説明

透明なラミネートでの使用に好適な熱可塑性樹脂組成物

本発明は、エチレンに由来する約70重量%〜約79重量%単位と、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和カルボン酸に由来する約21重量%〜約30重量%単位とを含むかまたはそれらから本質的になる改良されたポリマー樹脂組成物である。本発明の樹脂は、非積層グレージングエレメントより大きい安全性の指標を提供するグレージングエレメントとして有用な透明なラミネートの製造に特に好適である。本発明のラミネートは、アミンの添加なしに3%以下のヘーズを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明なラミネート物品に関する。より具体的には、本発明は透明なラミネート物品での中間層としての使用に好適な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス積層製品は1世紀近くの間社会に貢献してきた。風防に使用される周知の、日常的自動車安全ガラスの域を越えて、ガラスラミネートは運送業のほとんどのタイプで使用される。それらは列車、飛行機、船、および輸送のほとんどあらゆる他の形態用の窓として利用される。安全ガラスは、高い耐衝撃性および貫入抵抗を特徴としており、打ち砕かれたときにガラスのかけらおよび破片をまき散らさない。ガラスラミネートは、その上、建築用途で広範な使用を見いだす。
【0003】
安全ガラスは典型的には、2つのガラスシート間に置かれているポリマーフィルムまたはシートの中間層で一緒に接合された2つのガラスシートまたはパネルのサンドイッチ構造からなる。ガラスシートの1つまたは両方の代わりに、例えば、ポリカーボネート材料のシートなどの光学的に透明な堅いポリマーシートを用いてもよい。安全ガラスは、ポリマーフィルムまたはシートの中間層で一緒に接合されたガラスおよび/またはポリマーシートの多層を含むようにさらに展開してきた。
【0004】
中間層は典型的には、強靱性を示し、そして亀裂または破壊の場合にガラスに付着している比較的厚いポリマーフィルムまたはシートで製造される。数年にわたって、多種多様なポリマー中間層が積層製品を製造するために開発されてきた。一般に、これらのポリマー中間層は、他の特性の中でも、受け入れられるレベルの光学的透明度(4%未満のヘーズ)、耐衝撃性、貫入抵抗、耐紫外光性、長期熱安定性、ガラスおよび/または他の堅いポリマーシートへの接着性、紫外光透過率、水分吸収、耐湿性、長期耐候性を有することが望ましい。広く使用される中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタロセン触媒線状低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン酸コポリマーアイオノマー、高分子脂肪酸ポリアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル樹脂、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂、エラストマーポリカーボネートなどのポリマーを含む複雑な多成分組成物が含まれる。酸コポリマーは、透明なラミネートを製造するためのそれらの使用においてより広範囲に及ぶようになってきた。
【0005】
米国特許第3,344,014号明細書は、エチレンコポリマーアイオノマー中間層の積層ガラス製品を開示している。米国特許第3,404,134号明細書は、カルボン酸を含有するある種のコポリマーをイオン架橋する方法を開示している。米国特許第4,663,228号明細書および同第4,668,574号明細書はそれぞれ、エチレンおよびメタクリル酸モノマーから製造されたアイオノマー樹脂の金属塩を含む水不溶性アイオノマー樹脂フィルムを含む透明な積層物品を開示している。米国特許第5,344,513号明細書は、エチレンコポリマーアイオノマー中間層を含む積層された透明な基材の製造方法を開示している。米国特許第5,759,698号明細書は、有機過酸化物およびシランカップリング剤で熱硬化された金属イオン入りエチレン−メタクリル酸コポリマーのアイオノマー樹脂を含む中間層を含む積層ガラスを開示している。米国特許第5,763,062号明細書は、約17〜40重量パーセントのカルボン酸含有率を有する、押し出されたアイオノマー樹脂フィルムまたはシートであって、前記アイオノマー樹脂が本質的にアミンを含まないフィルムまたはシートを含む透明な物品を開示している。米国特許第5,895,721号明細書および同第6,238,801号明細書はそれぞれ、金属キレートの使用によって改良された接着性を有するアイオノマー樹脂の透明な層を含むグレージングを開示している。米国特許第6,150,028号明細書は、アイオノマー樹脂中間層および日照調整特性のガラスを含むガラスラミネートを開示している。米国特許第6,432,522号明細書は、15〜17重量パーセントを組み入れている、そしてナトリウムで部分中和されたエチレン・メタクリル酸を含む中間層を含む光学的に透明なグレージングを開示している。米国特許出願公開第2002/0155302号明細書は、アルカリカチオンで部分中和された、オレフィンと13〜21重量パーセントのメタクリル酸またはアクリル酸モノマーとのコポリマーを含む中間層を含む透明な積層物品の製造方法を開示している。米国特許出願公開第2003/0044579号明細書は、アルカリカチオンで部分中和された、オレフィンと13〜22重量パーセントのメタクリル酸またはアクリル酸モノマーとのコポリマーを含む中間層を含む透明な積層物品の製造方法を開示している。国際公開第99/58334号パンフレットは、約14〜24重量パーセントの酸を含有し、そして該酸の約10〜80パーセントが金属イオンで中和されたエチレンとメタクリル酸またはアクリル酸とのポリマーを含む透明なラミネートを開示している。国際公開第00/64670号パンフレットは、約14〜24重量パーセントの酸を含有し、そして該酸の約10〜80パーセントが金属イオンで中和されたエチレンとメタクリル酸またはアクリル酸とのポリマーを含む透明なラミネートを開示している。国際公開第2004/011755号パンフレットは、約14〜28重量パーセントの酸を含有し、そして該酸の約20〜60パーセントが金属イオンで中和されたエチレンとメタクリル酸またはアクリル酸とのポリマーを含む透明なラミネートを開示している。
【0006】
しかしながら、製品市場の展開は、ラミネートでガラスまたは堅い材料への中間層のより大きな接着性さえも要求している。従来の教示は、酸コポリマー中間層で接着性を増大させる一方法がコポリマー樹脂の酸含有率を増やすことであることを示唆している。しかしながら、このアプローチには問題がある。1つの問題は、20重量%より大きい酸含有率を有する高酸樹脂が商業的に入手できないことである。また、高い酸含有率を有するある種のコポリマー樹脂は自己接着する傾向が高いことが知られている。これは、高酸樹脂の製造および加工を困難にし得るか、または自己接着からの製品ロスを回避するために措置が講じられなければならないので、少なくともより費用がかかる。例えば、冷蔵容器での高酸樹脂の貯蔵(あるいはまたスリップ剤もしくは粘着防止添加剤の使用)が望ましいことがあり得る。
【0007】
商業的に入手可能であるものより高い酸樹脂を使用することに関連する別の問題は、接着特性が増大するにつれて、ラミネートの衝撃靱性が悪化し得ることが周知であることである。それ故、接着性はこれまで、衝撃性能が受け入れられるレベルに調整されてきた。すなわち、ラミネートにおける接着性と衝撃靱性とのバランスが商業的に存続可能な製品提供を得るためにとられてきた。一般にこれは、ある中間層材料に接着調整添加剤を使用することによって、または酸コポリマーでの中和のレベルを上げることによって達成される。酸コポリマーアイオノマーでの中和レベルの操作は、同様に、他の特性変化ももたらし得る。増大した接着性に対する要求は、それ故、中間層材料の酸含有率の増大時にラミネートの衝撃靱性の予期される低下および起こり得る他の変化のために、従来のやり方では容易に対応されない。
【0008】
さらにまた、ある種の通常のポリマー中間層の強靱性は現在商業的に入手可能な樹脂のそれより改良されることがより望ましくなってきた。当業者によって容易に認められるように、透明なラミネート用の中間層の製造に使用される樹脂の固有特性の改質は、樹脂およびそれから製造される中間層の他の特性に影響を及ぼし得る。この事実を認めると、酸レベル、中和レベル、または他の固有特性の変更は単純ではない。
【0009】
しかしながら、望ましい光学的透明度を有し、それ故透明なラミネート物品として有用なラミネートを提供するために商業的に入手可能な酸コポリマー樹脂が急冷される必要があるという事実はさらに問題がある。通常の酸コポリマーイオノプラスト(ionoplast)樹脂を含むラミネートに対して推奨される冷却速度は、少なくとも5°F毎分(2.78℃/分)以上である。言い換えれば、例示として、通常の条件および中間層材料として通常のイオノプラスト樹脂を用いて製造されたラミネートは275°F(135℃)のオートクレーブ温度から104°F(40℃)の温度まで約35分未満で冷却されることが推奨される。しかしながら、実際にはこれは、製造プロセスが決して理想的でない条件下に典型的には実施されるので、満たすべきささいなプロセス条件ではない。通常のイオノプラスト中間層を含むラミネートは冷却速度が下げられたときにヘーズの増加の傾向を示すので、これは問題であり得る。装置および加工条件の相違は、同じ設備で実施されるときでさえ、製品品質の変動を引き起こし得る。イオノプラスト中間層の光学的透明度の冷却速度への感受性は、透明なラミネートの製造での問題であり得る。
【0010】
堅い基材への増大した接着性、特にガラスへの接着性の目的で改良された樹脂組成物をもたらすことは望ましいことであり得る。少なくとも同じ、または好ましくは改良された耐衝撃性および強靱性のラミネートを提供する、かかる樹脂をもたらすことはさらにもっと望ましいことであり得る。さらにまた、樹脂から製造された中間層シートが通常の中間層と比べて改良された強靱性を有する、かかる樹脂を製造することは望ましいことであり得る。さらに、光学的透明度が必要条件である用途向けにデザインされるとき良好な光学的透明度を提供するラミネートにこれらの特性のすべてを有することは望ましいことであり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、本発明は、透明なラミネート物品の製造での使用に好適なエチレン酸コポリマー樹脂組成物であって、(i)該組成物が、約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)該樹脂が中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する樹脂組成物である。
【0012】
別の態様では、本発明は、約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)該樹脂が中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する樹脂組成物から得られた透明な中間層である。
【0013】
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの透明な中間層を含むラミネート物品であって、該中間層が、約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)該樹脂が中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する樹脂組成物から得られ、かつ、約3%以下のヘーズを有するラミネート物品である。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、中間層を含む約3%以下のヘーズを有する透明なラミネート物品の製造方法であって、(a)約175℃〜約250℃の温度で(i)約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する熱可塑性樹脂から得られる中間層シートを押し出す工程と、(b)(1)該中間層および少なくとも1つの他のラミネート層を設置してプレ−ラミネートアセンブリを形成し、そして(2)プレ−ラミネートアセンブリを少なくとも約120℃の温度に加熱し、かつ、しばらくの間アセンブリに圧力または真空をかけ、そして(3)該ラミネートを、透明なラミネートを得るために冷却させることによって中間層からラミネートを二次加工する工程とを含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一実施形態では、本発明は、透明なラミネートの製造での使用に特に好適な、改良されたイオノプラスト樹脂である。本発明のイオノプラスト樹脂は、3〜8個の炭素を有する約21重量%〜約30重量%のα,β−不飽和カルボン酸から本質的になるエチレン酸コポリマー樹脂である。本出願の目的のためには、本発明のコポリマーでの最終酸レベルの制御は厳密ではなく、それ故最終製品中の酸の範囲は、本発明の意図される範囲から逸脱することなしに開示される範囲の約±1%内で変わり得ることが理解されるべきである。
【0016】
性能特性、生産能力、または望ましいプロセスパラメーターに依存して、様々な酸レベルが好ましいものであり得る。例えば、幾つかのケースでは、約21重量%(すなわち21±1重量%)の酸レベルが好ましいものであり得るし、他のケースでは約22±1重量%の酸レベルを有することが好ましいものであり得る。
【0017】
改良は、増加した酸レベルのおかげで、ラミネートの強靱性および耐衝撃性を損なうことなくガラスへの改良された接着性を提供する樹脂を含む。イオノプラスト樹脂は少なくとも部分的に中和され、アルカリおよびアルカリ土類金属イオン、ならびに遷移金属イオンからなる群中のイオンから選択された金属イオンを含む部分塩として存在する。本発明のイオノプラスト樹脂は、カルボン酸基の約10%〜約90%が中和されている。好ましくは、本発明のイオノプラスト樹脂は約15%〜約45%中和され、より好ましくは約20%〜約35%中和されている。さらにより好ましくは、樹脂は約25%〜約35%中和されている。
【0018】
本発明の樹脂は、本発明のラミネートを製造するために使用されるとき、本明細書に記載されるような中間層中により高い酸含有率を含むラミネートについて予期されるものと比べて改良された強靱性を示す。理論に拘束されるものではないが、本発明での改良された強靱性は、それが中和される前により低いメルトインデックス(MI)を有するエチレンコポリマーベース樹脂を製造することによって得られると考えられる。本発明のベース樹脂は、190℃で測定されたときに60グラム/10分未満、好ましくは55グラム/10分未満のMIを有する。より好ましくはMIは50グラム/10分未満である。さらにより好ましくはMIは35グラム/10分未満である。中和後に、MIは2.5グラム/10分未満、場合により1.5g/10分未満であり得る。
【0019】
貯蔵、加工または取扱いに役立つために、本発明のアイオノマーはまた、ブロッキングを防止するための試剤を含んでもよい。ブロッキング防止剤または加工助剤の使用は、本発明の実施に際して任意であるが、好ましい。通常のブロッキング防止剤を使用することができ、当業者は、かかる試剤が望ましいかどうかを決定することができる。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、本発明の樹脂から得られたシートまたはフィルムである。本発明のシートまたはフィルムは、例えば、通常の方法を用いて本発明の樹脂を押し出すことによって得ることができる。押出を用いて約0.38〜約2.60mmの範囲の厚さのシートを提供することができる。本発明の樹脂からフィルムを得るために、融解樹脂からフィルムを例えばキャストするまたはブローするなどの通常の方法を用いることができる。本発明の実施に際し対象となるラミネートのために、中間層シートの押出が好ましい。本発明の中間層の押出は、約175℃〜約250℃の範囲の温度で実施することができる。本発明の中間層シートは、表面パターンなしに押し出すことができるが、本発明の中間層は、ラミネートが二次加工されるときにその界面空間から空気またはガス蒸気を除去するプロセスを容易にするために表面パターンを有することが好ましい。表面パターンは、公知のメルトフラクチャー技術によって、またはエンボス化ツールの使用によって付けることができる。表面パターンを含む中間層の光学的透明度は、該中間層から最終的に得られる透明なラミネートと比べて劣っている。積層プロセスは、中間層に光学的透明度を回復させる。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、本発明の樹脂を含む押出シートから製造されたラミネートである。ガラス積層技術では、ガラスへの増加した接着性が減少した耐衝撃性のラミネートをもたらし得ることは公知である。本発明の樹脂は改良された接着性を有するが、改良された樹脂の通常樹脂と比べてより低いメルトインデックスのおかげで、改良された耐衝撃性もまた有する。本願で権利請求の対象とされる樹脂のガラスへの接着性は、ダブル−片持ち梁ビーム(Double−Cantilever Beam)(DCB)試験によって測定されるとき、現在特許される樹脂を使用して得られたラミネートについて200J/m2より大きく、そしてさらに約300kJ/m2より大きい衝撃靱性を示す。好ましくは、DCB接着強度は約200〜約1200J/m2の範囲内である。本願で権利請求の対象とされる発明のラミネートの剥離強度は約6ポンド/インチ超〜約20ポンド/インチである。
【0022】
イオノプラスト樹脂を含むガラスラミネートの製造で接着性および衝撃靱性の適切なバランスを見いだすことが本発明の目標である。ラミネートの強靱性は、衝撃靱性、特に衝撃貫入を測定することによって求めることができる。本発明のラミネートは一般に、従来のラミネートより大きい貫入抵抗を提供する。
【0023】
本発明の中間層は、公知のおよび従来の方法に従ってガラスまたは他の透明な材料に積層することができる。例えば、本発明の中間層は、ガラスなどの、少なくとも1つの他のラミネート構造層と共に組み合わせて、オートクレーブ中で中間層の軟化点より高い温度でガラスに積層することができる。典型的には、イオノプラスト中間層については、オートクレーブ温度は少なくとも約120℃であることができる。好ましくはオートクレーブ温度は少なくとも約125℃、より好ましくは少なくとも約130℃である。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、高酸樹脂がラミネートを得るために120℃未満、好ましくは110℃未満の温度で積層され得る積層方法であって、ラミネートの接着が、約20重量%未満の酸を有する、そして120℃以上の積層温度を必要とする通常のエチレンコポリマーアイオノマーから得られたラミネートでのそれと少なくとも同じほど高い方法である。比較的低温の積層の可能性は、本発明の中間層で(例えばプレス加熱、パルス加熱、またはパススルー・オーブン加熱などの)代わりの積層法の開発を提供する。
【0025】
本明細書での使用に好適な中間層は好ましくは、本来であればラミネートの層間の界面に捕捉されるかもしれない空気または捕捉蒸気およびガスの除去を容易にする表面パターンを積層前に含む。ラミネートアセンブリに真空または圧力をかけてガラスへの接着を推進するおよび/または捕捉ガスを強制的に外に出すことができる。
【0026】
本発明の別の実施形態では、積層は、熱とそれが加熱されているときにラミネートアセンブリへの、例えば、ニップロールからのロール圧力、または他の機械的圧力との適用によって大気圧で実施することができる。積層の当業者であれば、公知のそして従来技術で実施されるものと一緒に本出願の教示を利用することによって、本発明のラミネートを得るための積層の実施方法が分かるであろう。このようにして得られたラミネートは、少なくとも約5°F/分(2.78℃/分)の冷却速度で周囲温度に冷却することができる。
【0027】
本発明のラミネートは、本発明の中間層の多層を用いて構築することができ、および/または異なる化学組成の中間層またはフィルム層を含むことができる。例えば、本発明の中間層は、例えば、本発明の中間層と共に積層することができる、中和前に15〜20重量%酸を有する通常のアイオノマー中間層、EVAコポリマー、ポリウレタン、ポリ塩化ビニルポリマー、またはPVBなどの他の通常の中間層材料と一緒に積層することができる。本発明のラミネートは、ポリマー層間および/またはポリマー層とガラスとの間の接着を高めるために接着層を含むことができる。通常の接着剤が任意成分として本発明の実施に際し有用であり得る。典型的には本発明の中間層はガラスへの接着を促進するために接着剤を必要としない。
【0028】
別の実施形態では、意外なことに本発明のラミネート(約3%以下のヘーズを有する)は、ラミネートが約2.75℃/分未満の速度で冷却される冷却工程を含む方法によって得ることができる。さらにまた、本発明のラミネートの冷却速度は、約2℃/分未満に遅くすることができ、約3%以下のヘーズを有するラミネートを得ることができ、さらにより意外なことに、冷却速度は1℃/分未満まで遅くして約3%以下のヘーズを有するラミネートを得ることができる。
【0029】
本発明のラミネートは、建物の窓;自動車、飛行機、列車などの風防およびサイドライト(sidelite);階段、床、壁、間仕切りなどの構造サポートユニット;天井などの他の建築ユニットなどの用途で有用である。本発明のラミネートは、本発明の改良された樹脂組成物から得られた少なくとも1つの中間層に接着されている少なくとも1つの堅い構造層を含むことができる。堅い構造層としてのガラスの少なくとも1つの層と共に本発明の少なくとも1つの中間層を含むラミネートが好ましい。本発明のラミネートは、安全ガラスが望ましいかまたは必要とされる用途で特に有用である。
【実施例】
【0030】
次の実施例および比較例は、本発明をさらに例示するために提示される。実施例は、決して本発明の範囲を限定することを意図されず、それらは、本明細書で特許請求されおよび/または記載される本発明と矛盾するような形で特許請求の範囲または明細書を規定するために用いられるべきでもない。
【0031】
試験方法
ヘーズは、ASTM(米国材料試験協会)D1003に従って測定し、2.5度より大きいだけ入射から外れる透過光の百分率と定義する。ヘーズ/透明度測定値は、ビック−ガートナ・ヘイズ−ガード(Byk−Gartner Haze−gard)(登録商標)プラス(HGプラス)を用いて得た。
【0032】
中間層強靱性はASTM 1822に従って測定した。これは、ガラス中間層ラミネートの衝撃荷重中に発生する速度に似ている歪みの高速度でポリマーシートを裂くためのエネルギーを測定する引張衝撃法である。
【0033】
ラミネート強靱性は振子衝撃試験を用いて測定した。衝撃試験は、ラミネートを貫通するために必要とされる衝撃エネルギー(貫通エネルギーと定義される)を確認するためにガラスラミネートに関して行った。一般的なガイドラインとして、自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)(SAE)推奨基準(Recommended Practice)−J2568「道路車両のための安全グレージングシステムの貫入抵抗(Intrusion Resistance of Safety Glazing System for Road Vehicles)」によって定義される振子衝撃子(再現性があり、正確であると業界によって知られる)を用いた。衝撃子質量を、適度な衝撃落下高さを用いることができるように9.5kgから31.8kgに増やした。振子を、約5.6メートルの高さから6ケーブル(4mm直径)に吊した。6ポイント・ケーブル懸架は、所望の衝撃ポイントの±5mmの精度を提供する。衝撃子は、繰り返し衝撃およびガラス破片からの損傷を防止するために焼きを入れた75mm直径半球形衝撃端へスチールから製造される。サンプルを堅いスチール支持構造物へ取り付け、ガラス表面に垂直な衝撃を可能にし、サンプルのエッジが目に見えて面内移動するのを防いだ。30cm平方ラミネートを、ラミネートの外側22mmを周囲保持する整合ネオプレンゴムガスケット付きの2つのスチール骨組み間に挟んだ。十分な締め付けを用いて支持骨組み内でのサンプルのいかなる滑りも最小限にした。衝撃を、多数セットのサンプルに関して様々な衝撃エネルギーで行った。貫通エネルギーを次に、業界で広く用いられる伝統的な「階段ケース」方法論に基づいた結果から計算した。
【0034】
上記の衝撃を受けたセットからのラミネートを次に、潜在的に不利な環境条件下での弾力性および中間層へのガラスの保持の加水分解安定性についてチェックするために室温で水の容器へ浸した。より高いパーセント酸含有中間層は、より低い酸相当品より破損後にガラス破片のより大きい保持率を示す。
【0035】
ラミネートを、インスツルメンターズ社(INSTRUMENTORS,Inc.)、モデルSP−102B−3M90スリップ/剥離試験機(SLIP/PEEL Tester)を用いて90度角度か180度角度かのどちらかで剥離した。ラミネートを25.4mm(1インチ)毎分の速度で剥離した。表1に示す剥離強度データは、ホットプレス成形された中間層シートから製造されたラミネートに関して取得した。表3に示す剥離強度データは、押し出された中間層シートから製造されたラミネートに関して取得した。
【0036】
ガラスラミネートは次の方法によって製造した。アニールしたガラスのシート300mm平方×3mm厚さを、脱イオン水中のリン酸三ナトリウム(5g/リットル)の溶液で洗浄し、次に脱イオン水で十分にリンスし、乾燥させた。0.76mmの厚さを有する様々なポリマー中間層(下の表を参照されたい)をガラスの底部片のトップ上に置いた。似たガラスの第2のライト(lite)を次にこのポリマーシートの一面に置いた。プレアセンブリを次に、各層の相対的ポジショニングを維持するために外周周りにいくつかのポリエステルテープで一緒にテーピングすることによって計量装置に保持した。ナイロン布ストリップを次に、層内からの空気除去を容易にするためにプレアセンブリの外周周りに置いた。プレアセンブリを次に、ナイロン真空バッグの内部に入れ、真空ポンプに連結した。真空をかけて内部からの空気の実質的な除去を可能にした(バッグ内部の空気圧を50ミリバール絶対より下に下げた)。プレラミネートアセンブリを次に空気オートクレーブ中に入れ、圧力および温度を、15分間内に周囲から135℃および200psiに上げた。この温度および圧力を次に、ラミネートアセンブリを適切に熱するのに十分な時間(このケースでは30分)保持した。次に温度を20分間、60分間または120分間内に40℃に下げ、それによって圧力を次に周囲に戻し、ラミネートユニットを取り出した。オートクレーブに入れた後ラミネートを十分にきれいにし、ヘーズを測定した。測定値を下の表1に報告する。
【0037】
21重量%メタクリル酸を有する樹脂から得られた中間層の幾つかのシートを、オートクレーブ中105℃か135℃かのどちらかでガラスに積層した。シートは表2に示すような含水率を有し、ラミネートを180°剥離強度について試験した。




【0038】
表1

a1インチ毎分の速度で行った剥離。
1接着性が測定されなかった-中間層がガラスから引き離されるよりむしろ引き裂かれた。
【0039】
表2





【0040】
表3

【0041】
表4 ガラス/ポリマーラミネート振子衝撃特性





【0042】
表5 振子衝撃試験後のガラス損失

【0043】
ハリケーン衝撃試験
沿岸地域での建築用途向けには、ガラス/中間層/ガラスラミネートは、破片衝撃および風圧サイクルへのラミネートの耐性を測定する模擬ハリケーン衝撃およびサイクル試験に合格しなければならない。現在受け入れられる試験は、南フロリダ建築規制条例(South Florida Building Code)第23章、セクション2315「風で運ばれる破片についての衝撃試験(Impact tests for wind born debris)」に従って行う。疲労荷重試験は1994年付けのセクション2314.5の表23−Fに従って測定する。この試験は、厳しい気候、例えば、ハリケーン中の風で運ばれる破片衝撃の力をシミュレートする。
【0044】
本試験は、ラミネート上での2つの衝撃(ラミネートサンプルの中心における1つ、引き続くラミネートの角における第2衝撃)からなる。衝撃は、公称2インチ(5cm)×4インチ(10cm)および8フィート(2.43メートル)長さの9ポンド(4.1キログラム)板を空気圧砲から50フィート/秒(15.2メートル/秒)で発射することによって行う。ラミネートが上記の衝撃シーケンスを切り抜けた場合、それは空気圧サイクル試験を受ける。この試験では、ラミネートをチャンバーにしっかりと固定する。陽圧試験では、ラミネートを、衝撃面を外側にしてチャンバーに固定し、真空をチャンバーにかけ、次に次の表Aに示すサイクルシーケンスと一致するように変える。下の表Aに示すように、圧力サイクル・スケジュールを最高圧力Pの分数として明記する。第1の3500サイクルおよび次のサイクルの各サイクルを約1〜3秒で完了させる。陽圧試験シーケンスが完了すると、試験の陰圧部分のためにチャンバーに対し衝撃面を内側に向けてラミネートを逆にし、真空を次のサイクルシーケンスに対応してかける。値は負の値(−)として表す。












【0045】

絶対圧レベル(ここで、Pは平方フィート当たり70ポンド(3360パスカル)である)。
【0046】
ラミネートは、長さで5インチ(12.7cm)にわたっておよび幅で1/16インチ(0.16cm)以下で裂け目または開口部が全くないとき、衝撃およびサイクル試験に合格する。
【0047】
ハリケーン衝撃試験に使用したガラスラミネートは次の方法で製造する。すべてのラミネートは、ナトリウムイオンで37%中和された、最終メルトインデックスを有する81%エチレン、19%メタクリル酸からなるアイオノマー樹脂(タイプ「A」)およびナトリウムイオンで32%中和された、約0.9の最終メルトインデックスを有する78.5%エチレン、21.5%メタクリル酸からなる(タイプ「B」)の90ミル(2.3mm)厚さ中間層を使用した。中間層を下に記載するようなガラスの2層間に挟んだ。アイオノマー樹脂中間層は約361MPaの貯蔵ヤング率(StorageYoung’s Modulus)を有する。
【0048】
すべてのラミネートは、ガラスパネル間に中間層を入れることによって製造する。ガラスパネルのそれぞれを脱イオン水で洗浄する。ラミネートを空気オートクレーブ中に220PSIG(1.6MPa)圧力で、135℃で30分間入れる。衝撃試験用のラミネートは30インチ(77.2cm)高さ×48インチ(121.9cm)幅である。ラミネートを次に、グレージングしたアルミニウム骨組みにシリコーンシーラント(ダウ・コーニング(Dow Corning)タイプ995)を使って接着した。この骨組みを次に、全体グレージングの移動を最小限にするようなやり方で衝撃試験を行うためにスチール支持骨組みに取り付けた。試験される、表6に表示されるラミネートを衝撃試験して増加した速度での木材飛翔体に対する衝撃「靱性」を測定した。表7のラミネートを先ず、フロリダ衝撃に従って試験し、次に風圧サイクル試験シーケンスにさらした。衝撃試験では、公称2インチ(5cm)×4インチ(10cm)および8フィート(2.43メートル)長さの9ポンド(4.1キログラム)松材板の飛翔体を、空気圧砲から50フィート/秒(15.2メートル/秒)でラミネートに向かって推進させ、ラミネートにその表面に「垂直に」ぶつける。ラミネートのそれぞれを、ラミネートの2つの異なる場所で、ガラスを破砕する2つの衝撃にさらす。ラミネートの中心での衝撃は標準的方法(約50fpsの速度)で行ったが、角衝撃の速度はグレージングの衝撃「強靱」を測定するために変えた。試験の結果を下の表6で下に示す。
【0049】
追加サンプルは、より大きなサイズ(2.28mmアイオノマー中間層(Ionomer Interlayer)で積層された1.52m×2.44m w/2ライト6mm熱強化ガラス(Heat−Strengthened Glass))で製造し、シリコーンシーラントおよび26mmグレージング重なりを用して市販のアルミニウム骨組みシステム(Commercial Aluminum Framing System)へグレージングして骨組みを作った。中心および角の両方の衝撃を、いかなる裂け目も生じさせることなく規定の50fps飛翔体速度で行った。空気圧サイクルシーケンスを次に、グレージングパネルのハリケーン力風応力および屈曲をシミュレートするために行った。結果を表7に示す。
【0050】
表6

【0051】
表7
空気圧サイクルシーケンス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なラミネート物品の製造での使用に好適なエチレン酸コポリマー樹脂組成物であって、(i)該組成物が、約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)該樹脂が中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する樹脂組成物。
【請求項2】
約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)樹脂が中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する樹脂組成物から得られた透明な中間層。
【請求項3】
少なくとも1つの透明な中間層を含むラミネート物品であって、該中間層が、約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)樹脂が中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する樹脂組成物から得られ、かつ、約3%以下のヘーズを有するラミネート物品。
【請求項4】
中間層を含む約3%以下のヘーズを有する透明なラミネート物品の製造方法であって、(a)約175℃〜約250℃の温度で(i)約70〜約79重量%のエチレンと、酸基の少なくとも約20%〜約35%が中和されている、3〜8個の炭素を有するα,β−不飽和酸からなる群中の酸から選択された約21〜約30重量%のカルボン酸モノマーとから本質的になり、そして(ii)中和前に約60g/10分以下のメルトインデックスを有する熱可塑性樹脂から得られる中間層シートを押し出す工程と、(b)(1)該中間層および少なくとも1つの他のラミネート層を設置してプレ−ラミネートアセンブリを形成し、そして(2)プレ−ラミネートアセンブリを少なくとも約120℃の温度に加熱し、かつ、しばらくの間アセンブリに圧力または真空をかけ、そして(3)該ラミネートを、透明なラミネートを得るために冷却させることによって中間層からラミネートを二次加工する工程とを含む方法。
【請求項5】
前記ラミネートが2.75℃/分以下の速度で冷却される請求項4に記載の方法。

【公表番号】特表2008−519104(P2008−519104A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539265(P2007−539265)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/039328
【国際公開番号】WO2006/057771
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】