説明

送受信装置及び送受信装置の調整システム

【課題】適切な電気特性を有する送受信装置及び適切な電気特性に調整することができる送受信装置の調整システムを提供することを提供すること。
【解決手段】電波を無線送信する携帯機側送信部13と、電波を無線受信する携帯機側受信部14と、携帯機側送信部13及び/又は携帯機側受信部14の電気特性を制御するための設定値を記憶するものであり、書き換え可能なEEPROM12と、設定値に基づいて携帯機側送信部13及び/又は携帯機側受信部14の電気特性を制御するものであり、携帯機側受信部14にて設定値を含む電波を受信した場合は、EEPROM12に記憶された設定値を携帯機側受信部14にて受信した設定値に書き換える携帯機側制御部11とを備える携帯機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信装置及び送受信装置の調整システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、送受信装置として回路装置が実装された回路基板をケースに収納したり、モールド樹脂によってモールドしたりすることによってパッケージするものがあった。
【0003】
このような送受信装置の電気特性を調整する場合、パッケージする前の段階で回路基板にプローブピンなどを接触させて回路装置の記憶部に設定値を書き込むなどして行なっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、回路装置が実装された回路基板をモールドする場合、回路装置間や回路装置と回路基板間にモールド樹脂によって容量成分が形成されることとなる。このように、モールド樹脂によって容量成分が形成されると、送受信装置の電気特性が変動する可能性がある。また、回路装置が実装された回路基板をケースに収納する場合、ケースによって送受信装置の電気特性が変動する可能性がある。
【0005】
このように、パッケージする前の段階とパッケージした後の段階とでは、電気特性が異なる可能性があるため、意図した電気特性を有する送受信装置を得ることができない可能性があった。
【0006】
また、プローブピンなどを接触させて回路装置の記憶部に設定値を書き込むなどして調整を実施する場合、回路基板にプローブピンを接触させるためのメカ的な制御が必要となる。さらに、テストポイントに接触させたり離したりする時間が必要となり、調整時間も増加するため製造コストが高くなる。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、調整時間を短縮でき、適切な電気特性を有する送受信装置及び適切な電気特性に調整することができる送受信装置の調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の送受信装置は、電波を無線送信する送受信装置側送信部と、電波を無線受信する送受信装置側受信部と、送受信装置側送信部及び/又は送受信装置側受信部の電気特性を制御するための設定値を記憶するものであり、書き換え可能な送受信装置側記憶部と、設定値に基づいて送受信装置側送信部及び/又は送受信装置側受信部の電気特性を制御するものであり、送受信装置側受信部にて設定値を含む電波を受信した場合は、送受信装置側記憶部に記憶された設定値を送受信装置側受信部にて受信した設定値に書き換える送受信装置側制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このように、送受信装置側記憶部に送受信装置側送信部及び/又は送受信装置側受信部の電気特性を制御するための設定値を記憶しておき、送受信装置側受信部にて設定値を含む電波を無線受信した場合は、送受信装置側記憶部に記憶された設定値を送受信装置側受信部にて受信した設定値に書き換えることによって、送受信装置がケースやモールド樹脂によってパッケージされた後であっても電気特性を調整することができる。したがって、モールド樹脂やケースなどによる変動量を考慮することなく適切な電気特性を有する送受信装置とすることができる。
【0010】
また、プローブピンなどを用いることなく電気特性を調整することができるので調整時間も短縮できる。
【0011】
また、設定値を含む電波を受信する場合、請求項2に示すように、送受信装置側受信部にて電波の送信要求を示す送信要求信号を含む電波を受信すると、送受信装置側送信部から電波を送信することによって、外部から設定値を含む電波を送受信装置側受信部にて受信することができる。
【0012】
また、設定値に基づいて制御する電気特性としては、請求項3に示すように、送受信装置側送信部の送信出力及び/又は送信周波数とすることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の送受信装置では、送受信装置側受信部にて受信した電波に基づいて、送受信装置側受信部の電気特性を計測する送受信装置側計測部を備え、送受信装置側制御部は、送受信装置側計測部による計測結果を含む電波を送受信装置側送信部から送信することによって、外部から計測結果に基づいた設定値を含む電波を送受信装置側受信部にて受信することを特徴とするものである。
【0014】
このように、送受信装置側受信部にて受信した電波に基づいて計測した計測結果を含む電波を送信して、外部からこの計測結果に基づいた設定値を含む電波を受信することよって、送受信装置側受信部の電気特性を調整することができる。
【0015】
また、設定値に基づいて制御する電気特性としては、請求項5に示すように、送受信装置側受信部の受信感度及び/又は受信周波数とすることができる。
【0016】
また、請求項6に示すように、送受受信装置側送信部が送信する電波としてRF電波を用いた場合に好適である。このRF電波は、一般的にケースやモールド樹脂などによる影響を受けやすいものである。しかしながら、送受信装置がケースやモールド樹脂によってパッケージされた後に電気特性を調整することができるため、モールド樹脂やケースなどによる変動量を考慮することなく適切な電気特性を有する送受信装置とすることができる。
【0017】
また、請求項7に記載の送受信装置の調整システムでは、送受信装置と計測装置とが無線通信接続される送受信装置の調整システムであって、計測装置は、電波を無線送信する計測装置側送信部と、電波を無線受信する計測装置側受信部と、送受信装置から送信された電波に基づいて、その送受信装置の電気特性を制御するための設定値である調整用設定値を設定し、調整用設定値を含む電波を計測装置側送信部から送信する計測装置側制御部とを備え、送受信装置は、電波を無線送信する送受信装置側送信部と、電波を無線受信する送受信装置側受信部と、送受信装置の電気特性を制御するための設定値を記憶するものであり、書き換え可能な送受信装置側記憶部と、送受信装置側記憶部に記憶された設定値に基づいて送受信装置の電気特性を制御するものであり、送受信装置側受信部にて調整用設定値を含む電波を受信した場合は、送受信装置側記憶部に記憶された設定値を調整用設定値に書き換える送受信装置側制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
このように、計測装置は、送受信装置から送信された電波に基づいて調整用設定値を設定し、送受信装置は、その調整用設定値を含む電波を受信すると、送受信装置側記憶部に記憶された設定値を調整用設定値に書き換えることによって、送受信装置の電気特性を適切に調整することができる。
【0019】
すなわち、調整用設定値を含む電波を無線受信して、送受信装置側記憶部に記憶された設定値を調整用設定値に書き換えることによって、送受信装置がケースやモールド樹脂によってパッケージされた後であっても電気特性を調整することができる。したがって、モールド樹脂やケースなどによる変動量を見越して設定値を設定することなく、送受信装置の電気特性を適切に調整することができる。
【0020】
また、請求項8に記載の送受信装置の調整システムでは、計測装置は、操作者によって操作されるものであり操作者によって操作されたことを示す操作信号を出力する操作手段と、送受信装置から送信された電波に基づいて、送受信装置側送信部の電気特性を計測する計測装置側計測部とを備え、計測装置側制御部は、操作信号が出力されると、送受信装置に対して電波の送信要求を示す送信要求信号を含む電波を計測装置側送信部から送信すると共に、送受信装置から送信された電波に基づいて計測された計測結果を用いて調整用設定値を設定し、送受信装置側制御部は、送受信装置側受信部にて送信要求信号を含む電波を受信すると、送受信装置側送信部から電波を送信することを特徴とするものである。
【0021】
このように、送受信装置から送信された電波に基づいて送受信装置側送信部の電気特性を計測し、この計測結果を用いて調整用設定値を設定して、送受信装置に送信するので、送受信装置の電気特性をより一層適切に調整することができる。
【0022】
また、請求項9に記載の送受信装置の調整システムでは、計測装置側制御部は、計測装置側計測部による計測結果に基づいて送受信装置側送信部の電気特性が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に調整用設定値を設定して、調整用設定値を含む電波を計測装置側送信部から送信することを特徴とするものである。
【0023】
このように、計測装置は、送受信装置側送信部の電気特性が正常でないと判定した場合のみ調整用設定値を含む電波を送信することによって、必要な時だけ電波を送信することができる。
【0024】
また、請求項10又は請求項11に記載の送受信装置の調整システムでの作用・効果に関しては、上述の請求項3又は請求項4と同様であるため説明を省略する。
【0025】
また、請求項12に記載の送受信装置の調整システムでの作用・効果に関しては、上述の請求項9と同様であるため説明を省略する。
【0026】
また、請求項13に記載の送受信装置の調整システムでの作用・効果に関しては、上述の請求項5と同様であるため説明を省略する。
【0027】
また、請求項14に記載の送受信装置の調整システムでは、計測装置は、計測装置側計測部の計測結果及び/又は送受信装置側計測部の計測結果と調整用設定値とを関連付けて記憶する計測装置側記憶部を備え、計測装置側制御部は、計測装置側記憶部を用いて調整用設定値を設定することを特徴とするものである。
【0028】
このように、計測装置側計測部の計測結果及び/又は送受信装置側計測部の計測結果と調整用設定値とを関連付けて記憶する計測装置側記憶部を備え、この計測装置側記憶部を用いて調整用設定値を設定することによって、容易に調整用設定値を設定することができる。
【0029】
また、請求項15に記載の送受信装置の調整システムでの作用・効果に関しては、上述の請求項6と同様であるため説明を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0031】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態における調整システムを示す概略図である。図2は、本発明の第1の実施の形態における携帯機を示す概略図である。図3は、本発明の第1の実施の形態における計測装置の処理動作を示すフロー図である。図4は、本発明の第1の実施の形態における携帯機の処理動作を示すフロー図ある。図5は、本発明の第1の実施の形態における調整マップを示す説明図である。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態における調整システムは、携帯機10と計測装置20とが無線接続されてなるものである。なお、携帯機10は、本発明における送受信装置に相当するものであり、車両のドアを非接触で遠隔的に施錠・解錠するためのスマートエントリーシステムなどに適用可能なものである。
【0033】
携帯機10(送受信装置)は、携帯機側制御部11(送受信装置側制御部)、EEPROM12(送受信装置側記憶部)、携帯機側送信部13(送受信装置側送信部)、携帯機側受信部14(送受信装置側受信部)などを備える。
【0034】
携帯機側制御部11は、CPUなどを有するマイクロコンピュータであり、EEPROM12に記憶された設定値などに基づいて携帯機側送信部13、携帯機側受信部14などを制御するものである。
【0035】
EEPROM12は、書き換え可能な記憶装置であり、本発明における送受信装置側記憶部に相当するものである。このEEPROM12には、携帯機側送信部13にて電波を送信する場合の送信出力、送信周波数などを制御するための設定値が記憶されている。
【0036】
なお、携帯機側制御部11は、スマートエントリーシステムに用いられる場合、携帯機側受信部14の受信信号に基づいてリクエスト信号の受信の有無を判定したり、そのリクエスト信号に応答して、IDコード等を含むレスポンス信号を生成して携帯機側送信部13から送信させたりなどする。また、EEPROM12には、携帯機10がスマートエントリーシステムに適用される場合には携帯機10固有のIDコードなどが記憶される。
【0037】
携帯機側送信部13は、本発明における送受信装置側送信部に相当するものであり、RF電波を送信するRF回路などを備え、携帯機側制御部11から出力された信号を変調したRF電波に重畳してアンテナから無線送信する。携帯機側送信部13にて電波を無線送信する場合、携帯機側制御部11は、EEPROM12に記憶された設定値に基づいて電気特性(送信出力、送信周波数)を制御する。
【0038】
携帯機側受信部14は、本発明における送受信装置側受信部に相当するものであり、外部から無線送信され、アンテナにて無線受信された電波を復調すると共に、その復調した信号を携帯機側制御部11に出力する。
【0039】
この携帯機10は、図2に示すように、基板15、回路素子16、モールド樹脂17、アンテナ(図示せず)を備え、基板15に回路素子16やアンテナなどが実装された状態でモールド樹脂17によってモールド成形される(以下、モールド成形された状態を製品状態とも称する)。
【0040】
一方、計測装置20は、計測装置側制御部21、計測装置側記憶部22、計測装置側送信部23、計測装置側受信部24、計測装置側計測部25などを備える。
【0041】
計測装置側制御部21は、CPUなどを有するマイクロコンピュータであり、計測装置側送信部23、計測装置側受信部24、計測装置側計測部25などを制御するものである。
【0042】
計測装置側記憶部22は、ハードディスクやROMなどからなる記憶装置であり、調整用設定値が記憶される。この調整用設定値は、携帯機10における携帯機側送信部13の電気特性を制御するためのものであり、図5の調整マップに示すように計測装置側計測部25の計測結果(以下、計測値とも称する)と関連付けて記憶されている。
【0043】
計測装置側送信部23は、LF回路などを備え、計測装置側制御部21から出力された信号を変調したLF電波に重畳してアンテナから無線送信する。なお、計測装置側制御部21から出力される信号は、調整用設定値を示す信号や計測を開始するために携帯機10に電波の無線送信を要求する送信要求信号(以下、計測コマンドとも称する)などである。
【0044】
計測装置側受信部24は、携帯機10から無線送信され、アンテナにて無線受信された電波を復調すると共に、その復調した信号を計測装置側制御部21に出力する。
【0045】
計測装置側計測部25は、携帯機10から無線送信された電波に基づいて、携帯機側送信部13の電気特性(送信出力、送信周波数)を計測する。
【0046】
操作スイッチ26は、本発明における操作手段に相当するものであり、計測装置20の操作者によって操作されるものであり、操作者によって操作されたことを示す操作信号を出力する。
【0047】
ここで、本実施の形態における調整システムの動作について図面を用いて説明する。図3に示すフローは、操作スイッチ26が操作され、計測開始を示す操作信号が出力されるとスタートする。図4に示すフローは、計測装置20から計測コマンドを受信するとスタートする。
【0048】
図3に示すステップS10では、計測装置側制御部21は、計測装置側送信部23によって、計測を開始するために携帯機10に電波の無線送信を要求する計測コマンドを変調したLF電波に重畳してアンテナから無線送信する。
【0049】
一方、携帯機10は、計測装置20から送信された計測コマンドを携帯機側受信部14にて受信すると図4に示すフローをスタートする。図4に示すステップS20では、携帯機側制御部11は、携帯機側送信部13のRF回路を起動してRF電波を無線送信する準備をする。そして、図4に示すステップS21にて、携帯機側制御部11は、EEPROM12に記憶された設定値に基づいて送信出力、送信周波数を制御して携帯機側送信部13からRF電波を無線送信する。
【0050】
そして、計測装置20は、図3に示すステップS11において、ステップS10にて送信した計測コマンドに応答して携帯機10からRF電波が送信されたか否か、すなわち、計測装置側受信部24がRF電波を受信したか否かを判定する。RF電波を受信したと判定した場合はステップS12へ進み、RF電波を受信してないと判定した場合はステップS11での判定を繰り返す。なお、ステップS11では、所定回数RF電波の受信を確認したにも係わらずRF電波を受信できない場合は処理を終了する。
【0051】
図3に示すステップS12では、計測装置側制御部21は、計測装置側計測部25にて受信したRF電波を用いて携帯機側送信部13の送信出力、送信周波数を計測する。そして、図3に示すステップS13では、計測装置側制御部21は、ステップS12での計測結果が正常であるか否か、すなわち規格内であるか否かを判定する。そして、規格内であると判定した場合は処理を終了し、規格内でないと判定した場合はステップS14へ進む。なお、計測結果が規格内であるか否かを判定する場合は、計測装置側記憶部22などに所定の基準値を記憶しておき、この基準値と計測装置側計測部25による計測結果とを比較することなどによって判定することができる。
【0052】
なお、ステップS12において電気特性を計測すると、計測結果に係わらずステップS14へ進むようにしても本発明の目的は達成できるものである。しかし、携帯機側送信部13の電気特性が正常でないと判定した場合のみ調整用設定値を設定するためにステップS14に進むようにすることによって、必要な時だけ電波を送信することができ効率的である。
【0053】
図3に示すステップS14では、計測装置側制御部21は、計測装置側計測部21による計測結果が正常でない場合、携帯機10における携帯機側送信部13の送信出力、送信周波数を正常にするために図5に示す調整マップを確認する。
【0054】
図3に示すステップS15では、計測装置側制御部21は、調整マップを用いて計測装置側計測部25による計測結果、すなわち計測値に対応する調整用設定値を決定する。
【0055】
そして、図3に示すステップS16では、計測装置側制御部21は、計測装置側送信部23によって、ステップS15にて決定した調整用設定値をEEPROM12に書き込むために書換コマンド及び調整用設定値を変調したLF電波に重畳してアンテナから無線送信する。
【0056】
図4に示すステップS22では、携帯機側制御部11は、携帯機側受信部14にて書換コマンド及び調整用設定値の受信を確認する。そして、図4に示すステップS23では、携帯機側制御部11は、書換コマンド及び調整用設定値を受信したか否かを判定し、受信したと判定した場合はステップS24へ進み、受信してないと判定した場合は処理を終了する。
【0057】
図4に示すステップS24では、携帯機側制御部11は、受信した書換コマンドに従って現在EEPROM12に記憶されている設定値を受信した調整用設定値に書き換える。
【0058】
このように、EEPROM12に携帯機側送信部13の電気特性を制御するための設定値を記憶しておき、携帯機側受信部14にて調整用設定値を含む電波を無線受信した場合は、EEPRO12に記憶された設定値を送受信装置側受信部にて受信した調整用設定値に書き換えることによって、携帯機10がケースやモールド樹脂によってパッケージされた後であっても電気特性を調整することができる。したがって、モールド樹脂やケースなどによる変動量を考慮することなく適切な電気特性を有する携帯機10とすることができる。
【0059】
また、本実施の形態においては、携帯機10が製品状態である段階でEEPROM12に記憶された設定値を書き換えることができるため、携帯機10の製造工程内で不良が発生することがない。
【0060】
また、本実施の形態においては、調整用設定値は、計測装置20が携帯機10から送信された電波に基づいて携帯機側送信部13の電気特性を計測し、この計測結果を用いて調整用設定値を設定して、EEPROM12に記憶された設定値と書き換えるので、携帯機10の電気特性をより一層適切に調整することができる。
【0061】
また、従来、設定値を書き込む場合、モールド樹脂やケースなどの影響を見越して、基板に回路素子やアンテナなどが実装された状態(以下、サーキット状態とも称する)で基板に設けたテストポインタにプローブピンを接触させることによって行っていた。しかしながら、本実施の形態においては、調整用設定値を無線で携帯機10のEEPROM12に書き込むことができるので、携帯機10にテストポインタを設ける必要がなくアートワークの制約を低減できる。さらに、調整用設定値を無線で携帯機10のEEPROM12に書き込むことができるので、プローブピンをテストポインタに接触させる必要がなく調整時間も短縮できる。
【0062】
また、携帯機10に携帯機側制御部11などを駆動するための電池などの電源を搭載する場合、この電源によっても携帯機側送信部13の電気特性は変動する可能性がある。しかしながら、本実施の形態においては、調整用設定値を無線で携帯機10のEEPROM12に書き込むことができ、携帯機10が製品状態である段階でEEPROM12に記憶された設定値を書き換えることができるため、電源による変動量を考慮することなく適切な電気特性を有する携帯機10とすることができる。
【0063】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態における調整システムを示す概略図である。
【0064】
第2の実施の形態における調整システムは、上述の第1の実施の形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分についての詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態と異なる点は携帯機10に計測部を設けた点である。
【0065】
携帯機30は、計測装置20から無線送信された電波に基づいて、携帯機側受信部14の電気特性(受信感度、受信周波数)を計測する携帯機側計測部35を備える。
【0066】
計測装置側制御部21は、操作スイッチ26が操作され、計測開始を示す操作信号が出力されると計測装置側送信部23によって、計測を開始するために携帯機10に電波の無線送信を要求する計測コマンドを変調したLF電波に重畳してアンテナから無線送信する。
【0067】
携帯機側制御部11は、携帯機側受信部14にて計測コマンドを含むLF電波を無線受信すると、携帯機側計測部35にて受信したLF電波を用いて携帯機側受信部14の電気特性(受信感度、受信周波数)を計測する。
【0068】
そして、携帯機側制御部11は、携帯機側送信部13によって、EEPROM12に記憶された設定値に基づいて送信出力、送信周波数を制御して、携帯機側計測部35にて計測した計測結果を示す信号を変調したRF電波に重畳して無線送信する。
【0069】
この携帯機側計測部35にて計測された計測結果を含むRF電波を無線受信した計測装置20は、上述の実施の形態におけるステップS13乃至ステップS16に示すように、計測結果が正常であるか否かの判定、調整マップの確認、調整用設定値の決定、書換コマンド及び調整用設定値の送信などを実行する。
【0070】
そして、携帯側受信部14にて書換コマンド及び調整用設定値を受信すると、携帯機側制御部11は、受信した書換コマンドに従って現在EEPROM12に記憶されている設定値を受信した調整用設定値に書き換える。
【0071】
このように、携帯機側受信部14にて受信したLF電波に基づいて計測した計測結果を含む電波を計測装置20に送信して、計測装置20からこの計測結果に基づいた調整用設定値を含む電波を受信することよって、携帯機側受信部14の電気特性を調整することができる。
【0072】
なお、上述の実施の形態においては、携帯機側送信部13から出力する電波をRF電波、計測装置側送信部23から出力する電波をLF電波として説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、無線電波を送信するものであれば本発明の目的を達成するものである。
【0073】
なお、上述の実施の形態においては、調整用設定値を設定するために、計測装置側計測部25の計測結果及び/又は携帯機側計測部35の計測結果と調整用設定値とを関連付けて記憶する計測装置側記憶部22を備える例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。しかし、この計測装置側記憶部22を用いて調整用設定値を設定することによって、容易に調整用設定値を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1の実施の形態における調整システムを示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における携帯機を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における計測装置の処理動作を示すフロー図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における携帯機の処理動作を示すフロー図ある。
【図5】本発明の第1の実施の形態における調整マップの一例を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における調整システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0075】
10 携帯機、11 携帯機側制御部、12 EEPROM、13 携帯機側送信部、14 携帯機側受信部、15 基板、16 回路素子、17 モールド樹脂、20 計測装置、21 計測装置側制御部、22 計測装置側記憶部、23 計測装置側送信部、24 計測装置側受信部、25 計測装置側計測部、26 操作スイッチ、35 携帯機側計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を無線送信する送受信装置側送信部と、
前記電波を無線受信する送受信装置側受信部と、
前記送受信装置側送信部及び/又は前記送受信装置側受信部の電気特性を制御するための設定値を記憶するものであり、書き換え可能な送受信装置側記憶部と、
前記設定値に基づいて前記送受信装置側送信部及び/又は前記送受信装置側受信部の電気特性を制御するものであり、前記送受信装置側受信部にて設定値を含む電波を受信した場合は、前記送受信装置側記憶部に記憶された設定値を前記送受信装置側受信部にて受信した設定値に書き換える送受信装置側制御部と、
を備えることを特徴とする送受信装置。
【請求項2】
前記送受信装置側制御部は、前記送受信装置側受信部にて電波の送信要求を示す送信要求信号を含む電波を受信すると、前記送受信装置側送信部から電波を送信することによって、外部から前記設定値を含む電波を前記送受信装置側受信部にて受信することを特徴とする請求項1に記載の送受信装置。
【請求項3】
前記送受信装置側制御部は、前記設定値に基づいて前記送受信装置側送信部の送信出力及び/又は送信周波数を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の送受信装置。
【請求項4】
前記送受信装置側受信部にて受信した電波に基づいて、前記送受信装置側受信部の電気特性を計測する送受信装置側計測部を備え、前記送受信装置側制御部は、前記送受信装置側計測部による計測結果を含む電波を前記送受信装置側送信部から送信することによって、外部から前記計測結果に基づいた前記設定値を含む電波を前記送受信装置側受信部にて受信することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の送受信装置。
【請求項5】
前記送受信装置側制御部は、前記設定値に基づいて前記送受信装置側受信部の受信感度及び/又は受信周波数を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の送受信装置。
【請求項6】
前記送受信装置側送信部は、RF電波を送信することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の送受信装置。
【請求項7】
送受信装置と計測装置とが無線通信接続される送受信装置の調整システムであって、
前記計測装置は、
前記電波を無線送信する計測装置側送信部と、
前記電波を無線受信する計測装置側受信部と、
前記送受信装置から送信された電波に基づいて、当該送受信装置の電気特性を制御するための設定値である調整用設定値を設定し、当該調整用設定値を含む電波を計測装置側送信部から送信する計測装置側制御部とを備え、
前記送受信装置は、
前記電波を無線送信する送受信装置側送信部と、
前記電波を無線受信する送受信装置側受信部と、
前記送受信装置の前記電気特性を制御するための設定値を記憶するものであり、書き換え可能な送受信装置側記憶部と、
前記送受信装置側記憶部に記憶された設定値に基づいて前記送受信装置の電気特性を制御するものであり、前記送受信装置側受信部にて前記調整用設定値を含む電波を受信した場合は、前記送受信装置側記憶部に記憶された設定値を前記調整用設定値に書き換える送受信装置側制御部と、
を備えることを特徴とする送受信装置の調整システム。
【請求項8】
前記計測装置は、操作者によって操作されるものであり、当該操作者によって操作されたことを示す操作信号を出力する操作手段と、前記送受信装置から送信された電波に基づいて、前記送受信装置側送信部の電気特性を計測する計測装置側計測部とを備え、前記計測装置側制御部は、前記操作信号が出力されると、前記送受信装置に対して電波の送信要求を示す送信要求信号を含む電波を前記計測装置側送信部から送信すると共に、前記送受信装置から送信された電波に基づいて計測された計測結果を用いて前記調整用設定値を設定し、前記送受信装置側制御部は、前記送受信装置側受信部にて前記送信要求信号を含む電波を受信すると、前記送受信装置側送信部から電波を送信することを特徴とする請求項7に記載の送受信装置の調整システム。
【請求項9】
前記計測装置側制御部は、前記計測装置側計測部による計測結果に基づいて前記送受信装置側送信部の電気特性が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に前記調整用設定値を設定して、当該調整用設定値を含む電波を計測装置側送信部から送信することを特徴とする請求項8に記載の送受信装置の調整システム。
【請求項10】
前記送受信装置側制御部は、前記電気特性として前記送受信装置側送信部の送信出力及び/又は送信周波数を制御するものであり、前記計測装置側計測部は、前記電気特性として前記送受信装置側送信部の送信出力及び/又は送信周波数を計測し、前記計測装置側制御部は、当該送信出力及び/又は送信周波数を制御するための調整用設定値を設定することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の送受信装置の調整システム。
【請求項11】
前記送受信装置は、前記送受信装置側受信部にて受信した電波に基づいて、前記送受信装置側受信部の電気特性を計測する送受信装置側計測部を備え、前記送受信装置側制御部は、前記送受信装置側計測部による計測結果を含む電波を前記送受信装置側送信部から送信し、前記計測装置側制御部は、前記調整用設定値を設定する場合、前記送受信装置側計測部にて計測された計測結果を用いて設定することを特徴とする請求項7に記載の送受信装置の調整システム。
【請求項12】
前記計測装置側制御部は、前記送受信装置側計測部による計測結果に基づいて前記送受信装置側受信部の電気特性が正常であるか否かを判定し、正常でないと判定した場合に前記調整用設定値を設定して、当該調整用設定値を含む電波を計測装置側送信部から送信することを特徴とする請求項11に記載の送受信装置の調整システム。
【請求項13】
前記送受信装置側制御部は、前記電気特性として前記送受信装置側受信部の受信感度及び/又は受信周波数を制御するものであり、前記送受信装置側計測部は、前記電気特性として前記送受信装置側受信部の受信感度及び/又は受信周波数を計測し、前記計測装置側制御部は、当該受信感度及び/又は受信周波数を制御するための調整用設定値を設定することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の送受信装置の調整システム。
【請求項14】
前記計測装置は、前記計測装置側計測部の計測結果及び/又は前記送受信装置側計測部の計測結果と前記調整用設定値とを関連付けて記憶する計測装置側記憶部を備え、前記計測装置側制御部は、前記計測装置側記憶部を用いて前記調整用設定値を設定することを特徴とする請求項8乃至請求項13のいずれかに記載の送受信装置の調整システム。
【請求項15】
前記送受信装置側送信部は、RF電波を送信することを特徴とする請求項7乃至請求項14のいずれかに記載の送受信装置の調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−124388(P2007−124388A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315212(P2005−315212)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】