説明

送受信装置

【課題】運用中にシステムを停止する事なく、同軸ケーブルを介して屋外無線装置に入力される信号レベルを常に一定に保持できる送受信装置を提供する。
【解決手段】屋内無線装置11A及び屋外無線装置12Aからなる送受信装置は、初期ケーブルロス補正処理を終了した後、対向側の送受信装置と通信を開始する。屋外無線装置12Aのタイミング生成部39は屋内無線装置11Aから送られてくるTDD切替信号から電力検出を行う区間のタイミングを生成する。電力検出部32は上記電力検出タイミングを基にODU入力レベルを検出し、変調して屋内無線装置11Aへ送信する。屋内無線装置11Aは、受信したODU入力レベルを復調して制御部26へ通知する。制御部26はODU入力レベルとODU規定入力レベルと比較判定し、判定結果に基づきアッテネータ22を調整し、屋外無線装置12Aに入力される送信信号のレベルを常に一定値に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内無線装置と屋外無線装置とをケーブルにより接続する送受信装置に係り、特にケーブルのケーブルロス補正手段を備えた送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば無線基地局システムでは、屋内無線装置(IDU:In Door Unit)及び屋外無線装置(ODU:Out Door Unit)とを同軸ケーブルにより接続してなる送受信装置を備え、対向する送受信装置と無線通信する送受信システムが一般に使用されている。
【0003】
図1は本発明が適用される送受信システムの構成例を示す図である。
図1に示すように第1の送受信装置1は、屋内無線装置(IDU)11と屋外無線装置(ODU)12がケーブル例えば同軸ケーブル13で接続され、通信用のアンテナ14を備えている。また、上記第1の送受信装置1と対向する第2の送受信装置2も同様に屋内無線装置15と屋外無線装置16が同軸ケーブル17で接続され、通信用のアンテナ18を備えている。上記対向する第1の送受信装置1と第2の送受信装置2は1対1で通信を行う。
【0004】
上記の構成において、第1の送受信装置1の屋内無線装置11から出力された信号は同軸ケーブル13を通して屋外無線装置12へ入力され、この屋外無線装置12から第2の送受信装置2へ送信される。また、第2の送受信装置2から第1の送受信装置1へ送信された信号は、屋外無線装置12で受信され、同軸ケーブル13を通って屋内無線装置11へ入力される。
【0005】
上記送受信システムを設計する際、例えば同軸ケーブル13(17)での減衰量は一定であるとして屋外無線装置12(16)には任意のレベルの信号が入力されるものとしている。
【0006】
しかし、同軸ケーブル13(17)の長さは屋内無線装置11(15)と屋外無線装置12(16)の設置場所によって変動するため、常に一定の長さとはならない。また同軸ケーブル13(17)の信号の減衰量はケーブル長およびケーブルの種類によって変化する。一般的に同軸ケーブル13(17)による信号の減衰量は、長さに比例して大きくなる。そのためケーブル長が長くなると屋内無線装置11(15)から出力されて屋外無線装置12(16)に入力される信号のレベルが設計値のレベルより小さくなってしまう、もしくはケーブル長が短くなると屋内無線装置11(15)から出力されて屋外無線装置12(16)に入力される信号のレベルが設計値のレベルより大きくなってしまう、という現象が生じる。
【0007】
そこで、同軸ケーブル13(17)の長さによらず、屋内無線装置11(15)から出力されて屋外無線装置12(16)に入力される信号のレベルを一定にするために、同軸ケーブル13(17)の減衰量を加味して屋内無線装置11(15)からの送信信号のレベルを補正する必要がある。
【0008】
従来、同軸ケーブルの伝送損失を補正するケーブルロス補正処理として、実際に使用する同軸ケーブルの減衰量を測定し、その減衰量分だけ屋内無線装置から屋外無線装置へ出力する送信信号のレベルを大きくする方法がある。しかし、同軸ケーブルの長さは、送受信装置の設置場所でなければ分からず、予め測定することはできない。また、設置場所で測定するにしても、設置状況によっては減衰量の測定が困難な場合もある。
【0009】
上記問題を解決する手段として、従来、屋内無線装置の送信部にアッテネータを設け、敷設した同軸ケーブルの減衰量を測定し、上記アッテネータの減衰量を調整して屋内無線装置から送信する信号電力を補正するようにした機能を備えたものがある。
【0010】
また、本発明に関連する公知技術として、無線通信処理を司る無線部ユニットと制御処理を司る制御部ユニットとをケーブルにより接続し、これらユニット間でケーブル通信を行う無線通信装置において、各ユニットに可変利得増幅器を設け、この可変利得増幅器の利得をケーブル通信損失を補償する適正値に設定するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
以下、図8を参照し、複信方式としてTDD(Time Division Duplex)方式を用いた屋内無線装置20と屋外無線装置30からなる送受信装置において、上記屋内無線装置20と屋外無線装置30との間に敷設した同軸ケーブル13の減衰量を測定し、その測定値に基づいてアッテネータの減衰量を調整することにより同軸ケーブル13の損失を補正するケーブルロス補正処理について説明する。
【0012】
上記屋内無線装置20は、システムにより規定されるフレームを生成し、送信信号として出力する送信部21と、送信信号のレベルを調整するためのアッテネータ22と、屋外無線装置30から入力された受信信号を受信しデータを復号する受信部25と、屋外無線装置30から通知されるレベルを元にアッテネータ22の減衰量を調整する制御部26と、屋外無線装置30の制御情報とTDDスイッチ31、34を切り替えるためのTDD切り替え信号をASK変調して屋外無線装置30に通知すると共に屋外無線装置30から通知されたASK信号を復調するためのASK変復調部24と、送信信号と受信信号を切り替えるTDDスイッチ23と、屋内無線装置20各部のタイミングを生成すると共にTDDスイッチ23のためのTDD切り替え信号を出力するタイミング生成部27とから構成されている。
【0013】
上記のように屋内無線装置20では、送信部21の出力端にアッテネータ22を挿入し、アッテネータ22の減衰量は制御部26から調整できるようになっている。また屋内無線装置20と屋外無線装置30間の通信を行うための制御情報、タイミング生成部27から生成されたTDDスイッチ23の送受を切り替えるためのTDD切り替え信号をそれぞれASK変調信号に変換して送信すると共に屋外無線装置30から受信したASK変調信号を復調するためのASK変復調部24を実装する。ASK変調信号は、対向側の送受信装置に送信する信号もしくは受信した信号に重畳し、同軸ケーブル13によって屋内無線装置20と屋外無線装置30間で通信される。ASK変調信号は、屋内無線装置20と屋外無線装置30間で送信/受信に使用する周波数と異なる周波数を用いるので、対向側の送受信装置との通信信号に干渉等、影響を与えない。
【0014】
また、屋外無線装置30は、送信信号と受信信号を切り替えるTDDスイッチ31、34と、屋内無線装置20からの送信信号を増幅や周波数変換して規定のレベルの無線信号に変換する送信系33と、屋外無線装置30に入力された屋内無線装置20からの信号のレベルを検出する電力検出部32と、この電力検出部32で検出した信号のレベルを情報としてASK変調して屋内無線装置20へ通知すると共に屋内無線装置20から通知されたASK変調信号を復調するASK変復調部37と、屋内無線装置20から通知されるアッテネータ36の減衰量のASK変調信号をASK変復調部37で復調しアッテネータを調整する制御部38と、対向側の送受信装置から送信されてきた無線信号を受信し周波数変換や帯域制限する受信系35と、屋外無線装置30から屋内無線装置20へ送信する受信信号のレベルを調整するアッテネータ36とから構成されている。
【0015】
なお、図8の構成例では、複信方式としてTDD方式を用いた場合について示したが、FDD(Frequency Division Duplex)方式とした場合でも同様であり、TDDスイッチ23、31、34をデュプレクサに変更するだけでよい。
【0016】
次に、上記送受信装置のケーブルロス補正処理を図9に示すフローチャートを参照して説明する。
ケーブルロス補正処理は、始めに電源投入もしくはシステムリセット(ステップS1)の後、アッテネータ22に初期値を設定し、TDDスイッチ23、31を送信側に固定する(ステップS2)。その後、屋外無線装置30の送信部21から送信信号の周波数と同じ周波数の正弦波信号を送信開始する(ステップS3)。屋外無線装置30から送信された正弦波信号は同軸ケーブル13を通り、屋外無線装置30へ入力される。屋外無線装置30に入力された正弦波信号は送信側に固定されたTDDスイッチ31を通って、電力検出部32に入力され、送信信号のレベル検出が行われる(ステップS4)。レベルの検出は、logアンプを用いて包絡線検波で検出する方法が一般的である。
【0017】
電力検出部32で検出されたレベルはASK変復調部37に通知され、ASK変調信号に変換して屋外無線装置30へ通知される(ステップS5)。
【0018】
屋外無線装置30では通知されたASK変調信号をASK変復調部24で復調し、屋外無線装置30の電力検出部32で検出されたレベルを制御部26へ通知する。制御部26では、通知されたレベルと本来屋外無線装置30に入力されるべきレベルとを比較し、差を算出する(ステップS6)。算出した差がプラスであれば制御部26はアッテネータ22の減衰量を小さくし(ステップS8)、マイナスであればアッテネータ22の減衰量を大きくする(ステップS9)。
【0019】
例えば、送信部21の出力レベルを10dBm、屋外無線装置30に入力する規定の電力値を-10dBmと設計し、アッテネータ22の減衰量の初期値を20dBとした時に、屋外無線装置30の電力検出部32で検出したレベルが-17dBmとする。屋外無線装置30の制御部26には屋外無線装置30から-17dBmが通知され、規定の電力値-10dBmと比較し、差を+7dBと算出する。差がプラスなのでアッテネータ22の減衰量を20dBから7dB小さい13dBとする。これにより、屋外無線装置30から送信されるレベルは7dB高くなり、屋外無線装置30に入力される電力値も7dB高くなった-10dBmとなり、屋外無線装置30の規定の入力レベルとなる。
【0020】
また、逆に屋外無線装置30の電力検出部32で検出したレベルが-6dBmとすると、屋外無線装置30の制御部26で差が-4dBと算出される。差がマイナスなのでアッテネータ22の減衰量を20dBから4dB大きい24dBとする。
【0021】
アッテネータ22の減衰量を調整後、屋外無線装置30では再度電力検出部32で屋外無線装置30から送信された正弦波信号のレベルを検出し(ステップS4)、屋外無線装置30へ通知する(ステップS5)。屋外無線装置30の制御部26は、差を算出し(ステップS6)、差が0でなければアッテネータ22の減衰量を再度調整する(ステップS6、S7)。0であれば、アッテネータ22の減衰量を屋外無線装置30に通知する(ステップS9)。屋外無線装置30では通知された減衰量をアッテネータ36に設定する(ステップS10)。設定終了後、送信部21では正弦波送信を停止し、送信側に固定されたTDDスイッチ23、31を解除(ステップS11)して、ケーブルロス補正処理を終了する(ステップS12)。そして、対向側の送受信装置と通信するために通常の処理に移行する(ステップS13)。
【0022】
なお、実際には送信電力誤差、検出誤差等を加味して、±1dB程度のマージンを設け、差がこの範囲内に収まれば、差が0となったと判定し処理を終了する。このマージンは、送受信装置によって任意に決定される。
【0023】
上記のように対向側との通信開始前に、屋外無線装置30から正弦波を出力し、ケーブルロス補正処理を行うことにより、同軸ケーブル13の長さに関わらず、屋外無線装置30の入力レベルは一定となる。
【特許文献1】特開2002−290263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、上記従来の送受信装置では、対向局との通信開始前に一度だけ屋内無線装置20のアッテネータ22の減衰量を調整するだけなので、外気温による温度変化や使用している部品の経年変化によって送信レベルに変動があった場合や、同軸ケーブル13の減衰量に変動があった場合、送受信装置のレベルが変動した状態のままになってしまい、信号品質が劣化してしまうという問題がある。更に、再度ケーブルロス補正処理を行うためには、運用中の通信システムを停止する必要があり、運用上問題がある。
【0025】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、運用中にシステムを停止する事なく、送信フレーム中の信号の一部を用いて、屋内無線装置と屋外無線装置との間のケーブルによる減衰量を監視してケーブルロスを補正し、屋外無線装置の入力レベルを常に一定に保持することができる送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、屋内無線装置と屋外無線装置がケーブルを介して接続されてなる送受信装置において、
前記屋外無線装置は、前記屋内無線装置から前記ケーブルを介して通知されるタイミングから電力検出を行うタイミングを生成するタイミング生成手段と、前記屋内無線装置から前記ケーブルを介して送られてくる送信信号のレベルを前記タイミング生成手段からのタイミングを基に検出する電力検出部と、前記電力検出部で検出された送信信号のレベルを前記屋内無線装置へ送信する手段とを備え、
前記屋内無線装置は、送信部と、該送信部から前記ケーブルを介して前記屋外無線装置へ送信される信号のレベルを調整するアッテネータと、前記屋外無線装置から送られてきた送信信号のレベルと規定の入力レベルとを比較判定し、判定結果から前記アッテネータの減衰量を制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、屋内無線装置からケーブルを介して屋外無線装置へ送信される信号の入力レベルを常に監視することにより、温度変化や経年変化によるケーブルの減衰量の変動や時間的な信号レベルの変動に追従できるのでシステムを停止することなく屋内無線装置と屋外無線装置との間の信号レベルを正確に調整でき、信号品質を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0029】
図2は本発明の一実施形態に係る送受信装置の構成例を示すブロック図である。なお、本実施形態は、図1に示した送受信システムの第1の送受信装置1において、複信方式としてTDD方式を用いた屋内無線装置(IDU)11Aと屋外無線装置(ODU)12Aとの間を同軸ケーブル13で接続したときの例を示している。
【0030】
屋内無線装置11Aは、システムにより規定されるフレームを生成し、送信信号として出力する送信部21と、送信信号のレベルを調整するためのアッテネータ22と、屋外無線装置12Aから入力された受信信号を受信してデータを復号する受信部25と、屋外無線装置12Aから通知されるレベルを元にアッテネータ22の減衰量を調整する制御部26と、屋外無線装置12Aの制御情報とTDDスイッチ31、34を切り替えるためのTDD切り替え信号をASK変調して屋外無線装置12Aに通知すると共に屋外無線装置12Aから通知されたASK信号を復調するためのASK変復調部24と、送信信号と受信信号を切り替えるTDDスイッチ23と、屋内無線装置11A各部のタイミングを生成すると共にTDDスイッチ23のためのTDD切り替え信号を出力するタイミング生成部27とから構成されている。
【0031】
また、屋外無線装置12Aは、送信信号と受信信号を切り替えるTDDスイッチ31、34と、屋内無線装置11Aからの送信信号を増幅や周波数変換して規定のレベルの無線信号に変換する送信系33と、屋外無線装置12Aに入力された屋内無線装置11Aからの信号のレベルを検出する電力検出部32と、この電力検出部32で検出した信号のレベルを情報としてASK変調して屋内無線装置11Aへ通知すると共に屋内無線装置11Aから通知されたASK変調信号を復調するASK変復調部37と、屋内無線装置11Aから通知されるアッテネータ36の減衰量のASK変調信号をASK変復調部37で復調しアッテネータを調整する制御部38と、対向側の送受信装置から送信されてきた無線信号を受信し周波数変換や帯域制限する受信系35と、屋内無線装置11Aから屋内無線装置11Aへ送信する受信信号のレベルを調整するアッテネータ36と、屋内無線装置11Aから通知されるTDD切り替え信号から電力検出を行うタイミングを生成するタイミング生成部39とから構成されている。
【0032】
上記のように構成された送受信装置は、対向側の送受信装置と通信中に、屋内無線装置11Aから同軸ケーブル13を介して屋外無線装置12Aへ入力される信号のレベルを常に検出し、同軸ケーブル13の減衰量の変動が生じた場合に、その変動に応じて屋内無線装置11Aから送信される信号のレベルを調整することを特徴とする。
【0033】
以下、上記送受信装置のケーブルロス補正処理を図2及び図3、図4を参照して説明する。図3はケーブルロス補正処理を示すフローチャート、図4は本発明のフレーム構成とタイミング例を示す図である。
【0034】
送受信装置は電源投入後、もしくはリセットされた時(ステップA1)、対向側の送受信装置との通信開始前に従来のケーブルロス補正処理を行い(ステップA2)、アッテネータ22,36は任意の減衰量に設定する。本発明における電源投入直後に行う従来のケーブルロス補正処理を以降、初期ケーブルロス補正処理と記載する。初期ケーブルロス補正処理(ステップA2)を終了した後、対向側の送受信装置と通信を開始する(ステップA3)。
【0035】
対向側の送受信装置と通信が開始されることにより、屋内無線装置11Aから屋外無線装置12AへTDDスイッチ31、34を制御するためのTDD切替信号が通知されるようになる。屋外無線装置12Aのタイミング生成部39はTDD切替信号から電力検出を行う区間のタイミングを生成する(ステップA4)。
【0036】
電力検出を行う区間は、図4のフレーム構成及びタイミングに示すように送信区間のフレームのデータ部を除くユニークワードUW(Unique Word)と制御チャネルCCH(Control CHannel)区間とする。図4では、TDD切替信号がHighの時にTDDスイッチ23、31、34は送信側に、Lowの時に受信側に切り替わる。また電力検出タイミングがHighの時に電力検出を実施することにしている。フレーム構成のユニークワードUWはタイミング同期やAGC、等化器の参照信号等に用いる特定のシンボルパターンである。制御チャネルCCHは対向局に通知する情報を含んだシンボルパターンである。対向局に通知する情報はシステムによって規定されるが、例として自局のCNR(Carrier to Noise Ratio)やRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)、送信パワーレベル等が挙げられる。
【0037】
フレーム構成において、ユニークワードUWや制御チャネルCCHは情報を確実に通知するために劣悪な伝搬環境においても誤りにくいBPSK(Binary Phase Shift Keying)を用いるのが一般的であり、データ部は高速伝送を行うために16QAMや64QAM等の多値数の多い変調方式が用いられる。本実施形態においてユニークワードUWや制御チャネルCCHはBPSKを用いることとし、BPSKはデータ部に用いる変調方式の対角の2シンボルを使用して生成する。例として図5に変調方式が16QAMの場合を示すが、16個のシンボル中の二重丸のシンボルを使用してBPSKを生成する。
【0038】
また、初期ケーブルロス補正処理に使用する正弦波信号は、上記ユニークワードUW、制御チャネルCCHを生成する2シンボルの一方のシンボルを変調することにより生成する。このため正弦波信号の電力レベルとユニークワードUW、制御チャネルCCHの電力レベルは等しくなるので、対向側の送受信装置との通信開始後の電力検出をユニークワードUW、制御チャネルCCH区間で行った電力レベルと初期ケーブルロス補正処理で行った電力検出レベルは等しくなる。多値数の多い変調方式を用いるデータ部は包絡線検波しても、電力レベルの変動が大きく正確な電力レベルの測定が難しいため、本実施形態の電力検出区間には含まない。
【0039】
上記タイミング生成部39での電力検出タイミングの生成方法について以下に説明する。ユニークワードUWと制御チャネルCCHのシンボル数から電力検出を行う時間は既知であるため、タイミング生成部39ではTDD切替信号を基準にしてカウントを開始する。そして電力検出区間分のカウント数だけHighとなり、それ以外のカウントではLowとなる電力検出タイミングを生成する。
【0040】
タイミング生成部39で生成された電力検出タイミングを基に、電力検出部32は屋内無線装置11Aから同軸ケーブル13を介して屋外無線装置12Aに入力された送信信号のレベルを検出する(ステップA5)。以下、検出したレベルをODU入力レベルと記載する。ODU入力レベルは、Logアンプを用いた包絡線検波による一般的な方法を用いる。上記ODU入力レベルはASK変復調部37へ出力され、ASK変調信号として屋内無線装置11Aへ送信される(ステップA6)。
【0041】
屋内無線装置11AのASK変復調部24は、屋外無線装置12Aから送信されたASK変調信号を復調し、復調したデータを制御部26へ通知する。制御部26ではODU入力レベルと、屋外無線装置12Aに入力される規定のレベル(以降、ODU規定入力レベルと記載する)と比較判定を行う。ODU規定入力レベルは、設計時に決定される値であるので、制御部26を構成するメモリ等に保持しておく。当然、ODU規定入力レベルは、初期ケーブルロス補正処理でも使用される。
【0042】
上記制御部26は、比較判定処理として、ODU規定入力レベルから、ODU入力レベルの差を算出する(ステップA7)。この算出した結果がプラスの数値であれば屋内無線装置11Aのアッテネータ22の減衰量をその数値分小さくし(ステップA8)、マイナスであれば減衰量をその数値分大きくする(ステップA9)。また、算出結果が“0”であれば、現状のアッテネータ22の減衰量を保持する(ステップA10)。この比較判定処理は、初期ケーブルロス補正処理で行う処理と同様である。
【0043】
上記アッテネータ22の減衰量の調整により、屋内無線装置11Aから同軸ケーブル13を介して屋外無線装置12Aに入力される送信信号のレベルはODU規定入力レベルへと収束する。
【0044】
上記制御部26における比較判定処理の結果は、屋内無線装置11Aから屋外無線装置12AへASK変復調部24でASK変調して送信する(ステップA11)。屋外無線装置12Aは、屋内無線装置11Aから送られてくる比較判定結果をASK変復調部37で復調して制御部38へ通知する。制御部38は通知された値を基にアッテネータ36を調整する(ステップA12)。
【0045】
処理後、送受信装置の電源オフやシステムリセットがなければ、対向側の送受信装置との通信は継続されるので、屋外無線装置12Aでの送信信号のレベル検出(ステップA5)からアッテネータ22、36の減衰量の調整処理(ステップA8〜A12)を繰り返して実行する。
【0046】
上記のように温度変化や経年変化等によって同軸ケーブル13の減衰量が変動した場合や、屋内無線装置11Aの送信部21の送信レベルが変動した場合でも、常にODU入力レベルを監視し、アッテネータ22の減衰量を調整しているのでODU入力レベルが一定になるように追従でき、通信品質の劣化を抑えることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る送受信装置について説明する。
上記第1実施形態では、複信方式としてTDD方式を用いた場合について示したが、FDD方式を用いた場合でも同様のケーブルロス補正処理により、同軸ケーブルの減衰量の変動に対応することができる。図6にFDD方式による屋内無線装置11B及び屋外無線装置12Bからなる送受信装置の構成例を示し、図7にフレーム構成とタイミングを示す。
【0048】
FDD方式を用いた送受信装置では、屋内無線装置11BにおけるTDDスイッチ23に代えてデュプレクサ41を使用し、また、屋外無線装置12BにおけるTDDスイッチ31、34に代えてデュプレクサ42、43を使用している。
【0049】
すなわち、FDD方式では、送信と受信の周波数が違うため、TDD方式で用いていたTDDスイッチがデュプレクサに変更になっている点以外は、図2に示した第1実施形態に係る送受信装置と同じ構成であり、ケーブルロス補正処理も同様である。
【0050】
FDD方式では、TDDスイッチがないので屋内無線装置11Bから屋外無線装置12BへTDD切替信号を送信する必要がない。そこでTDD切替信号の代わりにフレームタイミング信号を送信する。フレームタイミング信号はフレームの先頭で立ち上がりとなる信号とする。
【0051】
屋外無線装置12Bにおけるタイミング生成部39は、TDD方式と同様にフレームタイミングを基に電力検出タイミングを生成し、電力検出部32で屋内無線装置11Aへの入力レベルを検出する。なお、電力検出タイミングを直接屋内無線装置11Bから屋外無線装置12Bへ送信しても問題ない。この場合、タイミング生成部39は不要となる。
【0052】
以上説明したように、対向側との通信に用いている送信信号を使用して、常に屋外無線装置の入力レベルを監視することにより、温度変化や経年変化による同軸ケーブルの減衰量の変動や時間的な信号レベルの変動に追従できるのでシステムを停止することなく屋内無線装置と屋外無線装置との間のレベルを正確に調整でき、信号品質を保持することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明が適用される送受信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るTDD方式による送受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】同実施形態におけるケーブルロス補正処理を示すフローチャートである。
【図4】同実施形態におけるフレーム構成とタイミングを示す図である。
【図5】同実施形態において、変調方式として16QAMを用いた場合のユニークワードUW、制御チャネルCCHシンボルの説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るFDD方式による送受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】同実施形態におけるフレーム構成とタイミングを示す図である。
【図8】従来の送受信装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】従来の送受信装置におけるケーブルロス補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1…第1の送受信装置、2…第2の送受信装置、11、11A、11B…屋内無線装置、12、12A、12B…屋外無線装置、13…同軸ケーブル、14…アンテナ、15…屋内無線装置、16…屋外無線装置、17…同軸ケーブル、18…アンテナ、20…屋内無線装置、21…送信部、22…アッテネータ、23…TDDスイッチ、24…変復調部、26…制御部、27…タイミング生成部、30…屋外無線装置、31、34…TDDスイッチ、32…電力検出部、33…送信系、35…受信系、36…アッテネータ、37…変復調部、38…制御部、39…タイミング生成部、41、42、43…デュプレクサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内無線装置と屋外無線装置がケーブルを介して接続されてなる送受信装置において、
前記屋外無線装置は、前記屋内無線装置から前記ケーブルを介して通知されるタイミングから電力検出を行うタイミングを生成するタイミング生成手段と、前記屋内無線装置から前記ケーブルを介して送られてくる送信信号のレベルを前記タイミング生成手段からのタイミングを基に検出する電力検出部と、前記電力検出部で検出された送信信号のレベルを前記屋内無線装置へ送信する手段とを備え、
前記屋内無線装置は、送信部と、該送信部から前記ケーブルを介して前記屋外無線装置へ送信される信号のレベルを調整するアッテネータと、前記屋外無線装置から送られてきた送信信号のレベルと規定の入力レベルとを比較判定し、判定結果から前記アッテネータの減衰量を制御する制御部とを備えたことを特徴とする送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−124841(P2008−124841A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307214(P2006−307214)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】