説明

透明部材

【課題】背面側に存在する物体の背景色に関わらず、文字や図形等を含む符号を見えやすくすることによって、符号を明確に認識させることが可能な透明部材を提供する。
【解決手段】透明部材10は、透明な材料から形成された計量用容器20と、文字、線、図形、または記号を含む符号31から形成され計量用容器に配置される表現部30と、を有しており、計量用容器の内部に存在する計量対象物51の背景色によって、異なる色が付された第1と第2の線分要素41、42のうちの一方の線分要素によって表される符号31を、他方の線分要素によって表される符号31に比べて見えやすくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明部材に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な材料に文字や記号等からなる符号が付され、背面に存在する物体の背景色を利用して符号を際立たせて視認させる透明な部材が知られている。このような透明な部材は、定規等の文房具に幅広く適用されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透明な部材に付された符号の見えやすさは、透明な部材の背面に存在する物体の背景色によって大きく左右される。これは、透明な部材を介して物体の背景色を視認し、符号を構成する線分の色と物体の背景色との色合いの差異によって符号の全体的な形態を認識するためである。したがって、符号を構成する線分の色と物体の背景色とが近い色合いにある場合には、符号が見えにくくなり、透明な部材に付された符号を認識することが困難になる。
【0005】
本発明は、背面側に存在する物体の背景色に関わらず、文字や図形等を含む符号を見えやすくすることによって、符号を明確に認識させることが可能な透明部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の透明部材は、透明な材料から形成されたベース部と、文字、線、図形、または記号を含む符号から形成され前記ベース部に配置される表現部と、を有する。さらに、前記表現部における符号の線分は、一の色が付された第1の線分要素と、前記一の色とは異なる他の色が付され前記第1の線分要素に並べて配置される第2の線分要素とを少なくとも含む。そして、前記ベース部の背面側に存在する物体の背景色によって、前記第1と第2の線分要素のうちの一方の線分要素によって表される符号が、他方の線分要素によって表される符号に比べて見えやすくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透明部材によれば、一の色を備えた第1の線分要素と、一の色とは異なる他の色が付され第1の線分要素に並べて配置される第2の線分要素とを含む符号を透明なベース部に配置し、ベース部の背面側に存在する物体の背景色によって、第1と第2の線分要素のうちの一方の線分要素によって表される符号を、他方の線分要素によって表される符号に比べて見えやすくする。このため、背面側に存在する物体の背景色に関わらず、符号を明確に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1(A)、(B)はそれぞれ、実施形態に係る透明部材を示す図であり、図1(A)は、透明部材の全体図、図1(B)は、図1(A)の部分拡大図である。
【図2】図2(A)、(B)はそれぞれ、実施形態に係る透明部材の作用を説明するための図であり、図2(A)は、透明部材の全体図、図2(B)は、図2(A)の部分拡大図である。
【図3】図3(A)、(B)はそれぞれ、改変例1に係る透明部材の全体図である。
【図4】図4(A)、(B)はそれぞれ、改変例3に係る透明部材を示す図であり、図4(A)は、透明部材の全体図、図4(B)は、図4(A)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0010】
本実施形態は、本発明の透明部材を、特定の物体(以下、「計量対象物」とする)の量を計量することが可能な計量用容器に適用している。計量対象物は、例えば、食品調味料等の液体や、粉体、その他体積等を定量的に計量することが可能な固体等が挙げられる。
【0011】
図1、2を参照して、概説すれば、実施形態に係る表現部30を付した透明部材10(以下、単に「透明部材」と記す)は、透明な材料から形成された計量用容器20(ベース部に相当する)と、文字、線、図形、または記号を含む符号31から形成され計量用容器20に配置される表現部30と、を有する。表現部30における符号31の線分40は、一の色が付された第1の線分要素41と、一の色とは異なる他の色が付され第1の線分要素41に並べて配置される第2の線分要素42とを含む。表現部30を形成する符号31は、計量対象物51の体積を測定することを可能にするスケール33、および数字35を表している。計量用容器20に収容した計量対象物51の体積を、目視によって読み取ることが可能となるように、計量用容器20の内壁面に符号31を直接印刷している。なお、第1の線分要素41の色には白を付し、第2の線分要素42の色には黒を付している。
【0012】
図面において、紙面の都合上、ベース部としての計量用容器20が白色で表現されているが、計量用容器20は符号31の裏面側に存在する計量対象物51の背景色を透かして、その背景色を視認させることが可能な透明に形成される。透明とは、無色透明を意味することはもちろんであるが、有色の色味を備える半透明を含むことをも意味する。また、図面において、紙面の都合上、白色が付された第1の線分要素41を表現させることが困難であるため、説明を簡易に行うために、第1の線分要素41の色が付された範囲を破線で示す。この破線は説明の便宜上付加するものに過ぎず、第1の線分要素41が破線を備える実施形態であることを意味するものではない。
【0013】
以下、実施形態について詳述する。
【0014】
図1を参照して、計量用容器20は、アクリル樹脂等を成形することによって側部に取手が設けられた縦長の器状に形成されている。計量用容器20には、例えば、計量カップや、化学用品であるビーカー、注射器など、内部に液体を収容させることが可能な公知の容器が含まれる。
【0015】
符号31としてのスケール33、およびスケール33の読み値を示す数字35は、計量用容器20の長手方向(図中上下方向)に沿って配置されている。符号31は、成形された計量用容器20に第1の線分要素41を白色とし、第2の線分要素42を黒色として印刷によって付している。計量用容器20への印刷は、例えば、スケール33、および数字35に合致する形状の溝を形成し、溝内にインク等を塗布して印刷させる技術等を利用することが可能である。計量用容器20を構成する材料は、透明性を確保し得る限りにおいて適宜変更することが可能である。また、インクの種類や、印刷方法は、公知の技術を適宜採用することが可能である。
【0016】
白色が付された第1の線分要素41は、第2の線分要素42とは別にして、長手方向に整列されたスケール33、および数字35を表す。一方、黒色が付された第2の線分要素42は、第1の線分要素41とは別にして、長手方向に整列されたスケール33、および数字35を表す。計量用容器20を利用して、計量対象物51の体積等を測定する場合には、計量用容器20において符号31が付された部位の背面側(図中において、紙面と直交する方向における符号31の裏面側、計量用容器の内部、およびその背面を含む。)に計量対象物51を位置させて、スケール33が指し示す数字35を目視する。目視した数字35に基づいて体積等の量を読み取る。ベース部20が透明に形成されているため、収容した計量対象物51を視認しながらスケール33、および数字35を読み取ることができる。
【0017】
ここで、計量対象物51の色が、例えば、黒色等の明度が低いものである場合には、第1と第2の線分要素41、42が表す符号31のうち、白色が付された第1の線分要素41が表す符号31の方が、黒色が付された第2の線分要素42が表す符号31に比べて見えやすくなる(図2(B)を参照)。これは、計量用容器20を介して視認される黒色の背景と、黒色が付された第2の線分要素42が表す符号31とが色味が似ているため、両者が重なり合うことによって、第2の線分要素42が表す符号31を視覚的に認識することが困難になるためである。加えて、白色が付された第1の線分要素41が表す符号31の色味と背景色の色味とが異なり、かつ、符号31の方が明度が高いため、白色が付された第1の線分要素41が表す符号31が明瞭に表示されることが要因である。これとは逆に、計量対象物51の色が、例えば、白色等の明度が高いものである場合には、黒色が付された第2の線分要素42が表す符号31の方が、白色が付されたものに比べて見えやすくなる。これは、上記のように、計量用容器20を介して視認される白色の背景と、白色が付された第1の線分要素41が表す符号31とが重なり合うことによって、第1の線分要素41が表す符号31を視覚的に認識することが困難になり、かつ、黒色が付された第2の線分要素42が表す符号31が、背景色との関係によって、明瞭に表示されることになるためである。なお、物体が有する色の明度が低い、高いによって表現される明度の差は、計量対象物51が収容された状態において、第1と第2の線分要素41、42が表す符号31のうちの一方の線分要素によって表される符号が、他方の線分要素によって表される符号よりも見えやすくなる程度の明度の差があることを意味する。
【0018】
第1の線分要素41が表す符号31、および第2の線分要素42が表す符号31は、いずれか一方の符号31を視認した場合に、他方の符号31が示す情報と同様の情報を認識することが可能となるように、互いに近似した形状に形成している。例えば、第1の線分要素41が表す符号31が、背面側に存在する計量対象物51の体積を示すスケール33と、スケール33の読み値を示す数字35という情報を表現する場合には、第2の線分要素42が表す符号31もこれと同様に、同じ読み値を示すスケール33、および数字35を表現することが望ましい。第1の線分要素41が表す符号31と第2の線分要素42が表す符号31とが互いに代替して表現されることになる。このため、背景色の明度や色味に関わらず、いずれか一方の線分要素が視認可能となり、符号31が示す体積等の所定の情報を確実に認識することが可能になる。
【0019】
第1と第2の線分要素41、42のうち明度が高い第1の線分要素41の太さw1は、第2の線分要素42の太さw2よりも細くしている(図1(B)を参照)。
【0020】
例えば、計量対象物51に比較的明度の低い色を有する部分と、比較的明度の高い色を有する部分とが存在し、この両方の部分を跨いで透明部材10を使用する場合、第1と第2の線分要素41、42のうち、明度が高い第1の線分要素41が第2の線分要素42よりも膨張して大きく見えてしまう。計量対象物51において比較的明度の低い部分が背景色となる場合には、第1の線分要素41が第2の線分要素42よりも明瞭に視認されることになるが、第1の線分要素41が膨張して大きく見えることによって、第1の線分要素41が表す符号31も膨張して大きく見えることになる。比較的明度の高い色を有する部分において明瞭に表された第2の線分要素42との大きさのバランスがとれないことによる意匠外観の低下や、符号31を誤って視認させてしまうような虞がある。第1と第2の線分要素41、42のうち明度が高い第1の線分要素41の太さw1を、第2の線分要素42の太さw2よりも細くすることによって、明度がそれぞれ異なる色からなる複数の部分を備える計量対象物51に使用する場合においても、第1の線分要素41によって表される符号31、および第2の線分要素42によって表される符号31を同等の大きさに見せることが可能になる。このため、使用時の意匠外観の低下や、符合31が誤って認識されてしまうことを未然に防止することが可能になる。例えば、第1と第2の線分要素41、42を同等の大きさに見せるような明度を有する中間色の部分、比較的明度の低い色を有する部分、および比較的明度の高い色を有する部分が計量対象物51に混在するような場合があるが、このような場合にも、第1の線分要素41によって表される符号31、および第2の線分要素42によって表される符号31を同等の大きさで見せることができる。
【0021】
実施形態にあっては、第1の線分要素41の幅w1を0.2mmで形成し、第2の線分要素42の幅w2を0.25mmで形成している。このような寸法で形成することによって、膨張して大きく見える第1の線分要素41によって表される符号31と、第2の線分要素42によって表される符号31をバランス良く同等の大きさで視認させることができ、膨張による意匠外観の低下をより効果的に抑制することが可能になる。第1の線分要素41と第2の線分要素42の寸法は、上記の寸法例に限定されるものではなく、第1の線分要素41、および第2の線分要素42が表す符号31の大きさや、符号31を表す位置等に基づいて適宜変更することが可能である。
【0022】
第1の線分要素41が膨張して大きく見えることを考慮し、第1と第2の線分要素41、42のうち、明度が高い第1の線分要素41は、第2の線分要素42よりも内側に位置するように配置している(図1(B)を参照)。これによって、第1の線分要素41の膨張に伴う符号31の並びのばらつきや、整列された符号31のバランスが崩れることを防止している。
【0023】
符号31の線分40における末端45において、第1と第2の線分要素41、42を、互いに隣り合う側の辺47が他方の辺よりも伸びた先鋭端形状に形成している(図1(B)を参照)。
【0024】
線分40の先鋭端形状は、末端45の前方に位置する数字35や、空間を指し示すために形成している。並べられた第1と第2の線分要素41、42によって符号31の各所を指し示すような場合、線分40の末端45に先鋭端形状を形成することによって、指し示す対象を点で捉えることができ、指し示す対象を明確にすることが可能になる。背景色が比較的低い明度を有する場合、黒色の第2の線分要素42が不明瞭に表されることになるが、白色の第1の線分要素41が明瞭に表されるため、この第1の線分要素41の末端45によって指し示す対象を明確にすることが可能になる。同様に、背景色が比較的高い明度を有する場合、白色の第1の線分要素41が不明瞭に表されることになるが、黒色の第2の線分要素42が明瞭に表されるため、この第2の線分要素42の末端45によって指し示す対象を明確にすることが可能になる。符号31にスケール33、およびスケール33が指し示す数字35が含まれる場合において、スケール33の末端45に先鋭端形状を形成させることによって、対象を点で捉える機能をより効果的に発揮させることができる。先鋭端の傾斜角度等は特に限定されるものではなく、使用時の意匠外観等を考慮して適宜変更することが可能である。例えば、図示されるように、第1と第2の線分要素41、42の末端45の長さを揃えて、先端が一点に向かうような形状とすることによって、計量対象物51が中間色を有するような場合にも、デザイン上の意匠外観を損なわせることなく、末端45が指し示す対象を明確にすることができる。
【0025】
次に、実施形態に係る透明部材10の作用について説明する。
【0026】
図2(A)を参照して、計量用容器20内に、計量対象物51を収容させる。図中における斜線は、計量対象物51の明度が低く、第2の線分要素42に色味が近いことを示す。計量用容器20は、内部に収容された計量対象物51の背景色を透かして、計量対象物51の存在を外部から視認させることを可能にする。
【0027】
図2(B)を参照して、計量用容器20の符号31の背面に計量対象物51が存在するため、黒色が付された第2の線分要素42によって表わされる符号31に比べて、白色が付された第1の線分要素41によって表わされる符号31が明瞭に表示されて見えやすくなる。計量用容器20において、計量対象物51が背面に存在しない部位では、第1の線分要素41によって表される符合31、および第2の線分要素42によって表される符合31が同等の明瞭さで視認されることになる。
【0028】
スケール33が指し示す数字35を目視し、目視した数字35に基づいて体積を計量する。スケール33の末端45に形成された先鋭端形状は、スケール33が指し示す対象を点で捉える。これによって、より明確に数字35を把握させることを可能にし、計量する際に誤差が生じることを効果的に防止する。
【0029】
第1と第2の線分要素41、42のうち明度が高い第1の線分要素41の太さを、第2の線分要素42の太さよりも細くしている。このため、計量対象物51に明度の異なる複数の色が混在するような場合においても、第1の線分要素41、および第1の線分要素41によって表される符合31が膨張して視認されることを防止できる。使用時の意匠外観の低下や、符合31が誤って認識されてしまうことを未然に防止することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る透明部材10は、第1の線分要素41と、第1の線分要素41とは異なる他の色が付されて第1の線分要素41に並べて配置される第2の線分要素42とを含む符号31を透明な計量用容器20に配置し、計量用容器20内に収容させた計量対象物51の背景色に応じて、第1と第2の線分要素41、42のうちの一方の線分要素によって表される符号31を、他方の線分要素によって表される符号31に比べて見えやすくする。第1と第2の線分要素41、42のうち、計量用容器20の内部に存在する計量対象物51の背景色と近い色合い、および明度を有する色が付された一方の線分要素に比べて、他方の線分要素を見えやすくする。このため、計量対象物51の背景色に関わらず、第1と第2の線分要素41、42が表す符号31のうち、少なくとも一方の符号を視認させることができ、符号31を明確に認識させることができる。
【0031】
第1と第2の線分要素41、42のうち明度が高い第1の線分要素41の太さを、第2の線分要素42の太さよりも細くしている。第1の線分要素41、および第1の線分要素41によって表される符合31が膨張して視認されることを防止できる。
【0032】
符号31の線分の末端45に先鋭端形状を形成しているため、符号31の末端45が指し示す対象を点で捉えることができる。指し示す対象をより明確に把握させることができる。
【0033】
ベース部を計量用容器20として構成させることによって、容器内に収容した物体の量を定量的に計量することができる。
【0034】
上述した実施形態は、適宜変更することが可能である。
【0035】
計量用容器内に収容させる物体は、特に限定されるものではなく、ベース部を通じて色を認識させることが可能な物体を適宜選択することが可能である。
【0036】
ベース部が物体の体積を計量するための計量用容器を構成する例を挙げたが、例えば、内部に物体を収納することが可能な収納容器を構成する形態とすることが可能である。この場合、スケールや数字を付してもよいし、その他の文字等を適宜付加してもよい。材質や形状、収納容器としての硬度等を問わず広く適用することが可能である。収納容器には、例えば、医療現場において利用される輸液バック等が挙げられる。
【0037】
また、例えば、ベース部が窓ガラスを構成するような形態であってもよい。家屋のガラスや店舗のショーウィンドのガラス、水族館のガラス、地下鉄等の車両のガラス等を適宜選択することができる。窓ガラスに第1と第2の線分要素によって表される符号を配置することによって、窓ガラスの背面側、すなわち符号を視認する者が視野を向ける側の裏面側に存在する様々な物体の背景色に応じて、第1と第2の線分要素が表す符号が認識されることになる。
【0038】
また、例えば、ベース部が、可撓性を有するシート材を構成するような形態であってもよい。折り曲げ可能に形成された下敷きやクリアファイル等の文房具や、貼着可能に形成されたシールとして利用することが可能になる。
【0039】
(改変例1)
図3を参照して、改変例1にあっては、ベース部が、数字35やアルファベットの文字37を表す表示器60を構成する。このような点において、ベース部が計量用容器を構成する上記の実施形態と相違する。以下、改変例1について説明する。なお、上述した実施形態と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0040】
図3(A)を参照して、白色を付した第1の線分要素41、黒色を付した第2の線分要素42によって数字35を表している。ベース部20の背面側に存在する物体の背景色に応じて、第1と第2の線分要素41、42によって表す数字35のうち、一方の線分要素によって表される数字35の方が、他方の線分要素によって表される数字35に比べて見えやすくなる。
【0041】
図3(B)を参照して、白色を付した第1の線分要素41、黒色を付した第2の線分要素42によってアルファベットの文字37を表している。ベース部20の背面側に存在する物体の背景色に応じて、第1と第2の線分要素41、42によって表されるアルファベットの文字37のうち、一方の線分要素によって表されるアルファベットの文字37の方が、他方の線分要素によって表される文字に比べて見えやすくなる。
【0042】
以上のように、透明部材10を、内部に物体が収容可能に構成された容器以外の用途である表示器60に適用した場合にあっても、背面側に存在する物体の背景色に関わらず、透明部材10に配置された符号31を明確に認識させることが可能になる。
【0043】
(改変例2)
符号は、スケールや、1つの文字、複数の文字からなる文章、広告、および模様のうちの少なくとも1つが表されていればよい。実施形態、および改変例1において、第1と第2の線分要素によって文章を表現させることも可能であるし、記号や線を組み合わせて模様等を形成させることも可能である。文字や数字を視認して得られる情報に加えて、図形、模様、線、記号およびこれらの組み合わせによって表される様々な情報を認識させることが可能になる。
【0044】
(改変例3)
図4を参照して、改変例3にあっては、ベース部が、定規の本体部70を構成する。透明部材10は、学校や家庭で使うステーショナリーであるプラスチック製定規に適用される。ベース部が計量用容器、表示器を構成する上記の実施形態、および改変例とはこのような点において相違している。定規には、直線定規、三角形定規、分度器等の種々のものが存在するが、本改変例は特に直線定規に適用した例を示す。以下、改変例3について説明する。なお、上述した実施形態、および改変例と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0045】
図4(A)を参照して、ベース部は、定規の本体部70を構成し、表現部30の符号31によって、スケール33および数字35を表している。また、定規の本体部20は長尺の矩形形状を有し、表現部30の符号31は25センチを1ミリごとに区切ったスケール33、および1センチごとに付された数字35を表している。
【0046】
透明部材10を利用して測定対象物53の所定の位置における寸法を測定する場合、図示されるように、測定対象物53上に定規の本体部70を重ねる。図示例にあっては、明度の高い白色を有する部分55と明度の低い黒色を有する部分57(図中において斜線で示す)とからなる紙片を測定対象物53としている。
【0047】
図4(B)を参照して、測定対象物53において明度の低い黒色を有する部分57においては、黒色が付された第2の線分要素42によって表わされる符号31に比べて、白色が付された第1の線分要素41によって表わされる符号31の方が明瞭に表示されて見えやすくなる。第1の線分要素41によって表わされるスケール33、および数字35を読み取ることによって、明度の低い黒色を有する部分57における寸法を容易に測定することができる。
【0048】
一方、測定対象物53において明度の高い白色を有する部分55においては、白色が付された第1の線分要素41によって表わされる符号31に比べて、黒色が付された第2の線分要素42によって表わされる符号31の方が明瞭に表示されて見えやすくなる。第2の線分要素42によって表わされるスケール33、および数字35を読み取ることによって、明度の高い白色を有する部分55における寸法を容易に測定することができる。
【0049】
以上のように、透明部材10を、測定対象物53の寸法を測定するためのプラスチック定規として利用することによって、測定対象物53の背景色に関わらず、寸法を目視によって容易に測定することができる。また、定規の本体部70に配置したスケール33を1mmごとに区切り、かつ、スケール33が示す1センチごとに目印となる数字35を付しているため、センチメートル単位、およびミリメートル単位での測定を容易に行うことができる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されず適宜変更することが可能である。
【0051】
表現部の配置形態は、適宜変更させることが可能である。ベース部に直接的に印刷して印字する形態以外にも、例えば、ベース部とは別体に形成された表現部を、背景を構成する物体とベース部との間に配置させたり、複数の透明な部材間に配置させたりすることが可能である。また、ベース部の背面側ではなく、ベース部の手前側(紙面の手前側)や、ベース部の内部に埋め込むように配置したり、表現部自体を貼着可能なシールとして構成したりすることも可能である。
【0052】
第1の線分要素41には白色を付し、第2の線分要素42に黒色を付した形態を説明したが、各線分要素に付す色はこれに限定されるものではない。第1の線分要素の色と、第2の線分要素の色とが異なることによって、背面側に存在する物体の背景色に応じて一方の線分要素が他方の線分要素に比べて見えやすくなるものを適宜選択することができる。例えば、ベース部を有色や半透明に形成し、線分要素を透明に形成することによって、一方の線分要素が、他方の線分要素に比べて見えやすくなるような構成とすることも可能である。
【0053】
背景色を構成する物体自体の形状や、色、材質等も実施形態において説明したものに限定されるものではない。濃色、淡色、これらが混合された色味を有する紙片や、ポスター等はもちろんのこと、その他固体や液体など、ベース部を通じて背景色を視認させることが可能な物体を適宜選択することが可能である。
【0054】
符号が含む文字や数字等のフォント、および寸法比率や外観等は実施形態において説明したものに限定されず、意匠外観等を考慮して適宜変更することが可能である。また、符号には、単純な直線や、図形、記号等を含ませることも可能である。
【0055】
符号における線分は、少なくとも色の異なる第1と第2の線分要素が含まれていればよく、第1と第2の線分要素とは異なる色が付された他の線分要素等を加えることも可能である。例えば、異なる色が付された第3の線分要素が表す符号を、第1と第2の線分要素が表す符号に並べて配置したり、離隔させて配置したりする形態とすることも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 透明部材(表現部を付した透明部材)、
20 計量用容器(ベース部)、
30 表現部、
31 符号、
33 スケール、
35 数字、
37 アルファベットの文字、
40 線分、
41 第1の線分要素、
42 第2の線分要素、
45 線分の末端、
47 隣り合う側の辺、
51 計量対象物(背面側に存在する物体)、
53 測定対象物(背面側に存在する物体)、
55 明度が高い部分、
57 明度が低い部分、
60 表示器(ベース部)、
70 定規の本体部(ベース部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な材料から形成されたベース部と、
文字、線、図形、または記号を含む符号から形成され前記ベース部に配置される表現部と、を有し、
前記表現部における符号の線分は、一の色が付された第1の線分要素と、前記一の色とは異なる他の色が付され前記第1の線分要素に並べて配置される第2の線分要素とを少なくとも含み、
前記ベース部の背面側に存在する物体の背景色によって、前記第1と第2の線分要素のうちの一方の線分要素によって表される符号が、他方の線分要素によって表される符号に比べて見えやすくなることを特徴とする、表現部を付した透明部材。
【請求項2】
前記第1と第2の線分要素のうち明度が高い方の線分要素の太さは、他方の線分要素の太さよりも細い、請求項1に記載の表現部を付した透明部材。
【請求項3】
前記符号の線分における末端において、前記第1と第2の線分要素は、互いに隣り合う側の辺が他方の辺よりも伸びた先鋭端形状を有している、請求項1または請求項2に記載の表現部を付した透明部材。
【請求項4】
前記ベース部は、物体の量を計量するための計量用容器、物体を収納するための収納容器、窓ガラス、または可撓性を有するシート材を構成している、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の表現部を付した透明部材。
【請求項5】
前記表現部の前記符号は、スケール、1つの文字、複数の文字からなる文章、広告、および模様のうちの少なくとも1つを表している、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の表現部を付した透明部材。
【請求項6】
前記ベース部は、定規の本体部を構成し、
前記表現部の前記符号は、スケールおよび数字を表している、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の表現部を付した透明部材。
【請求項7】
前記定規の本体部は、長尺の矩形形状を有し、
前記表現部の前記符号は、25センチを1ミリごとに区切ったスケール、および1センチごとに付された数字を表し、
前記第1と第2の線分要素の色は、白と黒とが付されている、請求項6に記載の表現部を付した透明部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−128087(P2011−128087A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288517(P2009−288517)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(509349196)
【Fターム(参考)】