説明

送風機用の低騒音装置

【課題】 本発明の課題は、送風機の騒音に対する各音域の吸音効果を向上させ、周囲の静音化を実現した送風機用の低騒音装置を提供することを目的とするものである。
【課題手段】 送風機1が内装される筐体2に吸込口4と吹出口5とを開口し、少なくとも吸込口4に吸音機能を有する吸気カバー6を取り付けた送風機用の低騒音装置において、吸気カバー6は、筐体2の吸込口4に取り付けた状態で、筐体2の吸込口4と外気を連通する非直線的に通気路を形成し、筐体2の吸込口4と対面する内面に、吸音特性の異なる複数の吸音構造を積層した吸音層9を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機で発生する騒音を軽減する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送風機から発生する騒音は、周囲環境に悪影響を与えている。例えば、洗車機に搭載される送風機においては、地域住民の住環境に深刻な騒音被害を与えており、トラブルの原因となるケースが増えている。そこで、近年では送風機の駆動音をできるだけ外部に漏らさないようするため、送風機を吸音壁で囲繞するものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
ところで、こうした吸音構造では、吸音能力そのものは送風機を囲繞する吸音壁の吸音性能に依存されている。一般的に吸音材として広く用いられるグラスウールは、高音域から中音域にかけての吸音率が高く、低音域の吸音率が低いという特徴があるため、送風機の騒音域(300〜1000Hz)に対する吸音材としてはやや能力不足となる。そこで、吸音材の背面に空気層を設け、低音域の吸音率を向上させることが行われてきた。こうしたグラスウールと背後空気層による吸音構造によれば、送風機の騒音域に対して平均的な吸音効果を発揮させることが可能となる。
【0004】
しかしながら、音圧レベルで見た場合、送風機の騒音域は中音域について高い音圧を示しているため、相対的に中音域を中心とした透過音が発生してしまうことになる。よって、この中音域に対して、更なる吸音効果の向上が求められているのが現状であった。
【特許文献1】特開2005−315218号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、送風機の騒音に対する各音域の吸音効果を向上させ、周囲の静音化を実現した送風機用の低騒音装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような課題を解決するために、送風機が内装される筐体に吸込口と吹出口とを開口し、少なくとも吸込口に吸音機能を有する吸気カバーを取り付けた送風機用の低騒音装置において、前記吸気カバーは、筐体の吸込口に取り付けた状態で、筐体の吸込口と外気を連通する非直線的に通気路を形成し、筐体の吸込口と対面する内面に、吸音特性の異なる複数の吸音構造を積層した吸音層を形成したものである。吸音層は、騒音源から吸気カバーの内面にかけて、アルミ焼結材・グラスウール・空気層の順に形成している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、送風機の各音域に対する吸音効果が高まり、周囲に漏れ出す騒音を低減させることができる。特に、アルミ焼結材・グラスウール・空気層を、騒音源から吸気カバーの内面にかけて順に配置した吸音層により、送風機の騒音で音圧レベルが高くなる中音域に対して吸音効果を高めることができ、効率よく低騒音が実現される。
【実施例】
【0008】
以下、図面を基に、本発明の実施例について説明する。図1は送風機用の低騒音装置を示す説明図である。
1は送風機で、金属製の厚板で形成された筐体2内に防振用のゴム脚3を取り付けた状態で収容されている。筐体2は、上面に送風機1の吸込口と連通する吸気口4を開口し、一側面に送風機1の送風口が接続される吹出口5を開口している。尚、必要に応じて筐体2の内面に吸音材を取り付け、遮音性を高めるようにしても良い。また、吸気効率を上げるため、吸気口4を筐体2の複数面に開口させても良い。
【0009】
吸気口4には、ボックス状の吸気カバー6が取り付けられている。吸気カバー6は、筐体2の上面に取り付けた状態で、筐体2の側方に指向する吸気口7を開口し、筐体2の吸気口4と吸気カバー6の吸気口7とを連通する通気路8を形成するものである。この通気路8は、送風機1が駆動したときの吸気路として機能するだけでなく、送風機1の排熱を促進する排熱路としても機能する。また、吸気カバー6は、筐体2の吸気口4と対面する内面に吸音層9を形成し、送風機1の騒音が外部へ漏れ出すのを防止する役割も果たしている。
【0010】
吸音層9は、図2に示すように、筐体2の吸気口4から吸気カバー6の内壁にかけて、アルミ焼結材10・グラスウール11・空気層12の順で積層され、筐体2の吸気口4から直線的に漏れ出す送風機1の騒音を吸音するものである。具体的には、吸気カバー6の内壁に垂設される空間形態用のリブ13と、アルミ焼結材10とによってグラスウール11を挟持して形成されている。
【0011】
吹出口5には、吸音管14が接続される。吸音管14は、吹出口5と連通して送風機1からの送風を吹き出す内筒15と、この内筒15の周囲に空気層16を介装して取り付けられる外筒17との二重構造をなし、吹出口5を通じて漏れ出す送風機1の騒音を吸音するものである。このうち内筒15は、アルミ焼結材から構成されており、アルミ焼結材と背後空気層16により、送風機の騒音が低音域を中心に減衰され、外部への漏洩が防止される。
【0012】
このように構成する送風機用の低騒音装置は、例えば洗車機の送風機に採用される。洗車機においては、車体に高圧風を吹き付けて乾燥をはかる乾燥ノズルへの給気手段として用いられ、吸音管14の内筒15先端に、ダクトホースを接続してノズルに送風することになる。
【0013】
次に、実施例について、送風機使用時の吸音作用について説明する。
送風機1は、金属製の厚板で形成された筐体2内に実装されているため、駆動時の静音化が図られている。加えて、送風機1は、防振用のゴム脚を取り付けた状態で収容されているため、送風機の駆動により筐体自体が振動して騒音源となることが軽減される。
【0014】
送風機1で発生した騒音は、筐体2の吸気口4及び吹出口5で、それぞれ吸気カバー6及び吸音管14によって外部への漏洩が抑制される。すなわち、吸気口4からの騒音は吸気カバー6の吸音層9によって吸音され、吹出口5からの騒音は内筒15によって吸音される。吸音層9では、アルミ焼結材10及びグラスウール11によるエネルギー変換と、空気層12による共鳴効果によって吸音が図られ、各音域に対して均一な吸音効果が発揮される。
【0015】
さて、吸音層9における各音域に対する吸音効果は、空気層12の厚さに起因する部分が大きい。例えば、図3に示すように、グラスウール11の背後空気層12を100mmに設定すると、300〜1000Hzの中音域に対する吸音率が高まり(実線)、背後空気層12を300mmに設定すると、120〜1000Hzの低中音域に対する吸音率が高まる(点線)。また、アルミ焼結材10の背後空気層12を100mmに設定すると、400〜1000Hzの中音域に対する吸音率が高まり(一点破線)、背後空気層12を50mmに設定すると、1000〜2000Hzの高音域に対する吸音率が高まる(二点破線)。
【0016】
送風機の騒音は、図4に示すように、300〜1000Hzを中心に分布しており、特に500〜700Hzの音圧レベルが高いという特徴がある(太線)。このため、空気層12の厚さを100mmに設定することで、送風機の騒音に対する各音域での吸音効果を高めることができる。また、アルミ焼結材10と空気層12の組み合わせ及びグラスウール11と空気層12の組み合わせによるそれぞれの吸音効果が、特に400〜1000Hzの中音域で重複して高まるので、送風機の騒音で音圧レベルの高い中音域を重点的に吸音することができる(細線)。
【0017】
このように、吸音層9は、吸気口4と対面する吸気カバー6の内面に形成されているので、音源(送風機)からの直進伝搬波に対して作用し、外部への漏洩を効率よく低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例の低騒音装置を示す説明図である。
【図2】吸音層9の構成を示す説明図である。
【図3】吸音材と背後空気層による吸音性能を示すグラフ図である。
【図4】吸音層9による送風機1の吸音効果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0019】
1 送風機
2 筐体
4 吸気口
5 吹出口
6 吸気カバー
8 通気路
9 吸音層
10 アルミ焼結材
11 グラスウール
12 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機が内装される筐体に吸込口と吹出口とを開口し、少なくとも吸込口に吸音機能を有する吸気カバーを取り付けた送風機用の低騒音装置において、
前記吸気カバーは、筐体の吸込口に取り付けた状態で、筐体の吸込口と外気を連通する非直線的に通気路を形成し、筐体の吸込口と対面する内面に、吸音特性の異なる複数の吸音構造を積層した吸音層を形成したことを特徴とする送風機用の低騒音装置。
【請求項2】
前記吸音層は、騒音源から吸気カバーの内面にかけて、アルミ焼結材・グラスウール・空気層の順に形成したことを特徴とする上記請求項1記載の送風機用の低騒音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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