説明

透明導電性フィルム

【課題】透明性を損なうことなく虹ムラ発生が防止され、オリゴマーの析出が無い透明導電性フィルムを提供する。
【解決手段】透明導電性フィルム10は、2軸延伸されたポリエステルからなる支持体11の一方の面にポリマー層12を備え、このポリマー層12上には透明導電層13を備える。支持体11の屈折率η1とポリマー層12の屈折率η2との差|η1−η2|は0.02以下とされてある。ポリマー層12は、屈折率ηPが1.80以上の金属酸化物からなる粒子と、この粒子を保持し屈折率ηBが1.60以上であるバインダとを含む。バインダに対する粒子の質量割合は0より大きく100%以下の範囲とされてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関するものであり、具体的には、ポリエステルからなる支持体と導電層とを備える透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムは、液晶パネル、エレクトロルミネッセンスパネルといったフラットパネルディスプレイ、タッチパネルの透明電極等、電気、電子分野における部材として、近年、需要が高まっている。透明導電性フィルムは、透明なポリマーからなるフィルム状の支持体の上に、金属酸化物からなる導電性の薄膜を形成した複層フィルムである。金属酸化物としては、酸化錫、酸化インジウム、インジウム−錫複合化合物、酸化亜鉛などがある。
【0003】
支持体としては、透明性、寸法安定性、耐薬品性、低吸湿性、電気絶縁性等に優れるという観点から、特許文献1に記載されるような、互いに交差する2方向に延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、いわゆる2軸延伸PETフィルムが多く使用されている。また、支持体と導電層との間には、さらに種々の機能を導電性フィルムに付与するための層を設けることがある。このようないわゆる機能層としては、特許文献1、2に記載されるような、支持体と導電層との接着力を向上させる接着層や、耐傷性を付与するハードコート層がある。
【0004】
ところで、PETフィルムには、その製造過程における複反応として、低重合度の化合物であるオリゴマーが生成する。このようなオリゴマーとして代表的なものは環状の三量体である。このオリゴマーは、PETフィルム中に必ず存在し、PETフィルムが加熱されることによりフィルム面に析出することが知られている。また、導電層を形成する際や導電層を形成した後で加工する際に、支持体となるPETフィルムや支持体とされているPET部分が加熱されることが多い。したがって、PETフィルムを支持体としてある透明導電性フィルムにおいては、加熱によるオリゴマーの析出が原因で、支持体と導電層との接着不良や、支持体と導電層との間に機能層を付与した場合の支持体と機能層との接着不良が生じたり、透明導電性フィルムに白斑が現れて濁る等の透明性低下が生じたり、さらには、導電性が所期のレベルに達しないこともある。なお、オリゴマーは、PETフィルム以外の各種ポリエステルフィルムにも存在し、PETフィルムにおける場合と同様に、加熱によりフィルム面に析出する。
【0005】
そこで、特許文献3では、接着層を付与する前のポリエステルフィルムのフィルム面に予め紫外線を照射し、この紫外線照射処理を経たポリエステルフィルムに、接着層と導電層とを順次積層しており、これによりオリゴマーの析出を抑止している。また、特許文献4では、フィルム形状にする前のポリエステルに、不活性ガス雰囲気下及び加圧下で180℃以上に加熱する加熱処理を12時間以上実施しており、これにより環状三量体の量を、フィルム形成前に予め減らしている。
【0006】
一方、透明導電性フィルムは、前述の通り、異なる材料からなる層が複数重なった複層構造である。このような複層構造の場合には、各層の界面や、外部に露出する層と空気との界面で、光が反射し、反射した光が互いに干渉して虹色の干渉ムラであるいわゆる虹ムラが起こりやすい。
【0007】
そこで、特許文献5では、ポリエステルからなる支持体と、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルニウム、酸化チタンのいずれかひとつを主成分とする微粒子とバインダとを含み支持体上に配される第1層と、この第1層上に配される第2層とを備え、支持体と第1層との屈折率差及び支持体と第2層との屈折率差を所定値以下にしており、これにより虹ムラの発生を防止している。このように、特許文献5は、虹ムラを低減することに対しては一定の効果がある。しかし、虹ムラを低減するために、用いる金属酸化物の量を増やすほど、導電性フィルムの透明性が低下するという問題が有る。
【0008】
また、特許文献3,4は、上記のように、いずれも導電層や接着層等の機能層を付与される前の段階、つまり、PETフィルムに対してやフィルム形状にされる前のPETに対して所定の処理を施すものである。したがって、導電層や他の機能層を付与する前のPETフィルム自体に、オリゴマー析出を抑止する改質処理が為されていることになり、PETフィルムの透明性や色味等の光学特性は、こうした改質処理の条件次第で異なることになる。
【0009】
このように光学特性が異なるPETフィルムを支持体に用いて最終製品たる透明導電性フィルムを所期の品質となるように製造するには、導電層や、接着層等の機能層で、透明導電性フィルムとしての屈折率を調整したり、屈折率調整のために支持体以外の層の厚みを適宜設定する必要が出てくる。しかしながら、支持体の光学特性に応じて支持体以外の層の厚みないし屈折率を調整することは、生産効率がよいとはいえず、また、この方法では所期の光学特性をもつような透明導電性フィルムとすることができない場合もある。さらに、虹ムラの発生を防止するための対策を施すとなると、支持体の光学特性に応じた屈折率や厚み等の制御と虹ムラ防止のための光学特性の制御との両方を、支持体以外の層で行うことになり、難しい。したがって、支持体たるポリエステルからのオリゴマーの析出についても、支持体以外の層により抑止する方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−244186号公報
【特許文献2】特開2000−094592号公報
【特許文献3】特開2005−135586号公報
【特許文献4】特開2001−135150号公報
【特許文献5】特開2007−326357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、虹ムラを低減するために、支持体以外の層に含有させる金属酸化物の量を増やすほど、導電性フィルムの透明性が低下する。また、支持体そのものや、支持体を形成するポリマーを改質すると、支持体の上に付与する層の光学特性を、用いる支持体に併せて制御しなければならず、その制御すべき対象の中には厚みや屈折率も含まれる。
【0012】
そこで、本発明は、透明性が損なわれることなく虹ムラの発生が防止され、支持体以外の層により支持体からのオリゴマーの析出が抑止された透明導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の透明導電性フィルムは、ポリエステルからなり2軸延伸された支持体と、屈折率ηPが1.80以上の金属酸化物からなる粒子と前記粒子を保持し屈折率ηBが1.60以上であるバインダとを含み、バインダに対する粒子の質量割合が大きくとも100%とされ、支持体の一方の面に配され、支持体の屈折率η1との差が0.02以下の屈折率η2をもつポリマー層と、このポリマー層上に配される透明な導電層とを備えることを特徴として構成されている。
【0014】
前記金属酸化物は、酸化錫と酸化アンチモンとであり、酸化錫の質量をM1、酸化アンチモンの質量をM2とするときに、(M2/M1)×100で求める酸化アンチモン含有率が0より大きく5質量%以下の範囲であることが好ましい。
【0015】
ポリマー層の厚みは、{500/(4×η2)}nm以上{600/(4×η2)}以下の範囲であることが好ましく、バインダとしてのポリマーのガラス転移点Tgは90℃以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の透明導電性フィルムによれば、透明性が損なわれることなく虹ムラの発生が防止され、支持体以外の層により支持体からのオリゴマーの析出が抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態である透明導電性フィルムの断面図である。
【図2】第2の実施形態である透明導電性フィルムの断面図である。
【図3】透明導電性フィルムの製造設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。図1に示すように、第1の実施形態である透明導電性フィルム(以下、単に導電性フィルムと称する)10は、ポリエステルからなり2軸延伸されたフィルム状の支持体11と、支持体11の一方の面に形成されたポリマー層12と、このポリマー層12上に形成され導電性を示す導電層13とを備える。このように、導電層13は、ポリマー層12の反支持体面側に接するように形成されてある。
【0019】
ポリマー層12は、屈折率ηPが1.80以上の金属酸化物からなる複数の粒子と粒子を保持し屈折率ηBが1.60以上であるバインダとを含む。このように屈折率ηBが高いバインダを用いることにより、バインダに対する前記粒子の質量割合が小さく抑えられる。バインダに対する粒子の質量割合、すなわち、粒子の質量をMP、バインダの質量をMBとするときに(MP/MB)×100で求める百分率は、具体的には、大きくとも100%、すなわち0より大きく100%以下の範囲とされる。また、この導電性フィルム10では、支持体11の屈折率η1とポリマー層の屈折率η2との差である|η1−η2|が0.02以下とされてある。以上の構成により、導電性フィルム10は、透明性が損なわれることなく虹ムラの発生が防止され、支持体11からのオリゴマーの析出、中でも環状三量体の析出がポリマー層12により抑止される。
【0020】
フィルム形状にする前にポリエステルの加熱処理を実施する方法や、導電層を形成する前のポリエステル支持体に改質処理を施す従来の方法では、虹ムラを防止するために、支持体上に設ける層の厚みや屈折率等を高精度に調整しなければならないが、上記のような本発明によると、ポリマー層12によりオリゴマーの析出を防止するために、ポリマー層の屈折率調整は虹ムラと透明性とを考慮するだけで足りる。また、上記の構成によると、透明性を低下させることなく虹ムラの発生を防止することができる。支持体11、ポリマー層12、導電層13についてより詳細に以下に記載する。
【0021】
[支持体]
フィルム本体としての支持体11は、ポリエステルを溶融製膜方法によりフィルム形状にしたものであり、交差する2方向に延伸する処理、いわゆる二軸延伸処理がされてある。交差する2方向は、互いに直交することが好ましい。2軸延伸処理は、ポリマー層12や導電層13が形成される前に為されていてもよいし、形成された後に為されていてもよい。また、2方向のうち、いずれか一方での延伸処理がポリマー層12や導電層13が形成される前に為され、他の1方向での延伸処理がポリマー層12や導電層13が形成された後に為されてもよい。2軸延伸処理により支持体11の2方向での分子配向の度合いが制御されるので、機械強度が向上する。また、この延伸処理により、屈折率を調整することもできる。
【0022】
延伸倍率は特に制限されるものではないが、一方向における延伸倍率が1.5〜7倍であることが好ましく、2〜5倍がより好ましい。このような延伸倍率で延伸処理することにより、機械的強度がより大きく向上する。
【0023】
ポリエステルは、特に限定されず、例えば、PET、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が挙げられる。中でも、機械的強度やコストの観点から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。
【0024】
支持体11の厚みt1は、50μm以上300μm以下とすることが好ましい。このような範囲の厚みt1をもつ支持体11は、高い透明度を有しながら、軽量かつ取り扱い性に優れる。厚みは、溶融製膜過程における調整の他に、延伸倍率を調整によっても制御することができる。
【0025】
なお、支持体11には、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含ませてもよい。紫外線吸収剤の種類や添加量、添加方法については、特開2007−326357号公報に記載の添加量や点か方法を本発明に適用することができる。
【0026】
また、支持体11は、表面がコロナ放電処理されたものであってもよい。コロナ放電処理により、支持体11の表面が親水化され、ポリマー層12となる塗布液の塗れ性を向上することができるので、ポリマー層12との密着力をより高めることができる。
【0027】
[ポリマー層]
ポリマー層12は、金属酸化物からなる粒子と、この粒子を保持するバインダとを含む。これにより、虹色ムラが抑えられる。さらに、上記のように、屈折率ηBが従来よりも大きいバインダを用いることにより、バインダに対する金属酸化物の質量割合が0より大きく100質量%以下の範囲と従来よりも少なくすることができるので、透明度を低下させることなく虹色ムラの発生を防止することができる。したがって、金属酸化物の屈折率ηPが小さい場合ほど、屈折率ηBが大きなバインダを用いるとよい。金属酸化物の粒子の屈折率ηPは1.70以上が好ましく、1.80以上2.80以下の範囲がさらに好ましく、1.90以上2.80以下の範囲が特に好ましい。なお、本明細書における、屈折率の各値は波長550nmの光の屈折率である。バインダに対する金属酸化物の質量割合は、50質量%以上100質量%以下の範囲がさらに好ましく、50質量%以上90質量%以下の範囲が特に好ましい。
【0028】
粒子を構成する金属酸化物は、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム等が挙げられ、中でも、酸化錫が好ましい。さらに好ましくは、金属酸化物が酸化錫と酸化アンチモンとであること、つまり、各粒子は酸化錫と酸化アンチモンとの両方を含むものであることである。酸化錫にアンチモンをドープしたものがより好ましい。酸化錫の質量をM1、酸化アンチモンの質量をM2とするときに、(M2/M1)×100(単位;%)で求める酸化アンチモンの含有率が0より大きく5%以下であることがより好ましい。酸化アンチモンの含有率をこの範囲にすることにより、ポリマー層12により導電性フィルム10の帯電防止性を向上させつつも、ポリマー層12の着色を抑えて透明かつ無色の導電性フィルム10とすることができる。また、上記の酸化アンチモン含有率の酸化錫を用いることにより、導電層13との接着性も高く保持されるようなポリマー層12を形成することができる。
【0029】
上記のような金属酸化物の粒子については、粒径や種類を考慮することで、ポリマー層12における粒子の凝集を抑制することができる。粒子は、平均粒径が5nm以上200nm以下の範囲のものが好ましい。200nm以下のものを用いることで、透明性の低下をより確実に防止することができ、5nm以上のものとすることで凝集をより確実に防いで凝集した粒子による透明性の低下を防止することができる。平均粒径は、より好ましくは10nm以上100nm以下の範囲であり、特に好ましくは15nm以上70nm以下の範囲である。なお、粒子の上記の平均粒径の値は、任意に選んだ50個の粒子をそれぞれ走査型電子顕微鏡で撮影し、これらの粒子と同面積の円の各直径を求め、求めた50の直径の平均値である。
【0030】
バインダとしては透明なポリマーが用いられる。好ましいポリマーとしては、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタンが挙げられる。ポリエステルとしては、ナフタレンジカルボン酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、ジブロモ酸などから得られるものが挙げられる。また、アクリル樹脂としては、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロフェニルメタクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、p−ブロモベンジルアクリレート、p−ブロモベンジンルメタクリレート、ジブロモベンジルアクリレート、ジブロモベンジルメタクリレート、トリクロロフェニルメタクリレート、トリクロロフェニルアクリレートなど得られるものが挙げられる。ポリウレタンとしては、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラクロロビスフェノールA誘導体などのジオール成分から得られるものが挙げられる。
【0031】
バインダとして用いるポリマーとしては、ガラス転移点Tgが90℃以上のものがより好ましい。ガラス転移点Tgが90℃以上のポリマーをバインダとして用いることにより、支持体11からのオリゴマーの析出を抑止することが出来る。これは、一般にポリマー中におけるオリゴマーの拡散は、ポリマーがガラス状態の場合には起こりにくく、温度が上昇してポリマーがゴム状態になると起こりやすくなることから、ポリマー層12のバインダを、支持体であるポリエステルのガラス転移点Tg以上のTgをもつポリマーとすることで、オリゴマーの析出を抑止することができる。例えば、支持体11がPETからなるときには、PETのガラス転移点Tg以上のポリマーをポリマー層12のバインダとして使用することが好ましく、この観点から本実施形態でもTgが90℃以上のポリマーをバインダとしている。ガラス転移点Tgが90℃以上という観点で好ましいものとしては、ポリエステル、ポリウレタンが挙げられる。これらのポリエステル、ポリウレタンについては以下に説明する。
【0032】
ポリエステルは、主鎖にエステル結合を有するポリマーであり、通常、ポリカルボン酸とポリオールとの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えばフマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、スルホイソフタル酸等が挙げられる。また、ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリンヘキサントリオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。このように、ポリエステルからなる支持体11の上に、支持体11の構成材料と同種であるポリエステルをバインダとしてポリマー層12を形成することにより、支持体11とポリマー層12との接着力をより大きくすることができる。
【0033】
ポリウレタンとは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーであり、通常、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、例えば、TDI、MDI、NDI、TODI、HDI、IPDI等があり、ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等が挙げられる。また、イソシアネートとしては、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。以上に述べたポリイソシアネート、ポリオール及び、鎖延長処理については、例えば、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)において記載されており、これらの記載は本発明に適用することができる。
【0034】
バインダの屈折率ηBは、1.60以上であることが好ましく、1.60以上2.50以下の範囲であることがさらに好ましく、1.60以上2.00以下の範囲であることが特に好ましい。
【0035】
さらに、ポリマー層12には、特開2007−326357号公報の段落[0043]〜[0047]記載の各種粒子や添加剤をさらに含ませてもよい。
【0036】
支持体11の屈折率η1との差が0.02以下である屈折率η2をもつポリマー層の厚みt2は、{500/(4×η2)}nm以上{600/(4×η2)}nm以下の範囲とされる。これにより、虹色ムラの発生をより確実に防止することができる。
【0037】
[導電層]
導電層13を構成する材料としては、透明性と導電性とをあわせもつ材料であれば特に限定されない。好ましい材料としては、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、銀および銀合金、銅および銅合金、金等が単層もしくは2層以上の積層構造したものを挙げることができる。これらのうち、環境安定性や回路加工性の観点から、インジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が好適である。
【0038】
導電層の厚みt3は、4nm以上800nm以下の範囲が好ましい。厚みt3を4nm以上とすることにより、連続した膜としてより保持されやすく良好な導電性をより確実に示すことができる。一方、厚みt3を800nm以下とすることにより、透明性の低下をより確実に防ぐことができる。厚みt3は、特に好ましくは5nm以上500nm以下の範囲である。
【0039】
次に、第2の実施形態について図2を参照しながら説明する。図2においては、第1実施形態である透明導電性フィルム10と同じ構成部材については図1と同じ符号を付し、説明を略す。第2の実施形態である透明導電性フィルム20は、支持体11と、ポリマー層12と、導電層13と、導電性フィルム20としての耐傷性を向上させるハードコート層21とを備える。なお、本実施形態では、導電層13は、ハードコート層21を介してポリマー層12上に備えられるが、ハードコート層21に代えて他の機能層が設けられてもよい。他の機能層としては、例えば、ポリマー層12と導電層13との接着力を向上させる接着層、タッチパネル用途の場合にニュートンリングを防止するフィラー含有層がある。
【0040】
ハードコート層21は、活性エネルギー線を照射することで硬化したいわゆるエネルギー硬化性ポリマー、あるいは熱により硬化した熱硬化性ポリマーで形成されてあることが好ましい。
【0041】
エネルギー硬化性ポリマーや熱硬化性ポリマーとしては、特開2007−326537号公報の段落[0059]〜[0063]記載の材料を用いることができる。
【0042】
ハードコート層21の屈折率は、1.62以上1.68以下とすることが好ましい。このように高屈折率のハードコート層21を形成するには、選択したポリマーに無機微粒子を含有させれば良い。一般に、無機微粒子は屈折率が1.6〜2.7と高い値を有するため、所望のエネルギー硬化性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーに含有させて層を形成させることで、高屈折率のハードコート層21を得ることができる。ハードコート層21の厚さとしては1μm以上10μm以下が好ましい。この範囲内であると、光学機能や耐擦傷性等の物理機能が充分発現しつつ、ポリマー層12及び導電層13との接着力がより高くなるので好ましい。
【0043】
[製造方法]
導電性フィルム10,20の製造方法について図3を参照しながら以下に説明する。導電性フィルム10は、導電性フィルム20のハードコート層21を形成しない場合と同じであるので、ここでは導電性フィルム20の製造方法を説明する。
【0044】
図3に示すように、透明導電性フィルム製造設備31は、支持体11を製造する支持体製造装置32と、ポリマー層12を形成する第1塗布液33を調製する第1塗布液製造部34と、ハードコート層21を形成する第2塗布液37を調製する第2塗布液製造部38と、支持体11と第1塗布液33と第2塗布液37とから導電性フィルム20を製造するフィルム製造装置41とを備える。フィルム製造装置41は、支持体11にポリマー層12を形成するポリマー層形成部42と、このポリマー層形成部42の下流に設けられ、ポリマー層12の上にハードコート層21を形成するハードコート層形成部43と、このハードコート層形成部43の下流に設けられ、ハードコート層21の上に導電層13を形成して導電性フィルム20とする導電層形成部44とを有する。なお、ポリマー層12の上に直接導電層13を形成する場合には、ハードコート層形成部42を設けず、ポリマー層形成部42から導電層形成部44へ支持体11を案内するとよい。
【0045】
支持体製造装置32は、支持体11の原材料である例えばペレット状のポリエステル46を、乾燥機47に導入して乾燥させた後、このペレットを溶融押出機48に案内し、この溶融押出機48でフィルム形状に押し出す。このフィルム形状とされたポリエステル46を、以下ベース素材51と称する。このベース素材51は、延伸機53に案内される。
【0046】
延伸機53には、ベース素材51を所定温度に調整する温度調整機(図示せず)が設けられる。この温度調整機により、ベース素材51は、搬送されながら所定のタイミングで所定の温度に達するように昇温または降温される。
【0047】
延伸機53では、ベース素材51を搬送しながら、所定方向に張力をかける延伸処理を実施する。延伸処理は、ベース素材51を搬送方向(以下、MD方向と称する)に伸ばす第1延伸工程と、ベース素材51を幅方向(以下、TD方向と称する)に引っ張り、幅を拡げる第2延伸工程とにより行い、これらの第1及び第2延伸工程によりベース素材51を支持体11とする。この第2延伸工程の後に、ベース素材51を加熱することにより分子配向を固定する熱固定工程や、D方向の張力を緩和して残留歪を低減する緩和工程を実施してもよい。また、公知の同時二軸延伸機を延伸機53に組み込んで、第1延伸工程と第2延伸工程とを同時に実施してもよい。
【0048】
なお、延伸機53におけるベース素材51の搬送方法及び延伸方法は、特に限定されず、公知の方法であってよい。例えば、第1延伸工程では、2本のローラでベース素材51を搬送し、上流側の一方よりも下流側の他方の周速が大きくなるように両者に周速差をもうけることにより、ベース素材51をMD方向に延伸する。この2本のロールの周速を調節することにより、MD方向の延伸倍率を制御することができる。第2延伸工程では、ベース素材51の側端部を保持して搬送する保持部材としてのクリップ(図示せず)と、クリップが取り付けられ無端で走行するチェーン(図示無し)とチェーンの軌道を決定するレール(図示無し)とが備えられた延伸機を用いることができる。この場合のレールにはシフト機構(シフト機構)が備えられる。延伸機53に送り込まれたベース素材51は、所定の位置に達すると、両側端部をクリップで保持される。シフト機構は、レールをベース素材51の幅方向に移動させ、これによりチェーンは変位する。チェーン上のクリップは、ベース素材51を保持した状態でベース素材51の幅方向に移動し、ベース素材51は幅方向に張力が付与される。チェーンの変位を制御することにより、ベース素材51のTD方向での延伸倍率を変えることができる。
【0049】
ただし、支持体11の製造方法は、上記の方法に限定されず、公知のポリマーフィルム製造設備を用いることができる。例えば、「PETフィルム−延伸技術・特性・評価・高機能化・用途展開−(1990年 技術情報協会発行)」に記載されるような一般的なポリエスエルフィルム製造設備を用いてもよい。ポリエステルから支持体11を製造する場合には、周知の逐次二軸延伸法あるいは、同時二軸延伸法にて製造することが好ましい。
【0050】
なお、本実施形態では、ポリマー層形成部42へ案内する前の支持体11に対して、コロナ放電処理手段(図示無し)で表面処理を実施してある。
【0051】
第1塗布液製造部34では、金属酸化物からなる粒子とバインダと液体成分とから第1塗布液33を調製する。金属酸化物からなる粒子は液体成分に分散させ、バインダは液体成分に溶解させる。
【0052】
第1塗布液製造部34で調製された第1塗布液33は、ポリマー層形成部42の塗布手段61で支持体11の上に塗布される。本実施形態では、塗布手段として、周知のバーコートを用いるが、塗布手段はこれに限定されず、公知の種々の塗布手段で塗布してよい。塗布手段61の下流には、第1塗布液33からなる塗布膜を乾燥する乾燥手段62が備えられており、この乾燥手段62により第1塗布液33をポリマー層12にする。
【0053】
第2塗布液製造部38では、UV硬化樹脂を含む第2塗布液37を調製する。調製された第2塗布液37は、ハードコート層形成部43に送られて、ポリマー層形成部42から案内されてきたポリマー層12を備える支持体のポリマー層12の上に塗布される。このハードコート層形成部43でも、バーコートを塗布手段63として用いるが、塗布手段63はこれに限定されず、公知の種々の塗布手段で塗布してよい。塗布手段63の下流には、第2塗布液37からなる塗布膜に紫外線を照射して硬化させるUV硬化手段64が備えられており、このUV硬化手段64により第2塗布液37をハードコート層21にする。
【0054】
ポリマー層12とハードコート層21とが設けられた支持体11は、導電層形成部44に案内される。導電層形成部44には、スパッタリング法でハードコート層21の上に導電層を形成するスパッタリング手段65が備えられる。ただし、導電層の形成方法は、本実施形態のようなスパッタリング法に限定されず、例えば、真空蒸着法、CVD法、イオンプレイティング法、スプレー法等の公知の方法に代えてもよい。
【0055】
以上の方法により、導電性フィルム20と導電性フィルム10とを製造することができる。
【0056】
以下、本発明である実施例1〜4と、本発明に対する比較例1〜3とを説明する。
【実施例1】
【0057】
導電性フィルム製造設備31を用いて、導電性フィルム10を製造した。なお、導電性フィルム製造設備31にはハードコート層形成部43を設けなかった。
【0058】
ゲルマニウム(Ge)を触媒とした重縮合により得られ、固有粘度が0.66のPETを含水率が50ppm以下になるまで乾燥機47で乾燥した。乾燥後、溶融押出機48によりPETをフィルム形状のベース素材51とした。溶融押出機48は、PETを溶融するヒータと、溶融されたPETをフィルム形状に押し出すダイと、このダイから押し出し口の下流に配されるチルロールとを備える。チルロールは、周面を冷却する冷却機構を有し、この表面に接触したベース素材51を冷却する冷却ローラである。溶融押出機48のヒータの温度は280℃以上300℃以下の範囲で略一定に保持した。このヒータでPETを溶融し、ダイから静電印加されたチルロールへと押し出して、非結晶のベース素材51にした。この非結晶のベース素材51を、溶融押出機48の下流に設けられる延伸機53へ搬送した。
【0059】
延伸機53では、ベース素材51をMD方向に伸ばす第1延伸工程と、この第1延伸工程の後にベース素材51をTD方向に伸ばす第2延伸工程とを実施し、支持体11を得た。第1延伸工程では、ベース素材51を3.3倍に伸ばし、第2延伸工程では幅が3.8倍になるように幅方向に張力を付与した。得られた支持体11の厚みは125μmである。
【0060】
この支持体11の一方の表面に対して、276J/mの条件下でコロナ放電処理を施した。
【0061】
コロナ放電処理を経た支持体11をポリマー層形成部42に案内し、下記の組成Aの塗布液33を支持体11に塗布した。第1塗布液33は、面積1m当たり7.1×10−6(=7.1cc)となるように塗布した。
【0062】
<組成Aの第1塗布液33>
・屈折率が1.60以上のポリエステル(バインダ成分) 57.63質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ−687、固形分25%)
・カルボジイミド構造を複数個有する化合物 28.31質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・界面活性剤A 12.68質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90の1%水溶液、アニオン性)
・界面活性剤B 15.49質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95の1%水溶液、ノニオン性)
・二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物 48.55質量部
(石原産業(株)製、FS−10D、長軸長/短軸長で求める比=25、
酸化アンチモン含有率3.5%、固形分20%)
・蒸留水 全体が1000質量部になるように添加
【0063】
第1塗布液33からなる塗布膜を乾燥手段62で155℃に加熱して1分間乾燥し、ポリマー層12とした。
【0064】
ポリマー層12を設けた支持体11からサンプリングして、このサンプルにおけるポリマー層12の厚みt2を透過型電子顕微鏡(JEM2010(日本電子(株)製))により、倍率200000倍で測定した。ポリマー層12の厚みt2は92nmであった。
【0065】
また、このサンプルにつき、以下の方法でポリマー層12の屈折率を下記の方法により測定した。まず、市販のシリコンウエハ上に、乾燥後の厚みが3〜4μmとなるように組成Aからなる第1塗布液33を塗布して塗布層を設けた。この塗布層を105℃に10分間加熱して乾燥させ、屈折率測定用のサンプルを作製した。次に、このサンプルを屈折率測定機(SPA−4000(Sairon Technology,Inc.社製))にセットして、プリズムカプラ法により波長660nmと850nmとで第1塗布液33から形成された層の屈折率を測定した。次に、660nmと850nmとの各波長と、各波長における屈折率の測定値とを下記式(1)で表されるセルメイヤーの式にそれぞれ代入し、定数A及びBを算出した後、この定数A及びBから波長を550nmとしたときの屈折率を算出した。ただし、式(1)中のλは、測定波長(nm)であり、nは測定波長での屈折率である。これにより求めた波長550nmにおける屈折率は1.65であった。
n2−1=Aλ2/(λ2−B)・・・(1)
【0066】
ポリマー層12を設けた支持体11を導電層形成部44のスパッタリング手段に案内し、ポリマー層12に透明導電層11としてのITO(Indium tin oxide)膜を形成した。スパッタリング手段としては、DCスパッタリングを用いた。また、ターゲットとしては、インジウム:錫=90:10のターゲットを使用した。スパッタリング手段の真空室内の圧力を予め10−3Paとし、この真空室にアルゴン(Ar)と酸素(O)との混合ガスを導入しながら、5×10−1Paの圧力下でスパッタリングを実施した。得られた導電層の屈折率は2.05、厚みt3は、30nmであった。
【0067】
得られた導電性フィルム10について、透明性と、支持体11とポリマー層12との接着性と、虹ムラの有無と、オリゴマーの析出の有無とを評価した。
【0068】
1.透明性の評価
透明性は、全光線透過率とヘイズの加熱処理前後での変化量とを測定し、この測定結果により評価した。全光線透過率とヘイズとは、ヘイズメーター(NDH−2000、日本電色工業(株))を用いて、JIS−K−7105に準じて測定した。
【0069】
ヘイズの加熱処理前後での変化量(単位;%)については、所定条件での加熱処理の前(つまり、加熱処理無し)と後との両方につきヘイズをそれぞれ測定し、加熱処理前のヘイズをH1、加熱処理後のヘイズをH2とするときに|H2−H1|/H1×100の式で求めた。
【0070】
ヘイズ測定における前記加熱処理は、導電性フィルム10からサンプリングしたサンプルを、内部の温度を150℃に設定したオーブンの中に入れて、10分間保持することにより行った。なお、加熱処理後のヘイズ測定は、オーブンから取り出したサンプルを冷却してから実施した。
【0071】
2.接着性の評価
支持体11とポリマー層12との接着性は以下のように接着力の強さで評価した。なお、この接着性の評価は、導電層13を設ける前の、ポリマー層12を設けた支持体11からサンプリングしたサンプルについて実施した。サンプリングしたサンプルを60℃の蒸留水の中に16時間浸漬させた。次に、浸漬後のサンプルを蒸留水から取り出して、サンプルの表面に付着している水滴を、紙(キムワイプS−200、クレシア(株)製)で軽く拭き取った。拭き取った直後に、このサンプルの表面を引掻強度試験機(HEIDON−18、新東化学(株)製)により0.1Rダイヤモンド針で擦り、この擦った部分を顕微鏡により倍率を100倍として観察した。ダイヤモンド針に加える荷重は200gとした。そして、サンプルの表面を目視により観察し、ポリマー層12の剥れ具合を、下記の5段階の評価基準に基づいて評価した。なお、下記の評価基準において、レベルB以上、すなわち、A及びBは製品上問題ないレベルである。
【0072】
A:剥れなしの場合
B:ダイヤモンド針で擦ったエリアの面積に対して剥れた面積が0%より大きく30%未満である場合
C:ダイヤモンド針で擦ったエリアの面積に対して剥れた面積が30%以上70%未満である場合
D:ダイヤモンド針で擦ったエリアの面積に対して剥れた面積が70%以上100%以下である場合
E:ダイヤモンド針で擦ったエリアに加えて、そのエリアの周辺部の塗布層にまで剥れが発生した場合
【0073】
3.虹ムラの有無
虹ムラの有無は以下のように評価した。まず、作製した導電性フィルム10の観察する面とは反対面である支持体11の表面をサンドペーパーで適量擦った。その後、この削った面に対して、マジックインキ(artline油性マーカー、補充インキはKR−20クロ、shachihata(株)製)を塗工し、塗工したインキを乾燥させた。これにより、支持体11の表面での反射を防止するために、波長が500nmの光の透過率が1%以下となるように調整した。次に、このサンプルの支持体11が下になるように、すなわち導電層13を上に向けて、サンプルを机の上に置き、サンプルの上方30cmの位置から3波長蛍光灯(商品名:ナショナルパルック蛍光灯、FL20S・EX−D/18)を用いて、サンプルを照らした。そして、光を照らすことにより発生する干渉斑を、目視により観察した。この観察で見られた干渉斑を虹ムラとして、虹ムラの発生の有無及び程度を、下記の評価基準により3段階で評価した。なお、下記の評価においてレベルB以上、すなわちAとBとが、製品上問題がないレベルである。
【0074】
A:正面を含むいずれの角度からサンプルを観察しても虹ムラが見えない場合
B:正面からは虹ムラが見えず、正面以外の角度からサンプルを観察すると虹ムラがわずかに見える程度である場合
C:正面から観察しても虹ムラが見える場合
【0075】
4.オリゴマーの析出の有無
オリゴマーの析出の有無は以下のように評価した。得られた導電性フィルム10からサンプリングしたサンプルを、ヘイズ測定における加熱処理と同じ条件で加熱処理し、取り出したサンプルを冷却してから、加熱処理前のサンプルと比べて外観が変化したか否かを観察した。各評価基準は以下の通りである。
【0076】
A:変化無しの場合
B:わずかに白濁した場合
C:白濁や白斑が確認された場合
【0077】
なお、以下の各実施例で得られた導電性フィルム10,20と各比較例で得られた導電性フィルムについても、実施例1と同様に評価を行った。評価結果については、表1に示す。
【実施例2】
【0078】
組成Aからなる第1塗布液33を、下記に示す組成Bからなる塗布液33に代えた。その他の条件は、実施例1と同じである。
【0079】
<組成Bの第1塗布液33>
・屈折率が1.60以上のポリエステル(バインダ成分) 57.63質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ−687、固形分25%)
・カルボジイミド構造を複数個有する化合物 28.31質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・界面活性剤A 12.68質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB-90の1%水溶液、アニオン性)
・界面活性剤B 15.49質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95の1%水溶液、ノニオン性)
・酸化ジルコニウムゾル 28.16質量部
(日産化学工業(株)製、ZR−40BL、平均粒径0.007μm、固形分40%)
・蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【実施例3】
【0080】
導電性フィルム製造設備31を用いて、導電性フィルム20を製造した。実施例1と同様の条件で形成したポリマー層12の上に、第2塗布液37を塗布した。第2塗布液37は、UV硬化ポリマー(JSR(株)製、Z7410B、屈折率=1.65)である。この第2塗布液37を、塗布膜の厚みが約9μmとなるように塗布し、塗布膜を70℃に1分間加熱して乾燥させた。次に、乾燥した塗布膜に対して、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して塗布膜中のポリマーを硬化させ、厚みが3μmのハードコート層21を形成した。なお、塗布層に対する紫外線の照射量は1000mJ/cmとした。
【0081】
ハードコート層21の上、実施例1と同じ条件で、導電層13としてのITO膜を形成した。形成された導電層13の屈折率は2.05、厚みは30nmであった。
【0082】
[比較例1]
実施例1の第1塗布液33の組成Aのうち二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物を除いた組成からなる塗布液をつくった。そして、この塗布液を組成Aの第1塗布液33に代えた。他の条件は、実施例1と同様にして導電性フィルムを作製した。
【0083】
[比較例2]
実施例1の第1塗布液33の組成Aのうち二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物を除いた組成からなる塗布液をつくった。そして、この塗布液を組成Aの第1塗布液33に代えた。他の条件は、実施例3と同様にして導電性フィルムを作製した。
【0084】
[比較例3]
実施例1の第1塗布液33を下記組成からなる塗布液に代えた。他の条件は、実施例1と同じである。
【0085】
<組成Cの塗布液>
・ポリエステル(バインダ成分) 49.68質量部
(石原産業(株)製、ES−650、固形分29%)
・カルボジイミド構造を複数個有する化合物 28.31質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・界面活性剤A 12.68質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB−901%水溶液、アニオン性)
・界面活性剤B 15.49質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95の1%水溶液、ノニオン性)
・二酸化錫−アンチモン複合針状金属酸化物水分散物 132.39質量部
(石原産業(株)製、FS−10D、固形分20%)
・蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【実施例4】
【0086】
組成Aの第1塗布液33に代えて下記の組成Dの塗布液を用いた。他の条件は、全て実施例1と同じである。
【0087】
<組成Dの塗布液>
・ポリエステル(バインダ成分) 57.63質量部
(互応化学(株)製、プラスコートZ−687、固形分25%)
・カルボジイミド構造を複数個有する化合物 28.31質量部
(日清紡(株)製、カルボジライトV−02−L2、固形分40%)
・界面活性剤A 12.68質量部
(日本油脂(株)製、ラピゾールB−90の1%水溶液、アニオン性)
・界面活性剤B 15.49質量部
(三洋化成工業(株)、ナロアクティーCL−95の1%水溶液、ノニオン性)
・二酸化錫−アンチモン複合金属酸化物水分散物 60.36質量部
(石原産業(株)製、SN−38F、平均粒径0.055μm、酸化アンチモン含有率5.9%、固形分17%)
・蒸留水 全体が1000質量部になるよう添加
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1〜3では、バインダや粒子の種類等の条件に若干の差異はあるものの、いずれも|η1−η2|を0.02以下としたので、いずれの評価に関しても製品として使用するに十分良好な結果が得られた。また、得られた導電性フィルム10,20をロール状に巻き取ったフィルムロールの端面を観察しても、端面が青みがかることもなく、この観点からも良好な透明性をもつことが確認された。これに対し、比較例1,2では、いずれも金属酸化物粒子を添加しておらず、|η1−η2|を0.05としたので、接着性については製品として問題の無いレベルの結果が得られたが、虹ムラに係る評価と、オリゴマーの析出に係る透明性の評価とに関しては、製品として問題がある結果となった。
【0090】
比較例3では、バインダのガラス転移点Tgが90℃以下であり、バインダを屈折率ηBが1.6未満のものに変更したため、虹ムラの評価に関しては製品として問題のない結果が得られたものの接着性に係る評価とオリゴマーの析出に係る透明性の評価とに関しては、製品として問題になる結果となった。
【0091】
実施例4では、酸化アンチモン含有率が5%以上の金属酸化物粒子を使用しているために、製品として問題のない評価結果が得られた。ただし、ロール状に巻き取ったときのフィルムロールにおけるロール端面が青味がかって見えた。
【符号の説明】
【0092】
10,20 透明導電性フィルム
11 支持体
12 ポリマー層
13 導電層
21 ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルからなり2軸延伸された支持体と、
屈折率ηPが1.80以上の金属酸化物からなる粒子と前記粒子を保持し屈折率ηBが1.60以上であるバインダとを含み、前記バインダに対する前記粒子の質量割合が大きくとも100%とされ、前記支持体の一方の面に配され、前記支持体の屈折率η1との差が0.02以下の屈折率η2をもつポリマー層と、
前記ポリマー層上に配される透明な導電層とを備えることを特徴とする透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属酸化物は、酸化錫と酸化アンチモンとであり、
酸化錫の質量をM1、酸化アンチモンの質量をM2とするときに、(M2/M1)×100で求める酸化アンチモン含有率が0より大きく5質量%以下の範囲であることを特徴とする請求項1記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記ポリマー層の厚みは、{500/(4×η2)}nm以上{600/(4×η2)}以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルム。
【請求項4】
前記バインダとしてのポリマーのガラス転移点Tgは90℃以上であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の透明導電性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−42064(P2011−42064A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190532(P2009−190532)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】