説明

透明粘着剤、透明粘着層、粘着型光学部材および画像表示装置

【課題】
屈折率の調整が容易であり、分散処理を行わなくとも、複合ゾルが様々な分散媒に安定に分散され、光学用透明基材との界面の光の全反射やハレーションも少なく、粘着特性(粘着力、保持力等)及び耐熱性等の耐久性を満足することができ、しかも光透過性に悪影響を及ぼす虞のない透明粘着剤と透明粘着層、透明粘着剤と透明粘着層の製造方法、粘着型光学部材および画像表示装置を提供する。
【解決手段】
本発明の透明粘着剤は、少なくとも2種の異なる無機酸化物を複合したものである複合ゾルを光学部材用透明粘着剤中へ分散してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明粘着剤と透明粘着層、及び透明粘着剤と透明粘着層の製造方法に関する。さらに詳しくは、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の画像表示装置や光ディスク、タッチパネルに用いられる偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、保護フィルム等、光学部材の粘着剤層を作製する際に用いて好適な透明粘着剤、この透明粘着剤により得られる透明粘着層、この透明粘着剤と透明粘着層の製造方法、およびその使用方法、粘着型光学部材、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の画像表示部と各種の光学部材、各種の光源、拡散板、保護フィルム等と光ディスク、タッチパネル等を貼り合わせる際に用いられる粘着剤としては、透明性及び耐候性が良好なことからアクリル系共重合体をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が使用されている。
このアクリル系粘着剤の屈折率は、一般に用いられているベースポリマーとしてのアクリル系共重合体の屈折率が1.47程度であるから、これとほぼ同程度であり、一方、このアクリル系粘着剤を塗布する側の光学部材の屈折率は、例えば、ガラス基板では1.52〜1.55程度、ポリカーボネート板では1.59程度であるから、アクリル系粘着剤と光学部材との屈折率には大きな差がある。
このため、光学部材用の粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いる場合には、このアクリル系粘着剤と、ガラス基板やポリカーボネート板等の光学部材との界面にて屈折率差が生じ、この光学部材の表面に浅い角度で光が入射した場合、その光が全反射してしまい、光の有効利用が妨げられるという問題点があった。
【0003】
このような問題点を解決するために、従来品と比べて屈折率の高いアクリル系粘着剤を作製する試みが各種提案されている。この屈折率の高いアクリル系粘着剤は、概ね2種類に分けられ、その1種は、アクリル系粘着剤のベースポリマーとして、高屈折率モノマーを共重合して屈折率を高くしたアクリル系共重合体を用いたものであり(特許文献1〜3)、他の1種は、通常の屈折率の低いアクリル系共重合体に屈折率調整剤を添加することにより、アクリル系粘着剤自体の屈折率を上げたものである(特許文献4〜6)。
【0004】
また、粘着剤に屈折率が2.0以上であり、分散平均粒子径が1nm以上20nm以下の金属酸化物微粒子を分散させることにより光学部材用透明粘着剤の屈折率を上げる方法が示されている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−535921号公報
【特許文献2】特開2002−173656号公報
【特許文献3】特開2006−188630号公報
【特許文献4】特開2003−342546号公報
【特許文献5】特開2006−342258号公報
【特許文献6】特開2007−23225号公報
【特許文献7】特開2009−120726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の分子屈折の大きな置換基を導入することによって屈折率を高くしたアクリル系共重合体には次に示す問題点があった。
【0007】
芳香環を有するモノマーを共重合したアクリル系共重合体の場合、屈折率を調整するのは、その芳香環の共重合比率であるから、屈折率を高くするために共重合比率を大きくしていくと粘着特性が大きく低下するという二律背反の関係がある。したがって、芳香環を有するモノマーの共重合比率によって高屈折率と粘着特性とを両立させるにはおのずと限界があるという問題点があった。
臭素や塩素といったフッ素を除くハロゲンで置換したモノマーを用いることもできるが、環境対策面等から近年活発になってきた電気電子用途を中心としたノンハロゲン化の動きとも相まって、ハロゲン置換モノマーを用いることは好ましくない。硫黄を含むモノマーを用いることもできるが、耐光性が悪く、光劣化によって着色しやすい。
【0008】
また、アクリル系共重合体の屈折率を調整するためには、共重合体自体の共重合比率を変化させる必要があり、屈折率の調整が容易ではなく、また、煩雑でもあった。 さらに、アクリル系共重合体が芳香族環を有する場合、短波長側に光の吸収があり、光の有効利用及び光劣化の点で問題があり、特に、屈折率を高める目的で芳香族環の含有量を増やすと、この問題はより顕著なものとなる。
【0009】
一方、従来の粘着剤とジルコニアやチタニアといった金属酸化物粒子を含有した光部材では、透明性を維持するために用いる金属酸化物微粒子の粒子径を可視光の波長より充分に小さくする必要があり、数十nm以下のナノレベルに分散する必要があった。しかしながら、ナノレベルの微粒子分散系においては、その体積に比べその表面積が極めて大きいため、熱力学的に不安定であることから、時間とともに自由エネルギーの低い凝集状態へ向かいやすく、分散安定性に欠ける。これは粒子径が小さくなるにしたがって強まるので、ナノレベルの微粒子に対する分散媒の選択余地は非常に限られ、極性溶媒である水やメタノール等のアルコール溶媒が使われることがほとんどであった。また、金属酸化物微粒子と粘着剤との屈折率差が大きいためヘイズが高くなりやすいという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、屈折率の調整が容易であり、ナノマイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ビーズミル等の分散処理を行わなくとも、複合ゾルが様々な分散媒に安定に分散され、光学用の透明基材との界面の光の全反射やハレーションも少なく、粘着特性(粘着力、保持力等)及び耐熱性等の耐久性を満足することができ、しかも光透過性に悪影響を及ぼす虞のない透明粘着剤及び光学用透明粘着層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、光学部材用透明粘着剤における屈折率の調整、透明基材との界面の光の全反射やハレーションの低減を目的として鋭意検討を重ねた結果、光学部材用透明粘着剤中に、少なくとも2種の異なる無機酸化物を含む複合ゾルを分散させれば、屈折率の調整が容易であり、分散処理を行わなくとも複合ゾルが様々な分散媒に安定に分散され、透明基材との界面の光の全反射やハレーションも少なく光透過性が低下する虞のないことを見出した。また、粘着特性(粘着力、保持力等)及び耐熱性等の耐久性を満足することのできる粘着剤との混合比率を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の透明粘着剤は、複合ゾルが分散されている透明粘着剤であって、当該複合ゾルは少なくとも2種の無機酸化物を複合したものであることを特徴とする。
【0013】
本発明の透明粘着剤は、前記複合ゾルが酸化ジルコニウムおよび酸化スズからなることが好ましい。
【0014】
本発明の透明粘着剤は、前記複合ゾルが水熱合成法により作製されるものであることが好ましい。
【0015】
本発明の透明粘着剤は、アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0016】
本発明の透明粘着層は、本発明の透明粘着剤を層状に積層したことを特徴とする。
【0017】
本発明の粘着型光学部材は、光学部材の少なくとも片側に、本発明の透明粘着層が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の画像表示装置は、本発明の粘着型光学部材を少なくとも1つ用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の透明粘着剤によれば、少なくとも2種の異なる無機酸化物を複合したことを特徴とする複合ゾルを、透明粘着剤中に容易に分散することが可能であり、また複合ゾルと透明粘着剤との混合比率を変えるだけで容易に屈折率を調整することができる。
複合ゾルの混合比率を上げることにより粘着剤自体の屈折率を容易に高めることができるので、透明粘着剤に芳香族環を有するモノマーが含まれていた場合においても芳香族環の含有量を低減させることができ、したがって、芳香族環による光劣化を低減することができ、さらには、透明基材との界面における光の全反射やハレーションを減少させることができ、光透過性が低下する虞もない。
さらに、分散媒である透明粘着剤自体の特性は変化しないので、粘着特性(粘着力、保持力等)及び耐熱等の耐久性も低下することがない。
【0020】
本発明の透明粘着剤の製造方法によれば、複合ゾルを水、有機溶媒、有機樹脂モノマーの群から選択された1種または2種以上を含む分散媒中に分散させた透明分散液を、透明粘着剤と混合するだけで、屈折率の調整が容易であり、透明基材との界面における光の全反射やハレーションが少ない、光透過性が低下しない等の特徴を有し、しかも、粘着特性(粘着力、保持力等)及び耐熱性等の耐久性の低下もない透明粘着剤を容易かつ安価に作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤、光学用透明粘着層、屈折率調整光学部材用透明粘着剤と光学用透明粘着層の製造方法、粘着型光学部材と画像表示装置の製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0022】
本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤は、少なくとも2種の異なる無機酸化物を複合したことを特徴とする複合ゾルを分散させた透明粘着剤である。
【0023】
1.複合ゾル
複合ゾルは、少なくとも2種の異なる無機酸化物を複合させてなる粒子であり、無機酸化物は金属酸化物あるいは非金属酸化物である。好ましくは酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化セリウム、二酸化珪素等のいずれか2種以上を複合させたものであり、酸化ジルコニウムおよび酸化スズを複合させたものがより好ましい。この酸化ジルコニウムおよび酸化スズからなる複合ゾルの屈折率は1.9程度であり、酸化ジルコニウムと酸化スズからなる複合ゾルにシリカを被覆した場合の屈折率も1.9程度である。
【0024】
1−1.複合ゾルの屈折率
複合ゾルは、様々な分散媒への分散が非常に容易であり、また粒子全体の屈折率が1.9程度と比較的高いことから、粘着剤中の複合ゾルの含有量を最小限とすると共に、所望の屈折率の範囲、すなわち複合ゾルを含有する前の粘着剤自体の屈折率と、含有した後の粘着剤の屈折率との変化量を0.001〜0.2の範囲にて調整することができる。特に、光学部材に用いられる透明基材の屈折率は、例えば、ガラス基板では1.52〜1.55程度、ポリカーボネート板では1.59程度であるから、粘着剤の屈折率が1.4〜1.5程度の場合では、複合ゾルの屈折率が高い方が低含有量で屈折率調整が可能である。複合ゾルの混合比率は、複合ゾルと透明粘着剤との合計量に対して5質量%以上かつ75質量%以下であることが好ましい。前記下限値以上であれば、透明粘着剤の屈折率を上昇させることができ、前記上限値以下であれば、透過率は低下せず、ひび割れの発生等により粘着層の特性が阻害されることもない。
【0025】
1−2.複合ゾルの製造方法
複合ゾルは例えばWO2006/019004の(0077)に記載の通り、公知の水熱合成法によって作製できる。複合ゾルに含まれる無機酸化物は、酸化ジルコニウムおよび酸化スズが好ましい。複合ゾルの電子顕微鏡による平均粒子径は1nm以上かつ30nm以下が好ましく、2nm以上かつ20nm以下がより好ましい。前記下限値以上であれば複合ゾルの結晶が安定して得られ、所望の屈折率が得られる。また前記上限値以下であれば、複合ゾルを粘着剤中に分散させたときにも透明性が得られ、粘着剤層における光の透過率は低下せず、粘着剤層及びそれを備えた光学部材の透明性を確保することができる。
【0026】
この複合ゾルを分散媒中、および粘着剤中へより安定的に分散させるために、複合ゾルの表面を表面修飾剤により処理することもできる。表面修飾剤としては、界面活性剤、シランカップリング剤やアルコキシシラン等のシラン化合物、変性シリコーン(オイル)やシリコーンレジン等のシロキサン化合物、シラザン化合物の群から選択された1種または2種以上が好適に用いられる。
【0027】
界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性イオン界面活性剤等のイオン性界面活性剤、あるいは非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。
陰イオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸エステルスルフォン酸ナトリウム等の脂肪酸系、アルキルリン酸エステルナトリウム等のリン酸系、アルファオレインスルフォン酸ナトリウム等のオレフィン系、アルキル硫酸ナトリウム等のアルコール系、アルキルベンゼン系等が挙げられる。
陽イオン系界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0028】
両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸系、フォスフォベタイン等のリン酸エステル系が挙げられる。
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸系、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0029】
シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0030】
また、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−(4−ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、4−ビニルフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等も挙げられる。
【0031】
変性シリコーン(オイル)としては、アルコキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メタクリレート変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等が挙げられる。
シリコーンレジンとしては、ジメチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン等が挙げられる。
【0032】
シラザン化合物としては、例えば、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ビス(メチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、ジエチルアミノトリメチルシラン、メチルトリス(ジメチルアミノ)シラン、アニリノトリメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジアニリノジフェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン等が挙げられる。
【0033】
複合ゾルを上記の表面修飾剤により処理する方法としては、湿式法と乾式法が挙げられる。
湿式法とは、ホモジナイザーやビーズミル等を用いて、表面修飾剤と複合ゾルを溶媒中にて混合することにより、複合ゾルの表面を修飾する方法である。
乾式法とは、表面修飾剤と乾燥した複合ゾルをヘンシェルミキサー等の乾式混合機に投入し混合することにより、複合ゾルの表面を修飾する方法である。
いずれの方法においても、必要に応じて加熱しながら反応させることにより、より効率よく複合ゾルを表面修飾することができる。
【0034】
2.透明粘着剤
光学部材用の透明粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等の樹脂を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合あるいは共重合して用いてもよい。
特に、アクリル系樹脂は、耐水性、耐熱性、耐光性等の信頼性に優れ、接着力、透明性が良く、さらに、屈折率を光学部材の透明基材、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の表示側のパネル(透明基板)に適合するように調整し易いことからも好ましい。
【0035】
このアクリル系樹脂としては、アクリル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステル、アクリルアミド、アクリロニトリル等のアクリルモノマーを単独で重合した重合体、もしくは、これらの共重合体、さらには、上記のアクリルモノマーの少なくとも1種と、酢酸ビニル、無水マレイン酸、スチレン等の芳香族ビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0036】
上記の重合体もしくは共重合体としては、特に粘着性を発現するエチレンアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等の主モノマーと、凝集力成分となる酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、メタクリレート、メチルアクリレート等の従モノマーと、接着力の向上あるいは架橋化起点を付与するメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸等の官能基含有モノマーとからなる重合体が好ましい。
この重合体としては、Tg(ガラス転移点)が−60℃〜−15℃の範囲にあり、重量平均分子量が200,000〜1,000,000の範囲にあるものが好ましい。
【0037】
このアクリル系樹脂に、ヒートショックによる基材と粘着剤層との間の浮き、剥れ等を防止する目的で、変性されたシリコーンオリゴマー、例えば、アルコキシ変性シリコーンオリゴマー、アクリル変性シリコーンオリゴマー、エポキシ変性シリコーンオリゴマー、ビニル変性シリコーンオリゴマー、メルカプト変性シリコーンオリゴマー、カルボキシ変性シリコーンオリゴマー等を含有してもよい。
【0038】
この透明粘着剤の屈折率を調整、あるいはベースとなる樹脂の屈折率を高くする目的で、耐光性を損なわない範囲で分子構造中に芳香族環を有する有機化合物、好ましくはモノマー単位としてのスチレンを含有する有機化合物を含有してもよい。
このような有機化合物としては、例えば、クマロン樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられ、粘着性付与機能を有するものでも良い。特に、樹脂自体の色目の関係から、黄変していない樹脂としてスチレン系樹脂が好ましい。
【0039】
この透明粘着剤は、粘度や機械的特性等を調整するためにベースとなる樹脂とは異なる樹脂、あるいは無機酸化物等のフィラー材を含有させる場合がある。このフィラー材の屈折率は、ベースとなる樹脂の屈折率より低い場合があり、このようなフィラー材を含有させた透明粘着剤の屈折率はベースとなる樹脂に対して低下する。そこで、フィラー材を含有する透明粘着剤の屈折率を元に戻すために、上記の屈折率が低下した透明粘着剤に複合ゾルを分散させることにより、ベースとなる樹脂と同等もしくはそれ以上にまで戻すことも可能である。
【0040】
3.屈折率調整光学部材用透明粘着剤の製造方法
次に、本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤の製造方法について説明する。
まず、上記の複合ゾルを分散媒中に分散させた透明分散液を作製する。
【0041】
3−1.透明分散液
少なくとも2種の異なる無機酸化物を複合したことを特徴とする複合ゾルを水、有機溶媒、有機樹脂モノマーの群から選択された1種または2種以上を含む分散媒中に分散させる。この透明分散液は、複合ゾルの含有量を5質量%としたときの濁度は、500NTU以下、好ましくは200NTU以下である。前記上限値以下であれば、分散液の透明性を十分に確保できる。
【0042】
上記の分散媒は、上記の透明粘着剤と相溶性を有することが必要であり、このような分散媒としては、水、有機溶媒、液状の有機樹脂モノマー、液状の有機樹脂オリゴマーの群から選択された1種または2種以上を含む溶媒が好適である。
【0043】
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、シクロヘキサン等の環状炭化水素類、ヘキサン等の非環状炭化水素類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
上記の液状の有機樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。また、上記の液状の有機樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
【0045】
3−2.複合ゾルと透明粘着剤との、混合比率の調整
複合ゾルと透明粘着剤との混合比率を変えることにより、得られた屈折率調整光学部材用透明粘着剤の屈折率を調整することができる。
本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤の屈折率は、1.45〜1.70の範囲が好ましく、より好ましくは1.5〜1.65の範囲である。
そこで、この屈折率調整光学部材用透明粘着剤の屈折率を上記の範囲とするためには、屈折率制御の点からは、複合ゾルの混合比率を、複合ゾルと透明粘着剤との合計量に対して5質量%以上かつ75質量%以下とすればよい。前記下限値以上であれば、屈折率の制御が容易であり、前記上限値以下であれば、粘着剤自体の特性が劣化せず、過大な硬度や脆化が発生しない。
【0046】
本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤は、粘着力が10N/25mm以上、40N/25mm以下の範囲になるように、透明分散液中の複合ゾルと透明粘着剤との混合比率を調整することが好ましい。前記下限値以上であれば、高温高湿時に剥離が生じるといった耐久性に影響なく、前記上限値以下であれば、被着体へ糊が残らずに再剥離可能である。
【0047】
本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤は、上記以外に、その特性を損なわない範囲において、他の無機酸化物粒子、樹脂モノマー等を含有していてもよい。この複合ゾル以外の無機酸化物粒子としては、酸化スズ、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化セリウム等、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0048】
また、上記以外に、さらなる高屈折率を得るために高屈折率有機材料を含有していてもよい。高屈折率有機材料としては、トリアジン系ポリマーやデンドリマー等が挙げられる。
【0049】
3−3.透明分散液と透明粘着剤の混合・撹拌
本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤は、まず、上記の透明分散液と透明粘着剤を混合・撹拌する。この混合・撹拌方法としては、次の(1)または(2)のいずれかの方法がある。
【0050】
(1)透明分散液中の分散媒の量が多い場合
透明分散液と透明粘着剤とを混合した後の液粘度が低いので、簡単な混合操作で容易かつ均一に混合・撹拌することが可能である。簡単な混合操作の例としては、透明分散液と透明粘着剤を入れた容器を手振り程度で振るい撹拌する等がある。
(2)透明分散液中の分散媒の量が少ない場合
透明分散液と透明粘着剤とを混合した後の液粘度が高いので、ラボプラストミル、三本ロール等の混練器を用いることにより、容易かつ均一に混合・撹拌することが可能である。
【0051】
なお、透明分散液中の分散媒の量が多いと、混合・撹拌は容易であるが、後の工程で分散媒を除去あるいは重合させる際に、手間と時間を要する。一方、透明分散液中の分散媒の量が少ないと、後の工程で分散媒を除去あるいは重合させる際の手間と時間は少ないが、混合・撹拌は難しい。したがって、混合・撹拌と、分散媒の除去あるいは重合とのバランスを考慮した上で、混合・撹拌方法を選択する必要がある。
【0052】
必要に応じて、透明分散液と透明粘着剤に加えて硬化剤を混合・撹拌する。硬化剤としては、例えば、金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系の架橋剤が必要に応じて用いられ、これらは、1種あるいは2種以上混合して用いられる。
【0053】
これにより、複合ゾルと透明粘着剤とが均一に分散されることとなり、複合ゾル同士の凝集等も無く、良好な分散状態を長期に亘って保持することが可能である。また、均一に分散していることから、光透過特性のみならず均一性にも優れたものとなり、よって、本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤を用いて粘着層を形成すれば、光透過特性及び膜の均一性に優れたものとなる。
【0054】
3−4.分散媒の除去または重合
次いで、次に挙げる(1)、(2)のいずれかの方法を行い、本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤を得る。
(1)上記の分散媒が水および/または有機溶媒の場合
透明分散液と透明粘着剤との混合物に、粘着剤としての特性を劣化させない範囲で、加熱乾燥、真空常温乾燥、減圧常温乾燥等の処理を行い、水および/または有機溶媒を蒸発させて除去する。この場合、分散媒の急激な除去は、粘着剤中に気泡が生じ、光透過率の低下を招くので、避けなければならない。
【0055】
(2)上記の分散媒が有機樹脂モノマーの場合
透明分散液と透明粘着剤との混合物に、触媒添加、加熱硬化処理、紫外線等の電磁波照射処理を行い、有機樹脂モノマーを重合させる。
この場合、有機樹脂モノマーと透明粘着剤とは、同一の方法で重合させることが好ましく、例えば、有機樹脂モノマーと透明粘着剤とを類似物質からなる樹脂組成物により作製することが好ましい。有機樹脂モノマーと透明粘着剤の重合方法が異なると、双方を同時に重合することが難しくなり、相分離により粘着剤や粘着剤層の不均一が生じる可能性が高くなる。
【0056】
ここでは、水および/または有機溶媒の除去、有機樹脂モノマーの重合のいずれかの工程を単独で行ってもよく、双方の工程を組み合わせてもよい。
これらの工程では、目的とする粘着剤が塗布に適した粘度と光学特性を有するように、工程の諸条件を調整する。これにより、塗布に適した粘度と光学特性を有する屈折率調整光学部材用透明粘着剤が得られる。
【0057】
4.光学用透明粘着層の作製方法
本発明の光学用透明粘着層は、透明基材の片面もしくは両面に、または離型材上に、本発明の屈折率調整光学部材用透明粘着剤を塗布し、乾燥または硬化させることにより、作製することができる。
透明基材としては、可視光線あるいは近赤外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する基材であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂を用いた透明樹脂フィルムが挙げられる。
【0058】
透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンナフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム等が挙げられる。
これらのうち、透明性、耐候性、耐溶剤性、剛度、コストの観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。
【0059】
透明基材は、導電性を有するものであってもよい。具体的には、透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に導電層が設けられたものが挙げられる。
導電層としては、導電性高分子を含有する層、導電性金属酸化物からなる層、金属からなる層、導電性高分子粒子およびバインダ樹脂を含有する層、導電性金属酸化物粒子およびバインダ樹脂を含有する層、金属粒子およびバインダ樹脂を含有する層、金属メッシュおよびバインダ樹脂を含有する層が挙げられる。
【0060】
可撓性や製造コストの観点からは、導電層は導電性高分子を含有する層であることが好ましく、導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリピロール(PPy)、ポリアセチレン、ポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリアニリン(PANI)、ポリアセン等が挙げられる。なかでもポリチオフェンが好ましく、ポリチオフェンのなかでも、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が好ましい。また、PEDOTは導電性を発現させるためにポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープしたものが好ましい。
【0061】
一方、離型材としては、一般に粘着剤の離型材として用いられているものを、そのまま用いることができる。
【0062】
塗布方法としては、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等の塗工機や塗工用具を用いた塗工法が挙げられる。
乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線照射による加熱乾燥、減圧による乾燥等が挙げられる。乾燥条件としては、屈折率調整光学部材用透明粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した分散媒等にもよるが、室温(25℃)〜180℃程度でよい。
【0063】
本発明の光学用透明粘着層では、粘着層として適した硬度(柔軟性)と粘着性を有するように、塗布、乾燥または硬化の諸条件を調整する。
なお、屈折率調整光学部材用透明粘着剤の製造工程で、塗布に適した粘度等の諸条件が制御されていれば、この工程では、粘着層の硬度(柔軟性)と粘着性を確認する程度でもよい。
【0064】
5.屈折率調整光学部材用透明粘着剤付き光学部材
さらに本発明は、光学部材に光学用透明粘着層を形成した粘着型光学部材およびそれを用いた画像表示装置を提供する。
【0065】
本発明の粘着型光学部材は、例えば、剥離シートの剥離層上に、前述した方法に従って透明粘着層を設け、この上に光学部材を貼合したのちに該剥離シートを除去する、もしくは光学部材上に前述した方法に従って直接透明粘着層を設けることにより、作製することができる。
光学部材としては、例えば偏光板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、輝度向上フィルム、画像表示パネルなどを挙げることができるが、これらの中で偏光板及び位相差板が好ましく用いられる。また、本発明の光学用透明粘着層の厚さは、通常5〜1000μm程度、好ましくは10〜500μmである。
【0066】
本発明の光学用透明粘着層は、例えば偏光フィルム単独からなる偏光板に適用して、該偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに用いることができる。また、例えば偏光フィルムと視野角拡大フィルムとが一体化してなる偏光板に適用し、この偏光板を、例えば液晶ガラスセルに接着させるのに、好ましく用いることができる。
本発明の光学用透明粘着層を用いて、前記のようにして液晶ガラスセルに偏光板を接着させることにより作製した液晶表示装置は、光漏れが生じにくく光透過性に優れている上、偏光板と液晶ガラスセルとの接着耐久性に優れている。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0068】
「実施例1」
(複合ゾル分散液)
WO2006/019004の(0077)に記載の方法に従い、酸化ジルコニウムと酸化スズを複合させた複合ゾルを作製し、得られた複合ゾルの分散媒を溶媒置換によりメタノールへ変更し、なおかつ固形分を30重量%へと濃縮して複合ゾルAを作製した。また、酸化ジルコニウムと酸化スズに加え、さらに二酸化珪素を複合させた複合ゾルを作製し、得られた複合ゾルの分散媒を溶媒置換によりメチルエチルケトンへ変更し、なおかつ固形分を30重量%へと濃縮して複合ゾルBを作製した。また、酸化ジルコニウムと酸化スズに加え、さらに二酸化珪素を複合させた複合ゾルをシランカップリング剤で処理し、粒子表面の官能基を変更した後、得られた複合ゾルの分散媒を溶媒置換によりメチルエチルケトンへ変更し、なおかつ固形分を30重量%へと濃縮して複合ゾルCを作製した。
【0069】
(透明粘着剤及び透明粘着層の作製)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、溶媒である酢酸エチル105質量部を添加した。次いで、反応装置内に、単量体成分としてのブチルアクリレート55重量部、2−エチルヘキシルアクリレート45重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート5.0重量部、開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」と表記する。」)0.3重量部とをモノマー濃度が凡そ40質量%となるように酢酸エチル中に添加した。その後、攪拌しながら窒素ガス気流中、50℃で8時間攪拌した後、氷水浴にて急冷することにより重合反応を停止させて、屈折率1.47、重量平均分子量Mw50万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
得られたアクリル酸エステル共重合体の固形分100重量部に対してキシリレンジイソシアネート系3官能性アダクト体硬化剤0.1重量部及び複合ゾルAを100重量部混合攪拌し、メチルエチルケトンにて濃度が26.5重量%の溶液となるように稀釈して複合ゾルを含む透明粘着剤を作製した。
次いで、帝人デュポンフィルム製の離型処理されたPETフィルムを用意し、この離型PETフィルム上へヨシミツ精機株式会社製ドクターブレードYD型を用いて乾燥後の厚みが50μmとなるように塗工した。その後、熱風乾燥機にて100℃で2分間乾燥させて溶媒を除去し、複合ゾルを含む透明粘着層を作製した。
【0070】
「実施例2」
実施例1において、複合ゾルAの代わりに複合ゾルBを100重量部混合攪拌した以外は、実施例1と同様にして複合ゾルを含む透明粘着層を作製した。
【0071】
「実施例3」
実施例1において、複合ゾルAの代わりに複合ゾルBを50重量部混合攪拌した以外は、実施例1と同様にして複合ゾルを含む透明粘着層を作製した。
【0072】
「実施例4」
実施例1において、複合ゾルAの代わりに複合ゾルCを100重量部混合攪拌した以外は、実施例1と同様にして複合ゾルを含む透明粘着層を作製した。
【0073】
「比較例1」
実施例1において、複合ゾルAを一切添加しなかった以外は、実施例1と同様にして透明粘着層を作製した。
【0074】
「比較例2」
(酸化ジルコニウム分散液)
酸化ジルコニウム微粒子分散液としてハリマ化成株式会社製のDZHR−20を用意した。この酸化ジルコニウム微粒子は電子顕微鏡による粒子径が40nmであった。
【0075】
(透明粘着剤及び透明粘着層の作製)
実施例1において複合ゾルAを100重量部の換わりに、酸化ジルコニウム微粒子分散液DZHR−20を25重量部混合攪拌した以外は、実施例1と同様にして微粒子を含む透明粘着層を作製した。
【0076】
「比較例3」
(酸化チタン分散液)
酸化チタン微粒子分散液としてハリマ化成株式会社製のUVH−D−Tiを用意した。この酸化チタン微粒子は電子顕微鏡による粒子径が67nmであった。
【0077】
(透明粘着剤及び透明粘着層の作製)
実施例1において複合ゾルAを100重量部の換わりに、酸化チタン微粒子分散液UVH−D−Tiを25重量部混合攪拌した以外は、実施例1と同様にして微粒子を含む透明粘着層を作製した。
【0078】
「評価」
実施例1〜4及び比較例1の透明分散液、透明粘着剤及び透明粘着層、比較例2及び3の分散液、粘着剤及び粘着層について、複合ゾルまたは金属酸化物粒子の屈折率、分散液の分散平均粒子径、分散液の濁度、粘着層の屈折率、透明基材の屈折率、粘着層の透過率、耐光劣化の各評価項目について、次の方法を用いて評価した。
【0079】
(1)複合ゾルまたは金属酸化物粒子の屈折率測定
(金属酸化物フィラーの屈折率測定)
多入射角エリプソメーター(J.A.Woollam社製)にて測定した。複合ゾルの屈折率は、いずれも1.9であった。
(2)電子顕微鏡による粒子径測定
走査型電子顕微鏡(堀場製作所製)にて測定した。複合ゾルA,B,Cの粒子径は、いずれも10nm〜20nmの範囲内であり、平均粒子径はいずれも15nmであった。
(3)濁度の測定
分散液に、この分散液の分散媒と同一組成の分散媒を添加することにより、分散液中の複合ゾルまたは金属酸化物粒子の含有量を5質量%に調整し、この調整済みの分散液の濁度を濁度計(ハック社製2100AN)により測定した。濁度はネフェロ分析濁度ユニット(Nephelometric Turbidity Units:NTU)で計測される液体中の非溶解微粒子の密度であり、500NTU以下であれば透明もしくは半透明といえる。
以上の結果を表1に記載した。
【0080】
(4)粘着層の屈折率
溶媒を乾燥させた後、アッベ式屈折率計(株式会社アタゴ製DR−A1)にて測定した。
(5)粘着層の透過率
透明基材上に塗工し乾燥して得られた粘着層の全光線透過率を、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製NDH−5000)を用いて、JIS K7361−1に従って測定した。
(6)粘着層の粘着力
ガラス板に対する粘着力を測定した。
離型PETフィルム上へ塗工したサンプルに対しては、まず東洋紡績製の厚みが100μmである光学PETフィルムへ貼り付けた。上記によって得た粘着層付き光学PETフィルムを25mm×100mmにサンプリングし、清浄なガラス板表面へ貼り付け、2kgの圧着ローラーで2往復圧着させて24時間経過後、JIS−Z−0237に規定する180度引きはがし法(ピール法)により、引張速度300mm/分で引きはがしたときの粘着力(B)をテンシロン引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ)にて測定した。
(7)再剥離性
ガラス板に対する再剥離性を測定した。
離型PETフィルム上へ塗工したサンプルに対しては、まず東洋紡績製の厚みが100μmである光学PETフィルムへ貼り付けた。上記によって得た粘着層付き光学PETフィルムを25mm×100mmにサンプリングし、清浄なガラス板表面へ貼り付け、2kgの圧着ローラーで2往復圧着させて24時間静置した。その後、手剥がしにより、ガラスから試験シートを剥がし、目視でガラス上の糊残りの有無を確認し、評価した。
(8)耐熱性
粘着層の耐熱性を評価するため、80℃環境下、24時間における保持力を評価した。
離型PETフィルム上へ塗工したサンプルに対しては、まず東洋紡績製の厚みが100μmである光学PETフィルムへ貼り付けた。上記によって得た粘着層付き光学PETフィルムを25mm×150mmにサンプリングし、清浄なSUS板表面へ貼り付け、JIS−Z−0237:2000に規定する保持力試験を行った。
以上の結果を表2に記載した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
表1によれば、実施例1〜4では、透明分散液の濁度が200NTU以下であり透明分散液として優れたものであった。
また表2によれば、透明粘着層は実施例1〜4では、屈折率を自由に調整でき、粘着層の全光線透過率がいずれも90%以上と高く、さらに粘着力は比較例1と比べていずれも低下することなく、ガラスに対する十分な粘着力を保持していた。また、再剥離性においても、いずれも優れた性能であった。
さらに80℃環境下における保持力においても優れたものであった。
一方、比較例1の粘着層は、屈折率の向上が見られなかった。比較例2では、粘着剤へ分散しようとしたところ凝集したため、得られた粘着層の全光線透過率は60.9%と非常に低い値であった。また、80℃環境下における保持力において非常に劣っていた。
比較例3では、粒子は粘着剤へ分散できたが、分散液の濁度が1239NTUと高く、得られた光学用透明粘着層の全光線透過率も90%に満たなかった。再剥離性では、比較例2と3ともに、ガラス上に糊残りが存在した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の透明粘着剤は、少なくとも2種の異なる無機酸化物を複合したものである複合ゾルを光学部材用透明粘着剤中へ分散したことにより、複合ゾルと光学部材用透明粘着剤との混合比率を変えるだけで容易に屈折率を調整することができ、特別な分散処理を行わなくとも、複合ゾルが様々な分散媒に安定に分散される。
さらには、光劣化の低減、透明基材との界面における光の全反射やハレーションの減少、光透過性の保持を図ることができるものであるから、粘着剤の屈折率の調整が必要な分野、例えば、液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)等の画像表示装置やタッチパネル、光ディスクに用いられる偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散フィルム、保護フィルム等の粘着剤層等はもちろんのこと、これ以外の様々な工業分野においても、大きな効果がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ゾルを含む透明粘着剤であって、当該複合ゾルは少なくとも2種の無機酸化物を複合したものであることを特徴とする透明粘着剤。
【請求項2】
複合ゾルが酸化ジルコニウムおよび酸化スズを複合したものであることを特徴とする、請求項1に記載の透明粘着剤。
【請求項3】
複合ゾルは水熱合成法により作製されるものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明粘着剤。
【請求項4】
透明粘着剤が、アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明粘着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の透明粘着剤を層状に積層したことを特徴とする透明粘着層。
【請求項6】
光学部材の少なくとも片側に、請求項5に記載の透明粘着層が形成されていることを特徴とする粘着型光学部材。
【請求項7】
請求項6に記載の粘着型光学部材を少なくとも1つ用いたことを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2012−246455(P2012−246455A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121535(P2011−121535)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000122298)王子ホールディングス株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】