説明

送信装置、送信方法、およびプログラム

【課題】ダイレクトコンバージョン方式の受信装置において正確に復調可能な放送信号を送信する。
【解決手段】本開示の送信装置は、送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調部と、RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定部と、設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出部とを含む。本開示は、例えば、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置を対象として、DVB-C2に準拠した放送信号を、CATV網を介して送信する送信装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、送信方法、およびプログラムに関し、特に、例えば、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置を送信対象とする場合に用いて好適な送信装置、送信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
主に欧州にて採用されているケーブルテレビ用放送規格として1994年に制定されたDVB-Cが知られており、これに代わる次世代のケーブルテレビ用放送規格としてDVB-C2が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
DVB-Cではコンスタレーションに256QAMが採用されていたことに対し、DVB-C2では4096QAMが採用されている。したがって、DVB-C2によれば、従来に比較してCATV網を介した情報の伝送容量を著しく増加させることができる。ただし、コンスタレーションの高密度化に伴って高い復調精度が要求されている。
【0004】
ところで、放送信号を受信する受信装置としては、スーパーヘトロダイン(Low-IF)方式のものとダイレクトコンバージョン(ZERO-IF)方式のものが知られている。ここで、両者の違いについて説明する。
【0005】
図1は、スーパーヘトロダイン方式の受信装置による動作を示している。スーパーヘトロダイン方式の受信装置では、受信した高周波の放送信号(RF信号)がDC成分を含む中間周波数のIF信号にダウンコンバートされ、さらにIF信号がDC成分のベースバンド信号にダウンコンバートされた後に復調が行われる。すなわち、スーパーヘトロダイン方式では、高周波の放送信号が中間周波数のIF信号を経て段階的にダウンコンバートされる。
【0006】
図2は、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置による動作を示している。ダイレクトコンバージョン方式の受信装置では、受信した高周波の放送信号(RF信号)が中間周波数を経ることなくDC成分のベースバンド信号にダウンコンバートされる。ただし、このダウンコンバートされたDC成分には、スーパーヘトロダイン方式におけるIF信号のDC成分に対応するノイズが生じる。そこで、ノッチフィルタにより当該ノイズに相当する周波数帯域を除去した後に復調が行われる。
【0007】
ダイレクトコンバージョン方式の受信装置は、スーパーヘトロダイン方式の受信装置に比較して、その回路構成が単純なのでより安価、小型に製造が可能である。したがって、今後の需要が見込まれるDVB-C2に対応した受信装置はダイレクトコンバージョン方式を採用することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】DVB-C2規格書[Digital Video Broadcasting (DVB);Frame structure channel coding and modulation for a second generation digital transmission system for cable systems (DVB-C2)]DVB Document A138
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置によるDVB-C2に準拠した放送信号の受信を考える。DVB-C2では、ダウンコンバートされたDC成分の周波数幅が6乃至8MHzであり、ノッチフィルタによって除去される周波数幅がノッチフィルタの設計によるが4kHzほどである。従って、実質的に6乃至8MHzの情報のうち、4kHzの情報が欠損してしまうことになる。つまり、実質的なCN比が32dB程となる。
【0010】
ところで、上述したようにDVB-C2では4096QAMの多値変調では、最良な受信状態である32dB程であっても、その劣化量は許容範囲外となってしまう。したがって、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置では、DVB-C2に準拠した放送信号を正確に復調することができないことになる。
【0011】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置において正確に復調可能な放送信号を送信できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一側面である送信装置は、送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調部と、RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定部と、設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出部とを含む。
【0013】
前記設定部は、前記RF信号の送信対象とするダイレクトコンバージョン方式の受信装置に設けられた、DC信号に生じるノイズを除去するためのノッチフィルタに対応するRF帯域の周波数を、前記ノッチの前記周波数として設定することができる。
【0014】
前記設定部は、前記RF信号の送信対象とするスーパーヘテロダイン方式の受信装置にて前記RF信号をIF信号にダウンコンバートしたときに生じるDC成分に対応するRF帯域の周波数を、前記ノッチの前記周波数として設定することができる。
【0015】
本開示の一側面である送信方法は、送信装置の送信方法において、前記送信装置による、送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調ステップと、RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定ステップと、設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出ステップとを含む。
【0016】
本開示の一側面であるプログラムは、送信装置の制御用のプログラムであって、送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調ステップと、RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定ステップと、設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出ステップとを含む処理を送信装置に実行させる。
【0017】
本開示の一側面においては、送信すべき情報が変調されて変調信号が生成され、RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、RF信号に設けるノッチの周波数が設定され、設定された周波数に従ってノッチを設けつつ、変調信号がRF信号として送出される。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一側面によれば、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置において正確に復調可能な放送信号を送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】スーパーヘトロダイン方式の受信装置の動作を説明する図である。
【図2】ダイレクトコンバージョン方式の受信装置の動作を説明する図である。
【図3】実施の形態である送信装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】図3の送信装置から送信されるRF信号と、それが受信されダウンコンバートされたDC成分を示す図である。
【図5】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示を実施するための最良の形態(以下、実施の形態と称する)について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
<1.実施の形態>
[送信装置の構成例]
図3は、実施の形態である送信装置の構成例を示している。この送信装置10は、DVB-C2に準拠した放送信号を、CATV網を介して送信するものであり、送信対象としてダイレクトコンバージョン方式の受信装置およびスーパーヘトロダイン方式の受信装置を想定している。
【0022】
送信装置10は、ベースバンド信号入力部11、変調部12、ノッチ設定部13、および送出部14から構成される。
【0023】
ベースバンド信号入力部11は、コンテンツ(テレビジョン番組など)のAV信号がエンコードされている符号化信号に相当するベースバンド信号を変調部12に入力する。変調部12は、入力されるベースバンド信号を4K OFDM,4096QAMで変調し、その結果得られた変調信号を送出部14に出力する。
【0024】
ノッチ設定部13は、DVB-C2にて任意の周波数帯域に設定可能とされているノッチの位置(周波数帯域)を送出部14に対して指定する。
【0025】
このノッチの位置は、ダイレクトコンバージョン方式の受信装置におけるノッチフィルタによって除去される周波数帯域に対応するRF帯域の周波数とする。換言すれば、当該RF信号をスーパーヘトロダイン方式の受信装置にて受信したときにダウンコンバートされるIF信号のDC成分に相当するRF帯域の周波数とする。
【0026】
送出部14は、ノッチ設定部13から指定された位置にノッチを設けつつ、変調部12から入力される変調信号をRF信号としてCATV網に送出する。
【0027】
[動作説明]
送信装置10がDVB-C2に準拠した放送信号を送信するに際し、ノッチ設定部13は、送出部14に対してノッチの位置を指定する。ベースバンド信号入力部11は、コンテンツのAV信号がエンコードされている符号化信号に相当するベースバンド信号を変調部12に入力する。変調部12は、入力されたベースバンド信号を4K OFDM,4096QAMで変調し、その結果得られた変調信号を送出部14に出力する。送出部14は、ノッチ設定部13から指定された位置にノッチを設けつつ、変調部12から入力された変調信号をRF信号としてCATV網に送出する。
【0028】
上述した送信装置10の動作により、送信装置10からは、図4Aに示されるように、ノッチの設けられたRF信号が送出される。一方、これを受信したダイレクトコンバージョン方式の受信装置では、ノッチが設けられたRF信号がDC成分のベースバンド信号にダウンコンバートされ、同図Bに示されるように、ノッチフィルタによりノッチに対応する周波数帯域が除去される。ただし、ノッチフィルタにより除去された周波数帯域は、情報を含まないノッチが設けられていたので、ノッチフィルタ後のDC成分に、ノッチフィルタに起因する情報の欠損はない。したがって、ノッチフィルタの後段において問題なく復調を行うことができる。
【0029】
なお、スーパーヘトロダイン方式の受信装置において、図4Aに示されたノッチが設けられたRF信号を受信した場合においても、問題なく復調することができる。
【0030】
本開示によれば、送信装置10が送信する放送信号の送信対象とする受信装置に、安価に製造可能なダイレクトコンバージョン方式を採用することができる。
【0031】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0032】
図5は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0033】
このコンピュータ100において、CPU(Central Processing Unit)101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103は、バス104により相互に接続されている。
【0034】
バス104には、さらに、入出力インタフェース105が接続されている。入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部106、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部107、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部108、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部109、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ110が接続されている。
【0035】
以上のように構成されるコンピュータ100では、CPU101が、例えば、記憶部108に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース105およびバス104を介して、RAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0036】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0037】
また、プログラムは、1台のコンピュータにより処理されるものであってもよいし、複数のコンピュータによって分散処理されるものであってもよい。さらに、プログラムは、遠方のコンピュータに転送されて実行されるものであってもよい。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 受信装置, 11 ベースバンド信号入力部, 12 変調部, 13 ノッチ設定部, 14 送出部, 100 コンピュータ, 101 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調部と、
RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定部と、
設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出部と
を含む送信装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記RF信号の送信対象とするダイレクトコンバージョン方式の受信装置に設けられた、DC信号に生じるノイズを除去するためのノッチフィルタに対応するRF帯域の周波数を、前記ノッチの前記周波数として設定する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記RF信号の送信対象とするスーパーヘテロダイン方式の受信装置にて前記RF信号をIF信号にダウンコンバートしたときに生じるDC成分に対応するRF帯域の周波数を、前記ノッチの前記周波数として設定する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
送信装置の送信方法において、
前記送信装置による、
送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調ステップと、
RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定ステップと、
設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出ステップと
を含む送信方法。
【請求項5】
送信装置の制御用のプログラムであって、
送信すべき情報を変調して変調信号を生成する変調ステップと、
RF信号の送信対象とする受信装置の特性に応じて、前記RF信号に設けるノッチの周波数を設定する設定ステップと、
設定された前記周波数に従って前記ノッチを設けつつ、前記変調信号を前記RF信号として送出する送出ステップと
を含む処理を送信装置に実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217099(P2012−217099A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82147(P2011−82147)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】