説明

透水性舗装構造体

【課題】短期間の工期で、発塵の問題も生じず、安価に透水性とともに保水性を備え、その結果舗装面の温度上昇を長期間にわたり抑えることができる透水性舗装構造体を提供する。
【解決手段】路床層2上に形成される透水性舗装構造体1であって、フィルター層3と、路盤材22に補足材として石炭灰造粒物21を混合した保水性路盤材からなる保水性路盤層4と、透水性を備えた表層5とが順次積層されてなることを特徴とする透水性舗装構造体1を構成する。前記補足材21の前記路盤材22に対する混合比は、補足材:路盤材=10:90〜50:50(重量比)とされる。前記石炭灰造粒物21は、石炭灰、または石炭灰とセメントとを少なくとも含む混合物を造粒したものである。石炭灰としては、フライアッシュが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保水性を備えた透水性舗装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市温暖化が問題となっている。この都市温暖化の主な要因として、
(1)都市部では郊外よりも大量のエネルギーが消費されており、そのため人工排熱が著しく増大している点、
(2)都市部では、地表面の大半をコンクリートやアスファルトなどの熱容量の大きな施設が占め、日中に吸収した熱を夜間にゆっくり放出するため、夜間に都市部の気温を上昇させている点(蓄熱効果)、および
(3)都市化により地表面がコンクリートなどの建造物で覆われるに伴い、地下への雨水などの浸透する地表面積が減少し、このため地表面からの水分の蒸発による潜熱の放散が抑制され、郊外に比べて地表面温度が上昇する点(蒸発の抑制)、
が挙げられている。
【0003】
これらの各要因に対しては、現在、多くの対策技術が実用化されているところであるが、特に要因(3)の対策として、都市部からの蒸発潜熱の発散を促進するために、積極的に都市部に緑地や親水空間などを設置して透水性面を増加させることが進められている。
【0004】
透水性面を増加させる技術の1つとして、近年、透水性舗装に関する技術が種々提案されている。一般に、道路の舗装は、路床層の上に、路盤層および表層を順次積層した構造を有するが、この透水性舗装は、粒状の路盤層の上に空隙率の多孔質なアスファルト混合物もしくはセメントコンクリートからなる表層を舗設し、表層と路床との相互間での透水性を向上させたものである。このような構造とすることで、透水性舗装では、降雨時には雨水は舗装面から路床まで浸透するとともに舗装構造内に一時的に水は貯蔵され、晴天時には舗装構造内やさらに下層の地下水が舗装面近傍まで上昇して蒸発することで気化熱を奪い、舗装面の温度上昇を緩和することができる。
【0005】
しかし、この透水性舗装では、通常の非透水性舗装や排水性舗装と比べて降雨後1日程度までは舗装面の温度上昇を低く抑えることができるが、その後の温度上昇は非透水性舗装などと同様となり、舗装面の温度上昇の抑制効果がなくなるという問題があった。
【0006】
この透水性舗装の問題点を解消するために、この舗装構造に保水性を兼備させた保水性舗装構造(保水型透水性舗装)が、最近提案されている。この保水性舗装は、表層および路盤層の空隙を比較的小さくし、間隙保水を可能としたものであり、透水性舗装構造よりも内部の保水量を増加させたものである。
【0007】
このような保水性舗装構造として、例えば不透水性に形成された路床の上に、土とセメント系固化材と団粒化材と石炭灰との混合物を打設して形成された路盤と保水性舗装層とからなる構造が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この舗装構造は、路床を不透水性とするための工事が必要であり、そのため費用および工期がかかり、またこのようにして不透水性に形成された路床上に、前記混合物を敷き均し転圧する際の発塵の問題がある。
【特許文献1】特開2006−37571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、短期間の工期で、発塵の問題も生じず、安価に透水性とともに保水性を備え、その結果舗装面の温度上昇を長期間にわたり抑えることができる透水性舗装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、本発明によれば、路床層上に築造される舗装構造体であって、フィルター層と、路盤材に補足材として石炭灰造粒物を混合した保水性路盤材からなる保水性路盤層と、透水性を備えた表層とが順次積層されてなることを特徴とする透水性舗装構造体によって達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透水性舗装構造体の一部を構成する路盤層に、石炭灰造粒物を補足材として混合することとしたので、路盤層の間隙保水だけでなく、石炭灰造粒物自体の保水性を有効に活用できるようになり、その結果、従来の透水性舗装よりも昼間における舗装面の温度上昇を長期間抑制することができる。また、路盤材に補足材として石炭灰造粒物を混合することから、短い工期で安価に舗装でき、しかも発塵の問題も生じずに舗装構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態である透水性舗装構造体の一例を示す図である。
【図2】補足材としての石炭灰造粒物、路盤材およびこれらの混合物の粒度分布を示すグラフである。
【図3】舗装体の温度測定結果を示すグラフである。
【図4】舗装表面および当該舗装表面近傍における温度測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて本発明の透水性舗装構造体についてより詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態である透水性舗装構造体の垂直断面図を示している。この図に示すように、本発明の透水性舗装構造体1は、路床層(地盤)2の上に順次積層されたフィルター層3、路盤層4および透水性を備えた表層5からなる。なお、路床層2は、在来の地盤を公知の工法(路床工)を用いるなどして築造することができる。この路床工の具体例としては、切土工法、盛土工法、安定処理工法または置換工法などが挙げられ、本発明においてはこれらのどの路床工によっても路床層2を形成できる。ここで、切土工法は、在来地盤を整正または所定の深さまで切り下げて路床とする工法であり、盛土工法は、良質土を在来地盤の上に盛り上げて路床を築造する工法である。また、安定処理工法は、原位置で路床土とセメントや石灰などの安定材とを混合して路床の支持力を改善する工法である。通常、安定材としては、路床土が砂質土の場合、セメントが使用され、粘性土の場合、石灰が使用されるが、セメント系または石灰系の固化材を使用することもできる。また、置換工法は、切土部分で軟弱な路床土がある場合などに、路床の一部または全部を掘削して良質土で置き換える工法である。これらの工法は、単独でまたは2種以上を組み合わせて施工できる。例えば、切土工法後に、舗装区域のCBRを向上させるために、安定処理工法を組み合わせることができる。
【0013】
路床層2の上に形成されるフィルター層3は、降雨時などに透水性の表層5、路盤層4を通過した雨水を路床層2に浸透させるとともに、路床層2の浸透水分による軟弱化や舗装構造の破壊を防止するために設けられるものである。このフィルター層3は、通常、砂などの細骨材を所定の厚さに敷き均すことによって構成される。この細骨材は、ごみ、泥、有機物などを含まないものが好ましい。特に細骨材として砂を用いる場合には、天然砂、砕砂、砕石ダストのいずれも使用でき、その粒度はこれらを規定するJIS規格のそれぞれにおける規定値を満たせばよいが、好ましくは75μmふるい通過量が6%以下の粒度のものを使用するのがよい。フィルター層の仕上がり層厚は、公園、駐車場などの舗装体の場合、通常、30〜100mm、好ましくは40〜80mm、さらに好ましくは40〜60mmとされる。また、歩道の舗装体の場合には、50〜100mmとされる。この層厚は、路床層の軟弱化などを防止できる程度に設定すればよく、過剰に厚くする必要はないが、前記範囲未満では、前記軟弱化を有効に防止できない。
【0014】
フィルター層3の上に保水性路盤層4が形成される。この保水性路盤層4は、表層5から伝達された交通荷重をさらに分散して路床層2へ伝達するとともに、その層厚方向に通過する水分を保持するために設けられる層である。本発明の舗装構造体1においては、この路盤層4は、路盤材42に補足材として石炭灰造粒物41を混合した保水性路盤材から構成される。
【0015】
石炭灰造粒物41は、石炭灰を主成分として造粒される。石炭灰としては、微粉炭焚きボイラー、油焚きボイラー、流動層ボイラー、加圧流動層ボイラーなどの各種ボイラー設備から発生するフライアッシュやクリンカーアッシュなどを使用できる。クリンカーアッシュはそれ自体多孔質であり保水性を備えるが、粉砕工程などを必要とするため、相対的には安価に造粒を行えるフライアッシュを用いるのが好ましい。例えば、加圧流動層ボイラーからのフライアッシュを使用する場合、このフライアッシュは自硬性を備え、硬化することで十分な強度特性が得られるため、これ単独で造粒でき、その他の石炭灰を使用する場合には、所定の強度特性を得るために、前記他の成分を所定の混合比の範囲内で混合して造粒することができる。
【0016】
前記他の粉体成分として、各種の結合材や添加材などを用いることができる。前記結合材としては、セメント、石膏または石灰などの水硬性結合材の他、製鋼スラグなどの各種スラグが挙げられ、さらに公知の有機質結合材などを含めることもできる。これらの結合材は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0017】
また、添加材としては、それ自体吸水性、吸湿性、保水性を備える材料のほか、前記粉体材料の結合力を高める有機質バインダー材などを使用できる。前者としては、例えば、ゼオライト、ベントナイト、カオリナイト、モンモリロナイトなどの粘土鉱物のほか、公知の固体状の有機質吸水材料などが挙げられる。後者のバインダー材は、固体状であると液体状であることを問わない。これらの添加材は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
石炭灰に結合材、または結合材および添加材を混合する場合、これらの混合比は、得られる造粒物の養生条件や強度特性(主には圧壊強度)などを考慮して適宜設定できるが、通常、粉体混合物の全量を100重量%として、結合材0〜20重量%、添加材0〜5重量%の範囲(残りが石炭灰)とされる。
【0019】
前記粉体混合物は、加水混練された後に造粒される。混練水量は、前記粉体成分の付着水分や造粒物の目標強度などを考慮して、前記粉体成分100重量部に対して、外割りにて10〜40重量部、好ましくは12〜30重量部の範囲内で適宜設定できる。混練は、モルタルミキサなど公知の混練機を用いて行うことができる。前記の液状の有機質バインダー材を用いる場合、この混練水に予め所定量を添加しておくことができる。
【0020】
造粒は、例えば回転皿型造粒機(転動造粒)、ロールプレス機(圧縮造粒)などの公知の造粒装置を用いて行うことができる。例えば、前者の造粒機の場合、その回転皿を回転させながら前記の粉体混合物を投入するとともに、混練水を噴霧などの方法により添加することで混練と造粒とを同時に行うことができる。得られた造粒物は、その後、自然養生、あるいは30〜70℃の温度条件下で養生される。養生期間は、得られる造粒物が所定の強度特性を備えるように適宜設定できる。
【0021】
このようにして得られる石炭灰造粒物の性状は、通常、外観形状が略球状からアーモンド状を呈し、圧壊強度1〜10MN/m、平均粒度10〜20mm、最大粒径40mm以下とされ、吸水率約20〜30%程度、10日間気中放置後の保水率20%以上とされる。このように石炭灰を主成分とすることで、天然砕石などと比較して相対的に軽量で、保水性および吸水性に優れる造粒物を得ることができる。
【0022】
路盤材42としては、天然砕石、鉄鋼スラグ、またはアスファルト、コンクリート再生骨材(以下、RC材という。)などが好適に使用できる。これらは、いずれか1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。特にこれらの中では、近年再生骨材の有効利用の機運の高まりから、RC材の使用が主流になりつつあり、また、RC材が通常、4〜8重量%の吸水率を示し、天然砕石に比してある程度舗装面の温度上昇を抑制する効果が期待できるので、RC材を単独で用いるか、またはこれを主材とし、他の天然砕石などを配合して用いるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、この路盤材42に前記石炭灰造粒物41を補足材として混合し、保水性路盤材を調製する。両者の混合比は適宜設定できるが、修正CBR30%以上という歩道路盤材料の規格を満たす必要がある点および形成される保水性路盤層の吸水性および保水性の観点からは、補足材:路盤材=10:90〜50:50、好ましくは10:90〜30:70の範囲内(いずれも重量比)に設定するのが好ましい。補足材の混合比を前記範囲未満としたのでは、保水性が不十分となり舗装面の温度上昇を効果的に抑制することができない。また、前記範囲より大きくした場合には、修正CBR試験を行ない修正CBR値が規格値を満足するか否かを確認する作業が必要になってくる。
【0024】
前記フィルター層3上に前記保水性路盤材が搬入され、所定の仕上がり厚さとなるように均一に敷き均される。敷き均しには、通常、アスファルトフィニッシャ、ブルドーザ、モーターグレーダなどが用いられ、敷き均し作業は連続して行われる。その後、敷き均された保水性路盤層4の表面は、通常、4〜20t程度のタイヤローラ、ロードローラなどによって所定の締め固め度が得られるまでさらに転圧され、平坦に仕上げられる。この転圧によって、保水性路盤材中の石炭灰造粒物は破砕され、当該破砕産物が路盤材相互間の空隙中に充填され、より密な、また必要であれば一定の密度を有する充填構造を形成することができる。こうして形成される保水性路盤層の仕上がり層厚は、通常100〜200cm,好ましくは50〜150cmとされる。
【0025】
この保水性路盤層4の上に透水性を有する表層5が形成される。この表層5は、透水性を備えるとともに、交通荷重を分散して下層に伝達し、表面の磨耗、亀裂に対して抵抗性を備え、平坦ですべりにくく、交通手段による良好な走行が可能な路面を提供するものである。本発明においては、このような機能を備えていれば、例えば各種アスファルト混合物や透水性セメントコンクリートなどの表層材料を使用できるが、なかでも開粒度アスファルト混合物が好適に使用される。この開粒度アスファルト混合物は、通常、粗骨材、細骨材、フィラー、アスファルトからなる加熱アスファルト混合物で、合成粒度における2.36mmふるい通過分が15〜30重量%の範囲のものをいう。アスファルト混合物に配合される粗骨材は5mm篩上が85重量%以上となる骨材であり、細骨材は10mmふるいを全量通過し、5mmふるいを85重量%以上通過する骨材であるが、粗骨材51の最大粒径は、20mm以下、好ましくは13mm以下とするのが良い。また、フィラーは通常、75μmふるいを通過する鉱物質粉末(例えば石灰岩や火成岩などの石粉)であり、アスファルトの見かけの粘度を高めるためなどに配合されるものである。
【0026】
開粒度アスファルト混合物を使用して施工する場合、これが保水性路盤層4の上にアスファルトフィニッシャなどを用いて敷き均された後、締め固めが行われる。この締め固め作業は、通常の施工法に従い、所定の重量のロードローラ、タイヤローラまたは振動ローラなどを用いて複数回転圧することによって行われる。タイヤローラなどの重量は、施工状況などに応じて適宜設定できる。透水性セメントコンクリートの場合も同様に施工することができる。また、透水性を有する表層を表層部分とその下側に位置する基層部分との2層に分けて構築することもできる。この場合、基層および表層の各部分にはそれぞれ前記した同種または異種の透水性を有する表層材料を用い、それぞれ前記の敷き均しや締め固めの方法によって敷設することができる。
【0027】
また、前記の透水性を有するアスファルト混合物やセメントコンクリートなどによって形成された表層材には、さらに透水性を備えた、例えば舗装平板やインターロッキングブロックなどの板状またはブロック状の表層材(舗装材)を敷設することができる。このような舗装材として、例えば特開平7−315951号公報記載の硬質骨材、石炭灰、低耐火度窯業原料および水を混合して造粒して得られる複合粒子を所定形状に成形、焼成したものや特開2004−52244号公報記載の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、石炭灰を混合、溶融固化したものを粉砕した人工砕石をセメントでブロック状に固めたものなども好適に使用できる。また、透水性平板やインターロッキングブロックを用いる場合には、通常の方法に従い保水性路盤層4上に砂を敷き均してクッション層を設け、その上にこれらを敷き詰めるようにする。
【0028】
前記の開粒度アスファルト混合物などや板状またはブロック状の表層材は、保水性を備えていてもよい。また、これらの表層材が内部に備える空隙に保水性を有する材料をスラリー状にするなどして充填させることで、保水性を兼備するようにしてもよい。
【0029】
本発明の透水性舗装構造体では、降雨時には雨水が時間経過に伴い路床層に浸透していき、路盤層では石炭灰造粒物に保水され、また晴天時には舗装面の温度上昇に伴い、路盤層や路床層、さらにはその下層の地盤中の地下水が表層に向けて上昇し、そこで蒸発して舗装面の温度上昇を抑制できるだけでなく、浸透水分が保水性路盤層を通過する際に石炭灰造粒物中に吸水され、保水される。その結果、従来の透水性舗装構造では降雨日の後に晴天が2〜5日程度続くと、舗装構造が乾燥し、舗装面温度の上昇を抑制できないが、本発明の舗装構造では、石炭灰造粒物がその保有する水分を長期にわたって放出するため、降雨日の後、約1週間から10日間の長期間舗装面の温度上昇を抑えることができる。
【0030】
本発明の透水性舗装構造体は、車道、歩道、広場、一般駐車場などの舗装に適用できる。これらの舗装に用いることで、夏季に舗装面の温度上昇を効果的に抑制することが可能となる。なお、車道については、本発明の透水性舗装構造体は、その強度の経時変化を考慮して、いわゆる幹線道路などよりも相対的に計画交通量の小さい車道の舗装に適用するのが好ましい。
【実施例】
【0031】
[使用材料]
(1)路盤材(RC材) RC−30(最大粒径30mm以下、コンクリート殻)
(2)補足材 石炭灰造粒物(商品名「Hiビーズ」、株式会社エネルギア・エコ・マテリア社製)
(3)表層材 透水性アスファルト混合物―13(骨材の最大粒径13mm)
【0032】
[石炭灰造粒物の調製]
試験には、微粉炭焚きボイラーから発生するフライアッシュ87重量%と、セメント13重量%とからなる粉体混合物(全量100重量%)をパン型造粒装置を用いて加水しながら造粒を行い(混練水量は、粉体混合物に対して重量比で23%)、4週間気中養生させたものを使用した。得られた石炭灰造粒物の性状を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
[保水性路盤材の調製]
RC材と石炭灰造粒物とを、RC材:石炭灰造粒物(補足材)=80:20となるように混合し、保水性路盤材を調製した。この保水性路盤材について、以下の物性試験を行った。
(1)篩い分け試験(JIS A1102準拠)
(2)突き固めによる土の締め固め試験(JIS A1210準拠)
(3)修正CBR試験(JIS A1211準拠)
【0035】
この物性試験結果を表2に示す。表2では、RC材(RC−30)についての規格値が規定されているものについては、その値を併記している。
【0036】
【表2】

【0037】
[舗装構造体の施工]
道路沿いに設けられた歩道の修繕工事の一環として、修繕工事区域の一部に所定の面積(各々、180m)の2つの工区を設定し、そのうちの1つの工区(以下、工区1という。)において本発明の舗装構造体を施工した。まず、表面を平坦にした路床層の上に砂を敷き均し、転圧によって仕上がり層厚50mmのフィルター層を形成した。その上に、前記の保水性路盤材を搬入し、ブルドーザによって敷き均した後に2軸タンデムローラを用いて表面の転圧(荷重4t)を行い、保水性路盤層を形成した(仕上がり層厚保100mm)。さらに、その路盤層の上に開粒度アスファルト混合物を搬入、敷き均した後に、2軸タンデムローラを用いて転圧して透水性表層を形成し(仕上がり層厚40mm)、本発明の透水性舗装構造体を得た(実施例1)。
【0038】
残りの工区(以下、工区2という。)における舗装工事では、路盤材としてRC−30のみを用いた以外は、前記と同様の材料および方法で舗装構造体を得た(比較例1)。
【0039】
[舗装体温度の測定]
工区1における本発明の舗装構造体(実施例1)および工区2における舗装構造体(比較例1)のそれぞれに各1箇所、舗装構造体の表層と路盤層との界面の温度を測定するように取り付けた。舗装構造体への温度センサーの設置は、表層をコアカッターで切り抜いて穴を開け、その中に温度センサーを設置し、同じ表層材で埋め戻す作業によって行った。それとともに、この周辺の外気温度を測定するために、地表面より1mの高さに温度センサーを設置した。
【0040】
夏季の7月19日から29日の10日間、舗装体の温度および外気温度を測定した。この期間は、7月10日から11日にかけて降雨(日降雨量47mm)があった後に晴天の日が連続した期間である。測定結果を表2および図3に示す。表2の各データは、図3のプロットから求めたものである。
【0041】
【表3】

【0042】
表3のデータから、実施例1では、舗装体温度の最大値が57℃、平均値が39.8℃であった。それに対して、比較例1では、舗装体温度の最大値は58.8℃、平均値が40.7℃であり、本発明の透水性舗装構造体を用いることで、最大値において1.8℃、平均値において0.9℃の温度上昇の抑制が認められた。
【0043】
また、この期間中のどの時間帯においても、実施例1の舗装体温度は、比較例1におけるそれよりも低く、本発明の透水性舗装構造体を用いることで、長期にわたり舗装体の温度上昇を抑制できることが示された。
【0044】
[舗装表面および舗装表面近傍における温度の測定]
工区1における本発明の舗装構造体(実施例1)および工区2における舗装構造体(比較例1)の舗装(表層)表面温度、および当該舗装表面近傍の温度として舗装表面上10cmの高さにおける温度を測定できるように、公知の方法により非接触式の放射温度計を設置した。その後、放射温度計設置場所周辺に散水を行い、その日から1週間舗装表面温度および舗装表面近傍の温度を連続測定した。その結果を表4および図4に示す。なお、これらの図表において、「最高気温」は、工区1および工区2の属する地域における測定値である。
【0045】
【表4】

【0046】
表4および図4に示す結果から、実施例1の舗装構造体は、比較例1の舗装構造体よりも散水後の1日目の表面温度が6℃低い結果となり、さらに4日後に略同等となっており、測定期間中を通じて前者の方が後者よりも表面温度を抑えることができることが示された。また、舗装表面上10cmの高さでの温度は、実施例1の舗装構造体の方が比較例1のそれよりも低い結果となっている。
【0047】
以上説明したように、本発明の舗装構造体は、従来の透水性舗装よりも昼間における舗装体内部および舗装表面の温度上昇を長期間抑制することができることは明らかである。また、路盤材に補足材として石炭灰造粒物を混合することから、短い工期で安価に舗装でき、しかも発塵の問題も生じずに舗装構造を得ることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 透水性舗装構造体
2 路床層
3 フィルター層
4 保水性路盤層
41 補足材(石炭灰造粒物)
42 路盤材
5 表層
51 骨材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路床層上に築造される舗装構造体であって、フィルター層と、路盤材に補足材として石炭灰造粒物を混合した保水性路盤材からなる保水性路盤層と、透水性を備えた表層とが順次積層されてなることを特徴とする透水性舗装構造体。
【請求項2】
前記補足材の前記路盤材に対する混合比は、補足材:路盤材=10:90〜50:50(重量比)である請求項1に記載の透水性舗装構造体。
【請求項3】
前記石炭灰造粒物は、石炭灰、または石炭灰とセメントとを少なくとも含む混合物を造粒したものである請求項1または請求項2に記載の透水性舗装構造体。
【請求項4】
前記石炭灰は、フライアッシュである請求項1〜3のいずれか1項に記載の透水性舗装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−229707(P2010−229707A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78191(P2009−78191)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504002193)株式会社エネルギア・エコ・マテリア (24)
【出願人】(509088516)有限会社 Landscape (1)
【出願人】(000232508)日本道路株式会社 (48)
【Fターム(参考)】