説明

逆止弁

【課題】逆止弁において、弁開時の特性に支障をきたすことなく、弁閉時のシール性を高める。
【解決手段】逆止弁の流路が閉鎖されるときに、樹脂製シール材が弁座25と弁体3の間に介在して密閉する。シール材は弁座25または弁体3の一方にはめ込まれて取り付けられている。さらに、電磁石を弁体3の弁座25の近くに取り付けて、通電時に磁力によって弁体3を吸引可能としてもよい。さらに、弁座25とは異なる位置で弁箱1内の流路を開閉可能な電磁弁と、弁座25および電磁弁の上流側と下流側の圧力差を検出する検出器を設け、逆止弁にかかる逆圧が所定の値以上になったときに電磁弁が閉止するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆止弁に係り、特に、原子力発電用空気ラインなどに設置されるのに好適で、弁閉時のシール性が高い逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電用空気ラインなどに設置される逆止弁のようにプラントにおいて二次側(下流側)流体の逆流を防止するための逆止弁では、弁箱側シート部および弁体側シート部がともに金属製であり、製造時の良好なシール性を長期にわたって維持することは困難であって、その信頼性は高いものではなかった。また、流体が気体であれば、シール性の維持はさらに困難であった。
【0003】
これに対して、逆止弁のシール部にゴムライニングや有機材料を用いて弁閉時のシール性を向上する技術が知られている(特許文献1ないし特許文献3参照)。また、永久磁石を用いてシール性を向上する技術が知られている(特許文献4および特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平9−26045号公報
【特許文献2】特開昭55−94968号公報
【特許文献3】実開平5−17277号公報
【特許文献4】特開平10−332007号公報
【特許文献5】特開平11−173443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1ないし特許文献3では、ゴムライニングや有機材料シール部をどのように取り付けるかについては具体的開示がない。また、特許文献4および特許文献5では、永久磁石を用いるため、弁開時の特性に支障をきたす可能性もある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、弁開時の特性に支障をきたすことなく、弁閉時のシール性を高めた逆止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る逆止弁は、弁座を有して流路を形成する金属製の弁箱と、前記弁箱内で移動可能であって、その移動によって前記弁座との間で前記流路を開閉する金属製の弁体と、前記流路が閉鎖されるときに前記弁座および弁体の間に介在して密閉するように前記弁座または弁体の少なくとも一方にはめ込まれて取り付けられた樹脂製シール材と、を有する。
【0007】
また、本発明に係る逆止弁の他の態様では、弁座を有して流路を形成する弁箱と、前記弁箱内で移動可能であって、その移動によって前記弁座との間で前記流路を開閉する弁体と、前記弁箱の前記弁座の近くに取り付けられて、通電時に磁力によって前記弁体を吸引可能な電磁石と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、逆止弁の弁開時の特性に支障をきたすことなく、弁閉時のシール性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、本発明に係る逆止弁の実施形態について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0010】
[第1の実施形態]
図1は本発明に係る逆止弁の第1の実施形態を示す縦断面図であり、図2は図1の逆止弁における弁座の一例を示す詳細縦断面図である。図1に示す逆止弁において、弁箱1内には、弁箱入口20から弁箱出口21につながる流路が形成され、移動可能な弁体3の移動によってこの流路が開閉できるように構成されている。弁体3にはアーム5が取り付けられ、アーム5は、弁箱1の弁座25よりも上方の位置に取り付けられたスピンドル4を軸として回動可能である。弁体3と接触する弁箱1の部分である弁座25には弁箱側シート2が取り付けられている。弁箱1、弁体3、アーム5などの主要部は金属製である。
【0011】
弁箱入口20が弁箱出口21よりも高圧力であるときは弁箱1内の流体が弁箱入口20側から弁箱出口21側に向けて弁体3を押すことによって流路を開き、流体が弁箱入口20から弁箱出口21に向けて流れる。逆に、弁箱入口20が弁箱出口21よりも低圧力であるときは弁箱1内の流体が弁箱出口21側から弁箱入口20側に向けて弁体3を押すことによって流路を閉じる。
【0012】
図2に示す構成例では、弁箱側シート2の弁体3に接する部分には、リング状のねじ込み式樹脂シート6が取り付けられている。この第1の実施形態では、弁体3は金属製であって、弁体3には樹脂製シール部材が取り付けられていない。
【0013】
この実施形態によれば、弁閉時に、ねじ込み式樹脂シート6と弁体3の金属製部分とが接触して押し合うことにより、漏洩を防止・抑制することができる。
【0014】
図3は図1の逆止弁における弁座の、図2と異なる例を示す詳細縦断面図である。この構成例では、弁箱側シート2の弁体3に接する部分に、リング状の押さえ込み式樹脂シート7が取り付けられている。
【0015】
図4は図1の逆止弁における弁座の、図2や図3と異なる例を示す詳細縦断面図である。この構成例では、弁箱側シート2の弁体3に接する部分に、リング状のOリングはめ込み式樹脂シート8が取り付けられている。
【0016】
図5は図1の逆止弁における弁座の、図2ないし図4と異なる例を示す詳細縦断面図である。この構成例では、弁箱側シート2の弁体3に接する部分に、リング状のライニング式樹脂シート9が取り付けられている。
【0017】
図3ないし図5の構成例においても、図2の場合と同様に、弁閉時に、樹脂製シール部材と弁体3の金属製部分とが接触して押し合うことにより、漏洩を抑制することができる。
【0018】
[第2の実施形態]
図6は本発明に係る逆止弁の第2の実施形態を示す縦断面図であり、図7は図6の逆止弁における弁体の一例を示す詳細縦断面図である。図6に示す逆止弁においては、弁箱1の弁座25には樹脂製シール部材が取り付けられておらず、弁体3に、図7に示すねじ込み式樹脂シート10が取り付けられている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0019】
この実施形態によれば、弁閉時に、ねじ込み式樹脂シート10と弁座25の金属製部分とが接触して押し合うことにより、漏洩を抑制することができる。
【0020】
図8は図6の逆止弁における弁体の、図7と異なる例を示す詳細縦断面図である。この構成例では、弁体3の弁座25に接する部分に、押さえ込み式樹脂シート11が取り付けられている。
【0021】
図9は図6の逆止弁における弁体の、図7や図8と異なる例を示す詳細縦断面図である。この構成例では、弁体3の弁座25に接する部分に、Oリング式はめ込み式樹脂シート12が取り付けられている。
【0022】
図10は図6の逆止弁における弁体の、図7ないし図9と異なる例を示す詳細縦断面図である。この構成例では、弁体3の弁座25に接する部分に、ライニング式樹脂シート13が取り付けられている。
【0023】
図8ないし図10の構成例においても、図7の場合と同様に、弁閉時に、樹脂製シール部材と弁座25の金属製部分とが接触して押し合うことにより、漏洩を抑制することができる。
【0024】
[第3の実施形態]
図11は本発明に係る逆止弁の第3の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態では、弁箱1の弁座25よりも上流側の圧力を検出する圧力検出器30が配置されている。また、弁座25に弁箱側シート2が配置され、この弁箱側シート2に電磁石14が組み込まれている。電磁石14に電流を流すためのケーブル31が、弁箱1を貫通し、電磁石電源(図示せず)が弁箱1の外側にあってケーブル31に接続されている。弁体3には永久磁石15が組み込まれており、弁閉の状態で電磁石14と永久磁石15が近接して対向するように配置されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0025】
このような構成で、弁閉時に電磁石14に通電することにより、電磁石14と永久磁石15が磁力によって互いに引き合うようにできる。これにより、弁閉時の漏洩を抑制することができる。また、圧力検出器30で正圧を検出したときに電磁石14の通電を止めることにより、弁開することができる。
【0026】
[第4の実施形態]
図12は本発明に係る逆止弁の第4の実施形態を示す縦断面図である。この実施形態では、弁箱1の弁座25よりも上流側に一次側圧力取り出し部40が配置され、弁箱1の弁座25よりも下流側に二次側圧力取り出し部41が配置されている。そして、一次側圧力取り出し部40と二次側圧力取り出し部41の圧力の差を検出する差圧検出器16が配置されている。さらに、弁箱1の弁座25よりも下流側で二次側圧力取り出し部41よりも上流側に電磁弁17が配置されている。その他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0027】
この実施形態によれば、差圧検出器16によって一次側圧力よりも二次側圧力の方が高いこと(逆圧)が検出されたときに、電磁弁17を閉じることにより、漏洩を抑制することができる。
【0028】
[他の実施形態]
以上説明した各実施形態は単なる例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
たとえば、第3の実施形態(図11)において、弁体に磁性体材料を用いることにより、永久磁石を省略することもできる。
【0030】
また、上記各実施形態の特徴を種々に組み合わせることもできる。
【0031】
たとえば、第1の実施形態の弁箱側樹脂シール部材と第2の実施形態の弁体側樹脂シール部材とを両方とも備えた逆止弁としてもよい。
【0032】
また、上記説明では、第3の実施形態(図11)および第4の実施形態(図12)は第1の実施形態(図1)を基にして変形した例を示しているが、図2ないし図5の構造例を基にして変形してもよい。さらに、第2の実施形態(図6ないし図10)を基にして変形してもよい。
【0033】
また、第3の実施形態において、第4の実施形態と同様に、二つの圧力取り出し部を設けて、差圧によって電磁弁の電源を操作することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る逆止弁の第1の実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1の逆止弁における弁座の一例を示す詳細縦断面図。
【図3】図1の逆止弁における弁座の図2と異なる例を示す詳細縦断面図。
【図4】図1の逆止弁における弁座のさらに異なる例を示す詳細縦断面図。
【図5】図1の逆止弁における弁座のさらに異なる例を示す詳細縦断面図。
【図6】本発明に係る逆止弁の第2の実施形態を示す縦断面図。
【図7】図6の逆止弁における弁体の一例を示す詳細縦断面図。
【図8】図6の逆止弁における弁体の図7と異なる例を示す詳細縦断面図。
【図9】図6の逆止弁における弁体のさらに異なる例を示す詳細縦断面図。
【図10】図6の逆止弁における弁体のさらに異なる例を示す詳細縦断面図。
【図11】本発明に係る逆止弁の第3の実施形態を示す縦断面図。
【図12】本発明に係る逆止弁の第4の実施形態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0035】
1:弁箱
2:弁箱側シート
3:弁体
4:スピンドル
5:アーム
6:ねじ込み式樹脂シート
7:押さえ込み式樹脂シート
8:はめ込み式樹脂シート
9:ライニング式樹脂シート
10:ねじ込み式樹脂シート
11:押さえ込み式樹脂シート
12:はめ込み式樹脂シート
13:ライニング式樹脂シート
14:電磁石
15:永久磁石
16:差圧検出器
17:電磁弁
20:弁箱入口
21:弁箱出口
25:弁座
30:圧力検出器
31:ケーブル
40:一次側圧力取り出し部
41:二次側圧力取り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座を有して流路を形成する金属製の弁箱と、
前記弁箱内で移動可能であって、その移動によって前記弁座との間で前記流路を開閉する金属製の弁体と、
前記流路が閉鎖されるときに前記弁座および弁体の間に介在して密閉するように前記弁座または弁体の少なくとも一方にはめ込まれて取り付けられた樹脂製シール材と、
を有する逆止弁。
【請求項2】
前記弁箱の前記弁座の近くに取り付けられて、通電時に磁力によって前記弁体を吸引可能な電磁石をさらに有すること、
を特徴とする請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記弁体に永久磁石が取り付けられていること、を特徴とする請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁座とは異なる位置で前記弁箱内の流路を開閉可能な電磁弁と、
前記弁座および電磁弁の上流側と下流側の圧力差を検出する検出器と、
をさらに有し、当該逆止弁にかかる逆圧が所定の値以上になったときに前記電磁弁が閉止するように構成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項5】
弁座を有して流路を形成する弁箱と、
前記弁箱内で移動可能であって、その移動によって前記弁座との間で前記流路を開閉する弁体と、
前記弁箱の前記弁座の近くに取り付けられて、通電時に磁力によって前記弁体を吸引可能な電磁石と、
を有する逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−8222(P2009−8222A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172125(P2007−172125)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】