説明

逆刺付き縫合糸

組織を接続するための逆刺付き縫合糸、並びに外科用針と逆刺付き縫合糸との組み合わせである。この縫合糸は、細長い体部と、この体部から突き出ている複数の逆刺と、を含んでいる。各逆刺によって、縫合糸は逆刺が向いているのと反対方向への移動に抗している。体部上での逆刺の配列は、千鳥型配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、重複配列、又はランダム配列であってもよい。さらに、逆刺の構成は、スパイラル角α、逆刺切り込み角度θ、逆刺切り込み深度、逆刺切り込み長さ、逆刺切り込み距離、波形の逆刺下面、弓形の逆刺基部、或いは可変逆刺サイズであってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明、全般的には、さまざまな外科的状況において身体組織を接続するために有用な逆刺付き縫合糸に関し、さらに詳細には、こうした逆刺付き縫合糸上での逆刺の配列及び/又は構成の最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚、筋肉、腱、内部臓器、神経、血管、などの人や動物の組織にある傷口を閉鎖するため又は互いに結合させるためには、縫合糸を利用するさまざまな外科的方法が従来から使用されている。より具体的には、外科医は従来の縫合糸(平滑な単一長繊維、又は多重長繊維である)を取り付けた外科用針を使用し、その傷口の相対する面上で組織を交互に貫通させてその傷口を縫い合せて閉じることがある。こうした傷口が偶発的なものであるか、外科的なものであるかに依らず、多く利用される方法は(特に、表面性の傷口の場合)ループ型縫い合わせである。次いでその外科用針を外し、縫合糸の両端が結び合わせられる(一般的には、結び目を形成させるように少なくとも3回かがり縫いされる)。
【0003】
周知の如く、従来の縫合糸は、絹、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、又は綿などの非吸収性材料からなることがあり、或いはグリコール酸ポリマー及びコポリマー又は乳酸ポリマー及びコポリマーなどの生体吸収性材料からなる。
【0004】
従来の縫合糸と同じ材料からなるのが一般的である逆刺付き縫合糸は、その着想の時点以降、従来の縫合糸による傷口の閉鎖と比べて数多くの利点を提供してきた。逆刺付き縫合糸は、1つ以上の離隔した逆刺を有する細長い体部を含んでおり、これらの逆刺はこの体部の長さ方向に沿って体部表面から突き出ている。これらの逆刺は、逆刺付き縫合糸がある方向では組織を通過することが可能であるがその反対方向では逆刺付き縫合糸の移動に逆らうように配列されている。したがって、逆刺付き縫合糸の主たる利点は、滑り止めの特質の提供にある。したがって、逆刺付き縫合糸は従来の縫合糸のように結び目を作る必要がない。従来の縫合糸と同様に、逆刺付き縫合糸は外科用針を用いて組織内に挿入させることができる。
【0005】
例えばAlcamoに対する米国特許第3123077号は、人の肉組織を縫い合せるための細長いコードについて記載しており、このコードは、1つの体部部分と、この体部に対して鋭角を成してこの体部から突き出ている鋭利で弾力のある逆刺とを有している。この逆刺付き縫合糸は、ある方向では組織内を通過させることができるが、これと反対の方向の移動には抵抗する。
【0006】
逆刺を双方向配列で配置させた縫合糸(2重装備縫合糸と呼ぶこともある)が、Bunckeに対する米国特許第5931855号、及びRuffに対する米国特許第6241747号に示されている。さらに詳細には、この縫合糸は、その縫合糸長さの約半分に関しては縫合糸の一方の端部の方向に向いた逆刺を有しており、また縫合糸長さの残りの半分に関しては縫合糸の他方の端部に向って反対方向に向いた逆刺を有している。この配列は、縫合糸のそれぞれの端部を傷口の第1及び第2の面内に挿入する際に、これらの逆刺が同じ方向に移動することを可能にする。こうした双方向型の逆刺付き縫合糸はその縁が分離しやすい傷口を閉じるために特に適しているだけではなく、縫合糸の両端部を結び目にしたループによって一緒に固定する必要がなくなる。
【0007】
注目すべきは、ルーマニア特許出願第99103732号(1999年3月3日)に対する優先権を主張するPCT/RU第99/00263号(2000年9月8日にWO第00/51658号として公布されている)に由来する2001年2月2日に公布されたSulamanidze及びMikhailovに対する欧州特許出願第1075843 A1号であり、この出願は糸の長さ方向に沿って連続的に配列されると共に該糸の張力方向と反対の方向を向いた円錐状の逆刺であって、各逆刺の間の距離が該糸の直径の1.5倍を超えないような円錐状逆刺を提示している。
【0008】
同じく注目すべきは、Ruffに対する米国特許第5342376号である。この特許は、傷口を閉じるために逆刺付き縫合糸を位置決めするために有用な挿入装置を提示している。この挿入装置は、逆刺付き縫合糸を受け入れるための管状の体部を有しており、また好ましくは外科医によるこの装置の取扱いを容易にするためのハンドルも有している。この挿入装置は、挿入されている縫合糸部分が挿入方向と反対の方向に向いた逆刺を含んだ逆刺付き縫合糸と共に使用することが推奨されている。挿入方向と反対向きの逆刺を備えたこうした縫合糸もRuffに対する’376特許に提示されている。
【0009】
本明細書で言及したすべての特許及び特許出願の開示は参照によって本明細書に援用されるものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
逆刺切り込み深度に依存する、単一長繊維への逆刺の切起しは、縫合糸の実効直径が低下するために直線的引張り強さを減少させる。しかし、従来の縫合糸(結び目を形成させなければならず、また最小の結び目引張り強さに準拠しなければならない)では、局所的応力の増加のために結び目の位置で最も頻繁に破損が生じるので、逆刺付き縫合糸の直線的引張り強さは、米国薬局方に従った従来の縫合糸(無逆刺の縫合糸)の最小の結び目引張り強さに匹敵させるべきである。
【0011】
逆刺付き縫合糸の性能の最適化するためには、逆刺の幾何学的特徴(逆刺切り込み角度、逆刺切り込み深度、逆刺切り込み長さ、逆刺切り込み距離、その他)及び/又は逆刺の空間的な配列を変更することを検討すると有利である。これは、逆刺付き縫合糸の引張強さを強化させるだけではなく、傷口の縁を互いに保持し且つ維持する際の逆刺付き縫合糸の能力を強化するべきである。結び目の位置に直接張力がかかっている従来の縫合糸と異なり、逆刺付き縫合糸は逆刺切起し縫合糸長さの方向にその張力を分散させる(長さの方向で均等の場合が多い)ことができる。したがって、逆刺の配列及び/又は構成を最適化することは、さらに、保持強さを最大限にすると共に傷口の縁に沿ったギャップ形成を最小限にすることにおいて、この新規の逆刺付き縫合糸の有効性を増大させる。この後者は、傷口の治癒を促進するために特に有利である。
【0012】
さらに、こうした新規の逆刺付き縫合糸は、適当な張力によって組織を迅速に接近させる、組織の変形を緩和する、並びに逆刺によって与えられる自己保持性の恩恵によって瘢痕形成を最小限にするように支援すべきである。この新規の逆刺付き縫合糸は、瘢痕形成の最小化が必須である整形外科などの外科手術、並びに内視鏡手術や顕微手術など空間が限定された手術において特に有用となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸を提供する。この逆刺付き縫合糸は、第1の端部及び第2の端部を有する細長い体部を備えている。この逆刺付き縫合糸はさらに、この体部から突き出ている複数の逆刺を備えている。各逆刺は、逆刺付き縫合糸が、組織内において、逆刺が向いている方向と反対の方向への移動に抗することができるようにされている。この逆刺付き縫合糸はさらに、千鳥配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、重複配列、ランダム配列、又はこれらの組み合わせから選択された配列で、この体部上に配置させた逆刺を備えている。
【0014】
千鳥配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、及び/又は重複配列では、これらの逆刺はすべてが、第1の端部と第2の端部のうちの一方のみの方向に向いていてもよい。或いは、この逆刺付き縫合糸は、少なくとも第1の部分及び第2の部分を有してもよく、第1の部分の逆刺は第1の端部の方向に向いており、また第2の部分の逆刺は第2の端部の方向に向いている。
【0015】
さらに、別の一実施例では、本発明は、縫合糸が第1の端部及び第2の端部を有する細長い体部を備えている、人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸を提供する。この縫合糸はさらに、この体部から突き出ている複数の逆刺を備えている。各逆刺は、縫合糸が組織内にあるときに、逆刺が向いている方向と反対の方向への移動に縫合糸が抗することができるようにされている。この縫合糸はさらに、約140度から約175度の範囲にある逆刺切り込み角度θと、縫合糸直径に対する切り込み深度の比が約0.05から約0.6の範囲にある逆刺切り込み深度と、縫合糸直径に対する切り込み長さの比が約0.2から約2の範囲にある逆刺切り込み長さと、縫合糸直径に対する切り込み距離の比が約0.1から約6の範囲にある逆刺切り込み距離と、波形の下面と、弓形の基部と、可変のサイズと、又はこれらの組み合わせと、から選択される構成を有した逆刺を備えている。
【0016】
ツイスト切り込み多重スパイラル配列では、その逆刺付き縫合糸は約5度から約25度の範囲にあるスパイラル角αを有することが好ましい。
【0017】
重複配列では、逆刺の一方を他方の上に重ね合わせている少なくとも2つの隣接する逆刺が配置されることを意味している。逆刺の切起しの際、この重ね合わせは、ある逆刺(すなわち、上に重なっている逆刺)を別の隣接する逆刺(すなわち、重なりを受けている逆刺)の上面内に切起し、さらにこれを続けることによって生成されている。したがって、重なりを受けている逆刺の上面の一部は上に重なっている逆刺の下面の一部となり、さらにこれが続く。したがって、重複配列では、上に重なっている逆刺と重なりを受けている逆刺との間の逆刺切り込み距離は、重なりを受けている2番目の逆刺の逆刺切り込み長さと比べてより短くなることがあり、他方逆刺付き縫合糸に関して一般に、2つの逆刺間の逆刺切り込み距離≧逆刺切り込み長さ、が成り立つ。
【0018】
さらに別の実施例では、本発明は、人や動物の組織を接続するための外科用針と組み合わせた逆刺付き縫合糸を提供しており、この組み合わせは外科用針に取り付けられた逆刺付き縫合糸を備えている。この縫合糸は、第1の端部及び第2の端部を有する細長い体部から突き出ている複数の逆刺を備えている。各逆刺は、縫合糸が組織の内部にあるときに、当該逆刺が向いている方向と反対の方向への移動に縫合糸が抗することができるようにされている。縫合糸直径に対する外科用針直径の比は約3:1以下であることが好ましい。適宜に、本明細書に記載した発明した逆刺付き縫合糸は外科用針に取り付けられる。
【実施例】
【0019】
本明細書で使用する場合、「傷口」という用語は、人や動物の皮膚又は人や動物の身体組織にある、外科的切開、切り込み、断裂、切断された組織又は偶発的な傷口、或いは縫合、金具留め、又は別の組織接続用装置の使用が必要とされるような人や動物の別の状態を意味している。
【0020】
さらに本明細書で使用する場合、「組織」という用語は、皮膚、脂肪、筋膜、骨、筋肉、臓器、神経、又は血管などの組織、或いは腱や靱帯などの繊維組織(ただし、これらに限らない)を含んでいる。
【0021】
さらに、本明細書で使用する「ポリマー」という用語は一般に、ホモポリマー、コポリマー(ブロック・コポリマー、グラフト・コポリマー、ランダム・コポリマー及びオルタネート・コポリマーなど)、テルポリマー、その他、並びにこれらの配合物及び変種(ただし、これらに限らない)を含んでいる。さらに、「ポリマー」という用語はこの材料からなる可能なすべての構造体を含むものとする。これらの構造体は、アイソタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称体(ただし、これらに限らない)を含んでいる。
【0022】
以下では縫合糸について、円形の断面を備えた好ましい一実施例に関して記載しているが、縫合糸はさらに表面積を増加させると共に逆刺の形成を容易にすることが可能なように非円形の断面形状を有することも可能である。その他の断面形状としては、長円形、三角形、正方形、平行六面体、台形、ひし形、五角形、六角形、十字形、その他(ただし、これらに限らない)が含まれる。典型的には、逆刺は円形の断面をもつダイを用いた押出し成形によって形成させた1本のポリマー長繊維となるように切り込みされており、またしたがって、この長繊維の断面は円形となる(このことは、こうした押出し成形の間に生じることである)。しかしながら、押出し成形のダイは所望の任意の断面形状をもつように特注生産されうる。
【0023】
したがって、本明細書で使用する「直径」という用語は、その断面が円形であるか、また何らかの別の形状であるかに関わらず、その断面の横断長を意味するように意図されている。
【0024】
以下に記載する発明した縫合糸に適した直径は、約0.001mmから約1mmの範囲でよく、またもちろん、この直径は約0.01mmから約0.9mmまでや、約0.015mmから約0.8mmの範囲でもよい。典型的な直径は約0.01mmから約0.5mmの範囲にある。縫合糸の長さは、閉じようとする傷口の長さ及び/又は深度、接合させようとする組織の種類、傷口の位置、その他などの幾つかのファクターに応じてさまざまとなり得る。典型的な縫合糸長さは、約1cmから約30cmの範囲、さらに詳細には、約2cmから約22cmの範囲にある。
【0025】
縫合糸上の逆刺の配列に関連して本明細書で使用する「千鳥型の」や「千鳥型にする」という用語は、その縫合糸が互いに対してずれている少なくとも2組の逆刺を有しており、その第1の組は縫合糸上で長手方向に整列しており且つその第2の組は縫合糸上で長手方向に整列しているが、縫合糸に対して直交し且つ縫合糸を横断方向に切っており且つ第1組の逆刺の基部と交差する面は第2組の逆刺の基部と交差することがないことを意味するように意図されている。
【0026】
これらの逆刺は、逆刺をその上に配置させる縫合糸の体部の外部表面から突き出ている。その逆刺付き縫合糸の最終的な使用目的に応じて、さまざまなサイズの逆刺が利用されることがある。一般に、脂肪組織や軟部組織などのある種の組織を結合させるには、より大きな逆刺がより適している。他方、コラーゲン密度が高い組織など別の種類の組織を結合させるには、より小さな逆刺がより適している。
【0027】
上で指摘したように、逆刺付き縫合糸は、従来のループ縫合糸を製作する際に使用されるのと同じ材料から製作されてもよい。逆刺付き縫合糸に関して選択される特定の材料は何れも、その強度及び柔軟性要件に依存する。
【0028】
より具体的には、逆刺付き縫合糸は、傷口が治癒するに連れて縫合糸が分解され、これにより時間の経過と共に組織内に吸収されることを可能とした生体吸収性材料から形成されてもよい。一般に、生体吸収性材料はポリマーであり、また選択した具体的なポリマーに応じて、傷口における分解時間は約1ヶ月から24ヶ月以上の範囲にある。生体吸収性材料の使用は、縫合糸を患者から除去する必要性をなくす。
【0029】
さまざまな生体吸収性ポリマーとしては、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びこれらのコポリマー(ただし、これらに限らない)が含まれる。市場入手可能な例としては、ポリジオキサノン(PDS II(外科用縫合糸を販売するEthiconが使用する商標名)の名称で販売されている)、約67%のグリコリドと約33%のトリメチレン・カーボネートとからなるコポリマー(外科用縫合糸に関したAmerican Cyanamidに対する登録商標であるMAXON(商標)の名称で販売されている)、及び約75%のグリコリドと約25%のカプロラクトンとからなるコポリマー(縫合糸及び縫合糸針に関したJohnson & Johnsonに対する登録商標であるMONOCRYL(商標)の名称で販売されている)が含まれる。逆刺付き縫合糸は広範な用途において有用な生体吸収性材料から製作されている。
【0030】
さらに、逆刺付き縫合糸は、ポリマーとすることがある、非吸収性材料から形成されてもよい。こうしたポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル(本明細書では略してPETというポリエチレンテレフタレートなど)、ポリテトラフルオロエチレン(GoreによってGOR−TEX(商標)の名称で販売されている、本明細書では略してePTFEという延伸ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエーテルエステル(ジメチルテレフタレート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及び1,4−ブタネジオールからなる凝結ポリマー化物であり、且つTycoの所有会社であるDavis & Geck及びU.S.Surgicalによって、外科用縫合糸に関したAmerican Cyanamidに対する登録商標であるNOVAFIL(商標)の名称で市場供給されているポリブテステルなど)、又はポリウレタン(ただし、これらに限らない)が含まれる。あるいは、非吸収性材料は、金属(例えば、鋼鉄)、金属合金、天然繊維(例えば、絹、綿、その他)、などであってもよい。
【0031】
以下で検討する逆刺付き縫合糸の大部分は、組織を貫通させることを可能にするように、その端部を尖らせると共に十分に堅い材料から形成されるものとして記載されている。逆刺付き縫合糸の端部は外科用針を備えてもよいことが企図されている。この実施例では、逆刺付き縫合糸は、組織内に挿入するために、スウェージング、チャンネル・ラッピング、熱収縮、又ははと目糸通しなどによって、外科用針に取付けられるようにされている。
【0032】
スウェージングによる取付けが十分に記載されており、またこの取付けは典型的には、外科用針の長手方向の一方の端部に配置された外科用針の穴(通常この穴は針の長手方向の一方の端部内にあけられている)内に縫合糸の端部を挿入し、続いて組織内に挿入するために縫合糸を外科用針に固定できるように針穴のまわりに得られたものをクリンプすることによって実現されている。さらに、長手方向の一方の端部に1つの穴を有するある外科用針は、縫合糸を外科用針に取り付けるために、縫合糸の挿入後に熱収縮を受ける熱収縮可能なチューブである。さらに、ある外科用針は、一方の端部に1つのチャンネル又は樋を有しており、また縫合糸はこの樋内に布設されると共に、続いてラッピングによってこの縫合糸が外科用針に固定されている。外科用針の一方の端部に横断方向に配置された従来のはと目タイプの穴を備えた外科用針を使用することも可能であるが、逆刺付き縫合糸に関しては好ましくない。本発明では、以下の検討の一部は、逆刺付き縫合糸と一緒にスウェージングされた外科用針を検討しているが、針を取り付けるための適当な別の任意の手段の利用も可能であることが企図されている。
【0033】
縫合糸と外科用針の取り付けは、Boryskoに対する米国特許第3981307号、Korthoffに対する米国特許第5084063号、Grangerらに対する米国特許第5102418号、Grangerらに対する米国特許第5123911号、Demarestらに対する米国特許第5500991号、Colliganに対する米国特許第5722991号、Estevesらに対する米国特許第6012216号、及びEstevesらに対する米国特許第6163948号に記載されている。外科用針の製造に関する一方法はRizkらに対する米国特許第5533982号に記載されている。さらに、外科用針は、発明した外科用針/逆刺付き縫合糸の組み合わせの針が、コーティングされない外科用針と比べてより小さい力で組織内に挿入できるようにコーティングされてもよいことに留意されたい。このコーティングは、例えばシリコン樹脂コーティングなどのポリマーでもよい。例えばGrangerらに対する米国特許第5258013号には、組織貫通を実現するために標準のシリコン処理した外科用針と比べて、要する力がかなり小さい改良型のシリコン処理した外科用針が記載されている。
【0034】
逆刺は、縫合糸の体部上でさまざまな配列で配置されている。逆刺は、射出成形、スタンピング、切り込み、レーザー加工、その他を含む適当な任意の方法を用いて形成されてもよい。切り込みに関しては、一般に、ポリマーの糸又は長繊維が入手され、次いでさらに逆刺が長繊維体部上に切られる。
【0035】
切り込みは手作業でもよいが、これでは労働集約的であり費用対効果が低い。
【0036】
非常に適した切り込み装置の1つが、Quill Medicalに対する譲渡人であるGenovaらに対する2001年8月31日に提出された米国特許出願第09/943733号に開示されており、この開示は参照により本明細書に援用される。こうした切り込み装置は、縫合糸の長繊維上に逆刺を切り立たせるために複数のブレードを有している。逆刺付き縫合糸を製造するための典型的な切り込み装置の1つは、1つの切り込みベッドと、1つの万力と、1つ以上のブレード・アセンブリと、また場合によってはブレード用の1つのテンプレート又はガイドと、を利用している。縫合糸長繊維の外部上に配置された複数の軸方向に離隔した逆刺を切り込むために、この縫合糸長繊維はベッド内に配置されると共に、ブレードの横断方向が一般に縫合糸長繊維の横断方向に配置された状態で万力によって保持されている。
【0037】
ここで、幾つかの図全体を通じて同じ参照番号によって対応する又は同様の要素を指示している図面を参照すると、番号1でその全体を示した本発明による逆刺付き縫合糸の側面図が図1Aに示されている。
【0038】
縫合糸1は、断面が概ね円形であり且つ端部4で終わっている細長い体部2を含んでいる。端部4は、一実施例では組織を貫通するために尖らせた状態で図示されているが、端部4は組織内に挿入するための外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。(他方の端部は図示していない)。さらに縫合糸1は、千鳥型の単方向配列で配列させた複数の近接離隔した逆刺7、9を含んでいる。より具体的には、軸方向に離隔した逆刺7は、軸方向に離隔した逆刺9から半径方向で約180度の位置に配列されていると共に、軸方向に離隔した逆刺9に対して千鳥型になっており、これらの逆刺7、9は尖った端部4の方向に向いている。第1組の逆刺7は、第2組の逆刺9によって規定される面と実質的に同一平面上にある1つの面を規定しており、またこのため、これらの逆刺7、9は、半径方向180度配列であるために実質的に同じ1つの面を規定している。
【0039】
図1Bは、図1Aの縫合糸1の線1B−1Bに沿って切った断面図であり、角度X(すなわち、逆刺9を基準とした逆刺7の半径方向180度配列)をより明瞭に表している。さらに図1Bから理解できるように、斑点表示によって、逆刺7の第1の逆刺7が尖った端部4(図1Bでは図示せず)のより近くにあること、またこのため、千鳥配置であるためにより離れた位置にある逆刺9の第1の逆刺9と比べてより大きく見えているように表している。縫合糸体部2と直交すると共に逆刺7のうちの1つの逆刺7の基部と交差する横断面は、逆刺9のうちの何れの逆刺9の基部とも交差しない。
【0040】
縫合糸1は、上述したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、縫合糸1に沿った千鳥型位置にある2組の逆刺7、9を(通常は一度に1組の割で)製造する切り込み装置を用いて製作されてもよい。
【0041】
第1組の逆刺7は縫合糸長繊維を万力内に配置させ且つ保持することによって作成されており、また次いで所定の長さを有するブレードの組は、尖った端部4に向かった1つの方向を指した逆刺7が作成されるように、選択した角度で縫合糸長繊維内に切り込んでいる。第2組の逆刺9は、千鳥型配置を作成するために逆刺7のうちの2つの間の長手方向距離の概ね半分だけブレードを長手方向にずらし、且つすでに切り込み終わった第1組の逆刺7を収容するように装備された万力上で縫合糸長繊維を約180度だけ回転させた後で同様にして作成される。
【0042】
図2Aには、本発明の別の実施例であり且つ双方向型であることを除けば縫合糸1と同様な縫合糸10を表している。縫合糸10は、断面が概ね円形の細長い体部12を含んでいる。細長い体部12は、組織を貫通するための第1及び第2の尖った端部14、16で終わっている。さらに、端部14、16のうちの一方又は両者は組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。さらに、縫合糸10は、千鳥型で、双方向型配列で配列された複数の近接離隔した逆刺17、18、19、20を含んでいる。
【0043】
より具体的には、複数の軸方向に離隔した逆刺17は、複数の軸方向に離隔した逆刺19から半径方向に約180度で配列されていると共に、複数の軸方向に離隔した逆刺19に対して千鳥型に配置されており、これらの逆刺17、19は縫合糸10のある部分(その長さの約半分)では尖った端部14の方向を向いている。同様に、複数の軸方向に離隔した逆刺18は、複数の軸方向に離隔した逆刺20から半径方向に約180度で配列されると共に、複数の軸方向に離隔した逆刺20に対して千鳥型に配置されており、これらの逆刺18、20は縫合糸10の別の部分(概ね、その長さの残りの半分)では尖った端部16の方向を向いている。第1組の逆刺17、18は第2組の逆刺19、20によって規定される面と実質的に同一平面上にある1つの面を規定している。その結果、第1組の逆刺17、18が第2組の逆刺19、20に対して半径方向180度配列であるため、逆刺17、18、19、20のすべての逆刺は、実質的に同じ1つの面を規定している。
【0044】
図2Bは図2Aの縫合糸10を線2B−2Bに沿って切った断面図であり、角度X(すなわち、半径方向180度配列)をより明瞭に表している。千鳥配列であるため、逆刺17の第1の逆刺17は尖った端部14(図2Bでは図示せず)のより近くにあり、またしたがって、斑点表示で図示しているように、より離れた位置にある逆刺19の第1の逆刺19と比べてより大きく表している。縫合糸体部12と直交すると共に逆刺17のうちの1つの逆刺17の基部と交差する横断面は、逆刺19のうちの何れの逆刺19の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部12と直交すると共に逆刺18のうちの1つの逆刺18の基部と交差する横断面は、逆刺20のうちの何れの逆刺20の基部とも交差しない。
【0045】
縫合糸10は上述したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、ブレード方向に関する以下の変更を除けば縫合糸1の場合と同じ切り込み装置によって製作されてもよい。
【0046】
第1組の双方向型の逆刺17、18では、縫合糸長繊維を万力内に配置させ且つ保持させた後、ブレードを第1の切り込み動作によって縫合糸長繊維の長さの概ね半分まで切り込ませて、尖った端部14に向かった1つの方向を向いた逆刺17が作成される。次に、ブレードを180度だけ回転させ、これによりブレードが反対方向でその長さの未切り込み半分の上に配置されるようにする。次いでブレードは、第2の切り込み動作によってその縫合糸長繊維の長さの残りの半分を切り込み、尖った端部16の向きと反対方向を向いた逆刺18を作成することができる。
【0047】
次に、千鳥型配置を作成するために逆刺17のうちの2つの間の長手方向距離の半分だけブレードを長手方向にずらし、さらにすでに切り込み終わった第1組の双方向型逆刺17、18を収容するように装備した万力上で縫合糸長繊維を約180度だけ回転させる。次いで、第2組の双方向型の逆刺19、20では、ブレードは第1の切り込み動作によって縫合糸長繊維の長さの概ね半分まで切り込み、尖った端部16に向かった1つの方向に向いた逆刺20が作成される。この第1の切り込み動作に続いて、ブレードを長手方向に180度だけ回転させ、これによってブレードが反対方向で且つその長さの未切り込み半分の上に配置されるようにする。次いでブレードは第2の切り込み動作によってその縫合糸長繊維の長さの残りの半分を切り込み、尖った端部14の向きと反対方向を向いた逆刺19を作成することができる。
【0048】
双方向型の縫合糸10の代替的な一実施例(図示せず)では、縫合糸10の逆刺17、19を有する部分はその逆刺を尖った端部16の方向に向けており、縫合糸10の逆刺18、20を有する部分はその逆刺を尖った端部14の方向に向けている。この変形形態では、その逆刺付き縫合糸は、上で指摘したRuffの米国特許第5342376号に示された装置などの挿入装置を用いて組織内に挿入されることになる。さらに、所望であれば、一方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分と、他方の端部を向いた逆刺を有する1つの部分とが存在する、又は、一方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分と、他方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分とが存在する、等々(図示せず)のように逆刺が切起こされてもよい、したがって、逆刺の一部分が、当該逆刺が隣接している縫合糸端部の方向を向いていない場合は、その逆刺付き縫合糸は挿入装置を用いて組織内に挿入されることになること、に留意されたい。
【0049】
千鳥型の半径方向180度配列を有する逆刺付き縫合糸の利点の1つは、比較的小さい直径の長繊維に対してこの180度の離隔が容易に製作されると共に、千鳥配置によって引き留め性能が改善されることである。したがって、より小さい縫合糸が望まれるような薄くて傷つきやすい組織では、千鳥型の180度離隔によって有効な引き留め性能が生成される。
【0050】
ここで図3Aを見ると、全体として30で示した本発明による縫合糸の別の実施例の側面図が示されている。縫合糸30は、縫合糸30の半径方向離隔が、縫合糸1に関して示した180度ではなく120度である点を除けば、図1Aに示した縫合糸1と同じである。
【0051】
さらに詳細には、縫合糸30は断面が概ね円形であると共に、組織を貫通するための尖った端部34で終わっている細長い体部32を含んでいる。端部34は、縫合糸を組織内に挿入できるように外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。(他方の端部は図示していない)。さらに、縫合糸30は、そのすべてが尖った端部34に向いた同じ方向に向くように配列された、複数の近接離隔した逆刺35、37、39を含んでいる。したがって、逆刺35、37、39の配列は単方向性である。
【0052】
さらに、軸方向に離隔した逆刺35は、軸方向に離隔した逆刺37から半径方向に約120度で配列されていると共に該軸方向に離隔した逆刺37に対して千鳥型に配置されており、さらに軸方向に離隔したこの逆刺37は、軸方向に離隔した逆刺39から半径方向に約120度で配列されていると共に、該軸方向に離隔した逆刺39に対して千鳥型に配置されている。したがって、軸方向に離隔した逆刺39は、軸方向に離隔した逆刺35から約120度に配列されると共に該軸方向に離隔した逆刺35に対して千鳥型に配置されている。半径方向120度配列の結果として、第1組の逆刺35は実質的に同じ1つの面を規定しており、第2組の逆刺37は実質的に別の同じ1つの面を規定しており、さらに第3組の逆刺39は実質的にさらに別の同じ1つの面を規定している。したがって、縫合糸30は、千鳥型で単方向性の120度配列で配列された逆刺35、37、39を有している。
【0053】
図3Bは図3Aの縫合糸30の線3B−3Bに沿って切った断面図であり、角度Yについて(すなわち、逆刺37を基準とした逆刺35、逆刺39を基準とした逆刺37、並びに逆刺35を基準とした逆刺39に関する半径方向120度配列)についてより詳細に表している。
【0054】
斑点表示によって示したように、逆刺35の第1の逆刺35は、千鳥配列であるため、より離れた位置にある逆刺37の第1の逆刺37と比べて尖った端部34(図3Bでは図示せず)により近くにあり、またしたがって、より大きく見えている。さらに、逆刺37の第1の逆刺37は、千鳥配列であるため、より離れた位置にある逆刺39の第1の逆刺39と比べて尖った端部34(図3Bでは図示せず)により近くにあり、またしたがって、より大きく見えている。縫合糸体部32と直交すると共に逆刺35のうちの1つの逆刺35の基部と交差する横断面は、逆刺37のうちの何れの逆刺37の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部32と直交すると共に逆刺37のうちの1つの逆刺37の基部と交差する横断面は、逆刺39のうちの何れの逆刺39の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部32と直交すると共に逆刺39のうちの1つの逆刺39の基部と交差する横断面は、逆刺35のうちの何れの逆刺35の基部とも交差しない。
【0055】
縫合糸30は、上で指摘したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、縫合糸1と同じ切り込み装置によって製作されてもよい。この切り込み装置は、ここでは、縫合糸30に沿った千鳥型位置にある3組の逆刺35、37、39を(通常は一度に1組の割で)製造する切り込み装置を用いて製作されている。
【0056】
第1組の逆刺35は、縫合糸長繊維を万力内に配置させ且つ保持することによって作成されており、これに続いて、所定の長さに調節し終えた後にブレードは、そのすべてが尖った端部34に向かった同じ方向を指して逆刺35が作成されるように選択した角度で縫合糸長繊維内に切り込んでいる。
【0057】
次に、これらのブレードは、千鳥型配置を作成するために逆刺35のうちの2つの間の長手方向距離の概ね半分だけ長手方向にずれている。さらに、その長繊維は、すでに切り込みが終わった第1組の逆刺35を収容するように装備された万力上で縫合糸長繊維を約120度だけ回転させ、次いで第2組の逆刺37が同様の方式で作成されている。
【0058】
同様に、これらのブレードは、千鳥型配置を作成するために逆刺35のうちの2つの間の長手方向距離の概ね半分だけ再度長手方向にずれており、またさらにその縫合糸長繊維は、すでに切り込みが終わった第1組の逆刺35とすでに切り込みが終わった第2組の逆刺37との両方を収容するように装備された万力上で約120度だけ回転されている。長手方向への移動及び回転に続いて、第3組の逆刺39が同様の方式で作成されている。
【0059】
連続する各逆刺は、直前の逆刺から縫合糸体部32の周りで約120度の位置に切り起こされると共に、その他の何れの逆刺とも重ね合わされないことが好ましい。
【0060】
ここで図4Aを参照すると、本発明の別の実施例である縫合糸40を表している。縫合糸40は、縫合糸40が双方向型である点を除けば縫合糸30と同様である。縫合糸40は、断面が概ね円形であると共に、組織を貫通するために第1及び第2の尖った端部44、46で終わっている細長い体部42を含んでいる。さらに、端部44、46のうちの一方又は両方は、組織内に挿入するための外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。縫合糸40はさらに、千鳥型で双方向型の配列で配列された複数の近接離隔した逆刺47、48、49、50、51、52を含んでいる。
【0061】
縫合糸40の長さの約半分では、軸方向に離隔した逆刺47は軸方向に離隔した逆刺49から円周方向に約120度で配列されていると共に該軸方向に離隔した逆刺49に対して千鳥型に配置されていて、またこの軸方向に離隔した逆刺49は軸方向に離隔した逆刺51から半径方向に約120度で配列されていると共に、該軸方向に離隔した逆刺51に対して千鳥型に配置されている。このため、軸方向に離隔した逆刺51もまた、軸方向に離隔した逆刺47から約120度で配列されていると共に、該軸方向に離隔した逆刺47に対して千鳥型に配置されている。したがって、縫合糸40の一部分は、そのすべてが尖った端部44に向かった同じ方向を指して逆刺47、49、51を有している。
【0062】
縫合糸40の長さの残りの半分では、軸方向に離隔した逆刺48は軸方向に離隔した逆刺50から半径方向に約120度で配列されていると共に、該軸方向に離隔した逆刺50に対して千鳥型に配置されていて、またこの軸方向に離隔した逆刺50は、軸方向に離隔した逆刺52から半径方向に約120度で配列されていると共に、該軸方向に離隔した逆刺52に対して千鳥型に配置されている。このため、軸方向に離隔した逆刺52もまた、軸方向に離隔した逆刺48から約120度で配列されると共に、該軸方向に離隔した逆刺48に対して千鳥型に配置されている。したがって、縫合糸40の別の部分はそのすべてが尖った端部46に向かった同じ方向を指して逆刺48、50、52を有している。
【0063】
半径方向120度配列の結果、第1組の逆刺47、48は実質的に同じ1つの面を規定しており、第2組の逆刺49、50は実質的に別の同じ1つの面を規定しており、また第3組の逆刺51、52は実質的にさらに別の同じ1つの面を規定している。
【0064】
図4Bは、図4Aの縫合糸40の線4B−4Bに沿って切った断面図であって、角度Yをより明瞭に表している(すなわち、半径方向120配列をさらに具体的に表している)。斑点表示によって図示したように、逆刺47の第1の逆刺47は、千鳥型配置であるために、より離れた位置にある逆刺49の第1の逆刺49と比べて尖った端部44(図4Bでは図示せず)により近くにあり、またしたがってより大きく見えている。さらに千鳥型配置であるために、逆刺49の第1の逆刺49は、さらに離れた位置にある逆刺51の第1の逆刺51と比べて尖った端部44(図4Bでは図示せず)により近くにあり、またしたがってより大きく見えている。
【0065】
縫合糸体部42と直交すると共に逆刺47のうちの1つの逆刺47の基部と交差する横断面は、逆刺49のうちの何れの逆刺49の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部32と直交すると共に逆刺49のうちの1つの逆刺49の基部と交差する横断面は、逆刺51のうちの何れの逆刺51の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部42と直交すると共に逆刺51のうちの1つの逆刺51の基部と交差する横断面は、逆刺47のうちの何れの逆刺47の基部とも交差しない。さらに、縫合糸体部42と直交すると共に逆刺48のうちの1つの逆刺48の基部と交差する横断面は、逆刺50のうちの何れの逆刺50の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部32と直交すると共に逆刺50のうちの1つの逆刺50の基部と交差する横断面は、逆刺52のうちの何れの逆刺52の基部とも交差しない。同様に、縫合糸体部42と直交すると共に逆刺52のうちの1つの逆刺52の基部と交差する横断面は、逆刺48のうちの何れの逆刺48の基部とも交差しない。
【0066】
縫合糸40は、上述したGenovaらの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、ブレード方向に関する以下の変更を除けば縫合糸1の場合と同じ切り込み装置を用いて作られてもよい。
【0067】
第1組の双方向型の逆刺47、48では、縫合糸長繊維を万力内に配置させ且つ保持させた後、ブレードが、第1の切り込み動作によって縫合糸長繊維の長さの概ね半分まで切り込み、尖った端部44に向かった1つの方向を向いた逆刺47が作成される。次いで、ブレードを180度だけ回転させ、反対方向で且つその長さの未切り込み半分の上に配置されるようにする。次いでこのブレードが、第2の切り込み動作によって、その縫合糸長繊維の長さの残りの半分まで切り込み、尖った端部46の向きと反対方向を向いた逆刺48を作ることができる。
【0068】
次に、これらのブレードが、千鳥型配置を作成するために逆刺47のうちの2つの間の長手方向距離の約半分だけ長手方向にずらされ、さらに、すでに切り込み終わった第1組の双方向型の逆刺47、48を収容するように装備された万力上で縫合糸長繊維を約120度だけ回転させる。次いで、第2組の双方向型の逆刺49、50に関して、ブレードが、第1の切り込み動作によって縫合糸長繊維の長さの概ね半分まで切り込み、尖った端部46に向かった1つの方向を向いた逆刺50が作成される。この第1の切り込み動作に続いて、ブレードを180度だけ回転させ、これによってブレードが反対方向で且つ縫合糸長繊維の長さの未切り込み半分の上に配置されるようにする。次いでブレードが第2の切り込み動作によってその縫合糸長繊維の長さの残りの半分まで切り込み、尖った端部44の向きと反対方向を向いた逆刺49を作ることができる。
【0069】
次いで、これらのブレードは、千鳥型配置を作成するために、逆刺47のうちの2つの間の長手方向距離の約半分だけ再度長手方向にずらされている。さらに、その縫合糸長繊維は、すでに切り込み終わった第1組の双方向型の逆刺47、48とすでに切り込み終わった第2組の双方向型の逆刺49、50とを収容するように装備された万力上で再度約120度だけ回転されている。長手方向への移動及び回転に続いて、第1の切り込み動作によってブレードが縫合糸長繊維の長さの概ね半分まで切り込み、尖った端部44に向かった1つの方向に向いた逆刺51を作ることによって、第3組の双方向型の逆刺51、52が製作される。この第1の切り込み動作に続いて、これらのブレードを180度だけ回転させ、これによってブレードが反対方向で且つ縫合糸長繊維の長さの未切り込み半分の上に配置されるようにする。ブレードは次に、第2の切り込み動作によってその縫合糸長繊維の長さの残りの半分まで切り込み、尖った端部46の向きと反対方向を向いた逆刺52を作ることができる。
【0070】
連続する各逆刺は、直前の逆刺から縫合糸体部42の周りで約120度の位置に切り起こされる共に、その他の何れの逆刺とも重ね合わされないことが好ましい。
【0071】
代替的な一実施例(図示せず)では、双方向型の縫合糸40では、縫合糸40のうち逆刺47、49、51を有する部分は、その逆刺を尖った端部46の方向に向けており、また縫合糸40のうち逆刺48、50、52を有する部分は、その逆刺を尖った端部44の方向に向けている。この変形形態では、その逆刺付き縫合糸は、上で指摘したRuffの米国特許第5342376号に示されている装置などの挿入装置を用いて組織内に挿入されることになる。さらに、所望であれば、一方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分と他方の端部を向いた逆刺を有する1つの部分とが存在する、又は、一方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分と他方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分とが存在する、等々(図示せず)のように逆刺が切起こされてもよい、したがって、逆刺の一部分が当該逆刺が隣接している縫合糸端部の方向を向いていない場合には、その逆刺付き縫合糸は挿入装置を用いて組織内に挿入されることになること、に留意されたい。
【0072】
半径方向120度配列を有する逆刺付き縫合糸の利点の1つは、逆刺が互いに補完関係にある3つの異なる面で力を作用させており、このため、縫合糸全体の保持力が最大となることである。上で指摘したように、千鳥配列によって引き留め性能が強化される。
【0073】
ここで図5Aを見ると、ツイスト切り込み多重スパイラルの半径方向離隔を備えた縫合糸60で示された本発明の別の実施例を表している。縫合糸60は概ね円形の断面をもつ細長い体部62を含んでいる。細長い体部62は組織を貫通するための尖った端部64で終わっており、さらに、端部64は組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。さらに縫合糸60は、体部62の周りでツイスト切り込み多重スパイラル・パターンを成すように配列されていると共に、尖った端部64に向かった同じ方向を指している複数の近接離隔した逆刺67を含んでいる。
【0074】
図5Bは図5Aの縫合糸60の線5B−5Bに沿って切った断面図である。ツイスト切り込み多重スパイラル配列であるために、それぞれの逆刺67は、それぞれが尖った端部64(図5Bでは図示せず)からさらに遠くになっていくほど、さらに小さくなっていくように見えており、このサイズの違いの錯覚を斑点表示で表している。
【0075】
縫合糸60は、上述したGenovaらの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、縫合糸1の製作に使用したのと同様の切り込み装置を用いて製作されてもよい。ツイスト切り込み方法では、逆刺67は、多重スパイラルに製作されてもよく、この場合、逆刺は、切り込みを実施する際に縫合糸長繊維を回転させずに固定状態に保ちながら同時に作成されることが好ましい。
【0076】
さらに詳細には、長さが約7インチ(約178mm)の縫合糸長繊維は、縫合糸長さの約4.5インチ(約114mm)であるようなある部分に関しては39回など、縫合糸長さの一部分に関して長手方向にねじられている。したがって、一方の端部は固定され、また他方の端部は把持されて39回にわたって360度の回転を受けており、したがって縫合糸長繊維のこの部分は、縫合糸を次いで万力内に配置させ且つ保持させたときに、ねじりを受けることになる。
【0077】
ねじりは28回から50回実施することが好ましく、また、19回から70回までなどこれより多くの回数又は少ない回数実施されてもよい。適宜、このねじりは、1インチあたり約2回から約17回のねじり、1インチあたり約3回から約15回のねじり、或いは1インチあたり約5回から約13回のねじり(1インチあたりは25.4mmあたりに相当する)とされてもよい。
【0078】
次に、ブレードは、所定の長さに調整された後、縫合糸長繊維内に同時に切り込んでいる。この切り込み動作は、そのすべてが尖った端部64に向かった同じ方向を指した逆刺67が作成されるように切り込みを行う。ツイスト切り込み多重スパイラルの逆刺付き縫合糸60を万力から外してねじりを戻した後に、縫合糸60上に逆刺67が多重スパイラル状態で配置される。
【0079】
ここで図6Aを見ると、その全体を縫合糸70で示した本発明の別の実施例を表している。縫合糸70はツイスト切り込み多重スパイラル配列になっており、したがって縫合糸70が双方向型である点を除けば縫合糸60と同様である。縫合糸70は、断面が概ね円形であり、且つ組織を貫通するために第1及び第2の尖った端部74、76で終わっている細長い体部72を含んでいる。端部74、76のうちの一方又はその両方は、組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。
【0080】
縫合糸70はさらに、その各々が体部72の周りで1つの多重スパイラルとなっているそれぞれ2つのスパイラル・パターンで配列された複数の近接離隔した逆刺77、78を含んでいる。逆刺77、78は、縫合糸70の概ね3インチ(概ね76mm)に相当する中央部分MP上に配置されており、縫合糸70の各端部部分EPには逆刺がない。さらに詳細には、複数の逆刺77が多重スパイラル・パターンで配列されており、中央部分MPのうち縫合糸70の長さ方向に沿った一部分(約半分)に関してはその逆刺77はすべて尖った端部74の方向に向いている。同様に、複数の逆刺78が多重スパイラル・パターンで配列されており、中央部分MPのうち縫合糸70の長さ方向に沿った別の部分(概ねもう半分)に関してはその逆刺78はすべて尖った端部76の方向に向いている。
【0081】
図6Bは、縫合糸60の図6Aの線6B−6Bに沿って切った断面図である。多重スパイラル構成となっているため、各逆刺77は、斑点表示で示すように、それぞれが尖った端部74(図6Bでは図示せず)からさらに遠くになっていくほど、さらに小さくなっていくように見えている。
【0082】
縫合糸70は、上で指摘したGenovaらの米国特許出願第09/943733号に記載した切り込み装置などの縫合糸60の場合と同じ切り込み装置を用いて製作されてもよい(ただし、ブレード方向は以下のように変更される)。ツイスト切り込み方法を用いると、逆刺77が都合よく同時に作成される多重スパイラルに製作されてもよく、次いでブレードに関して方向を変更した後に、逆刺78が都合よく同時に作成されるように多重スパイラルに製作される。したがって切り込みの間に、縫合糸長繊維は回転させられることなく静止して保持されている。
【0083】
より具体的には、縫合糸長繊維のうち長さが約4.5インチ(約114mm)の1セクションがねじられている(縫合糸の長さ約7インチ(約178mm)にわたって39回など)。したがって、一方の端部は固定され、また他方の端部は把持されて39回にわたって360度の回転を受けており、したがって縫合糸長繊維のこのねじりを加えた部分は縫合糸長繊維を次いで万力内に配置させ且つ保持させたときに1インチあたり(25.4mmあたり)約8と2/3回のねじりを有することになる。
【0084】
ねじりは28回から50回実施することが好ましく、また、19回から70回までなどこれより多くの回数又は少ない回数実施されてもよい。適宜、このねじりは、1インチあたり約2回から約17回のねじり、1インチあたり約3回から約15回のねじり、或いは1インチあたり約5回から約13回のねじり(1インチあたりは25.4mmあたりに相当する)としてもよい。
【0085】
次に、ブレードは、所定の長さに調整された後、切り込みを行うブレードによる第1の切り込み動作において、縫合糸長繊維の約4.5インチ(約114mm)ねじりセクションの中央部分MPの約3インチ(約76mm)長さの約半分を切り込み、そのすべてが尖った端部74に向かった1つの方向に向くように逆刺77を作成している。切り込み装置上に幾つのブレードが存在するか、並びに幾つの逆刺77を希望するのかに応じて、逆刺77のすべてを同時に切起こす1回の切り込み動作とすること、または、縫合糸長繊維のある部分に所望の数の逆刺77を切起こすまで切り込み動作を反復させることがあってもよい。
【0086】
次いで、ブレードが180度回転させられ、これによってブレードが反対方向で且つ縫合糸長繊維の約4.5インチ(約114mm)ねじりセクションの中央部分MPの約3インチ(約76mm)長さの残りの半分上に配置されるようにする。次いで、ブレードは、切り込みを行うブレードによる第2の切り込み動作において、残りの半分を切り込み、尖った端部76の向きと反対方向を向いた逆刺78を作成することができる。切り込み装置上に幾つのブレードが存在するか、並びに幾つの逆刺78を希望するのかに応じて、逆刺78のすべてを同時に切起こす1回の切り込み動作とすること、又は、縫合糸長繊維のある部分に所望の数の逆刺78を切起こすまで切り込み動作を反復させることがあってもよい。
【0087】
ツイスト切り込み多重スパイラルの逆刺付き縫合糸70が万力から外されてねじりを戻したときに、第1の切り込みと第2の切り込みによって、縫合糸70の2つのそれぞれの部分上に2つのそれぞれの多重スパイラル・パターンの逆刺77、78が得られ、その2つの部分のそれぞれによって長さが約3インチ(約76mm)の中央部分MPが規定される。
【0088】
さらに詳細には、幾つかのツイスト切り込み多重スパイラルの逆刺付き縫合糸が、約0.018インチ(約0.457mm)の直径を有する単一長繊維から作られ、(合成吸収性縫合糸材料である)ポリジオキサノンから紡ぎ出された。約0.018インチ(約0.457mm)の直径は、米国薬局方(USP)の規定に従って約0.35mmから約0.399mmの範囲にある直径を有するサイズ0の合成吸収性縫合糸と比べて、大きさが若干大きい。
【0089】
各縫合糸は、縫合糸の円周の周りに2つのそれぞれの多重スパイラル・パターンで導入された全部で78個の逆刺を包含している。この逆刺付き縫合糸は双方向型であるため、これらの逆刺は、その39個の逆刺が縫合糸の第1の部分上に配置された左側グループと、その39個の逆刺が縫合糸の第2の部分上に配置された右側グループと、に分けられていて、その各グループは、縫合糸の概ね中央位置から、他方のグループの方向と反対であった。利用した切り込み装置は13枚のブレードを有していた。したがって、39個の逆刺からなる各グループに関しては、切り込み動作のそれぞれについて、ブレードをガイドを用いてずらしながら3回の切り込み動作(3×13=39)を行った。
【0090】
各縫合糸は長さが約7インチ(約178mm)であった。中央部分MPは、長さが約3インチ(約76mm)であると共に、縫合糸長繊維内に切起こされた78個の逆刺を含んでいた。3インチ(76mm)の逆刺形成した中央部分MPより先には、それぞれ長さが約2インチ(約51mm)の縫合糸の2つの無逆刺の端部部分EPを延在させた。その縫合技法に応じて、逆刺付き縫合糸の端部のうちの一方又は両方は、組織内に挿入できるように十分に尖らせ且つ硬くさせることや、直線的な又は湾曲した外科用針を備えてもよい。
【0091】
ツイスト切り込みした7インチ(178mm)の逆刺付き縫合糸の強度を2つの方法で試験した。その方法の1つは、Universal Testerを用いた直線引張り張力強さ試験であり、またもう1つの方法はイヌを用いたインビボ性能試験であった。
【0092】
直線引張り強さ計測では、Test Resources Universal Tester(Model 200Q)を用いて試験を実施した。逆刺付き縫合糸と比較用の無逆刺の縫合糸について、各種類の縫合糸に関して実施した10回の反復計測の平均読み値を記録した。
【0093】
比較用の無逆刺の縫合糸は、合成吸収性縫合糸に関する米国薬局方のサイズ0、2−0、及び3−0と比べてそれぞれが若干大きくなっている、約0.018インチ(約0.457mm)、約0.015インチ(約0.381mm)、及び約0.0115インチ(約0.292mm)という縫合糸直径を有するポリジオキサノンの単一長繊維(合成吸収性縫合糸材料)であった。合成吸収性縫合糸に関する米国薬局方の指定によれば、サイズ0は約0.35mmから約0.399mmの直径範囲を有しており、サイズ2−0は約0.30mmから約0.339mmの直径範囲を有しており、またサイズ3−0は約0.20mmから約0.249mmの直径範囲を有している。
【0094】
各逆刺付き縫合糸は、2つのギザギザ付ジョー部におけるコルク・ガスケット・パッドを用いた保持によって各端部の位置で把持され、また一方、各無逆刺の縫合糸は、2つのそれぞれのキャプスタン・ローラ・グリップの周りに巻きつけることによって各端部の位置に把持された。キャプスタン・ローラは、応力及び膨張が回避されるように無逆刺の縫合糸を保持するために使用したものである。
【0095】
各縫合糸試料のうち2つの把持位置の間にある部分は、逆刺付き縫合糸の場合では、逆刺形成させた中央部分の3インチ(76mm)の全体を包含するように長さを約5インチ(約126mm)にした。
【0096】
各試料は、破断が発生するまで毎分約10インチ(約254mm)の速度で長手方向に引っ張った。そのピーク荷重を直線引張り強さとして記録した。
【0097】
この結果を以下の表6Aに要約しており、最も右側の列は、合成で吸収性な材料から製作した従来の(無逆刺の)縫合糸に関するUSP結び目引っ張り試験の最小要件を示している。
【0098】
【表1】

【0099】
分かるように、サイズ0のポリジオキサノン単一長繊維への逆刺の切起しは、従来の無逆刺でサイズ0のポリジオキサノン単一長繊維と比較して、約60%だけ直線引張り張力強さを低下させた(7.03ポンド=17.72ポンドの40%)。
【0100】
しかし、サイズ0のポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸(逆刺を切起したために、従来の無逆刺のサイズ0のポリジオキサノン縫合糸と比べてより小さい実効直径を有する)に関する破断時点の直線引張り強さの7.03ポンドはサイズ0のポリジオキサノンの従来の無逆刺縫合糸に関する最小USP結び目引っ張り要件の8.60ポンドと比べて遜色がないものであった。
【0101】
表7K〜表7Zにおいて述べたように、図7A及び7Bに関連して、追加的なサイズ0のポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸について追加の直線引張り強さ試験を実施した。
【0102】
インビボ性能については、それぞれが約14kgである3頭の雑種イヌを使用した。各イヌに関して、胸郭(2箇所)、大腿部(2箇所)、わき腹、腹部正中線、及び傍正中部の位置で、その各々が1つ、2つ、又は3つの閉鎖部位を有するような7つの切開を実施した。各切開の長さは、約0.5インチ(約12.5mm)から約4インチ(約101mm)の範囲とし、また各切開の深度は表在性の真皮から腹膜までとした。
【0103】
逆刺付き縫合糸(そのすべてがサイズ0のポリジオキサノン単一長繊維から製作されている)を用いることによって、24箇所を閉じた。比較のため、残りの部位は結び目を作ったさまざまな直径サイズをもつ従来の無逆刺の縫合糸によって閉じた(1つの部位はサイズ2−0の絹製の編組長繊維により、6つの部位はサイズ2−0のナイロン単一長繊維により、また7つの部位はサイズ3−0のポリジオキサノン単一長繊維によった)。これらの部位の閉鎖のすべては、無作為方式に従って実施した。
【0104】
これらのイヌは毎日監視すると共に、14日で安楽死させた。死亡の時点で、これらの切開は肉眼的に評価した。さまざまな組織、切開サイズ、及びイヌの上の箇所に関して、サイズ0のポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸によって並置されたすべての部位は閉じたままであり、また14日の観察期間全体を通じて通常に治癒しているように見えた。離開は全く生じなかった。
【0105】
従来の無逆刺の絹製の縫合糸によって並置させた部位、並びに従来の無逆刺のポリジオキサノン縫合糸によって並置させた部位も、合併症を生じることなく治癒した。離開は全く生じなかった。
【0106】
サイズ2−0のナイロン製で単一長繊維の従来の無逆刺の縫合糸を用いて閉じられた6つの局部的な皮膚部位に関して、3つの部位では、イヌによる自傷と見られる部分的な又は完全な縫合糸の損失が示された。従来の縫合糸にある結び目は、局所的圧力を生成させるために不快を生じさせた可能性があり、また動物にとって、縫合糸はどのように扱うべきでないかを理解できないものである。したがって、逆刺付き縫合糸は、動物が縫合糸をいじって引っ張り出すという問題を未然に防ぐのに役立つ。
【0107】
要約すると、サイズ0のポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸のインビボ性能は、サイズ2−0の絹製の編組長繊維無逆刺の縫合糸、サイズ2−0のナイロン製単一長繊維無逆刺の縫合糸、及びサイズ3−0のポリジオキサノン単一長繊維無逆刺の縫合糸と比較した場合、有効であった。
【0108】
双方向型のツイスト切り込みの多重スパイラル縫合糸70に関する代替的な一実施例(図示せず)では、縫合糸70のうち逆刺77をその上に配置させる部分は尖った端部76の方向に向いた逆刺77を有しており、また縫合糸70のうち逆刺78をその上に配置させる部分は尖った端部74の方向に向いた逆刺78を有している。この変形形態では、その逆刺付き縫合糸は、上で指摘したRuffの米国特許第5342376号の装置などの挿入装置を用いて組織内に挿入されることになる。さらに所望であれば、一方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分と他方の端部を向いた逆刺を有する1つの部分とが存在する、又は、一方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分と他方の端部を向いた逆刺を有する2つの部分とが存在する、等々(図示せず)のように逆刺を切起こしてもよいこと、したがって、逆刺の一部分が当該逆刺が隣接している縫合糸端部の方向を向いていない場合は、その逆刺付き縫合糸は挿入装置を用いて組織内に挿入されることになること、に留意されたい。
【0109】
ツイスト切り込みの多重スパイラル配列を有する逆刺付き縫合糸の利点の1つは、こうした逆刺付き縫合糸が120度離隔した逆刺付き縫合糸と比較してより良好な傷口保持能力を提供できることである。この理由は、ツイスト切り込みの多重スパイラル・パターンによって、その縫合糸が組織内にあるときの引き留めの改善を提供する傾向がある後続及び先行するグループの逆刺を補完する逆刺のグループが得られためである。この特徴は、別のタイプの組織と比べて結合性繊維がより少ないため、より大きな縫合糸保持力が望ましい脂肪組織などの組織において特に有用である。
【0110】
ここで図7Aを参照すると、逆刺付き縫合糸80の断面側面図を表している。逆刺付き縫合糸80は、概ね円形の断面の細長い縫合糸体部82上に複数の近接離隔した逆刺81を有している。各逆刺81は逆刺先端85を有している。縫合糸の長手方向軸線A、縫合糸直径SD、逆刺長さL、逆刺切り込み深度D、逆刺切り込み角度θ、切り込み距離P、スパイラル角α、カットアウト窪みCD、及びカットアウト窪みCDの先端Tが図示されている。
【0111】
図7Bは、図7Aに示したのと同様の断面側面図であるが、逆刺81同士の切り込み距離Pを計測するために逆刺が整列するように回転させ且つ留められている。
【0112】
逆刺付き縫合糸80は、図6Aの縫合糸70と同様にツイスト切り込みで多重スパイラルの双方向型の逆刺付き縫合糸であるが、縫合糸長手方向の軸線A、縫合糸直径SD、逆刺長さL、逆刺切り込み深度D、逆刺切り込み角度θ、切り込み距離P、スパイラル角α、カットアウト窪みCD、及びカットアウト窪みCDの末端Tに関する逆刺81の構成についてより詳細に示すために拡大部分として図示している。
【0113】
より具体的には、幾つかのツイスト切り込みで多重スパイラルの逆刺付き縫合糸は、ポリジオキサノンから紡ぎ出されており、且つ約0.018インチ(約0.457mmであり、サイズ0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)の直径を有する単一長繊維から製造された。各縫合糸には、縫合糸の円周の周りに2つの個別の多重スパイラル・パターンで導入された78個の逆刺を含めた。逆刺は双方向型であったので、逆刺は、39個の逆刺を備えた左側グループと、39個の逆刺を備えた右側グループと、に分けられ、各グループが縫合糸のほぼ中央から他方のグループの方向と反対方向になるようにした。各縫合糸は長さが約7インチ(約178mm)であった。この中央部分は縫合糸のうちの約3インチ(約76mm)に相当すると共に、縫合糸長繊維内に切起した78個の逆刺を含んだ。3インチ(76mm)の逆刺形成された中央部分を過ぎて縫合糸の各端部の方向に向かって、縫合糸長繊維のうち長さがそれぞれ約2インチ(約51mm)の2つの無逆刺の端部部分が延在した。その縫い合せ技法に応じて、逆刺付き縫合糸の端部のうちの一方又は両方は、組織内に挿入できるように十分に尖らせ且つ硬くすることや、直線状又は湾曲した針を備えてもよい。
【0114】
逆刺81の構成を特徴付けるために、リングとバックライト照明を備えたOptem Zoom 100カスタム顕微鏡をCCDブランドのビデオ・カメラと一緒に使用し、左側と右側のグループのそれぞれから選択した逆刺81を倍率×21.5で計測した。
【0115】
その平均値は、切り込み角度θと切り込み深度Dのそれぞれに関して実施した10回の反復計測(そのうちの5回は左側の逆刺グループから、またそのうちの5回は同じ縫合糸の右側の逆刺グループからの計測)から計算した。逆刺切り込み角度θは、その切り込みの表面から逆刺付き縫合糸80の外側表面までで計測した。逆刺切り込み深度Dは、逆刺付き縫合糸80の外側表面から逆刺付き縫合糸80の長手方向の軸線Aの方向に向かった垂線に沿って計測した。これらの計測によって、次式を用いた切り込み長さLの計算が可能となった。
【0116】
[数1]
L=D/{sin(180−θ)}
【0117】
さらにスパイラルの角度αは、さまざまな逆刺付き縫合糸80に関して以下のように顕微鏡的に計測した。逆刺81の切り込み中にねじりを加えた縫合糸長繊維を万力によって把持した際に、万力によって縫合糸長繊維上に刻みつけられた線Mとして示した極めて軽微なマークが残される。したがって、ねじりを加えた縫合糸長繊維を万力内に保持させている間は、線Mが万力の長手方向の軸線と平行となる。万力が縫合糸長繊維上にこの軽微なマークを残さない場合は、2つの後続の逆刺81を切起したために縫合糸体部82内に残された2つの後続のカットアウト窪みCDの2つのそれぞれの末端Tを結んだ線と平行であることによって線Mの決定が可能である。逆刺81を切り込んだ後、逆刺付き縫合糸80を万力から外してねじりを戻し縫合糸80がフリーの状態になったときに、線Mは縫合糸体部82上で逆刺付き縫合糸80の周りにスパイラルを描き、スパイラルの角度αが形成される。
【0118】
具体的にスパイラル角αの計測では、Optem Zoom 100カスタム顕微鏡を、リングライト照明を60に、且つバックライト照明を粗調整12と微調整10に設定した。さらに、イメージング解析システム・ソフトウェアを使用した。次いで、逆刺付き縫合糸の外側表面と線Mとの間でスパイラル角αを計測した。その平均値は、10回の反復計測(そのうちの5回は左側の逆刺グループ、またそのうちの5回は同じ縫合糸の右側の逆刺グループの計測)について計算した。
【0119】
次いで、逆刺付き縫合糸80を、縫合糸80の一方の端部を固定位置にクランプした状態でねじり付与装置内に装着した。縫合糸80の他方の端部を、逆刺81が整列するまでねじりが挿入されるように回転させた。次に逆刺付き縫合糸80に関して、2つの隣接する逆刺81の間の長手方向の切り込み距離Pを、2つの後続の逆刺81を切起したために縫合糸体部82内に残された2つの後続のカットアウト窪みCDの2つのそれぞれの末端T間で顕微鏡的に計測した。その平均値は、10回の反復計測(そのうちの5回は左側の逆刺グループ、またそのうちの5回は同じ縫合糸の右側の逆刺グループの計測)について計算した。
【0120】
これらの結果を以下の表7A、表7B、表7C、及び表7Dに要約している。
【0121】
【表2】

【0122】
【表3】

【0123】
【表4】

【0124】
【表5】

【0125】
さらに、約0.018インチ(約0.457mmであり、サイズ0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)の直径を有する幾つかの追加的な双方向型のツイスト切り込みで多重スパイラルの逆刺付き縫合糸に関して、角度αの数回の追加の計測を実施した。その平均値は16.87であり、またその標準偏差は±0.85であった。
【0126】
さらに、逆刺切り込み角度θ、逆刺長さL、逆刺切り込み深度D、及び切り込み距離Pの計測を、約0.0115インチ(約0.292mmであり、これはサイズ3−0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)の直径を有する縫合糸80などの3つの追加的な双方向型のツイスト切り込みで多重スパイラルの逆刺付き縫合糸に関して実施し、且つスパイラル角αに関する計測を、この3つの追加的な逆刺付き縫合糸のうちの2つに関して実施した。さらに、逆刺切り込み角度θ、逆刺長さL、逆刺切り込み深度D、切り込み距離P、及びスパイラル角αの計測を、約0.015インチ(約0.381mmであり、サイズ2−0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)の直径を有する縫合糸80などの3つの追加的な双方向型のツイスト切り込みで多重スパイラルの逆刺付き縫合糸に関して実施した。これらの結果を以下の表7E、表7F、表7G、表7H、表7I、及び表7Jに要約している。
【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
【表8】

【0130】
【表9】

【0131】
【表10】

【0132】
【表11】

【0133】
上述の試験対象逆刺付き縫合糸と同様であるがポリジオキサノンから紡ぎ出されており、且つ約0.018インチ(約0.457mmであり、サイズ0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)の直径を有する単一長繊維から製作された、幾つかの別のツイスト切り込み多重スパイラル逆刺付き縫合糸に関して追加的な計測を実施した、ただし、これら別の逆刺付き縫合糸は、異なる切り込み装置(すなわち、切り込み工程と工程の間でねじりを加えた長繊維に沿って長手方向に移動を受けていると共に、逆刺の切り起しのためにさまざまな切り込みを行うようにコンピュータを用いて制御を受ける1つのブレードを備えた装置)を用いて切られた。これら別の逆刺付き縫合糸はさらに、直線引張り強さ及びセーム布閉鎖強度に関しても試験した。(セーム布閉鎖強度の実施方法に関する検討については、図13A及び図13Bに関連して以下で見ることができる)。これら別の逆刺付き縫合糸に関する結果については、以下の表7K〜表7Zに要約している。
【0134】
【表12】

【0135】
【表13】

【0136】
【表14】

【0137】
【表15】

【0138】
【表16】

【0139】
【表17】

【0140】
【表18】

【0141】
【表19】

【0142】
【表20】

【0143】
【表21】

【0144】
【表22】

【0145】
【表23】

【0146】
【表24】

【0147】
【表25】

【0148】
【表26】

【0149】
【表27】

【0150】
上で指摘した計測のすべては双方向型のツイスト切り込み多重スパイラル逆刺付き縫合糸に関して実施したが、逆刺長さL、逆刺切り込み深度D、逆刺切り込み角度θ、及び/又は切り込み距離Pに関する計測の以下で指摘する望ましい範囲は、本明細書に記載した発明したさまざまな別の逆刺付き縫合糸についても同じとすべきである。
【0151】
逆刺付き縫合糸直径SDに対する切り込み長さLの適当な比は、約0.2から約2の範囲であり、さらに好ましくは約0.4から約1.7の範囲であり、またさらに好ましくは約0.8から約1.5の範囲である。しかし、非常に適した逆刺付き縫合糸では、約1から約0.2の逆刺付き縫合糸直径SDに対する切り込み長さLの比を有することがあり、このため、縫合糸直径SDに対する可能な最も高い逆刺高さ(逆刺先端85の縫合糸体部82から上への高さ)はこれに対応して約1から約0.2の範囲となる。(この可能な最も高い逆刺高さは逆刺長さLと同じである)。さらに、逆刺付き縫合糸直径SDに対する切り込み深度Dの適当な比は約0.05から約0.6の範囲であり、さらに好ましくは約0.1から約0.55の範囲であり、また、さらに好ましくは約0.2から約0.5の範囲である。
【0152】
しかしながら、長さLは最終の使用目的に応じてさまざまとすることが望ましい(より大きな逆刺の方が脂肪組織や軟部組織のある種の組織タイプを結合させるのにより適しており、他方より小さい逆刺の方が繊維組織などの別のタイプの組織を結合させるのにより適しているためである)。図11に関して以下でより詳細に検討するように、同じ縫合糸上に大型の逆刺、中型の逆刺及び/又は小型逆刺を組み合わせて配置させた逆刺構成が望ましいようなケース(例えば、異なる層構造を有する組織に関して逆刺付き縫合糸を利用する場合)も存在する。
【0153】
逆刺と細長い縫合糸体部との間に形成される切り込み角度θは、約140度から約175度の範囲であることが望ましく、また約145度から約173度の範囲とすることがさらに好ましい。すべての逆刺に関して最も好ましい切り込み角度θは約150°から約170°の範囲である。
【0154】
例えば、サイズ0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい直径が約0.018インチ(約0.457mm)のポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸では、その好ましい逆刺長さLは0.45mmであり、その好ましい逆刺深度Dは0.2mmであり、且つその好ましい逆刺切り込み角度は153度であろう。
【0155】
2つの任意の逆刺間の長手方向の間隔は、一般に、縫合糸に沿ってできるだけ多くの逆刺を作成するという目標に沿って実施されており、またこの長手方向の間隔は逆刺付き縫合糸が安定性を維持しながら組織を引き留めさせる能力に関する1つのファクターとなっている。逆刺がより離れるように離隔させると、組織引き留め能力が低下する。しかしながら、逆刺がより接近するような間隔にすると、長繊維の保全性が損なわれることがあり、これによって逆刺のめくれが戻される傾向を生じ、さらに縫合糸の引張り強さが低下することにつながる可能性がある。
【0156】
一般に、逆刺付き縫合糸直径SDに対する切り込み距離Pの適当な比は、約0.1から約6の範囲であり、さらに好ましくは約0.5から約4.5の範囲であり、また、さらに好ましくは約1.0から約3.5の範囲である。非常に適した逆刺付き縫合糸は、その有する逆刺付き縫合糸直径SDに対する切り込み距離Pの比が約1.5から約0.2であり、これにより切り込み距離Pは(重複式逆刺の実施例に関しては特に)約0.1程度となる(これについては、図12A、図12B、図12C、及び図12Dに関連して以下でさらに詳細に検討することにする)。
【0157】
さらに、ツイスト切り込み多重スパイラル逆刺付き縫合糸に関する線Mと細長い縫合糸体部の長手方向との間のスパイラル角αは、典型的には、約5度から約25度の範囲となり、またさらに好ましくは約7度から約21度の範囲となる。ツイスト切り込み多重スパイラル逆刺付き縫合糸に関するすべての逆刺に対する最も好ましい角度αは約10°から約18°である。
【0158】
ここで図8を見ると、本発明の別の実施例である縫合糸90を表している。縫合糸90は、断面が概ね円形の細長い体部92を含んでいる。細長い体部92は組織を貫通するために第1及び第2の尖った端部94、96で終わっている。端部94、96のうちの一方又は両方は、組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。さらに、縫合糸90はランダム配列で配列された複数の近接離隔した逆刺97を含んでいる。
【0159】
縫合糸90は、上述したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、上で検討した縫合糸の場合と同じ切り込み装置を用いて製作されてもよい。180度配列(縫合糸1、10)、120度配列(縫合糸30、40)、及び/又はツイスト切り込み多重スパイラル配列(縫合糸60、70、80)を製作するための上述の方法を組み合わせることによって、極めてランダムな逆刺配列を有する逆刺付き縫合糸90が得られる。このランダム配列の利点は、その数多くの逆刺角度によって組織に対する優れた引き留めを提供できると共に、これにより優れた傷口保持特性を提供できることである。ランダム配列では、その逆刺付き縫合糸は、上で指摘したRuffの米国特許第5342376号に示された装置などの挿入装置を用いて組織内に挿入されることになる。
【0160】
図9は、本発明の別の実施例である逆刺付き縫合糸100の断面側面図を表している。縫合糸100は概ね円形の断面をもつ細長い縫合糸体部102を含んでいる。さらに、縫合糸体部102は、複数の近接離隔した逆刺107をその上に配置して有している。各逆刺107は、逆刺下面108がギザギザ又は波形となるような逆刺構成を有している。縫合糸端部(図示せず)のうちの一方又は両方は組織を貫通させるために尖らせられており、また一方又は両方は組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。
【0161】
縫合糸100は、上述したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など上で検討した縫合糸の場合と同じ切り込み装置を用いて製作されてもよい。ギザギザの下面108を有する逆刺107は、単一長繊維の体部の中に逆刺を切り起こすときに切り込み装置の切り込みブレードを揺動又は振動させることによって達成される。本明細書に記載している本発明の逆刺付き縫合糸は何れも、ギザギザの又は波形の下面を含んだ構成をもつ逆刺を有することができるように意図している。
【0162】
ここで図10A及び図10Bを参照すると、本発明の別の実施例である逆刺付き縫合糸110について、図10Aでは斜視図で、また図10Bでは上面図で表している。縫合糸110は概ね円形の断面を有する細長い縫合糸体部112を含んでいる。さらに、縫合糸体部112は逆刺先端117(簡明とするため逆刺115を1つだけ図示した)を有する複数の近接離隔した逆刺115をその上に配置して有している。逆刺115は、逆刺115が縫合糸体部112に取り付けられている場所である弓形の基部119を備えた構成を有している。縫合糸端部(図示せず)のうちの一方又は両方は組織を貫通させるために尖らせられており、また一方又は両方は組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。
【0163】
図10C及び図10Dは、それぞれの図10Bの線10C−10C及び線10D−10Dに沿って切った断面図である。図10C及び図10Dによってさらに、基部119から先端117の方に行くほど逆刺115がより薄くなっていることが分かる。
【0164】
縫合糸110は、上述したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、上で検討した縫合糸の場合と同じ切り込み装置を用いて製作されてもよい。弓形の基部119を有する逆刺115を実現するために、切り込み装置には弓形の基部119に対する対応した弓形をした端部を有する切り込みブレードが設けられている。
【0165】
本明細書に記載している本発明の逆刺付き縫合糸は何れも、弓形の基部を含んだ構成を備えた逆刺を有することができるように意図している。この弓形の基部では、平坦で直線的な基部の場合と比較して組織引き留めが強化されることになる。しかしながら、その基部を、円錐形の逆刺から得られるような、円形や長円形とすることは、組織引き留めが低下する可能性があるため望ましくない。
【0166】
図11には、本発明の別の実施例でありその全体を番号120で示す逆刺付き縫合糸の断面側面図を表している。縫合糸120は断面が概ね円形である細長い体部122を含んでいる。細長い体部122は端部124で終わっている。端部124は組織を貫通させるために尖らせられており、また端部124は組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。(他方の端部は図示していないが、同じく組織を貫通させるために尖らせることがあると共に、組織を貫通するために外科用針を備えることがある)。
【0167】
さらに、縫合糸120は複数の近接離隔した逆刺125と、複数の近接離隔した逆刺127と、複数の近接離隔した逆刺129と、を含んでいる。逆刺125は、逆刺127と比較して比較的小さいサイズで比較的短い逆刺長さを有しており、また逆刺127は逆刺129と比較して比較的中間的なサイズで比較的中間的な逆刺長さを有しており、また逆刺129は比較的大きなサイズで比較的長い逆刺長さを有している。
【0168】
縫合糸120は、上で指摘したGenovaの米国特許出願第09/943733号に記載された切り込み装置など、上述の縫合糸の製作の場合と同じ切り込み装置を用いて製作されてもよい。切り込み中における縫合糸長繊維内へのブレードの移動量を変更することによって、さまざまな外科的用途向けに可変のサイズを設計する場合に、所望によりその逆刺切り込み長さをより長くしたり、より短くしたりして、互いにサイズが異なる逆刺125、127、及び129からなる3つの組のそれぞれが得られる。この逆刺サイズはまた横断方向にもさまざまな値であってもよく、これにより逆刺の基部は短いか、中間的か、又は長くてもよいが、逆刺基部は典型的には縫合糸直径の約1/4未満である。
【0169】
例えば、脂肪や軟部組織を結合させるには、比較的より大きい逆刺が望ましく、また繊維組織を結合させるには、比較的より小さい逆刺が望ましい。同じ縫合糸上で大きな逆刺、中間的な逆刺及び/又は小さい逆刺を組み合わせて使用すると、各組織の層に合わせて逆刺サイズを特注生産する際に確実に最大引き留め特性を得るのに役立つ。縫合糸体部122内にサイズが異なる逆刺(図示せず)の組を2つだけ切り起こしてもよく、或いはその最終の使用目的に応じて所望により、逆刺125、127、及び129の組について図示したように3つのサイズを超える4種類、5種類、6種類、或いはこれを超えるさまざまなサイズの組をもつ追加的な逆刺組(図示せず)を縫合糸体部122内に切り起こしてもよい。さらに、縫合糸120は逆刺が単一指向性であるように図示しているが、本発明に従った可変のサイズの構成を有する逆刺を備えた逆刺付き縫合糸は、さらに、双方向型の逆刺付き縫合糸やランダムな逆刺付き縫合糸、或いは本明細書に記載した別の発明した逆刺付き縫合糸のうちの任意のものであってもよいことを意図している。
【0170】
図12Aは、概ね円形の断面をもつ細長い体部132を有する逆刺付き縫合糸130を表している本発明の別の実施例の斜視図である。縫合糸端部(図示せず)のうちの一方又は両方は組織を貫通させるために尖らせられていてもよく、また端部のうちの一方又は両方は組織内に挿入するために1つの外科用針(図示せず)を備えてもよいことが企図されている。
【0171】
縫合糸130は、さらに、体部132から突き出ている複数の逆刺135を含んでおり、その少なくとも2つの長手方向で隣接する第1及び第2の逆刺135は、第1及び第2の逆刺135が(また容易に明らかなようにこれらの逆刺135が)体部132上に平坦に置かれると、その第1の逆刺135はその第2の逆刺135と重なり合った状態で体部132上に配置される。
【0172】
図12Bは、図12Aの重複配列の逆刺付き縫合糸130の重複した逆刺135の一部分の斜視図であり、また図12Cは図12Bの上面平面図である。図12Dは、図12Cの線12D−12Dに沿って切った断面図である。図12B、図12C、及び図12Dからさらに明瞭に理解できるように、逆刺135を切り起こす際に、上に重なっている第1の逆刺135は重なりを受けている第2の逆刺135の上面TSの一部となるように切り起こされ、以下同様となる。重なりを受けている第2の逆刺135の上面TSの一部は上に重なっている第1の逆刺135下面USの一部となる。
【0173】
したがって、重複配列では、第1の逆刺135と第2の逆刺135の間の逆刺切り込み距離は重なりを受けている第2の逆刺135の逆刺切り込み長さと比べてより短くてもよく、他方逆刺付き縫合糸では一般に、2つの逆刺間の逆刺切り込み距離≧逆刺切り込み長さ、である。特に重複式逆刺配列では、非常に適した逆刺付き縫合糸は逆刺付き縫合糸直径に対する逆刺切り込み距離の比が、逆刺切り込み距離Pは約0.1程度であることがあるため、約1.5から約0.2である。(逆刺切り込み長さ及び逆刺切り込み距離に関する説明については図7の検討を参照されたい)。この重複配列によって、体部132上で多数の逆刺135を接近して密集させることが可能となり、また典型的には、2つの逆刺間の逆刺切り込み距離≧逆刺切り込み長さ、である場合と比較して逆刺135は薄くなる。
【0174】
さらに、縫合糸130はその逆刺135が単一指向性であるように図示しているが、本発明による縫合糸130が本明細書に記載したような双方向性逆刺付き縫合糸であってもよいことを含むように意図している。
【0175】
図13A、図13B、図13C、及び図13Dは、各外科用針に逆刺付き縫合糸が取り付けられるようなさまざまな外科用針を表している。組織内への挿入を容易にするため、これらの外科用針は、例えば、Grangerの米国特許第5258013号に関連して上述のように、ポリマーによってコーティングされている。
【0176】
図13Aは長手方向で直線的な細長い針であると共に断面が概ね円形である外科用針N1を表している。外科用針N1は組織内に挿入するために尖った先端T1を有しており、またさらに穴H1を有している。外科用針N1は、逆刺付き縫合糸S1に対して、スウェージングなどによって取り付けられるように図示している。逆刺付き縫合糸S1は、上述の逆刺付き縫合糸の何れか(ただし、これに限らない)を含む逆刺付き縫合糸である。さらに、外科用針N1は横断方向で直径D1を有しており、これを約0.02インチ(約0.51mm)などの比較的細い直径であるとして図示している。スウェージングに関連して上で検討したように、外科用針N1は、縫合糸S1を穴H1に挿入した後、標準的な手順によって穴H1の周りでクリンプされて、組織の縫合のために縫合糸S1を適所に保持させてもよい。
【0177】
図13Bは長手方向で直線的な細長い針であると共に断面が概ね円形である外科用針N2を表している。外科用針N2は組織内に挿入するために尖った先端T2を有しており、またさらに穴H2を有している。外科用針N2は、逆刺付き縫合糸S2に対して、スウェージングなどによって取り付けられるように図示している。逆刺付き縫合糸S2は、上述の逆刺付き縫合糸の何れか(ただし、これに限らない)を含む逆刺付き縫合糸である。さらに、外科用針N2は横断方向で直径D2を有しており、これを約0.032インチ(約0.81mm)などの適度に細い直径であるが外科用針N1の直径D1ほどは細くないものとして図示している。スウェージングに関連して上で検討したように、外科用針N2は、縫合糸S2を穴H2に挿入した後、標準的な手順によって穴H2の周りでクリンプされて、組織の縫合で使用するために縫合糸S2を適所に保持させてもよい。
【0178】
図13Cは長手方向で湾曲した細長い針であると共に断面が概ね円形である外科用針N3を表している。外科用針N3は組織内に挿入するために尖った先端T3を有しており、またさらに穴H3を有している。外科用針N3は、逆刺付き縫合糸S3に対して、スウェージングなどによって取り付けられるように図示している。逆刺付き縫合糸S3は、上述の逆刺付き縫合糸の何れか(ただし、これに限らない)を含む逆刺付き縫合糸である。さらに、外科用針N3は横断方向で直径D3を有しており、これを約0.02インチ(約0.51mm)などの比較的細い直径であるとして図示している。スウェージングに関連して上で検討したように、外科用針N3は、縫合糸S3を穴H3に挿入した後、標準的な手順によって穴H3の周りでクリンプされて、組織の縫合で使用するために縫合糸S3を適所に保持させてもよい。
【0179】
図13Dは長手方向で湾曲した細長い針であると共に断面が概ね円形である外科用針N4を表している。外科用針N4は組織内に挿入するために尖った先端T4を有しており、またさらに穴H4を有している。外科用針N4は、逆刺付き縫合糸S4に対して、スウェージングなどによって取り付けられるように図示している。逆刺付き縫合糸S4は、上述の逆刺付き縫合糸の何れか(ただし、これに限らない)を含む逆刺付き縫合糸である。さらに、外科用針N4は横断方向で直径D4を有しており、これを約0.032インチ(約0.81mm)などの適度に細い直径であるが外科用針N3の直径D3ほどは細くないものとして図示している。スウェージングに関連して上で検討したように、外科用針N4は、縫合糸S4を穴H4に挿入した後、標準的な手順によって穴H4の周りでクリンプされて、組織の縫合で使用するために縫合糸S4を適所に保持させてもよい。
【0180】
針先端T1、T2、T3及びT4は、尖っているように図示しているが、よく知られているように、外科用針はテーパ型尖頭、テーパ型カット、ボール尖頭、切り込みエッジ、ダイヤモンド尖頭、細線、及びランセット尖頭などさまざまな種類の尖った先端を備えており、また、こうした針先端のすべて(ただし、これに限らない)を含むように意図している。逆刺付き縫合糸と共に使用する外科用針に関しては、テーパ型尖頭、テーパ型カット、及びダイヤモンド尖頭が好ましい針先端である。
【0181】
当技術分野でよく知られているように、従来の縫合糸(すなわち、無逆刺の縫合糸)と共に使用される外科用針の針直径は、重要ではないと考えられており、また細い従来の縫合糸と一緒に極めて太い外科用針が使用され、従来の縫合糸直径に対する外科用針直径の比は4:1、或いは4.43:1など、これよりさらに大きくすることが多い。
【0182】
しかし、本発明の外科用針/逆刺付き縫合糸の組み合わせ(直線的な針又は湾曲した針の何れか)に関しては、その外科用針がより細いほど、針直径がその逆刺付き縫合糸直径に近づくほどさらに細くなっていくような所望の針直径を有する外科用針/逆刺付き縫合糸がより好ましくなると共に、この針直径は細い逆刺付き縫合糸直径と比べてさらに細くされてもよい。
【0183】
本発明では一般に、傷口を縫い合せて閉じる際に組織を接近させるためには、比較的太い外科用針を逆刺付き縫合糸に通すのと比べて、比較的細い外科用針を逆刺付き縫合糸に取り付ける方がより好ましい。その理由は、比較的細い外科用針を逆刺付き縫合糸に取り付けると、組織内での逆刺のかみ合いを大きくすることができ、またしたがって、比較的太い外科用針を用いて縫合し終えた接近させた組織に対して与えられる閉鎖強度と比較した場合に、閉じた傷口の相対する面が引き離されるのを防止するように縫合し終えた接近させた組織に対してより適正な閉鎖強度を提供することができる。
【0184】
外科用針を逆刺付き縫合糸に取り付ける組み合わせの最も重要な特徴は、その端部にドリル加工などによって穴又はチャンネルをつくるためにその外科用針直径を十分な幅にし、これによってこの穴又はチャンネル内への逆刺付き縫合糸の挿入を可能にするべきであることにある。しかしながら、逆刺付き縫合糸直径に対する外科用針直径の比が約3:1以下である限りにおいて、外科用針の直径を増大させると、外科用針は依然として適である。
【0185】
したがって、直線的な針又は湾曲した針の何れかに関する逆刺付き縫合糸直径に対する外科用針直径の望ましい比は約3:1以下であり、さらに好ましくは約2:1以下であり、最も好ましくは約1.8:1以下である。さらに、特にチャンネル針を利用する場合、逆刺付き縫合糸直径に対する外科用針直径の比は約1:1以下程度、或いはこれよりさらに小さくてもよい(例えば、約0.9:1以下や約0.8:1以下、或いは約0.5:1程度)。当業者であれば、極めて細い針では組織挿入を損なう可能性があるような局所的な弱さを改善するように注意すべきであることを理解されよう。
【0186】
その何れもが本発明に適した逆刺付き縫合糸直径に対する外科用針直径の比を有する、細い外科用針の閉鎖強度について以下のように試験をした。
【0187】
約1.25インチ(約32mm)の長さを有する傷口について、0.6インチ(約15.2mm)の厚さを有するさまざまなセーム皮片(U.S.Chamois(Florida州)による製造)を切った。
【0188】
第1の試料は、逆刺付き縫合糸と一緒にスウェージングさせたドリル加工端部の外科用針(Sulzle Companyから購入した品番382077A)を用いて傷口のそれぞれの縁を一緒に縫い合せることによってセーム皮片から製作した。換言すると、針穴内への逆刺付き縫合糸の挿入後に、穴の周りでこの針をクリンプし、縫い合せ中に逆刺付き縫合糸を確保した。傷口を縫い合せて閉じた後、このセーム皮片は、縫い合せ傷口がその長さの中間にあり且つその幅を横断するようにして、長さが約3インチ(約76mm)で幅が約1.25インチ(約32mm)の矩形の形状まで切った。針は、約22mmの長さと約0.020インチ(約0.51mm)の比較的細い直径とを有するテーパ尖頭の湾曲した外科用針(円の3/8)であった。
【0189】
次いで、同じ縫い合せ方法を使用し、同じ種類の逆刺付き縫合糸と一緒にスウェージングさせたドリル加工端部の外科用針(Sulzle Companyから購入した品番383271A)を用いて傷口のそれぞれの縁を一緒に縫い合せる(すなわち、逆刺付き縫合糸を穴の中に挿入した後に針穴の周りでこの外科用針をクリンプし、縫い合せ中に逆刺付き縫合糸を確保する)ことによって、第2の試料を別のセーム皮片から製作した。第2の試料に関しては、その針は、約22mmの長さと約0.032インチ(約0.81mm)の適当な細い直径(ただし、第1の試料に対して使用した針の直径ほど細くない)とを有するテーパ尖頭の湾曲した外科用針(円の3/8)であった。
【0190】
各試料に対する各逆刺付き縫合糸は、各逆刺付き縫合糸が約0.018インチ(約0.457mm)の縫合糸直径ではなく、直径が約0.0115インチ(約0.291mmであり、サイズ3−0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)である点を除けば図6Aの縫合糸70と同様の双方向型のツイスト切り込み多重スパイラルのポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸であった。
【0191】
縫い合せたセーム布に関する第1の試料と第2の試料の両者についてTest Resources Universal Tester(Model 200Q)を用いて閉鎖強度を試験した。各試料はそれぞれのギザギザの2つのジョーによって把持させた。次いで、各試料を、完全に破裂するまで毎分約10インチ(毎分約254mm)の速度で長手方向に引っ張った。傷口の完全な分断が閉鎖強度として記録される前に、ポンドを単位としたピーク荷重に到達した。この結果、第1の試料(約0.020インチ、約0.51mmの比較的細い直径を有する針を用いて縫合した)は傷口の分断が生じて、その試料が元の2つの部分に引き離されるまで5.88ポンドを受けており、他方第2の試料(約0.032インチ、約0.81mmの適度に細い直径であるが第1の試料の針ほどは細くない直径を有する針を用いて縫合した)は傷口の分断が生じて、その試料が元の2つの部分に引き離されるまでわずか2.88ポンドしか受けなかった。
【0192】
この結果を以下の表13Aに要約している。
【0193】
【表28】

【0194】
さらに、ラットの皮膚のさまざまな細片を切って、縫い合せ、逆刺付き縫合糸を一緒にスウェージングしたより多くの外科用針について以下のようにして試験した。
【0195】
殺したばかりの、体重がそれぞれ約600〜700gの3匹のSprague−Dawleyラットを使用した。傷口を作成するために各ラットの背面上に、2つの全厚的な皮膚切開を実施した。各傷口は長さが約4cmであり脊椎と平行とした。
【0196】
各ラットにおいて、2つの傷口のうちの一方は、3/8円であるSulzle品番382273Aであるドリル加工端部の湾曲した外科用針を用いて閉じた。針は18mmの長さを有し、約0.022インチ(約0.56mm)の直径を有していた。さらに、針はテーパ尖頭の針先端を有していた。その針先端は、ラット組織の貫通が容易となるように、テーパ切断針先端に近似させるために3−小平面カットとなるまで研磨されていた。この針は逆刺付き縫合糸にスウェージングされた。
【0197】
この2つの傷口のうちの他方は、同じ縫合技法であるが、3/8円であるSulzle品番832679Aであるドリル加工端部の湾曲した外科用針を用いて閉じた。この針は約18mmの長さを有し、約0.026インチ(約0.66mm)の直径を有していた。さらに、この針はダイヤモンド尖頭の針先端を有していた。この針は逆刺付き縫合糸に対してスウェージングされた。
【0198】
各試料の各逆刺付き縫合糸は、各逆刺付き縫合糸が、約0.018インチ(約0.457mm)の縫合糸直径ではなく約0.015インチ(約0.381mmであり、サイズ2−0の合成吸収性縫合糸に関するUSP要件と比べて若干大きい)の直径を有する点を除けば図6Aの縫合糸70と同様の双方向型のツイスト切り込み多重スパイラルのポリジオキサノンの逆刺付き縫合糸であった。
【0199】
縫い合せた各傷口について、計測寸法が概ね約4cm×約4cmの正方形をした組織試料を、その縫い合せ傷口が中間で2つの相対する組織縁と並行するような状態で取り出して閉鎖強度試験を行った。
【0200】
各傷口を広げるための力は、Test Resources Universal Tester(Model 200Q)を用いて決定した。各組織試料について、各縫い合せ傷口と並行した2つの縁をこのテスターの2つのそれぞれのギザギザのジョー内に装着させた。
【0201】
次いで、各試料を、完全な破裂が生じるまで毎分約2インチ(毎分約51mm)の速度で長手方向に引っ張った。傷口の完全な分断が生ずる前に発生した最大の力を閉鎖強度として記録した。
【0202】
この結果を、約0.022インチ(約0.56mm)の直径を有すると共に逆刺付き縫合糸に対してスウェージングさせた針を用いて閉じた第1組の3つの傷口から平均化した。さらに、この結果は、約0.026インチ(約0.66mm)の直径を有すると共に逆刺付き縫合糸に対してスウェージングさせた針を用いて閉じた第2組の3つの傷口から平均化した。
【0203】
これらの結果を以下の表13Bに要約している。
【0204】
【表29】

【0205】
したがって、逆刺付き縫合糸直径に対する外科用針直径の比が小さいほど、逆刺付き縫合糸に取り付けた外科用針を用いて閉じた傷口を縫合する際の閉鎖強度がそれだけ良好となる。一般に、外科用針が細いほど、傷つきやすい組織において特に閉鎖強度がそれだけ良好となるが、筋肉や腸などの強靱な組織ではより太い針とすることが好ましい。したがって、重要なことは、針が太いか細いか、或いはこの中間の何れにあるかに依らず、逆刺付き縫合糸直径に対する外科用針直径の比が約3:1以下(さらに好ましくは、約2:1以下)とするべきであることである。
【0206】
本発明について、本発明の例示的な実施例の幾つかのみに関して詳細に図示し且つ記載してきたが、当業者であれば、本発明を開示した特定の実施例に限定させることを意図したものでないことを理解されよう。開示した実施例に対しては、特に上述した教示に照らして、本発明の新規的な教示や利点を実質的に逸脱することなくさまざまな修正、省略、及び追加を実施することができる。例えば、本発明の逆刺付き縫合糸は単独で使用することや、組織の位置の保持を支援するためのステープル及び/又は皮膚接着剤などの別の閉鎖方法と一緒に使用することが可能である。したがって、添付の特許請求の範囲による規定に従った本発明の精神及び趣旨の域内に含めることができるような修正、省略、追加、及び等価をすべて包含するように意図している。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1A】逆刺が180度の千鳥型離隔で配置された逆刺付き縫合糸を表した本発明の一実施例の側面図である。
【図1B】図1Aの逆刺付き縫合糸の線1B−1Bに沿った断面図である。
【図2A】逆刺が180度の千鳥型離隔で配置された双方向型の逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の側面図である。
【図2B】図2Aの逆刺付き縫合糸の線2B−2Bに沿った断面図である。
【図3A】逆刺が120度の千鳥型離隔で配置された逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の側面図である。
【図3B】図3Aの逆刺付き縫合糸の線3B−3Bに沿った断面図である。
【図4A】逆刺が120度の千鳥型離隔で配置された双方向型の逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の側面図である。
【図4B】図4Aの逆刺付き縫合糸の線4B−4Bに沿った断面図である。
【図5A】その逆刺をツイスト切り込み多重スパイラル配列で配置させた逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の側面図である。
【図5B】図5Aの逆刺付き縫合糸の線5B−5Bに沿った断面図である。
【図6A】逆刺がツイスト切り込み多重スパイラル配列で配置された双方向型の逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の側面図である。
【図6B】図6Aの逆刺付き縫合糸の線6B−6Bに沿った断面図である。
【図7A】図6Aの逆刺付き縫合糸と同様であるが拡大断面図として表している、逆刺がツイスト切り込み多重スパイラル配列で配置された双方向型の逆刺付き縫合糸の断面側面図である。
【図7B】図7Aに示した断面側面図について、逆刺の間の切り込み距離を計測するために逆刺が整列するように回転させ且つクランプさせた断面側面図である。
【図8】逆刺がランダム配列された逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の側面図である。
【図9】下面が波形又はギザギザになった逆刺を有する逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の断面側面図である。
【図10A】弓形の基部を備えた逆刺を有する逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の断面斜視図である。
【図10B】図10Aの逆刺付き縫合糸の断面上面図である。
【図10C】図10Bの線10C−10Cに沿った断面図である。
【図10D】図10Bの線10D−10Dに沿った断面図である。
【図11】さまざまなサイズの逆刺を有する逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の断面側面図である。
【図12A】逆刺が重複配列された逆刺付き縫合糸を表した本発明の別の実施例の断面斜視図である。
【図12B】図12Aの縫合糸の重複した逆刺の一部分の斜視図である。
【図12C】図12Bの逆刺の一部分の平面図である。
【図12D】図12Cの線12D−12Dに沿った断面図である。
【図13A】逆刺付き縫合糸を取り付けるためのさまざまな外科用針のうちの1つの図である。
【図13B】逆刺付き縫合糸を取り付けるためのさまざまな外科用針のうちの1つの図である。
【図13C】逆刺付き縫合糸を取り付けるためのさまざまな外科用針のうちの1つの図である。
【図13D】逆刺付き縫合糸を取り付けるためのさまざまな外科用針のうちの1つの図である。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸であって、(a)第1の端部及び第2の端部を有する細長い体部と、(b)前記体部から突き出ている複数の逆刺と、を備えており、各逆刺は一方向に向いていると共に、組織内においてその逆刺が向いている方向と反対の方向への縫合糸の動きに逆らうようにされており、前記逆刺は前記体部上で、千鳥配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、重複配列、ランダム配列、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された配列を有している逆刺付き縫合糸。
【請求項2】
前記逆刺は、千鳥配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、重複配列、又はこれらの組み合わせの配列を成しており、前記逆刺のすべてが前記第1の端部と前記第2の端部のうちの一方の方向に向いている、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項3】
前記逆刺は、千鳥配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、重複配列、又はこれらの組み合わせの配列を成しており、該逆刺付き縫合糸は少なくとも第1の逆刺付き部分と第2の逆刺付き部分とを有しており、前記第1の部分の逆刺は前記第1の端部の方向に向いていると共に前記第2の部分の逆刺は前記第2の端部の方向に向いている、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項4】
前記千鳥配列は、前記逆刺のうちの第2の組から約180度半径方向に離隔した前記逆刺のうちの第1の組を含んでいる、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項5】
前記千鳥配列は、前記逆刺のうちの第2の組から約120度半径方向に離隔した前記逆刺のうちの第1の組と、前記逆刺のうちの第3の組から約120度半径方向に離隔した前記逆刺のうちの前記第2の組とを含んでいる、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項6】
前記逆刺はツイスト切り込み多重スパイラル配列を成しており、該逆刺付き縫合糸は、前記逆刺が縫合糸長繊維から切り起こされて逆刺付きの縫合糸を製作する際に1インチあたり約2回から約17回ねじられた部分を有する縫合糸長繊維から製作されている、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項7】
前記逆刺はツイスト切り込み多重スパイラル配列を成しており、該縫合糸は約5度から約25度の範囲にあるスパイラル角αを有している、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項8】
縫合糸が約7度から約22度の範囲にあるスパイラル角αを有している、請求項7に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項9】
縫合糸が約12度から約18度の範囲にあるスパイラル角αを有している、請求項8に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項10】
前記逆刺は、1つが上に重なり、1つが下に重なっている少なくとも2つの隣接する逆刺に関して、前記上に重なっている逆刺が1つの下面を有し、前記下に重なっている逆刺が1つの上面を有するような重複配列を成しており、前記上に重なっている逆刺の前記下面の一部は前記下に重なっている逆刺の前記上面の一部から導出されている、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項11】
前記逆刺は、1つが上に重なり、1つが下に重なっている少なくとも2つの隣接する逆刺に関して、前記上に重なっている逆刺及び前記下に重なっている逆刺のそれぞれは1つの逆刺切り込み長さを有しており、前記上に重なっている逆刺及び前記下に重なっている逆刺はこれらの間に前記下に重なっている逆刺の逆刺切り込み長さより短い逆刺切り込み距離を有する重複配列を成している、請求項10に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項12】
縫合糸が、生体吸収性材料、非吸収性材料、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された材料から製作されている、請求項1に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項13】
前記生体吸収性材料は、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されている、請求項12に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項14】
前記非吸収性材料は、ポリマー、金属、金属合金、天然繊維、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されている、請求項12に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項15】
前記ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されている、請求項14に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項16】
人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸であって、該縫合糸は(a)第1の端部及び第2の端部と1つの直径とを有する細長い体部と、(b)その各々が1つの方向に向いていると共に組織内においてその逆刺が向いている方向と反対の方向への縫合糸の動きに逆らうようにされている前記体部から突き出ている複数の逆刺と、を備えており、
(I)前記逆刺は、前記体部上で、千鳥配列、ツイスト切り込み多重スパイラル配列、重複配列、ランダム配列、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された配列を有しており、
(II)前記逆刺は、約140度から約175度の範囲にある逆刺切り込み角度θと、前記縫合糸直径に対するその深度の比が約0.05から約0.6の範囲にある逆刺切り込み深度と、前記縫合糸直径に対するその切り込み長さの比が約0.2から約2の範囲にある逆刺切り込み長さと、前記縫合糸直径に対するその切り込み距離の比が約0.1から約6の範囲にある逆刺切り込み距離と、波形の逆刺下面と、弓形の逆刺基部と、各逆刺組がそれ以外の組の逆刺サイズと異なる逆刺サイズを有するような少なくとも2つの逆刺組と、これらの組み合わせと、からなる群より選択された構成を有している、
逆刺付き縫合糸。
【請求項17】
縫合糸が、生体吸収性材料、非吸収性材料、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された材料から製作されている、請求項16に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項18】
前記生体吸収性な材料は、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されている、請求項17に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項19】
前記非吸収性材料は、ポリマー、金属、金属合金、天然繊維、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されている、請求項17に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項20】
前記ポリマーは、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエステル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されている、請求項19に記載の逆刺付き縫合糸。
【請求項21】
人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸であって、該縫合糸は(a)第1の端部、第2の端部、及び1つの直径を有する細長い体部と、(b)がある1つの方向に向いていると共に組織内においてその逆刺が向いている方向と反対の方向への縫合糸の動きに逆らうようにされている前記体部から突き出ている複数の逆刺と、を備えており、
(I)前記逆刺は、前記体部上で千鳥配列を含む配列を有しており、
(II)前記逆刺は、(i)約140度から約175度の範囲にある逆刺切り込み角度θと、(ii)前記縫合糸直径に対するその深度の比が約0.05から約0.6の範囲にある逆刺切り込み深度と、(iii)前記縫合糸直径に対するその切り込み長さの比が約0.2から約2の範囲にある逆刺切り込み長さと、(iv)前記縫合糸直径に対するその切り込み距離の比が約0.1から約6の範囲にある逆刺切り込み距離と、を含む構成を有している、
逆刺付き縫合糸。
【請求項22】
人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸であって、該縫合糸は(a)第1の端部、第2の端部、及び1つの直径を有する細長い体部と、(b)各々が1つの方向に向いていると共に組織内においてその逆刺が向いている方向と反対の方向への縫合糸の動きに逆らうようにされている前記体部から突き出ている複数の逆刺と、を備えており、
(I)前記逆刺は、前記体部上で約5°から約25°の範囲にあるスパイラル角αを有するツイスト切り込み多重スパイラル配列を含む配列を有しており、
(II)前記逆刺は、(i)約140度から約175度の範囲にある逆刺切り込み角度θと、(ii)前記縫合糸直径に対するその深度の比が約0.05から約0.6の範囲にある逆刺切り込み深度と、(iii)前記縫合糸直径に対するその切り込み長さの比が約0.2から約2の範囲にある逆刺切り込み長さと、(iv)前記縫合糸直径に対するその切り込み距離の比が約0.1から約6の範囲にある逆刺切り込み距離と、を含む構成を有している、
逆刺付き縫合糸。
【請求項23】
人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸であって、該縫合糸は(a)第1の端部、第2の端部、及び1つの直径を有する細長い体部と、(b)各々が1つの方向に向いていると共に組織内においてその逆刺が向いている方向と反対の方向への縫合糸の動きに逆らうようにされている前記体部から突き出ている複数の逆刺と、を備えており、
(I)前記逆刺は、前記体部上で重複配列を含む配列を有しており、
(II)前記逆刺は、(i)約140度から約175度の範囲にある逆刺切り込み角度θと、(ii)前記縫合糸直径に対するその深度の比が約0.05から約0.6の範囲にある逆刺切り込み深度と、(iii)前記縫合糸直径に対するその切り込み長さの比が約0.2から約2の範囲にある逆刺切り込み長さと、(iv)前記縫合糸直径に対するその切り込み距離の比が約0.1から約6の範囲にある逆刺切り込み距離と、を含む構成を有している、
逆刺付き縫合糸。
【請求項24】
人や動物の組織を接続するための逆刺付き縫合糸であって、該縫合糸は(a)第1の端部、第2の端部、及び1つの直径を有する細長い体部と、(b)各々が1つの方向に向いていると共に組織内においてその逆刺が向いている方向と反対の方向への縫合糸の動きに逆らうようにされている前記体部から突き出ている複数の逆刺と、を備えており、
(I)前記逆刺は、前記体部上でランダム配列を含む配列を有しており、
(II)前記逆刺は、(i)約140度から約175度の範囲にある逆刺切り込み角度θと、(ii)前記縫合糸直径に対するその深度の比が約0.05から約0.6の範囲にある逆刺切り込み深度と、(iii)前記縫合糸直径に対するその切り込み長さの比が約0.2から約2の範囲にある逆刺切り込み長さと、(iv)前記縫合糸直径に対するその切り込み距離の比が約0.1から約6の範囲にある逆刺切り込み距離と、を含む構成を有している、
逆刺付き縫合糸。

【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−517113(P2006−517113A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541835(P2004−541835)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/030674
【国際公開番号】WO2004/030520
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505113665)クイル メディカル、インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】