説明

逆閃絡防止器

【課題】特定需要家と共同受電している一般需要家に雷害が波及するのを防止可能とした構成簡単な逆閃絡防止器を提供する。
【解決手段】引込配電線から一般需要家及び特定需要家が共同して受電可能な共同受配電系統を対象として、一般需要家及び特定需要家の電気設備を雷害から保護するための雷防護システムにおいて、引込配電線12と特定需要家30構内の電気設備44との間に接続され、かつ、各相の引込配電線12にそれぞれ直列に接続された高インピーダンスの逆閃絡防止コイル41と、これらの逆閃絡防止コイル41の一端相互間に接続された続流阻止避雷器42と、逆閃絡防止コイル41の他端相互間に接続された複数の続流阻止避雷器43とを備えると共に、複数の続流阻止避雷器43同士の接地接続点が、電気設備44の接地端子と鉄塔47、引下導線49と共に共通の等電位接地極46に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば特定需要家としての固定無線用基地局にある避雷針や鉄塔などが直撃雷を受けた場合に、基地局構内や基地局と同一配電系統に接続された一般需要家の電気設備(通信設備も含む)並びに人体を雷害から保護するための逆閃絡防止器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アンテナや避雷針、及び避雷針を設置した高層構造物への落雷発生時に、低圧配電線を介して流出する雷サージによって構造物内部の機器が破壊されたり低圧配電線を介して周辺機器が破壊されるのを防止するようにした流出雷サージ低減回路が、特許文献1によって公知となっている。
この従来技術は、低圧配電線に直列接続された高耐圧電源トランスと、このトランスと接地との間に接続された酸化亜鉛形避雷素子等の高圧避雷器とを備え、更に、必要に応じて低圧避雷器、ヒューズ等を前記高圧避雷器に直列に接続したものである。
【0003】
【特許文献1】特開2005−176554号公報(請求項1,2,5〜7、図1,図5,図6等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る従来技術では、構造物内部に高耐圧電源トランスを設けなくてはならず、設備の大形化やコスト高を招くと共に、低圧配電線を介して外部へ流出する雷サージ電流の抑制効果が十分ではなく、低圧配電線に接続された一般需要家への波及事故を防止できない場合があった。
【0005】
そこで本発明の解決課題は、特定需要家と共同受電している同一配電系統の一般需要家に雷害が波及するのを防止すると共に、各種電気設備を雷害から保護するようにした構成簡単な逆閃絡防止器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した逆閃絡防止器は、引込配電線から一般需要家及び特定需要家が共同して受電可能な共同受配電系統を対象として、前記引込配電線と特定需要家構内の電気設備との間に接続される逆閃絡防止器において、
各相の引込配電線にそれぞれ直列に接続された高インピーダンスの逆閃絡防止コイルと、これらの逆閃絡防止コイルの一端相互間に接続された続流阻止避雷器と、前記逆閃絡防止コイルの他端相互間に接続された複数の続流阻止避雷器とを備え、かつ、
前記逆閃絡防止器の筐体と前記複数の続流阻止避雷器同士の接地接続点とを、特定需要家構内の避雷針に接続された引下導線、高層構造物及び前記電気設備と共に共通の等電位接地極に接続したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、避雷針が直撃雷を受けて等電位接地極の電位が上昇したとしても、その大部分の電圧は続流阻止避雷器を介してインピーダンスの大きい逆閃絡防止コイルの両端により負担されるので、引込配電線側に印加される電圧は低くなり、一般需要家側に流出する電圧、電流を抑制して人体や電気設備を雷害から保護することができる。
また、特定需要家構内において、逆閃絡防止器の筐体や続流阻止避雷器の接地接続点、電気設備、高層構造物としての鉄塔の塔脚部及び引下導線を一括して等電位接地極に接続することにより、これらの各設備の基準電位を等電位化することができ、雷撃時に接地電位が上昇しても、各設備間に理論的には電位差が発生せず、各設備の破壊を防止することができる。
更に、高圧配電線や引込配電線に侵入した誘導雷による異常電圧は、逆閃絡防止コイル及び続流阻止避雷器を介して等電位接地極側に逃げるため、特定需要家内の電気設備を確実に保護することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の実施形態を示す構成図である。図1において、10は高圧配電線、11は高圧配電線10に一次側が接続された配電変圧器、12は配電変圧器11の二次側に接続された低圧の引込配電線である。なお、配電変圧器11の二次側の一端はB種接地極13により接地されている。
【0009】
ここで、引込配電線12は、特定需要家30側へ引き込まれており、この特定需要家30は、例えば固定無線基地局等である。
また、引込配電線12は、配電変圧器11の二次側から一般需要家20の家屋21にも引き込まれており、前記特定需要家30と一般需要家20とは共同受配電系統を構成している。
【0010】
特定需要家30において、引込配電線12には実施形態に係る逆閃絡防止器40が接続されている。この逆閃絡防止器40は、一対(各相)の引込配電線12にそれぞれ直列に接続される逆閃絡防止コイル41と、これらの逆閃絡防止コイル41の各一端相互間に接続される続流阻止避雷器42と、逆閃絡防止コイル41の各他端相互間に接続される2個の続流阻止避雷器43とから構成されている。
ここで、前記逆閃絡防止コイル41は大きなインピーダンスを有していると共に、続流阻止避雷器42,43は例えば避雷素子とリアクトルとを直列に接続して構成されている。
【0011】
2個の続流阻止避雷器43の直列回路の両端には、直流電源電圧が供給される無線設備等の電気設備(通信設備も含むものとする)44が接続されている。45は電気設備44に接続されて鉄塔47に取り付けられたアンテナである。
【0012】
前記鉄塔47の頭頂部には避雷針48が設置され、この避雷針48には引下導線49が接続されていると共に、引下導線49は鉄塔47に沿って架設されている。
なお、逆閃絡防止器40の筐体、2個の続流阻止避雷器43同士の接地接続点、電気設備44の筐体、鉄塔47の塔脚部及び引下導線49は、一括して局舎接地極としての等電位接地極46に接続されている。
【0013】
次に、この実施形態の動作を説明する。
いま、避雷針48または鉄塔47が直撃雷を受けると、雷サージ電流Iは引下導線49または鉄塔47の塔脚部を介して等電位接地極46に流れる。このとき、等電位接地極46の接地抵抗をRとするとI×Rの大きさの接地電位上昇電圧が発生する。
【0014】
この電圧は、2個の続流阻止避雷器43及び逆閃絡防止コイル41、配電変圧器11の二次側巻線を介してB種接地極13との間に印加されるが、続流阻止避雷器43が導通した際に接地電位上昇電圧の大部分はインピーダンスの大きい逆閃絡防止コイル41の両端によって負担されるため、引込配電線12側に印加される電圧は低くなり、一般需要家20の家屋21に印加される電圧も小さくなる。よって一般需要家20側に流出する電流も小さくなり、家屋21内の人体に害を及ぼしたり電気設備を破壊するおそれはない。
【0015】
また、特定需要家30の構内では、逆閃絡防止器40の筐体、2個の続流阻止避雷器43同士の接地接続点、電気設備44の筐体、鉄塔47の塔脚部及び引下導線49が一括して等電位接地極46に接続されているため、これらの各設備は等電位上に乗っていることになり、雷撃時に接地電位が上昇しても各設備間に理論的には電位差が発生せず、各設備を過電圧、過電流から保護することができる。
なお、逆閃絡防止器40内の配電変圧器11側の続流阻止避雷器42は、引込配電線12側から侵入する異常電圧から逆閃絡防止器40を保護するためのものである。
【0016】
更に、高圧配電線10や引込配電線12に侵入した誘導雷による異常電圧(配電線の混触による異常電圧も含む)は、逆閃絡防止コイル41及び続流阻止避雷器43を介して等電位接地極46側に逃げるため、特定需要家30内の電気設備44を確実に保護することができる。
【0017】
上記のように、本実施形態では特定需要家30の構内に逆閃絡防止器40を追加するだけで落雷時の一般需要家20への波及事故を防止し、併せて特定需要家30内の各種設備を保護することが可能であり、逆閃絡防止器40の構成も極めて簡単であるから、装置の大形化やコストの上昇を招く恐れもない。
【0018】
図2は、単相配電系統の引込配電線12に接続される逆閃絡防止器40を示す回路図であり、実質上、図1と同一の構成である。この図2において、A,A,Aは続流阻止避雷器、N,Nは逆閃絡防止コイルを示す。
また、図3は本発明を三相配電系統に適用した場合の回路図であり、12Aは三相の引込配電線、40Aは逆閃絡防止器、44Aは電気設備を示す。なお、A〜Aは続流阻止避雷器、N〜Nは逆閃絡防止コイルである。
この図3の例においても、逆閃絡防止器40Aにより図1,図2と同様に接地電位上昇に伴う異常電圧、電流が一般需要家側に流出するのを防止し、しかも特定需要家構内の電気設備が破壊されるのを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す構成図である。
【図2】図1における逆閃絡防止器の回路図である。
【図3】三相配電系統に適用される逆閃絡防止器の回路図である。
【符号の説明】
【0020】
10:高圧配電線
11:配電変圧器
12,12A:引込配電線
13:B種接地極
20:一般需要家
21:家屋
30:特定需要家
40,40A:逆閃絡防止器
41:逆閃絡防止コイル
42,43:続流阻止避雷器
44,44A:電気設備
45:アンテナ
46:等電位接地極
47:鉄塔
48:避雷針
49:引下導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引込配電線から一般需要家及び特定需要家が共同して受電可能な共同受配電系統を対象として、前記引込配電線と特定需要家構内の電気設備との間に接続される逆閃絡防止器において、
各相の引込配電線にそれぞれ直列に接続された高インピーダンスの逆閃絡防止コイルと、これらの逆閃絡防止コイルの一端相互間に接続された続流阻止避雷器と、前記逆閃絡防止コイルの他端相互間に接続された複数の続流阻止避雷器とを備え、かつ、
前記逆閃絡防止器の筐体と前記複数の続流阻止避雷器同士の接地接続点とを、特定需要家構内の避雷針に接続された引下導線、高層構造物及び前記電気設備と共に共通の等電位接地極に接続したことを特徴とする逆閃絡防止器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−300744(P2007−300744A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127173(P2006−127173)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)
【Fターム(参考)】