説明

逆流防止弁とこれを有する逆流防止装置、給湯装置及び給湯システム

【課題】 弁体のシール部に作用する荷重を増大させずに開放通路の大口径化を図れるようにして、大気開放と逆流水排水をより確実に行える耐久性に優れた逆流防止弁を提供する。
【解決手段】 内部に弁座62を有する弁筒体61と、弁座62に接離自在に当接するように弁筒体61内に収納された弁体63と、この弁体63を弁筒体61の軸心方向に移動自在に支持するダイヤフラム64とを備え、弁筒体61の内部でかつダイヤフラム64の背面側に形成された背圧室72に給水圧P1が負荷される逆流防止弁において、背圧室72の給水圧P1によって発生する弁体63に対する弁座62への押し付け力を軽減する荷重軽減手段79を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置の温水を浴槽に通水する管路に設けられ、給湯装置に対する給水圧が低下しても浴槽の戻り水が給湯管に逆流するのを防止する逆流防止装置に好適に使用される逆流防止弁と、これを有する前記逆流防止装置、給湯装置及び給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、風呂の給湯システムは、給水管に給水された上水を給湯装置で加熱し、この加熱された湯を給湯管から風呂の浴槽に注湯するようになっている。この場合、集合住宅や給水圧が低い住宅では、ポンプで上水を汲み上げて各戸に給水するが、給水元の停電や断水のために給水側が負圧になると、その負圧で浴槽からの戻り水が吸引され、給湯装置の給湯管まで浴槽の戻り水が逆流することがある。
【0003】
このような浴槽からの逆流を防止するために、給湯装置の給湯管と浴槽の間の管路に逆流防止装置が設けられている。
従来の逆流防止装置は、給湯管の温水を浴槽に通水する管路と、浴槽への通水のみを許容するように管路に直列に設けられた一対の逆止弁とを備えており、基本的には、この両逆止弁によって給湯管への逆止機能を確保している。
【0004】
しかし、上記逆止弁が異物の噛み込み等によって完全に閉じていないときは、逆流防止装置の上流側の一次圧(以下、給水圧ということがある。)が負圧になったり、逆流防止弁の上流側の一次圧が下流側の二次圧(以下、通水圧ということがある。)を下回ったりすると、浴槽の戻り水がその水頭圧によって逆止弁を通過し、給湯管に逆流してくることがある。
そこで、従来の逆流防止装置では、上記管路における両逆止弁間の通水部分に、給湯管への給水圧をパイロット圧として当該通水部分に対する大気開放と逆流水排水を行う逆流防止弁が設けられている。
【0005】
この場合、給水圧が減少すると逆流防止弁が開弁し、これによって通水部分が大気開放されるとともに、その通水部分に引き込まれた逆流水が外部に排出されるので、浴槽からの戻り水が給湯管に逆流するのが防止される(特許文献1参照)。
このように、従来の逆流防止装置では、比較的高位置の浴槽に残り湯があり、かつ、逆止弁が十分に機能してない場合に、水道の断水や停電による汲み上げポンプの停止のために給水側が負圧状態になっても、逆止弁間の通水部分に設けた逆流防止弁が開き、浴槽からの戻り水を外部に排水できるようになっている。
【特許文献1】特開2003−254604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の逆流防止装置では、当該装置の上流側の一次圧が負圧になることで逆流防止弁が開き、この逆流防止弁の開放通路から空気を吸い込んで負圧を破壊するようになっているので、その空気の吸い込み時に外部に排出すべき逆流水も一緒に吸い込まれる可能性がある。
このように、上記逆流防止弁は、通水部分に対する大気開放(負圧破壊)機能と逆流水排水機能という、相反する機能を担っているので、従来の逆流防止装置では、逆流防止弁による排水量が不十分になり、給湯管に逆流が生じる可能性が残されている。
【0007】
上記不都合を解消する方策として、逆流防止弁の口径をよりも大きくして、通水部分に対する大気開放と逆流水排水を行う逆流防止弁の開放通路をできるだけ大きく取ることが考えられる。
しかし、上記開放通路を大きくすると、弁座の口径やこれを開閉する弁体及びダイヤフラムのシール径も大きくなることから、背圧室に負荷される給水圧によって弁体のシール部に作用する荷重も大きくなって当該シール部が劣化しやすくなり、逆流防止弁の耐久性が低下するという新たな課題が生じる。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑み、弁体のシール部に作用する荷重を増大させずに開放通路の大口径化を図れるようにして、大気開放と逆流水排水をより確実に行える耐久性に優れた逆流防止弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の逆流防止弁は、内部に弁座を有する弁筒体と、前記弁座に接離自在に当接するように前記弁筒体内に収納された弁体と、この弁体を前記弁筒体の軸心方向に移動自在に支持するダイヤフラムとを備え、前記弁筒体の内部でかつ前記ダイヤフラムの背面側に形成された背圧室に給水圧が負荷される逆流防止弁において、前記背圧室の給水圧によって発生する前記弁体に対する前記弁座への押し付け力を軽減する荷重軽減手段が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
上記逆流防止弁によれば、荷重軽減手段が、背圧室の給水圧(一次圧)によって発生する弁体に対する弁座への押し付け力を軽減するので、弁体のシール部に作用する荷重を増大させないで逆流防止弁の開放通路を大口径化することができる。
このため、大口径化された開放通路によって大気開放と逆流水排水をより確実に行えるとともに、弁体のシール部に作用する荷重が増大しないので、弁体のシール部の劣化も発生し難く、逆流防止弁の耐久性も維持することができる。
【0011】
本発明の逆流防止弁において、前記荷重軽減手段は、具体的には、前記弁体の背面側から突設された当該弁体よりも小径の第二の弁体と、この第二の弁体を前記弁筒体の軸心方向に移動自在に支持する第二のダイヤフラムと、この第二のダイヤフラムを前記第二の弁体に固定する受圧板とから構成することができる。
この場合、前記第二の弁体を、前記背圧室の背面壁に形成された貫通孔に貫通させ、前記第二のダイヤフラムを、前記貫通孔を密閉した状態で前記背圧室の背面壁に取り付けるようにすればよい(請求項2)。
【0012】
上記構造の荷重軽減手段によれば、弁体の背面側に第二の弁体が突設されているので、当該第二の弁体を設けた分だけ第一の弁体に対し逆向きの受圧力が生じ、ダイヤフラムの背面側に形成された背圧室に給水圧(一次圧)が負荷された場合に、その給水圧(一次圧)によって発生する弁体に対する弁座への押し付け力が軽減される。
【0013】
また、本発明の逆流防止弁において、前記弁体の開時に前記ダイヤフラムの正面側の大気開放を行う複数の開放口を、前記弁筒体に対して上下方向に離間して独立して形成することが好ましい(請求項3)。
この場合、背面室の給水圧(一次圧)が低下して弁体が開いた場合に、より上方の開放口が主として大気開放機能を担い、より下方の開放口が主として逆流水排水機能を担うことになり、大気開放と逆流水排水がそれぞれ複数の開放口に役割分担される。このため、大気開放と逆流水排水の各機能をより確実に達成でき、逆流防止弁の信頼性を高めることができる。なお、弁筒体に設ける開放口は少なくとも二つあればよいが、三つ以上設けるものにしてもよい。
【0014】
本発明の逆流防止装置は、給湯管の温水を浴槽に通水する管路と、前記浴槽への通水のみを許容するように前記管路に直列に設けられた一対の逆止弁と、前記管路における前記両逆止弁間の通水部分に設けられた上記逆流防止弁とを備えた逆流防止装置であって、前記逆流防止弁により前記給湯管への給水圧をパイロット圧として前記通水部分に対する大気開放と逆流水排水を行うことを特徴とする(請求項4)。
【0015】
上記逆流防止装置によれば、管路における前逆止弁間の通水部分に対する大気開放と逆流水排水を行う逆流防止弁として、前記した本発明の逆流防止弁を採用しているので、大口径化された逆流防止弁の開放通路によって大気開放と逆流水排水をより確実に行えるとともに、弁体のシール部に作用する荷重が増大しないので、弁体のシール部の劣化も発生し難く、逆流防止弁の耐久性を維持することができる。
従って、大気開放と逆流水排水を確実に行え、かつ、耐久性に優れた逆流防止装置を得ることができる。
【0016】
本発明の逆流防止装置において、前記通水部分は、その通水方向上流側が上方に位置する上下方向に長い縦向き管により構成されていることが好ましい(請求項5)。
この場合、管路における両逆止弁間の通水部分が、その通水方向上流側が上方に位置する上下方向に長い縦向き管よりなるので、一次側(給湯管側)の逆止弁が縦向き管の上側に位置し、かつ、二次側(浴槽側)の逆止弁が縦向き管の下側に位置することになる。
【0017】
このため、給水圧が低下して通水部分(縦向き管)が負圧になったり二次圧よりも低圧になったりした場合に、浴槽の戻り水が縦向き管の下部に位置する二次側の逆止弁を超えて引っ張られたとしても、一次側の逆止弁が当該縦向き管の上側に位置することから、その縦向き管に侵入した逆流水が一次側の逆止弁を超えて給水管側への逆流が進行する可能性が低くなり、逆流防止機能をより向上することができる。
【0018】
本発明の給湯装置は、上水が給水される給水管と、この給水管に給水された上水を加熱する熱交換器と、この熱交換器で加熱された温水を外部に給湯する給湯管と、この給湯管と浴槽との間に介装された上記の逆流防止装置とを備えていることを特徴とする(請求項6)。
また、本発明の給湯システムは、上記給湯装置と、前記給湯管からの温水が前記逆流防止装置を介して給湯される浴槽とを備えていることを特徴とする(請求項7)。
上記給湯装置及び給湯システムによれば、前記給湯管と前記浴槽の間に上記逆流防止装置が介装されているので、給湯管に対する給水圧(一次圧)が低下したときに、通水部分に対する大気開放と逆流水排水が、本発明の大口径化された逆流防止弁によって行われる。このため、一対の逆止弁間の通水部分に対する大気開放と逆流水排水がより確実に達成され、給水システムにおける逆流防止機能の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の通り、本発明によれば、弁体のシール部に作用する荷重を増大させずに開放通路の大口径化を図ることができるので、大気開放と逆流水排水をより確実に行える耐久性に優れた逆流防止弁を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1〜図6は、本発明を採用した逆流防止装置の一例を示し、図7は、その逆流防止装置を適用した風呂の給湯システムを示している。
〔給湯システム〕
図7に示すように、本実施形態の給湯システム1は、ガス給湯器2よりなる給湯装置と、その給湯器2に給排水可能に接続された風呂の浴槽3とを備えている。
【0021】
ガス給湯器2は、給湯室等に設置可能な筐体5と、この筐体5内に設けられた熱交換器6とを備え、筐体5には、上水道の給水口7と、燃料ガスの吸気部8と、加熱湯をキッチンの蛇口等に供給する第一給湯口9と、浴槽2への給湯を行う第二給湯口10と、浴槽2からの戻り湯を受け入れる戻り口11とが設けられている。
上記吸気部8は筐体5内の吸気管12に繋がっており、この吸気管12は、元ガス電磁弁13とガス比例弁14を介して熱交換器6内の燃焼管15に接続されている。
【0022】
前記給水口7は筐体2内の給水管17に繋がっており、この給水管17は、給水量センサ18を介して熱交換器6内の給湯熱交換部19に接続されている。給湯熱交換部19の下流側と第一給湯口9の間は給湯管20で繋がっており、この給湯管20には、給湯水量調整弁21が設けられている。
また、給湯管20と給水管17はバイパス管22で繋がっており、このバイバス管22にはバイパス水量調整弁23が設けられている。
【0023】
前記第二給湯口10は風呂往き管24に繋がっており、戻り口11は風呂戻り管25に繋がっている。この風呂の往き管24と戻り管25のうち、往き管24は熱交換器6内の風呂熱交換部26の出口側に繋がっており、この風呂熱交換部26の入口側は吐出管28に繋がっている。
この吐出管28は、筐体5内に設けられた風呂ポンプ29の吐出側に接続され、戻り管25は当該風呂ポンプ29の吸い込み側に接続されている。
【0024】
ガス給湯器2の給湯管20は、水量調整弁21の下流側の部分に分岐管30を備えており、この分岐管30は、後述する逆流防止装置31の入口側に接続されている。また、逆流防止装置31の出口側には浴槽2への注湯管32が接続され、この注湯管32は、前記戻り管25とともに風呂ポンプ29の吸い込み側に通じている。
本実施形態の逆流防止装置31は、その上流側(給湯管20側:一次側ということがある。)から下流側(浴槽3側:二次側ということがある。)へ至る順序で、注湯水量センサ34と、注湯電磁弁35と、通水方向に直列に並ぶ一対の逆止弁36,37と、この両逆止弁36,37の間に配置された複数の逆流防止弁38とを備えている。
【0025】
上記一対の逆止弁36,37は、一次側の第一逆止弁36と、二次側の第二逆止弁36とからなり、浴槽3の戻り管25からの戻り水が給湯管20に逆流するのを防止する逆止機能を有する。
しかし、これらの逆止弁36,37が、異物の噛み込み等が原因で完全に閉じていないときは、給水管20への給水圧(上流側の一次圧)P1が負圧になったり、逆止弁36,37間の通水圧(下流側の二次圧)P2よりも低くなると、浴槽3の戻り水がその水頭圧により逆止弁36,37を通過し、給湯管20に逆流してくることがある。
【0026】
そこで、本実施形態の逆流防止装置31では、給湯管20の温水を浴槽3に通水する管路における両逆止弁36,37間の通水部分に上記逆流防止弁38が設けられ、この弁38によって給湯管20への逆流現象をより確実に防止するようにしている。
すなわち、この逆流防止弁38は、給水管17の給水圧P1をパイロット圧として、両逆止弁36,37間の通水部分に対する大気開放(負圧破壊)と逆流水排水を行うように作動するものであり、逆流防止弁38の背圧側は前記給水管17に接続され、かつ、逆流防止弁38の出口側は大気開放された排水管39に繋がっている。
【0027】
このため、給水管17の給水圧P1が低下して負圧になったり、その給水圧P1が逆止弁36,37間の通水部分の通水圧P2(注湯管32の管内圧と同じ圧力)よりも低くなったりすると、逆流防止弁38が作動して、逆止弁36,37間の通水部分が大気開放され、当該通水部分の負圧状態が解かれる。
また、これと同時に、戻り管25からの逆流水が通水部分に侵入してきても、その逆流水は逆流防止弁38の出口(後述する開放口69)から排出管39に排出されるようになっている。
【0028】
上記構成の給湯システム1において、給水管17に給水された上流水は、給水量センサ18を通り、その一部が給湯熱交換部19で加熱されて湯になり、他の一部がバイパス管22を通って給湯熱交換部19から出てきた湯と混合される。
このさい、バイパス水量調整弁23がバイパスする水流量を制御して湯水の混合比が変わり、出湯の温度制御が行われる。所望の温度に制御された湯は、給湯水量調整弁21により給湯水量が制御され、第一給湯口9から外部に給湯される。
【0029】
一方、浴槽3に湯張りを行う場合には、逆流防止装置31の注湯電磁弁35を開くことにより、分岐管30の湯が注湯水量センサ34と逆止弁36,37を介して浴槽3へ供給される。
このさい、逆流防止装置31の逆流防止弁38は、パイロット圧として上水道の給水圧P1を受けて閉弁方向に付勢されている。そして、逆流防止装置31の下流側の注湯管32の通水圧P2は上記給水圧P1よりも低いので、これらの差圧で逆流防止弁38は閉状態になっている。
【0030】
他方、断水等によって給水管17に負圧が発生すると、逆流防止弁38が給水圧P1の低下に対応して開かれる。
これにより、一対の逆止弁36,37間の通水部分が大気開放され、給水管17に生じた負圧がその通水部分で破壊されるとともに、その通水部分内の水が逆流防止弁38の出口から排出管39を通って外部に排出され、給湯管20への逆流現象がより確実に防止される。
【0031】
〔逆流防止装置及び逆流防止弁〕
次に、図1〜図6を参照しつつ、本実施形態の逆流防止装置31の具体的構成について説明する。
図1〜図6に示すように、本実施形態の逆流防止装置31は、前記一対の逆止弁36,37(図5及び図6参照)及び逆流防止弁38を管路中に一体に組み込んだバルブユニットよりなり、給湯管20から分岐する前記分岐管30が接続される第一管路41と、浴槽3側へ給湯するための前記注湯管32が接続される第二管路42とを備えている。
【0032】
第一管路41は、両端開放の水平管43と、この水平管43の中央部から下方に延びる縦向き管44とを一体に備えたT字管よりなり、この縦向き管44の下端部には分岐管30との接続部45が形成されている。
他方、第二管路42は、第一管路41の水平管43の下流側端部(図5の右側端部)に接続された片側開放の水平管46と、この水平管46から下方に延びる縦向き管47とを一体に備えており、この縦向き管47の下端部には前記注湯管32との接続部48が形成されている。
【0033】
第一管路41の水平管43と第二管路42の水平管46は、それらの縦向き管44,47の軸心方向が上下方向でかつ互いに平行状態となるように接続されている。
このため、第一管路41の縦向き管44に流入した温水は、この縦向き管44を下から上に流れ、各水平管43,46を通って、第二管路42の縦向き管47を上から下に流れるようになっている。
【0034】
図6に示すように、第一管路41の縦向き管44の内部には、前記注湯水量センサ34が設けられている。
この注湯水量センサ34は、通過する水に旋回流を与える整流器50と、縦向き管47の中心線回りに回転する着磁された羽根車51と、この羽根車51に近接して管路壁内に埋設された磁気センサ(図示せず)とからなり、羽根車51の回転数をカウントすることで浴槽3への注湯量を計測するものである。
【0035】
また、第一管路41の水平管43の上流側端部(図5の左側端部)には、前記注湯電磁弁35が接続されている。
この注湯電磁弁35は、水平管43と一体形成された筒状の弁座52と、ダイヤフラム53によって支持された弁体54と、この弁体54の中央部に接続されたソレノイドのプランジャ55と、このプランジャ55を常時弁座52側に付勢するコイルばね56と含むパイロット弁よりなる。このため、プランジャ55を磁力で開弁方向(図5の左側)に移動させて弁体54を弁座52から引き離すことにより、第一管路41の縦向き管44に至った温水が水平管43に流入するようになっている。
【0036】
前記一対の逆止弁36,37のうち、上流側に位置する第一逆止弁36は、第一及び第二管路41,42の水平管43,46の接続部内に設けられ、下流側に位置する第二逆止弁37は、第二管路42の縦向き管47の下端部内に設けられている。
このため、本実施形態の逆流防止装置31では、第二管路42における両逆止弁間36,37の通水部分が、通水方向上流側が上方に位置する、上下方向に長い当該第二管路42の縦向き管47により構成されている。
【0037】
図6に示すように、第一逆止弁36は、第一管路41の水平管43の接続部内に収納された筒状の弁座57と、この弁座57に下流側(図6の右側)から当接して通水方向に進退自在に配置された弁体58と、この弁体58を弁座57側に付勢するコイルばね59とを有する。
また、第二逆止弁37は、上記第一逆止弁36と同一構造のものであり、第二管路42の縦向き管47の下端部内に収納された筒状の弁座57と、この弁座57に下流側(図6の下側)から当接して通水方向に進退自在に配置された弁体58と、この弁体58を弁座57側に付勢するコイルばね59とを有する。
【0038】
本実施形態の逆流防止装置31では、大口径化された逆流防止弁38が第二管路42の縦向き管47の中途部に接続されている。
図5に示すように、この逆流防止弁38は、内部に弁座62を有する弁筒体61と、弁座62に接離自在に当接するように弁筒体61内に収納された第一弁体63と、この第一弁体63を弁筒体61の軸心方向に移動自在に支持するメインダイヤフラム64と、第一弁体63の背面側に突設された第二弁体65と、この第二弁体65を弁筒体61の軸心方向に移動自在に支持するサブダイヤフラム66とを備えている。
【0039】
上記弁筒体61は、縦向き管47から水平方向に一体に突設されかつその縦向き管47よりも大径の外筒67と、この外筒67の開口部に接続されたケーシング68と、このケーシング68の外端面に接続された弁蓋体69とからなる。
弁座62は、弁筒体61の外筒67よりも短い筒状部材よりなり、この外筒67と同軸心状となるように、縦向き管47から水平方向に一体に突設されている。
【0040】
外筒67の開口部には、外周が矩形状のフランジ部70が形成されていて、このフランジ部70に、同じく矩形状の前記ケーシング68及び弁蓋体69をその順に接合してねじ止めすることにより、フランジ部70、ケーシング68及び弁蓋体69の三者が三層構造に一体化されている。
第一弁体63は、外筒67の内周面より小径でかつ弁座62の外周面より大径の短円柱部材よりなり、先端面(図5の左側面)の中心部に取付突起71を一体に備えている。
【0041】
メインダイヤフラム64の中央部には取付孔が形成され、この取付孔に第一弁体63の取付突起71を抜け止め状態で挿通することにより、メインダイヤフラム64の円板部分が第一弁体63の先端面に取り付けられている。
また、メインダイヤフラム64の外周縁部は、フランジ部70とケーシング68との間に挟持されることにより、弁筒体61の内周面に固定されている。
【0042】
弁筒体61の内部空間のうち、メインダイヤフラム64の背面側(弁座62の反対側)のケーシング68内の空間は、第一弁体63を弁座62に密着させるための背圧室72とされ、この背圧室72に給水管17の給水圧P1を導入する導入口73(図3参照)がケーシング68に形成されている。
また、メインダイヤフラム64の正面側(弁座62側)にある、弁座62の外周側の筒状の開放通路74は、開弁時に吸気と排水が行われるスペースであって、この開放通路74は、外筒67に形成された上下一対の開放口75,75(図3及び図6参照)と連通している。これらの開放口75,75は、弁筒体61の外筒67に対して上下方向に離間して独立して形成されている。
【0043】
そして、上記導入口73には給水管17から分岐するパイロット管が接続され、上下の各開放口75,75には排出管39が接続されるようになっている。
図5を参照して、第二弁体65は、第一弁体63よりも小径の短円柱部材よりなり、第一弁体63の背面中央部から同軸心状に突設されている。この第二弁体65は、その外端面(図5の右側面)の中心部に取付ねじ部76を一体に備えている。この取付ねじ部76は、サブダイヤフラム66とこの外面側に重なる受圧板80の中心部を貫通している。受圧板80の中心部は取付ねじ部76に螺合するナット部になっており、当該受圧板80を締め付け方向に回動することにより、サブダイヤフラム66が第二弁体65に一体化されている。
内部に背圧室72を形成するケーシング68の背面壁77には、第二弁体65よりも大径の貫通孔78が形成され、この貫通孔78に、第二弁体65の突出端部が貫通状に挿通されている。
【0044】
サブダイヤフラム66の中央部には取付孔が形成され、この取付孔に第二弁体65の取付突起76を抜け止め状態で挿通することにより、サブダイヤフラム66の円板部分が第二弁体65の外端面に取り付けられている。
また、サブイヤフラム66の外周縁部は、ケーシング68の背面壁77と弁蓋体69の間に挟持させることによって当該背面壁77に固定されており、このさい、サブダイヤフラム66によって背面壁77の貫通孔78が密閉されるようになっている。
【0045】
上記構成に係る逆流防止装置31において、注湯電磁弁35が通電されていない時は、そのプランジャ55が弁体54を弁座52に押し付けており、当該電磁弁35が閉弁状態にある。従って、この場合には浴槽3への給湯は遮断されている。
このさい、逆流防止弁38の背圧室72には給水圧P1がかかっているため、その第一弁体63は弁座62に当接しており、逆流防止弁38の開放通路74はいずれも閉塞されている。
【0046】
従って、注湯電磁弁35が通電されると、そのプランジャ55が磁力で吸引されて弁体54が開き、分岐管30から第一管路41を経由して第二管路42に温水が流入し、その温水が第一及び第二逆止弁36,37を通って浴槽3への給湯が開始される。
一方、給水管17の断水等によって給水圧P1が低下した場合は、第一及び第二逆止弁36,37が閉じ、第二管路42の縦向き管47に設けられている逆流防止弁38の背圧室72の圧力が低下し、第一弁体63が弁座62から離れる。
【0047】
これにより、逆流防止弁38の開放通路74が開放口75と連通して大気開放され、第一及び第二逆止弁36,37の間の通水部分である縦向き管47の負圧が破壊されるとともに、その縦向き管47内に溜まっていた水が開放口75を通って排出管39から排出される。
このとき、第二逆止弁37が完全に閉塞しないという事態が発生すると、浴槽3からの戻り水が第二逆止弁37を通過して逆流が比較的大量に発生するが、その逆流水は、主として下側の開放口75から排出されるため、給湯管20まで逆流することがない。
【0048】
そして、本実施形態の逆流防止弁38によれば、第一弁体63の背面側に第二弁体64が突設されているので、当該第二弁体64を設けた分だけ第一弁体63に対し逆向きの受圧力が生じ、メインダイヤフラム64の背面側に形成された背圧室72に給水圧P1が負荷された場合に、その給水圧P1によって発生する第一弁体63に対する弁座62への押し付け力が軽減される。
【0049】
すなわち、第一弁体63の背面側に突設された第二弁体65と、これを移動自在に支持するサブダイヤフラム66により、背圧室72の給水圧P1によって発生する第一弁体63に対する弁座62への押し付け力を軽減する荷重軽減手段79が構成されており、これにより、第一弁体63のシール部(弁座62に対する当接部分)に作用する荷重を増大させることなく、逆流防止弁38の開放通路74が大口径化されている。
このため、大口径化された開放通路74によって大気開放と逆流水排水がより確実に行われるとともに、第一弁体63のシール部に作用する荷重が増大しないので、第一弁体63のシール部の劣化も発生し難く、逆流防止弁38の耐久性が維持される。
【0050】
また、本実施形態の逆流防止装置31によれば、荷重軽減手段79が、本来の第一弁体63の背面側にこれより小径の第二弁体65を突設し、この第二弁体65をサブダイヤフラム66で移動自在に支持する構造になっているので、第二弁体65及びダイヤフラム66を設けたことによって逆流防止弁38の口径が必要以上に肥大化することがなく、逆流防止弁38をコンパクトに構成できるという利点もある。
【0051】
更に、本実施形態の逆流防止装置31によれば、両逆止弁36,37間の通水部分(第二管路42の縦向き管47)が、その通水方向上流側が上方に位置する上下方向に長い縦向き管よりなるので、一次側(給湯管20側)の第一逆止弁36が縦向き管47の上側に位置し、かつ、二次側(浴槽側)の第二逆止弁37が当該縦向き管47の下側に位置するようになっている。
このため、給水圧P1が低下して縦向き管47の内部が負圧になったり二次側の通水圧P2よりも低圧になったりした場合に、浴槽3の戻り水が縦向き管47の下部に位置する第二逆止弁37を超えて引っ張られたとしても、第一逆止弁36が当該縦向き管47の上側に位置することから、その縦向き管47に侵入した逆流水が第一逆止弁36を超えて給水管20側への逆流が進行する可能性が低くなる。
【0052】
また、本実施形態の逆流防止装置31によれば、逆流防止弁38の開放口75,75が弁筒体61に対して上下方向に離間して独立して形成されているので、給水圧P1が低下して縦向き管47の内部が負圧になったり二次側の通水圧P2よりも低圧になったりした場合に、上方の開放口75が主として大気開放機能を担い、下方の開放口75主として逆流水排水機能を担うことになる。
従って、大気開放と逆流水排水とをそれぞれ上下の開放口75,75に役割分担させることができ、縦向き管47に対する大気開放と逆流水排水がより確実に達成される。
【0053】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、縦向き管47に逆流防止弁38を配置しているが、この逆流防止弁38を水平管に接続することにしてもよい。また、その縦向き管47は、必ずしも図示の鉛直方向でなくてもよく、所定角度で傾斜した管路で構成してもよい。
更に、上記実施形態では、逆止弁36,37と逆流防止弁38を管路中に一体に組み込んだバルブユニットよりなる逆流防止装置31を例示したが、この装置31は、ユニット化されていない複数の管路と弁装置で分割構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の逆流防止装置の一例を示す斜視図である。
【図2】同逆流防止装置の正面図である。
【図3】同逆流防止装置の左側面図である。
【図4】同逆流防止装置の右側面図である。
【図5】図2のA−A線断面図である。
【図6】図3のB−B線断面図である。
【図7】本発明の逆流防止装置を用いた給湯システムの配管構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1 給湯システム
2 ガス給湯器(給湯装置)
3 浴槽
17 給水管
20 給湯管
30 分岐管
31 逆流防止装置
32 注湯管
34 注湯水量センサ
35 注湯電磁弁
36 第一逆止弁
37 第二逆止弁
38 逆流防止弁
39 排出管
41 第一管路
42 第二管路
43 水平管
44 縦向き管
46 水平管
47 縦向き管(通水部分)
61 弁筒体
62 弁座
63 第一弁体
64 メインダイヤフラム
65 第二弁体
66 サブダイヤフラム
72 背圧室
73 導入口
74 開放通路
75 開放口
77 背面壁
78 貫通孔
79 荷重軽減手段
80 受圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁座を有する弁筒体と、前記弁座に接離自在に当接するように前記弁筒体内に収納された弁体と、この弁体を前記弁筒体の軸心方向に移動自在に支持するダイヤフラムとを備え、前記弁筒体の内部でかつ前記ダイヤフラムの背面側に形成された背圧室に給水圧が負荷される逆流防止弁において、
前記背圧室の給水圧によって発生する前記弁体に対する前記弁座への押し付け力を軽減する荷重軽減手段が設けられていることを特徴とする逆流防止弁。
【請求項2】
前記荷重軽減手段は、前記弁体の背面側から突設された当該弁体よりも小径の第二の弁体と、この第二の弁体を前記弁筒体の軸心方向に移動自在に支持する第二のダイヤフラムと、この第二のダイヤフラムを前記第二の弁体に固定する受圧板とから構成され、
前記第二の弁体は前記背圧室の背面壁に形成された貫通孔を貫通しており、前記第二のダイヤフラムは前記貫通孔を密閉した状態で前記背圧室の背面壁に取り付けられている請求項1に記載の逆流防止弁。
【請求項3】
前記弁体の開時に前記ダイヤフラムの正面側の大気開放を行う複数の開放口が、前記弁筒体に対して上下方向に離間して独立して形成されている請求項1又は2に記載の逆流防止弁。
【請求項4】
給湯管の温水を浴槽に通水する管路と、前記浴槽への通水のみを許容するように前記管路に直列に設けられた一対の逆止弁と、前記管路における前記両逆止弁間の通水部分に設けられた請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆流防止弁とを備えた逆流防止装置であって、
前記逆流防止弁により前記給湯管への給水圧をパイロット圧として前記通水部分に対する大気開放と逆流水排水を行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆流防止弁を用いた逆流防止装置。
【請求項5】
前記通水部分は、その通水方向上流側が上方に位置する上下方向に長い縦向き管により構成されている請求項4に記載の逆流防止装置。
【請求項6】
上水が給水される給水管と、
この給水管に給水された上水を加熱する熱交換器と、
この熱交換器で加熱された温水を外部に給湯する給湯管と、
この給湯管と浴槽との間に介装された請求項4又は5に記載の逆流防止装置とを備えていることを特徴とする給湯装置。
【請求項7】
請求項6に記載の給湯装置と、
前記給湯管からの温水が前記逆流防止装置を介して給湯される前記浴槽とを備えていることを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−58021(P2009−58021A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224764(P2007−224764)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】