説明

透液シート及びこの透液シートを含む吸収性物品

【課題】液が自由に移行できる液透過性を有する上に、一旦吸収された液が肌側に戻るおそれのない液戻り防止性を有する吸収性物品の透液シートを提供する。
【解決手段】複数の層(41,42,43)からなり、表面(21)から裏面(22)にかけて貫通している複数の貫通孔(3)を有する透液シート(1)であって、前記貫通孔(3)は、各層(41,42,43)の孔(31,32,33)よりなり、前記貫通孔(3)の内壁面が前記シートの厚み方向に凹凸を有する透液シート(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、使い捨ておむつなどの吸収性物品用の表面シートやセカンドシート、またはドリップを発生する食品の下に敷かれて使用される透液シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の吸収性物品は、血液、尿等の液を吸収する吸収体と、該吸収体の表面を覆い肌に当接する表面シートと、上記吸収体の裏面を覆い液漏れを防ぐ裏面シートとを具備して構成されている。上記吸収性物品の表面シートは、血液、尿等の液を速やかに上記吸収体へ移行させ、該吸収体に吸収させるための液透過性が要望されることは勿論のこと、一度吸収体に吸収された液を肌側に戻さない液戻り防止性や吸収体中に拡散した血液等の色を隠蔽する隠蔽性等が要望される。
【0003】
従来、上記要望に応えるため、表面シートそのものに液を保持しないように疎水性の材料を用いたり、液透過性を付与すべく開孔を設け、その開孔断面形状を工夫することで液戻りを抑えたり、隠蔽性を高めたりする技術が提案されている。例えば、撥水層と親水層の2層から成るシートを開孔し、開孔内面を撥水性とすることでスムーズに液を通過させることができる表面シート(例えば特許文献1を参照)や、開孔されたシートであって、その表面での開口部と裏面での開口部がシート面方向に位置をずらして形成されていることで吸収された血液などが表面から見えにくくなる透液シート(例えば特許文献2を参照)や、上面開孔と該上面開孔から導液管が表面シート下面側方向に延出し、その導液管の先端が下面開孔である表面シートであって、その上面開孔や導液管の周方向にコルゲート構造を設けることで、体圧による管の閉塞を防ぎ、体液を吸収体へうまく移行できる表面シート(例えば特許文献3を参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開2007−14705号公報
【特許文献2】特開2001−277401号公報
【特許文献3】実開平5−5119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の表面シートは、開孔断面が滑らかであるため、液は入りやすいが、体圧により液が押し戻される時には、液が開孔断面を伝って肌側へと移行しやすい構造であり、べたつき等の感覚的に不快感を与える欠点がある。
【0005】
上述した特許文献2の表面シートは、表面での開口部と裏面での開口部の位置がずれているため、隠蔽性が高まり、また戻ろうとする液は開孔断面の傾斜や屈曲等により阻害され、肌側に戻りにくいが、これは液の入りに関しても同じことが言え、液が吸収体側へと移行する際も阻害が起こることが予想され、表面シートに液が残りやすくなり、べたつき等の不快感を与える欠点がある。
【0006】
上述した特許文献3の表面シートは、圧力がかかった場合でも開孔が閉塞しないため、液の入りがスムーズに行われるが、一旦移行した液が押し戻されると開孔断面を液が伝わって肌側へと移行し、べたつき等の不快感を与える欠点がある。
【0007】
本発明の目的は、液が自由に移行できる液透過性を有する上に、一旦吸収された液が肌側に戻るおそれのない液戻り防止性を有する吸収性物品の透液シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の層の積層体からなり、表面から裏面にかけて貫通している複数の貫通孔を有する透液シートであって、前記貫通孔は、各層の孔よりなり、前記貫通孔の内壁面が前記シートの厚み方向に凹凸を有する透液シートを提供するものである。また、本発明は、この透液シートを含む吸収性物品について提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の透液シートは、液を素早く吸収体に移行させ液残りを防止し、かつ、液の逆戻りを防止することができ、これによりシート表面のべとつきを抑えることができる。
具体的には、本発明の透液シートを吸収性物品の表面シートとして用いた場合、透液シートに形成された複数の貫通孔によって液が速やかに吸収体側に移行し、透液シートの肌側表面における液残りを防ぐことができる。また、一旦吸収体に吸収された液が体圧等により表面シートの表面方向に液が押し戻されても、押し戻された液は開孔の内壁面に形成された凸部に阻害されるとともに、透液シートの水平方向に延びる層間の毛管力によって液が透液シートの層間に拡散し、透液シートの肌側表面への液戻りを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい一実施態様について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図の説明において同一の要素には同一の符号を付す。
図1は、本発明の透液シートの好ましい一実施態様(第1実施態様)の平面図であり、図2は、図1のII−II線断面を模式的に示す拡大側面断面図である。図3は、図2に示した貫通孔断面の部分拡大図である。
【0011】
透液シート1は、透液シート1の表面21から裏面22にかけて垂下する方向に延びる複数の貫通孔3を有している。さらに、透液シート1は複数の層41、42、43を有する。図示した透液シートは3層構造であるが、本発明はこれに限定されない。ここで、表面21とは、透液シート1を使い捨ておむつ等の吸収性物品に用いた際に肌当接面側となる面であり、裏面22とは同様に吸収性物品に用いた場合に裏面シート側(非肌当接面側)となる面である。なお、この面とは直接、肌や吸収体と接触しない場合も含み、肌や裏面シートに向く方向を示す。
【0012】
貫通孔3は、各層41、42、43にそれぞれ設けられた各孔31、32、33を連続して配置させることで形成されるものである。ここで、各層における孔31、32、33の大きさや形状、中心位置をそれぞれ変えることで、貫通孔3の内壁面には透液シート1の厚み方向に凹凸311〜314が形成される。
【0013】
透液シート1の各層41、42、43にそれぞれ設けられた各孔31、32、33は円形であり、図3に示したようにいずれも逆円錐形のいわゆる漏斗状の孔である。そして、これらの孔31、32、33は、孔の中心位置が一致するよう配置されており、貫通孔3を形成している。また、第1実施態様においては、各層における透液シート裏面側の端部の孔の大きさが、透液シート表面側の端部の孔の大きさよりも小さくなっている。また、透液シートを形成する各層41、42、43の各孔31、32、33の形状が相似であり、各孔の中心は同じ位置である。
【0014】
また、各層41、42、43の各孔31、32、33の大きさは、透液シート表面21側寄りの層の孔の大きさよりも透液シート裏面22側寄りの層の孔の大きさが徐々に小さくなっている。詳細には、透液シート表面21側の層41に形成された孔31の大きさ51よりも、その層41の透液シート裏面22側に隣接する層42に形成された孔32の大きさ52の方が小さく、層42に形成された孔32の大きさ52よりも、その層42の透液シート裏面22側に隣接する層43に形成された孔33の大きさ53の方がさらに小さい。
【0015】
更に、第1実施態様における透液シート1は、各層における透液シート裏面側の端部の孔の大きさが、その層の透液シート裏面側に隣接する層における透液シート表面側の端部の孔の大きさよりも小さくなっている。詳細には、図3に示したように、第1実施態様では、層41における透液シート裏面22側の端部の孔の大きさ51が、その層41の透液シート裏面22側に隣接する層42における透液シート表面21側の端部の孔の大きさ62よりも小さい。
【0016】
本発明における孔の大きさ、形状、中心位置について、説明する。本発明における各層の開孔の大きさとは、各層を真上から見た場合(液を吸収する面側。図2,3の表面21からの平面視)の形状の貫通している部分の面積をいい、各層の孔の形状とは、各層の孔を真上から見た場合の貫通している形をいう。そして、透液シートの貫通孔の大きさとは、透液シートを真上から見た場合の形状の貫通している部分の面積をいい、透液シートの貫通孔の形状とは、透液シートの貫通孔を真上から見た場合の貫通している形をいう。例えば図4に示すように、透液シートの上側の層が三角形状の孔71で下側の層が四角形状の孔72である場合、この透液シートを真上から見た場合の台形状の孔8が貫通孔であり、この貫通している部分8の面積が開孔の大きさであり、その形(台形)が孔の形状である。また、本発明における孔の中心とは、孔の形状の重心をいう。例えば、孔の形状が長方形である場合、その重心は長方形の対角線の交点であり、孔の形状が楕円形である場合、その重心は長軸と短軸との交点である。
【0017】
貫通孔3に形成される凸部311と凹部312との段差、並びに凸部313と凹部314との段差は、液が戻る際のブロック性の観点から、0.5mm〜1mmが好ましい。
【0018】
透液シート1に形成した貫通孔3は、全ての貫通孔の総面積の比率が、透液シートの表面積に対し面積率で10〜30%となるように形成されていることが好ましい。また、その開孔密度は、液透過性と液戻り防止性とから開孔面積により、2個/cm〜200個/cmであるのが好ましい。
【0019】
透液シート1を構成する各層としては、フィルムや不織布、紙などが挙げられ、より液戻り防止性を向上させるためには、毛管力の高い不織布がより好ましい。
フィルムの材料としては、ポリオレフィン、オレフィンとアクリル酸エステル、酢酸ビニル等の他のビニルモノマーとの共重合体や、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
不織布を形成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、セルロース系繊維及びこれらの組み合わせなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。不織布としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布などが挙げられる。
【0020】
また、透液シート1の表面21側の層は、吸収性物品の表面シートとして用いた場合、速やかに吸収体側に移行させ、肌のべとつきを低減させるために、透液シート1の表面21側の層を疎水性にすることが好ましい。更に、透液シート1の表面21側から裏面22側にかけて、界面活性剤などの処理を施すことにより親水性の勾配を付与させることが、液の引き込み性を高める上でより好ましい。
【0021】
透液シート1の厚みは、液透過性と液戻り性の均衡の関係から好ましくは0.03mm〜5mmであり、より好ましくは0.1mm〜3mmである。また、各層の厚みは0.01mm〜1.5mmが好ましい。
透液シート1の坪量は、好ましくは5〜50g/m2、更に好ましくは20〜40g/m2である。
【0022】
透液シート1の開孔の径は、0.5mm〜5mmが好ましく、0.5mm〜3.5mmがより好ましい。開孔形状を楕円形に近似した時、長径を0.5mm以上にすることで、表面張力の働きによる液通過の阻害を受けることがないため、液を素早く吸収体側へと移行させることができる。
【0023】
透液シート1の各層の開孔の形状としては、円形に制限されず、楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形などの形状でもよい。
【0024】
各層の開孔の形成は、例えば、凹凸のついたローラー装置の間隙に透液シートの各層となるシートを挟み込み、シートに凹凸を形成した後、凹部と同じ間隔で針が装着されたローラーによって、シートの凹部を貫くことで各層の開孔を形成することができる。
本発明の透液シートの製造は、同位置に開孔が形成されかつ孔の大きさのみが異なるシート(層)を複数枚作った後、各シート(層)を重ね合わせることで行うことができる。このとき、各層の開孔により貫通孔が形成され、その内壁面に凹凸が形成される。透液シート1の各層41、42、43は、層間への引き込み性を阻害しないよう、スパイラル状やドット状のホットメルト等で接着されていることが好ましい。
【0025】
第1実施態様における透液シート1は、貫通孔3の内壁面に透液シートの厚み方向に形成された凹凸により、一旦吸収体に吸収された液が透液シート1の裏面22から表面21方向に内壁面を伝って液が押し戻されたとしても、押し戻された液は開孔の内壁面に形成された凸部311、313に阻害されると同時に、透液シート1の水平方向に延びる層間の毛管力によって液が透液シート1の各層41、42、43間に拡散し、透液シート1の表面21への液戻りを防ぐことができる。
【0026】
また、第1実施態様における透液シート1は、図3に示したように、第1実施態様における透液シート1の各層41、42、43にそれぞれ設けられた各孔31、32、33が、いずれも逆円錐形のいわゆる漏斗状の孔である。そして、これらの孔31、32、33は、孔の中心位置が一致するよう配置されており、貫通孔3を形成している。このように、各層における透液シート裏面側の端部の孔の大きさが、透液シート表面側の端部の孔の大きさよりも小さくなっていることで、貫通孔の内壁面に形成された凸部による液透過の阻害が最小限に抑えられるため、より液の透過性を向上できる。
また、透液シートを形成する各層の孔の形状が相似であり、各孔の中心を同じ位置とすることで、貫通孔の内壁面に形成された凸部による液透過の阻害が最小限に抑えられるため、より液の透過性を向上できる。
【0027】
また、更に、第1実施態様における透液シート1は、各層の孔の大きさが、透液シート表面21側寄りの層の孔の大きさよりも透液シート裏面22側寄りの層の孔の大きさが徐々に小さくなっている。このように、開孔の大きさを液の導入口(透液シート表面21側)を広くし、排出口(透液シート裏面22側)を狭くすることで、液が入りやすく、また一旦入った液が戻りにくくなるため、液透過性および液戻り防止性を向上させることができる。
透液シート1の最も表面側に存在する層41の開孔の大きさ51と、透液シート1の最も裏面側に存在する層43の開孔の大きさ53との差が、少なくとも0.5mm以上であることが好ましい。
【0028】
また、更に、第1実施態様における透液シート1は、各層における透液シート裏面側の端部の孔の大きさが、その層の透液シート裏面側に隣接する層における透液シート表面側の端部の孔の大きさよりも小さくなっている。各層の孔を上述のようにすることで、貫通孔3の内壁面に形成された凸部のすぐ横に層間が存在するため、凸部による物理的な障害と同時に、層間による横への液拡散が生じることにより開孔の内壁面に液が溜まることがなく、透液シート1の表面21への液戻りの防止性を向上できる。
【0029】
また、各層の孔の形状が楕円形や四角形である場合について、図5を参照しながら説明する。図5は、各層の孔の形状が楕円形または四角形である形態の一例の平面図である。図5に示すように、各孔31,32,33の中心を同じ位置とすることが好ましく、更には、各層を真上から見たときの各孔31,32,33の形状は相似であり、各孔31,32,33の向きが全て同じであることが好ましい。
【0030】
以下、本発明の他の実施態様(第2〜4実施態様)について説明する。後述する他の実施態様については、上述した第1実施態様の透液シートと異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施態様の透液シートについての説明が適宜適用される。
【0031】
図6は、本発明の透液シートの別の好ましい一実施態様(第2実施態様)における貫通孔断面の部分拡大図である。第2実施態様の透液シートは、上記の第1実施態様と同様に、複数の層41、42、43からなり、各層41、42、43にそれぞれ設けられた各孔31、32、33によって貫通孔3が形成されている。各孔31,32,33は真上から見た形状が円形で、貫通孔3の形状は三つの円全てが重なった部分で切り取られる形状である。層41における透液シート表面21側の孔31の大きさは、層41における透液シート裏面22側の孔31の大きさと同じである。層42、43も同様に、孔32、33の大きさは、層41における透液シート裏面22側の孔32、33の大きさと同じである。貫通孔3の内壁面には、凸部321、323、325と凹部322、324、326が形成されている。この貫通孔3の内壁面に形成された凹凸321〜326により、一旦吸収体に吸収された液が透液シート1の裏面22から表面21方向に液が押し戻されたとしても、押し戻された液は開孔の内壁面に形成された凸部321、323、325に阻害されると同時に、透液シート1の水平方向に延びる層間の毛管力によって液が透液シート1の各層41、42、43間に拡散し、透液シート1の表面21への液戻りを防ぐことができる。
【0032】
図7は、本発明の透液シートの別の好ましい一実施態様(第3実施態様)における貫通孔断面の部分拡大図である。第3実施態様の透液シートは、上記の第1実施態様と同様に、複数の層41、42、43からなり、各層41、42、43にそれぞれ設けられた各孔31、32、33によって貫通孔3が形成されている。また、貫通孔3の内壁面には、凸部331、333と凹部332、334が形成されている。なお、本明細書における凹凸部は、図7に示すように、貫通孔3の内壁面を斜めから見た場合に凹凸が認識できるものであればよい。各孔31,32,33は真上から見た形状が円形で中心位置が同じであり、貫通孔3の形状は孔33の形状で、円形である。また、上記の第2実施態様と同様に、各層41、42、43における透液シート表面21側の各孔31、32、33の大きさは、それぞれ各層41、42、43における透液シート裏面22側の孔31の大きさと同じである。
【0033】
図7に示した第3実施態様におけるこれらの孔31、32、33の大きさは、透液シート表面21側寄りの層の孔の大きさよりも透液シート裏面22側寄りの層の孔の大きさが徐々に小さくなっている。具体的には、透液シート表面21側の層41に形成された孔31の大きさ51よりも、その層41の透液シート裏面22側に隣接する層42に形成された孔32の大きさ52の方が小さく、層42に形成された孔32の大きさ52よりも、その層42の透液シート裏面22側に隣接する層43に形成された孔33の大きさ53の方がさらに小さい。このように、開孔の大きさを液の導入口(透液シート表面21側)を広くし、排出口(透液シート裏面22側)を狭くすることで、液が入りやすく、また一旦入った液が出にくくなるため、液透過性および液戻り防止性を向上させることができる。
【0034】
図8は、本発明の透液シートの別の好ましい一実施態様(第4実施態様)における貫通孔断面の部分拡大図である。第4実施態様の透液シートは、上記の第1実施態様と同様に、複数の層41、42、43からなり、各層41、42、43にそれぞれ設けられた各孔31、32、33によって貫通孔3が形成されている。貫通孔3の内壁面には、凸部341、343、345と凹部342、344が形成されている。各孔31,32,33は真上から見た形状が円形であり、これは、各層の表側から円錘状の孔を開け、かつ裏側から円錐状の穴を開けてできており、またそれぞれの真上から見た形状の円形の中心位置が一致している。貫通孔3の形状は孔33の形状で円形である。
また、各層における透液シート裏面側の端部の孔の大きさが、その層の透液シート裏面側に隣接する層における透液シート表面側の端部の孔の大きさよりも小さくなっている。具体的には、層41における透液シート裏面22側の端部の孔の大きさ51が、その層41の透液シート裏面22側に隣接する層42における透液シート表面21側の端部の孔の大きさ62よりも小さい。各層の開孔を上述のようにすることで、貫通孔3の内壁面に形成された凸部のすぐ横に層間が存在するため、凸部による物理的な障害と同時に、層間による横への液拡散が生じることにより開孔の内壁面に液が溜まることがなく、透液シート1の表面21への液戻りの防止性を向上できる。
【0035】
次に、本発明の透液シートを吸収性物品に用いた実施態様について説明する。図9は、本発明の好ましい一実施態様である吸収性物品の側面断面図である。
本実施態様の吸収性物品11は、前述の透液シート12を表面シートとして用いた吸収性物品であり、透液シート12と吸収体13と裏面シート14を具備し、吸収体13は透液シート12と裏面シート14との間に配されている。透液シート12は、表面が肌側、裏面が吸収体13側となるよう配置される。
【0036】
本発明の透液シートを吸収性物品に用いる場合、表面シートとして吸収体の上に配置したり、セカンドシートとして表面シートと吸収体の間に配置したり、また吸収体を本発明の透液シートで包んで表面シートと裏面シートの間に配置したり、吸収体と裏面シートの間に配置したりしてもよい。但し、この時いずれの場合も本発明の透液シートは、表面が肌側、裏面が裏面シート側になるよう配置する。また、本発明の透液シートは少なくとも排泄ポイントには配置されており、ここで言う排泄ポイントとはおむつの着用時に着用者の排泄部が位置する部位であり、おむつの場合には、長手方向の中央部よりやや前側(腹側)から後側(背側)に亘る部位に存在する。尚、排泄ポイントは、常に一定の箇所に定まっているものではなく、装着者の性別、排泄物の種類(尿か便か、または経血か)、あるいは月齢や年齢による排泄時の姿勢等によって異なるものであるため、用途等に応じて適宜変更される。
【0037】
裏面シート14としては、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品において従来用いられている各種のものを用いることができ、液不透過性又は撥水性で且つ透湿性のものが好ましく用いられる。裏面シート14としては、例えば、液不透過性又は撥水性の多孔性樹脂フィルム、液不透過性又は撥水性の不織布、あるいは該多孔性樹脂フィルムと該不織布との積層体等が挙げられる。不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド不織布(S)/メルトブローン不織布(M)/スパンボンド不織布(S)が積層されて互いに接合されたSMS不織布、SMMS不織布等が挙げられる。
【0038】
吸収体13は、パルプや不織布などの吸収性繊維層、または前記吸収性繊維層内に高吸収性樹脂15が含まれているものであってもよい。あるいは吸収紙であってもよい。
【0039】
前記吸収体13と透液シート12は、少なくとも一部で互いに接着されていることが好ましいが、吸収体13の上に透液シート12が接着されることなく敷かれているものであってもよい。このように前記透液シートを吸収性物品の表面シートとして用いた場合、一度透液シートを通過した液は肌側へと戻りにくいため、排泄後の肌のべとつきが軽減できる。また、この他、吸収性物品におけるセカンドシートとして、表面シートと吸収体の間に配置することもできる。
【0040】
また、本発明の透液シートは、血汁を発生する魚介類や畜肉などをのせるドリップ吸収シートに適用することもでき、吸収しきれないドリップの染み出しを防止し、菌の繁殖を防ぐことや、隠蔽性を高めることができる。
【0041】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば、前記実施形態においては、各層の孔形状を円形としたが、この形状に制限されないことは前述の通りである。例えば、各層の各孔の形状は、異なっていてもよく、各層の各孔の中心位置は異なっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の透液シートの好ましい一実施態様(第1実施態様)の平面図である。
【図2】図2は、図1のII−II線断面を模式的に示す拡大側面断面図である。
【図3】図3は、図2に示した貫通孔断面の部分拡大図である。
【図4】図4は、孔の形状を説明する平面図である。
【図5】図5は、孔の中心を説明する平面図である。
【図6】図6は、本発明の透液シートの別の好ましい一実施態様(第2実施態様)における貫通孔断面の部分拡大図である。
【図7】図7は、本発明の透液シートの別の好ましい一実施態様(第3実施態様)における貫通孔断面の部分拡大図である。
【図8】図8は、本発明の透液シートの別の好ましい一実施態様(第4実施態様)における貫通孔断面の部分拡大図である。
【図9】図9は、本発明の好ましい一実施態様である吸収性物品の側面断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 透液シート
21 透液シートの表面
22 透液シートの裏面
3 貫通孔
31、32、33 各層の孔
311、313 凸部
312、314 凹部
41、42、43 透液シートの各層
11 吸収性物品
12 透液シート
13 吸収層
14 裏面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層からなり、表面から裏面にかけて貫通している複数の貫通孔を有する透液シートであって、前記貫通孔は、各層の孔よりなり、前記貫通孔の内壁面が前記シートの厚み方向に凹凸を有する透液シート。
【請求項2】
前記貫通孔について、前記透液シート裏面側寄りの層の孔の大きさが、前記透液シート表面側寄りの層の孔の大きさよりも小さい、請求項1記載の透液シート。
【請求項3】
前記貫通孔について、前記各層における前記透液シート裏面側の端部の孔の大きさが、当該層の前記透液シート裏面側に隣接する層における前記透液シート表面側の端部の孔の大きさよりも小さい、請求項1又は2に記載の透液シート。
【請求項4】
前記貫通孔について、前記透液シートを形成する各層の孔の形状が相似である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透液シート。
【請求項5】
前記貫通孔について、前記透液シートを形成する各層の孔の中心が同じ位置にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透液シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の透液シートを含む吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148912(P2009−148912A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326556(P2007−326556)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】