説明

透明電極の製造方法及び有機電子素子

【課題】有機電子素子に用いることができる、導電性、透明性、フレキシブル性、電流の面均一性に優れた透明電極を、電極やフィルム基板を損傷することなく製造する方法、及び透明電極を用いた、寿命に優れた有機電子素子を提供する。
【解決手段】透明フィルム基板11上に、第1導電層14及び第2導電層15からなる導電層を有し、前記第1導電層はパターン状に形成された金属粒子からなり、前記第2導電層は前記第1導電層を被覆し、導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含有する透明電極の製造方法であって、マイクロ波線源、前記透明電極及び放電防止部を、前記導電層と前記放電防止部が非接触となるようにこの順に配置し、前記マイクロ波線源より前記透明電極にマイクロ波を照射することを特徴とする透明電極の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極の製造方法及び該透明電極を用いた有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子や有機太陽電池といった有機電子素子が注目されており、このような素子において、透明電極は必須の構成技術となっている。従来、透明電極は、透明基板上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が、その導電性や透明性といった性能の点から、主に使用されてきた。しかし、真空蒸着法やスパッタリング法を用いた透明電極は生産性が悪いため製造コストが高いことや、可撓性に劣るためフレキシブル性が求められる素子用途には適用できないことが問題であった。さらに、近年、有機電子素子に使用される透明電極には、大面積かつ低抵抗値が要求されており、ITO透明電極の抵抗値では不十分となってきている。
【0003】
そこで、このような大面積かつ低抵抗値が要求される製品にも対応できるよう、パターン状に形成された金属導電層に導電性ポリマー等の導電層を積層し、電流の面均一性と高い導電性を併せ持つ透明電極が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。このような構成において、金属導電層表面の凹凸は、有機電子素子を形成した際、電流リークの要因となるため、導電性ポリマー等の導電層の積層には、表面の平滑化も求められ、厚膜化が必須となる。しかし、導電性ポリマーは着色しているため、厚膜化すると透明電極の透明性が著しく低下し、透明電極の透明性と平滑性とを両立させることは困難であった。
【0004】
また、導電性ポリマー等の透明導電膜を用いる場合、その透明導電膜中に水分が残留していると、有機電子素子の性能を劣化させることが知られており、透明導電膜の乾燥は必須となる。透明電極についてフレキシブル性やコスト面から透明フィルム基板が用いられることが多くなってきている近年において、透明導電膜の加熱、乾燥は、フィルムが変形しない、ガラス転移温度以下の低温で行う必要があるが、このような処理では、透明導電膜中に水分が残留し、透明導電膜の乾燥が課題であった。
【0005】
一方、フィルム基板上に電極を形成し低温で乾燥する方法として、マイクロ波による乾燥加熱が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法を、金属細線を有する透明電極に用いると、金属細線の一部で放電が発生し、導電層やフィルム基板を著しく損傷してしまう。
【0006】
また、フィルム基板上に、酸化チタン等半導体微粒子薄膜を形成し、薄膜を導電体に接触させ、フィルム基板側からマイクロ波を当て、加熱乾燥する電極の作製方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この方法では、導電体を導電層と接触させるため、導電層が湿潤状態では処理することができない。また、接触可能な状態まで乾燥処理された塗膜であっても、乾燥処理において発生する水分や低分子有機化合物の気化物が電極や導電体表面で再析出し汚染するため、導電性ポリマーといった有機物を含有する透明電極への適用は困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−302508号公報
【特許文献2】特開2009−87843号公報
【特許文献3】国際公開第05/94132号
【特許文献4】特開2006−60064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、有機電子素子に用いることができる、導電性、透明性、フレキシブル性、電流の面均一性に優れた透明電極を、電極やフィルム基板を損傷することなく製造する方法を提供することにある。さらに、本発明の透明電極を用いた、寿命に優れた有機電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.透明フィルム基板上に、第1導電層及び第2導電層からなる導電層を有し、前記第1導電層はパターン状に形成された金属粒子からなり、前記第2導電層は前記第1導電層を被覆し、導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含有する透明電極の製造方法であって、マイクロ波線源、前記透明電極及び放電防止部を、前記導電層と前記放電防止部が非接触となるようにこの順に配置し、前記マイクロ波線源より前記透明電極にマイクロ波を照射することを特徴とする透明電極の製造方法。
【0011】
2.前記放電防止部が、前記透明電極の前記透明フィルム基板に対し前記導電層側に配置され、前記放電防止部と前記導電層の距離が0.5〜10cmであることを特徴とする前記1記載の透明電極の製造方法。
【0012】
3.前記放電防止部が、前記透明電極の前記導電層に対し前記透明フィルム基板側に配置され、前記放電防止部と前記透明フィルム基板の距離が0.0〜10cmであることを特徴とする前記1記載の透明電極の製造方法。
【0013】
4.前記水酸基含有非導電性ポリマーが、下記一般式(A)で表されるポリマーであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項記載の透明電極の製造方法。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、X〜Xは水素原子またはメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、nは構成率(mol%)を示し、50≦l+m+n≦100である。)
5.前記1〜4のいずれか1項記載の透明電極の製造方法により得られた透明電極を用いることを特徴とする有機電子素子。
【0016】
6.前記有機電子素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子または有機太陽電池素子であることを特徴とする前記5記載の有機電子素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電極やフィルム基板が損傷することなく、有機電子素子に用いることができる、導電性、透明性、フレキシブル性、電流の面均一性に優れた透明電極を提供することができる。また、本発明の透明電極の製造方法で得られた透明電極は導電層の強度が高く、本発明の透明電極の製造方法は、ロールtoロール等の連続生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の有機電子素子の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の有機電子素子の第1導電層パターン((a)ストライプ状、(b)格子状)の例を示す図である。
【図3】本発明の透明電極の製造方法において、放電防止部とマイクロ波線源と透明電極の配置を示す概念図である。
【図4】本発明の透明電極の製造方法において、放電防止部とマイクロ波線源と透明電極の位置関係((a)導電層側に放電防止部配置、(b)透明フィルム基板側に放電防止部配置)を示す他の概念図である。
【図5】本発明の有機EL素子の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
本発明は、透明フィルム基板上に、第1導電層(金属導電層)及び第2導電層(ポリマー導電層)からなる導電層を有し、前記第1導電層はパターン状に形成された金属粒子からなり、前記第2導電層は前記第1導電層を被覆し、導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含有する透明電極の製造方法であって、マイクロ波線源、前記透明電極及び放電防止部を、前記導電層と前記放電防止部が非接触となるようにこの順に配置し、前記マイクロ波線源より前記透明電極にマイクロ波を照射することを特徴とするマイクロ波線源、透明電極及び放電防止部をこの順に配置し、前記導電層と前記放電防止部が非接触にて、前記マイクロ波線源よりマイクロ波を照射することを特徴とする。
【0021】
マイクロ波線源、透明電極及び放電防止部を、導電層と放電防止部が近接して非接触となるようにこの順に配置することで、放電防止部により、マイクロ波照射時の導電層への電荷の集中を防止し、導電層上での放電を抑制することができ、導電層やフィルム基板を損傷することなく、マイクロ波加熱が可能となる。
【0022】
また、導電層は第2導電層が第1導電層を被覆する積層構造であること、及び、第2導電層が導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含有することから、マイクロ波照射により、水酸基含有非導電性ポリマーの縮合反応を促進、完結させることができ、導電性、透明性、フレキシブル性、電流の面均一性に優れた透明電極を得ることができる。さらに、水酸基含有非導電性ポリマーとして、前記一般式(A)で表されるポリマーを用いることにより、より透明性、導電性に優れた透明電極を得ることができる。さらに、この透明電極を用いることにより、有機電気素子の寿命を向上することができる。
【0023】
放電防止部が、透明電極の透明フィルム基板に対し導電層側に配置され、かつ導電層より0.5〜10cmの距離に配置された状態で、マイクロ波を照射することにより、導電層やフィルム基板に損傷を与えることなく、導電層を効果的に乾燥することができ、さらに水酸基含有非導電性ポリマーの縮合反応を促進、完了させることができる。導電層表面から放電防止部までの距離は1〜5cmがより好ましい。0.5cm以上の距離では、導電層からの気化、蒸発物により、導電層表面及び放電防止部の少なくとも一方の面が汚染され難い。距離=0cm、つまり導電層面と放電防止部が接触している場合、導電層が湿潤状態では処理することができない。また、接触できる程度の乾燥状態であっても、前述の気化物の発生により、導電層表面の平滑性が損なわれる。導電層表面から放電防止部までの距離が10cm以下の場合、放電防止効果があり放電が生じ難く、導電層やフィルム基板が損なわれることがない。
【0024】
また、本発明において、放電防止部が、透明電極の導電層に対しフィルム基板側に配置され、かつフィルム基板面より0.0〜10cmの距離に配置された状態で、マイクロ波を照射することでも、前述と同様の効果を得ることができる。この場合、フィルム基板から放電防止部までの距離は0.0〜5cmがより好ましい。導電層と放電防止部がフィルム基板を介して非接触の状態にあるため、放電防止部はフィルム基板と接触してもよく、10cm以下の場合、前述と同様に放電防止効果があり放電が生じ難く、導電層やフィルム基板が損なわれることがない。
【0025】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様等について詳細に説明をする。
【0026】
《透明フィルム基板》
本発明の透明電極に用いられる透明フィルム基板としては、高い光透明性を有し、フレキシブル性に優れており、誘電損失係数が十分小さくて、マイクロ波の吸収が加熱対象である導電層よりも小さい材質であれば、特に制限はない。例えば、樹脂基板、樹脂フィルム等が好適に挙げられるが、生産性の観点や軽量性と柔軟性といった性能の観点から透明樹脂フィルムを用いることが好ましい。
【0027】
本発明で透明フィルム基板としては、フレキシブルであることから、透明樹脂フィルムとするのが好ましい。透明樹脂フィルムであれば、外力による変形や衝撃に強く、割れにくい。好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム、等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0028】
本発明に用いられる透明フィルム基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0029】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0030】
また、透明フィルム基板の表面または裏面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3ml/m・24h・atm以下、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
【0031】
高バリア性フィルムとするためにフィルム基板の表面または裏面に形成されるバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに該膜の脆弱性を改良するためにこれら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
【0032】
《第1導電層》
本発明の第1導電層(金属導電層)は、フィルム基板上に金属材料をパターン状に形成することを特徴とする。これにより金属材料からなる光不透過の導電部と透光性窓部を併せ持つフィルム基板となり、透明性、導電性に優れた透明電極を作製できる。金属材料は、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属材料の形状は、金属ナノ粒子または金属ナノワイヤであることが好ましく、金属材料は導電性及び安定性の観点から銀であることが好ましい。
【0033】
パターン形状には特に制限はないが、例えば、導電部がストライプ状、あるいはメッシュ状、あるいは、ランダムな網目状であってもよいが、開口率は透明性の観点から80%以上であることが好ましい。開口率とは、光不透過の導電部が全体に占める割合である。例えば、導電部がストライプ状あるいはメッシュ状であるとき、線幅100μm、線間隔1mmのストライプ状パターンの開口率は、およそ90%である。パターンの線幅は、10〜200μmが好ましい。
【0034】
細線の線幅が10μm以上とすることで、所望の導電性が得られ、また200μm以下とすることで透明性が向上する。細線の高さは、0.2〜2.0μmが好ましい。細線の高さを0.2μm以上とすることで所望の導電性が得られ、また2.0μm以下とすることで、有機電子素子の形成において、その凹凸差が電流リークや機能層の膜厚分布不良の要因となるのを防止できる。
【0035】
導電部がストライプ状またはメッシュ状の電極を形成する方法としては、特に制限はなく、従来公知な方法が利用できる。例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1或いは2以上の物理的或いは化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、あるいは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状、あるいはメッシュ状に加工できる。
【0036】
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをグラビア、フレキソ、スクリーン印刷といったパターン様版を用い所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクを印刷し、これにメッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]、及び実施例を参考にして実施できる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
【0037】
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布、乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
【0038】
別な方法としては、例えば、特表2009−505358号公報に記載のような、金属ナノワイヤを含有する塗布液を塗布乾燥することで、金属ナノワイヤのランダムな網目構造を形成させる方法を利用できる。
【0039】
金属ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする繊維状構造体のことをいう。特に、本発明における金属ナノワイヤとは、原子スケールからnmサイズの短径を有する多数の繊維状構造体を意味する。
【0040】
金属ナノワイヤとしては、1つの金属ナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3〜500μmが好ましく、特に3〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はないが、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。金属ナノワイヤの平均短径として10〜300nmが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。併せて、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの目付け量は0.005〜0.5g/mであるのが好ましく、0.01〜0.2g/mであるのがより好ましい。
【0041】
金属ナノワイヤに用いられる金属としては銅、鉄、コバルト、金、銀等を用いることができるが、導電性の観点から銀が好ましい。また、金属は単一で用いてもよいが、導電性と安定性(金属ナノワイヤの硫化や酸化耐性、及びマイグレーション耐性)を両立するために、主成分となる金属と1種類以上の他の金属を任意の割合で含んでもよい。
【0042】
金属ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、金ナノワイヤの製造方法としては特開2006−233252号公報等、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等、コバルトナノワイヤの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した銀ナノワイヤの製造方法は、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、好ましく適用することができる。
【0043】
また、金属導電層の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、大面積化するには20Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0044】
また、金属導電層はフィルム基板ダメージを与えない範囲で加熱処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子や金属ナノワイヤ同士の融着が進み、金属導電層の高導電化するため、特に好ましい。
【0045】
《第2導電層》
〈導電性ポリマー〉
本発明では、第2導電層は導電性ポリマーを含有する。
【0046】
本発明に係る導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0047】
(π共役系導電性高分子)
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンであることが最も好ましい。
【0048】
(π共役系導電性高分子前駆体モノマー)
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0049】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0050】
(ポリ陰イオン)
本発明に用いられるポリ陰イオンは、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0051】
このポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0052】
ポリ陰イオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0053】
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0054】
また、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであっても良い。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
【0055】
ポリ陰イオンがスルホン酸を有する化合物である場合、後述する水酸基含有非導電性ポリマーの縮合による架橋反応を促進するため、好ましい。
【0056】
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリ陰イオンは、水酸基含有非導電性ポリマーとの相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0057】
ポリ陰イオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
【0058】
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0059】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/または重合触媒の存在下で、酸化重合またはラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/または重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0060】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
【0061】
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0062】
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率は、「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」の質量比で1:1〜20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜10の範囲である。
【0063】
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤例えば鉄(III)塩、例えばFeCl、Fe(ClO、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、または過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン及びバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
【0064】
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0065】
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
【0066】
第2ドーパントとして水溶性有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる水溶性有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0067】
第2導電層は、少なくとも導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとからなり、これらを含有する分散液を、第1導電層(金属導電層)上に塗布、乾燥して形成される。なお、ポリマー導電層は、第1導電層を完全に被覆してもよいし、一部を被覆してもよい。
【0068】
第2導電層の塗布は、前述のグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷方法に加えて、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。
【0069】
第2導電層は、水酸基含有非導電性ポリマーを含むことで、導電性ポリマーの導電性が増強され、高い導電性を得ることができる。また、第2導電層は、金属導電層上に積層され、金属導電層を平滑化する機能も有するが、水酸基含有非導電性ポリマーの高い透明性により、導電性ポリマー単独では得られない、高い透明性と導電層表面の高い平滑性を両立できる。
【0070】
このような構造を有する本発明の導電層を形成することで、金属または金属酸化物細線、あるいは導電性ポリマー層単独では得ることのできない高い導電性を電極面内において均一に得ることができると同時に、透明性と平滑性をも満たすことができる。
【0071】
第2導電層の導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとの比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、水酸基含有非導電性ポリマーが30質量部から900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、水酸基含有非導電性ポリマーの導電性増強効果、透明性の観点から、水酸基含有非導電性ポリマーが100質量部以上であることがより好ましい。
【0072】
第2導電層の乾燥膜厚は30〜2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
【0073】
第2導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80〜120℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。本発明において、乾燥終了後、さらにマイクロ波加熱を行う事で、水酸基含有非導電性ポリマーの縮合による架橋反応を促進、完了させることができる。これにより電極の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、有機EL素子においては、駆動電圧の低減、寿命の向上といった効果が得られる。
【0074】
本発明において、酸触媒を用いて水酸基含有非導電性ポリマーの架橋反応を促進、完了させることができる。酸触媒としては、塩酸、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることができる。また導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することができる。また、酸触媒を使用することで、マイクロ波の処理時間の短縮にもつながり、好ましい。
【0075】
本発明の導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含む分散液は、導電層の導電性、透明性、平滑性を同時に満たす範囲において、さらに他の透明な非導電性ポリマーや添加剤や架橋剤を含有してもよい。
【0076】
透明な非導電性ポリマーとしては、天然高分子樹脂または合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子または水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が、水性高分子エマルションとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が、使用することができる。
【0077】
また、合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコン樹脂)を使用することができる。
【0078】
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0079】
水酸基含有非導電性ポリマーの架橋剤としては、例えばオキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、阻止イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤(ホルムアルデヒド等)等を単独あるいは複数併用して用いることができる。
【0080】
さらに、第2導電層には、マイクロ波吸収剤を添加することもできる。これにより、さらに短時間で効率的にマイクロ波処理を行うことができる。マイクロ波吸収剤は、照射する周波数帯のマイクロ波吸収する物質であれば任意であるが、ポリマー導電層を塗布乾燥により形成する際に揮発して導電性高分子層から消失しない程度に高沸点であるものが好ましい。具体的には、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン、3,4−ジブロモスルホラン、ジビニルスルホン、ジプロピルスルホン、ジブチルスルホン、ジブチルスルホキシド、4,4−ジオキソ−1,4−オキサチアン、3,4−ジクロロチオフェン1,1−ジオキシド、エチルメチルスルホン、2−ヒドロキシエチルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、3−メチルスルホラン、メチルスルホニルアセトニトリル、メチル(メチルスルフィニル)メチルスルフィド、メタンスルホニル酢酸メチル、3−スルホレン−3−カルボン酸メチル、等のスルホン化合物、スルホキシド化合物が好ましく用いることができる。特に好ましくはスルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0081】
(水酸基含有非導電性ポリマー)
本発明において、第2導電層に導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーを併用することで、透明性を低下させずにポリマー導電層の膜厚を厚くすることが可能となり、フィルム表面に付着した異物や金属導電層の凹凸を埋め込み、表面を平滑化することでアノード−カソード電極間の短絡を抑制可能となる。
【0082】
本発明に用いられる水酸基含有非導電性ポリマーとは、水、アルコール、ケトン、エーテルといった水系溶媒に溶解、あるいは、分散できるポリマーでれば特に制限はなく、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等をあげることができる。具体的な化合物としては、例えば、ポリエステル系樹脂としてバイロナールMD1200、MD1400、MD1480(以上、東洋紡社製)を挙げることができる。
【0083】
本発明に係る水酸基含有非導電性ポリマーの水酸基はまた、架橋剤と反応し、より強固な膜を形成することができる。本発明に係る水酸基含有非導電性ポリマーの具体的な化合物としては、ポリビニルアルコールPVA−203、PVA−224、PVA−420(以上、クレハ社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−06、60SH−50、60SH−4000、90SH−100(以上、信越化学工業社製)、メチルセルロースSM−100(信越化学工業社製)、酢酸セルロースL−20、L−40、L−70(以上、ダイセル化学工業社製)、カルボキシメチルセルロースCMC−1160(ダイセル化学工業社製)、ヒドロキシエチルセルロースSP−200、SP−600(以上、ダイセル化学工業社製)、アクリル酸アルキル共重合体ジュリマーAT−210、AT−510(以上、東亞合成社製)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート等を挙げることができる。
【0084】
中でも、水酸基含有非導電性ポリマーが、前記一般式(A)で表されるポリマー(以下、ポリマー(A)ともいう)を一定量含む場合、第2ドーパントを利用しなくても、この化合物を利用することで導電性ポリマー含有層の導電性を向上させることが可能で、さらに、導電性ポリマーとの相溶性も良好で高い透明性と平滑性が達成できる。さらに、ポリ陰イオンがスルホ基を有する場合は、ポリマー(A)であれば、スルホ基が効果的に脱水触媒として働き、架橋剤等の追加の剤を利用しなくても、緻密な架橋層を形成できる。
【0085】
(ポリマー(A))
本発明に係るポリマー(A)は、前記一般式(A)で表されるポリマーであり、主たる共重合成分が下記一般式1〜3で表されるモノマー1〜3であり、共重合成分の50mol%以上の成分が下記モノマー1〜3のいずれか、あるいは、下記モノマー1〜3の成分の合計が50mol%以上ある共重合ポリマーである。下記モノマー1〜3の成分の合計が80mol%以上であることがより好ましく、さらに、下記モノマー1〜3いずれか単独のモノマーから形成されたホモポリマーであってもよく、また、好ましい実施形態である。
【0086】
【化2】

【0087】
(式中、X〜Xはそれぞれ独立に、水素原子、またはメチル基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数が5以下のアルキレン基を表す。)
ポリマー(A)においては、他のモノマー成分が共重合されていてもかまわないが、親水性の高いモノマー成分であることがより好ましい。
【0088】
また、ポリマー(A)は数平均分子量において、分子量1000以下の含有量が0〜5質量%以下であることが好ましい。低分子成分が少ないことで、素子の保存性や、導電層に対して垂直方向に電荷をやりとりする際の、層に対して垂直方向に障壁があるような挙動をより低下させることができる。
【0089】
このポリマー(A)の数平均分子量において、分子量1000以下の含有量が0〜5質量%以下とする方法としては、再沈殿法、分取GPCに、リビング重合による単分散のポリマーを合成等により、低分子量成分を除去する、または低分子量成分の生成を抑制する方法を用いることができる。再沈殿法は、ポリマーが溶解可能な溶媒へ溶解し、ポリマーを溶解した溶媒より溶解性の低い溶媒中へ滴下することにより、ポリマーを析出させ、モノマー、触媒、オリゴマー等の低分子量成分を除去する方法である。また、分取GPCは、例えばリサイクル分取GPCLC−9100(日本分析工業社製)、ポリスチレンゲルカラムで、ポリマーを溶解した溶液をカラムに通すことにより分子量で分けることができ、所望の低分子量成分を除去することができる方法である。リビング重合は、開始種の生成が経時で変化せず、また停止反応等の副反応が少なく、分子量の揃ったポリマーが得られる。分子量はモノマーの添加量により調整できるため、例えば分子量を2万のポリマーを合成すれば、低分子量体の生成を抑制することができる。生産適性から、再沈殿法、リビング重合が好ましい。
【0090】
本発明に係るポリマー(A)の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行うことができる。使用する溶媒は、水溶性バインダーが溶解すれば特に制限はなく、THF、DMF、CHClが好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、さらに好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
【0091】
本発明のポリマー(A)の数平均分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、さらに好ましくは5000〜100000の範囲内である。
【0092】
本発明に係るポリマー(A)の分子量分布は1.01〜1.30が好ましく、より好ましくは1.01〜1.25である。分子量分布は(重量平均分子量/数平均分子量)の比で表す。
【0093】
分子量1000以下の含有量はGPCにより得られた分布において、分子量1000以下の面積を積算し、分布全体の面積で割ることで割合を換算した。
【0094】
リビングラジカル重合溶剤は、反応条件化で不活性であり、モノマー、生成するポリマーを溶解できれば特に制限はないが、アルコール系溶媒と水の混合溶媒が好ましい。リビングラジカル重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
【0095】
導電性ポリマーとポリマー(A)の比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、ポリマー(A)が30質量部から900質量部であることが好ましく、ポリマー(A)の導電性アシスト効果、透明性の視点からは、ポリマー(A)が100質量部以上であることがより好ましい。
【0096】
《放電防止部》
本発明は、放電防止部を導電層の被マイクロ波処理部に近接させ、マイクロ波で加熱することを特徴とする。これにより、基板上の導電層への電荷の集中を防止することができ、マイクロ波による導電層上での放電を抑制し、導電層やフィルム基板を損傷することなく、マイクロ波加熱が可能となる。放電防止部としては、導電性を持てば特に制限はなく、導電体または半導体、例えばニッケルやアルミ、鉄、ステンレス等の金属体やシリコン等の半導体を用いればよい。放電防止部はトレイやシート状等のいかなる形状のものを採用してもよい。また、表面形状は導電層の加熱温度を調節できるため、平滑であってもよいし、ポーラスな形状であってもよく、特に限定されないが、フィルム基板側に接触させて用いる場合は、高い平滑性を有することが好ましい。
【0097】
《マイクロ波》
本発明は、マイクロ波を導電層(第1、第2導電層)に照射することを特徴とする。導電層にマイクロ波を照射することで、導電層を形成している分子を振動させることができ、この振動によって隣り合う分子同士が擦れ合って摩擦熱を生じさせ導電層を加熱し、溶媒除去及び水酸基含有非導電性ポリマーの縮合反応を促進、完了することができる。これにより、フィルム基板は低温状態にて、導電層のみの加熱が可能となり、フィルム基板を損傷することなく、導電層の加熱が可能となる。特に、金属導電層やポリマー導電層に水系の溶媒を用いた場合、マイクロ波をよく吸収するため好適に用いることができる。
【0098】
マイクロ波照射は、主に数百MHz〜数百GHz程度の周波数の電圧を印加することが好ましく、例えば、2.45GHzや28GHzの周波数の電圧を好適に用いることができる。また、マイクロ波の出力、マイクロ波照射を施す時間については、フィルム基板の種類や、基板中の水分量、さらには基板の大きさ等に応じて任意に設定することができるが、出力は10〜2000Wであることが好ましく、照射時間は10秒以上20分以下であることが好ましい。これは出力が小さく、照射時間が短いと導電層乾燥が不十分となり、また、出力が大きく、照射時間が長いとフィルム基板にダメージを与えてしまうためである。さらにマイクロ波加熱処理を施すための装置についても、本願の発明は特に限定することはなく、従来公知の装置を用いることができる。
【0099】
《有機電子素子》
本発明の透明電極は各種有機電子素子に用いることができる。有機電子素子とは支持体上にアノード電極と、カソード電極を有し、電極間に少なくとも1層の有機機能層を有する。有機機能層としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層等が挙げられるが、特に限定されない。本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系の素子である有機発光層、有機光電変換層である場合に特に有効で、有機EL素子、太陽電池等の有機電子素子に適用できる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
【0101】
実施例1
〈水酸基含有非導電性ポリマーの合成〉
(開始剤1:メトキシキャップされたオリゴエチレングリコールメタクリレートの合成)
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)及びTHF(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分攪拌後、溶液を室温にし、さらに4時間攪拌した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分駅ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSOにより乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
【0102】
(リビング重合(ATRP法)による水酸基含有非導電性ポリマーの合成)
開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50v/v%メタノール/水混合溶媒5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行った。この操作を3回行った後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で攪拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、数平均分子量<1000の含量0%の水酸基含有非導電性ポリマー ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)を2.60g(収率84%)得た。構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
【0103】
(GPC測定条件)
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414 (Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
〈フィルム基板の作製〉
8cm×6cm×100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績株式会社製)の下引き加工していない面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の(平均)膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用して、硬化条件1.0J/cmで硬化を行い、平滑層を形成した。
【0104】
次に、上記平滑層を設けた試料の上にガスバリア層を以下に示す条件で形成した。
【0105】
(ガスバリア層の形成)
パーヒドロポリシラザン(PHPS、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN320)の20質量%ジブチルエーテル溶液をワイヤレスバーにて、乾燥後の(平均)膜厚が、0.30μmとなるように塗布し、塗布試料を得た。
【0106】
(第1工程;乾燥処理)
得られた塗布試料を温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分処理し、乾燥試料を得た。
【0107】
(第2工程;除湿処理)
乾燥試料をさらに温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行った。
【0108】
(改質処理)
除湿処理を行った試料を下記の条件で改質処理を行い、ガスバリア層を形成した。改質処理時の露点温度は−8℃で実施した。
【0109】
(改質処理装置)
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、波長172nm、ランプ封入ガスXe
稼動ステージ上に固定した試料を以下の条件で改質処理を行った。
【0110】
(改質処理条件)
エキシマ光強度 60mW/cm(172nm)
試料と光源の距離 1mm
ステージ加熱温度 70℃
照射装置内の酸素濃度 1%
エキシマ照射時間 3秒
上記のようにしてガスバリア性を有する透明電極用フィルム基板を作製した。
【0111】
《透明電極の作製》
上記で得られたガスバリア性を有する透明電極用フィルム基板上のガスバリア層のない面に、以下の方法により、第1導電層及び第2導電層を積層し、透明電極を作製した。
【0112】
〈第1導電層の形成〉
以下の方法にて、第1導電層AG−1〜AG−3を形成した。
【0113】
(AG−1の形成)
銀ナノインク(三ツ星ベルト社製;MDot−SLP)を、グラビア印刷機(RKプリントコートインスツルメンツ社製;K303マルチコータ)を用いて、線幅50μm、高さ0.8μm、間隔1.0mmの細線格子を印刷した後、110℃、5分の乾燥処理を行い、第1導電層AG−1を形成した。
【0114】
(AG−2の形成)
銀ナノインク(三ツ星ベルト社製;MDot−SLP)を、バーコーターにて、乾燥膜厚1.2umとなるように均一塗布した後、110℃、10分の乾燥処理行い、さらにフォトリソグラフィ法により線幅50μm、間隔1.0mmの細線格子からなる第1導電層AG−2を形成した。
【0115】
(AG−3の形成)
Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を用い、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製した。これを、限外濾過により濾別し、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を銀に対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。この銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるようにバーコーターを用いて塗布した後、110℃、10分加熱乾燥し、銀ナノワイヤのランダムな網目構造からなる金属導電層AG−3を形成した。
【0116】
〈第2導電層の形成〉
パターン形成された第1導電層上に、第2導電層として、下記の導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーからなる塗布液P−1〜P−4を、アプリケーターにより塗設し、110℃で5分加熱乾燥処理した。
【0117】
(塗布液P−1)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(H.C.Starck社製)
1.59g
PVA:ポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製) 0.07g
ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(固形分20%水溶液) 0.07g
ジメチルスルホキシド 0.08g
(塗布液P−2)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(H.C.Starck社製)
1.59g
ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド 0.08g
(塗布液P−3)
P4083:PEDOT:PSS分散液(Clevios P AI 4083(H.C.Starck社製)) 2.0g
ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(固形分20%水溶液) 0.35g
ジメチルスルホキシド 0.08g
(塗布液P−4)
PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(H.C.Starck社製)
1.59g
PVA:ポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製) 0.07g
ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)(固形分20%水溶液) 0.07g
スルホラン(マイクロ波吸収剤) 0.004g
ジメチルスルホキシド 0.08g
〈透明電極の加熱処理〉
作製した透明電極について、下記加熱方法H−1〜H−5にて加熱処理した。
【0118】
H−1:オーブンを用いて、放電防止部を用いず、表1記載の温度、時間にて加熱
H−2:IRヒーターを用いて、放電防止部を用いず、透明電極の表面温度が表1記載の温度になるように設置して、加熱
H−3:放電防止部を用いず、表1記載の出力、時間にて、透明電極の導電層側よりマイクロ波を照射して、加熱
H−4:放電防止部を用いず、表1記載の出力、時間にて、透明電極の透明フィルム基板側よりマイクロ波を照射して、加熱
H−5:放電防止部と透明電極の導電層の距離1が表1に記載の位置で、かつ放電防止部を透明フィルム基板面に平行かつ透明電極と重なるように設置し、透明フィルム基板側よりマイクロ波を照射して、加熱(図3(a)参照)
H−6:放電防止部と透明電極の透明フィルム基板の距離2が表1に記載の位置で、かつ放電防止部を透明フィルム基板面に平行かつ透明電極と重なるように設置し、導電層側よりマイクロ波を照射して、加熱(図3(b)参照)
なお、放電防止部として、10cm×10cmサイズの以下の材料を用いた。
【0119】
A1:発泡ニッケルシート((株)三菱マテリアル製、孔径600μm)
A2:発泡ニッケルシート((株)三菱マテリアル製、孔径150μm)
A3:アルミシート
A4:シリコンウェハ
《透明電極の評価》
得られた各透明電極について下記方法で、フィルム形状、透明性、導電性、平滑性及び膜強度を評価した。
【0120】
(フィルム形状)
加熱前後でのフィルムの形状の変形を目視にて観察し、下記基準で評価した。有機電子素子に用いるため、フィルムは変形しないことが好ましい。
【0121】
○:変形なし
△:たわみやしわが発生し、フィルムの形状の一部が変形
×:フィルム全体にしわやたるみが発生し、原型を保っていない。
【0122】
(透明性)
透明性の評価として、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。全光線透過率は有機電子素子での光ロスの観点から、75%以上であることが好ましい。
【0123】
◎:80%以上
○:75%〜80%未満
△:70%〜75%未満
×:0〜70%未満
××:フィルム基板が変形して評価できない。
【0124】
(導電性)
抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定し、下記基準で評価した。表面抵抗は100Ω/□以下であることが好ましく、大面積の有機電子素子に用いるためには、20Ω/□以下であることが好ましい。
【0125】
◎:10Ω/□以下
○:10以上100未満
△:100以上1000未満
×:1000以上
××:評価不能。
【0126】
(平滑性)
導電層表面の平滑性として、目視にて観察し、下記基準で評価した。
【0127】
○:表面に光沢感があり、平滑
△:光沢度にムラがある
×:クレーター状の凹み、割れ、異物付着が見られる
××:基板変形により評価不能。
【0128】
(膜強度)
導電層の膜強度を、テープ剥離法により評価した。
【0129】
導電層の上に住友スリーエム社製スコッチテープを用いて圧着/剥離を10回繰り返し、導電層の脱落を目視にて観察し、下記基準で評価した。
【0130】
◎:5回の圧着/剥離で変化なし
○:3回の圧着剥離で変化なし
△:1回の圧着剥離で剥離が見られるが8割以上のパターンが残っている
×:1回の圧着剥離で剥離が見られ、残っているパターンが8割未満
××:フィルム基板が変形して評価できない。
【0131】
評価の結果を表1に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
表1から、本発明の製造方法で作製した透明電極は、比較例の透明電極に較べ、膜強度が高く、導電性、透明性及び平滑性に優れ、透明電極の加熱処理前後でのフィルム形状の変形が少ないことが分かる。
【0134】
実施例2
《有機EL素子の作製》
(取出し電極の作製)
実施例1の透明電極の作製において、第1導電層及び第2導電層を積層する前の、平滑層及びガスバリア層を有するフィルム基板のガスバリア層を設置していない面に、ITOを平均膜厚150nmで蒸着した後、フォトリソ法により図5(a)のパターニングを行った後、2−プロパノールに基板を浸漬し、超音波洗浄器ブランソニック3510J−MT(日本エマソン社製)により10分間の超音波洗浄処理を施した。
【0135】
(第1電極の形成)
超音波洗浄処理した基板上に、表1記載の条件にて、図5(b)の領域に第1導電層を、図5(c)の領域に第2導電層を形成した後、加熱処理を施し、第1導電層及び第2導電層からなる第1電極を形成した。有機EL素子No.2−1〜2−29の第1電極の形成方法は、それぞれ実施例1の透明電極No.1−1〜1−29の第1導電層及び第2導電層からなる導電層の形成方法と同じである。
【0136】
〈有機機能層の形成〉
第1電極を形成した基板上に、下記のようにして、有機機能層(正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層)を形成した。
【0137】
なお、正孔輸送層以降は蒸着により形成した。市販の真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0138】
(正孔輸送層の形成)
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物1の入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で第1電極上の図5(d)の領域に蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
【0139】
(発光層の形成)
次に、以下の手順で発光層を設けた。
【0140】
形成した正孔輸送層上に、化合物2が13質量%、化合物3が3.7質量%、化合物5が83.3質量%の濃度になるように、化合物2、化合物3及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で図5(d)の領域に共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
【0141】
次いで、化合物4が10.0質量%、化合物5が90.0質量%の濃度になるように、化合物4及び化合物5を蒸着速度0.1nm/秒で図5(d)の領域に共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
【0142】
(正孔阻止層の形成)
さらに、形成した発光層上に、図5(d)の領域に、化合物6を膜厚5nmに蒸着し正孔阻止層を形成した。
【0143】
(電子輸送層の形成)
引き続き、形成した正孔阻止層上図5(d)の領域に、CsFを膜厚比で10%になるように化合物6と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
【0144】
(第2電極の形成)
形成した電子輸送層の上に、Alを5×10−4Paの真空下にて図5(e)の領域に蒸着し、厚さ100nmのカソード電極を形成した。
【0145】
(封止膜の形成)
形成した電子輸送層の上に、ポリエチレンテレフタレートを基材とし、Alを厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を使用した。接着剤を塗り、可撓性封止部材を図5(f)の領域に貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させて封止した。封止部材の外に出たITO及びAlをそれぞれ第1電極(アノード)及び第2電極(カソード)の外部取り出し端子とし、有機EL素子を作製した。
【0146】
【化3】

【0147】
《有機EL素子の評価》
得られた、各有機EL素子について、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、直流電圧を印加して1000cd/mで発光させた。各基板5個作製し評価した。
【0148】
〈発光ムラ〉
発光ムラは、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、各有機EL素子に直流電圧を印加して輝度が1000cd/mになるよう発光させ、発光状態を下記基準で目視評価し、下記基準で評価した。
【0149】
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:殆ど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面に渡って発光ムラが見られ、許容できない
××:発光しない、またはフィルムが変形し有機EL素子を作製できない。
【0150】
(寿命)
得られた有機EL素子の、初期の輝度を5000cd/mで連続発光させて、電圧を固定して、輝度が半減するまでの時間を求めた。アノード電極をITOとした有機EL素子を上記と同様の方法で作製し、これに対する比率を求め、下記基準で評価した。
【0151】
◎:150%以上
○:100〜150%未満
△:80〜100%未満
×:80%未満
××:発光しない、またはフィルムが変形し有機EL素子を作製できない。
【0152】
評価の結果を表2に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
表2から、本発明の透明電極の製造方法は、有機EL素子に好適な、導電性、透明性、フレキシブル性、電流の面均一性に優れた透明電極を、電極やフィルム基板を損傷することなく製造でき、さらに、本発明の透明電極を用いることにより、有機EL素子の寿命を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0155】
11、21、51 透明フィルム基板
12 平滑層
13 ガスバリア層
14、53 第1導電層(金属導電層)
15、54 第2導電層(ポリマー導電層)
16、55 第1電極
17、56 有機機能層
18、57 第2電極
22 導電層(第1導電層、第2導電層)
30 マイクロ波線源
40 放電防止部
52 ITO取り出し電極
58 封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基板上に、第1導電層及び第2導電層からなる導電層を有し、前記第1導電層はパターン状に形成された金属粒子からなり、前記第2導電層は前記第1導電層を被覆し、導電性ポリマー及び水酸基含有非導電性ポリマーを含有する透明電極の製造方法であって、マイクロ波線源、前記透明電極及び放電防止部を、前記導電層と前記放電防止部が非接触となるようにこの順に配置し、前記マイクロ波線源より前記透明電極にマイクロ波を照射することを特徴とする透明電極の製造方法。
【請求項2】
前記放電防止部が、前記透明電極の前記透明フィルム基板に対し前記導電層側に配置され、前記放電防止部と前記導電層の距離が0.5〜10cmであることを特徴とする請求項1記載の透明電極の製造方法。
【請求項3】
前記放電防止部が、前記透明電極の前記導電層に対し前記透明フィルム基板側に配置され、前記放電防止部と前記透明フィルム基板の距離が0.0〜10cmであることを特徴とする請求項1記載の透明電極の製造方法。
【請求項4】
前記水酸基含有非導電性ポリマーが、下記一般式(A)で表されるポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の透明電極の製造方法。
【化1】

(式中、X〜Xは水素原子またはメチル基を表し、R〜Rはそれぞれ炭素数5以下のアルキレン基を表す。l、m、nは構成率(mol%)を示し、50≦l+m+n≦100である。)
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の透明電極の製造方法により得られた透明電極を用いることを特徴とする有機電子素子。
【請求項6】
前記有機電子素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子または有機太陽電池素子であることを特徴とする請求項5記載の有機電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249104(P2011−249104A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120237(P2010−120237)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】