係数が1であるとすれば、非線形プレコーディング部a33は、
x=P(I+F)−1s (3−8)
という演算を行っている。ここでPとFに式(3−2)と(3−3)を代入すると、
x=QA−1{I+(R−1−I)}−1
=QA−1(R−1−1
=Q(R−1s=(Q−1s={(QR)−1s (
3−9)
={(H−1s =H−1s=Ws
となり、式(1−2)において(z1,z2)=(0,0)とした場合に対応する。
【0176】
さらに、Modulo演算部s132−2〜s132−Nは、固有信号sにModulo幅の整数倍の信号をI−ch又はQ−chに加算する処理である。そのため、本実施形態に係る非線形プレコーディング部a33で算出した信号xもx=W(s+z1τ+iz2τ)という式で表すことが出来る。非線形プレコーディング部a33で算出した信号xは必ずしも式(1−2)で表される最適な摂動ベクトルを加算した信号ではないが、Modulo演算による電力抑圧を行っているため準最適な信号xとなり、Modulo演算を行わない場合Wsと比較して必ずノルムが小さくなる。
【0177】
以上、説明したようなアルゴリズムで信号xを算出することで、第1の実施形態のVPのように、候補となる摂動ベクトルを全探索する必要が無くなるため、演算量を低減することが出来る。
【0178】
なお、ここではTHPを用いた準最適な摂動ベクトル探索アルゴリズムを用いる場合について説明したが、オーダリングを用いたTHP、又はLR−THPでも同様に適用可能である。
【0179】
上記の実施の形態において、添付図面に図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0180】
また、本実施の形態で説明した機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。尚、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0181】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【0182】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また前記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明は、通信装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0184】
A1…基地局装置、B11〜B14…端末装置、a11…フィルタ算出部、a13…非線形プレコーディング部、a31…フィルタ算出部、a33…非線形プリコーディング部、a101…アンテナ、a102…受信部、a103…GI除去部、a104…FFT部、a105…伝搬路状態情報取得部、a121…符号化部、a122…変調部、a124…DRMS生成部、a125…固有信号構成部、a133…干渉減算部、a132…Modulo演算部、a134…線形フィルタ乗算部、a141…CRS生成部、a142…フレーム構成部、a143…IFFT部、a144…GI挿入部、a145…送信部、a226…CRS補正部、b12…DMRS用伝搬路推定部、b101…アンテナ、b102…受信部、b103…GI除去部、b104…FFT部、b105…信号分離部、b106…伝搬路補償部、b107…CRS用伝搬路推定部、b108…伝搬路状態情報生成部、b109…Modulo演算部、b110…復調部、b111…復号部、b121…摂動ベクトル候補選択部、b122…摂動ベクトル加算部、b123…仮伝搬路推定部、b124…伝搬路補償部、b125…Modulo演算部、b126…復調部、b127…摂動ベクトル評価値算出部、b128…摂動ベクトル推定部、b131…IFFT部、b132…GI挿入部、b133…送信部、300…2次元ユークリッドの互除去部、301…ベクトル保存部、303…差分ベクトル算出部、305…差分ベクトルノルム算出部、307…収束判定部、309…ノルム算出部、320…既約ベクトル確認部、340…摂動ベクトル加算部、350…複素利得算出部、351…仮複素利得算出部、352…DMRS伝搬路補償部、353…DMRS−Modulo部、354…ベクトル除算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信装置に対して同一時刻・同一周波数でデータ信号を送信する送信装置であって、
第1の受信装置宛の復調用参照信号と、前記第1の受信装置とは異なる第2の受信装置宛の復調用参照信号とを、同一時刻・同一周波数で送信する送信部、
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算する非線形プレコーディング部を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記復調用参照信号に対して、非線形プレコーディングを施す非線形プレコーディング部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記送信部は、
同一時刻・同一周波数で複数のデータ信号を送信し、
前記非線形プレコーディング部は、
前記復調用参照信号を、前記データ信号と同じ非線形プレコーディング処理することを特徴とする請求項3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記非線形プレコーディング部は、
電力の正規化も含めて前記データ信号と同じ非線形プレコーディングを前記復調用参照信号に対しても施すことを特徴とする請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
復調用参照信号を補正するDMRS補正部を有することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の送信装置。
【請求項7】
前記DMRS補正部は、
前記復調用参照信号に2次元ユークリッド互除法を適用する2次元ユークリッド互除法部を有することを特徴とする請求項6に記載の送信装置。
【請求項8】
前記2次元ユークリッド互除法部は、
第1の前記復調用参照信号から、
第2の前記復調用参照信号、第2の前記復調用参照信号の位相を90度回転させた信号、第2の前記復調用参照信号の位相を180度回転させた信号、および第2の前記復調用参照信号の位相を270度回転させた信号を減算して、差分ベクトル算出部を有することを特徴とする請求項7に記載の送信装置。
【請求項9】
復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算する摂動ベクトル加算部を有することを特徴とする受信装置。
【請求項10】
前記信号を加算した復調用参照信号を用いて伝搬路推定する仮伝搬路推定部を有することを特徴とする請求項9に記載の受信装置。
【請求項11】
複数の異なる前記信号を選択する摂動ベクトル候補選択部と、
前記信号それぞれを用いて前記仮伝搬路推定部で伝搬路推定した伝搬路推定結果に基づいて、1つの前記信号を選択する摂動ベクトル推定部を有することを特徴とする請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
複数の異なる前記信号に対応する前記伝搬路推定結果それぞれに基づいてデータ信号を軟推定して対数尤度比をそれぞれ算出する復調部と、
前記対数尤度比ぞれぞれの分散を算出する摂動ベクトル評価値算出部と、
を有し、
前記摂動ベクトル推定部は、前記分散のうち最も大きいものに対応する前記信号を選択することを特徴とする請求項10に記載の受信装置。
【請求項13】
前記既約ベクトルを用いて伝搬路の複素利得を算出する複素利得算出部を有する請求項12に記載の受信装置。
【請求項14】
復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算する非線形プレコーディング部と、復調用参照信号と他の信号を、同一時刻・同一周波数で送信する送信部とを有する送信装置と、
復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算する摂動ベクトル加算部を有する受信装置と、
を有することを特徴とする通信システム。
【請求項15】
復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算するステップと、復調用参照信号と他の信号を、同一時刻・同一周波数で送信するステップを有する送信方法と、
復調用参照信号にあらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算するステップを有する受信方法と、
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項16】
復調用参照信号に対して、あらかじめ決めた所定の信号の整数倍の信号を加算する非線形プレコーディング部と、復調用参照信号と他の信号を、同一時刻・同一周波数で送信する送信部と、
を有することを特徴とする集積回路。
【請求項17】
復調用参照信号に、あらかじめ決めた所定の幅の整数倍の信号を加算する摂動ベクトル加算部を有することを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−182627(P2012−182627A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43755(P2011−43755)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】