説明

送信装置

【課題】複数の通信方式に対応可能な送信装置であっても、出荷時の出力電力の調整を簡略化することが可能な送信装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決するため、送信装置は、送信対象である変調信号を増幅し出力する増幅部と、該増幅部の出力電力を検出する検出部と、該検出部の出力に基づいて、該増幅部の出力電力を変更する出力電力変更部と、通信方式毎に該検出部の入力インピーダンスを制御する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調信号を増幅し無線送信する送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体端末に搭載される送信装置は変調信号を増幅し無線送信する。通信方式によっては、送信装置は送信電力を適宜変化させている。
【0003】
送信装置は、変調信号を増幅する増幅部および増幅部の出力電力を検出するレベル検出部を有する。また送信装置は、レベル検出部の出力に応じて増幅部の出力電力を制御する制御部を有する。制御部はレベル検出部の出力に基づいて、増幅部に入力する変調信号の強度を調整する。
【0004】
近年、通信方式が多様化し、複数の通信方式・周波数帯の送信を行う送信装置が登場してきた。レベル検出部は増幅部の出力を整流検波するダイオードと整流検波した波形の高周波成分を除去するフィルタなどで形成されることが多い。このため、レベル検出部の入力に対応するインピーダンスである入力インピーダンスは周波数特性を有する。よって、レベル検出部の検出対象である増幅部の出力電力値が同じでも、周波数帯が異なると、レベル検出部の出力は異なる値となる。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、通信方式が切り替わった場合の、レベル検出部の出力を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−266758号公報
【特許文献2】特開2000−341142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した送信装置では、増幅部の出力電力とレベル検出部の出力との対応関係を通信方式毎に記憶しておき、記憶した内容を基に、信出力と周波数帯毎のレベル検出部の出力との対応を取ることが考えられる。
【0008】
しかしながら、送信装置は増幅部の個体差を有しており、上記の方式を採用する場合、送信装置は工場出荷時において、個別に送信出力とレベル検出部の出力との対応関係を計測し、その値を逐一記憶する作業を要する。特に、上述したような複数の通信方式に対応した送信装置の場合、通信方式ごとに、想定される送信出力の範囲内での送信出力とレベル検出部との対応関係の計測結果を記憶部へ記憶させていくこととなり、作業工数が多い。
【0009】
本技術では、複数の通信方式に対応可能な送信装置であっても、出荷時の出力電力の調整を簡略化することが可能な送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、送信装置は、変調信号を増幅し出力する増幅部と、該増幅部の出力電力を検出する検出部と、該検出部の出力に基づいて、該増幅部の出力電力を変更する出力電力変更部と、通信方式毎に該検出部の入力インピーダンスを制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0011】
実施形態によれば、複数の通信方式に対応可能であっても、出荷時の出力電力の調整を簡略化することが可能な送信装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施例にかかる送信装置を含む試験システムのブロック図である。
【図2】レベル検出部の詳細ブロック図である。
【図3】調整部が有するコンデンサのブロック図である。
【図4】調整部の回路パラメータを示すパラメータテーブル図である。
【図5】Aは増幅部の出力電力とレベル検出部の出力電圧との関係図である。Bはレベル検出部の出力電圧値を増幅部の出力電力値に変換するための変換テーブル図である。
【図6】Aは1つ目の通信方式における試験装置の試験処理フロー図である。Bは2つ目以降の通信方式における試験装置の試験処理フロー図である。
【図7】試験装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について説明する。なお、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
【0014】
図1は出荷時において送信装置1の出力電力を試験する試験システムのブロック図である。試験システムは、試験対象である送信装置1、テスタ86、試験装置85を有する。
【0015】
送信装置1はBB(Base Band)処理部90、RF(Radio Frequency)処理部2、PA(Power Amplifer)モジュール3、フィルタ4、5、6、スイッチ7、アンテナ8を有する。BB処理部90は送信データを選択された通信方式に応じてデジタル処理し、RF処理部2へ出力する。RF処理部2は、BB処理部から出力されたデジタル信号を通信方式に応じて選択された周波数で変調処理すると共に、信号強度を調整した変調信号をPAモジュール3へ出力する。PAモジュール3はRF処理部2から出力された変調信号を増幅する。PAモジュールから出力された変調信号は、フィルタ4、5、6によりノイズ除去される。フィルタ4,5,6のいずれかの出力は、スイッチ7によりアンテナ8に接続される。アンテナ8は変調信号を出力する。
【0016】
BB処理部90は、IF(InterFace)87、演算部88、メモリ89を有する。IF87は試験装置85から入力された試験結果を演算部88へ出力する。演算部88は入力された試験結果をメモリ89に書き込む。演算部88は選択された通信方式に応じて信号処理したデジタル信号および送信装置1の動作設定を行う信号をRF処理部2へ出力する。
【0017】
RF処理部2は、MUX(Multiprexer)80、デジタルアンプ81、DAC(Digital Analog Convertor)82、周波数コンバータ83、スイッチ84、制御部10、記憶部11、VGA(Voltage Gain Amplifier)12、13、14を有する。またPAモジュール3は、増幅部17、18、19、方向性結合部20、21、22、レベル検出部15を有する。
【0018】
MUX80は演算部88から出力されたシリアル信号をパラレル信号に変換する。変換後のパラレル信号は、記憶部11に書き込まれるテーブル情報、PAモジュール3の動作を設定するPA設定信号、送信装置1の出力電力を設定する電力設定信号、通信方式に応じた通信方式を選択する選択信号、および送信対象であるI/Q信号を有する。
【0019】
演算部88から出力されたテーブル情報は、MUX80を介して記憶部11に入力される。演算部88から出力されたPA設定信号は、MUX80を介して制御部10に入力される。演算部88から出力された電力設定信号は、MUX80を介して制御部10およびデジタルアンプ81に入力される。演算部88から出力された選択信号は、MUX80を介して周波数コンバータ83、スイッチ84、制御部10に入力される。演算部88から出力されたI/Q信号は、MUX80を介してデジタルアンプ81に入力される。
【0020】
デジタルアンプ81は、電力設定信号に応じてI/Q信号の振幅を増幅する。DAC82はデジタルアンプ81から出力されたI/Q信号をアナログ信号に変換する。周波数コンバータ83は、選択信号に基づいて周波数を選択する。周波数コンバータ80は、選択された周波数に基づいてI/Q信号をミキシングし、変調信号を出力する。スイッチ84は、電力設定信号に基づいて、VGA12、13、14のいずれかに変調信号の出力先を切り替える。
【0021】
VGA12、13、14は、演算部88の指示に基づき、PAモジュール3へ出力する変調信号の出力電力を変更する出力電力変更部である。本実施例において、VGA12は800MHz帯の変調信号の出力電力を変更する為の出力電力変更部である。VGA13は2GHz帯の変調信号の出力電力を変更する為の出力電力変更部である。VGA14は2.5GHz帯の変調信号の出力電力を変更する為の出力電力変更部である。
【0022】
制御部10はPA制御部10Aおよび電力制御部10Bを有する。PA制御部10Aは、MUX80から出力されたPA設定信号に応じて、PAモジュール3の動作制御を行う。電力制御部10Bは、演算部88から出力され、MUX80を経由して入力された電力設定信号に応じて、VGA12、13、14が出力する変調信号の強度変更を行う。
【0023】
PA制御部10Aは、演算部88から出力され、MUX80を経由して入力されたPA設定信号に基づいて、増幅部の出力電力が同一の場合にレベル検出部15の出力電圧の値が同一になるように、レベル検出部15の回路パラメータを通信方式ごとに調整する。入力インピーダンスを通信方式ごとに調整することにより、通信方式に関わらず、レベル検出部15から出力される電圧値を同一にすることが出来る。
【0024】
電力制御部10Bは、記憶部11に記憶された変換テーブル60に基づいて、レベル検出部15から出力された電圧値を増幅部の出力電力に変換する。電力制御部10Bは、演算部88から出力され、MUX80を経由して入力された電力設定信号に基づく電力設定値と、変換処理により求めた増幅部の出力電力値とを比較する。電力制御部10Bは変換処理により求めた増幅部の出力電力値が電力設定値となるように、VGA12、13、14から出力される変調信号の強度を調整する制御信号を出力する。増幅部の出力電力値とは、出力電力のピーク値を指す。なお出力電力値は出力電力の平均値であってもよい。以上のフィードバック処理を繰り返すことにより送信装置1は、設定された電力を増幅部から出力させることが出来る。
【0025】
なお、変換テーブル60に基づいて、演算部88から出力され、MUX80を経由して入力された電力設定信号に基づく電力設定値をあらかじめ電圧値に変換してもよい。これにより、レベル検出部15の出力電圧値を逐次増幅部の出力電力値に変換すること無く設定値と比較することが可能となる。
【0026】
記憶部11はパラメータテーブル50および変換テーブル60を記憶する。パラメータテーブル50は、通信方式ごとにレベル検出部15に設定する入力インピーダンスの設定値を記憶している。パラメータテーブル50に記憶されている入力インピーダンスの設定値は、あらかじめシミュレーション等により算出される。変換テーブル60は、レベル検出部15から出力された電圧値から増幅部の出力電力値への変換値を有する。移動体端末の電源投入時において、演算部88はメモリ89に記憶した情報を読み出し、記憶部11に記憶する情報に上書きする。
【0027】
増幅部17はVGA12から出力された変調信号を増幅する。増幅部18はVGA13から出力された変調信号を増幅する。増幅部19はVGA14から出力された変調信号を増幅する。増幅部17、18、19は、PA制御部10Aから出力される制御信号に応じて、いずれかの出力を有効にする。
【0028】
方向性結合部20、21、22は増幅部17、18、19の出力の一部をレベル検出部15へ出力する。方向性結合部20、21,22は増幅部17,18,19の出力に接続される主線部と、主線部に電気的に結合する副線部を有する。方向性結合部20の主線部は増幅部17に接続されている。方向性結合部21の主線部は増幅部18に接続されている。方向性結合部22の主線部は増幅部19に接続されている。方向性結合部20、21、22の副線部の一方はレベル検出部15に接続されている。方向性結合部20、21、22の副線部の他方は整合終端されている。
【0029】
レベル検出部15は、方向性結合部20、21、22の副線部の出力に基づいて、電力制御部10Bに電圧出力する。レベル検出部15はPA制御部10Aから出力される制御信号に応じて、入力インピーダンスを調整する。
【0030】
フィルタ4、5、6は方向性結合部20、21、22を介して出力された増幅部17,18,19からの、それぞれの変調信号の周波数帯に対応したバンドパスフィルタであり、変調信号の周波数帯以外の周波数成分を除去する。
【0031】
スイッチ7はフィルタ4、5、6から出力された変調信号のうち1つを選択し、アンテナ8へ出力する。スイッチ7の切り替えは、PA制御部10Aから出力された制御信号に基づいて行う。
【0032】
アンテナ8は複数の通信方式に対応したマルチバンドアンテナである。なお、アンテナ8はこれに限らず、各通信方式に対応した複数のアンテナを各々のフィルタの出力側に接続する方式であっても良い。この場合、アンテナ8とフィルタ4、5、6との接続関係を切り替えるスイッチ7は不要となる。
【0033】
テスタ86はアンテナ8に入力される電力を測定すると共に、測定結果を試験装置85へ出力する。試験装置85はテスタ86の設定を行うと共に、テスタ86から出力された電力の測定結果を送信装置1へ出力する。試験装置85およびテスタ86は出荷試験時において送信装置1に接続される。出荷試験後、試験装置85およびテスタ86は送信装置1から取り外される。
【0034】
以上の通り送信装置1の試験は、試験装置85により送信装置1の試験条件を設定し、その応答をテスタ86で測定することにより行う。
【0035】
なお、本実施例では複数のVGAよび複数の増幅部を用いて複数の通信方式に対応する送信装置を構成しているが、複数の通信方式に対応する単一のVGAおよび単一の増幅部で送信装置を構成しても良い。この場合、増幅部の出力にスイッチを設け、選択した通信方式に応じて接続先のフィルタを切り替えるようにする。以上の構成により、送信装置1は増幅部の実装面積を小さくすることが出来る。
【0036】
レベル検出部15はPAモジュール3の一部として実装される。レベル検出部15をPAモジュール3の一部としてモジュール化することにより、送信装置1を小型化することが出来る。なおレベル検出部15をディスクリート部品として実装してもよい。レベル検出部15をPAモジュール3と分離して実装することにより、PAモジュールの動作に伴う電源ノイズがレベル検出部15のレベル検出に与える影響を回避することが出来る。
【0037】
図2はレベル検出部15の詳細ブロック図である。レベル検出部15は、調整部16、検出部23を有する。調整部16はレベル検出部15の入力インピーダンスを調整する。調整部16は制御部11の一部である。調整部16は外部から容量値の変更が可能な可変コンデンサC2、C3を有する。検出部23は、抵抗R1、R2、ダイオード30、LPF(Low Pass Filter)31、抵抗R4を有する。
【0038】
可変コンデンサC2はレベル検出部15に入力される信号の周波数に応じてダイオード30に入力される電流量を変える。信号の周波数が高いほど、検出部23に入力される電流量は大きくなる。可変コンデンサC3は、ダイオード30から出力され、LPF31に入力される電流量を変える。信号の周波数が高いほど、LPF31に入力される電流量は小さくなる。可変コンデンサC2と可変コンデンサC3との容量値の組み合わせを調整することにより、LPF31に入力される電流量を調整することが出来る。
【0039】
抵抗R1、R2はポート75に印加されたオフセット電圧を分圧する。電圧信号の基準電圧値はオフセット電圧の分圧値となる。基準電圧値はダイオード30の順方向電圧の閾値を考慮して決定する。
【0040】
ダイオード30は入力された電圧信号のうち、ダイオード30の順方向電圧の閾値を超える電圧信号を検波する検波部である。
【0041】
LPF31はダイオード30の出力からカットオフ周波数を超える信号成分を除去する。LPF31は抵抗R3、コンデンサC1を有する。LPF31のカットオフ周波数は抵抗R3およびコンデンサC1の値により決定する。
【0042】
抵抗R4はコンデンサC1に並列に接続されている。LPF31から出力される電流が抵抗R4に流れることによる電圧が検出部23の出力となる。
【0043】
電力制御部10Bは選択された通信方式に応じて、パラメータテーブル50から可変コンデンサC2、C3の設定値を読み出す。電力制御部10Bは読み出した設定値をPA制御部10Aへ出力する。PA制御部10AはMUX80から出力された設定値を調整部16へ出力する。可変コンデンサC2、C3の容量値は、PA制御部10Aから出力された設定値に応じて変化する。
【0044】
調整部16における可変コンデンサC2、C3の容量値を調整することにより、抵抗R4に流れる電流値も変化する。よってPA制御部10Aは、通信方式に応じて可変コンデンサC2、C3の容量値を調整することにより、検出部23の出力電圧値を調整することが出来る。
【0045】
図3は調整部16における可変コンデンサC2のブロック図である。調整部16における可変コンデンサC2と可変コンデンサC3は同一構成および同一機能を有する。よって本実施例では可変コンデンサC2について説明し、可変コンデンサC3の説明を省略する。
【0046】
可変コンデンサC2はPA制御部10Aから出力される制御信号に応じて容量値を変える。可変コンデンサC2はスイッチSW1〜SWn、コンデンサCP1〜CPn、IF(Interface)41を有する。スイッチSWn、コンデンサCPnはそれぞれ並列に接続されている。スイッチSWnとコンデンサCPnはそれぞれ直列に接続されている。スイッチSWnはIF41から出力される切替信号によりオンオフを切り替える。可変コンデンサC2の容量値は、オンしているスイッチSWnに直列接続されたコンデンサCPnの合計容量値に等しい。よってそれぞれのスイッチSWnを必要に応じてオンオフすることにより、可変コンデンサC2の容量値を要求された容量値とすることが出来る。可変コンデンサC2の容量値に対応する制御信号の値は、通信方式毎にパラメータテーブル50に記憶されている。
【0047】
IF41は制御部10から出力された制御信号に応じて各スイッチSWnに切替信号を出力する。IF41に適用するIF規格は、制御信号を出力する制御部10の出力インターフェース規格に合わせる。IF規格は例えばSPI(Serial Periferal Interface)である。IF41は入力されたクロック信号CLKに基づいて、制御信号の値を読み取る。IF41はスイッチSWnの制御を有効にするイネーブル信号ENが入力された場合、各スイッチSWnへ出力する切替信号を有効にする。IF41はスイッチSWnの制御を無効にするイネーブル信号ENが入力された場合、各スイッチSWnをすべてオフにする切替信号を出力する。
【0048】
以上の通り、外部からの制御信号により容量値の設定が可能な可変コンデンサC2、C3を調整部16に用いることにより、レベル検出部15の入力インピーダンス調整を実現することが出来る。
【0049】
図4はレベル検出部15の入力インピーダンスの決定に用いるパラメータテーブル図である。パラメータテーブル50は記憶部11に記憶されている。前述の通り、パラメータテーブル50は通信方式の選択時に読み出される。パラメータテーブル50は各通信方式における可変コンデンサC2、C3の設定値を有する。パラメータテーブル50に示す可変コンデンサC2、C3の容量値は、回路シミュレーションまたは実験により、あらかじめ求める。回路シミュレーションにおける信号の周波数は、各通信方式における周波数帯の中心周波数である。
【0050】
行56、57、58はそれぞれ、各通信方式の周波数帯がそれぞれ800MHz帯、2GHz帯、2.5GHz帯の場合に、調整部16に設定すべき可変コンデンサC2、C3の容量値である。列52、53はそれぞれ、各通信方式における可変コンデンサC2、C3の容量値である。列59は、800MHz帯での送信装置1の出力電力とレベル検出部15の出力電圧との関係を示すグラフに対する、2GHz帯、2.5GHz帯のグラフの補正値である。通信方式毎にレベル検出部15の入力インピーダンスを調整することにより、送信装置1の出力電力とレベル検出部15の出力電圧との関係を示すグラフは傾きが同じになるが、切片が異なる場合がある。出荷試験時において切片を調整することにより、通信方式毎のグラフを一致させることが出来る。送信装置1の動作時において電力制御部10Bは、列59の補正値に基づいてVGA12,13,14の強度の調整を行う。
【0051】
列54、55は、変換テーブル60の一部である。列54、55は、各増幅部17、18、19の出力電力値とレベル検出部15の出力電圧値との関係を示す。すなわち列54、55は、調整部16の可変コンデンサC2、C3を設定後、レベル検出部15から出力される電圧値がそれぞれ1.5V、1.26Vだった場合に、増幅部17、18、19の出力電力値がそれぞれ26.5dBm、15dBmであることを示す。
【0052】
一例として、行56に示すパラメータを用いて調整部16の回路パラメータを設定する手順を説明する。まずPA制御部10Aから出力された制御信号に基づいて、800MHz帯の変調信号の増幅に対応した増幅部17が選択される。増幅部17の出力電力値を検出するため、PA制御部10Aは調整部16の可変コンデンサC2、C3の容量値をそれぞれ1.5pF、0.45pFに設定する。
【0053】
容量値を設定後、レベル検出部15の出力電圧値が1.5Vであるとする。この場合電力制御部10Bは変換テーブル60に基づいて、レベル検出部15の出力電圧値1.5Vを増幅部17の出力電力値26.5dBmに変換する。またレベル検出部15の出力電圧値が1.26Vである場合、電力制御部10Bは変換テーブル60に基づいて、出力電圧値1.26Vを増幅部17の出力電力値15dBmに変換する。以上の通り選択された通信方式に応じて調整部16の回路パラメータを設定することにより、電力制御部10Bは通信方式に関わらず、同一の変換テーブル60に基づいて、レベル検出部15の出力電圧値を増幅部の出力電力値に変換することが出来る。
【0054】
図5は各増幅部17、18、19の出力電力値とレベル検出部15の出力電圧値との関係を示す。図5のAは各増幅部17、18、19から出力される電力値とレベル検出部15から出力される出力電圧の値との関係を示すグラフである。図5のBは図5のAのグラフから選択した数点をテーブル表記した変換テーブル60である。
【0055】
図5のAの横軸は、選択した通信方式における、増幅部の出力電力値を示す。図5のAの縦軸は、各通信方式における出力電力値をレベル検出部15により検出した場合の、レベル検出部15の出力電圧値である。図5のAにおいて、各増幅部17、18、19の出力電力値とレベル検出部15の出力電圧値との関係は、選択した通信方式に関わらずほぼ一致している。
【0056】
仮に調整部16の回路パラメータを通信方式に関わらず固定すると、レベル検出部15の入力インピーダンスが周波数依存性を有するため、レベル検出部15の出力電圧値と各増幅部における出力電力値との関係は、通信方式ごとに異なる特性となる。
【0057】
これに対し本実施例では、各増幅部17、18、19における出力電力値とレベル検出部15の出力電圧値との関係が図5のAの通りほぼ一致するように、通信方式に応じてレベル検出部15の入力インピーダンスを調整する。
【0058】
図5のBの変換テーブル60は記憶部11に記憶されている。変換テーブル60は列61、62を有する。列61は図5のAのグラフから選択した各通信方式での出力電力値を示す。列62は選択した通信方式における増幅部の出力電力値に対する、レベル検出部15の出力電圧値を示す。図5のBの変換テーブル60において、行63〜行67は増幅部の出力電力値と、各出力電力値に対応するレベル検出部15の出力電圧値を示す。
【0059】
電力制御部10Bはレベル検出部15の出力電圧値に基づいて、変換テーブル60を参照する。電力制御部10Bはレベル検出部15の出力電圧値を増幅部の出力電力値に変換する。レベル検出部15の出力電圧値が変換テーブル60に存在しない場合であっても、電力制御部10Bは変換テーブル60に基づく補間演算により、レベル検出部15の出力電圧値を増幅部の出力電力値に変換することが出来る。変換テーブル60の出力電力ステップ間隔が小さいほど、補間演算の発生率を下げることが出来る。
【0060】
図6は試験装置85による送信装置1の出荷試験処理フロー図である。図6のAは1つ目の通信方式の選択時における、送信装置1の出荷試験処理フロー図である。図6のBは2つ目以降の通信方式の選択時における、送信装置1の出荷試験処理フロー図である。図6の処理は試験プログラム97として試験装置85の記憶部92に記憶されている。試験装置85は試験プログラム97を実行することにより、図6の出荷試験処理を実現する。
【0061】
図6のAにおいて試験装置85は、送信装置1の演算部88に対し1つ目の通信方式および出力電力値を設定する試験信号を出力する(S10)。試験信号が入力された演算部88は、試験信号により設定された通信方式に応じて、PA制御部10Aに対しPA設定信号および選択信号を出力すると共に、電力制御部10Bに対し電力設定信号を出力する。電源制御部10Bは記憶部11からパラメータテーブル50の設定値を読み出し、PA制御部10Aへ出力する。PA制御部10Aは入力された設定値を制御信号としてレベル検出部15へ出力し、レベル検出部15の入力インピーダンスを設定する(S11)。
【0062】
電源制御部10Bは入力された電源設定信号に基づいて出力電力値を設定する(S12)。電源制御部10Bはレベル検出部15の出力電圧値および出力電力の設定値に基づいて制御信号を出力し、増幅部17,18,19の出力電力値を制御する(S13)。
【0063】
増幅部17,18,19の出力電力は方向性結合部20,21,22、フィルタ4,5,6を経由してスイッチ7から出力される。テスタ86はスイッチ7から出力される電力値を測定する(S14)。テスタ86は電力測定結果を試験装置85へ出力する。
【0064】
試験装置85は送信装置1に設定した出力電力値とテスタ86から出力された電力値とを比較する。設定した出力電力値とテスタ86から出力された電力値に差がある場合、試験装置85はメモリ91に記憶する変換テーブル96の値を補正する(S15)。
【0065】
試験装置85は1つ目に選択した通信方式において、複数の電力値についてステップ12からステップS15までの処理を繰り返す(S16:NO)。あらかじめ定めた全ての電力設定値について試験が完了した場合(S16:YES)、複数の電力設定値について変換テーブル96を補正後、試験装置85は、補正した変換テーブル96のデータをIF87へ出力する。演算部88は、IF87を介して受け取った変換テーブル96のデータをメモリ89へ書き込む。(S17)。
【0066】
以上の通り試験装置85は、送信装置1の変換テーブルを補正することが出来る。
【0067】
図6のBにおいて試験装置85は、送信装置1の演算部88に対し2つ目の通信方式および出力電力値を設定する試験信号を出力する(S20)。試験信号が入力された演算部88は、設定された通信方式に応じて、PA制御部10Aに対しPA設定信号および選択信号を出力すると共に、電力制御部10Bに対し電力設定信号を出力する。電源制御部10Bは記憶部11からパラメータテーブル50の設定値を読み出し、PA制御部10Aへ出力する。PA制御部10Aは入力された設定値をレベル検出部15へ出力し、レベル検出部15の入力インピーダンスを調整する(S21)。
【0068】
電源制御部10Bは入力された電源設定信号に基づいて出力電力値を設定する(S22)。電源制御部10Bはレベル検出部15の出力電圧値および出力電力の設定値に基づいて制御信号を出力し、増幅部17,18,19の出力電力値を制御する(S23)。
【0069】
増幅部17,18,19の出力電力は方向性結合部20,21,22、フィルタ4,5,6を経由してスイッチ7から出力される。テスタ86はスイッチ7から出力される電力値を測定する(S24)。テスタ86は電力測定結果を試験装置85へ出力する。
【0070】
試験装置85は送信装置1に設定した出力電力値とテスタ86から入力された電力値との誤差をあらかじめ設定した誤差の許容値と比較する(S25)。試験装置85は誤差が許容値以下の場合(S25:YES)、入力インピーダンスの設定値を試験装置85のパラメータテーブル98に書き込む(S26)。
【0071】
試験装置85は誤差が許容値よりも大きい場合(S25:NO)、VGAの強度変更により出力電力を調整し(S23)、再度出力電力を測定する(S24)。誤差が許容値以下になるまで、ステップS23、S24の処理を繰り返す。修正後、誤差が許容値以下となった場合(S25:YES)、試験装置85はVGAの設定値を試験装置85のパラメータテーブル98に書き込む(S26)。
【0072】
3つ目以降の通信方式においても、2つ目の通信方式の場合と同様の試験を行う。すべての通信方式においてVGAの調整処理が終了すると、試験装置85は、補正したパラメータテーブル98のデータをIF87へ出力する。演算部88は、IF87を介して受け取ったパラメータテーブル98のデータをメモリ89へ書き込む。
【0073】
演算部88は、メモリ89に書き込まれた変換テーブル96およびパラメータテーブル98を記憶部11に格納された変換テーブル60およびパラメータテーブル50に上書きする。
【0074】
以上の通り試験装置85は、レベル検出部15の入力インピーダンスを通信方式に応じて調整することにより、2つ目以降の通信方式における出力電力の試験を1つ目の通信方式における試験に比べて簡略化することが出来る。よって試験装置85は、送信装置1において切り替え可能な通信方式が増加した場合であっても、送信装置の調整処理の簡略化が可能となる。
【0075】
図7は試験装置85のブロック図である。試験装置85はCPU(Central Processing Unit)93、記憶部92、メモリ91、入力部94、出力部95を有する。記憶部92は試験プログラム97を記憶する。メモリ91は変換テーブル96を記憶する。
【0076】
試験プログラム97は送信装置1の出荷試験を処理するためのプログラムである。CPU93は記憶部92に記憶された試験プログラム97を実行することにより、送信装置1の出荷試験処理を行う。変換テーブル96は出荷試験処理の結果に基づいて補正される、レベル検出部15の出力電圧値と増幅部17,18,19の出力電力値との変換テーブルである。CPU93は1つ目に選択した通信方式における試験完了後、変換テーブル96を送信装置1のメモリ89に書き込む。
【0077】
入力部94はCPU93に命令コードを出力するためのデバイスである。入力部94は例えばキーボードやマウスである。また入力部94はテスタ86による測定結果を試験装置85へ入力するインターフェースである。出力部95はCPU93の処理結果を試験装置85の外部へ出力するためのデバイスである。出力部95は例えばモニタやプリンタである。また出力部95は出荷試験の設定値やメモリ91に記憶している情報などを送信装置1へ出力する場合のインターフェースである。
【0078】
以上の通り試験装置85は試験プログラム97を実行することにより、送信装置1の出荷試験を処理することが出来る。
【符号の説明】
【0079】
1 送信装置
2 RF処理部
3 PAモジュール
4、5、6 フィルタ
7 スイッチ
8 アンテナ
10 制御部
10A PA制御部
10B 電力制御部
11 記憶部
12、13、14 VGA
15 レベル検出部
16 調整部
17、18、19 増幅部
20、21、22 方向性結合部
23 検出部
C2、C3 可変コンデンサ
30 ダイオード
31 LPF
41 IF
50 パラメータテーブル
60 変換テーブル
80 MUX
81 デジタルアンプ
82 DAC
83 周波数コンバータ
84 スイッチ
85 試験装置
86 テスタ
87 IF
88 演算部
89 メモリ
90 BB処理部
91 メモリ
92 記憶部
93 CPU
94 入力部
95 出力部
96 変換テーブル
97 試験プログラム
98 パラメータテーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調信号を増幅し出力する増幅部と、
該増幅部の出力電力を検出する検出部と、
該検出部の出力に基づいて、該増幅部の出力電力を変更する出力電力変更部と、
通信方式毎に該検出部の入力インピーダンスを制御する制御部と
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
該通信方式毎に、該入力インピーダンスの設定値をそれぞれ記憶する記憶部をさらに有し、
該制御部は、選択された通信方式に応じて、該記憶部から該通信方式に対応する入力インピーダンスの設定値を読み出し、読みだした該設定値に基づき、該検出部の入力インピーダンスを調整することを特徴とする、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
該検出部は、
該増幅部の出力のうち、閾値以上の電圧信号を検波する検波部と、
検波した該電圧信号から一定周波数以上の成分を除去するフィルタ部とを有し、
該制御部は、該調整部を有し、
該調整部は、
該検出部に入力される該電圧信号の周波数が高いほど、該検波部に入力される電流量を大きくする位置に配置された第1の可変コンデンサと、
該検出部に入力される該電圧信号の周波数が高いほど、該フィルタ部に入力される電流量を小さくする位置に配置された第2の可変コンデンサと
を有し、
該記憶部は、通信方式毎に、第1の可変コンデンサ及び第2の可変コンデンサの容量値を記憶しており、
該制御部は、選択された通信方式に応じて、該記憶部から読み出した該第1および該第2の可変コンデンサの容量値となるよう、該第1及び第2のコンデンサの容量を変更する事により、該検出部の入力インピーダンスの調整を行なう
ことを特徴とする、請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
該制御部は、
該検出部の出力電圧をあらかじめ設定された目標値と比較し、
該検出部の出力電圧値が該目標値となるまで該増幅部から出力が大きくなるように、該強度変更部を設定することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の送信装置。
【請求項5】
変調信号を増幅し出力する増幅部と、該増幅部の出力電力を検出する検出部と、該検出部の出力に基づいて、該増幅部の出力電力の強度を変更する強度変更部とを有する送信装置の出力電力調整方法であって、
通信方式毎に、該検出部の入力インピーダンス値を記憶部に記録し、
選択された通信方式に応じて、該記憶部から該通信方式に対応する入力インピーダンスの設定値を読み出し
読みだした該設定値に基づき、該検出部の入力インピーダンスを調整する
ことを特徴とする増幅度調整方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199725(P2012−199725A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61830(P2011−61830)
【出願日】平成23年3月20日(2011.3.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】