説明

透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法

【課題】透水層が混在する軟弱地盤の透水層からの給水を、常に完全に遮断させることができる信頼性の高い真空圧密改良工法の提供。
【解決手段】深さ方向の中間高さ位置に透水層2があり、その上下に軟弱粘土層1がある透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良に際し、透水層2を上下に貫通し、その透水層2内の水を吸引しない長さの透水層用通水パイプ5と、軟弱粘土層1内の水を吸引するためのドレーン材4とを互いに連通させ、軟弱粘土層1と透水層2の上下方向の分布に対応した長さに連結した複合挿入材3を施工現場に搬入し、透水層用通水パイプ5が透水層2を上下に貫通する深さに挿入し、減圧手段により内部を減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間深さ位置に砂質層等の透水層が存在する地盤に鉛直方向にドレーン材を挿入し、そのドレーン材内を減圧することによって圧密させる透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧工法とも称される真空圧密による軟弱地盤改良工法(以下真空圧密工法と記す)が知られている。これは浚渫土による埋め立て地盤などのように、高含水比の軟弱粘土質地盤中に、透水性を有するドレーン材を鉛直方向に多数打設し、そのドレーン材を通じて軟弱地盤内を減圧させることによって大気圧による圧密沈下を促すとともに、ドレーン材を通じて地盤中の水を排出させるものである。
【0003】
このような真空圧密工法では、ドレーン材を通じて地盤内を減圧させるものであるため、改良しようとする地盤中に砂質層のような透水層が存在すると、透水層が地下水脈となり、これがドレーン材に流れ込んで改良しようとする軟弱地盤内を減圧できないという問題が生じる。
【0004】
この問題を解決するため、従来、事前調査によって軟弱地盤中に存在している透水層の位置を確認しておき、鉛直に打設されるドレーン材の、前記透水層に対応する高さ位置に、巻き付けや塗布によって不透水材を固着しておき、これによってドレーン材内を減圧した際に、軟弱地盤中の透水層からは水を吸引しないようにした工法が開発されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特許第3690475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、鉛直方向に打設されるドレーン材の外周に不透水材を巻きつけたり塗布したりする方法では、ドレーン材をドレーン材打設機のマンドレル内に挿入する際や、マンドレルとともに土中に挿入した後にドレーン材を土中に残してマンドレルを引き上げる際などにおいて、不透水材を損傷し、不透水性が損なわれて充分な真空圧密がなされなくなる場合が生じる。
【0006】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、透水層が混在する軟弱地盤の透水層からの給水を、常に完全に遮断させることができる信頼性の高い真空圧密改良工法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、深さ方向の中間高さ位置に1又は複数の透水層があり、該透水層の上下に軟弱粘土層がある透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良に際し、
前記透水層を上下に貫通し、該透水層内の水を吸引しない長さの透水層用通水パイプと、前記軟弱粘土層内の水を吸引するための透水性を有するドレーン材とを互いに連通させて前記軟弱粘土層と透水層の上下方向の分布に対応した長さに連結した複合挿入材を施工現場に搬入し、該通水複合挿入材を、その透水層用通水パイプが前記透水層を上下に貫通する深さに挿入して前記ドレーン材内を減圧手段に連通させてその内部を減圧することにある。
【0008】
請求項2に記載の発明の特徴は、前記請求項1の構成に加え、前記複合挿入材には、その最上部のドレーン材の上端に減圧手段連通用通水パイプを連通させて備え、該減圧手段連通用通水パイプを別の複合挿入材の最下部のドレーン材下端に連結することによって多数の複合挿入材を1本の状態に連結して施工現場に搬入し、ドレーン材打設装置により、順次繰り出して各複合挿入材を透水層混在軟弱地盤に挿入することにある。
【0009】
請求項3に記載の発明の特徴は、前記請求項1又は2の構成に加え、前記ドレーン材と各通水パイプとの連結は、ドレーン材の端部に嵌め付けた不透水性のキャップの端部に該キャップ内と連通させて通水パイプを連結させることによって行うことにある。
【0010】
請求項4に記載の発明の特徴は、前記請求項3の構成に加え、前記通水パイプの両端にそれぞれ連結されたキャップ間に、該キャップ間の間隔の伸長を防止する耐引張力補強材を介在させることにある。
【0011】
請求項5に記載の発明の特徴は、前記請求項4の構成に加え、前記耐引張力補強材は帯状をした繊維補強合成樹脂性テープであることにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、中間深さ位置に透水層が存在する透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良に際し、透水層位置に、該透水層内の水を吸引しない通水パイプを貫通させ、その上下にドレーン材を連通させたことにより、従来に比べ、透水層に対する遮断性の信頼度が高くなり、透水層混在軟弱地盤に対する真空圧密改良がより確実に行われる(請求項1)。
【0013】
また、本発明は、前記複合挿入材には、その最上部のドレーン材の上端に減圧手段連通用通水パイプを連通させて備え、該減圧手段連通用通水パイプを別の複合挿入材の最下部のドレーン材下端に連結することによって多数の複合挿入材を1本の状態に連結して施工現場に搬入し、ドレーン材打設装置により、順次繰り出して各複合挿入材を透水層混在軟弱地盤に挿入するようにしたことにより、地盤改良現場では、複合挿入材をドレーン材打設装置に連続させて通し、1本打設終了毎にこれを切り離して次の打設が可能になり、従来のドレーン材打設装置をそのまま使用できる(請求項2)。
【0014】
更に、本発明は、ドレーン材と各通水パイプとの連結を、ドレーン材の端部に嵌め付けた不透水性のキャップの端部に該キャップ内と連通させて通水パイプを連結させることによって行うことにより、連結作業が容易となるとともに、通水パイプとドレーン材との連通が確実になされる(請求項3)。
【0015】
更に、本発明は、通水パイプの両端にそれぞれ連結されたキャップ間に、該キャップ間の間隔の伸長を防止する耐引張力補強材を介在させることにより、打設時に要する耐引張力をこの補強材によって受け持たせることができ、柔軟性のある通水パイプを使用することができ、多数を1本に連結した複合挿入材取り扱いが容易となる(請求項4)。また、耐引張力補強材は帯状をした繊維補強合成樹脂性テープを使用することにより、その端部のキャップに対する固定作業が容易となる(請求項5)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態を図面について説明する。
【0017】
図1、図2は本発明方法において通水複合挿入材を軟弱地盤中に挿入し、減圧手段に連通させた状態を示しており、図において符号1は、例えば浚渫土による埋め立てによって形成された軟弱粘土層であり、中間深さ位置、即ち上下の軟弱粘土層1,1の間に砂等からなる透水層2が存在している。3は軟弱粘土層間に透水層が混在している改良予定軟弱地盤中に一定間隔毎に挿入されたドレーン材と通水パイプからなる複合挿入材である。
【0018】
この複合挿入材3は、上下のドレーン材4,4とその間に介在させた透水層用通水パイプ5とを有しており、透水層用通水パイプ5を透水層2の上下に貫通させ、その上下のドレーン材4,4を透水層2の上下の軟弱粘土層1内に挿入させている。尚、透水層用通水パイプ5は上下のドレーン材4,4によって透水層2内の水を吸引しないために必要な長さ、例えば上下の両端が透水層2の上下より1m程度の上下の軟弱粘土層1,1中に位置される長さに設定したものを使用している。
【0019】
また、最上部のドレーン材の上端には減圧手段連通用通水パイプ6が連結され、その他端側が減圧手段7(図2に示す)に通じる集水管8に連通されている。また、最上部のドレーン材4の上端は、軟弱粘土層1の上面から水又は空気を吸引しないために必要な深さ、例えば軟弱地盤表面から1m程度の深さまで挿入させている。
【0020】
このようにして多数の複合挿入材3を地盤中に挿入し、それぞれを集水管8に連通させて真空ポンプからなる減圧手段7によって吸引する事によって地盤内を負圧にすることによって地盤改良するようにしている。
【0021】
この工法に使用している前記通水複合挿入材3における各通水パイプ5,6とドレーン材4とは不透水性のキャップ10を介して連結されている。このキャップ10は、図3、図4に示すようにドレーン材4の端部がはめ込まれる有底角筒状をした本体部11と、この本体部10の頂板に突設されて本体部内と連通させた筒状のパイプジョイント部12とから構成され、全体が軟質の合成樹脂により一体成型されている。
【0022】
このキャップ10のキャップ本体11内にその開口部からドレーン材4の端部を挿入し、パイプジョイント部12に各通水水パイプ5又は6を嵌め付けることによってドレーン材4と各通水パイプ5又は6とを連通状態に連結している。
【0023】
尚、キャップ本体部11とドレーン材4との固定は、キャップ本体外からU字型の金具を打つことによってドレーン材4を抜け止めし、その外側をテーピングすることによって固定している。また、パイプジョイント部12と通水パイプ5又は6とは、テーピングによって抜け止めするとともに止水性を持たせている。尚、キャップ本体部11とドレーン材4との結合は、上述の他、接着剤を使用する等他の方法であっても良い。
【0024】
ドレーン材4としては、例えばプラスチックボードドレーンを使用する。このドレーン材4は、波型断面を有する芯材4a両面に不織布からなる透水性被覆材4bを被着して構成されている。 この他、ドレーン材2としては、合成樹脂繊維製の多孔質材からなるケミカルドレーン等、内部に中空若しくは多孔質の通水路が形成され、それ自体に保形性がある鉛直ドレーン材が使用できる。通水パイプ5,6は、柔軟性のある合成樹脂ホースの肉厚内の螺旋状の補強線材が埋設された耐減圧補強を施した可撓性合成樹脂パイプを使用している。
【0025】
各通水パイプ5又は6の両端のキャップ10,10間には、耐引張力補強材15,15が固定されている。これは通水パイプ4の両端のキャップ10,10に通水パイプを伸張する方向の引張力、即ち複合挿入材3に対してこれを伸張する方向の外力が作用したとき、通水パイプの代わりにその引張力に対抗させるものである。
【0026】
この耐引張力補強材15としては、帯状をした繊維補強合成樹脂性テープを使用し、その端部をU字型の金具を等の固定具を使用してキャップ本体部11に固定し、その外側をテーピングすることによって連結している。この耐引張力補強材15とキャップ本体との固定は、上述の他、接着剤による接着や溶着による固定であってもよい。
【0027】
上述した複合挿入材3の使用に際しては、改良施工予定地盤の地層構造をポーリングなどによって調査しておき、軟弱粘土層1及び透水層2の厚さに対応させた長さにドレーン材4及び透水層用通水パイプ5を切断し、図3、図4に示すようにキャップ10及び耐引張力補強材15を使用してこれらを連結する。また、必要な長さの減圧手段連通用通水パイプ6を最上部のドレーン材4の上端にキャップ10を使用して連結するこのようにして1本の複合挿入材3とする。
【0028】
これと同時に、図5に示すように各複合挿入材3,3……を多数連結して1本の状態とし、これをロール状に巻いて施工現場に搬入する。複合材3,3相互間の連結は、図5に示すように、1つの複合挿入材3の上端の減圧手段連通用通水パイプ6の他端を別の複合挿入材3の最下部のドレーン材4の下端に前述と同様にキャップ10を介して連結するとともに、該減圧手段連通用通水パイプ6上下端のキャップ10,10間に耐引張力引張補強材15連結することによって行う。
【0029】
複合挿入材3を軟弱地盤への挿入は、従来から使用されている鉛直ドレーン材打設装置を使用する。この装置は、図6に示すように自走式の台車20にガイド用支柱21が立設され、この支柱に沿ってマンドレル22が強制的に上下動作されるようになっている。台車上20には1本の状態に多数連結されロール状に巻かれた複合挿入3を順次繰り出し可能に搭載し、その先端を引き出してマンドレル22の上端からその内部に通し、打設しようとする複合挿入材3の最下部のドレーン材下端をマンドレル22の下端から稍突出させ、これにアンカー23を固定する。
【0030】
この状態でマンドレル22を軟弱地盤中の所定の深さまで挿入したのち、内部の複合挿入材3を軟弱地盤中に残した状態でマンドレル22だけを上昇させて軟弱地盤から引き抜く。これによって状態でマンドレル22下端の地盤表面には、今打設された複合挿入材上端の減圧手段連通用通水パイプ6が突出している状態となる。
【0031】
この状態でマンドレル22内の次に打設する複合挿入材3の最下部のドレーン材4とその下端のキャップ10とを切り離す。この切り離しはドレーン材4をキャップ10の稍上の位置(図5中符号a−a線位置)で切断することによって行う。然る後減圧手段連通用通水パイプ6の上端部位置(図5中符号b−b位置)を切断してキャップ10を切り離す。
【0032】
このようにして1の複合挿入材3の打設を終了した後、マンドレル22内にある次の複合挿入材の最下部ドレーン材下端に前述と同様にしてアンカー23を固定し、次の複合挿入材の地盤への打設作業を行う。
【0033】
このようにして順次、複合挿入材の打設、切断を繰り返し、図2に示すように多数の複合挿入材3,3を軟弱地盤中に打設し、各減圧手段連通用通水パイプ6,6……先端を減圧手段7に通じる集水管8に連結する。しかる後、減圧手段7により集水管8を通じて各複合挿入材3内を減圧させることによって軟弱地盤の真空圧密を行う。
【0034】
尚、上述の例では、改良予定の軟弱地盤中に地盤に1層の透水層が存在している場合を示しているが、本発明は、複数の透水層が存在している軟弱地盤に対しても実施することができ、その場合には透水層の数及び深さ方向の分布に対応させて、その数分の透水層用通水パイプを組み付けた複合挿入材を使用する。
【0035】
また、上述の例では陸上を自走できる鉛直ドレーン材打設装置を使用しているが、超軟弱地盤等、表層に水又はこれに近い流動性のある泥層が存在するような地盤の改良には、牽引式又は自走式の台船を使用した鉛直ドレーン材打設装置を使用する。
【0036】
また、上述の例では、耐引張力補強材15の端部をキャップ本体11に固定した場合を示しているが、この他、図7に示すようにキャップ10のパイプジョイント部12に固定しても良い。即ち、図に示すように耐引張力補強材15を通水パイプ5又は6に沿わせ、その両端をパイプジョイント部12の外側にて通水パイプとともに巻き締め具16によって締め付けることによって固定する。この他耐引張力補強材の配置及び固定は各種の方法を採り得る。更に耐引張力補強材は、上述したテープの他、ワイヤーその他の線材等、耐引張力のある細長材であれば良い。
【0037】
また、図には示してないが、キャップ10とドレーン材4及び通水パイプ5又は6とのの接合部分は、その外周に水密製の接着テープを巻き、接合部分の水密製を維持させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明方法の実施の一例を示すもので、複合挿入材の挿入及び集水管連結状態を示す断面図である。
【図2】同上の複合挿入材及び集水管の配置の一例を示す平面図である。
【図3】本発明に使用する複合挿入材の通水パイプ連結部分の斜視図である。
【図4】同上のキャップ部の縦断面図である。
【図5】本発明に使用する複合挿入材の複数を連結した状態の正面図である。
【図6】本発明における複合挿入材の鉛直ドレーン材打設装置を使用した打設状態を示す断面図である。
【図7】本発明に使用する複合挿入材における耐引張力補強材取り付け構造の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 軟弱粘土層
2 透水層
3 複合挿入材
4 ドレーン材
4a 芯材
4b 透水性被覆材
5 透水層用通水パイプ
6 減圧手段連通用通水パイプ
7 減圧手段
8 集水管
10 キャップ
11 本体部
12 パイプジョイント部
15 耐引張力補強材
16 巻き締め具
20 台車
21 ガイド用支柱
22 マンドレル
23 アンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ方向の中間高さ位置に1又は複数の透水層があり、該透水層の上下に軟弱粘土層がある透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良に際し、
前記透水層を上下に貫通し、該透水層内の水を吸引しない長さの透水層用通水パイプと、前記軟弱粘土層内の水を吸引するための透水性を有するドレーン材とを互いに連通させて前記軟弱粘土層と透水層の上下方向の分布に対応した長さに連結した複合挿入材を施工現場に搬入し、該通水複合挿入材を、その透水層用通水パイプが前記透水層を上下に貫通する深さに挿入して前記ドレーン材内を減圧手段に連通させてその内部を減圧することを特徴としてなる透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法。
【請求項2】
前記複合挿入材には、その最上部のドレーン材の上端に減圧手段連通用通水パイプを連通させて備え、該減圧手段連通用通水パイプを別の複合挿入材の最下部のドレーン材下端に連結することによって多数の複合挿入材を1本の状態に連結して施工現場に搬入し、ドレーン材打設装置により、順次繰り出して各複合挿入材を透水層混在軟弱地盤に挿入する請求項1に記載の透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法。
【請求項3】
前記ドレーン材と各通水パイプとの連結は、ドレーン材の端部に嵌め付けた不透水性のキャップの端部に該キャップ内と連通させて通水パイプを連結させることによって行う請求項1又は2に記載の透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法。
【請求項4】
前記通水パイプの両端にそれぞれ連結されたキャップ間に、該キャップ間の間隔の伸長を防止する耐引張力補強材を介在させる請求項3に記載の透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法。
【請求項5】
前記耐引張力補強材は帯状をした繊維補強合成樹脂性テープである請求項4に記載の透水層混在軟弱地盤の真空圧密改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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