説明

送風装置

【課題】ヘアードライヤーにおいて、副吸風路を通過する空気の流れを円滑化して、導風ケースの出口付近に負圧領域が発生するのを解消する。以て、ファンブレードの先端付近で渦流が発生するのを防止しファン騒音を低下する。
【解決手段】本体ケース1の吸込口15側のケース内部に、ベルマウス構造の導風ケース43を配置して、その内側および外側に主吸風路51と副吸風路52とを形成する。副吸風路52は、口径が大きな入口通路53と、口径が小さな出口通路55と、これら両通路53・55を連続させる中間通路54とで構成する。中間通路54に、出口通路55の側へ向かって先すぼまり状に湾曲する案内筒壁57を備えた、ベルマウス構造の案内ケース56を配置して、副吸風路52における空気の流れを円滑化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアードライヤーに代表される送風装置に関し、なかでも吸込口にベルマウス構造の吸風リングが組み込んである送風装置を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ベルマウス構造の吸風リングを備えているヘアードライヤーは、例えば特許文献1に公知である。そこでは、吸風リングで囲まれる主吸風路とは別に、吸風リングの外面側にクランク形の副吸風路を設け、副吸風路から流入する空気流によって、吸風リングの出口付近に負圧領域が発生するのを解消している。これによりファンブレードの先端付近で渦流が発生するのを防止し、渦流に起因するファン騒音の発生を解消している。なお、副吸風路の出口付近における空気の流れの向きは、主吸風路における空気の流れの向きと一致している。
【0003】
ベルマウス構造の吸風リングの出口側周囲に筒体を配置して、渦流に伴う騒音の発生を防止する送風装置も提案されている(特許文献2参照)。そこでは、吸風リングで加速された空気流の一部を、筒体の外面に沿って反転させ、さらに筒体と吸風リングとの間の隙間を介して環流させることにより、ファン騒音の発生を解消している。
【0004】
【特許文献1】特開平9−164014号公報(段落番号0014、図2)
【特許文献2】特許第2564889号公報(第2頁第4欄34〜45行、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のヘアードライヤーにおいては、副吸風路から吸い込まれる空気流によって、吸風リングの出口付近に負圧領域が発生するのを阻止し、これによりファンブレードの先端付近での渦流の発生を防止し、ファン騒音の発生を解消している。しかし、副吸風路の通路断面がクランク形に形成してあるので通路抵抗が大きく、副吸風路を通過する空気の流れが必ずしも円滑ではない。そのため、副吸風路を設けることによって低下できる騒音量に限界があった。
【0006】
本発明の目的は、副吸風路を通過する空気の流れを円滑化して、導風ケース(吸風リング)の出口付近に負圧領域が発生するのを解消し、以て、ファンブレードの先端付近で渦流が発生するのを防止しファン騒音を低下できる送風装置を提供することにある。本発明の目的は、副吸風路内を通過する空気の流を円滑化してファン騒音を低下できるうえ、ファンやモーターの回転動作に伴う機械的な振動音や、接合された部品どうしのがたつき騒音などが生じるのを解消でき、したがって、使用時の運転騒音を低下して静音化できる送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の送風装置は、本体ケース1の吸込口15側のケース内部に、主吸風路51を区画するベルマウス構造の導風ケース43と、ファン17およびモーター18を支持するファンケース19とが配置されており、導風ケース43と本体ケース1との間に副吸風路52が形成してある。副吸風路52は、それぞれ環状の通気空間からなる、口径が大きな入口通路53と、口径が小さな出口通路55と、これら両通路53・55を連続させる中間通路54とで構成する。以て、図1に示すように、中間通路54に、入口通路53の側から出口通路55の側へ向かって先すぼまり状に湾曲する案内筒壁57を備えた、ベルマウス構造の案内ケース56が配置してあることを特徴とする。
【0008】
本体ケース1は、その殆どを占める前ケース10と、前ケース10に装着固定される後ケース11とで構成する。案内ケース56の入口端を、後ケース11で前後動不能に受け止め固定する。
【0009】
案内ケース56の入口部分に、後ケース11で受け止め固定される突起59を突設する。
【0010】
案内ケース56の入口部分に、整流翼59が周方向へ一定間隔置きに形成して、これらの整流翼59が突起を兼ねるようにする。
【0011】
導風ケース43はファン17側へ向かって先すぼまり状に湾曲する収束筒壁44と、収束筒壁44に連続してファン17側へ延びる筒口径が均一なストレート筒壁45とを一体に備えている。組み付け状態において、ストレート筒壁45の出口部分はファンケース19の入口部分の内面に入り込んで、ストレート筒壁45とファンケース19との間に副吸風路52の出口通路55を形成する。案内ケース56の案内筒壁57とファンケース17の入口周壁とは滑らかに連続させる。
【0012】
図5に示すように、後ケース11は、前ケース10に装着固定される中空筒状の第1後ケース11Aと、第1後ケース11Aに締結固定される中空筒状の第2後ケース11Bとで構成する。案内ケース56の前後端を、第1後ケース11Aと第2後ケース11Bとで挟み固定する。
【0013】
導風ケース43は、収束筒壁44に連続する周回筒壁46と、第2後ケース11Bの筒壁と周回筒壁46とを接続する放射方向のリブ49を介して一体に成形する。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、本体ケース1の吸込口15側のケース内部に、ベルマウス構造の導風ケース43を配置して、その内側に主吸風路51を区画し、その外側に副吸風路52を形成した。副吸風路52は、口径が大きな入口通路53と、口径が小さな出口通路55と、これら両通路53・55を連続させる副吸風路52とで構成し、中間通路54にベルマウス構造の案内ケース56を設けて、通路内部の通気抵抗を小さくし、さらに中間通路54を通過する空気流の変向を滑らかなものとすることにより、副吸風路52を通過する空気の流れを円滑化できるようにした。
【0015】
したがって本発明の送風装置によれば、副吸風路52を介して吸い込まれる空気流によって、導風ケース43の出口付近に負圧領域が発生するのを解消し、ファンブレードの先端付近で渦流が発生するのを防止できる。その結果、渦流の発生がない分だけファン騒音を低下し、送風装置を静音化できる。中間通路54に案内ケース56を設けることにより、副吸風路52の周辺部分に余分な共鳴空間が形成されるのを阻止できる。したがって、モーター18やファン17などの運転騒音が副吸風路52で共鳴することがなく、その分だけ送風装置を静音化できる。
【0016】
前ケース10と、前ケース10に装着固定される後ケース11とで本体ケース1を構成し、案内ケース56の入口端を後ケース11で前後動不能に受け止め固定するケース構造によれば、案内ケース56を前後ケース10・11で確りと固定して、案内ケース56が機械的な振動を受けて微振動するのを防止できる。したがって、前後ケース10・11と案内ケース56との接合部分において、案内ケース56ががたつくのを防止して、送風装置をさらに静音化できる。
【0017】
案内ケース56の入口部分に、後ケース11で受け止め固定される突起59を突設し、この突起59を後ケース11で受け止め固定して、案内ケース56と後ケース11とを前後に直接接合するケース構造によれば、案内ケースの入口部分に接合用の筒壁を設け、この筒壁を後ケース11の筒壁で受け止める接合形態に比べて、接合用の筒壁を省略できる分だけ入口通路53の通路幅を拡大して、副吸風路52を通過する空気量を向上し、導風ケース43の出口付近に負圧領域が発生するのをさらに確実に解消できる。
【0018】
案内ケース56の入口部分に設けた整流翼59が先の突起を兼ねるようにしたケース構造によれば、整流翼59副吸風路52の入口通路53における吸い込み空気の流れを、整流翼59で中間通路54へ向かって最短距離で案内できるので、副吸風路52に吸い込まれる空気量をさらに向上できる。
【0019】
先すぼまり状に湾曲する収束筒壁44と、収束筒壁44に連続するストレート筒壁45とで導風ケース43を構成し、ストレート筒壁45とファンケース19との間に出口通路55を形成した通路構造において、案内ケース56の案内筒壁57とファンケース17の入口周壁とが滑らかに連続してあると、風路全体の通気抵抗を著しく低下させて、副吸風路52における空気の流れを円滑化し、導風ケース43の出口付近に負圧領域が形成されるのを確実に阻止できる。
【0020】
また、案内ケース56とファンケース19とが、それぞれ別部品として構成してあるので、ファン17やモーター18の駆動に伴なう機械的な振動がファンケース19から案内ケース56へと伝導するのを遮断して、副吸風路52内で騒音が生じるのを解消できる。落下衝撃を受けて案内ケース56が破損したような場合には、案内ケース56のみを交換すればよく、例えば、案内ケース56がファンケース19と一体に形成してある場合に比べて、交換に要する費用を削減できるうえ、成形された案内ケース56の寸法のばらつきを小さくできる。
【0021】
第1後ケース11Aと、第1後ケース11Aに締結固定される第2後ケース11Bとで後ケース11を構成し、第1・第2の両後ケース11A・11Bで案内ケース56の前後端を挟み固定するケース構造によれば、第1・第2の両後ケース11A・11Bで案内ケース56を強固に挟持固定できるので、ファン17やモーター18の駆動に伴う機械的な振動音によって、両後ケース11A・11Bや案内ケース56が微振動するのを確実に防止して使用時の運転騒音を低下し静音化できる。
【0022】
導風ケース43と第2後ケース11Bとが一体に成形してあると、ファン17へ向かって片持ち状に延びる導風ケース43を第2後ケース11Bで確りと支さえて、導風ケース43をファン17に対して適正に位置保持できるので、主吸風路51を通過する空気が導風ケース43の出口付近の一部に偏ってから吸い込まれるのを解消し、ファン17による送風効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施例1) 図1ないし図7は本発明をヘアードライヤー(送風装置)に適用した実施例を示す。図2においてヘアードライヤーは、中空筒からなる本体ケース1と、本体ケース1に対して軸2を中心にして折り畳み可能に連結されたグリップ3とを備えている。本体ケース1の内部には、乾燥風を送給する送風ユニットと、送風ユニットから送出される乾燥風を加熱するヒーターユニットと、イオン発生装置などが収容されている。符号4は本体ケース1の前端に着脱可能に圧嵌装着される吹出ノズルである。
【0024】
グリップ3の前面には、風量と温度状態を制御する電源スイッチノブ6と、ヒーターユニットへの通電を遮断するクールボタン7と、イオン発生装置への通電状態を切り換えるスイッチノブ8が設けてある。符号6aは電源スイッチノブ6で切り換え操作されるスイッチ、7aはクールボタン7で切り換え操作されるスイッチ、8aはスイッチノブ8切り換え操作されるスイッチである。
【0025】
図1および図3において本体ケース1は、その殆どを占める前すぼまり筒状の前ケース10と、前ケース10の後端に係合装着される後ケース11とで構成する。前ケース10の下面後部と、後ケース11の下面前部には、グリップ3を接続するための連結片12が、それぞれ下向きに突設してある。前ケース10の前端の吹出口は吹出グリル13で覆われ、後ケース11の後端の吸込口15は、吸込グリル14で覆われている。
【0026】
送風ユニットは、軸流式のファン17と、ファン17を回転駆動するモーター18と、これら両者17・18を収容する円筒状のファンケース19などで構成してある。ファンケース19の内面中央部分にはモーターホルダー20が一体に形成してあり、モーターホルダー20とファンケース19の周壁との間に整流翼が形成してある。ファンケース19の筒壁外面には、前ケース10、および後ケース11で挟持固定されるフランジ壁21が張り出してある。
【0027】
ヒーターユニットは、前すぼまり円筒状の遮熱筒23と、遮熱筒23の内部において十文字状に組まれる絶縁枠24と、絶縁枠24のまわりに螺旋状に巻き付けられるヒーター25などで構成する。ヒーターユニットは、送風ユニットと共に前ケース10に組み込まれる。
【0028】
各絶縁枠24の前部中央はコ字状にくり抜かれており、このくり抜き部分にイオン発生装置が配置してある。図1においてイオン発生装置は、耐熱プラスチック製の円筒状の断熱ケース27と、断熱ケース27内に収容されるユニット部品化された放電電流調整器と、放電部とを含む。放電電流調整器は、整流回路およびパルス発生回路などの回路構成部品と、トランスなどを断熱ケース27内に封入して形成してあり、先のくり抜き部分の前方に装填される。放電部は、電極ホルダー28に固定した針状の放電電極29と、放電電極29の周囲を囲むリング状の対向電極30と、両電極29・30の間を絶縁する誘電筒31とを含む。放電部の前方には、吹出グリル13と、プラスチック製の防護枠32が配置してある。
【0029】
前ケース10にヒーターユニットとファンユニットを装填した後、後ケース11を前ケース10に係合装着することにより、前後ケース10・11とファンケース19との三者を、ぐらつきやがたつきのない状態で強固に連結固定できる。そのために、前後ケース10・11の接合部分に係合構造を設けて、両ケース10・11を分離不能に連結固定し、同時にファンケース19を挟持固定する。
【0030】
詳しくは、図3に示すように、前ケース10の後端に後ケース11を外嵌装着するための接合筒壁35を後向きに突設し、接合筒壁35の上部周面の中央と、筒壁の左右周面との3個所に係合爪36を形成している。さらに、後ケース11の内面前部に、接合筒壁35に外嵌する接合穴37を形成し、各係合爪36と対応する穴内面に係合凹部38を凹み形成している。3個ずつ設けた係合爪36と係合凹部38とで先の係合構造を構成している。
【0031】
図4および図5において後ケース11は、前ケース10に装着固定される中空筒状の第1後ケース11Aと、第1後ケース11Aに締結固定される中空筒状の第2後ケース11Bとで構成する。第1後ケース11Aは、前後面が開口するリング状の筒壁と連結片12とを一体に備えており、この筒壁の内面に先の接合穴37と、係合凹部38と、半円円弧状の挟持壁39とが形成され、筒壁の内面3個所に第2後ケース11Bを締結するためのボス40が等間隔置きに形成してある(図4参照)。第1後ケース11Aを前ケース10に係合装着した状態においては、図1に示すように前ケース10の接合筒壁35と第1後ケース11Aの挟持壁39とが協同して、ファンケース19のフランジ壁21を前後に挟持固定する。
【0032】
第2後ケース11Bは第1後ケース11Aに連続する筒壁を有し、その内面にベルマウス構造の導風ケース43が一体に形成してある。導風ケース43は、ファン17側へ向かって先すぼまり状に湾曲する収束筒壁44と、収束筒壁44に連続してファン17側へ延びる筒口径が均一なストレート筒壁45と、収束筒壁45の入口端に連続する周回筒壁46とからなる。周回筒壁46の後面側には、吸込グリル14を組み付けるためのグリル溝47が形成され、周回筒壁46の前面側4箇所には、先のボス40に対応するねじボス48が形成してある。
【0033】
第2後ケース11Bの筒壁と、導風ケース44の周回筒壁47とは、環状の通気空間を介して内外に対向しているが、図7に示すようにこれら両者は一群の放射方向のリブ49を介して繋がっており、したがって、導風ケース44を構成する各部材と第2後ケース11Bとを一体成形することができる。リブ49の一群は周方向へ等間隔置きに形成してある。先の環状の通気空間が、後述する副吸風路52の入口通路53として機能する。
【0034】
吸込グリル14は、断面円形の筒周壁14aと、部分球面状の通気自在なグリル主壁14bと、筒周壁14aの周方向4箇所に設けられる掛止脚片14cとを一体に形成したプレス成形品からなり、筒周壁14aを上記のグリル溝47に差し込んだ状態で、掛止脚片14cを内向きに折曲げることにより、第2後ケース11Bに掛止固定される。吸込グリル14はアルミニウム板、薄鋼板、ステンレス薄板等の金属板材を素材にして形成してある。
【0035】
前ケース10、および後ケース11と、ファンケース19の三者を組み付けた状態において、導風ケース44の内面側に主吸風路51が区画され、導風ケース44の外面側に副吸風路52が形成される。副吸風路52は口径が大きな入口通路53と、入口通路53より口径が小さな出口通路55と、これら両通路53・55を滑らかに連続する中間通路54とで構成する。詳しくは、図1に示すように、第2後ケース11Bの筒壁と導風ケース44の周回筒壁47との間に入口通路53が形成され、導風ケース44のストレート筒壁45と、ストレート筒壁45の出口外面を覆うファンケース19の入口筒壁との間に出口通路55が形成される。
【0036】
中間通路54は、第2後ケース11Bの筒壁と導風ケース44との間に形成するが、通路の外側にベルマウス構造の案内ケース56を配置して、副吸風路52における空気の流れを円滑化する点に本発明の特長がある。
【0037】
案内ケース56は、入口通路53の側から出口通路55の側へ向かって先すぼまり状に湾曲する案内筒壁57と、案内筒壁57の出口端(小径端)に連続して前方へ突設される連結筒壁58とを一体に成形して構成してある。案内筒壁57の入口部分(大径端)の周方向には、放射方向の整流翼(突起)59が周方向へ一定間隔置きに形成してある。これらの整流翼59は、後ケースで前後動不能に受け止め固定される突起を兼ねている。
【0038】
後ケース11は以下のようにして組み立てる。まず、第2後ケース11Bに吸込グリル14を組み付ける。次に、第1後ケース11Aの内面に案内ケース56を組み込み、その連結筒壁58の前端を第1後ケース11Aの挟持壁39に接当させる。この状態で、図6に示すように、第2後ケース11Bを第1後ケース11Aに接合して、ボス40とねじボス48の中心位置を合致させ、ボス40に挿通したビス61をねじボス48にねじ込むことにより、両後ケース11A・11Bを締結固定する。なお、第1後ケース11Aに組み付けた案内ケース56は、第2後ケース11Bに設けた3個のねじボス48によって回り止めされる。
【0039】
両後ケース11A・11Bを一体化した状態では、図1に示すように、案内ケース56の連結筒壁58の前端と、整流翼59の後突端とが、第1後ケース11Aの挟持壁39と、第2後ケース11Bの周回筒壁46とで挟持固定される。したがって、案内ケース56は前後動不能に挟み固定される。
【0040】
得られた後ケース11の組立体を、ヒーターユニットやファンユニットなどが装填された前ケース10に組み付ける。第1後ケース11Aの接合穴37を、前ケース10の接合筒壁35に後方から差し込んで、第1後ケース11Aの係合凹部38に、前ケース10の係合爪36を落とし込み係合させる。このように前後ケース10・11を組み付けた状態においては、ファンケース19のフランジ壁21が両ケース10・11で挟持固定される。また、導風ケース43のストレート筒壁45がファンケース19の後部内面に入り込んで、両者19・45の間に副吸風路52の出口通路55が形成される。案内ケース56の連結筒壁58はファンケース19の後部外面に外嵌して、案内筒壁57の内面壁をファンケース19の内面壁に滑らかに連続させる。
【0041】
上記のように、副吸風路52にベルマウス構造の案内ケース56を設け、さらに案内筒壁57をファンケース19に滑らかに連続させることにより、風路全体の通気抵抗を著しく低下させて、副吸風路52における空気の流れを円滑化し、導風ケース43の出口付近に負圧領域が形成されるのを確実に阻止できる。また、ビス61で締結固定される第1・第2の両後ケース11A・11Bで案内ケース56を強固に挟持固定できるので、ファン17やモーター18の駆動に伴う機械的な振動音によって、両後ケース11A・11Bや案内ケース56が微振動するのを確実に防止して静音化できる。
【0042】
使用状態において、ファン17で吸い込まれる空気の殆どは、導風ケース43の内面に案内されながら加速され、ファンブレードで捻られ、整流翼で整流されてケース前方へと送給される。通常、ファンブレードの先端付近においては、空気の流れとは逆向きに反転する渦流が生じる。渦流が発生するのは、導風ケース43で案内された加速空気により、ストレート筒壁45の前方周辺部分が負圧となり、ファンブレードの先端付近の空気が負圧領域へ向かって後方へ流れるのが要因である。
【0043】
しかし、先に説明したように、導風ケース43の内面に沿う主吸風路51とは別に、副吸風路52が設けてあると、入口通路53から吸い込まれた空気が、ストレート筒壁45の前方周辺部分に向かって流れ込むので、先のような負圧領域の発生を解消できる。したがって、渦流に起因するファン騒音を抑止できることとなる。なお、この実施例のヘアードライヤーは、クランク構造の副吸風路を備えた従来のヘアードライヤーに比べて、騒音量を1〜2デシベル低下できた。
【0044】
図8は、後ケース11を1個の部品で構成し、さらに案内ケース56をファンケース19と一体に形成する点が先の実施例と大きく異なる。後ケース11は、前ケース10の後端外面に外嵌装着し、後ケース11の外面からビス62を前ケース10にねじ込むことにより、両ケース10・11を締結固定する。この固定状態において、ファンケース19のフランジ壁21は、その前面に設けた溝63が前ケース10の後端に設けた周回壁64に外嵌して径方向に位置決めされ、さらに、案内ケース56の後端が、後ケース11の内面に設けた段部65で受け止められて、前後方向への遊動が規制される。この実施例における案内ケース56の後端部分は、先の実施例における突起59と同様に作用する。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
上記の実施例以外に、導風ケース43は後ケース11、あるいは第2後ケース11Bとは別の部品として形成することができる。本発明はヘアードライヤー以外に、洗面所用のハンドドライヤー、足用のドライヤー、ボディドライヤー、ペット用ドライヤーなどの各種の温風乾燥装置に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ヘアードライヤーの縦断側面図である。
【図2】ヘアードライヤーの側面図である。
【図3】本体ケースの分解側面図である。
【図4】前後ケースの構造を示す分解斜視図である。
【図5】後ケースの構造を示す分解断面図である。
【図6】図7におけるB−B線断面図である。
【図7】図1におけるA−A線断面図である。
【図8】ケース構造の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 本体ケース
10 前ケース
11 後ケース
11A 第1後ケース
11B 第2後ケース
17 ファン
18 モーター
10 ファンケース
43 導風ケース
51 主吸風路
52 副吸風路
53 入口通路
54 中間通路
55 出口通路
56 案内ケース
57 案内筒壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース(1)の吸込口(15)側のケース内部に、主吸風路(51)を区画するベルマウス構造の導風ケース(43)と、ファン(17)およびモーター(18)を支持するファンケース(19)とが配置されており、導風ケース(43)と本体ケース(1)との間に副吸風路(52)が形成してある送風装置であって、
副吸風路(52)が、それぞれ環状の通気空間からなる、口径が大きな入口通路(53)と、口径が小さな出口通路(55)と、これら両通路(53・55)を連続させる中間通路(54)とで構成されており、
中間通路(54)に、入口通路(53)の側から出口通路(55)の側へ向かって先すぼまり状に湾曲する案内筒壁(57)を備えた、ベルマウス構造の案内ケース(56)が配置してあることを特徴とする送風装置。
【請求項2】
本体ケース(1)が、その殆どを占める前ケース(10)と、前ケース(10)に装着固定される後ケース(11)とで構成されており、
案内ケース(56)の入口端が、後ケース(11)で前後動不能に受け止め固定してある請求項1記載の送風装置。
【請求項3】
案内ケース(56)の入口部分に、後ケース(11)で受け止め固定される突起(59)が突設してある請求項2記載の送風装置。
【請求項4】
案内ケース(56)の入口部分に、整流翼(59)が周方向へ一定間隔置きに形成されており、これらの整流翼(59)が突起を兼ねている請求項3記載の送風装置。
【請求項5】
導風ケース(43)がファン(17)側へ向かって先すぼまり状に湾曲する収束筒壁(44)と、収束筒壁(44)に連続してファン(17)側へ延びる筒口径が均一なストレート筒壁(45)とを一体に備えており、
ストレート筒壁(45)の出口部分がファンケース(19)の入口部分の内面に入り込んで、ストレート筒壁(45)とファンケース(19)との間に副吸風路(52)の出口通路(55)が形成されており、
案内ケース(56)の案内筒壁(57)とファンケース(17)の入口周壁とが滑らかに連続させてある請求項2または3記載の送風装置。
【請求項6】
後ケース(11)が、前ケース(10)に装着固定される中空筒状の第1後ケース(11A)と、第1後ケース(11A)に締結固定される中空筒状の第2後ケース(11B)とで構成されており、
案内ケース(56)の前後端が、第1後ケース(11A)と第2後ケース(11B)とで挟み固定してある請求項2または3または5記載の送風装置。
【請求項7】
導風ケース(43)が、収束筒壁(44)に連続する周回筒壁(46)と、第2後ケース(11B)の筒壁と周回筒壁(46)とを接続する放射方向のリブ(49)を介して一体に成形してある請求項6記載の送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−307772(P2006−307772A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132923(P2005−132923)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】