説明

透明発光部品

【課題】より優れた照明用光源を提供する。
【解決手段】発光有機層が上側および下側電極間に配置された層配置を備え、該層配置が、スイッチオフ状態では透明であり、スイッチオン状態で、上側および下側電極間に電圧を印加することにより、発光有機層中で発生する光を放射し、該光は、少なくとも約4:1の比で、上側または下側電極を通して放射され、該層配置中に、可視スペクトル領域で透明な誘電体層の積重構造が上側または下側電極の側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、透明発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【発明の背景】
【0002】
有機発光ダイオードは、近年、非常に急速な発展を遂げている。有機発光ダイオードは、1987年に初めて蒸着有機材料(Tang et al., Appl. Phys. Lett. 51 (12), 913(1978)参照)に関して開発されたが、液体溶液から沈殿した重合体材料(J.H. Burroughes et al., Nature 347, 6293 (1990)参照)に関しては、有機発光ダイオードの効率および寿命持続期間に関する優れたパラメータは、近年すでに達成されている。特に、80ルーメン/Wを超える効率を、緑色発光ダイオード(He et al., Appl. Phys. Lett. 85, 3911 (2004)参照)に関して得ることに成功している。赤色および青色有機発光ダイオードに関しても、同等の良好な値がすでに得られている。
【0003】
これらの系の寿命も非常に急速に伸び、これまでに、ある種の材料系に関して10,000時間の値も大幅に超えているので、有機発光ダイオードは照明機構における用途にも重要になっている。有機発光ダイオードの実質的な優位性は、今日でも白熱電球の効率を超えており、将来は蛍光管の効率にも達するであろう高い効率が可能であることに加えて、まぶしい光がほとんど無い、多くの用途に理想的に適した光を発生することができる大表面照明ユニットを実現できる可能性である。
【0004】
有機発光ダイオードの従来の構造的配置は、ほとんどの場合ガラスである透明な基材を含んでなり、これは酸化インジウムスズ(ITO)から形成されることが多い透明な陽極で被覆されている。この上に、活性有機層を堆積させ、続いて、およびさらに、電気的接触用の金属陰極を堆積させる。ある程度の電圧が金属陰極と透明陽極との間に印加されると、この発光ダイオードは基材を通して光を放射する。
【0005】
少なくとも部分的に透明である発光ダイオードの構築を可能にする技術的概念もある。この目的には、例えば、陰極にも透明な導電性金属または薄く、部分的に透明な金属層を施すことができる(Gu et al., Appl. Phys. Lett. 68, 2606 (1996)、Parthasaray et al., Appl. Phys. Lett. 76, 2128 (2000)参照)。これまで提案されている配置では、発光ダイオードの光を両方向に放射し、両方向に放射される光量の正確な比は、層配置の構造的配置によって異なる。これは、ある種の用途、例えば両側から読み取るディスプレイ、に使用できる。
【0006】
しかし、透明な発光ダイオードが光を両側に放射すると、不利になる場合が多い。他方、透明であり、同時に一方向に非常に優先的に放射する有機発光ダイオードを実現できれば、非常に好ましいであろう。文献から公知の最初の概念に関して、両方向における光強度は、ほぼ等しい(Gu et al., Appl. Phys. Lett. 68, 2606 (1996)、Parthasaray et al., Appl. Phys. Lett. 76, 2128 (2000)参照)。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、照明目的により優れ、より適している透明発光部品を開発することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載する透明発光部品により達成される。本発明の有利な実施態様は従属請求項の主題である。
【0009】
本発明により、透明発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)を提供するが、該層発光部品は、発光有機層が上側および下側電極間に配置された配置を備え、、該層配置が、スイッチオフ状態では透明であり、スイッチオン状態で、上側および下側電極間に電圧を印加することにより、発光有機層中で発生する光を放射し、該光は、少なくとも約4:1の比で、上側または下側電極を通して放射され、該層配置中に、可視スペクトル領域で透明な誘電体層の積重構造が上側または下側電極の側に配置されている。
【0010】
本発明により、一方で、発光部品のスイッチオフ状態では、可視スペクトル領域で高度の光学的透明性を達成できる。他方、該部品は、スイッチオン状態では、一方向で優先的に約4:1の比を達成するか、または超える、白色または着色光も放射することができる。提案する部品に関して、好ましくは有機発光ダイオードが関与する発光層配置の一体化は、誘電体層の積重構造により行う。この配置により、発光有機層で発生した光の波長が、優先的に一方向に放射される。
【0011】
一実施態様では、誘電体層の積重構造は、発光有機層で発生する光の放射スペクトルと少なくとも部分的に重なる一つの限られたスペクトル領域で、高い反射率(>90%)があり、幾つかの層では>99%の反射率が得られるように配置する。このようにして、それ自体層の連続として形成できる発光有機層で発生する光の大部分が、一方向でのみ、従って、上側または下側電極を通して優先的に放射される。
【0012】
同時に、これらの部品の、可視スペクトル領域全体における透過率は非常に高い。これは、例えば、誘電体層の積重構造を、反射帯域が非常に狭く、発光有機層の放射の実質的な部分だけが反射されるように設計することにより、達成される。このようにして、誘電体層の積重構造の設計は、そのような反射配置のほとんどの平面形態で使用されるλ/4層に加えて、そこを通してスペクトル反射幅が減少する層積重構造の一または両成分に対して、この厚さの倍数も含むことができる(Macleod, Thin Film Optical Filters, 3rd ed., IOP Publishing 2001参照)。可能な最高の透過率を得るには、通常使用される透明接触材料である酸化インジウムスズ(ITO)の層厚さを最適化するが、これは、計算により、例えば層厚λ/4の場合に当てはまる。
【0013】
ここで提案する配置は、有利なことに、この実施態様で、誘電体層の積重構造が一波長のみならず、幾つかの狭い波長部分も優先的に反射する程度に拡張することもできる。これは、様々な厚さを有する個別層を含む幾つかの積重構造を順次分離することにより、あるいは平面層積重構造のより高い反射等級(order)を使用することにより、達成できる。このようにして、例えば白色放射透明有機発光ダイオードを実現することも可能である。
【0014】
別の実施態様では、厚さがλ/4であり、屈折率プロファイルが調整されるか、または頻繁に変化する誘電体層、いわゆるうねり(rugate)フィルターを使用する。好適な設計では、これらの誘電体層には、従来のBraggミラーで、共に目標とする高反射領域の外側で起こる反射帯を抑制する利点がある。そのような誘電体フィルターを使用することにより、所望のスペクトル領域では>99%の効率で、可視スペクトルの他の部分でも非常に高い透明性(>90%)で、反射させることができる。
【0015】
ここで提案する原理は、非常に一般的な規模で使用でき、例えば、層配置の正確な性質と無関係である。例えば、この原理は、溶液から堆積させた層配置、ならびに真空中で蒸着させた層配置の両方に使用できる。さらに、この原理は、一または数個のダイオードからなる積重構造に一体化された有機発光ダイオードにも使用できる。この場合の放射光は、幾つかの有機発光ダイオードにより製造される。
【本発明の好ましい実施態様の説明】
【0016】
添付の図面を参照しながら、具体的な例により、本発明をより詳細に説明する。
【0017】
図1は、発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)用の透明層配置を図式的に示す。基材1上に、誘電体層の積重構造2を配置し、その後に下側透明電極3が続く。上側透明電極層4は、下側電極3に対向して配置される。有機区域5は、下側電極3と上側電極4との間に配置される。有機区域5は、一または数種類の有機材料から形成され、少なくとも一個の発光有機層を含み、その中で、下側電極3と上側電極4との間に電圧を印加した時に光が発生する。発光有機層は、様々な種類の有機発光ダイオードで公知のように、単層として、または一連の層として選択的に形成される。同様に、有機区域5は、他の有機層、例えばドーピングされた、またはドーピングされていない穴または電子輸送層、を含んでなることができる。中間層も考えられる。透明層配置は、環境的な影響を排除するためのカプセル封入6により完了する。
【0018】
透明発光部品用の図1による層配置の有利な実施態様は、下記の層/層配列を含んでなる。
1.キャリヤー、基材、
2.可視スペクトル領域で透明な材料(誘電体)、例えばそれぞれ厚さλ/4を有する5層SiO/TiO、の積重構造、
3.透明電極、例えばITO、穴−注入(陽極)、
4.p−ドーピングされた、穴−注入および輸送層、
5.発光有機層(エミッタ染料で選択的にドーピングされた)、
6.ドーピングされていない、電子−注入および輸送層、
7.透明電極、電子−注入(陰極)、
8.環境的な影響を排除するためのカプセル封入。
【0019】
4〜6の番号が付いた層は、有機区域5を形成する(図1参照)。
【0020】
2または3波長領域で放射する透明有機発光ダイオードを実現するには、それぞれ個別の単層厚さλ/4を有する誘電体層の幾つかの積重構造を互いに積み重ねて配置することができる。このようにして、それぞれの場合にスペクトル帯が反射され、重なって、放射される光の所望のスペクトルを与える。
【0021】
さらに所望により、より高い等級の、誘電体層の周期的積重構造を使用することができる。λ/4配置により、これらのより高い等級は、それぞれの場合に、次に最も低い等級の半波長にある。この理由から、幾つかの帯域を重ね合わせることは、このようにしては、可視スペクトル領域ではほとんど達成できない。しかし、複数のλ/4厚さを、重ね合わせるべき最も長い波長に使用すれば、可視光中の幾つかのスペクトル領域を、このようにして、一様な層厚を有する誘電体層の積重構造から重ね合わせることができる。
【0022】
好ましい実施態様の例は、図2に示す透過スペクトルを示し、下記の構造的配置を有する。
1.キャリヤー、基材、ガラス、
2.可視スペクトル領域で透明な材料(誘電体)から形成された、3個の二重層SiO/TiOがそれぞれ厚さ13λ/4を有する誘電体層の積重構造(分布型Braggレフレクタ、DBR)、
3.透明電極、例えばITO、穴−注入(陽極)、厚さ146nm(図2における、太い、連続的な、および点線)または73nm(図2における細い、連続的な線)、
4.p−ドーピングされた、穴−注入および輸送層、
5.発光有機層(エミッタ染料で選択的にドーピングされた)、
6.ドーピングされていない、電子−注入および輸送層、
7.透明電極、電子−注入(陰極)、
8.環境的な影響を排除するためのカプセル封入。
【0023】
やはり、4〜6の番号が付いた層は、有機区域5を形成する(図1参照)。
【0024】
図2は、そのような配置の透過スペクトルを示すが、そこでは、光学的モデルにおけるカプセル封入は考慮していない。有機層3〜5の総厚は78nm(太い、連続線)または155nm(破線および細い連続線)とし、層6および7は、屈折率1.38のλ/4層としてモデル化した。ここでの結果は、この配置が、それぞれの場合に、約630nm、540nmおよび480nmで高い反射を示す。このようにして、そのような配置で、全透過率がなお60%より大きくても、強い非対称性放射を達成することができる。
【0025】
別の好ましい実施態様の例は、下記の構造的配置を有する。
1.キャリヤー、基材、ガラス、
2.可視スペクトル領域で透明な材料(誘電体)から形成された、部分的に、1.45(例えばSiO)〜1.6(例えばAl)の間の調整された屈折率を有する誘電体層の積重構造、
3.透明電極、例えばITO、穴−注入(陽極)、厚さ77nm、
4.p−ドーピングされた、穴−注入および輸送層、
5.発光有機層(エミッタ染料で選択的にドーピングされた)、
6.ドーピングされていない、電子−注入および輸送層、
7.透明電極、電子−注入(陰極)、
8.環境的な影響を排除するためのカプセル封入。
【0026】
図3aは、別の実施態様例の、カプセル封入は考慮していない透過挙動を示す。誘電体層の積重構造は、部分的に、湾曲形状の調整された屈折率を有する54層を含んでなり、最大反射波長550nm用に構築されている。
【0027】
図3bは、誘電体層の積重構造における様々な屈折率分布示し、様々な屈折率の一つが積重構造中の各誘電体層に配分されている。誘電体層の積重構造上に厚さ77nmのITO層がある。有機層の総厚は162nmであり、第七層(透明電極)の厚さは100nmである。この構造により、約550nmの高い反射が総透過率>80%で可能である。
【0028】
誘電体層の積重構造の少なくとも一つの部分的な積重構造中で屈折率が連続的に増加/減少する隣接層の配列を考えることもできる。この増加/減少は、特に、部分的な積重構造の個別層の層厚を変化させることにより、達成することができる。ここで障害となる停止帯域(stop band)の変動する補助極大をこのようにして抑制することができる。
【0029】
本説明、請求項および図面に開示する本発明の特徴は、本発明を様々な実施態様で具体化する上で、個別に、ならびに任意の組合せで使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】発光部品の透明層配置を図式的に示す図である。
【図2】図1に示す層配置の実施態様に対する透過スペクトルである。
【図3a】図1に示す層配置の他の実施態様における、屈折率を調整した透過スペクトルおよび屈折率分布である。
【図3b】図1に示す層配置の他の実施態様における、屈折率を調整した透過スペクトルおよび屈折率分布である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光有機層が上側および下側電極間に配置された層配置を備え、前記層配置が、スイッチオフ状態では透明であり、スイッチオン状態で、前記上側および下側電極間に電圧を印加することにより、前記発光有機層中で発生する光を放射し、前記光が、少なくとも約4:1の比で、前記上側または下側電極を通して放射される透明発光部品、特に有機発光ダイオード(OLED)であって、可視スペクトル領域で透明な、異なった屈折率を有する2種類以上の材料の誘電体層の積重構造が、前記上側または下側電極の側に配置されている、透明発光部品。
【請求項2】
前記発光有機層で発生する前記光の放射スペクトル、および前記誘電体層の積重構造のスペクトル反射領域が少なくとも部分的に重なるように形成され、前記誘電体層の積重構造が高い反射率(>90%)を有する、請求項1に記載の透明発光部品。
【請求項3】
前記誘電体層が、それぞれの場合に、層厚(n×λ/4)を有し、n=1、2、...であり、λが放射される光の波長である、請求項1または2に記載の透明発光部品。
【請求項4】
前記誘電体層の積重構造が前記上側または下側電極に直接付けられる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項5】
前記発光有機層が、複数の層を備えた層系列として形成される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項6】
前記層配置が、白色光を放射するように形成され、前記白色光が、前記発光有機層中で発生する前記光の複数のスペクトル成分から構成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項7】
一様な層厚を有する前記積重構造で複数の反射帯域を使用できるように、前記発光有機層中で発生する前記光の異なったスペクトル成分のための前記積重構造による反射に、異なった等級の誘電体層の積重構造を使用する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項8】
前記発光有機層が有機発光ダイオード中に形成され、別の発光有機層を含む少なくとも一つの別の有機発光ダイオードが形成され、前記有機発光ダイオードおよび前記少なくとも一つの別の有機発光ダイオードが一方が他方の上になるように重ね合わされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項9】
前記誘電体層の積重構造の前記誘電体層の少なくとも一部が、それぞれの場合に異なった屈折率を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項10】
前記誘電体層の積重構造中の前記誘電体層の少なくとも一部に対して、調整された屈折率分布が形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の透明発光部品。
【請求項11】
前記調整された屈折率分布が、実質的に変動する様式で形成される、請求項10に記載の透明発光部品。
【請求項12】
前記誘電体層の積重構造中の前記誘電体層の少なくとも一部に対して、連続的に増加/減少する屈折率の系列が形成される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の透明発光部品。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公開番号】特開2006−332064(P2006−332064A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−148615(P2006−148615)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(504432747)ノバレット、アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】NOVALED AG
【Fターム(参考)】