説明

透明導電性組成物

【課題】透明性に優れ、可視光線透過率が高く、且つ導電性を有する被膜を形成することができる透明導電性組成物の提供。
【解決手段】カルボキシル基含有アクリル単量体とアミノ基含有アクリル単量体またはアミド基含有単量体とを共重合させて得られる、カルボキシル基を有しさらにアミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂と、イオン性液体および分子中にエポキシ基とアルコキシシリル基を有する有機アルコキシシラン化合物とを含む透明導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂とイオン性液体とを含む被膜の透明性に優れた透明導電性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗料や粘着剤に帯電防止性や静電気防止性を付与するために、導電性酸化亜鉛のような導電性フィラーを配合する方法が知られている。導電性フィラーを配合することにより、塗膜は多少の差こそあれ濁りを生じる。したがって、この場合の塗料、粘着剤は着色顔料が配合されたものであり、塗膜の濁りが問題とならない床や壁に適用される。
【0003】
さて、イオン性液体は電気伝導性を有し、蒸気圧がないことから燃料電池や色素増感太陽電池への適用がさかんに検討されている。カチオン種、アニオン種を選択すれば、無色透明なものも製造される。
【0004】
アクリル樹脂は変性が容易であり、種々基材に対して粘着性、接着性を付与することが可能であり、また透明性、耐光性、耐候性、耐湿熱性等に優れているため塗料、粘着剤、接着剤などに広く使用されている。
【0005】
アクリル樹脂とイオン性液体とからなる粘着剤および粘着シートに関する技術が開示されている(特許文献1参照)。特許文献1に提案されている技術は炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレートの1種以上を主成分とする酸価が1以下のアクリル系ポリマーとイオン性液体を含有するものである。
【0006】
特許文献1に開示されている技術は帯電防止性を有する粘着剤、これを用いてシート状やテープ状などの形態とした帯電防止性の粘着シート類に関するものである。これらは静電気が発生しやすいプラスチック製品などに好適に用いられ、なかでも偏光板、波長板、光学補償フィルム、反射シートなどの光学部材表面を保護する目的で用いられる表面保護フィルムとして有用であるとされている。また、表面保護フィルムは、一般的に保護フィルム側に塗布された粘着剤を介して被保護体に貼り合わせ、被保護体の加工、搬送時に生じる傷や汚れを防止する目的で用いられる。そして、この光学部材が液晶セルに貼り合わされるなどして、保護フィルムが不要になった段階で保護フィルムは剥離して除去される。すなわち、特許文献1の提案は保護フィルムという技術でいう光学部材の一時的な保護のために用いられるものであり、光学部材の一要素として継続的に使用されるものではない。したがって本提案では、被膜の透明性や着色に何らの考慮を払う必要のないものである。
【0007】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、SEDなどの大型ディスプレイでは、無色透明で継続的に制電性、導電性が発揮できる材料が切望されていたが、上記の通り、実用化にはいたっていない。
【特許文献1】特開2005−330464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、被膜の透明性に優れた導電性組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、被膜の透明性に優れた透明導電性組成物について検討を行った結果、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂と、イオン性液体とを含む透明導電性組成物を見いだした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗膜の透明性、可視光線透過率の高い、導電性を有する組成物が製造できる。同時に、本発明の透明導電性組成物は、被膜形成能が高く、塗料、粘着剤として有用な組成物を提供する。
【0011】
本発明が提供する透明導電性組成物は種々基材に対する粘着性や付着性が良好であり、耐光性、耐熱性にも優れているため液晶ディスプレイなどの制電性膜、透明導電性膜、ICカード用の導電性膜、保護膜として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂とイオン性液体とを含む透明導電性組成物である。
【0013】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂は、カルボキシル基含有アクリル単量体、アミノ基またはアミド基含有アクリル単量体、およびその他の(メタ)アクリル酸エステル単量体を共重合することにより製造できる。
【0014】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いられるカルボキシル基含有アクリル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの分子中にカルボキシル基を有する不飽和単量体が例示できる。該カルボキシル基含有アクリル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0015】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いられるカルボキシル基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂の酸価が、好ましくは、2.0〜150mgKOH、より好ましくは、3.5〜120mgKOH、さらに好ましくは、5.0〜80mgKOHとなるよう共重合されるのが望ましい。アクリル樹脂の酸価が、2.0未満の場合には、アクリル樹脂の硬化性が悪化する場合があり、付着性や強靱性のある塗膜が得られない場合がある。アクリル樹脂の酸価が150mgKOHを超える場合には、耐水性、耐湿熱性が悪化する傾向にあり、基材への付着性、粘着性が損なわれる傾向が見られる。
【0016】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いられるアミノ基含有アクリル単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの分子中にアミノ基を有する不飽和単量体が例示できる。該アミノ基含有アクリル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0017】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いられるアミノ基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂中に、好ましくは、0.05〜20重量%、より好ましくは、0.2〜15重量%、さらに好ましくは、0.5〜12重量%共重合されるのが望ましい。アミノ基含有アクリル単量体の共重合量が0.05重量%未満の場合には、アクリル樹脂とイオン性液体との相溶性が失せられる傾向にあり、透明性の高い塗膜が得られない場合がある。アミノ基含有アクリル単量体の共重合量が20重量%を超える場合には、アミノ基のためにアクリル樹脂の製造が悪影響を受け、重合率が上がりにくくなったり、低分子量のポリマーしか製造できなくなる傾向にあり、粘着性、リワーク性が失せられる傾向が見られる。
【0018】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いられるアミド基含有アクリル単量体としては、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどの分子中にアミド基を有する不飽和単量体が例示できる。該アミド基含有アクリル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0019】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いられるアミド基含有アクリル単量体は、アクリル樹脂中に、好ましくは、0.02〜25重量%、より好ましくは、0.2〜22重量%、さらに好ましくは、0.5〜18重量%共重合されるのが望ましい。アミド基含有アクリル単量体の共重合量が0.02重量%未満の場合には、イオン性液体との相溶性が失せられる傾向にあり、透明性の高い塗膜が得られない場合がある。アミド基含有アクリル単量体の共重合量が25重量%を超える場合には、塗膜の耐水性、耐湿熱性などが悪化する傾向が見られる。
【0020】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために用いることのできるその他の(メタ)アクリル酸エステル単量体として、下記の(メタ)アクリル酸エステル単量体を例示することができる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルなどが例示できる。該(メタ)アクリル酸エステル単量体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0022】
該(メタ)アクリル酸エステル単量体のなかでは、イオン性液体と混合された際の被膜形成性や基材への粘着性の点から、アルキル基の炭素数が1〜6個のエステルが望ましく使用される。
【0023】
また、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を製造するために、スチレン、酢酸ビニルなどの共重合可能な不飽和単量体を使用してもよい。
【0024】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂は、重量平均分子量(以下Mwとも言う)が、好ましくは、3000〜50万、より好ましくは、5000〜35万、さらに好ましくは、7500〜33万であることが推奨される。アクリル樹脂のMwが3000未満の場合には、硬化後の塗膜がイオン性液体により膨潤、溶解し均一な膜を形成し得ない傾向が見られる。アクリル樹脂のMwが50万を超える場合には、イオン性液体との相溶性が悪化する傾向が見られ、塗膜の透明性が失せられる場合がある。
【0025】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂は、塊状重合、懸濁重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合、乳化重合などいずれの重合方法で製造されてもかまわない。
【0026】
製造されたポリマーを使って行う後工程を考慮した場合には、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂の製造は、塊状重合、分散重合、沈殿重合、溶液重合などの無溶剤系または非水溶媒系で実施されるのが望ましい。
【0027】
溶液重合でのカルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂の製造方法の一例を挙る。
【0028】
窒素ガスを吹き込んで重合容器内を窒素ガス置換した後、重合容器に溶媒としてのトルエン、n−ブチルアルコールを仕込み、所定重合温度まで昇温する。別に計量しておいたカルボキシル基含有アクリル単量体、アミノ基またはアミド基含有アクリル単量体、その他の(メタ)アクリル酸エステル単量体のモノマー混合物、および重合開始剤を含む溶液を重合容器内に所定時間で滴下し、必要に応じさらに追添化の重合開始剤を加え、設計重合率が得られる所定重合時間の間重合反応を継続することで製造できる。
【0029】
ここで、重合温度は、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜135℃、さらに好ましくは70〜125℃が推奨される。重合温度が50℃未満の場合には、重合の進行が遅く、生産効率が悪くなる場合がある。また、重合の進行に伴う発熱を除去するのが困難となり、暴走反応を喚起する場合がある。重合温度が150℃以上の場合には、溶媒への連鎖移動反応が活発化し、設計通りのアクリル樹脂が製造できない場合がある。
【0030】
重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物、α,α−アゾビスイソブチロニトリルなどの有機アゾ系重合開始剤などが例示できる。該重合開始剤は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
【0031】
また、溶液重合の際に使用できる有機溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、フィタントリオール、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、キシリレンジオキセタンなどが例示される。これらの有機溶媒は単独でも、2種類以上の混合物であってもよい。
【0032】
本発明の透明導電性組成物は、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂と、イオン性液体とを含む。
【0033】
イオン性液体とは、イオンのみ(アニオン、カチオン)から構成される塩であり、常温で液体状であるという性質を持つ。
【0034】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂とイオン性液体の配合割合は、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂とイオン性液体との総量を100重量部として、イオン性液体が、好ましくは、5〜99重量部、より好ましくは、30〜95重量部、さらに好ましくは、50〜85重量部であることが望ましい。
【0035】
イオン性液体の配合量が5重量部未満の場合には、塗膜の電気抵抗が高くなり、十分な帯電防止性や制電性を得られない傾向が見られる。イオン性液体の配合量が、99重量部を超える場合には、イオン性液体の膨潤、溶解作用により塗膜の強度が失せられ、塗膜や粘着剤としての機能を発揮し得なくなる場合がある。
【0036】
イオン性液体としては、例えば、N,N,N−トリメチル−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド、1−メチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミなどが例示できる。(参考文献:「14705の化学商品」1968−1969、化学工業日報社、(2006))該イオン性液体は単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0037】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂との相溶性を高め、着色のない透明性の高い塗膜を製造するため、および塗膜の耐水性、耐湿熱性を向上するために、イオン性液体としては、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートなどのカチオン部位がイミダゾリウム、アニオン部位が含フッ素化合物であることがより好ましく、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートなどのフッ素原子数が多いものがさらに好ましく、推奨される。
【0038】
本発明の透明導電性組成物は、塗膜厚が25μmのとき550nmの可視光線透過率が、好ましくは、85%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、95%以上であることが望まれる。塗膜厚が25μmのとき、550nmの可視光線透過率が85%未満の場合には塗膜にヘイズが見られ、色調や色の鮮やかさが重視されるディスプレイ用途には不的確となる場合がある。
【0039】
可視光線透過率は、分光光度計(例えば、大日精化(株)製の「COLORCOM」 Automatic Spectrophotometer)を使用することで測定できる。簡単には、ポリエステルフィルム(以下PETとも言う)上に透明導電性組成物の塗膜を作製し、未塗布のPETをリファレンスとして測定することで求めることができる。
【0040】
本発明の透明導電性組成物は、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂を架橋し、塗膜をより強靱とするため分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物を配合することが推奨される。
【0041】
分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどが例示できる。該分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物は、単独でも、もしくは2種類以上の混合物であってもよい。
【0042】
分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物は、カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.2〜40重量部、より好ましくは、0.5〜30重量部、さらに好ましくは、2.0〜25重量部配合されるのが望ましい。分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物の配合量が0.2重量部未満の場合には、塗膜の硬化性が悪くなる傾向が見られ、塗膜がイオン性液体で膨潤、溶解した状態が続き、基材に対する付着性、粘着性が不足する場合がある。分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物の配合量が40重量部を超える場合には、塗膜が硬くなりすぎ粘着性、付着性が悪化する傾向が見られる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を持って本発明を詳細に説明する。
【0044】
なお、実施例、比較例中、特に断りがなければ組成比は重量比を表す。
【0045】
また、分子量(Mw)は標準ポリメタクリル酸メチルを分子量標準として、GPC(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。加熱残分、酸価は、JIS K 5400(1997)に従い求めた。
【0046】
550nmの可視光線透過率は、「COLORCOM」(Automatic Spectrophotometer)(大日精化(株)の測定装置)を使用し、「ルミラーT−60#100」(東レ(株)のPETフィルム)(以下ルミラーとも言う)に透明導電性組成物を乾燥膜厚が25μmになるように成膜した後、未塗布「ルミラー」をリファレンスとして測定した。電気抵抗は「ハイレスタ−GP」(三菱化学(株)の測定装置)により測定した。
【0047】
実施例1
トルエン/n−ブタノール(=80/20)を溶媒として、モノマー組成がメタクリル酸メチル/メタクリル酸n−ブチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(=47/20/20/8/5)からなる分子中にカルボキシル基とアミノ基を有するアクリル樹脂(1)を製造した。アクリル樹脂(1)は、加熱残分55%、酸価52.2mgKOH、Mw28000であった。
【0048】
アクリル樹脂(1)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が、40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェートを配合し、攪拌、混合した。アクリル樹脂の加熱残分は、溶液重合で製造された溶剤などを含むアクリル樹脂溶液から加熱揮発分を除いた値であり、ポリマー成分を意味する。さらに、10phrのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加し、攪拌、混合を行い、実施例1の透明導電性組成物(1)を製造した。
【0049】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。このシートを使い測定した透明導電性組成物(1)の光線透過率は95%以上で、透明性に優れていた。また、塗膜の電気抵抗は2.3×10Ω/□で、十分な制電性能を有していた。同時に、ガラスへの粘着性、再剥離性も良好であった。
【0050】
実施例2
トルエン/n−ブタノール(=80/20)を溶媒として、モノマー組成がスチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(=35/55/5/5)からなる分子中にカルボキシル基とアミノ基を有するアクリル樹脂(2)を製造した。アクリル樹脂(2)は加熱残分55%、酸価32.6mgKOH、Mw18000であった。
【0051】
アクリル樹脂(2)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が、40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートを配合し、攪拌、混合した。さらに、10phrのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加し、攪拌、混合を行い、実施例2の透明導電性組成物(2)を製造した。
【0052】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。このシートを使い測定した透明導電性組成物(2)の光線透過率は95%以上で、透明性に優れていた。また、塗膜の電気抵抗は5.8×10Ω/□で、十分な制電性能を有していた。同時に、ガラスへの粘着性、再剥離性も良好であった。
【0053】
実施例3
アクリル樹脂(1)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が、40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェートを配合し、実施例3の透明導電性組成物(3)を製造した。
【0054】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。このシートを使い測定した透明導電性組成物(3)の光線透過率は95%以上で、透明性に優れていた。また、塗膜の電気抵抗は8.2×10Ω/□で、十分な制電性能を有していた。ガラスへの粘着性も良好であったが、少し糊残りが見られた。
【0055】
実施例4
トルエン/ブタノール(=80/20)を溶媒として、モノマー組成がMMA/メタクリル酸n−ブチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸メチル/N,N−ジメチルアクリルアミド(=47/20/20/8/5)からなる分子中にカルボキシル基とアミド基を有するアクリル樹脂(3)を製造した。アクリル樹脂(3)は、加熱残分55%、酸価52.2mgKOH、Mw32000であった。
【0056】
アクリル樹脂(3)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が、40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェートを配合し、攪拌、混合した。さらに、10phrのGPSを添加し、攪拌、混合を行い、実施例4の透明導電性組成物(4)を製造した。
【0057】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるように塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。このシートを使い測定した透明導電性組成物(4)の光線透過率は95%以上で、透明性に優れていた。また、塗膜の電気抵抗は4.8×10Ω/□で、十分な制電性能を有していた。同時に、ガラスへの粘着性、再剥離性も良好であった。
【0058】
比較例1
トルエン/n−ブタノール(=80/20)を溶媒として、モノマー組成がMMA/メタクリル酸n−ブチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(=50/20/20/10)からなる分子中に水酸基を有するアクリル樹脂(4)を製造した。アクリル樹脂(4)は、加熱残分55%、酸価0mgKOH、Mw45000であった。
【0059】
アクリル樹脂(4)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェートを配合し、攪拌、混合した。さらに、アクリル樹脂の水酸基とウレタン硬化剤のイソシアネート基の等量比が1:1になるように、「スミジュールN−3300」(住友バイエルウレタン(株)のウレタン硬化剤)を添加し、攪拌、混合を行い、比較例1の組成物(5)を製造した。
【0060】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるよう塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。このシートを使い測定した組成物(5)の光線透過率は50%以下で、塗膜は白濁していた。塗膜の電気抵抗は1010Ω/□以上で、導電性塗膜としては不都合なものとなった。
【0061】
比較例2
トルエン/n−ブタノール(=80/20)を溶媒として、モノマー組成がMMA/メタクリル酸n−ブチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸メチル(=47/20/25/8)からなる分子中にカルボキシル基を有するアクリル樹脂(5)を製造した。アクリル樹脂(5)は加熱残分55%、酸価52.2mgKOH、Mw35000であった。
【0062】
アクリル樹脂(5)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェートを配合し、攪拌、混合した。さらに、10phrのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加し、攪拌、混合を行い、比較例2の組成物(6)を製造した。
【0063】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるよう塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。塗膜は硬化せず、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェートで膨潤、溶解した状態であり、膜としては実用性に欠けるものだった。このシートを使い測定した組成物(6)の光線透過率は50%以下で、塗膜は白濁していた。塗膜の電気抵抗は2.3×10Ω/□で、制電膜としてはやや劣っていた。
【0064】
比較例3
トルエン/n−ブタノール(=80/20)を溶媒として、モノマー組成がMMA/メタクリル酸n−ブチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル(=48/22/28/0.2/1.8)からなる分子中にカルボキシル基とアミノ基を有するアクリル樹脂(6)を製造した。アクリル樹脂(6)は、加熱残分55%、酸価1.3mgKOH、Mw33000であった。
【0065】
アクリル樹脂(6)に、アクリル樹脂の加熱残分/イオン性液体が40/60となるように、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロフォスフェートを配合し、攪拌、混合した。さらに、10phrのGPSを添加し、攪拌、混合を行い、比較例3の組成物(7)を製造した。
【0066】
「ルミラー」に乾燥膜厚が25μmになるよう塗布し、100℃で2分間加熱乾燥し、試験用シートを製造した。塗膜は硬化せず、HMFPで膨潤、溶解した状態であり、膜としては実用性に欠けるものだった。このシートを使い測定した組成物(7)の光線透過率は80%で、塗膜はやや濁りが見られた。塗膜の電気抵抗は1.8×10Ω/□で、制電膜としてはやや劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有し、アミノ基またはアミド基を有するアクリル樹脂と、イオン性液体とを含む透明導電性組成物。
【請求項2】
膜厚が25μmであるとき、波長550nmの可視光線透過率が85%以上である請求項1記載の透明導電性組成物。
【請求項3】
分子中にエポキシ基とアルコキシシラン基を有する有機アルコキシシラン化合物を含有する請求項1または2記載の透明導電性組成物。

【公開番号】特開2007−302796(P2007−302796A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133200(P2006−133200)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】