説明

送信装置、送受信装置、集積回路、及び、通信状態のモニタ方法

【課題】 電磁誘導作用により外部と非接触で通信を行う送信装置において、通信状態をモニタしながら通信特性の最適化を図る。
【解決手段】 送信装置1を、送信部3と、信号出力部2と、通信モニタ部4と、通信補正部5とを備える構成とする。通信モニタ部4は、アンテナコイル13に流れる電流に関する情報をモニタし、そのモニタされた情報に基づいて通信状態を判別する。そして、通信補正部5は、通信モニタ部4での判別結果に基づいて、通信特性を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報又はエネルギーを、電磁誘導作用(電磁結合)により非接触で通信(伝送)する機能を備える送信装置、送受信装置、集積回路、及び、これらの装置における通信状態のモニタ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば交通乗車券や電子マネー等の非接触IC(Integrated Circuit)カードを利用した非接触通信システムの普及が著しい。このような非接触通信システムでは、システム専用のリーダ/ライタ(以下、R/Wと記す)装置の送信アンテナ(共振回路)から放射された送信信号(電磁波)を、非接触ICカード内に設けられた受信アンテナで電磁誘導作用により受信する。
【0003】
このような非接触通信システムでは、良好な通信特性を得るためにはR/W装置内の信号源の周波数と、R/W装置の送信アンテナの共振周波数と、非接触ICカード内の受信アンテナ(共振回路)の共振周波数とが互いが一致することが重要である。しかしながら、非接触ICカードの受信アンテナ又はR/W装置の送信アンテナの共振周波数は、様々な要因により変動する。この場合、非接触ICカード及びR/W装置間で安定して情報を送受信することが困難になる。
【0004】
そこで、従来、非接触通信システムの技術分野では、あらゆる条件下において、良好な通信状態を保つための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、無線通信により電子決済を行う電子決済システム用非接触ICカード装置が記載されている。そして、特許文献1の電子決済システム用非接触ICカード装置では、無線送受信回路と非接触R/Wとの距離や位置関係及び周囲の電波状況に応じて、無線送受信回路の送信電力を最適制御する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−216911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、非接触通信システムの技術分野では、従来、良好な通信状態を保つための様々な技術が提案されているが、より確実に良好な通信状態を得るためには、通信状態そのものをモニタしながら通信特性を最適化することが好ましい。しかしながら、今のところ、実用的な通信状態のモニタ手法、及び、その手法を用いて通信特性を調整することが可能な送受信装置は提案されていない。
【0007】
本開示は、上記状況を鑑みなされたものであり、本開示の目的は、通信状態をモニタしながら通信特性の最適化を図ることができる送信装置、送受信装置、集積回路、及び、通信状態のモニタ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の送信装置は、送信部と、信号出力部と、通信モニタ部と、通信補正部とを備え、各部の構成及び機能を次のようにする。送信部は、アンテナコイルを有し、外部装置と電磁結合により通信を行う。信号出力部は、所定周波数の信号を生成し、該生成した信号を送信部に出力する。通信モニタ部は、アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタした情報に基づいて通信状態を判別する。通信補正部は、通信モニタ部における通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する。
【0009】
なお、本明細書でいう「通信」は、情報通信だけでなく、例えばワイヤレス電力伝送システムで行われるエネルギー伝送(電力伝送)も含む意味である。また、本明細書でいう「通信状態」は、情報の非接触通信時における通信状態だけでなく、例えばワイヤレス電力伝送システムで行われるエネルギーの非接触伝送時の伝送状態も含む意味である。
【0010】
また、本開示の送受信装置は、上記本開示の送信装置と同様の構成を有する送信機能部と、受信アンテナを有し、外部と電磁結合により通信を行う受信機能部とを備える構成とする。また、本開示の集積回路は、上記本開示の送信装置の通信モニタ部と、通信補正部とを備える構成とする。
【0011】
さらに、本開示の通信状態のモニタ方法は、上記本開示の送信装置における通信状態のモニタ方法であり、次の手順で行う。まず、通信モニタ部が、アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタする。次いで、通信モニタ部が、モニタされたアンテナコイルに流れる電流に関する情報に基づいて通信状態を判別する。
【発明の効果】
【0012】
上述のように、本開示では、送信装置の送信部のアンテナコイルに流れる電流(コイル電流)をモニタし、そのモニタ結果に基づいて通信状態を判別する。そして、その判別結果に基づいて、送信装置の例えば、共振特性、出力動作及び機器動作を制御して、通信特性を補正する。それゆえ、本開示によれば、通信状態をモニタしながら通信特性の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】各種検証実験で用いた評価用の非接触通信システムの回路構成図である。
【図2】各種検証実験で用いた各種送信アンテナのアンテナコイルの概略構成及びサイズを示す図である。
【図3】検証実験1の測定結果を示す図である。
【図4】検証実験2の測定結果を示す図である。
【図5】検証実験2の測定結果を示す図である。
【図6】検証実験3の測定結果を示す図である。
【図7】検証実験4の測定結果を示す図である。
【図8】検証実験4の測定結果を示す図である。
【図9】検証実験5の測定結果を示す図である。
【図10】検証実験5の測定結果を示す図である。
【図11】第1の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【図12】第1の実施形態に係るR/W装置における通信状態のモニタ手法及び通信特性の補正手法の手順を示すフローチャートである。
【図13】第2の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【図14】第3の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【図15】第4の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【図16】第5の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【図17】第6の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【図18】第7の実施形態に係るR/W装置の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示の実施形態に係る送信装置及び通信状態のモニタ手法の一例を、図面を参照しながら下記の順で説明する。ただし、本開示は下記の例に限定されない。
1.通信状態のモニタ手法及び通信特性の補正手法の原理
2.送信装置の各種実施形態
3.各種変形例及び各種応用例
【0015】
<1.通信状態のモニタ手法及び通信特性の補正手法の原理>
本開示における送信装置及び送受信装置では、送信アンテナ(共振回路)を構成するアンテナコイルに流れる電流をモニタし、そのモニタ信号に基づいて通信状態を判別する。以下では、この手法により、通信状態を判別することができる原理を、各種検証実験の結果を参照しながら説明する。
【0016】
[共振周波数ずれの要因]
上述のように、非接触通信システムでは非接触ICカード(非接触データキャリア)の受信アンテナ又はR/W装置の送信アンテナの共振周波数は、様々な要因により変動する。具体的には、次のような要因が挙げられる。
(1)共振回路を構成するアンテナコイルのインダクタンス及びコンデンサの容量値(キャパシタンス)のばらつきによる初期ずれ(特にアンテナコイルのインダクタンスのばらつきは大きい)。
(2)例えば温度変化等の環境条件の変動によるずれ。
(3)R/W装置と非接触ICカードとの磁気的結合によるずれ。
【0017】
上記要因(3)は、R/W装置の送信アンテナ及び非接触ICカードの受信アンテナ間に発生する相互インダクタンス(M)に基づく要因である。両者間の相互インダクタンスMは、R/W装置の送信アンテナのインダクタンスをL1とし、非接触ICカードの受信アンテナのインダクタンスをL2としたとき、M=K(L1×L2)1/2で表される。なお、Kは、磁気結合係数であり、例えば、送信アンテナ及び受信アンテナ間の距離や、各アンテナのサイズなどの条件により変化する変数である。具体的には、磁気結合係数Kは、送信アンテナ及び受信アンテナ間の距離が小さい場合に大きくなり、また、送信アンテナのアンテナサイズと受信アンテナのアンテナサイズとが互いに近い値である場合に大きくなる。
【0018】
そして、磁気的結合(K)が変化すると、相互インダクタンスMが変化する。この場合、アンテナコイルのインダクタンスが変化し、これにより、アンテナの共振周波数(f=1/{2π(LC)1/2})が変化する。このようなアンテナの共振周波数の変化は、R/W装置及び非接触ICカードの両方で発生する。この相互インダクタンスMの影響が大きい場合、次のような現象が生じる。
【0019】
(a)R/W装置では、送信周波数でのインピーダンスが変化して、信号源及び送信アンテナ間のインピーダンスマッチングが取れなくなる。この場合、送信アンテナに流れるコイル電流が減少する。
(b)非接触ICカードでは、受信周波数(=送信周波数)でのQ値(Quality factor)が下がり(インピーダンスが低下し)、受信電圧が減少する。
【0020】
なお、上記現象(a)及び(b)は、後述の検証実験でも確認される。具体的には、送信アンテナ及び受信アンテナ間の距離が小さくなり過ぎると(両者が接近し過ぎると)、受信電圧が減少し、さらに、両者が互いに近づいて密着すると通信不良が発生する。これは、主にR/W装置側の共振周波数ずれによる出力低下の影響が原因であると考えられる。
【0021】
上述した要因(3)による共振周波数ずれを補正するためには、R/W装置及び非接触ICカード間の距離(位置関係)や両者のアンテナサイズなどの条件によって変化する両者間の通信状態をモニタする必要がある。ここでは、上述した要因(3)による通信特性への影響について、各種検証実験の結果を参照しながら、具体的に説明する。
【0022】
[評価用の非接触通信システムの回路構成]
図1に、各種検証実験に用いた評価用の非接触通信システム(以下、評価システムという)の回路構成を示す。なお、図1には、主に非接触通信時に機能する回路構成のみを示す。
【0023】
評価システム100は、検証用のR/W装置110及び非接触ICカード120で構成される。なお、図1に示す評価システム100の回路構成は、例えばFelica(登録商標)/NFC(Near Field Communication)方式等の非接触通信システムで用いられる基本的な通信回路部の回路構成と同様である。ただし、後述のモニタ回路部113は実際の製品には含まれない。
【0024】
(1)R/W装置の構成
R/W装置110は、信号出力部111と、送信アンテナ112(共振回路)と、モニタ回路部113とを備える。
【0025】
信号出力部111は、所定周波数(13.56MHz)の信号を出力する信号源111aと、インピーダンスが50Ωの出力インピーダンス111bとで構成される。信号源111aの一方の出力端子(「+」側の端子)は、出力インピーダンス111bの一方の端子に接続され、信号源111aの他方の出力端子(「−」側の端子)は、接地される。また、出力インピーダンス111bの他方の端子は、送信アンテナ112内の後述する直列コンデンサ116の一方の端子に接続される。
【0026】
送信アンテナ112は、アンテナコイル114と、並列コンデンサ115と、直列コンデンサ116とで構成される。アンテナコイル114の一方の端子は、並列コンデンサ115の一方の端子及び直列コンデンサ116の他方の端子に接続され、アンテナコイル114の他方の端子は、モニタ回路部113内の後述する2つの抵抗117,118を介して接地される。なお、並列コンデンサ115の他方の端子は、接地される。すなわち、アンテナコイル114及び2つの抵抗117,118からなる直列回路は、並列コンデンサ115に並列接続される。
【0027】
また、ここでは、アンテナコイル114のインダクタンスL1、並列コンデンサ115の容量値C1及び直列コンデンサ116の容量値C2は、信号出力部111及び送信アンテナ112間においてインピーダンスマッチングが取れるように設定した。具体的には、信号出力部111及び送信アンテナ112間において、13.56MHzの信号に対して50Ω(Z=50+j0[Ω])でマッチングが取れるように、アンテナコイル114内の各回路素子の定数(L1、C1及びC2)を設定した。ただし、この際、送信アンテナ112及び受信アンテナ121間の磁気的結合が無い状態で、アンテナコイル114内の各回路素子の定数を設定した。
【0028】
なお、後述の各種検証実験では、アンテナサイズ(アンテナコイルのサイズ)が互いに異なる2種の送信アンテナ112を用意した。それゆえ、評価システム100では、各アンテナサイズの送信アンテナ112において、信号出力部111及び送信アンテナ112間でインピーダンスマッチングが取れるように、各コンデンサの容量値(C1及びC2)を適宜設定した。
【0029】
モニタ回路部113は、アンテナコイル114に流れるコイル電流をモニタする回路であり、ここでは、3つの抵抗117〜119でモニタ回路部113を構成する。抵抗117及び抵抗118は、直列接続され、アンテナコイル114とグランドとの間に設けられる。また、抵抗119は、抵抗117及び抵抗118間の接続点とグランドとの間に設けられる。なお、抵抗117及び抵抗118は、ともに、抵抗値1Ωの抵抗素子で構成し、抵抗119は、抵抗値50Ωの抵抗素子で構成した。
【0030】
図1に示す評価システム100のモニタ回路部113では、コイル電流を直接モニタせず、コイル電流を電圧に変換してその電圧値をモニタする。具体的には、抵抗117及び抵抗118間の接続点の電圧を、コイル電流に対応する電圧(以下、モニタ電圧Vmという)としてモニタする。そして、評価システム100では、このモニタ電圧Vmに基づいて、通信状態(磁気結合状態)を判別する。
【0031】
(2)非接触ICカードの構成
非接触ICカード120は、受信アンテナ121(共振回路)と、整流回路122と、出力検出回路123とを備える。
【0032】
受信アンテナ121は、並列接続されたアンテナコイル124及びコンデンサ125で構成される。なお、アンテナコイル124のインダクタンスL2及びコンデンサ125の容量値C3は、13.56MHzの受信信号に対して受信アンテナ121のインピーダンスが最大になるように設定した。ただし、この際、送信アンテナ112及び受信アンテナ121間の磁気的結合が無い状態で、アンテナコイル124内の各回路素子の定数(L2及びC3)を設定した。
【0033】
なお、後述の各種検証実験では、アンテナサイズが互いに異なる3種の受信アンテナ121を用意した。それゆえ、各アンテナサイズの受信アンテナ121において、13.56MHzの受信信号に対して受信アンテナ121のインピーダンスが最大になるように、コンデンサ125の容量値C3を適宜設定した。
【0034】
整流回路122は、受信アンテナ121で受信された交流信号(受信電圧Vout)を直流信号(以下、検波出力Vovという)に変換する回路であり、図1に示す評価システム100では、4つのダイオード122a〜122dで構成される。
【0035】
出力検出回路123は、整流回路122を介して、受信アンテナ121に並列接続され、整流回路122で変換された検波出力Vovを検出する回路である。図1に示す評価システム100では、出力検出回路123は、並列接続された抵抗123a及びコンデンサ123bで構成される。なお、ここでは、抵抗123aの抵抗値は820Ωとした。
【0036】
(3)アンテナサイズ
図2に、各種検証実験で用いた各種送信アンテナ112及び各種受信アンテナ121の概略構成及びアンテナサイズを示す。なお、図2は、アンテナコイルの概略上面図であり、評価システム100では、略矩形状のアンテナコイルを用いる。
【0037】
下記検証実験では、図2に示すように、送信アンテナ112として、長辺方向の径が44mmであり、かつ、短辺方向の径が30mmである(中サイズ)アンテナコイルを有するアンテナを用意した。また、下記検証実験では、送信アンテナ112として、長辺方向の径が22mmであり、かつ、短辺方向の径が16mmである(小サイズ)アンテナコイルを有するアンテナを用意した。
【0038】
一方、受信アンテナ121としては、図2に示すように、長辺方向の径が68mmであり、かつ、短辺方向の径が38mmである(大サイズ)アンテナコイルを有するアンテナを用意した。また、下記検証実験では、受信アンテナ121として、長辺方向の径が44mmであり、かつ、短辺方向の径が30mmである(中サイズ)アンテナコイルを有するアンテナを用意した。さらに、下記検証実験では、受信アンテナ121として、長辺方向の径が20mmであり、かつ、短辺方向の径が16mmである(小サイズ)アンテナコイルを有するアンテナを用意した。
【0039】
[磁気的結合の影響の概要]
上述のような非接触通信システムにおいて、効率良く非接触通信を行うためには、一般に、図1に示すように、信号の送信側及び受信側の各装置に、共振回路で構成されたアンテナが設けられる。そして、このような非接触通信システムでは、良好な通信特性を得るために、送信アンテナ及び受信アンテナ間の磁気結合係数K及び共振特性(Q値)を大きくすることが好ましいと言われている。
【0040】
しかしながら、コイル(L)とコンデンサ(C)とで構成される共振回路は、損失を小さくするためにQ値を大きくする方が好ましいが、例えば部品の仕様、データ符号、通信速度等の条件を考慮して、Q値を大きな値にすることができない。例えば13.56MHzの信号を用いるMifare(登録商標)システムでは、Q値を35以下にすることが好ましいと言われている。また、実際の携帯電話などでは、信号源と共振回路(送信アンテナ)との間でインピーダンスマッチングを取るために、図1に示したように、送信側の共振回路に直列の共振コンデンサ(C2)及び並列の共振コンデンサ(C1)を設ける。これにより、50Ωという低いインピーダンスでのマッチングを達成している。
【0041】
また、R/W装置及び非接触ICカード間の磁気的結合(磁気結合係数K)は、上述のように、両者間の距離により変化する。例えば、R/W装置及び非接触ICカード間の距離を大きくした場合には、磁気的結合は急激に小さくなるので通信が困難になる。例えばFelica(登録商標)等の非接触通信システムでは、R/W装置及び非接触ICカード間の距離が10cm以上になると、通信が困難になる。
【0042】
一方、例えば、R/W装置及び非接触ICカード間の距離が非常に短い場合(R/W装置に非接触ICカードを接触させた場合など)には、磁気的結合は非常に強くなる。しかしながら、この場合には、R/W装置の送信アンテナのコイルと、非接触ICカードの受信アンテナのコイルとの間に、大きな相互インダクタンスMが発生する。この結果、後述の検証実験1で具体的に説明するが、R/W装置及び非接触ICカードの各共振回路(アンテナ)のインピーダンスが所望の値からずれる。
【0043】
すなわち、R/W装置及び非接触ICカード間の距離が非常に短い場合には、相互インダクタンスMが、R/W装置の送信特性及び非接触ICカードの受信特性の両方に影響を及ぼす。その結果、本来、13.56MHzで共振すべきシステムにおいて、例えば、その共振周波数より低い周波数で共振するといった現象が生じる。
【0044】
相互インダクタンスM(=K(L1×L2)1/2)の大きさは、磁気的結合の度合い(K)と、R/W装置及び非接触ICカードの各アンテナコイルのインダクタンスの大きさで決まる。それゆえ、R/W装置及び非接触ICカードの組み合わせや、両者間の距離及び位置関係などが変わると、相互インダクタンスMが変化する。また、各共振回路のQ値が大きい場合には、上述した共振周波数ずれによる影響も大きくなる。
【0045】
本開示技術の提案者らは、非接触通信システムにおける上述したR/W装置及び非接触ICカード間の磁気的結合の影響を、各種検証実験を通して詳細に調べた。そして、本開示技術の提案者らは、各種検証実験の結果から、R/W装置の送信アンテナに流れるコイル電流をモニタすることにより、通信状態を精度良く判別することができることを見出した。
【0046】
[検証実験1]
まず、検証実験1では、図1に示す評価システム100において、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dと、信号出力部111の出力端から見た送信アンテナ112及び受信アンテナ121のインピーダンスZとの関係を調べた。検証実験1では、R/W装置110及び非接触ICカード120間の対向方向において、送信アンテナ112のコイル中心と受信アンテナ121のコイル中心とを同軸上に配置した状態で、距離dを変化させながらインピーダンスZを測定した。なお、検証実験1では、送信アンテナ112及び受信アンテナ121の機器への搭載形態(内蔵状態)を考慮して、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dの最短距離は2mmとした。
【0047】
図3に、検証実験1の測定結果を示す。図3は、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dに対する信号出力部111の出力端から見た送信アンテナ112及び受信アンテナ121の各インピーダンスZの変化を示す特性である。なお、図3に示す特性の横軸は距離dであり、縦軸はインピーダンスZである。また、図3中の三角印の点で示す特性131が送信アンテナ112のインピーダンス変化特性であり、菱形印の点で示す特性132が受信アンテナ121のインピーダンス変化特性である。
【0048】
図3から明らかなように、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが例えば30mmより大きい場合には、送信アンテナ112のインピーダンスは50Ωとなり、受信アンテナ121のインピーダンスは3000Ω(最大値)となる。すなわち、この状態では、信号出力部111及び送信アンテナ112間において、50Ωでのインピーダンスマッチングが取れた状態であり、受信アンテナ121(共振回路)に誘起される電圧も最大となる。
【0049】
しかしながら、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが例えば30mm以下になると、送信アンテナ112のインピーダンスが急激に増大する。また、この場合、非接触ICカード120の受信アンテナ121の並列共振特性も変化するので、受信アンテナ121のインピーダンスは急激に小さくなる。この状況では、送信アンテナ112のインピーダンスが大きくなるので、共振周波数が低下した状態となる。
【0050】
[検証実験2]
上述のように、非接触ICカード120がR/W装置110に近づきすぎると(磁気的結合が大きくなり過ぎると)、送信側ではインピーダンスマッチングが50Ωからずれる。この場合、送信アンテナ112に流れるコイル電流が小さくなる。また、非接触ICカード120がR/W装置110に近づきすぎると、受信側ではインピーダンスが下がるので、受信アンテナ121(共振回路)に誘起される電圧が小さくなる。すなわち、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが小さい場合には、両者間の磁気的結合は増大するが、逆に、受信側(非接触ICカード120側)での検波出力Vovが小さくなるという現象が生じる。
【0051】
検証実験2では、評価システム100のR/W装置110及び非接触ICカード120間で通信実験を行い、この現象を確認した。具体的には、上記検証実験1と同様にしてR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させて、その際に、モニタ回路部113で検出されるモニタ電圧Vm、及び、出力検出回路123で検出される検波出力Vovの変化を測定した。
【0052】
なお、検証実験2では、上記検証実験1と同様に、R/W装置110及び非接触ICカード120間の対向方向において、送信アンテナ112のコイル中心と受信アンテナ121のコイル中心とを同軸上に配置した状態で距離dを変化させた。また、検証実験2では、送信アンテナ112のアンテナサイズと、受信アンテナ121のアンテナサイズとの組み合わせを種々変えて(図2参照)、モニタ電圧Vm及び検波出力Vovを測定した。
【0053】
図4及び5に、検証実験2の測定結果を示す。図4は、送信アンテナ112(R/W装置110)のアンテナサイズを中サイズに固定し、かつ、受信アンテナ121(非接触ICカード120)のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズに変化させたときの測定結果である。なお、図4に示す特性の横軸は距離dであり、縦軸は検波出力Vov又はモニタ電圧Vmである。
【0054】
また、図4中の菱形印の点で示す特性141a、四角印の点で示す特性141b及び三角印の点で示す特性141cは、受信アンテナ121のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときの検波出力Vovの特性である。さらに、図4中のバツ印の点で示す特性142a、白抜き丸印の点で示す特性142b及び丸印の点で示す特性142cは、受信アンテナ121のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときのモニタ電圧Vmの特性である。
【0055】
一方、図5は、送信アンテナ112のアンテナサイズを小サイズに固定し、かつ、受信アンテナ121のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズに変化させたときの測定結果である。なお、図5に示す特性の横軸は距離dであり、縦軸は検波出力Vov又はモニタ電圧Vmである。
【0056】
また、図5中の菱形印の点で示す特性143a、四角印の点で示す特性143b及び三角印の点で示す特性143cは、受信アンテナ121のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときの検波出力Vovの特性である。さらに、図5中の白抜き菱形印の点で示す特性144a、白抜き四角印の点で示す特性144b及び白抜き三角印の点で示す特性144cは、受信アンテナ121のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときのモニタ電圧Vmの特性である。
【0057】
送信アンテナ112(R/W装置110)のアンテナサイズを中サイズに固定した場合、図4中の特性141a〜141cに示すように、受信アンテナ121(非接触ICカード120)のアンテナサイズによって、検波出力Vovが最大となる距離dが異なる。また、距離dが、検波出力Vovが最大となる距離dよりさらに小さくなると、受信アンテナ121のアンテナサイズに関係なく、検波出力Vovが低下することが分かる。それに対して、モニタ電圧Vmは、図4中の特性142a〜142cに示すように、受信アンテナ121のアンテナサイズに関係なく、距離dが小さくなると単調減少する。
【0058】
また、送信アンテナ112のアンテナサイズを小サイズに固定した場合、図5中の特性143cに示すように、受信アンテナ121のアンテナサイズを送信アンテナ112のそれと略同じ値にしたときに、検波出力Vovが8.6mmの距離dで最大となる。また、検波出力Vovが最大となるときのモニタ電圧Vmは、約160mVになる(特性144c参照)。そして、このアンテナサイズの組み合わせでは、距離dが、検波出力Vovが最大となる距離dよりさらに小さくなると、検波出力Vovが低下する。また、受信アンテナ121のアンテナサイズが送信アンテナ112のそれと異なる場合には、図5中の特性143a及び143bに示すように、距離dが小さくなると、検波出力Vovが単調増加する。一方、モニタ電圧Vmは、図5中の特性144a〜144cに示すように、受信アンテナ121のアンテナサイズに関係なく、距離dが小さくなると単調減少する。
【0059】
上記検証実験2の測定結果から明らかなように、R/W装置110のアンテナサイズと非接触ICカード120のアンテナサイズとの組み合わせによっては、両者が密着した場合に、検波出力Vovが低下する場合があることが分かる。
【0060】
検波出力Vovの特性は、R/W装置110及び非接触ICカード120間の磁気的結合の強さ、及び、磁気的結合によって受ける影響の程度により変化する。また、一般には、R/W装置110のアンテナサイズと非接触ICカード120のそれとが近い値である場合に磁気結合が大きくなる。それゆえ、上記検証実験2の結果から、磁気的結合が大きい場合(R/W装置110のアンテナサイズと非接触ICカード120のそれとが近い値である場合)に、近距離での検波出力Vovの低下量が大きくなるとが分かる(図4中の特性141b参照)。
【0061】
[検証実験3]
R/W装置110及び非接触ICカード120間の磁気的結合は、両者間の距離dだけでなく、両者のアンテナ間の相対的な位置関係によっても変化する。すなわち、非接触ICカード120をR/W装置110のどの位置に接触させるかによって通信特性が変化し、非接触ICカード120のタッチ位置によっては通信不良が発生する場合もある。
【0062】
そこで、検証実験3では、R/W装置110の送信アンテナ112に対する非接触ICカード120の受信アンテナ121の相対的な位置を変化させた際の通信特性の変化を調べた。具体的には、R/W装置110及び非接触ICカード120間の相対位置のずれと、モニタ回路部113で検出されるモニタ電圧Vm及び出力検出回路123で検出される検波出力Vovとの関係(位置ずれ特性)を調べた。
【0063】
なお、検証実験3では、非接触ICカード120をR/W装置110に密着させた状態(両者間の距離dは2mm)で、非接触ICカード120の位置をアンテナコイルの短辺方向又は長辺方向にずらして、位置ずれ特性を測定した。また、ここでは、R/W装置110のアンテナサイズと非接触ICカード120のアンテナサイズとの組み合わせを種々変化させて、位置ずれ特性を測定した。
【0064】
図6に、検証実験3の測定結果の一例を示す。図6に示す位置ずれ特性は、R/W装置110のアンテナサイズを小サイズに固定し、かつ、非接触ICカード120のアンテナサイズを大、中及び小サイズのそれぞれに変化させたときの位置ずれ特性である。また、図6に示す位置ずれ特性は、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対して、コイルの短辺方向にずらした場合の特性である。
【0065】
なお、図6に示す特性の横軸はR/W装置110及び非接触ICカード120間の相対的な位置ずれ量yであり、縦軸は検波出力Vov又はモニタ電圧Vmである。また、図6中の横軸において、位置ずれ量y=0の状態は、R/W装置110及び非接触ICカード120間の対向方向において、送信アンテナ112のコイル中心と受信アンテナ121のコイル中心とが同軸上に配置された状態である。以下では、この状態をアンテナセンターと称す。
【0066】
また、図6中の横軸のプラス値は、非接触ICカード120を、R/W装置110に対して、コイルの短辺方向に沿ってアンテナセンターから第1の方向に相対的にずらしたときの位置すれ量yである。そして、図6中の横軸のマイナス値は、非接触ICカード120を、R/W装置110に対して、第1の方向とは反対の第2の方向に沿ってアンテナセンターから相対的にずらしたときの位置すれ量yである。
【0067】
さらに、図6中の四角印の点で示す特性145a、菱形印の点で示す特性145b及び丸印の点で示す特性145cは、非接触ICカード120のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときの検波出力Vovの特性である。また、図6中の白抜き四角印の点で示す特性146a、白抜き菱形印の点で示す特性146b及び白抜き丸印の点で示す特性146cは、非接触ICカード120のアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときのモニタ電圧Vmの特性である。なお、図6中の太破線は、図5に示す検波出力Vovの特性143cにおいて、検波出力Vovが最大となるときのモニタ電圧Vmの値(160mV)を表す。
【0068】
図6から明らかなように、検波出力Vov及びモニタ電圧Vmの位置ずれ特性は、非接触ICカード120のアンテナサイズに関係なく、位置ずれ量y=0に対して略対称的な特性になる。また、図6示す位置ずれ特性から、検波出力Vovは、非接触ICカード120のアンテナサイズに関係なく、アンテナセンター(y=0)からずれた位置で最大となることが分かる。すなわち、図6に示す位置ずれ特性では、アンテナセンター(y=0)における検波出力Vovは、最大値より低下した値となる。特に、R/W装置110のアンテナサイズ(小サイズ)と非接触ICカード120のそれとが近い値である場合(特性145c:磁気的結合が大きい場合)に、アンテナセンター(y=0)での検波出力Vovの低下量が最も大きくなることが分かる。
【0069】
[検証実験4]
図6に示す位置ずれ特性から明らかなように、位置ずれ量yが約±10mmの範囲では、非接触ICカード120のアンテナサイズが小サイズのときだけ(特性146c)、モニタ電圧Vmが160mV(図6中の太破線)以下の値になる。また、図6に示す位置ずれ特性から、非接触ICカード120のアンテナサイズに関係なく、特性146cとVm=160mVを示す太破線との交点付近のモニタ電圧Vmにおいて、検波出力Vovが略最大の値になることが分かる。
【0070】
すなわち、図5(検証実験2)及び図6(検証実験3)の特性から、R/W装置110が小サイズである場合には、非接触ICカード120のアンテナサイズに関係なく、モニタ電圧Vmが160mV付近であるときに検波出力Vovが最大となることが分かる。このことから、R/W装置110のアンテナサイズが一定である場合には、モニタ電圧Vmと検波出力Vovとの間に強い相関が存在することが推測される。
【0071】
そこで、検証実験4では、モニタ電圧Vmと検波出力Vovとの相関関係を調べた。具体的には、R/W装置110のアンテナサイズと非接触ICカード120のアンテナサイズとの各種組み合わせにおける検証実験2及び3の測定結果からモニタ電圧Vmと検波出力Vovとの相関関係を求めた。
【0072】
図7及び8に、その相関関係を示す。図7は、R/W装置110のアンテナサイズを中サイズに固定し、かつ、非接触ICカード120のアンテナサイズを大、中及び小サイズのそれぞれに変化させたときのモニタ電圧Vmと検波出力Vovとの相関関係である。なお、図7に示す特性の横軸はモニタ電圧Vmであり、縦軸は検波出力Vovである。
【0073】
図7中の白抜き菱形印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを大サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの短辺方向に相対的にずらした場合の特性である。図7中の白抜き四角印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを大サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの長辺方向に相対的にずらした場合の特性である。そして、図7中の白抜き丸印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを大サイズにし、かつ、アンテナセンターの状態でR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させた場合の特性である。
【0074】
また、図7中の破線菱形印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを中サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの短辺方向に相対的にずらした場合の特性である。図7中の破線四角印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを中サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの長辺方向に相対的にずらした場合の特性である。そして、図7中の破線丸印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを中サイズにし、かつ、アンテナセンターの状態でR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させた場合の特性である。
【0075】
さらに、図7中の菱形印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを小サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの短辺方向に相対的にずらした場合の特性である。図7中の四角印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを小サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの長辺方向に相対的にずらした場合の特性である。そして、図7中の丸印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを小サイズにし、かつ、アンテナセンターの状態でR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させた場合の特性である。
【0076】
一方、図8は、R/W装置110のアンテナサイズを小サイズに固定し、かつ、非接触ICカード120のアンテナサイズを大、中及び小サイズのそれぞれに変化させたときのモニタ電圧Vmと検波出力Vovとの相関関係である。なお、図8に示す特性の横軸はモニタ電圧Vmであり、縦軸は検波出力Vovである。また、図8には、非接触ICカード120内のLSI(Large Scale Integration:不図示)を駆動する際の閾値電圧(3.0V)も太破線で示す。
【0077】
図8中の白抜き菱形印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを大サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの短辺方向に相対的にずらした場合の特性である。図8中の白抜き四角印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを大サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの長辺方向に相対的にずらした場合の特性である。そして、図8中の白抜き丸印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを大サイズにし、かつ、アンテナセンターの状態でR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させた場合の特性である。
【0078】
また、図8中の破線菱形印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを中サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの短辺方向に相対的にずらした場合の特性である。図8中の破線四角印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを中サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの長辺方向に相対的にずらした場合の特性である。そして、図8中の破線丸印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを中サイズにし、かつ、アンテナセンターの状態でR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させた場合の特性である。
【0079】
さらに、図8中の菱形印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを小サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの短辺方向に相対的にずらした場合の特性である。図8中の四角印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを小サイズにし、かつ、非接触ICカード120の位置をR/W装置110に対してコイルの長辺方向に相対的にずらした場合の特性である。そして、図8中の丸印で示す特性点は、非接触ICカード120のアンテナサイズを小サイズにし、かつ、アンテナセンターの状態でR/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを変化させた場合の特性である。なお、図7及び8中の位置ずれ特性の特性点は、検証実験4で説明したように、R/W装置110及び非接触ICカード120を密着させた状態(両者間の距離dは2mm)で測定したものである。
【0080】
図7及び8に示す特性から明らかなように、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離d、並びに、両者間の相対位置に関係なく、検波電圧Vovとモニタ電圧Vmとの間には強い相関が存在することが分かる。具体的には、検波電圧Vovとモニタ電圧Vmとの相関特性は、一つの放物線状の特性で表されることが分かる。
【0081】
また、図7及び8に示すように、R/W装置110のアンテナサイズにより、検波出力Vovが最大となるモニタ電圧Vmの値は異なる。しかしながら、R/W装置110のアンテナサイズが決まれば、検波出力Vovが最大となるモニタ電圧Vmは、非接触ICカードのアンテナサイズに関係なく一定になることが分かる。
【0082】
ここで、検波出力Vov及びモニタ電圧Vm間の相関特性と、通信状態との関係を、図8を参照しながら説明する。
【0083】
(1)領域A
図8中のモニタ電圧Vmの最大値Vm1から、検波出力Vovが3.0V(LSIの駆動電圧の閾値)になるモニタ電圧Vm2までの領域Aは、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが大きい(遠距離)領域である。それゆえ、この領域Aでは、非接触ICカード120において、LSIを駆動するのに十分な電圧を誘起することが難しく、良好な通信状態が得られない。ただし、受信側(非接触ICカード120側)のLSIが、受信電力で動作せずに、バッテリで動作する場合には、検波出力Vovが3.0V以下(例えば1.5V等)であっても良好な通信が可能である。
【0084】
なお、モニタ電圧Vmがその最大値Vm1付近である場合には、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在しない(磁気的結合が無い)場合の通信状態も含む。それゆえ、モニタ電圧Vmがその最大値Vm1付近の値であるか否かを判定することにより、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在するか否かを判別することができる。
【0085】
(2)領域B
図8中のモニタ電圧Vm2から、検波出力Vovが最大となるモニタ電圧Vm3までの領域Bは、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが非接触通信に好適な距離(中間距離)の領域であり、良好な通信状態が得られる領域である。この領域Bは、例えば、図3中のインピーダンス特性において、距離dが10〜25mmの範囲、すなわち、良好なインピーダンス特性が得られる範囲に対応する。それゆえ、領域Bでは、良好な共振特性(インピーダンスマッチング)が得られ、良好な通信状態が得られる。
【0086】
ここで、領域Bの通信状態をより詳細に説明する。非接触通信システムでは、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが近づくと磁気的結合が強くなり、R/W装置110が発生する磁気エネルギーを非接触ICカード120のアンテナが受け取る。これにより、非接触ICカード120のアンテナコイルに電流が流れ、受信アンテナ121に電圧Voutが誘起される。同時に、R/W装置110のアンテナコイルでは、非接触ICカード120側のアンテナコイルによる逆起電力により、コイル電流が減少する。すなわち、非接触通信時には、送信側の磁気エネルギーが受信側で吸い取られるので、R/W装置110の送信アンテナ112に流れるコイル電流が減少する。
【0087】
図8中の領域Bでは、上述のような電磁誘導による送受信特性(通信特性)に与える相互インダクタンスMの影響が軽微であるので、送信側で発生する磁気エネルギーや受信側のインピーダンスもほぼ一定であると考えられる。また、領域Bでは、図8に示すように、非接触ICカード120において、LSIを駆動するのに十分な電圧を誘起することができる。それゆえ、領域Bに対応する通信状態では、検波出力Vov及び磁気的結合が適度であり、良好な共振特性が得られる。
【0088】
(3)領域C
図8中の検波出力Vovが最大となるモニタ電圧Vm3から、検波出力Vovが3.0Vになるモニタ電圧Vm4までの領域Cは、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが小さい(近距離)領域である。この領域Cは、例えば、図3中のインピーダンス特性において、距離dが2〜10mmの範囲、すなわち、信号源側から見た送信アンテナ112及び受信アンテナ121の各インピーダンスZがともに急激に変化する範囲に対応する。
【0089】
この領域Cでは、非接触ICカード120において、LSIを駆動するのに十分な電圧を誘起することができ、適度な検波出力Vovが得られる。しかしながら、R/W装置110及び非接触ICカード120間の磁気的結合が過度となり、検証実験1(図3)で説明したように、共振特性(インピーダンス)が変化する。
【0090】
すなわち、領域Cでは、送信側においてインピーダンスずれにより磁気エネルギーが減少し、受信側ではインピーダンスずれにより受信信号の電圧への変換性能が減少する(マイナス要因の影響)。なお、領域Cでは、このようなマイナス要因の影響だけでなく、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが小さいので、磁気結合が強くなるというプラス要因の影響もある。しかしながら、領域Cでは、上述したマイナス要因の影響が、上述したプラス要因の影響を上回る領域である。それゆえ、領域Cでは、磁気的結合が増大すると(R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dが小さくなると)、検波出力Vovは向上せずに、低下するという逆転現象が生じる。
【0091】
なお、モニタ回路部113では、上述のようにモニタ電圧Vmをモニタするが、これは、実質的には、R/W装置110のアンテナコイル114に流れるコイル電流をモニタすることと同等である。そして、コイル電流の変化は、相互インダクタンスMにより非接触ICカード120にエネルギーが吸い取られてコイル電流が減る現象、及び、R/W装置110のインピーダンスずれによりコイル電流そのものが小さくなる現象の二つの影響を反映する。
【0092】
しかしながら、図7及び8に示すように、R/W装置110のアンテナサイズを固定した場合には、R/W装置110に組み合わせる非接触ICカード120を変えても、検波出力Vovが最大となるモニタ電圧Vm(図8中のVm2)は略一定になる。このことから、領域Cにおける検波出力Vovの逆転現象の主な要因は、相互インダクタンスMにより、送信側のインピーダンスが大きく変化して、R/W装置110のコイル電流そのものが小さくなるため(後者の要因の影響)であると考えられる。
【0093】
なお、図5(検証実験2)中の検波出力Vovの特性143a及び特性143bに示すように、R/W装置110及び非接触ICカード120間の距離dを小さくしても、上述のような逆転現象が生じない場合もある。このようなR/W装置110及び非接触ICカード120の組み合わせでは、図5に示すように、距離dに対するモニタ電圧Vmの変化もより緩やかになることが分かる。このことから、このような組み合わせの非接触通信システムでは、R/W装置110及び非接触ICカード120間の磁気的結合が小さく、両者の接近時に発生する相互インダクタンスMも小さいと考えられる。
【0094】
(4)領域D
図8中のモニタ電圧Vm4より低いモニタ電圧Vmの領域Dは、領域Cより、さらに磁気的結合が過度になる領域であり、また、LSIを駆動するのに十分な電圧を誘起することが難しい領域である。それゆえ、領域Dは、共振特性の変化がより大きくなるとともに、通信特性も劣化するので、通信不良の領域となる。
【0095】
[検証実験5]
検証実験5では、図1に示す評価システム100と同様の回路を回路シミュレータで構成し、シミュレーション計算により、R/W装置のアンテナコイルに流れるコイル電流(モニタ電圧Vmに対応)と検波出力Vovとの相関関係を求めた。なお、検証実験5では、R/W装置のアンテナサイズは中サイズとした。
【0096】
図9に、検証実験5の計算結果を示す。なお、図9は、モニタ電流Im(R/W装置のアンテナコイルに流れるコイル電流)と検波出力Vovとの相関特性であり、横軸はモニタ電流Imであり、縦軸は検波出力Vovである。また、図9中のバツ印の点で示す特性、白抜き四角印の点で示す特性及び丸印の点で示す特性は、非接触ICカードのアンテナサイズをそれぞれ大、中及び小サイズにしたときの相関特性である。
【0097】
図9と、図7及び8との比較から明らかなように、シミュレーション解析においても、上記検証実験4の実測結果と同様に、モニタ電流Imと検波出力Vovとの間に、放物線状の相関特性が得られることが分かる。また、図7〜9から明らかなように、モニタ信号(モニタ電圧Vm又はモニタ電流Im)の最大値の約1/2のモニタ信号の値(図8ではVm3)で、検波出力Vovが最大となる。すなわち、R/W装置のアンテナサイズが決まれば、非接触ICカードのアンテナサイズに関係なく、モニタ信号の値がその最大値の約1/2の値(最適値)になるようにR/W装置の共振特性を制御すれば、最適な通信状態が得られることが分かる。
【0098】
また、検証実験5では、R/W装置の送信アンテナ(共振回路)のQ値を変えたときのモニタ電流Imと検波出力Vovとの相関特性をシミュレーション解析で求めた。なお、ここでは、Q値を5、10、15、20、25及び30に変化させた。そして、各Q値において、磁気結合係数Kを0.01〜0.99の範囲で変化させて、モニタ電流Imと検波出力Vovとの相関特性を求めた。
【0099】
図10に、送信アンテナ(共振回路)のQ値を変えたときのモニタ電流Imと検波出力Vovとの相関特性のシミュレーション結果を示す。なお、図10に示す相関特性の横軸はモニタ電流Imであり、縦軸は検波出力Vovである。
【0100】
図10から明らかなように、送信アンテナのQ値を大きくすると、モニタ電流Im(コイル電流)の最大値及び最適値(検波出力Vovが最大となる値)を大きくすることができる。それゆえ、送信アンテナのQ値を大きくすると、非接触ICカードの受信アンテナ(共振回路)で誘起される受信電圧Voutも大きくなるので、検波出力Vovも大きくすることができる。また、図10から、各Q値におけるモニタ電流Imと検波出力Vovとの相関特性は全て略放物線状の特性となり、モニタ電流Imの最適値(検波出力Vovが最大となる値)が、モニタ電流Imの最大値の約1/2の値になることが分かる。
【0101】
以上の各種検証実験の結果から、R/W装置の送信アンテナに流れる電流(モニタ電流Im)又はそれに対応するモニタ電圧Vm、すなわち、送信アンテナに流れる電流に関する情報をモニタすることにより、通信状態を判別することができることが分かる。また、上記各種検証実験の結果から、検波出力Vovを最大にするためのモニタ信号(モニタ電流Im又はモニタ電圧Vm)の最適値は、モニタ信号の最大値の1/2の値になることが推定される。
【0102】
なお、上述した、R/W装置の送信アンテナに流れる電流に関する情報(モニタ信号)に基づいて、通信状態を判別する手法では、次のような利点も得られる。
【0103】
R/W装置において、例えば、インピーダンスずれによりコイル電流が小さくなった場合には、信号源の電圧を大きくしたり、信号源の出力インピーダンスを小さくしたりしてコイル電流を大きくするなどの対策が可能である。しかしながら、インピーダンスをリアルタイムでモニタする処理動作は、回路的に非常に負荷が大きく、簡便な回路で信号の送受信を行う非接触通信システムにはそぐわない。また、インピーダンスずれだけでなく、共振周波数ずれをモニタする処理動作も同様に負荷が非常に大きい。
【0104】
それに対して、本開示では、上述のように、R/W装置のアンテナコイルに流れるコイル電流と非接触ICカードの検波出力との間の相関特性を利用して、通信状態を判別する。この際、R/W装置の構成が決まれば、非接触ICカードの構成(アンテナサイズ、アンテナのインダクタンス、アンテナのQ値)に関係なく、コイル電流をモニタするだけで通信状態を推定できる。それゆえ、本開示における通信状態のモニタ手法では、上述したインピーダンスや共振周波数ずれをモニタする手法に比べて、より簡易に通信状態の良否を判別することができる。
【0105】
[通信特性の補正手法の概要]
上述のように、R/W装置の送信アンテナに流れる電流に関する情報(モニタ信号)をモニタすることにより、通信状態を判別することができる。具体的には、図8で説明したように、モニタ電圧Vmの値により、現在の通信状態が、領域A、B、C及びDのいずれの領域の状態であるか判別することができる。ここでは、図8中の領域B(良好な通信特性が得られる領域)以外の領域の通信状態における通信特性の補正手法(対策)の概要を説明する。
【0106】
(1)領域Aでの対策
領域A(特にモニタ電圧Vmがその最大値Vm1付近の領域)は、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在しない(磁気的結合が無い)、又は、非接触ICカードが存在しても磁気的結合が非常に小さい通信状態の領域である。それゆえ、後者の通信状態に対する対策としては、R/W装置の送信出力を大きくする手法が挙げられる。
【0107】
なお、R/W装置の送信出力を大きくする手法としては、例えば送信信号の信号レベルを上げてコイル電流を増加させる、又は、信号出力部の出力インピーダンスを小さくしてコイル電流を増加させるなどの手法を用いることができる。
【0108】
(2)領域Cでの対策
領域Cは、非接触ICカード及びR/W装置間の距離dがその最適値より小さい状態の領域である。この領域Cの通信状態では、上述のように、相互インダクタンスMの影響により、共振特性が変化し、送信出力が低下する。
【0109】
それゆえ、通信状態が領域Cの状態である場合には、次の2つの対策により、通信状態を良好な状態(領域Bの状態)に補正(調整)することができる。
(a)共振特性を変化させ、共振周波数のずれを補正する(共振周波数を上昇させる)。
(b)送信アンテナに流れるコイル電流を増大させて、送信出力を増加する。
【0110】
(3)領域Dでの対策
領域Dは、磁気的結合の影響が非常に大きく、かつ、検波出力Vovが低い領域であり、通信不良の領域である。この場合の対処手法としては、例えば、領域Cでの上記対策(a)(共振特性を補正する手法)を適用することができる。しかしながら、R/W装置の構成によっては、上記対策(a)により、領域Dの通信不良の状態を領域Bの通信良好の状態まで補正することが困難な場合もあるので、その場合には、R/W装置で、通信不良である旨のエラー表示を行うようにしてもよい。
【0111】
<2.送信装置の各種実施形態>
次に、上述した本開示の通信状態のモニタ手法で通信状態をモニタしながら、通信特性を補正することが可能なR/W装置(送信装置)の各種実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0112】
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれであるかを判別し、その判別結果(モニタ結果)に基づいて、送信アンテナの共振特性(通信特性)を変化させ、共振周波数ずれを補正するR/W装置の構成例を説明する。すなわち、本実施形態では、R/W装置及び非接触ICカード間の距離dが小さく、相互インダクタンスMの影響が大きい場合に、共振周波数ずれを改善するR/W装置の構成例を説明する。なお、本実施形態では、R/W装置の送信アンテナの共振特性を、共振回路を構成する並列コンデンサの容量値(キャパシタンス)を変化させることにより共振周波数ずれを補正する。
【0113】
また、本実施形態では、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態であるか(通信状態の良好/不良)を判別するので、モニタ信号(モニタ電圧Vm)の最大値の1/2の値(最適値)を判別閾値として用いる。なお、モニタ信号の最大値(最適値)は、送信アンテナを構成する各回路素子の定数(キャパシタンス及びインダクタンス)のばらつきにより変化するが、モニタ信号の最大値はR/W装置毎に簡単に精度良く測定することができる。それゆえ、本実施形態の通信状態のモニタ手法では、通信状態の良好/不良を、R/W装置毎に簡単に精度良く判別することができる。
【0114】
(1)R/W装置の構成
図11に、第1の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。R/W装置(送信装置)1は、信号出力部2と、送信アンテナ3(送信部)と、モニタ回路部4(通信モニタ部)と、補正回路部5(通信補正部)と、2つの抵抗6,7とを備える。
【0115】
信号出力部2は、所定周波数(13.56MHz)の信号を生成して出力する信号源11、及び、インピーダンスが50Ωである出力インピーダンス12で構成される。信号源11の一方の出力端子(「+」側の端子)は、出力インピーダンス12の一方の端子に接続され、信号源11の他方の出力端子(「−」側の端子)は、接地される。また、出力インピーダンス12の他方の端子は、送信アンテナ3内の後述する直列コンデンサ15の一方の端子に接続される。なお、信号源11は、実回路ではLSIとして実装される。
【0116】
送信アンテナ3は、アンテナコイル13と、並列可変コンデンサ14と、直列コンデンサ15と、2つのDC除去用コンデンサ16,17とで構成される。なお、本実施形態では、送信アンテナ3(アンテナコイル13)のアンテナサイズは小サイズ(図2参照)とする。
【0117】
本実施形態では、DC除去用コンデンサ16、並列可変コンデンサ14及びDC除去用コンデンサ17が、この順で直列接続される。そして、該3つのコンデンサの直列回路の一方(DC除去用コンデンサ16側)の端子は、直列コンデンサ15の他方の端子及びアンテナコイル13の一方の端子に接続される。また、該3つのコンデンサの直列回路の他方(DC除去用コンデンサ17側)の端子は、グランドに接続されるとともに、モニタ回路部4内の後述するモニタ抵抗21を介してアンテナコイル13の他方の端子に接続される。
【0118】
並列可変コンデンサ14は、バイアス電圧(制御電圧)を加えることで容量が低下する可変容量素子で構成する。例えば、強誘電体を用いた薄膜コンデンサや、バリキャップと呼ばれるダイオードなどで並列可変コンデンサ14を構成することができる。また、2つのDC除去用コンデンサ16,17は、並列可変コンデンサ14に印加される制御電圧がアンテナコイル13に印加されないようにするために設けられたコンデンサである。それゆえ、2つのDC除去用コンデンサ16,17の容量値C3,C4は、ともに、並列可変コンデンサ14の容量値C1の10倍以上に設定する。
【0119】
また、本実施形態では、アンテナコイル13のインダクタンスL1、3つのコンデンサで構成された直列回路の容量値、及び、直列コンデンサ15の容量値C2は、信号出力部2及び送信アンテナ3間において、インピーダンスマッチングが取れるように設定する。具体的には、非接触ICカードとの磁気的結合が無い状態で、信号出力部2及び送信アンテナ3間において、13.56MHzの信号に対して50Ωでマッチングが取れるように、送信アンテナ3内の各回路素子の定数(L1及びC1〜C4)を設定する。
【0120】
モニタ回路部4は、アンテナコイル13に流れるコイル電流をモニタする回路である。モニタ回路部4は、モニタ抵抗21と、コンパレータ22と、参照電源23とを有する。
【0121】
モニタ抵抗21は、アンテナコイル13とグランドとの間に設けられる。本実施形態では、モニタ抵抗21により、アンテナコイル13に流れるコイル電流を電圧(モニタ電圧Vm:アンテナコイルに流れる電流に関する情報)に変換し、該変換されたモニタ電圧Vmに基づいて、通信状態を判別する。なお、本実施形態では、モニタ抵抗21の抵抗値は1Ωとする。
【0122】
コンパレータ22の「+」側の入力端子は、参照電源23の出力端子に接続され、「−」側の入力端子は、アンテナコイル13及びモニタ抵抗21間の接続点に接続される。また、コンパレータ22の出力端子は、補正回路部5内の後述する切替スイッチ25に接続される。コンパレータ22は、モニタ電圧Vmと、参照電源23から出力される参照電圧Vrefとを比較し、比較結果を補正回路部5内の切替スイッチ25に出力する。
【0123】
なお、本実施形態では、上述のように、アンテナコイル13のサイズを小サイズとし、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態にあるかを判別するので、参照電圧Vref(モニタ電圧Vmの最適値)は、160mVとする(図8参照)。
【0124】
補正回路部5は、エラーアンプ24と、切替スイッチ25とを有する。
【0125】
エラーアンプ24の「+」側の入力端子は、参照電源23の出力端子に接続され、「−」側の入力端子は、アンテナコイル13及びモニタ抵抗21間の接続点に接続される。そして、エラーアンプ24の出力端子は、切替スイッチ25の入力端子に接続される。エラーアンプ24は、モニタ電圧Vmと参照電圧Vref(160mV)との差分を増幅し、該増幅した信号(制御電圧Ve)を切替スイッチ25に出力する。
【0126】
切替スイッチ25の「+」側の制御端子は、コンパレータ22の出力端子に接続され、「−」側の制御端子は、接地される。また、切替スイッチ25の出力端子は、抵抗6を介して、並列可変コンデンサ14のDC除去用コンデンサ16側の端子に接続される。
【0127】
切替スイッチ25は、コンパレータ22の出力信号によりON/OFF制御される。具体的には、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(通信状態が領域Bの通信状態である場合)には、切替スイッチ25は、コンパレータ22の出力信号によりOFF状態となるように制御される。一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合(通信状態が領域Cの通信状態である場合)には、切替スイッチ25は、コンパレータ22の出力信号によりON状態となるように制御される。
【0128】
すなわち、本実施形態では、通信状態が図8中の領域Cの通信状態である場合(相互インダクタンスMの影響が大きい場合)、エラーアンプ24の出力電圧(Ve)を、並列可変コンデンサ14にフィードバックして印加し、送信アンテナ3の共振特性を補正する。一方、通信状態が図8中の領域Bの通信状態である場合(相互インダクタンスMの影響が小さい場合)には、本実施形態では、エラーアンプ24の出力電圧(Ve)を、並列可変コンデンサ14にフィードバックせず、送信アンテナ3の共振特性を補正しない。
【0129】
抵抗6は、補正回路部5内の切替スイッチ25の出力端子と送信アンテナ3内の並列可変コンデンサ14のDC除去用コンデンサ16側の端子との間に設けられる。また、抵抗7は、送信アンテナ3内の並列可変コンデンサ14のDC除去用コンデンサ17側の端子とグランドとの間に設けられる。抵抗6及び7は、バイアス電流を制限するとともに、補正回路部5及び送信アンテナ3(共振回路)間の信号干渉を抑制する(両者を分離する)するために設けられた抵抗である。それゆえ、抵抗6及び7は、例えば100kΩ等の高抵抗値の抵抗素子で構成される。
【0130】
なお、上述したモニタ回路部4及び補正回路部5は、実回路では一つのLSI(集積回路)として実装される。なお、信号源11は、上述のように、実回路ではLSIとして実装されるので、本実施形態のR/W装置1では、信号出力部2、モニタ回路部4及び補正回路部5を一つのLSIに実装してもよい。
【0131】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置1における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を、図12を参照しながら説明する。なお、図12は、R/W装置1における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作の手順を示すフローチャートである。
【0132】
まず、R/W装置1を起動した後、モニタ回路部4は、送信アンテナ3に流れるコイル電流をモニタする(ステップS1)。具体的には、モニタ回路部4は、コイル電流に対応するモニタ電圧Vm(モニタ抵抗21の端子間の電圧)を検出する。
【0133】
次いで、モニタ回路部4は、現在の通信状態を判別する(ステップS2)。具体的には、モニタ回路部4は、コンパレータ22で、ステップS1で検出したモニタ電圧Vmと、参照電圧Vref(160mV)とを比較し、その比較結果に基づいて例えば、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態にあるかを判別する。
【0134】
次いで、モニタ回路部4は、ステップS3におけるモニタ電圧Vmと参照電圧Vref(160mV)との比較結果に基づいて、通信特性を補正する必要があるか否かを判定する(ステップS3)。
【0135】
なお、図8で説明したように、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(領域B)には、R/W装置及び非接触ICカード間の距離dがある程度大きく、相互インダクタンスMの影響が小さなるので、良好な通信状態が得られる。一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合(領域C)には、R/W装置及び非接触ICカード間の距離dが小さく、相互インダクタンスMの影響が大きくなるので、通信状態が劣化した状態となる。
【0136】
それゆえ、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合には、通信状態が良好な状態であり、通信特性の補正は不要であるので、ステップS3の判定は、No判定となる。この場合には、ステップS1の動作に戻り、ステップS1及びS2の上記動作を繰り返す。具体的には、R/W装置1は、補正回路部5内の切替スイッチ25をコンパレータ22の出力信号によりOFF状態にし、制御電圧Veを並列可変コンデンサ14に印加せず、送信アンテナ3の共振特性を補正しない。
【0137】
一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合には、通信状態が劣化した状態であり、通信特性の補正が必要であるので、ステップS3はYes判定となる。それゆえ、この場合には、R/W装置1は、通信特性を補正する(ステップS4)。具体的には、R/W装置1は、補正回路部5内の切替スイッチ25をコンパレータ22の出力信号によりON状態にし、制御電圧Veを並列可変コンデンサ14に印加して、送信アンテナ3の共振特性を補正する。なお、この際、本実施形態では、非接触ICカードのアンテナコイルの影響でR/W装置1の共振周波数が低下したと判断するので、並列可変コンデンサ14の容量値C1を低下させて共振周波数を上げるように制御する。
【0138】
そして、送信アンテナ3の共振特性を補正した後、R/W装置1は、ステップS1の動作に戻り、上述したステップS1〜S4の動作を繰り返す。本実施形態では、このようにして、R/W装置1の通信状態をモニタ及び判別し、その結果に基づいて、通信特性を適宜補正する。
【0139】
なお、本実施形態では、参照電圧Vref以下のモニタ電圧Vmの範囲を補正(制御)範囲としたが、これはSN比が低い通信状態も含め、全ての通信状態で自動制御を実施した場合、通信状態が最適な状態に収束しない可能性があるためである。ただし、この全ての通信状態で自動制御を実施する場合の課題は、コンパレータ22にヒステリシスを設けて、参照電圧Vref(160mV)近傍で切替スイッチ25がON/OFF動作を繰り返さないようにすることにより解消することができる。
【0140】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、並列可変コンデンサ14の容量値C1を変化させて送信アンテナ3の共振特性を補正する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。送信アンテナ内の並列コンデンサを2つ用意し、通信状態に応じて、用いる並列コンデンサを切り替える構成にしてもよい。第2の実施形態では、その一構成例を説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態であるかを判別し、その判別結果に基づいて、送信アンテナ(共振回路)の共振特性を変化させ、共振周波数ずれを補正する構成例を説明する。
【0141】
(1)R/W装置の構成
図13に、第2の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。なお、図13に示す本実施形態のR/W装置30において、図11に示す第1の実施形態のR/W装置1と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0142】
R/W装置30(送信装置)は、信号出力部2と、送信アンテナ31(送信部)と、モニタ回路部4(通信モニタ部)と、切替スイッチ32(通信補正部)とを備える。なお、モニタ回路部4及び切替スイッチ32は、実回路では一つのLSI(集積回路)に実装される。また、本実施形態の信号出力部2及びモニタ回路部4は、上記第1の実施形態の対応する各部と同様の構成であるので、ここでは、これらの構成の説明は省略する。
【0143】
送信アンテナ31は、アンテナコイル13と、第1並列コンデンサ33と、第2並列コンデンサ34と、直列コンデンサ15とで構成される。なお、本実施形態のアンテナコイル13及び直列コンデンサ15は、上記第1の実施形態の対応する各回路素子と同様の構成である。
【0144】
本実施形態では、第1並列コンデンサ33の一方の端子は、アンテナコイル13の一方の端子及び直列コンデンサ15の出力インピーダンス12側とは反対側の端子に接続され、第1並列コンデンサ33の他方の端子は、接地される。また、第2並列コンデンサ34の一方の端子は、切替スイッチ32を介して、アンテナコイル13の一方の端子に接続され、第2並列コンデンサ34の他方の端子は、接地される。さらに、アンテナコイル13の他方の端子は、モニタ回路部4内のモニタ抵抗21を介して、接地される。すなわち、本実施形態では、第1並列コンデンサ33と、第2並列コンデンサ34及び切替スイッチ32からなる直列回路と、アンテナコイル13及びモニタ抵抗21からなる直列回路とが、互いに並列接続される。
【0145】
切替スイッチ32の「+」側の制御端子は、コンパレータ22の出力端子に接続され、「−」側の制御端子は、接地される。また、切替スイッチ32の一方の端子は、アンテナコイル13の一方の端子及び第1並列コンデンサ33の一方の端子に接続され、切替スイッチ32の他方の端子は、第2並列コンデンサ34の一方の端子に接続される。
【0146】
切替スイッチ32は、コンパレータ22の出力信号によりON/OFF制御される。具体的には、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(通信状態が領域Bの通信状態である場合)には、切替スイッチ32は、コンパレータ22の出力信号によりON状態となるように制御される。一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合(通信状態が領域Cの通信状態である場合)には、切替スイッチ32は、コンパレータ22の出力信号によりOFF状態となるように制御される。
【0147】
すなわち、本実施形態では、通信状態が図8中の領域Cの通信状態である場合(相互インダクタンスMの影響が大きい場合)には、送信アンテナ31から第2並列コンデンサ34を切り離して送信アンテナ31の共振特性(通信特性)を補正する。一方、通信状態が図8中の領域Bの通信状態である場合(相互インダクタンスMの影響が小さい場合)には、第2並列コンデンサ34を送信アンテナ31に接続した状態を保ち、送信アンテナ31の共振特性を補正しない。
【0148】
それゆえ、本実施形態では、通信状態が良好な状態である場合に、信号出力部2及び送信アンテナ31間においてインピーダンスマッチングが取れるように、送信アンテナ3内の各回路素子の定数(L1、C2、C5及びC6)を適宜設定する。また、本実施形態では、通信状態の補正時(第2並列コンデンサ34を切り離した際)に、通信状態が図8中の領域Cの通信状態から図8中の領域Bの通信状態に補正されるように、各並列コンデンサの容量値(C5及びC6)を設定する。
【0149】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置30における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を説明する。本実施形態における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作は、上記第1の実施形態(図12)と同様の手順で実施される。具体的には、送信アンテナ3に流れるコイル電流(モニタ電圧Vm)のモニタ動作(ステップS1)、通信状態の判別動作(ステップS2)、通信特性の補正要否の判定動作(ステップS3)、及び、通信特性の補正動作(ステップS4)をこの順で繰り返す。
【0150】
ただし、本実施形態のR/W装置30では、ステップS3で通信特性の補正が必要と判定された場合、ステップS4で、切替スイッチ32により、第2並列コンデンサ34を送信アンテナ31から切り離して、送信アンテナ31の共振特性を補正する。
【0151】
上述のように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、R/W装置30で、通信状態を判別し、その判別結果に基づいて、通信状態を良好な状態に補正することができる。また、本実施形態のR/W装置30では、上記第1の実施形態のように、送信アンテナの共振特性を連続的に補正することはできないが、回路構成は、上記第1の実施形態に比べてより簡易なる。さらに、本実施形態では、2つの並列コンデンサを切り替える構成であるので、上記第1の実施形態で説明した通信状態が最適な状態に収束しないという問題も生じない。
【0152】
ただし、本実施形態の構成では、切替スイッチ32として、高周波特性に優れ、耐電圧性の高い、高価なスイッチが必要となる。それゆえ、コストの観点では、本実施形態より、上記第1の実施形態の構成の方が有利である。
【0153】
[第3の実施形態]
上記第2の実施形態では、2つの並列コンデンサを切り替えて送信アンテナの共振特性を補正する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。送信アンテナ内のアンテナコイルを2つ用意し、通信状態に応じて、用いるアンテナコイルを切り替える構成にしてもよい。第3の実施形態では、その一構成例を説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態であるかを判別し、その判別結果に基づいて、送信アンテナの共振特性(通信特性)を変化させ、共振周波数ずれを補正する構成例を説明する。
【0154】
(1)R/W装置の構成
図14に、第3の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。なお、図14に示す本実施形態のR/W装置40において、図11に示す第1の実施形態のR/W装置1と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0155】
R/W装置40(送信装置)は、信号出力部2と、送信アンテナ41(送信部)と、モニタ回路部42(通信モニタ部)と、切替スイッチ43(通信補正部)とを備える。なお、モニタ回路部42及び切替スイッチ43は、実回路では一つのLSI(集積回路)に実装される。また、本実施形態の信号出力部2は、上記第1の実施形態のそれと同様の構成であるので、ここでは、信号出力部2の構成の説明は省略する。
【0156】
送信アンテナ41は、第1アンテナコイル44と、第2アンテナコイル45と、並列コンデンサ46と、直列コンデンサ15とで構成される。なお、本実施形態における直列コンデンサ15は、上記第1の実施形態のそれと同様の構成である。また、本実施形態では、各アンテナコイルのサイズは小サイズとする。
【0157】
本実施形態では、第1アンテナコイル44の一方の端子は、並列コンデンサ46の一方の端子及び直列コンデンサ15の出力インピーダンス12側とは反対側の端子に接続される。また、第1アンテナコイル44の他方の端子は、モニタ回路部42内のモニタ抵抗21を介して接地される。
【0158】
第2アンテナコイル45の一方の端子は、切替スイッチ43を介して、第1アンテナコイル44の一方の端子に接続され、第2アンテナコイル45の他方の端子は、第1アンテナコイル44の他方の端子に接続される。なお、並列コンデンサ46の他方の端子は、接地される。すなわち、本実施形態では、第1アンテナコイル44は、第2アンテナコイル45及び切替スイッチ43からなる直列回路と並列接続される。また、第1アンテナコイル44及び第2アンテナコイル45を含む回路群と、モニタ抵抗21とからなる直列回路は、並列コンデンサ46に並列接続される。
【0159】
モニタ回路部42は、アンテナコイルに流れるコイル電流をモニタする回路である。モニタ回路部42は、モニタ抵抗21と、コンパレータ22と、参照電源23とを有する。本実施形態においても、モニタ抵抗21により、アンテナコイルに流れるコイル電流を電圧(モニタ電圧Vm)に変換し、該変換されたモニタ電圧Vmに基づいて、通信状態を判別する。
【0160】
なお、モニタ回路部42の各構成素子は、上記第1の実施形態の対応する各素子と同様の構成である。ただし、本実施形態では、第1アンテナコイル44及びモニタ抵抗21間の接続点を、コンパレータ22の「+」側の入力端子に接続し、参照電源23の出力端子をコンパレータ22の「−」側の入力端子に接続する。本実施形態のモニタ回路部42において、コンパレータ22の2つの入力端子の接続形態以外の構成は、上記第1実施形態のモニタ回路部4と同様の構成である。また、本実施形態においても、アンテナコイルのサイズは小サイズとし、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態にあるかを判別するので、参照電圧Vrefは、160mVとする(図8参照)。
【0161】
切替スイッチ43の「+」側の制御端子は、コンパレータ22の出力端子に接続され、「−」側の制御端子は、接地される。また、切替スイッチ43の一方の端子は、第1アンテナコイル44の一方の端子及び並列コンデンサ46の一方の端子に接続され、切替スイッチ43の他方の端子は、第2アンテナコイル45の一方の端子に接続される。
【0162】
切替スイッチ43は、コンパレータ22の出力信号によりON/OFF制御される。具体的には、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(通信状態が領域Bの通信状態である場合)には、切替スイッチ43は、コンパレータ22の出力信号によりOFF状態となるように制御される。一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合(通信状態が領域Cの通信状態である場合)には、切替スイッチ43は、コンパレータ22の出力信号によりON状態となるように制御される。
【0163】
すなわち、本実施形態では、通信状態が図8中の領域Cの通信状態である場合(相互インダクタンスMの影響が大きい場合)には、第2アンテナコイル45を送信アンテナ41に接続して送信アンテナ41の共振特性を補正する(共振周波数を上げる)。一方、通信状態が図8中の領域Bの通信状態である場合(相互インダクタンスMの影響が小さい場合)には、送信アンテナ41から第2アンテナコイル45を切り離した状態を保ち、送信アンテナ41の共振特性を補正しない。
【0164】
それゆえ、本実施形態では、通信状態が良好な状態である場合に、信号出力部2及び送信アンテナ41間においてインピーダンスマッチングが取れるように、2つのコンデンサ及び第1アンテナコイル44の各定数(C2、C7及びL3)を適宜設定する。また、本実施形態では、通信状態の補正時(第2アンテナコイル45を接続した際)に、通信状態が図8中の領域Cの通信状態から図8中の領域Bの通信状態に補正されるように、各アンテナコイルのインダクタンス(L3及びL4)を設定する。
【0165】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置40における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を説明する。本実施形態における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作は、上記第1の実施形態(図12)と同様の手順で実施される。具体的には、送信アンテナ41に流れるコイル電流(モニタ電圧Vm)のモニタ動作(ステップS1)、通信状態の判別動作(ステップS2)、通信特性の補正要否の判定動作(ステップS3)及び通信特性の補正動作(ステップS4)をこの順で繰り返す。
【0166】
ただし、本実施形態のR/W装置40では、ステップS3で通信特性の補正が必要と判定された場合、ステップS4で、切替スイッチ43により、第2アンテナコイル45を送信アンテナ41に接続して、送信アンテナ41の共振特性(通信特性)を補正する。
【0167】
上述のように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、R/W装置40で、通信状態を判別し、その判別結果に基づいて、通信状態を良好な状態に補正することができる。
【0168】
なお、R/W装置40及び非接触ICカード間の磁気的結合の影響がある場合、アンテナコイルのインダクタンスが変化することが問題となる。それゆえ、本実施形態のようにアンテナコイルのインダクタンスを直接、補正する手法では、精度良く共振特性を補正することができ、より安定した通信を確保することができる。さらに、本実施形態では、2つのアンテナコイルを切り替える構成であるので、回路構成が簡易になるとともに、上記第1の実施形態で説明した通信状態が最適な状態に収束しないという問題も生じない。
【0169】
ただし、本実施形態においても、上記第2の実施形態と同様に、切替スイッチ43として、高周波特性に優れ、耐電圧性の高い、高価なスイッチが必要となる。それゆえ、コストの観点では、本実施形態より、上記第1の実施形態の構成の方が有利である。また、本実施形態では、アンテナコイルを2つ用いるので、より小型のアンテナコイルを用いて送信アンテナ41を構成する必要がある。それゆえ、本実施形態の構成では、上記第1の実施形態の構成に比べて、アンテナコイルのサイズや配置に制約が生じる可能性がある。
【0170】
[第4の実施形態]
第4の実施形態では、R/W装置において、上述した通信状態のモニタ手法を用いて通信状態を判別し、その判別結果に基づいて、送信アンテナを構成する回路素子の経時変化などにより発生する共振周波数ずれを補正する例を説明する。
【0171】
本開示技術の提案者らは、以前に出願した特願2009―230093において、送信アンテナから送出した信号を自身の受信アンテナで受信し、送信信号及び受信信号間の位相差を最適化することにより共振周波数すれを補正するR/W装置を提案した。
【0172】
この技術では、位相差の調整モード機能をR/W装置に設け、出荷調整時以外のときにも(例えば深夜などに)、定期的に調整モードを実行して共振周波数ずれを補正することができる。このような調整モードを実行することにより、共振周波数の経時変化などを補正することができ、より安定な通信特性を得ることができる。ただし、この技術では、所定の条件を満たした時にのみ調整モードに実行するので、処理が煩雑になる可能性がある。また、この技術では、調整モードの実行中に、通信動作を一時遮断する必要がある。
【0173】
しかしながら、上述した本開示の通信状態のモニタ手法を用いた場合には、R/W装置に位相差の調整モードを設けることなく、かつ、共振周波数の補正時に通信を遮断することなく、共振周波数ずれ(共振周波数の経時変化)を補正することができる。
【0174】
本開示の通信状態のモニタ手法では、上述のように、モニタ電圧Vmが最大値付近の値であるか否かを判別することにより、R/W装置の通信可能圏内に、非接触ICカードが存在するか否かを判別することができる。そこで、本実施形態では、本開示の通信状態のモニタ手法を用いて、R/W装置の通信可能圏内に、非接触ICカードが存在するか否かを判別し、非接触ICカードが存在しない場合には送信信号の位相差調整を行い、共振周波数ずれを補正する。
【0175】
(1)R/W装置の構成
図15に、第4の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。なお、図15に示す本実施形態のR/W装置50において、図11に示す第1の実施形態のR/W装置1と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0176】
R/W装置50(送信装置)は、信号出力部2と、送信アンテナ3(送信部)と、モニタ回路部51(通信モニタ部)と、補正回路部52(通信補正部)と、2つの抵抗6,7とを備える。なお、モニタ回路部51及び補正回路部52は、実回路では一つのLSI(集積回路)に実装される。また、本実施形態の信号出力部2、送信アンテナ3及び2つの抵抗6,7は、上記第1の実施形態の対応する各部と同様の構成であるので、ここでは、これらの構成の説明は省略する。
【0177】
モニタ回路部51は、アンテナコイル13に流れるコイル電流をモニタする回路である。モニタ回路部51は、モニタ抵抗21と、コンパレータ22と、参照電源53とを有する。なお、モニタ回路部51の各構成素子の接続関係は、上記第1の実施形態のそれと同様である。また、本実施形態においても、モニタ抵抗21により、アンテナコイル13に流れるコイル電流を電圧(モニタ電圧Vm)に変換し、該変換されたモニタ電圧Vmに基づいて、通信状態を判別する。
【0178】
本実施形態では、上述のように、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在するか否かを判別するので、参照電圧Vrefは、モニタ電圧Vmの最大値付近の値に設定する。本実施形態では、アンテナコイルのサイズを小サイズとするので、モニタ電圧Vmの最大値は、約300mVである。そこで、本実施形態では、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在するか否かを判別するための閾値電圧(Vref)をモニタ電圧Vmの最大値より若干小さな値、具体的には、最大値より3%小さい290mVに設定する。すなわち、参照電源53の出力電圧を290mVに設定する。なお、本実施形態において、通信状態の判別に用いる閾値電圧(Vref)は290mVに限定されず、例えば用途等の条件に応じて適宜変更することができる。
【0179】
補正回路部52は、位相コンパレータ54と、抵抗55と、コンデンサ56と、エラーアンプ57と、位相差参照電源58と、切替スイッチ25と、ホールドコンデンサ59とを備える。なお、本実施形態の切替スイッチ25は、上記第1の実施形態のそれと同様の構成であるので、ここでは、切替スイッチ25の詳細な説明は省略する。
【0180】
位相コンパレータ54の「−」側の入力端子は、アンテナコイル13及びモニタ抵抗21間の接続点に接続され、位相コンパレータ54の「+」側の入力端子は、信号出力部2の出力端子に接続される。また、位相コンパレータ54の出力端子は、抵抗55の一方の端子に接続される。
【0181】
位相コンパレータ54は、信号出力部2から出力される信号の位相(以下、信号源位相という)と、送信アンテナ3から送出される送信信号の位相(以下、モニタ位相という)とを比較し、両者の位相差に対応する電圧信号を抵抗55に出力する。
【0182】
抵抗55の他方の端子は、コンデンサ56の一方の端子及びエラーアンプ57の「−」側の入力端子に接続される。また、コンデンサ56の他方の端子は、接地される。すなわち、本実施形態では、抵抗55及びコンデンサ56によりRCフィルタを構成する。そして、このRCフィルタは、位相コンパレータ54から出力された信号を直列電圧に変換し、該変換した直列電圧をエラーアンプ57の「−」側の入力端子に印加する。なお、抵抗55は、例えば抵抗値が100kΩの抵抗素子で構成することができ、コンデンサ56は、例えば容量値が1nFの容量素子で構成することができる。
【0183】
エラーアンプ57の「+」側の入力端子は、位相差参照電源58の出力端子に接続され、「−」側の入力端子は、抵抗55及びコンデンサ56間の接続点(RCフィルタの出力端)に接続される。そして、エラーアンプ57の出力端子は、切替スイッチ25の入力端子に接続される。また、位相差参照電源58の出力電圧Vpは、最適な位相差に対応する電圧(以下、位相差参照電圧Vpという)を出力する。なお、位相差参照電圧Vpは、例えば、装置の種類や用途等の条件を考慮して予め適宜設定される。エラーアンプ57は、信号源位相と、モニタ位相との位相差に対応する直流電圧と、位相差参照電圧Vpとの差分を増幅し、該増幅した電圧を切替スイッチ25に出力する。
【0184】
ホールドコンデンサ59の一方の端子は、切替スイッチ25の出力端子及び抵抗6の一方の端子に接続され、ホールドコンデンサ59の他方の端子は、接地される。ホールドコンデンサ59は、位相差調整を行わないとき(切替スイッチ25がOFF状態のとき)に、並列可変コンデンサ14に印加する制御電圧を保持するために設けられたコンデンサである。このホールドコンデンサ59は、例えば容量値が10nFのコンデンサで構成することができる。
【0185】
なお、本実施形態では、モニタ電圧Vmが290mV〜300mVの範囲の値である場合(R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在しない場合、又は、存在するがその影響を無視できる場合)には、位相差調整を行う。具体的には、この場合には、コンパレータ22により切替スイッチ25をON状態にし、これにより、位相差(通信特性)を補正して共振周波数ずれを補正する。一方、モニタ電圧Vmが、参照電圧Vref(290mV)より小さい場合(R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在する場合)には、コンパレータ22により切替スイッチ25をOFF状態に維持して、位相差調整は実施しない。
【0186】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置50における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を説明する。本実施形態における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作は、上記第1の実施形態(図12)と同様の手順で実施される。具体的には、送信アンテナ3に流れるコイル電流(モニタ電圧Vm)のモニタ動作(ステップS1)、通信状態の判別動作(ステップS2)、通信特性の補正要否の判定動作(ステップS3)及び通信特性の補正動作(ステップS4)をこの順で繰り返す。
【0187】
ただし、本実施形態では、ステップS3において、モニタ電圧Vmと閾値電圧(Vref=290mV)とを比較して、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在するか否かを判定する。
【0188】
そして、ステップS3において、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在しないと判定された場合(モニタ電圧Vm=290mV〜300mVの場合)、ステップS3はYes判定となる。この場合には、ステップS4において、補正回路部52は、切替スイッチ25をON状態にして、送信信号の位相差調整を行い、共振周波数ずれを補正する。具体的には、信号源位相及びモニタ位相間の位相差に対応する電圧と、位相差参照電圧Vpとの差電圧が、制御電圧として、並列可変コンデンサ14に印加され、送信信号の位相差調整が行われる。なお、この際、ホールドコンデンサ59も充電される。
【0189】
一方、ステップS3において、R/W装置の通信可能圏内に非接触ICカードが存在すると判定された場合(モニタ電圧Vm<290mVの場合)、ステップS3はNo判定となる。この場合には、ステップS4において、補正回路部52は、切替スイッチ25をOFF状態にする。ただし、この場合には、ホールドコンデンサ59に保持された電圧が、制御電圧として、並列可変コンデンサ14に印加される。なお、この際、コンデンサには電流が流れないので、通信時間程度の期間内では並列可変コンデンサ14に印加される制御電圧はほとんど変化せず、問題となるような共振周波数ずれは発生しない。
【0190】
本実施形態では、上述のようにして、送信アンテナ3の共振周波数ずれを調整し、共振周波数の経時変化などを補正する。なお、本実施形態では、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(290mV)〜最大値(300mV)の範囲の値であるときにのみ、位相差(通信特性)を調整する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。常時、切替スイッチ25をON状態にして位相差調整を行うことも可能である。しかしながら、本実施形態のように、所定の電圧範囲に限定して位相差調整を行うことにより、例えば、不要な位相差調整動作による、電力消費の増大やノイズの発生などを避けることができる。
【0191】
[第5の実施形態]
第1〜第3の実施形態では、通信状態が図8中の領域Cの状態にあるとき(相互インダクタンスMの影響が大きい場合)に、R/W装置の送信アンテナの共振特性(共振周波数)を補正する例を説明したが、本開示はこれに限定されない。通信状態が図8中の領域Cの状態にあるときに非接触ICカード側での検波電圧Vovが小さくなる理由は、アンテナ間の磁気的結合により、R/W装置の信号源から見た送信アンテナのインピーダンスが所定の値からずれ、送信出力が小さくなるためである。
【0192】
それゆえ、非接触ICカード側での検波電圧Vovを大きくするための最も確実な手法は、R/W装置の送信出力を増大させることである。送信出力を増大させるための手法としては、例えば、次の3つの手法を用いることができる
(a)送信電圧を大きくする。
(b)送信電流(送信アンテナに流れる電流)を大きくする。
(c)コイル電流(アンテナコイルに流れる電流)を大きくする。
【0193】
第5の実施形態では、送信電流を大きくする手法(上記(b)の手法)を用いたR/W装置の構成例を説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態であるかを判別し、その判別結果に基づいて、R/W装置の出力特性(通信特性)を変化させ、通信状態を補正する例を説明する。
【0194】
(1)R/W装置の構成
図16に、第5の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。なお、図16に示す本実施形態のR/W装置60において、図11に示す第1の実施形態のR/W装置1と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0195】
R/W装置60(送信装置)は、信号出力部61と、送信アンテナ62(送信部)と、モニタ回路部4(通信モニタ部)と、補正回路部5(通信補正部)と、抵抗6とを備える。なお、モニタ回路部4及び補正回路部5は、実回路では一つのLSI(集積回路)に実装される。また、本実施形態のモニタ回路部4、補正回路部5及び抵抗6は、上記第1の実施形態の対応する各部と同様の構成であるので、ここでは、これらの構成の説明は省略する。
【0196】
信号出力部61は、所定周波数(13.56MHz)の信号を出力する信号源11、及び、インピーダンス可変の可変出力インピーダンス63で構成される。なお、信号源11は上記第1の実施形態のそれと同様に構成することができる。
【0197】
可変出力インピーダンス63は、抵抗6を介して、補正回路部5(切替スイッチ25)の出力端子に接続される。そして、可変出力インピーダンス63のインピーダンスは、補正回路部5から抵抗6を介して入力される信号に基づいて変化する。
【0198】
送信アンテナ62は、アンテナコイル13と、並列コンデンサ64と、直列コンデンサ15とで構成される。本実施形態では、アンテナコイル13の一方の端子は、並列コンデンサ64の一方の端子及び直列コンデンサ15の可変出力インピーダンス63側とは反対側の端子に接続される。また、アンテナコイル13の他方の端子は、モニタ回路部4内のモニタ抵抗21を介して接地される。なお、並列コンデンサ64の他方の端子は、接地される。すなわち、本実施形態では、並列コンデンサ64は、アンテナコイル13及びモニタ抵抗21からなる直列回路に並列接続される。
【0199】
なお、本実施形態においても、アンテナコイル13のサイズは小サイズとし、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態にあるかを判別するので、モニタ回路部4で用いる参照電圧Vrefは、160mVとする(図8参照)。また、本実施形態では、通信状態が良好な状態である場合に、信号出力部61及び送信アンテナ62間において、50Ωでインピーダンスマッチングが取れるように、送信アンテナ62内の各回路素子の定数(インダクタンス及びキャパシタンス)を適宜設定する。
【0200】
本実施形態のR/W装置60では、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合(通信状態が図8中の領域Cの通信状態の場合)、切替スイッチ25は、コンパレータ22の出力信号によりをON状態となるように制御される。これにより、補正回路部5の出力電圧Veを可変出力インピーダンス63に印加して(フィードバック制御して)、可変出力インピーダンス63のインピーダンスを変化させる。この際、本実施形態では、送信出力不足と判断するので、可変出力インピーダンス63のインピーダンスを小さくして送信電流を増加させる。この結果、R/W装置60の送信出力(送信電力)が増大して、非接触ICカード側での検波電圧Vovも大きくなる。
【0201】
一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(通信状態が図8中の領域Bの通信状態の場合)には、R/W装置60は、切替スイッチ25がOFF状態となるように制御し、可変出力インピーダンス63のインピーダンスを変更しない。
【0202】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置60における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を説明する。本実施形態における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作は、上記第1の実施形態(図12)と同様の手順で実施される。具体的には、送信アンテナ62に流れるコイル電流(モニタ電圧Vm)のモニタ動作(ステップS1)、通信状態の判別動作(ステップS2)、通信特性の補正要否の判定動作(ステップS3)及び通信特性の補正動作(ステップS4)をこの順で繰り返す。
【0203】
ただし、本実施形態では、ステップS3で通信特性の補正が必要と判定された場合、ステップS4で、R/W装置60は、補正回路部5の出力電圧(Ve)を可変出力インピーダンス63に印加して、可変出力インピーダンス63のインピーダンスを小さくする。この際、本実施形態では、通信状態が図8中の領域Cの通信状態から図8中の領域Bの通信状態に補正されるように、可変出力インピーダンス63のインピーダンスを小さくする。これにより、R/W装置60の送信出力(送信電力)を増大して、非接触ICカード側での検波電圧Vovを大きくする。
【0204】
上述のように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、R/W装置60で、通信状態を判別し、その判別結果に基づいて、通信状態を良好な状態に補正することができる。ただし、本実施形態の通信特性の補正手法では、上記第1〜第3実施形態の手法(共振特性を補正する手法)に比べて、例えば、送受信時の位相特性、インピーダンスマッチング等の改善効果は小さいので、変復調信号のテータ通信特性に対する改善効果も小さい。
【0205】
[第6の実施形態]
上述した検証実験5(図10)で説明したように、R/W装置の送信アンテナ(共振回路)のQ値を大きくすると、モニタ電流Im(コイル電流)が増加する。第6の実施形態では、送信アンテナのQ値(通信特性)を大きくすることによりコイル電流を増加させ、これによりR/W装置の送信出力を増大させる手法(上記(c)の手法)を説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態であるかを判別し、その判別結果に基づいて、R/W装置の出力特性を変化させ、通信状態を補正する例を説明する。
【0206】
(1)R/W装置の構成
図17に、第6の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。なお、図17に示す本実施形態のR/W装置70において、図11に示す第1の実施形態のR/W装置1と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0207】
R/W装置70(送信装置)は、信号出力部2と、送信アンテナ62(送信部)と、モニタ回路部71(通信補正部)と、切替スイッチ72(通信補正部)とを備える。なお、モニタ回路部71及び切替スイッチ72は、実回路では一つのLSI(集積回路)に実装される。また、本実施形態の信号出力部2は、上記第1の実施形態のそれと同様の構成であり、本実施形態の送信アンテナ62は、上記第6の実施形態のそれと同様の構成である。それゆえ、ここでは、信号出力部2及び送信アンテナ62の構成の説明は省略する。
【0208】
モニタ回路部71は、アンテナコイル13に流れるコイル電流をモニタする回路である。モニタ回路部71は、第1モニタ抵抗73と、第2モニタ抵抗74と、コンパレータ22と、第1電源スイッチ75と、第1参照電源76と、第2電源スイッチ77と、第2参照電源78とを有する。なお、本実施形態のコンパレータ22は、上記第1の実施形態のそれと同様の構成である。また、本実施形態においても、モニタ抵抗により、アンテナコイル13に流れるコイル電流を電圧(モニタ電圧Vm)に変換し、該変換されたモニタ電圧Vmに基づいて、通信状態を判別する。
【0209】
第1モニタ抵抗73の一方の端子は、アンテナコイル13の一方の端子に接続され、第1モニタ抵抗73の他方の端子は、並列コンデンサ64の一方の端子及びグランドに接続される。なお、本実施形態では、第1モニタ抵抗73は、上記第1の実施形態のモニタ抵抗21と同様の構成とし、例えば、抵抗値1Ωの抵抗素子で構成する。
【0210】
第2モニタ抵抗74の一方の端子は、切替スイッチ72を介してアンテナコイル13の一方の端子に接続され、第2モニタ抵抗74の他方の端子は、並列コンデンサ64の一方の端子及びグランドに接続される。すなわち、第2モニタ抵抗74及び切替スイッチ72からなる直列回路は、第1モニタ抵抗73に並列接続される。なお、本実施形態では、第2モニタ抵抗74を、第1モニタ抵抗73の抵抗値と同じ抵抗値を有する抵抗素子、例えば、抵抗値1Ωの抵抗素子で構成する。
【0211】
第1電源スイッチ75の入力端子は、第1参照電源76の出力端子に接続され、第1電源スイッチ75の出力端子は、コンパレータ22の「+」側の入力端子に接続される。また、第1電源スイッチ75の「+」側の制御端子は、接地され、「−」側の制御端子は、コンパレータ22の出力端子に接続される。なお、第1電源スイッチ75は、モニタ回路部71内のコンパレータ22の出力信号によりON/OFF制御される。
【0212】
第1参照電源76は、通信特性を補正する必要が無い場合(送信アンテナ62のQ値を上げる必要が無い場合)のQ値におけるモニタ電圧Vmの最適値(最大値の1/2:第1参照電圧Vref1)を出力する。例えば、図8に示す検波出力Vovとモニタ電圧Vmとの相関特性を有するR/W装置では、第1参照電源76は、上記第1の実施形態の参照電源23と同様に構成することができ、160mVの第1参照電圧Vref1を出力する。
【0213】
また、第2電源スイッチ77の入力端子は、第2参照電源78の出力端子に接続され、第2電源スイッチ77の出力端子は、コンパレータ22の「+」側の入力端子に接続される。また、第2電源スイッチ77の「+」側の制御端子は、コンパレータ22の出力端子に接続され、「−」側の制御端子は、接地される。なお、第2電源スイッチ77は、モニタ回路部71内のコンパレータ22の出力信号によりON/OFF制御される。
【0214】
第2参照電源78は、通信特性を補正した場合(送信アンテナ62のQ値を上げた場合)のQ値におけるモニタ電圧Vmの最適値(最大値の1/2:第2参照電圧Vref2)を出力する。検証実験5(図10)で説明したように、R/W装置70の送信アンテナ62(共振回路)のQ値を大きくすると、モニタ電圧Vmの最大値及び最適値(最大値の1/2:検波出力Vovが最大となるときのモニタ電圧Vm)も変化する。それゆえ、本実施形態では、通信特性の補正時に、モニタ電圧Vmと比較する参照電圧(第2参照電圧Vref2)を、非補正時の参照電圧(第1参照電圧Vref1)とは変える。
【0215】
切替スイッチ72の「+」側の制御端子は、コンパレータ22の出力端子に接続され、「−」側の制御端子は接地される。また、切替スイッチ72の一方の端子は、アンテナコイル13及び第1モニタ抵抗73間の接続点に接続され、切替スイッチ72の他方の端子は、第2モニタ抵抗74の一方の端子に接続される。なお、切替スイッチ72は、モニタ回路部71内のコンパレータ22の出力信号によりON/OFF制御される。
【0216】
本実施形態のR/W装置70では、モニタ電圧Vmが第1参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(通信状態が図8中の領域Bの状態である場合)、切替スイッチ72及び第2電源スイッチ77がOFF状態となり、第1電源スイッチ75がON状態となる。それゆえ、この状態では、通信状態の判別に用いる閾値は参照電圧Vref1になる。
【0217】
一方、モニタ電圧Vmが第1参照電圧Vref(160mV)以下である場合(通信状態が図8中の領域Cの状態である場合)には、切替スイッチ72及び第2電源スイッチ77がON状態となり、第1電源スイッチ75がOFF状態となる。この場合、モニタ抵抗の抵抗値がスイッチ切替え前の抵抗値の1/2になるので、Q値が大きくなりコイル電流も大きくなる。この結果、R/W装置70の送信出力(送信電力)が増大して、非接触ICカード側での検波電圧Vovが大きくなる。なお、この状態では、通信状態の判別に用いる閾値は第2参照電圧Vref2になる。
【0218】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置70における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を説明する。本実施形態における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作は、上記第1の実施形態(図12)と同様の手順で実施される。具体的には、送信アンテナ62に流れるコイル電流(モニタ電圧Vm)のモニタ動作(ステップS1)、通信状態の判別動作(ステップS2)、通信特性の補正要否の判定動作(ステップS3)及び通信特性の補正動作(ステップS4)をこの順で繰り返す。
【0219】
ただし、本実施形態では、ステップS3で通信特性の補正が必要と判定された場合、ステップS4で、R/W装置70は、切替スイッチ72をON状態にし、送信アンテナ62のQ値を大きくしてコイル電流を増加させる。これにより、R/W装置70の送信出力(送信電力)を増大して、非接触ICカード側での検波電圧Vovを大きくする。
【0220】
上述のように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、R/W装置70で、通信状態を判別し、その判別結果に基づいて、通信状態を良好な状態に補正することができる。ただし、本実施形態の通信特性の補正手法もまた、上記第5の実施形態と同様に、例えば、送受信時の位相特性、インピーダンスマッチング等の改善効果は小さいので、変復調信号のテータ通信特性に対する改善効果も小さい。
【0221】
[第7の実施形態]
第7の実施形態では、送信アンテナの直列コンデンサの容量値を大きくする(インピーダンスを小さくする)ことによりコイル電流を増加させ、これによりR/W装置の送信出力を増大させる手法を説明する。なお、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様に、通信状態が図8中の領域B及び領域Cのいずれの領域の状態であるかを判別し、その判別結果に基づいて、R/W装置の出力特性を変化させ、通信状態を補正する例を説明する。
【0222】
(1)R/W装置の構成
図18に、第7の実施形態に係るR/W装置の回路構成を示す。なお、図18に示す本実施形態のR/W装置80において、図11に示す第1の実施形態のR/W装置1と同様の構成には同じ符号を付して示す。
【0223】
R/W装置80(送信装置)は、信号出力部2と、送信アンテナ81(送信部)と、モニタ回路部4(通信補正部)と、補正回路部5(通信補正部)と、2つの抵抗6,7とを備える。なお、モニタ回路部4及び補正回路部5は、実回路では一つのLSI(集積回路)に実装される。また、本実施形態のR/W装置80において、送信アンテナ81以外の構成は、上記第1の実施形態の対応する各部と同様の構成であるので、ここでは、送信アンテナ81の構成のみを説明する。
【0224】
送信アンテナ81は、アンテナコイル13と、並列コンデンサ64と、直列可変コンデンサ82と、2つのDC除去用コンデンサ83,84とで構成される。なお、本実施形態のアンテナコイル13及び並列コンデンサ64は、上記第6の実施形態(図17)の対応する各素子と同様の構成である。すなわち、本実施形態では、送信アンテナ81(アンテナコイル13)のアンテナサイズは小サイズ(図2参照)とする。
【0225】
本実施形態では、DC除去用コンデンサ83、直列可変コンデンサ82及びDC除去用コンデンサ84が、この順で直列接続される。そして、該3つのコンデンサの直列回路の一方(DC除去用コンデンサ83側)の端子は、出力インピーダンス12の一方の端子に接続される。また、該3つのコンデンサの直列回路の他方(DC除去用コンデンサ84側)の端子は、アンテナコイル13の一方(モニタ抵抗21側とは反対側)の端子及び並列コンデンサ64の一方(グランド側とは反対側)の端子に接続される。
【0226】
さらに、直列可変コンデンサ82のDC除去用コンデンサ84側の端子は、抵抗6を介して、補正回路部5(切替スイッチ25)の出力端子に接続され、直列可変コンデンサ82のDC除去用コンデンサ83側の端子は、抵抗7を介して、接地される。
【0227】
直列可変コンデンサ82は、バイアス電圧(制御電圧)を加えることで容量が変化する可変容量素子で構成する。例えば、強誘電体を用いた薄膜コンデンサや、バリキャップと呼ばれるダイオードなどで直列可変コンデンサ82を構成することができる。また、2つのDC除去用コンデンサ83,84は、直列可変コンデンサ82に印加される制御電圧がアンテナコイル13に印加されないようにするために設けられたコンデンサである。それゆえ、2つのDC除去用コンデンサ83,84の容量値C10,C11は、ともに、直列可変コンデンサ82の容量値C9の10倍以上に設定する。
【0228】
本実施形態のR/W装置80では、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)以下である場合(通信状態が図8中の領域Cの通信状態の場合)、切替スイッチ25は、コンパレータ22の出力信号によりON状態となる。この場合、補正回路部5の出力電圧Veが直列可変コンデンサ82のDC除去用コンデンサ84側の端子に印加され、直列可変コンデンサ82の両端子間に印加されるバイアス電圧が低下する。これにより、直列可変コンデンサ82の容量値C9が大きくなり(直列可変コンデンサ82のインピーダンスが低下して)、コイル電流(送信電流)が増加する。この結果、R/W装置80の送信出力(送信電力)が増大して、非接触ICカード側での検波電圧Vovも大きくなる。
【0229】
一方、モニタ電圧Vmが参照電圧Vref(160mV)より大きい場合(通信状態が図8中の領域Bの通信状態の場合)には、R/W装置80は、切替スイッチ25がOFF状態となるように制御し、直列可変コンデンサ82の容量値C9を変化させない。
【0230】
(2)R/W装置の動作
次に、本実施形態のR/W装置80における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作を説明する。本実施形態における通信状態のモニタ動作及び通信特性の補正動作は、上記第1の実施形態(図12)と同様の手順で実施される。具体的には、送信アンテナ81に流れるコイル電流(モニタ電圧Vm)のモニタ動作(ステップS1)、通信状態の判別動作(ステップS2)、通信特性の補正要否の判定動作(ステップS3)及び通信特性の補正動作(ステップS4)をこの順で繰り返す。
【0231】
ただし、本実施形態では、ステップS3で通信特性の補正が必要と判定された場合、ステップS4で、R/W装置80は、補正回路部5の出力電圧(Ve)を直列可変コンデンサ82のDC除去用コンデンサ84側の端子に印加する。これにより、直列可変コンデンサ82の容量値C9を大きくする。なお、この際、本実施形態では、通信状態が図8中の領域Cの通信状態から図8中の領域Bの通信状態に補正されるように、直列可変コンデンサ82の容量値C9を大きくする。この結果、R/W装置80の送信出力(送信電力)を増大して、非接触ICカード側での検波電圧Vovを大きくする。
【0232】
上述のように、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、R/W装置80で、通信状態を判別し、その判別結果に基づいて、通信状態を良好な状態に補正することができる。ただし、本実施形態の通信特性の補正手法では、上述のように、送信出力(出力特性)を補正するが、送信アンテナ81の直列コンデンサの容量値も変化させるので、送信アンテナ81の共振特性も補正していることになる。
【0233】
なお、本実施形態では、直列可変コンデンサ82の容量値C9を変化させる例を説明したが、本開示はこれに限定されない。送信アンテナ内に直列コンデンサを2つ用意し、通信状態に応じて、用いる直列コンデンサを切り替える構成にしてもよい。
【0234】
<3.各種変形例及び各種応用例>
本開示に係る送信装置(R/W装置)、通信状態のモニタ手法及び通信特性の補正手法は、上述した各種実施形態に限定されず、様々な変形例及び応用例が考え得る。
【0235】
[変形例1]
上記第1〜3の実施形態では、並列コンデンサの容量値又はアンテナコイルのインダクタンスを変化させて通信特性を補正する例を説明した。また、上記第5〜7の実施形態では、それぞれ、信号出力部の出力インピーダンス、送信アンテナのQ値及び直列コンデンサの容量値のいずれかのパラメータを変化させて通信特性を補正する例を説明した。しかしながら、本開示はこれに限定されない。例えば、上記第1〜3及び5〜7の実施形態を適宜組み合わせ、複数のパラメータを変化させることにより、通信特性を補正してもよい。
【0236】
[変形例2]
上記第1〜7の実施形態の各R/W装置は、通信状態の判別結果を表示する表示部を備えていてもよい。この場合、通信状態の良好時及び不良時に関係なく、表示部で現在の通信状態を常時表示してもよいし、不良時にのみ通信状態を表示部で表示してもよい。なお、後者の場合は、例えば、表示部をランプ等で構成し、通信状態が不良である場合には、ランプ等を点灯して、ユーザーに通信不良を知らせる構成にしてもよい。
【0237】
[変形例3]
上記第1〜7の実施形態の各R/W装置は、通信状態の判別結果に関するデータを外部の装置に送信する機能を備えていてもよい。また、この場合、さらに、R/W装置に、通信状態の判別結果を表示する表示部を設け、通信状態の判別結果に関するデータを表示部で表示してもよい。
【0238】
[応用例1]
上記各種実施形態では、R/W装置、すなわち、送信装置に本開示の通信状態のモニタ手法及び通信特性の補正手法を適用した例を説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示の通信状態のモニタ手法及び通信特性の補正手法は、R/W機能及びICカード機能の両方を備える、例えば移動通信端末等の携帯通信装置(通信装置)にも適用可能である。この場合には、携帯通信装置の非接触通信部に、上記各種実施形態で説明したR/W装置と同様の回路構成を有する送信機能部と、例えば、図1で説明した評価システム100の非接触ICカード120と同様の回路構成を有する受信機能部とが設けられる。
【0239】
[応用例2]
上記各種実施形態では、主に、情報を送受信する非接触通信システムにおける通信状態のモニタ技術、並びに、それを用いたR/W装置について説明した。しかしながら、例えば、送信アンテナと受信アンテナとを磁気的に結合させることにより、エネルギーや信号を送受信するワイヤレス電力伝送システム(ワイヤレス給電システム)においても、非接触通信システムと同様の回路構成が用いられる。それゆえ、本開示の上記技術は、例えば、ワイヤレス電力伝送システム、並びに、該システムで用いられる非接触給電装置(送信装置)にも適用することができる。
【0240】
なお、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)
アンテナコイルを有し、外部装置と電磁結合により通信を行う送信部と、
所定周波数の信号を生成し、該生成した信号を前記送信部に出力する信号出力部と、
前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタされた情報に基づいて通信状態を判別する通信モニタ部と、
前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する通信補正部と
を備える送信装置。
(2)
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記送信部のキャパシタンス、インダクタンス及びQ値の少なくとも一つを変化させて、通信特性を補正する
(1)に記載の送信装置。
(3)
前記送信部は、前記アンテナコイルに並列接続された容量可変の並列コンデンサを有し、
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記並列コンデンサのキャパシタンスを変化させる
(2)に記載の送信装置。
(4)
前記送信部は、前記アンテナコイルに直列接続された容量可変の直列コンデンサを有し、
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記直列コンデンサのキャパシタンスを変化させる
(2)に記載の送信装置。
(5)
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記アンテナコイルに流れる電流を増加して、通信特性を補正する
(1)〜(4)のいずれか一項に記載の送信装置。
(6)
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記信号出力部の出力インピーダンスを小さくして、通信特性を補正する
(1)〜(5)のいずれか一項に記載の送信装置。
(7)
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記送信部のQ値を第1のQ値から該第1のQ値より大きな第2のQ値に変化させて、通信特性を補正し、
前記通信モニタ部は、前記送信部のQ値が前記第1のQ値である時に用いる前記通信状態の第1の判別閾値と、前記送信部のQ値が前記第2のQ値である時に用いる前記通信状態の第2の判別閾値とを有し、前記通信状態の判別結果に基づいて、前記通信状態を判別するための閾値を前記第1の判別閾値及び前記第2の判別閾値間で切り替える
(1)〜(6)のいずれか一項に記載の送信装置。
(8)
前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報が、前記アンテナコイルに流れる電流に対応する電圧値である
(1)〜(7)のいずれか一項に記載の送信装置。
(9)
前記通信モニタ部は、前記アンテナコイルに流れる電流に対応する電圧値の最大値の1/2の値と、モニタされた前記電圧値とを比較して、通信状態を判別する
(8)に記載の送信装置。
(10)
前記通信モニタ部は、外部受信装置が非接触通信可能な範囲に存在するか否かを識別するための所定の閾値電圧と、モニタされた前記電圧値とを比較して、通信状態を判別する
(8)に記載の送信装置。
(11)
前記通信モニタ部が、前記外部受信装置が非接触通信可能な範囲に存在しないと判別した場合には、前記通信補正部は、前記信号出力部で生成された前記信号の位相と、前記送信部から送出される信号の位相との差を補正する
(10)に記載の送信装置。
(12)
さらに、前記通信モニタ部における通信状態の判別結果を表示する表示部を備える
(1)〜(11)のいずれか一項に記載の送信装置。
(13)
前記送信部が、前記通信モニタ部における通信状態の判別結果に関するデータを外部に送信する
(1)〜(12)のいずれか一項に記載の送信装置。
(14)
アンテナコイルを有し、外部と電磁結合により通信を行う送信部と、所定周波数の信号を生成し、該生成した信号を前記送信部に出力する信号出力部と、前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタされた情報に基づいて通信状態を判別する通信モニタ部と、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する通信補正部とを有する送信機能部と、
受信アンテナを有し、外部と電磁結合により通信を行う受信機能部と
を備える送受信装置。
(15)
外部装置と電磁結合により通信を行う送信アンテナのアンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタされた情報に基づいて通信状態を判別する通信モニタ部と、
前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する通信補正部と
を備える集積回路。
(16)
アンテナコイルを有し、外部と電磁結合により通信を行う送信部と、前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタする通信モニタ部とを備える送信装置の前記通信モニタ部が、アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタするステップと、
前記通信モニタ部が、前記モニタされた前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報に基づいて通信状態を判別するステップとを
含む通信状態のモニタ方法。
【符号の説明】
【0241】
1…R/W装置、2…信号出力部、3…送信アンテナ、4…モニタ回路部、5…補正回路部、6,7…抵抗、11…信号源、12…出力インピーダンス、13…アンテナコイル、14…並列可変コンデンサ、15…直列コンデンサ、16,17…DC除去用コンデンサ、21…モニタ抵抗、22…コンパレータ、23…参照電源、24…エラーアンプ、25…切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルを有し、外部装置と電磁結合により通信を行う送信部と、
所定周波数の信号を生成し、該生成した信号を前記送信部に出力する信号出力部と、
前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタされた情報に基づいて通信状態を判別する通信モニタ部と、
前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する通信補正部と
を備える送信装置。
【請求項2】
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記送信部のキャパシタンス、インダクタンス及びQ値の少なくとも一つを変化させて、通信特性を補正する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記アンテナコイルに並列接続された容量可変の並列コンデンサを有し、
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記並列コンデンサのキャパシタンスを変化させる
請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記アンテナコイルに直列接続された容量可変の直列コンデンサを有し、
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記直列コンデンサのキャパシタンスを変化させる
請求項2に記載の送信装置。
【請求項5】
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記アンテナコイルに流れる電流を増加して、通信特性を補正する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項6】
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記信号出力部の出力インピーダンスを小さくして、通信特性を補正する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項7】
前記通信補正部は、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、前記送信部のQ値を第1のQ値から該第1のQ値より大きな第2のQ値に変化させて、通信特性を補正し、
前記通信モニタ部は、前記送信部のQ値が前記第1のQ値である時に用いる前記通信状態の第1の判別閾値と、前記送信部のQ値が前記第2のQ値である時に用いる前記通信状態の第2の判別閾値とを有し、前記通信状態の判別結果に基づいて、前記通信状態を判別するための閾値を前記第1の判別閾値及び前記第2の判別閾値間で切り替える
請求項1に記載の送信装置。
【請求項8】
前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報が、前記アンテナコイルに流れる電流に対応する電圧値である
請求項1に記載の送信装置。
【請求項9】
前記通信モニタ部は、前記アンテナコイルに流れる電流に対応する電圧値の最大値の1/2の値と、モニタされた前記電圧値とを比較して、通信状態を判別する
請求項8に記載の送信装置。
【請求項10】
前記通信モニタ部は、外部受信装置が非接触通信可能な範囲に存在するか否かを識別するための所定の閾値電圧と、モニタされた前記電圧値とを比較して、通信状態を判別する
請求項8に記載の送信装置。
【請求項11】
前記通信モニタ部が、前記外部受信装置が非接触通信可能な範囲に存在しないと判別した場合には、前記通信補正部は、前記信号出力部で生成された前記信号の位相と、前記送信部から送出される信号の位相との差を補正する
請求項10に記載の送信装置。
【請求項12】
さらに、前記通信モニタ部における通信状態の判別結果を表示する表示部を備える
請求項1に記載の送信装置。
【請求項13】
前記送信部が、前記通信モニタ部における通信状態の判別結果に関するデータを外部に送信する
請求項1に記載の送信装置。
【請求項14】
アンテナコイルを有し、外部と電磁結合により通信を行う送信部と、所定周波数の信号を生成し、該生成した信号を前記送信部に出力する信号出力部と、前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタされた情報に基づいて通信状態を判別する通信モニタ部と、前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する通信補正部とを有する送信機能部と、
受信アンテナを有し、外部と電磁結合により通信を行う受信機能部と
を備える送受信装置。
【請求項15】
外部装置と電磁結合により通信を行う送信アンテナのアンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタし、該モニタされた情報に基づいて通信状態を判別する通信モニタ部と、
前記通信モニタ部における前記通信状態の判別結果に基づいて、通信特性を補正する通信補正部と
を備える集積回路。
【請求項16】
アンテナコイルを有し、外部と電磁結合により通信を行う送信部と、前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタする通信モニタ部とを備える送信装置の前記通信モニタ部が、アンテナコイルに流れる電流に関する情報をモニタするステップと、
前記通信モニタ部が、前記モニタされた前記アンテナコイルに流れる電流に関する情報に基づいて通信状態を判別するステップとを
含む通信状態のモニタ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−58170(P2013−58170A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197569(P2011−197569)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】