説明

透明アンテナ、及び画像表示装置

【課題】十分な導電性と十分な透明性を両立し、しかも、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立する透明アンテナと、この透明アンテナを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】透明アンテナ10は、透明基材1の少なくとも一面1p上にアンテナパターン2が形成され、アンテナパターンは不透明な導電体層をメッシュパターン3Pで形成した導電体メッシュ層3によって形成され、メッシュパターンは、多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分の数の平均値Nが3.0≦N<4.0で、開口領域が繰返周期を持つ方向が存在しないパターンからなる領域を含む。画像表示装置はこの透明アンテナをディスプレイパネルの画面上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明性を有する透明アンテナと、この透明アンテナを画面上に配置した画像表示装置に関する。特に、アンテナパターンの透明性と導電性とが両立する上、濃淡ムラ発生とディスプレイパネルの画素配列との干渉によるモアレ発生を共に防げる透明アンテナと、これを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、テレビ電波やFM電波等の各種電波を受信する為の、或いはカーナビゲーションシステムの普及に伴いGPS(global positioning system)衛星等の位置座標情報の電波を受信する為の、透明アンテナとして、自動車のフロントガラスに貼り付けるフィルムアンテナが知られている。フィルムアンテナは、視界を妨げない様に、通常、透明ポリエステルフィルム等に、金属箔、導電ペーストでアンテナパターンを形成して、一応はフィルムアンテナ全体としては透明性を確保したアンテナである。ただ、アンテナパターンを構成する金属箔、導電ペースト等の導電体はそれ自体が不透明であり、視界を大幅に妨げるものではないが、アンテナパターン自体は見えるものである。一方、アンテナパターンに導電体それ自体が透明であるITO(インジウム錫酸化物)膜を用いた透明アンテナも提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
ただ、この様な金属や導電ペーストなど不透明な導電体パターンによる透明アンテナは、導電性はよいが、アンテナパターンが見える。このため、近くで見る用途、例えば携帯電話の表示窓などディスプレイパネルの画面上に載置する用途への適用は、表示を視認する際に邪魔になり、適用できなかった。この点でアンテナパターンにITO膜を用いれば、導電体自体が透明であるので、表示の妨げにはならない。しかし、ITO膜は導電性が劣り、アンテナとしての性能が十分に得られない。また、ITO膜は導電性を上げると透明性が低下してしまう。従って、この様な用途にも適用できる透明アンテナの導電体としてITO膜は、十分な導電性と十分な透明性を両立できなかった。
【0004】
そこで、本出願人は、アンテナパターンの透明性と導電性とが両立する透明アンテナを提案した(特許文献3)。この透明アンテナは、透明基材上に形成される透明アンテナのアンテナパターンが、不透明な導電体層の形成部としての導体部と非形成部としての多数の開口部とによるメッシュ状の導電体メッシュ層によって形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−198401号公報
【特許文献2】特開平02−082701号公報
【特許文献3】特開平2011−066610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、透明アンテナを、携帯電話の表示窓への適用などディスプレイパネルの画面上に載置する用途では、ディスプレイパネルを構成する画素の繰返周期と、透明アンテナを構成する導電体メッシュ層のメッシュパターンの繰返周期とが干渉して、モアレが生じることがある。
そこで、本発明者らは、モアレが生じない様にする為に、導電体メッシュ層のメッシュパターンを、完全にランダムパターン化することを目指し、画像表示装置関連分野に於いて提案されている公知のランダムパターンを各種模索した。
【0007】
例えば、電磁波シールド用の導電体メッシュ層のメッシュパターンとして、国際公開第2007/114076号のパンフレットでは、有機溶剤処理と酸処理とを組み合わせた化学処理によって形成したメッシュパターンを提案している。このメッシュパターンは完全にランダムパターン化している。しかし、このメッシュパターンではモアレは解消するが、パターン自体に粗密が存在し、その粗密による濃淡の外観ムラがあり、ディスプレイパネルに適用したときには、明度の濃淡ムラが生じる。また、線の一部が断線しており、透明性を低下させるだけで導電性に寄与しない部分がある。
一方、特開平11−121974号公報では、モアレ防止の為に、これも電磁波シールド用の導電体メッシュ層のメッシュパターンとして、線の一部を断線させることなく、配列の周期性を一部は残し、一部はランダム化したメッシュパターンを提案している。しかし、この一部ランダム化したメッシュパターンでは、濃淡ムラは軽減し、導電性も確保できるが、モアレが残る。
この様に、画像表示装置関連分野に於いて提案されてきた公知のパターンでは、モアレの解消と、濃淡ムラの解消とを、両立させることが出来なかった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、メッシュパターンによって十分な導電性と十分な透明性を両立し、しかも、メッシュパターンに起因するモアレと濃淡ムラに対して、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立する透明アンテナを提供することである。また、この透明アンテナを画面上に配置した画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、次の様な構成の、透明アンテナと画像表示装置とした。
(1)透明基材の少なくとも一面上にアンテナパターンが形成され、
該アンテナパターンは不透明な導電体層をメッシュパターンで形成した導電体メッシュ層によって形成され、
該メッシュパターンは二つの分岐点の間を延びて多数の開口領域を画成する多数の境界線分から構成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが3.0≦N<4.0であり、且つ、該開口領域が繰返周期を持つ方向が存在しないパターンからなる領域を含む、透明アンテナ。
(2)ディスプレイパネルの画面上に、上記(1)の透明アンテナが配置されている、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
(1)本発明の透明アンテナによれば、導電体層にそれ自体は不透明であるが導電性に優れた金属層や導電性組成物層などを用いてメッシュパターンで形成された導電体メッシュ層とすることができるので、十分な導電性と十分な透明性とを両立できる。しかも、導電体メッシュ層のメッシュパターンで画成される多数の開口領域に、どの方向にも周期性が存在せず、またメッシュパターンの粗密も存在しないので、ディスプレイパネルに適用したときに、画素とのモアレも濃淡ムラも共に生じず、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立する。したがって、十分な導電性と十分な透明性が両立し、しかも、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立する。
(2)本発明の画像表示装置によれば、ディスプレイパネルの画面上に設けた透明アンテナが上記効果を有するため、アンテナとしての十分な導電性と、これと両立した十分な透明性が得ら、しかも、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立するので、品質の良い画像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による透明アンテナの一実施形態例を示す斜視図。
【図2】本発明による透明アンテナのアンテナパターンの別の形状を例示する平面図。
【図3】アンテナパターンを構成する導電体メッシュ層のメッシュパターンの一例を示す平面図。
【図4】メッシュパターンに繰返周期が存在しないことを説明する平面図。
【図5】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成してメッシュパターンを決定する方法を示す図。
【図10】メッシュパターンがアンテナパターンのパターン領域の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図11A】本発明の透明アンテナの導電体メッシュ層のメッシュパターンを示す平面図。
【図11B】ディスプレイパネルの画素配列を示す平面図。
【図11C】図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図12】規則的パターンを有する導電体メッシュ層(A)と、ディスプレイパネルの画素配列(B)と、これらを重ねた状態(C)を示す平面図。
【図13】導電体メッシュ層のライン部の主切断面形状の各種例を示す断面図。
【図14】本発明による透明アンテナの別の形態例(機能層付き)を例示する断面図。
【図15】本発明による画像表示装置の一形態を例示する断面図。
【図16】従来の透明アンテナの一形態を例示する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、各層毎に図面を参照しながら説明する。
【0013】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0014】
「一面1p」と「他の面1q」との面それ自体の区別はないが、アンテナパターン2が常に存在する面を「一面1p」として取り扱う。
「シート面」とは、シート状形態の透明アンテナ10を全体的かつ大局的に見た場合において透明アンテナ10の平面方向と一致する面のことを意味する。また、この場合、「シート面」は、透明基材1の「一面1p」及び「他の面1q」と平行な面でもある。
「主切断面形状」とは、導電体メッシュ層3(メッシュパターン3Pで言えばそのライン部Ltに該当する導電体メッシュ層3)の断面形状について、注目する部分が形成された面に立てた法線nに平行な断面のうち、導電体メッシュ層3の断面に注目する部分の延在方向に直交する断面として定義される「主切断面」に於ける形状のことを意味する。
「平面視形状」とは、形状について注目する部分の対象物(アンテナパターン2や導電体メッシュ層3)が形成された面に於ける形状のことを意味する。「平面視形状」とは、シート状の透明アンテナ10において、形状について注目する部分の対象物(アンテナパターン2や導電体メッシュ層3)を、シート面に立てた法線nの方向から見た形状のことでもある。
【0015】
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0016】
〔B〕透明アンテナ:
本発明の透明アンテナを、図1の斜視図で示す一実施形態例を参照して説明する。図1(A)は透明アンテナ10の全体図、図1(B)は透明アンテナ10をアンテナパターン2が形成された部分の部分拡大図である。
【0017】
図1(A)及び(B)の一実施形態例で例示する本発明の透明アンテナ10は、透明基材1の一面1p上にアンテナパターン2が形成されており、このアンテナパターン2は、不透明な導電体層を本発明固有のメッシュパターン3Pで形成した導電体メッシュ層3を、アンテナパターン2の形状に形成することで形成されている。メッシュパターン3Pは、多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成され、境界線分Lは、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0であり、且つ、前記開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない領域を有するランダムパターンとなっている。
透明アンテナ10を、この様な構成とすることによって、十分な導電性と十分な透明性を両立させ、しかも、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立させることができる。
【0018】
なお、図1に示す一実施形態例では、アンテナパターン2は透明基材の一面1pのみに形成されている形態であったが、アンテナパターン2は透明基材1の他の面1qにも形成されていても良い。この場合、アンテナパターン2は、一面1p上に形成されたパターンと、他の面1q上に形成されたパターンとは、同じものでも良く、異なるものでも良い。
【0019】
以下、本発明による透明アンテナ10を、構成要素毎に更に詳述する。
【0020】
《透明基材》
透明基材1は、図1で例示の様に、アンテナパターン2となる導電体メッシュ層3を支持してその変形を防ぐ機能等を担う層である。
透明基材1には、公知の透明な材料を使用すれば良く、可視光線領域での透明性、耐熱性、機械的強度等を考慮すると、樹脂フィルム(乃至シート)が代表的である。樹脂フィルム(乃至シート)の樹脂は例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは機械的強度、透明性、コスト等の点で好適な材料である。なお、シート状の透明基材の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常20〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
また、透明基材1は、透明アンテナを被着体に貼り付け易い点でフレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂フィルムが好ましいが、用途に応じたものとすれば良く、ガラス、石英、セラミックス、樹脂等からなる剛直な板や成形物などでも使用できる。なお、板材の場合、その厚みは通常0.5〜10mmだが、特に制限はない。
【0021】
透明基材1の一面1pと他の面1qとは、通常は透明基材1がシート状であるので、そのシート面に該当し互いに平行な面となる。
透明基材1は、通常は「シート状」であるが、この「シート」とはフィルムや板も含む概念であり、厚みや剛性によって区別されるものではない。
【0022】
《アンテナパターン》
アンテナパターン2は、それ自体は不透明な導電体層がメッシュパターン3Pで透明基材1の面上に形成された導電体メッシュ層3として形成されることによって構成され、大局的に見たときに透明に見えるアンテナ機能を有するパターンである。
アンテナパターン2は、透明基材1の少なくとも一面1pに形成され、さらの他の面に形成されていても良い。例えば、シート状の透明基材1に対して、そのシート面の両面に形成されていても良い。また、アンテナパターン2をその両面から透明基材1で挟む構成としても良い。
アンテナパターン2のパターン形状自体(導電体メッシュ層3の輪郭形状)は、ダイポールアンテナなど用途に応じたものとすれば良い。例えば、図1(A)で例示のパターン形状の他に、図2の平面図で例示するパターン形状等、送受信する電波の周波数、電界強度、所望の利得、用途等に応じて適宜なパターン形状とすれば良い。
【0023】
〔導電体メッシュ層〕
図1で例示の様に、本発明は、アンテナパターン2を形成する導電体層を、アンテナパターン2内に於いて、従来技術の様に、全面ベタ層(連続層)で構成するのではなく、多数の開口領域Aを有するメッシュパターン3Pによって形成するものであり、このパターン形状に注目した表現として、該メッシュパターン3Pで形成された導電体層を導電体メッシュ層3と呼ぶことにする。導電体メッシュ層3は、その形成部である導電体層の部分は不透明であるが、その非形成部である多数の開口領域Aによって透明性を確保している。
一方、図16の断面図で例示する従来の透明アンテナ20の様にITO膜を用いる従来のアンテナパターン2は、導電体層はアンテナパターン2の内部全域で開口領域Aが存在しない連続層の導電体連続層5である。
【0024】
導電体メッシュ層3は、平面視形状が、多数の開口領域Aを有するメッシュパターン3Pから成り、該メッシュパターン3Pは多数の開口領域Aを有する特定の形状で、該開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない、ランダムパターンとなっている。
【0025】
[メッシュパターンとこれにより画成される開口領域]
メッシュパターン3Pは、図3に示す如く、二つの分岐点Bの間を延びて多数の開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成され、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、前記境界線分Lで画成された前記開口領域Aに繰返周期を持つ方向が存在しない形状となっている。
【0026】
さらに、導電体メッシュ層3が有するメッシュパターン3Pについて、図3および図9を主として参照しながら、メッシュパターン3Pを、シート状の透明アンテナ10のシート面への法線方向から観察した場合における平面視形状で、説明する。
【0027】
図3および図9に示すように、メッシュパターン3Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。メッシュパターン3Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、メッシュパターン3Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで囲繞され、区画されて1つの閉領域としての開口領域Aが画成されている。
【0028】
なお、図3および図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、開口領域Aの内部に延び入って途中で行き止まりとなる導電性に寄与し無いライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、アンテナパターン2を構成する導電体メッシュ層3に十分な透明性と高い導電性とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
【0029】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施形態による導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pでは、開口領域Aが繰返周期を有する方向が存在しないようになっている。モアレを確実に解消する為には、メッシュパターン3Pの全領域がこの様に、どの部分でも開口領域Aに繰返周期を有する方向が存在しない構成とすることが好ましい。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単にメッシュパターン3Pのパターンを不規則化するのではなく、メッシュパターン3Pの開口領域Aが一定の規則性を持った繰返周期で並べられた方向が存在しないようにメッシュパターン3Pのパターンを画成することにより、メッシュパターン3Pを導電体メッシュ層3に有する透明アンテナ10と画素配列を有したディスプレイパネル30とを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0030】
(繰返周期の不存在)
図4は、メッシュパターン3Pで画成される多数の開口領域Aに、繰返周期が存在しないことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、任意に方向を向く任意の位置に一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diは、境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、開口領域Aに直線di上で隣接する別の開口領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意方向で任意位置の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意方向で任意位置の直線diと遭遇する多数の開口領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共にメッシュパターン3Pとは分離して描いてある。
この直線diを図4で図示のものから任意の角度回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。即ち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
【0031】
さらに、本実施形態による導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、メッシュパターン3Pの配列パターンを、図12(A)に示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした場合、開口領域Aの配列を不規則化して、開口領域Aが繰返周期を持って並べられた方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0032】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、メッシュパターン3P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口領域Aが形成されているメッシュパターン3Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該メッシュパターン3Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0033】
実際に、図3に示された透明アンテナ10の導電体メッシュ層3を構成するメッシュパターン3Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3のメッシュパターン3Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0034】
(モアレ発生状況)
そして、図11Cには、図3及び図11Aに示された導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pを、図11Bに示されたディスプレイパネル30に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11Cからも理解され得るように、図3及び図11Aに示されたメッシュパターン3Pを実際に作製してディスプレイパネル30の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0035】
ここで、図11Bで示されたディスプレイパネル30の画素配列は、ディスプレイパネル30に於ける典型的な画素配列である。図11Bに示す様に、このディスプレイパネル30では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、ディスプレイパネル30はカラーで画像を形成することができる。図11Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図11Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図11Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図11Bは、ディスプレイパネル30の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、ディスプレイパネル30のパネル面への法線方向から当該ディスプレイパネル30を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0036】
一方、メッシュパターン53Pで画成される開口領域Aに一定の繰返周期が存在する場合のモアレ発生を例示するのが図12である。ここでは、メッシュパターン53Pは、一定の繰返周期を有することを明示的に示す意味で、繰返周期パターン53Pとも言うことにする。
【0037】
図12(A)に図示したものは、正方格子状パターンで形成され縦横に各々一定の繰返周期が存在する繰返周期パターン53Pで形成された導電体メッシュ層53であり、本発明の透明アンテナ10の導電体メッシュ層3とは異なるものである。
図12(C)には、図12(A)に示された繰返周期を有する繰返周期パターン53Pの導電体メッシュ層53を、図12(B)に示されたディスプレイパネル30(図11Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図12(A)、図12(B)及び図12(C)からも理解され得るように、繰返周期パターン53Pからなる導電体メッシュ層53がディスプレイパネル30の画素配列上に配置されると、導電体メッシュ層53を構成する繰返周期パターン53Pの規則的パターンと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図12(C)に示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0038】
なお、図12(A)および図12(C)に示された例では、繰返周期パターン53Pによって形成された正方格子の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図12(C)に縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び繰返周期パターン53Pの繰返周期比、繰返周期パターン53Pの線幅等の要因にも依存する。繰返周期パターン53Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、ディスプレイパネル30の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なる透明アンテナを用意する必要が有る。
【0039】
(メッシュパターンのパターン形状の作成方法)
ここで、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0であり且つ開口領域Aが一定の規則性を持った繰返周期で並べられた方向が存在しないメッシュパターン3Pのパターンを作製する方法の一例を以下に説明する。
【0040】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定してメッシュパターン3P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたメッシュパターン3Pは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0041】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0042】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0043】
以上の手順で、メッシュパターン3Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。メッシュパターン3Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、メッシュパターン3Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0044】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0045】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標形上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
【0046】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの外接円直径(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
この様に構成することにより、メッシュパターン3Pを目視した際の濃淡(明暗)ムラが、より一層、効果的に解消する。メッシュパターン3Pの目視時の濃淡ムラを、実質上、目視不能とし、且つメッシュパターン3Pの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、開口領域Aの外接円直径D(開口領域Aの大きさ)の最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該外接円直径Dの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが外接円直径Dの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
【0047】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさを大きくすることができる。
【0048】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0049】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、メッシュパターン3Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図3に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0050】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、アンテナパターン2の導電性と透明性を損なわない様に、決定される。以上のようにして、メッシュパターン3Pのパターンを決定することができる。
【0051】
以上のような本実施形態によれば、アンテナパターン2を構成する導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pが、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成されており、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている。
この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列されたディスプレイパネル30に、この透明アンテナ10を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0052】
(単位パターン領域としての繰返し)
上述した実施形態では、アンテナパターン2を構成する導電体メッシュ層3の全領域において、該導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pによって画成される開口領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図10の様に、アンテナパターン2の内部に於いて導電体メッシュ層3が有するメッシュパターン3Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合してメッシュパターン3Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。即ち、この形態に於いては、アンテナパターン2の全領域に対応したメッシュパターン3Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレも濃淡ムラも生じていない。この例において、一つの単位パターン領域S内におけるメッシュパターン3Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0053】
特に最近では、ディスプレイパネル30の大型化が進んでおり、この様な大画面のディスプレイパネル30に対して大画面の全面に透明アンテナ10を適用する様な場合などでは、透明アンテナ10を適用したときにそのアンテナパターン2を構成する導電体メッシュ層3が有するメッシュパターン3Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む場合、メッシュパターン3Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0054】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図10に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図10の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1で単位パターン領域Sが繰り返されている。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをN個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がN個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての繰返周期ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aが繰返周期を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、ディスプレイパネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
【0055】
なお、図10に示された例では、長方形状を呈するアンテナパターン2が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で導電体メッシュ層3が有するメッシュパターン3Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図10の縦方向(図面の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図10の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0056】
[導電体メッシュ層の主切断面形状]
導電体メッシュ層3の断面形状、つまり主切断面形状は、特に限定はない。例えば、図13の断面図中、図13(1)は長方形(含む正方形)、図13(2)は透明基材1側を広幅の下底とする台形、図13(3)は円又は楕円の一部、図13(4)は三角形や台形の斜辺が外側に向かって凸形状に変調された形状(図は三角形の場合)、などである。図面は概念的なものであり、断面形状の角は、インクの流動性など製造上の造形精度、或いは形状耐久性などを勘案して、丸みを帯びていることがある。
【0057】
[導電体メッシュ層の寸法]
導電体メッシュ層3の寸法は、導電性と透明性の観点から、メッシュパターン3Pを構成する境界線分Lの線幅は1〜100μm、境界線分Lが見え難い「非視認性」の点では、線幅は50μm以下、より好ましくは30μm以下と、なるべく細い方が良い。一方、導電性及び形状耐久性の確保の点からは、線幅3μm以上、好ましくは10μm以上確保するのが好ましい。細線の視認性(見え易さ)は、透明アンテナ10がどの位の距離から視認されるかにもよるので、細線の線幅は用途に応じて設定すると良い。また、境界線分Lの線幅は、メッシュパターン3Pの全領域で均一とするのが一般的だが、場所によって変えるなどメッシュパターン3Pの全領域にて同一とする必要はない。
導電体メッシュ層3で構成されるアンテナパターン2の領域内での透明性は、380〜780nmの可視光波長領域において、可視光透過率50%以上、より好ましくは70%以上であるが、用途にもよる。
【0058】
メッシュパターン3Pが画成する開口領域Aの寸法は、開口領域Aを内接する外接円の直径にて50〜1000μm程度である。但し、開口率との兼ね合いで、要求される面としての導電性(表面抵抗率)を満たす範囲内とするのは言うまでもない。なお、導電体メッシュ層3の開口率〔(導電体メッシュ層3の非形成部である開口領域Aの合計面積/開口領域Aも含める導電体メッシュ層3の全被覆面積)×100で定義〕は、導電性と透明性(可視光透過性)との両立の点から、50%以上、好ましくは70%以上とするのが良い。また、導電体メッシュ層3の厚みは、導電性(及び透明性)の観点等の点から1〜100μm程度である。
ここで、一例を示せば、導電体メッシュ層3は、厚みが20μm、線幅(メッシュパターン3Pのライン部Ltの部分での線幅でもある)20μm、開口領域Aの外接円の平均寸法300μmである。開口率は85%である。
【0059】
[導電体メッシュ層の材料]
導電体メッシュ層3に利用できる導電体層としては、本発明ではITO膜の様なそれ自身可視光線に対して透明な層は十分な導電性が期待できないので採用せず、十分な導電性が得られるがそれ自体不透明な層となるもの採用する。それ自身可視光線に対して不透明な層となる導電体層としては、公知のものを適宜使用すれば良く、好ましくは線幅100μm以下のメッシュパターン3Pが形成可能なものであれば、特に制限はなく、材料及び形成法など、公知のものから適宜選択できる。例えば、金属層、或いは銀等から成る導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた導電性組成物層などである。
【0060】
(金属層)
上記金属層の金属としては高導電性金属、例えば、金、銀、銅、白金、錫、アルミニウム、鉄、ニッケルなどの金属(含む合金)である。なかでも、金属として銅は一般的であるが、銅よりも安価であるアルミニウムを用いるのも好ましい。
【0061】
金属層の場合、導電体メッシュ層3を形成するには、大別して、パターン非形成の金属層からパターン形成する方法、最初からパターン形成された金属層を形成する方法の二方法がある。
前者の方法では、パターン非形成の金属層の形成には、金属箔の積層法、めっき法、或いは蒸着やスパッタ等の乾式法が利用される。そして、該金属層に対するパターン形成には、ケミカルエッチング法が利用でき、その際エッチングレジストのパターン形成には、フォトリソグラフィ法や印刷法が利用される。
金属層を蒸着やスパッタ等で金属薄膜として形成する場合は、金属薄膜形成面に予め水溶性樹脂でネガパターン(開口領域Aとする部分に該樹脂の層を形成する)を形成しておき、金属薄膜形成後、水洗してネガパターン上の金属薄膜を水溶性樹脂と共に除去する方法などもある。
【0062】
一方、後者の最初からパターン形成した金属層を形成する方法としては、めっき触媒インキの印刷でパターン形成した触媒パターン上にのみ金属層をめっきする方法、これとは逆に、金属などの導電面上の非形成部とする部分にめっきレジストをパターン形成した後、めっきレジストの非形成部に電気めっきして導電体メッシュ層3を形成し、導電面から剥離する方法などがある。なお、剥離は更に透明基材1を積層後、透明基材1と共に剥離するなどする。
また、パターン形成前、パターン形成後の金属層について、転写法を利用して、金属層の積層面を転移させて変更する方法も利用できる。例えば、剥離性基材上に転写層として導電体メッシュ層3を形成した転写箔から、接着層を介して透明基材1に導電体メッシュ層3を積層する。剥離性基材には、前記透明基材で列記した樹脂フィルムなどを使用し(但し不透明でも良い)、接着層はアクリル系熱可塑性樹脂等を、転写箔側、透明基材側、又は両方に施す。
【0063】
なお、通常は、導電体メッシュ層3の製造は、金属層による場合は、透明基材1上に金属箔接着、めっき、金属蒸着等で形成した金属層をフォトエッチングする方法で形成する。導電性組成物層として導電体メッシュ層3を形成する場合は、導電性組成物から成るインクの印刷で形成する。
【0064】
めっき触媒パターン、レジストパターン、或いは下記する導電性組成物層、等を印刷でパターン形成する場合、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、インクジェット印刷など適宜選択すれば良いが、凹版印刷の場合は、特に後述する「引抜プライマ方式凹版印刷法」は微細且つ高精度にできる点で好ましい。
【0065】
導電体メッシュ層3としての金属層がアルミニウム金属層である場合、メッシュパターン3Pの形成法は特に限定されるものではないが、微細なパターンを容易に形成可能である点で、好適にはアルミニウム箔のエッチングで行うことができる。ただ、金属アルミニウム自体は高活性で表面に酸化皮膜が存在し、このため、均一安定的なケミカルエッチングが難しく、ギザ(線条部分の平面視輪郭線がZigZagな非直線状になること)等パターン精度不良となる。しかし、酸化皮膜の厚さを0〜13Å以下に規定すると均一安定的なケミカルエッチングが可能となり、銅よりも安価なアルミニウムで導電体メッシュ層を形成できる。また、厚みの上限は13Åだが、好ましくは12Å、より好ましくは10Å、更に好ましくは8Åである。厚みの下限はケミカルエッチングを阻害しない点からは0Åだが、箔の加工・保管中などでの不用意な望まれない酸化や腐食防止の観点から、2〜3Å程度の酸化皮膜があるのも良い。なお、1Å=0.1nmである。
酸化皮膜の厚み規定はエッチング液が始めに接する面側(通常箔を透明基材に積層後エッチングするので透明基材から遠い方の面、これを上面、他方の面を下面と呼んでもよい)のみで良いが、他方の面(下面)も同じ規定とすることができる。なお、一般的なアルミニウム箔の酸化皮膜は15Å以上、通常20〜100Å程度の厚さである。
酸化皮膜の厚さを薄くするにはアルミニウム箔製造時の圧延条件や焼鈍条件を調整できる。酸化皮膜の厚さは、ハンターホール法、蛍光X線分析の一種であるX線光電子分光法(XPS)で測定する。
アルミニウム箔は導電性が高い点で純度99.0%以上が好ましく、JIS H4160(アルミニウム及びアルミニウム合金はく)、JIS H4170(高純度アルミニウムはく)で規定されるアルミニウム箔に準じた箔を使用することができる。
【0066】
(導電性組成物層)
導電体メッシュ層3としての導電性組成物層は、導電性粒子を樹脂バインダ中に分散させた層であり、導電性粒子としては、金、銀、白金、銅、錫、アルミニウム、ニッケルなど高導電性金属(含む合金)粒子を用い、或いは樹脂粒子や無機物粒子の表面を金、銀など上記高導電性金属で被覆した金属被覆粒子、或いは黒鉛粒子などを用いてもよい。
【0067】
上記樹脂バインダの樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを単独使用又は併用する。熱可塑性樹脂には熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂など、熱硬化性樹脂にはメラミン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などを使用する。また、電離放射線硬化性樹脂には、電離放射線で架橋反応などを起こして重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーを含む組成物を使用する。モノマーやプレポリマーにはラジカル重合性やカチオン重合性の化合物を使用する。なかでも、アクリレート系化合物を用いた電離放射性硬化性樹脂が代表的である。
【0068】
導電性組成物層は層形成時の最初からパターン形成でき、印刷でパターン形成する場合、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷、凹版印刷、インクジェット印刷など適宜選択すれば良いが、凹版印刷の場合は、特に後述する「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、微細なパターンを高精度で形成できる点で好ましい。尚、導電性組成物は導電性インク、導電性ペースト等とも呼称される。
或いは、透明基材1の面に目的とするメッシュパターン3Pのパターン溝を形成しておき、この透明基材1の面の全面に導電性組成物を塗布した後、該パターン溝以外に有る不要な導電性組成物をブレードなどで掻き取ってパターン溝の内部のみに導電性組成物を残すことで、導電性メッシュ層3を形成することもできる(所謂ワイピング加工法)。パターン溝を形成する基材は、透明基材1以外に、他の基材に形成後、転写で透明基材1に積層しても良い。
【0069】
「引抜プライマ方式凹版印刷法」は、特許第4436441号公報(国際公開第2008/149969号のパンフレット)で開示された印刷法であり、従来では不可能であった様な、細く且つ精細なパターン形成が可能であり優れた導電性と優れた光透過性とを高度に両立できる印刷法である。また、この印刷法は、導電体メッシュ層3の形成を、銀などの金属粒子と樹脂バインダからなる導電性組成物(インク乃至はペースト等とも呼ばれる)を凹版印刷して、導電性組成物層として導電体メッシュ層3を形成する。
「引抜プライマ方式凹版印刷法」では、透明基材1上に施した流動状態のままのプライマ層(プライマ流動層)上に導電性組成物のインクを凹版印刷する方法であり、しかもその際、凹版の版面上に透明基材1が存在している間に、版面と透明基材1間にあるプライマ流動層を紫外線照射などで硬化させてプライマ層として固化形成させた後に透明基材1を凹版から離版して、透明基材1上にプライマ層を介してパターン状の導電体メッシュ層3を印刷形成する方法である。このプライマ層は流動状態のときに、版から被印刷物へのインクの転移を促進する作用、言い換えると凹版の版面凹部内に充填されたインクを引き抜いて被印刷物(透明基材)に移す作用を有する。「引抜プライマ方式凹版印刷法」による印刷物が、他の印刷法にみられない大きな特徴は、プライマ層の厚さについて、導電性組成物層の形成部の厚さが導電性組成物層の非形成部である開口領域Aに於ける厚さよりも厚い形状となる。
【0070】
上記プライマ層には、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂などが使用され、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂を使用できるが、流動状態から固化状態への迅速な変化を制御できる点で、好ましくは電離放射線硬化性樹脂が使用される。電離放射線としては、紫外線、電子線等が通常使用される。
【0071】
(黒化処理)
なお、金属層や導電性組成物層等として形成した導電体メッシュ層3が、金属色や銀色等と明るい色を呈し、これがメッシュパターン3Pを目立たせてしまう場合には、目立たなくさせる為に、その表面が黒化処理層を有するものとしても良い。黒化処理層としては、金属層の場合は黒化ニッケルめっきを行うなど公知の処理を適宜採用すれば良い。或いは、導電性組成物の場合には、組成物中にカーボンブラック等の黒色乃至は暗色を呈する色材を添加しても良い。
【0072】
[導電体メッシュ層をアンテナパターンのパターン形状にする方法]
上記の様なメッシュパターン3Pの導電体メッシュ層3で、アンテナパターン2のパターン形状を形成するには、導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pの形成と同時に行えば良い。すなわち、導電体メッシュ層3(乃至はメッシュパターン3P)の領域の輪郭形状をアンテナパターン2のパターン形状として、導電体メッシュ層3のメッシュパターン3Pを形成すれば良い。
或いは、導電体メッシュ層3はアンテナパターン2よりも広い面積で形成しておいたもの(汎用原反)から、アンテナパターン2のパターン形状を形成しても良い。例えば、透明基材1上に導電体メッシュ層3を形成したものを汎用原反として、これを要求されるアンテナパターン2の形状に応じて、透明基材1ごとアンテナパターン2の形状に切断乃至切抜することで形成できる。また、導電体メッシュ層2が金属層である場合には、該汎用原反の不要な領域の導電体メッシュ層3をエッチングで除去することで形成できる。
この様に、導電体メッシュ層3をアンテナパターン2のパターン形状にする方法は、特に限定されるものではない。
【0073】
《機能層》
透明アンテナ10には、さらに機能層4が形成されていても良い。
機能層を設けることで、機能層の種類に応じじて、例えば、反射防止機能等の各種機能も付与することができる。
図14(A)に例示する実施形態例の透明アンテナ10は、機能層4が透明基材1側の面に設けられた形態例である。透明基材1側とは、透明アンテナ10において、透明基材1に対してアンテナパターン2が形成された側とは反対側を意味する。
図14(B)に例示する実施形態例の透明アンテナ10は、機能層4がアンテナパターン2側の面に設けられた形態例である。
図示はしないが、機能層4は、透明基材1とアンテナパターン2の間に設けられていても良く、この形態の場合では、アンテナパターン2は透明基材1上に積層された機能層4上に形成されたものとなる。このように、機能層4は、透明アンテナ10において、透明基材1側の面、アンテナパターン2側の面、透明基材1とアンテナパターン2の間、のいずれか1以上の位置に設けられていても良い。従って、機能層4は、例えば、透明基材1側の面と、アンテナパターン2側の面との2箇所など、複数の位置に設けられていてもよい。
具体例を示せば、アンテナパターン2を外力などから保護する表面保護層として機能させる透明基材1に対して更に反射防止層を設け、一方、アンテナパターン2側の面に設ける機能層としては、透明アンテナ10を被着体に貼り付ける為の粘着剤層及びこれを一時的に保護する剥離シートを採用する形態である。
【0074】
機能層4は、透明アンテナ10に求められる機能のうちで透明基材1とアンテナパターン2のみでは、実現できない機能を付与する為に設ける。例えば、上記した例では、粘着剤層、剥離シート、透明保護層、反射防止層であった。機能層4としては、透明アンテナ10をディスプレイパネルの画面上に適用する用途の場合では、ディスプレイパネルの前面フィルタ等として公知の各種機能を実現する層を適宜採用できる。この様な機能層4は、大別すると光学機能を担う光学機能層と、光学機能以外の機能を担う非光学機能層がある。光学機能層の例を挙げれば、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)、或いは、紫外線を吸収する紫外線吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの特定光透過層などがある。非光学機能層の例を挙げれば、表面を保護する表面保護層やハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、2層間を密着させる接着剤層(含む粘着剤層)、粘着剤層を一時的に保護する剥離シートなどがある。なお、光学機能層及び非光学機能層の夫々の各層は、単層で機能を兼用する事もあり、光学機能層と非光学機能層間で兼用する事もある。
【0075】
以下、透明保護層、反射防止層、接着剤層(含む粘着剤層)について、さらに説明しておく。
【0076】
[透明保護層]
透明保護層は、少なくともアンテナパターン2上に形成することが好ましいが、アンテナパターン2非形成部も含む透明アンテナ10の全面に形成しても良い。透明保護層は透明樹脂フィルムの接着剤や粘着剤を介した積層や、透明樹脂塗料の塗布で形成することができる。透明樹脂フィルムには前記透明基材で列記したものなどが使用できる。透明樹脂塗料の樹脂としては、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等が使用でき、熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂などであり、硬化性樹脂は例えば、熱硬化型ウレタン系樹脂、熱硬化型アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂や、紫外線や電子線で硬化する電離放射線硬化性樹脂である。なお、電離放射線硬化性樹脂は、アクリレート系で代表されるラジカル重合性化合物や、エポキシ系で代表されるカチオン重合性化合物を含む樹脂がある。
接着剤にはウレタン樹脂系など公知の透明なものを、粘着剤には後述のアクリル系樹脂など公知の透明なものを使用できる。
【0077】
[反射防止層]
反射防止層は、透明アンテナ10の最外層となる位置の機能層として設ける。反射防止層によって、表面反射による光線透過率低下を防ぎ、透明アンテナ10全体としての透明性低下を防ぐことができる。
反射防止層としては公知のものを適宜採用すれば良い。例えば、反射防止層には、低屈折率層と高屈折率層とを低屈折率層が最表面に位置する様に交互に積層した多層構成、或いは低屈折率層のみの単層構成(その下層が高屈折率層の役割を果たす)があり、各層は塗工などの湿式法、蒸着やスパッタなどの乾式法で形成する。
例えば、低屈折率層は、低屈折率材としてケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ素含有樹脂などが用いられ、高屈折率層には高屈折率材として、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブなどが用いられる。また塗工形成する場合は、バインダー樹脂として、好ましくは、前記透明保護層で列記した様な、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂が用いられる。例えば、低屈折率層には低屈折率材として中空シリカを電離放射線硬化性樹脂中に分散させた樹脂層を用い、高屈折率層には高屈折率材として酸化ジルコニウムを電離放射線硬化性樹脂中に分散させた樹脂層を用いるか、透明基材1或いは前記透明保護層自体で代用させる。
【0078】
接着剤層としては、公知の接着剤、粘着剤を適宜採用することができる。例えば、(1)熱可塑性樹脂を用い、加熱溶融後に冷却固化させて接着する、所謂ヒートシール(熱封着)型乃至はホットメルト(熱溶)型接着剤、(2)熱硬化性樹脂を用い、加熱による重合乃至は架橋反応により硬化させて接着する、所謂熱硬化型接着剤、(3)電離放射線硬化性樹脂を用い、電離放射線照射による重合乃至は架橋反応により硬化させて接着する、所謂電離放射線硬化型接着剤、(4)表面に粘着性を有する樹脂を用い、接触、加圧のみで(加熱、電離放射線照射等のエネルギー印加、或いは化学反応を利用することなく)接着する、所謂粘着剤、等が挙げられる。
これらの中でも、加熱等の特別な処理が不要で、且つ必要に応じて再剥離も可能な点に於いて、粘着剤が汎用且つ便利である。接着剤として粘着剤を使用した接着剤層即ち粘着剤層としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等であり、公知の塗工法、或いはセパレータ付きなどの粘着フィルムの積層などで形成する。粘着剤層の粘着面には、使用時には剥離する剥離シートを通常は積層しておく。剥離シートとしては、例えば、ポリエステルフィルムや紙にシリコーン等の剥離性材料を塗布したものなど公知のものを使用できる。剥離シートは透明なものの他、使用時は剥離除去するので透明でなくても良い。
接着剤層としては、接着剤層のみからなる形態の他、不織布、樹脂シート等の芯材シートの表裏両面に接着剤層を積層した3層構成の形態(所謂両面接(粘)着テープ)で用いることも出来る。
【0079】
《変形形態》
本発明による透明アンテナ10は、透明基材1の面上に、アンテナパターン2以外に、アンテナパターン2との電気的な導通を果たす配線及び電極が形成されていても良い。配線及び電極も、アンテナパターン2部分と同様に上記導電体メッシュ層3で形成することで、配線及び電極部分でも、十分な導電性と十分な透明性が両立し、しかも、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立したものとすることができる。ただ、通常は電極部分については、ディスプレイパネルなど透明性が必要とされない透明アンテナ10の外周部等に設けるので、電極部分については透明性を確保しなくても良い。この場合、電極部分は開口領域Aが存在しない導電体連続層などとしても良い。導電体連続層は前記した導電性組成物層や金属層を用いることができる。
【0080】
以上の様に、透明アンテナ10は、少なくともアンテナパターン2は導電体メッシュ層3で形成されているが、透明アンテナ10がアンテナパターン2以外で導電体層を含む場合、この導電体層には前記した導電体メッシュ層3以外の公知の導電体を適宜採用すれば良い。
【0081】
図1を参照した上記実施形態例では、透明アンテナ10のアンテナパターン2の全領域が、開口領域Aが繰返周期を有する方向が存在しないメッシュパターン3Pのみから構成されていた。
しかしながら、ディスプレイパネル30の画素とのモアレが実質上無視し得る範囲内であるならば、アンテナパターン2の全領域中の一部の領域に、開口領域Aが繰返周期を有する方向が存在するメッシュパターン3Pを採用しても良い。勿論、この様な特定方向以外は、開口領域Aが繰返周期を有する方向が存在しない。本発明のメッシュパターン3Pには、このような形態も包含する。
【0082】
〔C〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、図15に例示する一実施形態例で示す画像表示装置100の様に、上記の様な透明アンテナ10を、ディスプレイパネル30の画面20a上に備える画像表示装置100である。本画像表示装置100は、該ディスプレイパネル30以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
ディスプレイパネル30は、プラズマディスプレイパネル、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等の平面画像を表示可能な表示パネルである。また、ディスプレイパネル30は、表示面が平面乃至は湾曲面のブラウン管等でも良い。ディスプレイパネル30としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路とディスプレイパネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム等を含んでいても良い。従って、ディスプレイパネル30は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0083】
この様な構成の画像表示装置100とすることで、アンテナとして十分な導電性と両立した十分な透明性が得ら、しかも、モアレ解消と濃淡ムラ解消も両立するので、品質の良い画像を表示できる。
【0084】
なお、透明アンテナ10は、ディスプレイパネル30の画面30a上に配置されるが、透明アンテナ10とディスプレイパネル30の画面30aとの間は、空気層があっても良く、樹脂層等で埋めても良い。
画像表示装置100は、図示はしないが、ディスプレイパネル30の画面上に、透明アンテナ10以外に、その他の光学部材を備えていても良い。その他の光学部材は、例えば前記した機能層を有する光学部材等である。例えば、表面保護ガラス等である。
【0085】
〔D〕用途:
本発明による透明アンテナ10は、テレビジョン、ラジオ、GPS(Global Positioning System)衛星、FM電波等の各種電波の受信アンテナ或いは送信乃至は送受信アンテナとして各種用途に使用可能である。
特に、周期的パターンを有するものとの組み合わせ用途、例えば、ディスプレイパネルの観察者側となる画面上に配置する用途は、モアレ及び濃淡ムラが生じないので、特に好適である。具体的には、ポータブル型などのテレビジョン受像機、受信機能付きデジタルフォトフレーム、携帯型多機能情報端末、携帯電話、携帯型GPS機器など携帯情報機器、遊戯機器、電子看板などの画像の表示窓などである。
或いは、自動車等の車両の窓に貼付してカーナビゲーションシステム等の各種電波の受信アンテナ或いは送信乃至は送受信アンテナ、商品陳列ケースの透明窓などに貼付しICタグによる在庫管理用途での信号送受信アンテナ、窓や扉のガラスに設置した破損検知センサの送信、受信、或いは送受信アンテナ等の用途である。
また、本発明による画像表示装置100は、上記同様、ポータブル型などのテレビジョン受像機、携帯型多機能情報端末、携帯電話、携帯型GPS機器など携帯情報機器、受信機能付きデジタルフォトフレーム、遊戯機器、電子看板のディスプレイモジュール等の用途に使用できる。
【符号の説明】
【0086】
1 透明基材
2 アンテナパターン
3 導電体メッシュ層
3P メッシュパターン
4 機能層
5 導電体連続層
10 透明アンテナ
20 従来の透明アンテナ
30 ディスプレイパネル
100 画像表示装置
A 開口領域
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域
V 観察者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一面上にアンテナパターンが形成され、
該アンテナパターンは不透明な導電体層をメッシュパターンで形成した導電体メッシュ層によって形成され、
該メッシュパターンは二つの分岐点の間を延びて多数の開口領域を画成する多数の境界線分から構成され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが3.0≦N<4.0であり、且つ、該開口領域が繰返周期を持つ方向が存在しないパターンからなる領域を含む、透明アンテナ。
【請求項2】
ディスプレイパネルの画面上に、請求項1記載の透明アンテナが配置されている、画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−5013(P2013−5013A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131070(P2011−131070)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】