説明

逆流防止器

本発明は、流体導管(3)に挿入可能な組込みケーシング(2)と、該組込みケーシング(2)のケーシング外周面に設けられた環状溝(5)に保持されており且つ組込みケーシング(2)と流体導管(3)との間をシールする少なくとも1つのシールリング(4)とを備えた逆流防止器(1,1′)に関する。本発明による逆流防止器の特徴は、逆流防止器(1,1′)が閉鎖されて、流出側で流体体積が遮断されると、シールリング(4)が圧力補償のためにシール位置から戻し力に抗して漏出位置へ運動可能であり、これにより、過剰な内部圧力の増大に抵抗するようになっている点にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体導管に挿入可能な組込みケーシングと、この組込みケーシングのケーシング外周面に設けられた環状溝に保持されており且つ組込みケーシングと流体導管との間をシールするシールリングとを備えた逆流防止器に関する。
【0002】
このような逆流防止器は、意図した通流方向とは逆方向での流体の逆流を防止するために、ガス又は水等の供給導管に挿入される。負圧が生じた場合に汚水が新鮮水供給導管に侵入しないようにするために、逆止弁を水道管に組み込むことも増えている。
【0003】
但し、このような逆止弁を温度調整弁の領域内で使用すると、低温水側又は高温水側の遮断時に、閉鎖された逆止弁とやはり閉じられた弁座との間に封入された水が外部の影響によって著しく加熱され、これにより、供給導管の最も弱い部分延いてはしばしば逆止弁に損傷をもたらすシステム圧が発生するまでに体積が増大するという問題がしばしば発生する。このことは、結果的に供給導管の閉鎖又はやはり不都合なクロスフローを生ぜしめる恐れがある。
【0004】
閉鎖体の端面で、側方流出開口を備えたフード形のアタッチメントを支持する逆止弁が公知である(国際公開第93/01435号パンフレット参照)。過剰圧力弁として働く前記アタッチメントの流出開口に通じるバイパス通路は弁閉鎖部材によって閉鎖されており、この弁閉鎖部材は、内部圧力が増大すると持ち上げられて、バイパス通路を逆流する流体に流出開口を解放する。但し欠点なのは、公知の逆流防止器がケーシング周面及び逆止弁の弁座において必要とされるシールを越えて、更に別のシールゾーンを過剰圧力弁の領域に有しており、この別のシールゾーンが場合によっては機能障害を生ぜしめる恐れがあるという点である。更に、前記過剰圧力弁は逆止弁の弁体を越えて突出しているので、前掲の国際公開第93/01435号パンフレットから公知の逆流防止器は簡単に通流量制御装置又は流入側で直前に接続された組込み衛生部材と一緒には使用不可能である。
【0005】
従って、特に不変の汎用の組込み長さという点において優れており、更に過剰な内部圧力の増大に抗して効果的に作用する、構造的に単純でメンテナンスの少ない冒頭で述べた形式の逆流防止器を提供するという課題が生じる。
【0006】
この課題の本発明による解決手段は、冒頭で述べた形式の逆流防止器において、特に逆流防止器が閉鎖されて、流出側で流体体積が遮断されると、シールリングが圧力補償のためにシール位置から戻し力に抗して漏出位置へ運動可能であるという点にある。
【0007】
本発明による逆流防止器では、組込みケーシングと流体導管との間をシールするために一般に必要とされるシールリングが、同時に過剰圧力弁としても働くので、場合によっては障害の発生し易い付加的なシールゾーンを省くことができる。当該シールリングは、ケーシング外周面に保持されており且つ逆止弁の弁体を越えて突出してはいないので、本発明による逆流防止器は、汎用の組込み長さにおいて簡単に通流量制御装置又は流入側で直前に接続された別の組込み部材と組み合わせることも可能である。この場合、シールリングは圧力補償のために、簡単にシール位置から戻し力に抗して漏出位置へ運動されてよく、この漏出位置において、逆流防止器の流出側に場合によっては発生する過剰圧力が、戻し力がシールリングを再びそのシール位置へ運動させるまでに、効果的に低下される。
【0008】
少なくとも1つの戻しばねの戻し力がシールリングに作用することが可能である。本発明による、僅かな製作手間に関連した有利な構成では、少なくとも1つのゴム弾性的な戻し部材の戻し力がシールリングに作用する。
【0009】
この場合、形状選択及び/又は材料選択に基づいて有効な少なくとも1つの戻し部材が、環状に構成されていると有利である。
【0010】
シールリングと戻し部材とは、ケーシング外周面に設けられた環状溝に保持された別個の構成部材として形成されていてよい。但し、本発明の有利な改良では、シールリングと少なくとも1つの戻し部材とが互いに1つのシール・戻しユニットを成すように一体に結合されている。この場合、シールリングは、やはり環状の1戻し部材と一体に結合されているか、又は例えば戻し部材として働く複数の流入側の一体成形部を有していてもよい。
【0011】
前記溝に、シールリングによって周面係合された環状ガイド区分が設けられており、この環状ガイド区分が、逆流防止器の流入方向とは逆方向でテーパしていると、特に有利である。シールリングは、環状ガイド区分の流出側の拡張された部分域では液体導管の内周面に向かってそのシール位置へ押し付けられるのに対して、当該シールリングは、流入側のテーパされた部分域では弛緩した漏出位置で保持されている。
【0012】
シールリングを戻し方向で運動させるためには、戻し部材が前記溝の流入側の半径方向壁に支持されていると有利である。
【0013】
本発明の更に別の有利な構成では、シールリングがこのシールリングに作用する逆流によって、シール位置から漏出位置へ運動可能である。前記逆流は、逆流防止器の流出側からケーシング外壁と液体導管との間を通ってシールリングまで流れ、これにより、シールリングは圧力に起因してそのシール位置から漏出位置へ運動させられる。
【0014】
逆流防止器の流出側に作用する過剰圧力を迅速に低下させることができるようにするためには、少なくとも1つの圧力補償通路が設けられており、この圧力補償通路が、流入方向で見て漏出位置の手前に配置された溝領域を逆流防止器の流入側と接続していると有利である。この場合、本発明の特に簡単且つ有利な構成では、少なくとも1つの圧力補償通路が流入側の半径方向壁のスリット又は開口等として構成されている。
【0015】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0016】
図1に示した逆流防止器1の有利な実施例は、組込みケーシング2を以て、例えば液体導管3等の流体導管のケーシング収容部に挿入されている。この逆流防止器1はシールリング4を有しており、このシールリング4は、組込みケーシング2のケーシング外周面に設けられた環状溝5に保持されており且つ組込みケーシング2と液体導管3との間をシールしている。
【0017】
逆流防止器1は弁体6を有している。この弁体6は、通流方向Pf1で流れる液体流の液圧によって戻しばね7の力に抗して、図1の左側に示した閉鎖位置から図1の右側に示した開放位置へ運動可能である。これに対して、流入方向Pf1とは逆方向で逆流が弁体6に作用すると、弁体6は閉鎖位置へ運動されて、弁座8に押し付けられる。
【0018】
このような逆流防止器1が、例えば温度調整弁の領域で使用されると、低温水側又は高温水側の遮断時に、逆流防止器と、やはり閉鎖された弁座との間に封入された水が、外部の影響に基づいて当該の逆流防止器又は流体導管の別の部分に損傷を及ぼす恐れのある著しい過剰圧力が発生するまで、強力に加熱されるという危険が生じる。
【0019】
従って、図示の逆流防止器1のシールリング4は、逆流防止器1が閉じられて流出側で流体体積が遮断された場合の圧力補償のために、所定のシール位置からゴム弾性的な戻し部材10の戻し力に抗して漏出位置へ運動可能である。この目的のためには、環状溝5に、シールリング4によって周面係合された環状ガイド区分9が設けられており、この環状ガイド区分9は、逆流防止器1の流入方向Pf1とは逆方向で先細になっている。シールリング4は、環状ガイド区分9の流出側の拡張された部分域内で液体導管3の内周面に向かってそのシール位置へ押し込まれる一方で、当該シールリング4は流入側の先細になった部分域では、逆に弛緩した漏出位置で保持されている。
【0020】
図1では、シールリングの漏出位置は長手方向中心軸線の左側に示されており且つシールリング4のシール位置は長手方向中心軸線の右側に示されている。
【0021】
シールリング4は、このシールリング4に作用する逆流によってシール位置から漏出位置へ運動される。この逆流は、逆流防止器1の流出側から、ケーシング外壁と導管内周面との間を通ってシールリング4に向かって流れる。
【0022】
図3に示した逆流防止器1′の実施例が示す様に、シールリング4と、このシールリング4に対応配置された戻し部材10とは、別個の構成部材として構成されていてもよい。これに対して図1に示した逆流防止器1の場合は、シールリング4と戻し部材10とが互いに1つのシール・戻しユニットを成すように一体に結合されている。この場合、シールリングと、やはり環状の戻し部材10とは、複数成分から成る射出成形部材として構成されていてもよい。シールリング4のためには良好なシール作用を有する材料成分が選択されるのに対して、戻し部材10のためには高度のゴム弾性的なばね力を有する材料成分が選択される。
【0023】
シールリング4の漏出位置において、場合によっては生じる過剰圧力を迅速に低下させることができるようにするためには圧力補償通路11が設けられており、この圧力補償通路11は、流入方向Pf1で見て漏出位置の手前に配置された溝領域を、逆流防止器1の流入側と接続する。図2から、図示の逆流防止器1の圧力補償通路11は、流入側の半径方向壁12に設けられたスリットとして構成されているということが明らかになる。
【0024】
図示の逆流防止器1,1′は、構造的に単純で比較的メンテナンスの少ない構成という点において優れている。これらの逆流防止器1,1′の不変の汎用の組込み長さに基づいて、当該逆流防止器1,1′は流入側の直前に接続された別の組込み部材と組み合わせることも可能である。逆流防止器1,1′は、さもなければこの逆流防止器1,1′に損傷を与える恐れもある過剰な内部圧力の増大に抗して効果的に作用する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】過剰圧力放圧部を備えた逆流防止器の縦断面図であり、この場合、逆流防止器の組込みケーシングと液体導管との間で、戻し部材と一体に結合されたシールリングがシールしている。
【図2】図1に示した逆流防止器の流入側を上から見た図である。
【図3】図1及び図2と比較可能な逆流防止器を示した図であるが、この場合、シールリングと、該シールリングに作用する戻し部材とは、別個の構成部材として構成されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体導管(3)に挿入可能な組込みケーシング(2)と、該組込みケーシング(2)のケーシング外周面に設けられた環状溝(5)に保持されており且つ組込みケーシング(2)と流体導管(3)との間をシールする少なくとも1つのシールリング(4)とを備えた逆流防止器(1,1′)において、
逆流防止器(1,1′)が閉鎖されて、流出側で流体体積が遮断されると、シールリング(4)が圧力補償のためにシール位置から戻し力に抗して漏出位置へ運動可能であることを特徴とする、逆流防止器。
【請求項2】
少なくとも1つのゴム弾性的な戻し部材(10)の戻し力がシールリング(4)に作用する、請求項1記載の逆流防止器。
【請求項3】
少なくとも1つの戻し部材(10)が環状に構成されている、請求項1又は2記載の逆流防止器。
【請求項4】
シールリング(4)と少なくとも1つの戻し部材(10)とが、互いに1つのシール・戻しユニットを成すように一体に結合されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の逆流防止器。
【請求項5】
環状溝(5)に、シールリング(4)によって周面係合された環状ガイド区分(9)が設けられており、該環状ガイド区分(9)が、逆流防止器(1,1′)の流入方向(Pf1)とは逆方向で先細になっている、請求項1から4までのいずれか1項記載の逆流防止器。
【請求項6】
戻し部材(10)が、環状溝(5)の流入側の半径方向壁(12)に支持されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の逆流防止器。
【請求項7】
シールリング(4)が、該シールリングに作用する逆流によって、シール位置から漏出位置へ運動可能である、請求項1から6までのいずれか1項記載の逆流防止器。
【請求項8】
流入方向(Pf1)で見て漏出位置の手前に配置された溝領域を、逆流防止器(1,1′)の流入側と接続する、少なくとも1つの圧力補償通路(11)が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の逆流防止器。
【請求項9】
少なくとも1つの圧力補償通路(11)が、流入側の半径方向壁(12)のスリット又は開口として構成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の逆流防止器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−509165(P2006−509165A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558001(P2004−558001)
【出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013768
【国際公開番号】WO2004/053368
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505123871)ネオパール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (12)
【Fターム(参考)】