説明

透明有機発光ダイオード

本発明は、上面(2a)及び底面(2b)を有し、少なくとも上面(2a)上に、第1の電極層(3)、第2の電極層(4)、及び第1の電極層(3)と第2の電極層(4)との間に配置される有機発光層システム(5)を有する少なくとも1つのOLED層システムが配置される基板材料を有する透明有機発光ダイオード(OLED)(1)に関する。OLED(1)は、上面(2a)を介して及び底面(2b)を介して光を放射するよう行われ、OLED(1)の上面(2a)及び底面(2b)は、少なくとも1つの明光領域(6)及び少なくとも1つの暗光領域(7)を表す。本発明は、上面(2a)上の少なくとも1つの層が、OLED(1)が上面(2a)及び底面(2b)において少なくとも1つの明光領域(6)及び少なくとも1つの暗光領域(7)を表すように、OLED(1)の外側延長部において透明度と反射率との間の変化する関係を特徴とし、明光領域(6)は暗光領域(7)に対向して配置される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、明光(bright lucent)領域及び暗光(dark lucent)領域を有する透明有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、上面及び底面を有し、少なくとも前記上面上に、第1の電極層、第2の電極層、及び前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に配置される有機発光層システムを有する少なくとも1つのOLED層システムが配置される基板材料を有する透明有機発光ダイオード(OLED)に関する。このようなOLEDは、前記上面を介して及び前記底面を介して光を放射するよう行われ、当該OLEDの前記上面及び前記底面は、少なくとも1つの明光領域及び少なくとも1つの暗光領域を表す。
【0003】
米国特許出願公開第2008/0100211(A1)号明細書(特許文献1)は、基板上で透明電極と1つの更なる電極との間に配置される有機発光層を備えた有機発光ダイオードを開示している。電極のうち少なくとも1つは2つの層を特徴とする。これら2つの層は、電荷担体注入層である構造化された層と、第1の層が埋め込まれている導電性の第2の層とを有する。幾つかの実施形態において、有機発光埋め込み層は、構造化された担体ブロッキング層を有する。あいにく、OLEDの発光領域を構造化するこのようなシステムは、基本的に、有機発光層システムに影響を与え、一方、効率は、第1の層を第2の層に埋め込んで透明電極を形成する部分を増やすにつれて低下する。埋め込みは、第2の層が基板上に堆積されて、第1の層が第2の層において構造化ドーピングによって生成され得るためである。ドーピングは、有機発光層への電荷担体のより容易な注入をもたらすことができ、あるいは、有機発光層への電荷担体の注入を可能にすることができ、一方、注入は、第2の層のみによっては起こらない。このように、有機発光ダイオードは、第1の層によって構成される領域においてのみ有効に光を放射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0100211(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、上記欠点を解消するという目的を有する。具体的に、本発明は、上面を介して及び底面を介して光を放射することができ、ほとんど発光効率を低下させることなく一方の側へ放射される強さを横方向に変化させるよう配置される透明有機発光ダイオード(OLED)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明の請求項1によって教示される透明有機発光ダイオード(OLED)によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって定義される。
【0007】
本発明は、前記上面上の少なくとも1つの層が、当該有機発光ダイオードが前記上面及び前記底面において少なくとも1つの明光領域及び少なくとも1つの暗光領域を表すように、当該有機発光ダイオードの外側延長部において透明度と反射率との間の変化する関係を特徴とし、前記明光領域が、前記暗光領域に対向して配置されることを開示する。
【0008】
本発明に従って、当該有機発光ダイオードは、その外側延長部において透明度と反射率との間の変化する関係を特徴とする。透明度と反射率との間の前記変化する関係は、前記上面上の少なくとも1つの層に適用される。電流がアノードとカソードとの間印加されるとき、前記有機発光層は光を放射する。光はアノード層へ及びカソード層へ放射する。本発明に従って、当該有機発光ダイオードの前記上面上の少なくとも1つの層、例えば、カソード層は、当該有機発光ダイオードの外側延長部における透明度と反射率との間の可変な関係を特徴とする。その結果、離散的な明光領域及び暗光領域において現れる両側での構造化を特徴とするOLEDが生成され、一方、構造化は、有機発光ダイオード全体の側面及び第2の側面に関してミラー反転され、輝度において反転される。
【0009】
好ましい実施形態として、前記OLED層システムの上には、少なくとも1つの反射防止層を配置される。以下で、一般性を失うことなく、当該有機発光ダイオードの前記上面上の電極層はカソード層であるとする。このカソードは、単層又は多層システムのいずれかであってよい。この好ましい実施形態において、透明度と反射率との間の前記変化する関係は、カソード層及び/又は反射防止層において実現されてよい。透明度と反射率との間の関係の変化は、当該有機発光ダイオードの外側延長部にわたってカソード層の厚さを変化させることによって引き起こされてよく、一方、例えば、金属カソードの厚さが厚い場合は、前記有機発光層システムに対する反射率は増大する。更に、当該有機発光ダイオードの外側延長部にわたって反射防止層の厚さを変化させること、例えば、反射防止コーティングの厚さを0から有限値へと増やすことは、前記有機発光層システムに対する反射率を低下させる。更に、カソード層内若しくはカソード層と反射防止コーティングとの間の金属若しくは付加的な材料の局所的な堆積、又は反射防止コーティングの上若しくは下若しくは中における金属若しくは付加的な材料の局所的な堆積、又は異なる導電性若しくは非導電性材料による元のカソード層の局所的な置換、又は異なる材料による元の反射防止層の局所的な置換、あるいは、これらの組合せが、透明度と反射率との間の関係を変化させることができる。
【0010】
例えば、透明な銀カソードがITOによって局所的に置換される場合、通常、反射率は、ITO領域において低下し、より多くの光がOLEDの上側を通って放射される。望ましくは、置換された領域(例えば、ITO)の電子入射特性は、元のカソード領域におけるよりも悪くてはならない。このように、全体的なOLED効率の低下は回避可能である。従って、好ましい解決法は、担体注入のために必要とされる最小厚さまで元のカソードを局所的に薄くし、その最小厚さの領域の上に異なった導電性材料(例えば、ITO)を堆積することであってよい。
【0011】
例えば、他の好ましい実施形態に従って、カソード層は、厚さが薄い領域と、厚さが厚い領域とを特徴とし、前記厚さが薄い領域は、充填材で満たされる。カソード層上には、充填材により反射防止層が適用されてよい。前記充填材が適用され且つカソード層がより薄い厚さを表す領域において、カソード層の反射率は低下又は増大する。反射率が低下する場合に、当該有機発光ダイオードの前記底面を通ることができる光は減少し、一方、より多くの光が当該有機発光ダイオードの前記上面を介して放射され得る。
【0012】
更なる他の実施形態に従って、カソード層は厚い厚さを特徴としてよく、この厚い領域において、追加の適用材料がカソード層上に堆積されてよい。この実施形態に従って、カソード層及び付加的な適用材料の夫々の反射率は増大又は低下する。反射率が増大する場合に、かかる領域においてカソード層を通ることができる光の量は減少し、高い反射率により、光は当該有機発光ダイオードの前記底面を通る。
【0013】
更なる他の実施形態に従って、カソード層の厚さは当該有機発光ダイオードの横方向において一定であり、反射防止層の厚さは変化する。反射防止層の厚さがより厚ければ、反射率は変化し、このような厚さの領域において反射防止層を通る所与の波長の光の量は増大又は減少し、前記底面を介して当該有機発光ダイオードを通る光も増大又は減少する。
【0014】
本発明の適用範囲において、透明度と反射率との間の前記変化する関係は、カソード層及び/又は反射防止層に限定されない。カソード層及び/又は反射防止層における厚さの変化と同様に、アノード層の厚さが可変に実行されてよく、一方、該厚さが変化する離散的な領域が特定のパターンで実行されてよい。
【0015】
あらゆる実施形態に従って、前記上面を介して放射され且つ前記底面を介して放射される光の強さの量は、当該有機発光ダイオード全体にわたる如何なる離散的な領域においても略一定であることができる。前記上面を介して放射される光の量が前記底面を介して放射される光の量に加えられるとき、総量は、当該有機発光ダイオード全体におけるいずれの離散的な領域においても略一定であることができる。従って、当該有機発光ダイオードの第1の面を通過する光の量が多ければ多いほど、当該有機発光ダイオードの対向する面を通る光の量は少なくなる。OLED内の本発明によるシステムは、OLEDが光放射のフィールド全体内の全ての離散的な領域にわたって光を放射するので、OLEDの効率が必ずしも低下しないという利点をもたらす。なお、我々は、例えば、反射防止層の局所的な置換のために、吸収材料が使用されてもよいことを指摘する。このように、局所的な置換は、例えば、OLEDの上側への放射における暗パターンとして可視的であり、且つ、OLEDの下側への放射における明パターンとして可視的であり、一方、OLEDの全体的な放射効率は低下する。
【0016】
更なる他の実施形態に従って、当該有機発光ダイオードの外側延長部におけるカソード層及び/又は反射防止層、あるいはアノード層の透明度と反射率との間の関係は、離散的な別個の領域において定義され、又は、該関係は、少なくとも1つの連続的な遷移を特徴とする。前記連続的な遷移は、暗光領域及び明光領域の変化する密度のパターンによって実行される。密度を変化させる1つの可能性は、厚い領域及び薄い領域の場所を変えることによって得ることができ、一方、厚い領域の密度が高ければ、当該有機発光ダイオードの第1の面を通る光の量は減少し、対向する面を通る光の量は増大する。
【0017】
上記手法によって引き起こされる当該有機発光ダイオードの透明度及び反射率における前記変化する関係は、生成されるパターンの様々な光学的外観を引き起こすことができる。
【0018】
例えば、反射率がそのようにして可視スペクトル全体にわたって一様に増大し、透明度が然るべく低下する場合、率直な明暗コントラストが得られる。すなわち、放射される光のスペクトルは、当該有機発光ダイオードのそれぞれの側における暗領域及び明領域において原則的に同じであり、一方、その強さは変化する。
【0019】
例えば、反射防止層の厚さを変化させることによって、反射率が可視スペクトルにわたって不均一に増大し、透明度が然るべく不均一に低下する(これは、当該有機発光ダイオードの外側延長部における透明度と反射率との間の前記変化する関係が前記有機発光層システムによって放射される波長に依存して行われることを意味する。)場合、このことは、当該有機発光ダイオードの各面における明領域と比較して暗領域において異なった波長スペクトルをもたらす。波長スペクトルの第1の部分が非パターン形成領域で反射され(且つ、スペクトルの対応する部分が伝えられ)、それによって、スペクトルの異なる第2の部分は、パターン形成領域において反射され(且つ、スペクトルの対応する異なる部分が伝えられ)る。
【0020】
例えば、反射防止層の下に局所的に吸収材を挿入することによって、吸収が可視スペクトルにわたって不均一に増大し、透明度又は反射率が然るべく変化する場合、このことは、当該有機発光ダイオードの各面における明領域と比較して暗領域において異なった波長スペクトルをもたらす。波長スペクトルの第1の部分は、非パターン形成領域において伝えられ(且つ、スペクトルの対応する部分が反射され)、それによって、スペクトルの異なる第2の部分は、パターン形成領域において伝えられる。
【0021】
当該有機発光ダイオードの外側延長部における明光領域及び暗光領域の分布は、離散的な符号及び/又は文字のような装飾的なグラフィックス又は情報グラフィックスをもたらす。
【0022】
このように、生成されたパターンは、OLEDがスイッチオフされる場合にも、例えば、非パターン形成領域と比較して輝度コントラスト又は色コントラストにおいて、可視的となる。
【0023】
かかるパターンの色又は輝度におけるコントラストの所望の大きさと、透明度及び反射率における関係の必要な変化の程度とに関して、放射される波長に関連する人間の目の生理的感度が考慮されるべきである。
【0024】
例えば、基板材料上に直接適用される層システムは、次の部材を有してよい。すなわち、前記アノード層はITO層(I=インジウム、T=スズ、O=酸化物)として実行されてよく、一方、基板材料は例えばガラス材料又はホイルとして実行されてよく、ITO層は該基板材料上のコーティング層として設計される。前記有機発光層システムは、pドープ正孔注入層MTDATA:FTCNQ(1%)40nmを有してよい。pドープ正孔注入層に隣接して、正孔担体層が適用されてよい(α−NPD,10nm)。この層に隣接して、発光層が適用され、一方、発光層は様々な色において実行されてよい(例えば、オレンジ:α−NPD:Ir(MDQ)(acac)(10%),20nm)。次の層は電子伝達層(BAlq20nm)であってよく、その後にnドープ層(LiF1nm)が続く。有機発光層システムに隣接して、カソード層は1.5nmの厚さを有するAl層であってよく、Al層上には、15nmの透明なAg層が適用される。この透明な薄いAg層上には、50nmのAl層が、OLEDにおけるパターンを実行するよう、離散的な領域において適用されてよい。次の層として、反射防止層(例えば、Alq(50nm))が適用されてよい。この層を覆うために、最後の層の上には、当該OLED層システムを損傷及び/又は水分に対して保護するための透明なカバー要素及び/又は透明なカバー層が適用される。
【0025】
反射率と透明度との間の関係を変化させるために、次の材料、すなわち、充填材又は追加の適用材料(金属材料、アルミニウム、銀、金、銅、ニッケル等)が、夫々、カソード層及び/又は反射防止層のために適用されてよい。更に、ZnS又はZnSe等の無機材料が適用可能である。Alq、α−NPD、スピロ化合物、フタロシアニン、フラーレン等の有機材料が適用可能である。
【0026】
Alq又はα−NPD等の有機材料が反射防止層として使用される場合、OLED全体の透明度は、改善された反射防止コーティングを局所的な範囲に適用することによって、約20%範囲内で変化しうる。このように、放射される光の約10%の範囲における部分は、アノード側からカソード側へ再分配され得る。光の明るさの差を観測するための人間の目の限られた能力のために、これは、明るさにおける所望のコントラストの最小値を表しうる。
【0027】
透明度が変化する層の構造化は、技術的にマスクを用いて行われてよい。例えば、シャドーマスク原理が適用可能であり、印刷原理(例えば、インクジェット印刷、又はその他印刷技術)が適用可能である場合には、構造化はそのような印刷によって行われてよい。
【0028】
層システムを保護するための前記透明なカバー要素は、OLEDの層システム上に接着されているガラスカバーとして行われてよい。更に、フレームが接着(gluing)によって適用されてよく、一方、フレームの上には、半透明の部分としてガラスパネルが配置される。ガラスパネルを備えたフレームに隣接して、ガラスパネルが直接にOLED上に接着されてよい。
【0029】
保護システムが透明なカバー層として実行される場合、カバー層は、SiN(200nm)/SiOの1又はそれ以上のダブルレイヤとして、あるいは、その他薄膜カプセル充填として、実行されてよい。更なる他の実施形態に従って、前記透明なカバー層は、ガラスパネルのような透明なカバー要素と組み合わせて適用されてよい。
【0030】
目下のOLEDの応用の分野は、照明及び/又は装飾目的に関するものでありうる。例えば、目下のOLEDは、第1の面を介して及び第2の面を介して光を放射する自発光素子として実行される間仕切り要素(room dividing element)として使用されてよい。暗光領域及び明光領域は、ピクチャ、グラフィックス、矢印等の符号、又は月、星、幾何学的図形等の符号のようなあらゆる様々な画像をもたらすことができる。この間仕切り要素は、夫々の部屋(例えば、海にあるホテル等)の使用に言及するピクチャ又は符号によりパターン化されてよい。また、OLEDは、OLEDの回転を可能にするフレームにおいて実装されてよい。この場合に、OLEDは、一般に、インテリア照明及び装飾目的のために使用されうる。ランプシェードとして実行される等の他の用途がOLEDには見出されうる。望ましくは、ランプシェードは、天井から吊される場合に部屋の天井に配置され、上面を介して上向きに及び底面を介して下向きに光を放つことができる。更に、OLEDは、例えば建物の中又は車の中で、OLED窓として使用されてよい(後者の場合には、例えば、自動車メーカのロゴがOLED上にパターン化されうる。)。
【0031】
本発明の対象の更なる詳細、特徴及び利点については、添付の特許請求の範囲及び夫々の図に係る以下の記載において開示される。以下の記載は、本発明の好ましい実施形態を示し、添付の図面に関連して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】厚さが一様でないカソード層を有する目下のOLEDの第1実施形態を断面図において示す。
【図2】厚さが一様でなく、薄い部分は充填材で満たされているカソード層を有する目下のOLEDの第2実施形態を断面図において示す。
【図3】厚さが一様でなく、厚い部分には付加的な適用材料が配置されているカソード層を有する目下のOLEDの第3実施形態を断面図において示す。
【図4】他の付加的な適用材料を配置された一様な厚さのカソード層を有する目下のOLEDの第4実施形態を断面図において示す。
【図5】厚さが一様でなく反射防止層が一様な厚さのカソード層に適用される目下のOLEDの第5実施形態を断面図において示す。
【図6】異なった材料を局所的に内部に挿入されたカソード層と、一様な厚さの反射防止層とを有する目下のOLEDの第6実施形態を断面図において示す。
【図7】一様な厚さのカソード層と、異なった材料を局所的に内部に挿入された反射防止層とを有する目下のOLEDの第7実施形態を断面図において示す。
【図8】放射される光の輝度が連続的に遷移するOLEDの実施形態を示す。
【図9a】OLEDの発光領域全体内のグラフィックスの実施形態を上面から見た図である。
【図9b】OLEDの発光領域全体内のグラフィックスの実施形態を底面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1乃至7は、透明有機発光ダイオード(OLED)1の様々な実施形態を示す。OLED1は、担体材料を提供することを目的とする基板材料2を備える。基板は、例えば、外結合(light out-coupling)の改善のような光学的な目的又は他の目的のために、更なる層を有してよい。基板材料2は、上向きの上面2aと、下向きの底面2bとを備える。基板材料2の上面2aには、複数の異なった層が適用されている。これらについては後述する。上面2aに隣接して、第1の電極層3(例えば、アノード層)が適用されている。第1の電極層3はITO層として実施されてよい。第1の電極層3の上には、有機発光層システム5が適用されている。有機発光層システム5は多層システムとして実施されてよい。一方、有機発光層システム5の上には、第2の電極層4(例えば、カソード層)が適用されている。第2の電極層4は、例えば、Al層又はAg層又はITO層又はZnO層であってよい。第1の電極層3と第2の電極層4との間に電流を印加することによって、有機発光層システム5は、上方向及び下方向の両方に光を放射することができる。印加される電流は、第1の電極層3がアノード層であり且つ第2の電極層4がカソード層であるとの一般的な考えを失うことがないとして、バッテリ14によって示される。最後に、第2の電極層4の上には、反射防止層8が適用されている。反射防止層8は、単層又は多層システムのいずれであってもよい。
【0034】
OLED1は、上面2a及び底面2bの両面による光の放射に適したデュアルOLED1として実施される。放射される光は、少なくとも2つの光る領域、すなわち、明光(bright lucent)領域6及び暗光(dark lucent)領域7に分けることができる。本実施形態に従って、明光領域6及び暗光領域7は交互に配置される。その他実施形態に従って、明光領域6及び暗光領域7の配置は、互いに対してどんなフォーメーションを有してもよく、該配置はこの交互実施形態に限られない。明光領域6は、光Bの明放射(bright emission)を特徴とし、暗光領域7は、光Dの暗放射(dark emission)を特徴とする。OLED1に係る実施形態は、上面2aの少なくとも1つの層がOLED1の外縁延長部における透明度と反射率との間の変化する関係を有することを特徴とする。透明度及び反射率の変化する関係は、明光領域6及び暗光領域7をもたらす。
【0035】
以下で、第1の電極層3はアノード層であり且つ第2の電極層4はカソード層であるとの一般的な考えは失われないとする。
【0036】
図1は、カソード層4の厚さが一様でないことによって透明度と反射率との間の関係を変化させる第1実施形態を示す。カソード層4は、厚さが薄い部分9と、厚さが厚い部分10とを有する。厚みが一様でないカソード層4は反射防止層8に続くが、反射防止層8の厚さはOLED1全体にわたって一様である。厚い部分10においてカソード層4の厚さが増大することにより、例えば、カソード層4の反射率は所与の波長又はスペクトル全体に関して増大し、透明度は低下する。このように、基板材料2の底面2bを介して放射される光の量は、所与の波長又はスペクトル全体に関して増大し、OLED1の上側を介して放射される光の量は減少する。
【0037】
カソード層4の薄い部分9では、例えば、反射率は所与の波長又はスペクトル全体に関して低下し、透明度は増大する。従って、カソード層4の厚い部分10と比較して、上面2aから放射される光の量は増大し、底面2bから放射される光の量は減少する。このように、明光領域6は暗光領域7から分離される。しかし、上面2a及び底面2bの夫々を介して放射される全体的な光の量は、OLED1にわたる如何なる離散的な領域において略一定となる。
【0038】
図2は、厚さが一様でないカソード層4を有するOLED1の第2実施形態を示す。従って、カソード層4は、厚さが薄い部分9と、厚さが厚い部分10とに分けられる。薄い部分9によって形成される凹部には充填材11が配置されている。充填材11を適用することによって、薄い部分9ではカソード層4内の反射率の変化が起こり、充填材11と組み合わせて、例えば、厚い部分10と比較して、反射率は所与の波長又はスペクトル全体に関して増大し、透明度は低下する。このように、充填材11を適用された領域では、光の放射は、上側を介して放射される光における所与の波長又はスペクトル全体に関して暗光領域7を生じさせる。他方で、底面2bを介して放射される光は、充填材11が適用される場合に、所与の波長又はスペクトル全体に関して明光領域6を生じさせる。
【0039】
図3は、明光領域6及び暗光領域7を発生させる第3実施形態を示す。この実施形態に従って、カソード層4は、先と同じく、厚さが薄い部分9と、厚さが厚い部分10とを備える。例えば、反射率を増大又は低下させる効果を強めるために、厚い部分10上には追加材料12が適用される。これは、明光領域6及び暗光領域7の生成をもたらす。一方、例えば、暗放射Dは、追加の適用材料12の領域において上側を介して引き起こされる。追加材料12の領域の間には、上面2aを介する明放射Bが示されている。明放射B及び暗放射Dは、底面2bを介する光の放射においては反転されている。すなわち、上面2aに対して明放射を示す領域は、底面2bに対して暗放射を示し、上面2aに対して暗放射を示す領域は、底面2bに対して明放射を示す。
【0040】
図4は、明光領域6及び暗光領域7を発生させる第4実施形態を示す。この実施形態に従って、カソード層4は、OLED1全体にわたって一様な厚さを備えている。例えば、上側を介して放射される光において暗光領域7を生成するために、追加材料12がカソード層4上に適用される。透明度と反射率との間の変化する関係は、追加材料12の存在によりもたらされる。このように、例えば、上側から放射される光の暗光領域7は、追加の適用材料12がカソード層4上に堆積されている領域に限られ、一方、上側を介して放射される光の明光領域6は、追加材料12がカソード層4上に堆積されていない領域に限られる。
【0041】
図5は、放射面内で明光領域6及び暗光領域7を発生させる第5実施形態を示す。透明度と反射率との間の変化する関係は、反射防止層8内の厚さが一様でないことによって引き起こされる。より厚い反射防止層8は、例えば、より低い反射率をもたらすことができる。このように、層システム5内で生成され、反射防止層8へ向かって上方向に向けられた光は、より薄い反射防止層8の領域におけるよりも反射されない。
【0042】
図6は、明光領域6及び暗光領域7を発生させる第6実施形態を示す。この実施形態に従って、追加材料12がカソード層4の内部に局所的に挿入されている。これは、例えば、追加の適用材料12の領域において反射率の増大及び透明度の低下をもたらすとともに、明光領域6及び暗光領域7の発生をもたらす。一方、例えば、暗放射Dは、追加の適用材料12の領域において上側を介して引き起こされる。
【0043】
図7は、明光領域6及び暗光領域7を発生させる第7の実施形態を示す。この実施形態に従って、追加材料12が反射防止層8の内部に局所的に挿入されている。これは、例えば、追加の適用材料12の領域において反射率の増大及び透明度の低下をもたらすとともに、明光領域6及び暗光領域7の発生をもたらす。一方、例えば、暗放射Dは、追加の適用材料12の領域において上側を介して引き起こされる。
【0044】
図8は、透明度と反射率との間の関係において透明度が高い領域と反射率が低い領域との間の連続的な遷移を特徴とするOLED1の実施形態を示す。連続的な遷移は、明光領域及び暗光領域の変化する強さのパターン13によって行われる。パターン13は、円15として示される複数の単一領域を介して実施され、該単一領域の夫々は、例えば、カソード層の厚さが厚いことによる、又は反射防止層の厚さを増大若しくは低減することによる暗光領域7を有する。更に、円15は、充填材又は追加の適用材料によって実施されてよい。特定の領域内にますます多くの円15が配置されると、上側の方向における光の放射はより低く又はより高くなる。
【0045】
図9a及び9bはOLED1の実施形態を示す。図9aには、OLED1が上面2aから示されており、図9bには、OLED1が底面2bから示されている。単なる一例として、OLED1の外側延長部内には複数のグラフィックスが配置されている。明光領域6及び暗光領域7の分布は、光の明放射B及び暗放射Dをもたらす。図9aから図9bへOLED1を反転することによって、明光領域及び暗光領域は反転する。図9aに示されるOLED1の外側延長部内の符号は明放射光Bに現れ、一方、図9bでは、符号は暗放射Dに現れる。
【0046】
本発明は、上記実施形態によって限定されない。これらの実施形態は、単なる例として表されており、添付の特許請求の範囲で定義される技術的範囲内にある様々な方法で変形されてよい。従って、本発明は、また、OLED層システムの具体的な設計において、異なる実施形態にも適用可能である。基板材料2上には、異なった色の光を放射することができる複数のOLED層システムが配置されてよい。透明度と反射率との間の関係は、層システム5の放射波長に依存しうる。従って、放射される光は、上面2aと底面2bとの間で異なった色において現れることができる。更に、暗光領域“D”は、光が下側及び/又は上側を介して放射されない領域であってもよい。また、上記方法の幾つかを用いて1つのOLEDをパターン化することも可能である。すなわち、例えば、パターン1はカソードを薄くすることによってOLED上の領域A1において生成され、パターン2は、例えば、反射防止コーティングの厚さを変化させること等によって、領域A2において生成される。
【0047】
更に、反射防止層は、OLED上に直接に堆積されなくてよく、その電極により有機発光システムから一定距離にあるスタンドアローン層であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 有機発光ダイオード(OLED)
2 基板材料
2a 上面
2b 底面
3 第1の電極層
4 第2の電極層
5 有機発光層システム
6 明光領域
7 暗光領域
8 反射防止層
9 薄い領域
10 厚い領域
11 充填材
12 追加の適用材料
13 パターン
14 バッテリ
15 円
B 明放射
D 暗放射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明有機発光ダイオード(OLED)であって、
上面及び底面を有し、少なくとも前記上面上には少なくとも1つのOLED層システムが配置される基板材料を有し、
前記OLED層システムは、第1の電極層、第2の電極層、及び前記第1の電極層と前記第2の電極層との間に配置される有機発光層システムを有し、
当該有機発光ダイオードは、前記上面を介して及び前記底面を介して光を放射するよう行われ、
当該有機発光ダイオードの前記上面及び前記底面は、少なくとも1つの明光領域及び少なくとも1つの暗光領域を表し、
前記上面上の少なくとも1つの層は、当該有機発光ダイオードが前記上面及び前記底面において少なくとも1つの明光領域及び少なくとも1つの暗光領域を表すように、当該有機発光ダイオードの外側延長部において透明度と反射率との間の変化する関係を特徴とし、
前記明光領域は、前記暗光領域に対向して配置される、
ことを特徴とする透明有機発光ダイオード。
【請求項2】
前記OLED層システムの上には、少なくとも1つの反射防止層が配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項3】
前記第2の電極層は、有機発光層システムに対する反射率対透明度の比を変化させるよう当該有機発光ダイオードの外側延長部にわたる変化する厚さを特徴とする、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項4】
前記反射防止層は、隣接する有機発光層システムに対する反射率対透明度の比を変化させるよう当該有機発光ダイオードの外側延長部にわたる変化する厚さを特徴とする、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項5】
前記第2の電極層内、又は前記第2の電極層と前記反射防止層との間に、追加の適用材料が配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項6】
前記反射防止層の上又は中に、追加の適用材料が配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項7】
前記反射防止層は、該反射防止層と同じ又は異なった厚さの1又はそれ以上の追加の適用材料によって局所的に置換される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項8】
前記第2の電極層は、該第2の電極層と同じ又は異なった厚さの1又はそれ以上の追加の適用材料によって局所的に置換される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項9】
前記第2の電極層は、厚さが薄い領域と、厚さが厚い領域とを特徴とし、前記厚さが薄い領域は、充填材で満たされる、
ことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項10】
厚い厚さを特徴とする前記第2の電極層の領域上には、追加の適用材料が配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項11】
前記上面を介して放射され且つ前記底面を介して放射される光の強さの量は、当該有機発光ダイオードにわたる如何なる離散的な領域においても略一定である、
ことを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項12】
当該有機発光ダイオードの外側延長部における前記第2の電極層及び/又は前記反射防止層の透明度と反射率との間の関係は、離散的な領域において定義され、あるいは、前記関係は、少なくとも1つの連続的な遷移を特徴とする、
ことを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項13】
前記連続的な遷移は、暗光領域及び明光領域の変化する密度のパターンによって実行される、
ことを特徴とする請求項8に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項14】
当該有機発光ダイオードの外側延長部における明光領域及び暗光領域の分布は、離散的な符号及び/又は文字のような装飾的なグラフィックス又は情報グラフィックスをもたらす、
ことを特徴とする請求項1乃至13のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項15】
当該有機発光ダイオードの外側延長部における透明度と反射率との間の変化する関係は、当該有機発光ダイオードの各面で異なった波長スペクトルを生じさせるために、前記有機発光層システムによって放射される波長に依存して実行される、
ことを特徴とする請求項1乃至14のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。
【請求項16】
当該有機発光ダイオードの前記上面上に配置される前記OLED層システムは、損傷及び/又は水分に対して前記OLED層システムを保護するための透明カバー要素及び/又は透明カバー層を適用される、
ことを特徴とする請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の透明有機発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2012−513084(P2012−513084A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541680(P2011−541680)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055703
【国際公開番号】WO2010/070563
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】