説明

透明なガラスセラミックス

【課題】従来技術の欠点を有さない透明なガラスセラミックスを提供する。
【解決手段】少なくとも以下の組成:SiO2:60〜76;Al23:18〜24;Li2O:2〜5;MgO:0〜1.5;ZnO:>4〜8;ZrO2:1〜5;SnO2:>0.5〜4;Na2O:0〜1;K2O:0〜1;BaO:0〜4;Fe23:0〜0.1;As23:0〜<0.5(酸化物ベースに基づき質量%で記載)を有する透明なガラスセラミックスを提供することによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なガラスセラミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
組成範囲Li2O−Al23−SiO2(LAS−ガラスセラミックス)からの低い熱膨張率を有する従来のガラスセラミックスは、TiO2及びZrO2を核生成成分として含有する。出発ガラスから、いわゆるセラミックス化(出発ガラスがガラスセラミックスに変換されること)の間に、まずTiO2及びZrO2からの種結晶が析出され、該種結晶上では、次いで負熱膨張率を有する結晶相が成長し、例えば高温石英混晶、それにβ−ユークリプタイトが挙げられる。
【0003】
大規模工業的に重要な、従来の原料が使用される場合、出発ガラスの製造のために、Fe23が出発ガラスひいてはガラスセラミックス中に取り込まれることは避けることができない。さらに、大規模工業的な溶融プラントにおいて通例のカレットサイクル(Scherbenkreislauf)は鉄汚染を必然的に伴う。
【0004】
ガラス中でFe23とTiO2との間で、専門文献中ではおよそ大体に"イルメナイト複合体"とも称される近距離秩序における相互作用が生じることは久しい以前から公知である。このFe−Ti複合体により、透明な出発ガラス及び透明なガラスセラミックスにおいて黄色ないし褐色に色が変わる。
【0005】
透明なガラスセラミックスの製造に際しては、この複合体形成を避けることが重要性をもつ。高価な、特別に精製された原料の使用及びカレット返送(Scherbenrueckfuehrung)を省くことによってFe23の供給を減少ないし回避することができる。核生成成分TiO2を省くことで、新しい、代替的な核生成剤の酸化物を探し求める必要性が生じる。
【0006】
さらに、ガラスセラミックスの製造に際して、例えばAs23のような毒性成分が省かれるべきである。そのため、代替的な清澄剤も見出されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このことから出発して、本発明の課題は、上述の欠点を有さない透明なガラスセラミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
該課題は、請求項1に従って、以下の組成(酸化物ベースに基づき質量%で記載)を有する透明なガラスセラミックスを提供することである:
SiO2:60〜76;
Al23:18〜24;
Li2O:2〜5;
MgO:0〜1.5;
ZnO:4超え8以下;殊に4.1〜8;特に有利には4.1超え8以下;
ZrO2:1〜5;
SnO2:0.5超え4以下;
Na2O:0〜1;
2O:0〜1;
BaO:0〜4;
Fe23:0〜0.1;
As23:0以上0.5未満。
【0009】
さらに、本発明によるガラスセラミックスは、付加的に以下の組成成分(質量%記載)を含有してよい:
25:0〜4、
CaO:0〜2、
SrO:0〜3、
F:0〜1、
TiO2:0以上1未満、殊に0以上0.5未満、
23:0〜1。
【0010】
意想外にも、4質量%を超えるZnO含有率を有する透明なガラスセラミックスは可視光に対して特に高い透明性を示すことが見出された。
【0011】
多相材料(例えば、ガラスセラミックスの残りのガラス相と結晶相)における高い透明性は、結晶子の大きさ、相含量並びに個々の相の屈折率の違いに本質的に依存する光散乱効果を最小にすることによって達成される。
【0012】
ZnOはガラスセラミックスの結晶相(例えば、高温石英混晶)中に部分的にしか組み込まれないので、残りのガラス相中に残留するZnO含有率は、残りのガラス相の屈折率を好ましくは高める。
【0013】
さらに、このように高いZnO含有率は、好ましくは結晶相の低い結晶子サイズを生じさせることが見出された。
【0014】
好ましくは、本発明によるガラスセラミックスは、避けることのできない痕跡量を除きAs23及び/又はSb23を含まない。
【0015】
さらに、ガラスセラミックスは、好ましくは、熱膨張率CTE(20〜700℃)4ppm未満、有利には3ppm未満及び特に有利には2ppm未満を有する。
【0016】
好ましくは、光の可視領域中(380〜780nm)での光透過率は、ガラスセラミックスの試料厚さ4mmの場合に、少なくとも87%、有利には少なくとも87.5%及び特に有利には少なくとも88%である。
【0017】
ガラスセラミックスの三刺激値(Farbwert)C*は、好ましくは3未満である。
【0018】
ガラスセラミックスのさらなる有利な実施形態において、核生成剤の酸化物SnO2及びZrO2の合計は少なくとも3質量%である。
【0019】
SnO2に加えて、核生成作用を示すさらに別の成分、例えばTa23、Nb23も使用することができ、その際、これらの成分はたいてい相対的に高価である。
【0020】
TiO2の代替物として、好ましくはSnO2が核生成剤の酸化物としてZrO2に加えて使用される。その際、SnO2は清澄剤としても作用する。
【0021】
たいてい高められたFe23含有率を有する、より低コストの原料も使用することができる方法は、経済的に好ましい。
【0022】
本発明によるガラスセラミックスは、コーティング又は装飾されることができる。
【0023】
本発明によるガラスセラミックスを目的に合わせて着色するために、着色成分、例えばV25、NiO、CuO、Cr23、CeO2、MnO2、Fe23、WO3、MoO3及び/又はNd23を溶融ガラスに出発ガラスの製造のために付け加えてよい。
【0024】
さらに、成分、例えばLa23、Y23、GeO2及び/又はGd23を溶融ガラスに添加してよく、これらは結果生じるガラスセラミック中の残りのガラス相の屈折率を上げる。
【0025】
溶融ガラスは、公知の清澄剤により、殊にCeO2、硫黄化合物及び/又は塩化物により精製されることができる。有利な実施形態において、ガラスセラミックスの製造のために環境にとって有害な成分は使用されない。
【0026】
透明なガラスセラミックスは、セラミックス化中の滞留時間の延長及び/又は温度の上昇によって半透明のガラスセラミックスに、そして熱処理をさらに行った場合には不透明のガラスセラミックスに変えられることができる。
【0027】
本発明によるガラスセミラックスは、様々な適用分野からの製品、例えば、調理面、暖炉覗き窓(Kaminsichtsscheiben)及びオーブン覗き窓(Backofensichtsscheiben)用に、例えば、熱分解炉床(Pyrolyseherden)、建築ガラス窓及び安全ガラス窓においても、例えば、高動的、機械的な負荷に対する防護ガラスといった防火のためにも使用されることができる。さらに、本発明によるガラスセラミックスは、衝撃、弾丸、破片又は衝風の影響から保護するための装置の一部として、防火ガラス窓の一部として、暖炉覗き窓として、調理領域用のガラスとして、半導体材料又は磁気ディスク(Magnetspeicherplatte)用の基板として使用されることができる。
【実施例】
【0028】
第1表は、本発明によるガラスセラミックの例1〜23を示す(質量%記載の組成)。
【0029】
第2表は、本発明によらない比較ガラスセラミックを示す(例24〜34;質量%記載の組成)。
【0030】
− 例2:出発ガラスを、ローラーによって高温成形した。
− 例3は、特に良好に、ZrO2との組み合わせにおいて0.6質量%のみのSnO2を用いて透明なガラスセミラックが得られることを示す。
− 例10は、際立って優れた透過値及びクロマ値を示す。
− 例12は、多量のFe23をもたらす(510ppm)低コストの原料を使用した場合ですら、同様に際立って優れた透過値及びクロマ値を示す。
− 例21は、三体−核生成(Dreifach-Keimbildung)(Si−Ti−Zr)及びNd23による色上げ(Ueberfaerbung)を示す。
【0031】
実施例及び比較例の製造:
出発ガラスを、市販の原料から、殊に酸化物、炭酸塩及び/又は硝酸塩から、セラミックスるつぼ材料中で約1640℃にて溶融した。溶融した材料を、清澄し、均質化し、その後に注ぎ出し、場合により高温成形(例えばローラー法、フロート法、引き抜き法)し、かつ冷却した。
【0032】
ガラスセラミックスの製造のために、核生成温度T(KB)での核生成のための約1時間継続する第一の段階と、より高い温度T(MAX)での約15分の結晶成長期の第二の段階とから成る、出発ガラスのセラミックス化の2段階のプロセスを適用した。
【0033】
100mmの長さのガラスセラミックスバーの20℃から700℃の熱膨張係数(CTE)の測定を、膨張計を使って行った。
【0034】
透過率の測定のために、ガラスセラミックスを4mmの厚さに切り取り、かつ研磨した。測定は光源C/2゜で行った。光透過率τVis及び三刺激値C*の表示は、DIN 5033もしくはDIN EN 410に従って行った。C*は、その際、彩度(Farbsaettigung)(クロマ、彩色性)を表示する:

【0035】
CIELAB色空間内の係数は、色印象に相当する:
*は、緑−赤軸の色座標の位置を表示し、その際、負の値は緑色の色調に相当し、かつ正の値は赤色の色調に相当する。
*は、青−黄軸の色座標の位置を表示し、その際、負の値は青色の色調に相当し、かつ正の値は黄色の色調に相当する。
【0036】
ガラスセラミックスの結晶相、結晶相含有率(Kr.ph.)[体積%]及びガラスセラミックスの平均結晶子サイズd50を、公知技術のX線回折分析(XRD、デバイ・シェラー法(Debeye-Scherrer Verfahren))によって調べた。
【0037】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【0038】
【表2−1】

【表2−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックスにおいて、該ガラスセラミックスが、少なくとも以下の組成:
SiO2:60〜76、
Al23:18〜24、
Li2O:2〜5、
MgO:0〜1.5、
ZnO:4超え8以下、
ZrO2:1〜5、
SnO2:0.5超え4以下、
Na2O:0〜1、
2O:0〜1、
BaO:0〜4、
Fe23:0〜0.1、
As23:0以上0.5未満
を酸化物ベースに基づき質量%で有することを特徴とする、ガラスセラミックス。
【請求項2】
前記ガラスセラミックスが、付加的に以下の組成成分:
25:0〜4、
CaO:0〜2、
SrO:0〜3、
F:0〜1、
TiO2:0以上1未満、殊に0以上0.5未満、
23:0〜1
を質量%で有することを特徴とする、請求項1に記載のガラスセラミックス。
【請求項3】
不可避の痕跡量を除きAs23及び/又はSb23を含まないことを特徴とする、請求項1又は2に記載のガラスセラミックス。
【請求項4】
20℃から700℃の温度範囲の熱膨張率CTE4ppm未満、殊に3ppm未満を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
【請求項5】
光の可視領域中での光透過率を、ガラスセラミックスの試料厚さ4mmの場合に、少なくとも87%、殊に少なくとも87.5%有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
【請求項6】
三刺激値C*3未満を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
【請求項7】
計少なくとも3質量%の含有率のSnO2及びZrO2を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
【請求項8】
4.1〜8質量%、殊に4.1超え8質量%までの含有率のZnOを有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。
【請求項9】
付加的に以下の成分:V25、NiO、CuO、Cr23、CeO2、MnO2、Fe23、WO3、MoO3、Nd23の1つ以上を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラスセラミックス。

【公開番号】特開2012−46413(P2012−46413A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184528(P2011−184528)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】